Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
感想、ここすき、栞、評価は励みになります。また、誤字報告もマジ感謝です。感想は特にバンバン挙げてくれると喜びます。
~『ブラックマーケット』~
side-"先生"
「"ここが...『ブラックマーケット』"」
「景色自体は、ビルが随分密集してる以せいでちょっと薄暗いこと以外は普通に見えるね~。道行く人は明らか
林立するビルのおかげで広いけど少し薄暗い印象がある通りで足を止め、『アビドス』はもちろん、『シャーレ』オフィスビルがある『D.U.外郭地区』とも違う雰囲気と、道行く明らか不良に見える生徒達や、目付きが悪かったり、服装が物々しかったりする獣人やオートマタの大人の住人達を眺める。
―――"風紀委員会"と和解した翌日。私は"対策委員会"の皆と"RABBIT小隊"、そして少しだけではあるけど『ブラックマーケット』に入った経験があると言うアヤを連れて『ブラックマーケット』へ来ていた。
校舎では生徒達が留守を守っていて、"便利屋68"も『カイザーPMC』からの指示で校舎の警備を行っているから安心出来る。
「出発前に軽く注意しておきましたが、改めて。スマホや財布といった貴重品の扱いには特に気を付けてください。盗れると見られれば雑踏の中で
「うへ、ノノミちゃんと"先生"は
「...えぇ、そうですよ。依頼を受けて書いた記事が予想以上にウケたので依頼主から貰った謝礼が
ホシノの問いにアヤはガックリと肩を落とし、そう答えて憤激する様に地団駄を踏む。どうやら経験者だからこその注意だったらしい。
「"それは災難だったね...でも、経験者だからこその注意みたいだから気を付けるよ"」
「えぇ、是非ともそうしてください。さて...どう行動しますか?『ブラックマーケット』外の人間は集団行動が基本ですが、こう人数が多くては寧ろ目立つので危険です」
アヤはそう言って私達を見回す。"対策委員会"六人、"RABBIT小隊"四人、そしてアヤ。私も含めれば十人を越える。確かに、この人数で固まって行動しては目立つだろう。
「...では、"先生"とホシノ先輩、アヤネさん、私、モエで"Кролик小隊"の下へ向かいましょう。連絡を取った際に住所と座標は貰ったので、迷うことはない筈です。アヤさんは『ブラックマーケット』に入った経験があるとのことなので、残る皆さんの引率をお願いします」
「大した経験はありませんが、任されました。最近は多少秩序が齎されたおかげでこの外郭辺りであれば
「"観光って...ここは犯罪の温床なのにそんな事業もやってるんだね"」
「世の中、怖いもの見たさで危険な所に興味を持つ人も居るんですよ。需要は小さい方ですが、木端組織や個人が少しでも稼ぎを得る為にやっているんです」
どうやら観光業まで存在しているらしい。確かに、
「おじさん達が件の"Кролик小隊"と話している間に暇な状態にさせているのもアレだしね~。観光ついでに何か情報が得られれば儲けものって考えよっか~」
「"方針は決まったね。別れて行動することになるけど、何か起きたらすぐに連絡してね。アヤ、モコウ達のことをお願いするよ"」
「えぇ、お任せください」
「では行きましょう。こちらです」
スマホでサッと地図を確認したミヤコが先導し、アヤ達と別れて歩き出す。―――昨日、ヒナとレミリアが言っていたけど、情報を得るだけじゃなく、救出への協力を取り付けられれば―――
side-モコウ
「...露店の品ですらコンビニ以上に高いな。稼ぎがないと食うものにも困りそうだ」
「この辺りはまだ安い方ですよ。犯罪の温床ですから、正当なルートで得られたものなんて碌にありませんからね。在庫補充すらそこそこに費用がかかっていると聞いたことがあるので、元を取る為に必然的に値が張るのでしょう」
露店で売られているジャンクフードの値段を見ながらそう感想を零すと、アヤがそう解説する。食い物すらコンビニ価格を越える値段だと、
「人相の悪い住人、法外な値段の品々。その辺り以外は普通の自治区に見えるな」
「...その考えは甘いですね。ここの住人の大半は
サキの言葉にアヤが目付きを鋭くして丁度視界に入って来た横道を指差す。その先を見れば―――
<「ちょこまか逃げやがって...!あたし達から逃げられるかっての!」
<「おら、そのカバンの中身をよこせ!」
<「うっ...がっ...」
―――明らか不良の装いのスケバン二人がボロボロになって倒れているスケバンを蹴ったり銃床で殴ったりしている光景が見えた。
「...あれは...一体、何を?」
「あまり足を止めないでください。目を付けられたら面倒です」
ノノミが足を止めて困惑した表情を浮かべるが、アヤは軽く肩を掴んで歩かせる。私達もそれに付いて歩き出す。
「...先程モコウさんは"稼ぎがないと食うにも困りそうだ"と呟いた通り、ここ『ブラックマーケット』では全員が普通に生活できる訳ではありません。『ブラックマーケット』での安定した仕事や稼ぎは件の"鬼傑組"を始めとする
「弱肉強食か...犯罪が当たり前だからこそだな。住人達も大して見向きもしないで通り過ぎている」
アヤの言葉に頷きながら、横道での光景を一瞥して歩き去っていく住人達を見る。普通ならもあんな光景を見たら通報して治安維持組織を呼ぶ筈だ。銃撃戦は日常だが、それでも騒ぎを起こせば被害拡大を防ぐ為に鎮圧されるのは当然だ。―――だが、
「ああいうのを助けようとなんて思わない方が身のためです。ましてや私達は外部の人間。犯罪に巻き込まれても『ヴァルキューレ』や"連邦生徒会"は助けられませんから。ここにはここの法があります」
「『ブラックマーケット』独自の法秩序か...訓練期間中の座学で概要を学んだが、ああいう暴力や強奪程度じゃ"マーケットガード"は動かないって聞いたな」
「"マーケットガード"は組織同士の大規模抗争位でなければ動きませんからね。昔は色々な組織から賄賂を大量に貰っていたことで碌に治安維持をしなかったそうですが、現在の"保安部長"の体制になってからは―――」
「「「待ちやがれ!!」」」
「クソ、お嬢様学校の生徒の癖に...!」
―――ふと、前方から怒声が聞こえて来て前の人混みを見ると―――
「――わぷっ?!」
「ひゃっ?!な、何か突っ込んできたよ?!」
「...チラリと見えた校章...なぜここに...?」
―――人混みを抜けて来た生徒らしき少女が勢いそのままユメの胸に顔を突っ込む。ブロンドヘアーを後頭部で二本のおさげで結い上げ、白い制服の背中には白い何かのキャラモチーフらしいリュックサックを背負っている。アヤは彼女の制服の校章を見て困惑した表情を浮かべている。
「んん...っぷは...あ、ご、ごめんなさい!追われてて気づかなくて...!」
生徒がユメの胸から顔を離し、あわあわと謝る。
「わ、私は大丈夫だけど...どうして追われて――」
「おいテメェら!その『トリニティ』のガキはウチらの獲物だ!寄越しやがれ!」
―――同じ様に人混みを搔き分けて来たらしい、スケバン五人が生徒を指差してそう吠える。どうやらユメの胸に突っ込んだ生徒は『トリニティ』所属らしい。確か、三大校の一つで所謂お嬢様学校だったか。という事は―――
「――誘拐でもして身代金でもせびるつもりか」
「あ?テメェらも『トリニティ』生の誘拐狙いか?」
「えぇっ?!そ、そうなんですか?!」
そう呟くとスケバン五人の内一人がそう聞いて来て生徒が顔を青くして声をあげる。
「そんなことする訳ないだろ!『Srっと...変に名乗るのも不味いよな...兎に角、誘拐なんてさせないぞ!」
「さ、サキちゃん...勝手にそんな啖呵を切るのは...」
「でも、このまま誘拐させるのも気分的に良くない。ここはその『トリニティ』の娘を助けてあげるべき」
「そうですね~。先ほどは見て見ぬふりをしましたが、今回は助けてあげるべきでしょう。――この場合はいいですよね、アヤさん?」
「...えぇ、そうですね。ですが、あまり騒ぎは大きくしてほしくないところです。"マーケットガード"が出張ってきては面倒なので」
サキの言葉にミユが不安な表情を浮かべるが、ノノミとシロコが賛意を示す、それを見ていたアヤは仕方ないと言いたげに頭を掻きながらそう注文を付ける。確かに、人混みがある通りのど真ん中で戦っては大騒ぎになりかねない。となれば、銃撃戦は不味いか。
「...なら、私がやろう。銃がダメだってんなら、拳だ。――皆、ちょっと離れてろ」
指の骨を軽く鳴らしながら数歩前に出る。昨日の"風紀委員会"襲撃の時にジョオンと共闘して相手をした"行政官補佐"よりは弱いだろう。不規則に仕掛けたつもりだが悉く先読みしてくるアイツがおかしいんだ。
「おいおい、ウチら相手に丸腰でいいのかぁ?」
「お前ら程度にゃ弾が勿体ない。別にお前らは銃を使ったって構わないが、流石に"マーケットガード"とやらが出張るだろうし――丸腰の相手に大人気なく銃を使って負けちまったらさぞ恥ずかしいだろうな?」
「――面白ぇ。見た所外から来たヤツっぽいし、
スケバン共五人は私の挑発にあっさり乗り、銃は抜かずに指の骨や首を鳴らしながら私を囲む様に動く。
「あ、あわわ...私のせいで大変なことに...!」
「大丈夫だよ。モコウは銃を使わなくても強いんだから!幼馴染で親友の私が保証するよ!...えーっと...」
「ヒフミです!『トリニティ総合学園』二年生、『
「――やはり『トリニティ』生でしたか。お嬢様学校故に身代金狙いの誘拐に狙われやすいので『ブラックマーケット』入りは強制ではなくとも非推奨の筈です。侵入するにしても私服にすべきですが...」
背中の方で交わされる自己紹介や会話を聞きながらスケバン共を見回す。―――よく見れば顔や手に自然治癒で治したらしい傷痕がちらほらと確認出来る。モノがやたらと高いと言うから、医薬品も相当値が張るんだろう。ちょっとした擦り傷や切り傷は自然治癒に任せている様だ。―――つまり、そういう傷をこさえる位には荒事を熟している。舐めて掛からない方が良さそうだ―――
「――さぁ、来いよ」
「――オラァッ!」
道行く住人達が野次馬と化して私達を囲み始める中で手招きして挑発し、リーダー格らしきスケバンが早速拳を振り翳して迫って来て―――
「――遅い」
「ゲボッ...??!!」
―――遅く、且つ見え見えの軌道を読んで躱し、鳩尾に拳をお見舞いする。確実に
「なっ...」
「あ、姉貴が...」
「い、一撃だと...」
「ヒエッ...」
その瞬間を目の当たりにしたスケバン共が顔を青くして後退る。まさかリーダー格が一撃でやられるとは思ってもみなかった様だ。
「――さぁ、次は誰だ?」
私の問いにスケバン共は顔を青くしたまま沈黙し―――
「「「――す、すんませんっしたー!!」」」
「...あ、おい!置いてかないでー!」
―――そう謝りながら三々五々に野次馬に紛れる様に逃げ出し、気絶したリーダー格を抱えたスケバンが遅れて後を追っていく。
「一人やられただけで情けない連中だ。ま、騒ぎを大きくしないで撃退できただけよしとするか」
「さすがモコウ!一撃で気絶させちゃうなんて...!」
「ん、すごい腹パンだった。あのダメージだとしばらく何も食べられないと思う」
「流石ですねぇ。...とりあえず、この場を離れましょう。野次馬ばかりではまた目を付けられて襲われる可能性があります」
ユメやシロコが褒める中、アヤがそう提案して来る。確かに、野次馬に囲まれた状況は明らかに目立つ状況だ。血の気の多い輩が目を付けて襲って来る可能性はあるだろう。別に喧嘩をしに来た訳じゃないし―――
「――ヒフミ、だったか?コイツがなんで追われていたか、事情を聞いておきたいしな。また襲われる前にさっさと行くぞ」
「は、はい!」
ヒフミも連れて、野次馬の間を搔き分けてその場を離れる―――
「...木端連中の喧嘩かと思ったが、面白いものが見れたな。
「――さて。そろそろ十分離れたか」
「あ、あの...!助けていただきありがとうございます!――改めて、『トリニティ総合学園』二年生『阿慈谷ヒフミ』と言います!」
「律儀なヤツだな...『アビドス高等学校』三年生、『藤原モコウ』だ」
「同じく三年生、『梔子ユメ』だよ。よろしくね、ヒフミちゃん!」
「二年生、『十六夜ノノミ』です☆よろしくお願いしますね、ヒフミちゃん」
「同じく二年生、『砂狼シロコ』。よろしくね」
「『シャーレ』指揮下、"RABBIT小隊"一年生『空井サキ』だ」
「同じく、一年生『霞沢ミユ』。よ、よろしくね...」
―――比較的人通りが少ない露店通りまで移動し、そろそろ大丈夫だろうと呟いて足を止める。ヒフミも足を止め、私達に頭を深々と下げて自己紹介し、私達も自己紹介を返す。
「『アビドス』...聞いたことはありませんが、改めてよろしくお願いします!」
「急に胸にぶつかってきた時はちょっとビックリしたけど...でも、助けられて私達も嬉しいよ!」
「――にしても、なんで『トリニティ』の生徒が
「私もそれがずっと気になっていましてね。『トリニティ』には実家が資産家であったり、自地区内での一角の企業であったりと――それこそ
サキの疑問にアヤも乗り、ヒフミを見つめる。お嬢様学校のイメージ通り、『トリニティ』の生徒は金持ちが多いらしい。そんな学校の生徒が犯罪が当たり前に行なわれる様な場所に入り込めば―――あのスケバン共みたいな連中が身代金を狙って手を出すのは必然だろう。
「あ、あはは...実は、『ブラックマーケット』で『ペロロ』様の
「...『ペロロ』様?」
「...アニメか何かのキャラか?」
ユメと揃って首を傾げる。スマホは持っているが、その手のサブカルチャーに手を出せる程の余裕は無いし、そもそも私は余り興味が無い。
「わぁ♪まさか『モモフレンズ』のファンに出逢えるなんてビックリです☆私『Mr.ニコライ』が好きで、最近出版された『善悪の彼方』という本も即買いしたんですよ~☆」
「私も
「よく分かりますよ~☆最近だと――――」
「『ペロロ』様も最近――――」
―――ノノミが嬉しそうに目を輝かせると、ヒフミも同じ様に目を輝かせて話し込み始める。ヒフミが言う『ペロロ』とやらも、ノノミが好きだという『Mr.ニコライ』も『モモフレンズ』なるアニメのキャラらしいが...
「ノノミ先輩は知ってるみたいだな。『モモフレンズ』...確か、結構有名なアニメだったよな」
「う、うん...『モモトーク』も運営している『モモグループ』が制作しているアニメのことだね」
「...まさか『ペロロ』のファンが居たとは驚きです。――『モモフレンズ』自体は現在人気を博しているアニメコンテンツです。色々と個性的なキャラクターが登場しますが、特に『ペロロ』は...まぁ、人によって好き嫌いが分かれます。
「知らないものを調べられるのがスマホ、ネットだもんね。えーっと...」
「確かにな。...『モモフレンズ』、『ペロロ』...と...」
アヤの提案を受け、スマホを取り出して検索してみる。結果の上位に出たサイトを開いて見れば―――
「――私はこの手のサブカルチャーは素人だが...万人受けしないってのは解る、うん。この『ペロロ』...私には
「え、そうかな~?私、結構好きかもしれない...」
「ユメ...お前マジで――いや、メモ帳の『バナナとり』を好むなら有り得る、のか...?」
―――私には『ペロロ』は万人受けしないとしか思えなかったが、隣の
「...ユメさんの感性は兎も角として。『モモフレンズ』は有名ですから、レアグッズや限定品が『ブラックマーケット』に流れて転売される可能性はあります。ましてや、
「...よく分からないが、趣味の為なら蛮勇になれるものなんだな」
アヤの言葉を聞き、そう返しながら頭を搔く。私には趣味と言えるものはまるで無いからイマイチ理解出来ないが―――
「――見たところまだ目的は果たしてなさそうだし、護衛がてらヒフミに付き合ってやるか」
「え?!い、いいんですか?!」
「わぁ、いいアイデアですね☆私ももっとお話したいですし、暇も少し和らぐでしょうから」
「ん、私も賛成」
「私も賛成するよ!」
「一人で行かせたらまた別の連中に目を付けられる可能性はあるからな。私も賛成だ」
「わ、私も賛成...!」
―――私の提案にヒフミが驚く中、皆賛意を示す。サキの言う通り、ヒフミをこのまま一人で行かせるのは危険だろう。だったら、ホシノや"先生"達が目的を達成するまでは護衛も兼ねて付き合った方がいいだろう。
「――確かに、その方がいいですかね。ですが、私達も
「うぅ...誘拐されてしまったらナg...心配される方も居ますし...でも、それまでに見つければ大丈夫、ということですね!分かりました!短い間ですが、よろしくお願いします!」
ヒフミはアヤの提案に少し抵抗を示すが、前向きに考えて受け入れ、また私達に頭を下げた―――
「はむ...普通だけど、何かしら
「値段は明らか相場より高いけどな。あの値段で三つは買えるはずだ」
―――食い物系の露店や屋台を見ていたら小腹が空いてきた為、ノノミの奢りで買ったたい焼きを各々食べながら歩いている。ユメの言う通り、値段以外はごく普通のたい焼きだ。
「...そろそろお昼時だけど、まだ見つからない?」
「うーん...得られた情報だと、『香霖堂』という看板の露店で売られているかもという話なので、露店が多いこの辺りだと思ったんですが...」
シロコが先頭を歩くヒフミに尋ねると、彼女はそう答えてうんうん唸りながら見回す。
「『香霖堂』...確か、『百鬼夜行』の道具屋でしたか。店主は店に居るよりもキヴォトス各地で気まぐれのように露店を開くような方なので取材の機会は未だ得られていませんが...」
「...ん、あの露店。それっぽい」
『香霖堂』という名前にアヤは心当たりがある様で、しかしあまり情報も無いのかそのまま唸るが、ふとシロコが足を止めて左手の横道を指差す。そこを見れば―――
―――如何にも適当に手作りした様な看板を掲げる露店がひっそりと構えられているのが見えた。
「――噂をすればなんとやら。思ったより早く、あっさり見つかったな」
「早速行きましょう!他のファンに買われてしまう前に!」
「おいおい慌てるな。そもそも商品として出されているのかも確実か分からないだろうが...」
『香霖堂』を見付けて目を輝かせて小走りに走り出すヒフミを追って私達も露店に向かう。
「――いらっしゃい。ようこそ『香霖堂』出張露店へ。君達は初見さんだね。僕は『
―――露店に着けば、商品を並べたシートの奥で折り畳み椅子に座る、"先生"より年下に見える若い
「『クロノススクール』二年生、『射命丸アヤ』です」
「『トリニティ総合学園』二年生、『阿慈谷ヒフミ』です!こ、これはまさか...!」
「『シャーレ』所属、一年生『空井サキ』だ」
「お、同じく『シャーレ』所属、一年生『霞沢ミユ』...」
「『アビドス高等学校』二年生、『十六夜ノノミ』で~す☆」
「同じく二年生、『砂狼シロコ』だよ」
「三年生、『梔子ユメ』だよ~。よろしくね、リンノスケさん」
「同じく三年生、『藤原モコウ』だ。――道中見てきた屋台や露店の店主は大体ガラが悪そうだったが、アンタはそれとは違う風に感じるな」
「僕は『ブラックマーケット』の人間じゃないからね。あくまで商品を売りに来ただけさ。――まさか『トリニティ』生で、尚且つ
「わぁぁ~~!これがキヴォトスで
自己紹介を返して聞いた問いに店主―――リンノスケはそう答えてヒフミを―――どう見ても
「『トリニティ』生なんて、
「そんないい加減に...でも不良在庫って言うなんて、やっぱり『ペロロ』は人気がないのかな?」
「『モモフレンズ』そのものは大人気コンテンツだから、僕も手に入れられれば色々と嬉しいんだけど...『ペロロ』はどうしても
リンノスケはそう答えて苦笑する。やはり『ペロロ』は人を選ぶキャラクターらしい。
「リンノスケさん!これ、いくらですか?!」
「その人形は...価値と、入手の費用を加味して...このくらいかな?」
「うぇっ...こ、この金額は...」
ヒフミが値段を尋ねると、リンノスケはスマホの電卓で数字を打ってそれをヒフミに見せ―――ヒフミは変な声をあげる。
「ヒフミちゃん?...ひ、ひぃん...私達のバイトの稼ぎ何回分になるのこれ?!」
「...マジか...こんな人形にこれだけの価値があるのか...?!」
「うぅ...数字だけで気が遠くなりそう...」
「たった一つだけですから、より価値がある感じですね~。それでも、『ペロロ』様関連のグッズとしてはかなり高い気がしますが...」
私達も電卓が示す値段をヒフミの後ろから覗き見て、各々驚いた声をあげる。人形一つにこんなにゼロが並ぶのは初めて見た。
「これ以上はまけられないよ。一点物の『ペロロ』グッズとしては安い方だ」
「うぅ...払えなくはないけど...他の『ペロロ』様グッズやイベントの為にコツコツ貯めた貯金が...うぅ~!」
リンノスケは値切りするつもりも無いらしい。ヒフミは目に見えて悩まし気に唸りながら電卓が示す値段と人形を交互に見る。どう貯金しているかは分からないが、貯めた金の大半を溶かす程の額らしい。
「...決めました。買います!」
「毎度あり。支払いは現金でもカードでもいいよ」
「わ、私のカードの限度額じゃ...奪われるのが怖かったですけど...どうぞ!」
「おや...『トリニティ』の娘達はカードが多いんだけど。珍しいね」
「さ、札束がリュックから...」
「ん...銀行強盗でもした?」
「し、してないですよ?!ちゃんと自分の口座から引き出してきたものです!」
一、二分程悩んだ末、買う事に決めたらしい。背負っている『ペロロ』のリュックサックから分厚い封筒を取り出すと、そこから札束を出してリンノスケに渡す。リンノスケは眉を上げて札束を受け取り、手早く枚数を数える。シロコが札束を見てそう尋ねるが、ヒフミは真っ向から否定する様に首と手をブンブン振る。
「...確かに丁度受け取ったよ。――これは君のものだ。大事にするんだよ」
「わぁ~!ありがとうございます!」
リンノスケは札束を数え終え、人形を渡す。ヒフミは目をキラキラと輝かせて人形を受け取る。
「ふふ、無事に買えて良かったですね~☆」
「はい!これで貯金は直近のイベントのチケット代と最低限の生活費位しか残っていませんが...後悔はありません!」
微笑むノノミの言葉にそう答え、ヒフミはリュックに人形をしまう。
「――さて、他にお求めの品がある娘は居るかな?」
「ヒフミに付き合ってきただけだが...少し見ていくか。道具屋らしいが、何を売ってるんだ?」
「既に製造販売されていない道具、銃器関連の整備部品やパーツ、後は"オーパーツ"を主に扱っているよ。それから、店でしか受け付けていないけどガンスミスも細やかながら兼ねている」
リンノスケはそう答えてシートに並べられた商品を見回す。確かに、見た事が無い道具や高そうなパーツ、明らかにどう使うのか分からない道具らしきものまで雑多にある。
「ガンスミス...風の噂で聞いた"
「酷い噂だなぁ...確かにガンスミスの方を求める客が多い気がしているけど、僕はあくまでも道具屋だよ」
リンノスケの答えを聞いたアヤが眉を上げると、彼は困った様に眉をひそめて言い返す。どうやら道具屋としてよりもガンスミスの方が需要があるらしい。
「...ん、このスコープはいくら?買えそうなら欲しい」
「そのスコープは...これくらいかな」
「...んぅ、高い...」
「『カゼヤマ』製だからね。製造終了したモデルだけど、品質と性能は折り紙付きだ」
シロコがパーツの中からスコープを手に取って値段を尋ね、電卓が示した値段を見て残念そうに耳を垂らす。どうやら手が出せる額では無かったらしい。
「...あ、でも銀行強盗すれb「シロコちゃん。めっ、ですよ~♣」...んぅ」
「物騒なことを言うね君...」
「ダメだよシロコちゃん!
いつもの様に銀行強盗を提案しようとしてノノミとユメに止められ、そのやり取りを目の前で見ていたリンノスケは困った表情を浮かべる。
「こうして品物を見てると、銃器関連のパーツが多いな。少し旧い型でも、性能と値段が高いものばかりだが」
「キヴォトスは銃社会だからね。必然的に銃器関連の需要が多くなってしまうんだ。"オーパーツ"は『ミレニアム』でよく売れるんだけど、中々入手する機会もないしね」
「...だったら、尚更ガンスミスを本業にしたらいいんじゃないか?」
「
リンノスケは私の問いにそう答える。道具屋を辞めるつもりは無いが、しかし利益が出ているからガンスミスを辞めるつもりも無いらしい。
「――さて、欲しい品はないかな?実を言うと、客も来ないからそろそろ閉めようかと思っていたんだ。
「特にはないな。パーツは少し気になるが...手が出せない」
「ん...欲しいものはあったけど、買うお金がない」
「特に欲しいものはないかな~」
「私も特にありませんね~。ヒフミちゃんが買ったお人形以外にグッズがあればよかったんですが、見た所他にはなさそうですし」
「特にはないな」
「わ、私も大丈夫...」
「特にはありませんが...いつか取材したいので、連絡先を貰えますかね?」
「取材か...せっかくだし、君達にも渡しておこうか」
アヤの要望に応えたリンノスケはポーチから名刺を人数分取り出して私達に渡す。
住所:『百鬼夜行』自治区 ○○○○
「ありがとうございます。今はもうしばらく『アビドス』に留まるつもりですが、折を見て『文々。新聞』として取材の打診をしますのでそのつもりで」
「...どこかで見たと思ったら、キヴォトス最速を謳うネット新聞の記者だったのか。まぁ、道具屋として宣伝してくれるなら構わないよ」
「それは取材の結果次第ですねぇ。では、取材に伺った時はよろしくお願いしますね」
名刺を見てる間に、アヤはリンノスケに取材の約束を取り付けている。
「――あ、そうだ。リンノスケは、『ブラックマーケット』で何回か商売してるのか?」
「そうだね。危険ではあるけど、いい値段で取引できるから偶にこうして店を開いているよ」
「だったら、知っているなら教えてくれ。―――"鬼傑組"と、『吉弔ヤチエ』に心当たりはないか?」
ふと考えが浮かび、リンノスケに尋ねる。『ブラックマーケット』で商売をしていると言うのなら、もしかしたら―――
「――随分と物々しい言葉が出てきたね。直接ではないけど、何回か取引したことはあるよ。大体はそういう事情を伏せてではあったけど、所作ややり取りで案外解るものだからね。――そんな"鬼傑組"について尋ねる理由を聞いてもいいかな?」
「実はな――――」
ということで、ペロキチ普通(笑)の生徒ヒフミと、オーパーツコレクターの"行商人"リンノスケの登場です。
ゲームの方は新イベ来ましたね。まさかの赤冬と山海経交流イベ、ソ中友好なんてたまげたなぁ。
ストーリー軽く追ったけど...チェリノの指導者としての逞しさと器の大きさが眩しい...!そしてカイの清々しい程の邪悪外道っぷりよ。別世界線で髑髏烏帽子とか名乗ったりしてた君?
さて、次回は"先生"達がКролик小隊と接触します。
~キャラクター紹介~
名前:
卒業校:百鬼夜行連合学院
職業:道具屋『
装備:HG(