Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~ブラックマーケット~
side-ホシノ
「――住所、座標ではこの辺りの筈ですが...」
私達を先導するミヤコちゃんがスマホを時々見ながら辺りを見回す。この辺りは露店も少なく、どちらかと言えば住宅地に近い。一軒家なんて一切無く、年季の入ったアパートやビルばかりで少し殺風景だけど。
―――『ブラックマーケット』の少し奥の地域。この辺りは人通りは少ないものの、道行く人はおじさん達を奇異の視線で見て来る。恐らく、マーケットの外の人間はこの辺りまで来ないのだろう。
「ミヤコ、まだ着かないのー?そろそろ小腹が空いてきたんだけど。飴もさっきのでなくなっちゃったしさー。みたらし団子でもいいから――」
頬を膨らませてモエちゃんが文句を漏らすけど―――何か見付けたのか口を噤んで足を止める。
「"――モエ、何か見付けた?"」
「――あの店じゃない?住所と座標的にも合ってるし、何より――」
モエが指差した先を見れば―――
「――あの店名は間違いなくイナバ先輩だよ」
「...確かに、そうですね」
―――そんな店名を銘打った看板を掲げる二階建ての建物があった。どうやらお店は営業していないみたいだけど、モエちゃんは確信に満ちた表情で頷いている。ミヤコちゃんは少し苦笑を浮かべて頷く。何というか...独特な名前だ。特に漢字四文字に振られたルビが印象的だ。
「確かに印象的で覚えやすい名前ですね。でも、何というか..."先生"?」
「ん~?"先生"に何か――」
「"イタタタ..."」
―――アヤネちゃんに続いて"先生"を見れば、何故か
「――"先生"、どうしたの~?」
「"あぁ、いや...ちょっと昔を思い出しちゃったというか...思い出したくないものを思い出しちゃったというか...と、兎に角ケガはしてないよ"」
「...?よく分かんないけど、大丈夫ならよかったよ~」
"先生"は右腕を抑え込んでいた手を離して大丈夫だと答える。多分店名を見て何か思うものがあったんだろうけど...掘り下げてはいけない気がする。
「...大丈夫そうですね。では、行きましょう。お店は閉まっていますが、いつでも出迎えられるように待っているとのことなので在宅の筈です」
「表にはドアもないから、横か裏手かな~?」
ミヤコちゃんに続いて横道に入れば、従業員用らしきドアが見える。特に表札は無いけど、生活感はあるから間違いなくここに住んでいるのだろう。
ミヤコちゃんがドアの傍のインターホンを鳴らして十数秒後―――
『――"月の少女"は』
「――"餅つきウサギ"」
―――インターホンのスピーカーからそんな問い掛けが聞こえ、ミヤコちゃんがすぐに答えると―――
「――いらっしゃい、ミヤコ。『ブラックマーケット』でも少し奥の方だったから迷わないか心配だったけど、杞憂だったわね。..."先生"と、『アビドス』からの娘達も居るわね。さぁ、入って」
「はい。――お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
「"お邪魔するよ"」
「お邪魔します」
「お邪魔するよ~」
―――ドアが開き、薄紫色の長髪から長い兎耳を伸ばした頭上に耳が弾丸の兎の顔を象る赤いヘイローを浮かべた娘がおじさん達を招き入れる―――
~甘味処『
side-"先生"
「mgmg...ん?あ、ミヤコ達じゃん。初めて見る顔も居るけど..."先生"も居るってことはそこの二人が『アビドス』の娘達かな?」
「サキとミユは居ないみたいですが..."先生"、『アビドス』の皆さん。ようこそいらっしゃいました」
「少し久しぶりね、ミヤコ、モエ。住所と座標は送ったけど、よく迷わないで来れたわね。"先生"と、『アビドス』の娘達もいらっしゃい」
イナバについて行き、一見床下点検口に見える扉を開けた先の地下へと降りると―――十二畳程の広い部屋にコンピュータ機器やディスプレイが並び、一角の壁一杯には『ブラックマーケット』らしき全体図に様々な書き込みや写真が貼られた大きなホワイトボードが据えられている。そして、部屋の真ん中に据えられた長テーブルには端末や筆記用具、地図らしきものが少し乱雑に置かれている。キーボードや機材が並ぶデスクに座りながら団子を食べていたリンゴが、その隣で監視カメラの映像を見ていたレイセンが、ホワイトボードの前で何か書き込んでいたセイランがそれぞれ私達に気付いて挨拶して来る。
「"おぉ..."」
「
「うへ、正に特殊部隊の秘密基地だね~」
「――改めて。ようこそ甘味処『
イナバはそう言って申し訳なさそうな表情を浮かべる。どうやら甘味処は活動資金を得る為の手段としても機能しているらしい。
「休みなら仕方ないし、気にしてないよー。...でも、手持ちの飴が切れちゃったから何か甘いものが欲しいなー」
「では、ココアを用意しましょう。他の皆さんは何か飲みたいものはありますか?」
「"じゃあ、コーヒーをお願いしようかな。ブラックで構わないよ"」
「私もコーヒーをお願いします」
「うへ、おじさんもコーヒーでいいよ~。砂糖だけは入れてほしいな~」
「皆さんと同じく、コーヒーをお願いします」
レイセンの問いに皆揃ってコーヒーを注文する。―――セリカとネイト救出の為にも情報は必要だ。それを聞いている途中で眠くなる訳にはいかない。皆同じ様な考えを持っていたみたいだ。
「分かりました。小隊長はどうしますか?」
「私もコーヒーでいいわ」
「了解しました。人数が人数なので少し時間がかかりますが、ご容赦ください」
レイセンは頷き、部屋の隅にある小さな台所に向かう。
「じゃあ、用意が終わるまで自己紹介でもしましょうか。好きな椅子に座って」
「"パイプ椅子だけど、この人数を受け入れられる数を用意していたんだね"」
「稀にこちらから他小隊の援軍を求めることもあるから、その備えよ」
見送ったイナバはそう言って長テーブルの周りに並ぶパイプ椅子を示す。小隊四人が活動する拠点としては椅子の用意がいい点が気になり、適当に椅子を見繕って座りながら聞いてみれば、どうやら『SRT』の他小隊の娘達を迎える時の備えらしい。少人数での作戦を主とする特殊部隊でも、複数部隊合同での作戦を行う事もあるのだろう。
「――改めて自己紹介を。『SRT特殊学園』三年生、"Кролик小隊"を率いる"小隊長"、コールサイン"Кролик1"『優曇華院イナバ』よ」
「同じく三年生、"Кролик小隊"の"スナイパー"、コールサイン"Кролик2"『槌持セイラン』よ。よろしく」
「三年生、"Кролик小隊"の"ポイントマン"、コールサイン"Кролик3"『餅喰リンゴ』だよ。よろしくー。今あっちで飲み物淹れてるのが"オペレーター"、コールサイン"Кролик4"『羽衣レイセン』だよ」
リンゴとセイランもイナバの両隣に座り、彼女に続いて自己紹介をし、リンゴが台所でコーヒーとココアを淹れているレイセンの背中を見ながら彼女を紹介する。
「自己紹介ありがとね~。おじさんは『アビドス高等学校』三年生、"廃校対策委員会"委員長『小鳥遊ホシノ』だよ~」
「同じく一年生、"廃校対策委員会"書記担当『奥空アヤネ』と言います。"Кролик小隊"の皆さん、よろしくお願いしますね」
ホシノとアヤネも自己紹介を返す。
「ホシノとアヤネね。こちらこそよろしく。...レイセンはもう少しかかりそうだから、少し雑談でもしましょうか。――"先生"、"RABBIT小隊"は上手く馴染んでる?」
「"寧ろ強力な戦力として大助かりだよ。ミヤコ達が居なかったら、『アビドス』での救援活動はもっと大変だったと思う"」
「"先生"の言う通り、ミヤコちゃん達には助けられてばかりだね~。今回の目的だって、ミヤコちゃん達が居なかったらそもそも思い付いていなかっただろうし、本当にありがたいね~」
「『シャーレ』――"先生"の指揮下に入るという、"連邦生徒会長"の采配に今は感謝しています。『アビドス』の皆さんの経験や戦闘は私達の糧になっていますし、寧ろ私達が『アビドス』の皆さんに感謝したいです」
イナバの問いにそう答えると、続いてホシノとミヤコはお互いに感謝の意を伝える。初対面の時はミヤコ達より
「そう...上手く馴染めていて良かった。先輩として、
「イナバってば、ミヤコ達が『シャーレ』に出向いちゃってからちょっと元気なかったんだよねー。一度『アビドス』に出向こうとか言ってたけど――
安心した笑みを浮かべるイナバを軽く茶化す様にリンゴが補足するも、困った様な表情を浮かべて愚痴を零す。
「――お待たせしました。どうぞ」
「"ありがとう、レイセン"」
「うへ、ありがとね~」
「ありがとうございます」
―――丁度レイセンがお盆に人数分のマグカップを乗せて戻って来て、各々マグカップを受け取る。
「ありがとうございます、レイセン先輩」
「来た来た!ありがとー、レイセン先輩!」
「サンキュー、レイセン。レイセンのコーヒーはインスタントでも不思議と美味しいんだよねー」
「ありがと、レイセン」
「レイセン、ありがとう。さぁ、貴女も座って」
「了解しました」
ミヤコ、イナバ達にもマグカップを渡したレイセンがテーブルにお盆を置いて空いている椅子に座ると―――イナバは真剣な表情を浮かべる。
「本題に入る前に確認するわ。――『アビドス高等学校』一年生である『黒見セリカ』、『水元ネイト』の二名が"鬼傑組"の手で誘拐された。これは確かな事実ね?」
「はい。間違いなく事実です」
「うへ、そんな大げさな噓を吐きに特殊部隊の下を訪ねたりしないよ」
イナバの確認にアヤネとホシノが肯定を示す。
「分かったわ。――まず、貴女達の口から誘拐に関わる出来事や情報を教えてくれるかしら」
「はい。――口頭でも説明しますが、こちらをどうぞ。拙いですが、できる限り纏めたつもりです」
「お、ありがたいねー。情報担当としては資料媒体があるだけでも分析のしやすさが変わってくるんだ」
アヤネがカバンからファイルを―――セリカとネイトが誘拐された時の状況や私達が取った行動について纏めた資料を差し出し、リンゴが快く受け取る。今日、アヤネの準備が少し遅かったのは渡した資料の確認をしていたのだろう。
「では、今回の誘拐事件について説明させていただきます――――」
資料を渡したアヤネが説明を始める。誘拐に気付いてスマホの位置情報を追って"カタカタヘルメット団"本拠地に連れ去られたと判断し、救出の為に攻撃したものの二人は居なかった事。ヤチエが誘拐犯を名乗り、私とホシノに取引を持ち掛けて来たものの決裂した事―――私やホシノも補足しながら知り得る事を全て話した。"Кролик小隊"の四人は皆真剣に聞いてくれて、時々メモも取っていた。
「――――以上が、私達が取った行動と現状知り得ることです」
「ありがとう、よく分かったわ」
「いやーありがとね。...最近の動きも鑑みれば――やっぱり、遂に野心実現に向けて動き出した感じかなーコレ」
―――説明を終えると、イナバは真剣な表情のまま礼を述べ、その隣でリンゴが納得した様な、困った様な表情を浮かべる。
「――野心?確かにアイツはそういうことを考えていそうな感じだったけど」
「私達も貴女達が知っている情報以上に深く探れていないから、持っている情報や最近の動向からの推測になるけど。――"鬼傑組"は、『ブラックマーケット』の外に
理由までは分からないけど、『アビドス』を狙ったのはそこが"鬼傑組"に――"組長"ヤチエにとって必要なのだと思うわ。誘拐を行う前に"カタカタヘルメット団"をけしかけて追い出しを図っていたみたいだし、それが失敗したから誘拐からの脅迫に切り替えたみたいね。――本当、あの"組長"らしくない直接的手段だわ」
「らしくない、とは?」
「今までは"鬼傑組"の傘下組織や各校の水面下に潜む犯罪者を通す形で犯罪ネットワークを構築して活動しているだけに留まっていた感じだったんだけど――前の"連邦生徒会長"が
イナバの説明を継ぐ形でリンゴがアヤネの質問にそう答えて手元の別資料を私達の方に動かす。―――どうやら"鬼傑組"の目立つ活動を纏めた時系列表の様で、私がキヴォトスに来る前―――前"連邦生徒会長"
「うっわー...野砲、戦車までこんなに...
「その可能性は否定できないわ。ヤチエは本来策謀家気質で、如何に労力を減らして目的を達成するか考えるようヤツよ。
そんな彼女が、戦争という
「"――今が賭け時、ってことだね。その情報と、セリカとネイトの誘拐を合わせて考えれば...誘拐は次善の策に見えるね。生徒誘拐で精神的揺さぶりを仕掛けてホシノ達が『アビドス』復興を諦めれば暴力に訴えなくても『アビドス』を手に入れられる"」
「でも、それはおじさんと"先生"が脅しには屈しないって拒否したから...ドラマとか漫画だと、こういうのって見せしめに人質を害する展開になるよね。でも...」
「えぇ。『ブラックマーケット』の法秩序を考えれば他校自地区で生徒誘拐を行うのは"連邦生徒会"の介入を受けかねない危険な犯罪よ。マーケット
私がヤチエなら――誘拐からの脅迫が失敗した時点で解放して証拠隠滅に走るわ。でも、実際のヤチエはまだ自身の手元に誘拐した生徒二人を収めている。彼女の策では、まだ二人を利用する理由があるのかもしれないわね」
ホシノの言葉にイナバは頷いてそう推測を挙げる。
「でしたら、やはり一刻も早くセリカさんとネイトさんの救出を――」
「――気持ちは分かるけど、そのまま"鬼傑組"の拠点に突っ込むのはリスクが大きすぎるわ。確度の高い情報も少ないし、奇襲になったとしても二人がヤチエの手元にある以上、報復で危害を加えられてしまう可能性もあるわ」
ミヤコの提案をイナバは否定する。確かに、ヤチエの狙いが分からない以上短絡的な行動は危険だろう。イナバ達も深く探れていないとの事だし、情報は大きなアドバンテージになる。
「でも、放置してればその分状況はマズくなるだろうし、何も行動しない訳にもいかないね。――でもまずは、"鬼傑組"の内偵を兼ねて二人の安否確認を提案するよ」
「悪くない考えだけど――"鬼傑組"はこれまでの活動もあって結構ピリピリしてるし、武装も他組織より強力よ。
リンゴが軽く手を挙げて提案するけど、セイランが懸念を挙げる。"Кролик小隊"の戦闘は見た事が無いけど、"RABBIT小隊"より経験豊富な彼女達でも難しいと思う程に今の"鬼傑組"は強力らしい。―――確かに、野砲や戦車と言った重火器を装備している所に少人数で潜り込むのは素人目線でも危険だと感じる。
「確かに危険だけど――今はその危険に身を投じるべきよ。生徒を誘拐された学校の娘達が助けを求めに来た。なら――『SRT』として正義を成さねばならない」
「今回の件はマーケット
「イナバがやるって言うならやろっかー。今までは動きたくても動けない場面が多かったし、久しぶりに動けそうだね」
「...
イナバの言葉を聞いて小隊の皆が頷く。彼女達の目には確かな決意が宿っていた。
「イナバ先輩...!」
「ミヤコってば相変わらずだねー。『SRT』入学を志した切っ掛けになった憧れの人だから分からなくもないんだけど」
そのやり取りを見て目を輝かせるミヤコを見てモエがやれやれと肩を竦める。普段は感情の起伏が薄いミヤコが目に見えて嬉しそうだと解る程に、"Кролик小隊"は―――イナバは憧れの存在らしい。
「うへ、なるほどね~。いつかの歓迎会で聞いたミヤコちゃんの憧れの人って、イナバちゃんのことだったんだね~」
「そうなんだよねー。私は『SRT』で取り扱う重火器を自分でも使いたくて入学したけど...あんな様子を見てるとミヤコはイナバ先輩の影響を強く受けてるって感じるねー」
「"憧れを持つことはいいことだよ。目的があれば、障害や課題への取り組みにもよりやる気が出るからね"」
モエの言葉にそう返す。―――目的を、憧れを持って活動する事は大事だ。すべき事を見出せず、惰性で流されて生きて行く在り方ではいつか自分を見失ってしまう。ミヤコがイナバに対して持つ憧れは、きっと彼女の成長の原動力になるだろう。
―――閑話休題。
「――私達"Кролик小隊"は生徒誘拐事件に関して全面的に『シャーレ』と『アビドス』に協力する。最初に行うべきこととして、"鬼傑組"への内偵及び生徒二名の安否確認を実施するわ」
「とは言っても、まずは作戦会議からだから実行は明日以降になっちゃうと思うけど」
「それでもありがたいね~。――『アビドス』を、"廃校対策委員会"を代表して、『SRT』"Кролик小隊"の協力に感謝するよ」
「"Кролик小隊"の皆さん。本当に、ありがとうございます!」
「イナバ先輩、本当にありがとうございます...!」
「いやー、先輩方が協力してくれて嬉しいよ。これで二人も...!」
「"イナバ、"Кролик小隊"の皆。協力してくれてありがとう!(...そして、この場には居ないけど...ヒナ、レミリア。君達のアドバイスも役に立ったよ。――ありがとう)"」
イナバの宣言に対し、ホシノ達に続いてお礼を言って頭を下げる。―――この場には居ないけど、"連邦生徒会"を動かせるかもしれないとアドバイスをくれたヒナとレミリアにも心の中で感謝を伝える。
「どういたしまして。――さて。リンゴが言った通り、早速作戦会議を行いましょうか。ミヤコ達"RABBIT小隊"はそのまま『アビドス』に協力して。でも、状況次第では救援を求める可能性もあるから...ちゃんと
「はい、もちろんです」
「ならいいわ。――ホシノ達とは『モモトーク』IDと電話番号を交換しましょうか。今回の件や作戦行動では殆ど使わないプライベート用だけど...こういう繋がりも、意外な所で役に立つものだから」
「うへ、何から何までありがとね~」
イナバの提案で、私も含めホシノ達は『モモトーク』IDと電話番号を交換する。
「――よし、交換し終わったわね。リンゴ達は作戦会議の準備を。私は"先生"、ホシノ達を送ってくるわ」
「了解よ」
「はいはい、了解ー」
「了解しました」
「それじゃあ、玄関まで送るわ」
「"Кролик小隊"の皆、ありがとね~」
イナバの案内で地下から地上の店舗へと上がる―――
~ブラックマーケット 外郭地区~
side-ホシノ
「"――"Кролик小隊"が動いてくれてよかったね"」
「本当、ミヤコちゃん達には感謝だね~。おじさん達だけじゃもっと大変だった筈だよ」
「私達は『SRT』内の繋がりを頼っただけだよ。私達は先輩達に比べればヒヨッコだし、確実に二人を助けるためにも打てる手は打たなきゃだしね」
『
「...イナバ先輩達の作戦に関われないのは少し歯痒いですが、改めて『アビドス』への協力を任されたのでできることをします」
「うへ、本当に憧れなんだね~。...さて、この辺りの筈だけど...」
歩きながら辺りを見回す。"Кролик小隊"との接触を終えて、『モモトーク』でノノミちゃん達に"Кролик小隊"の協力を得られた事と、
「――あ、居た居た!おーい!」
「――ん、ホシノ先輩達が戻って来た」
「あの方々が...」
―――モエちゃんが声をあげて手を振る先を見れば、ちょっとした空き地に集まっているシロコちゃん達の中に見た事が無い学校の娘と―――
「――おぉ、戻ってきたか。まだ概要しか聞いておらんが、首尾は上々のようじゃな」
「――うへ、何で一緒に?」
「マミゾウさんが何故ここに...?」
―――私達を見て微笑む私服姿のマミゾウさんが居た。不思議に思いつつノノミちゃん達の下に合流する。
「――"先生"、ホシノ達。お疲れさん」
「"モコウ達もお疲れ様。...マミゾウが何故ここに居るのかも気になるけど、その娘は?"」
「『トリニティ総合学園』二年生、『阿慈谷ヒフミ』と言います!
「"ヒフミだね。私は"連邦捜査部"『シャーレ』の顧問。皆からは"先生"って呼ばれているよ。よろしくね"」
「へ~、『トリニティ』の娘だったんだね。おじさんは『アビドス』三年生、『小鳥遊ホシノ』だよ。よろしくね~、ヒフミちゃん」
「『シャーレ』の"先生"と、ホシノさんですね...よろしくお願いします!」
"先生"と共にヒフミちゃんと自己紹介を交わす。どうやら一人で『ブラックマーケット』に来て襲われかけた所をモコウ先輩達に助けられたらしい。
「しかし、まさか
「あはは...どうしても『ペロロ』様のグッズが欲しかったんです。でも、モコウさん達が一緒に来てくれたおかげで手に入れられましたし、お礼として『アビドス』の皆さんのお手伝いをしますから!」
「モコウ先輩、ヒフミちゃんに誘拐のことを話したんですか?」
「どうしても恩返ししたいって聞かなくてな...あまり他校のヤツは巻き込みたくないが、ミヤコ達も協力してる時点で今更だしな」
マミゾウさんの言葉にヒフミちゃんはそう答え、アヤネちゃんがヒフミちゃんの言葉で気になった所があったのかモコウ先輩に尋ねると、先輩は頭を掻きながらそう答える。どうやらヒフミちゃんは真面目で義理堅い娘の様だ。
「――で、"Кролик小隊"との話し合いの結果はどうだったんだ?協力してくれるってことだけは聞いたが」
「はい。情報提供の結果――――」
モコウ先輩の問いにアヤネちゃんが頷き、"Кролик小隊"の全面的な協力と、まずは"Кролик小隊"が"鬼傑組"の偵察と二人の安否確認を行う事を説明する。
「――――以上となります。"Кролик小隊"の皆さんの作戦次第になりますが、現状私達は待機となりますね」
「協力は得られたか...待機になるのは少しもどかしいが」
「でも、安否確認は大事ですね~。もしかしたら違う場所に移されていたりする可能性もありますから」
「あり得る話じゃな。"鬼傑組"のヤチエは頭が回るようじゃし、そういう絡め手で翻弄してくる可能性はある」
「...おじさん気になったんだけどさ~。マミゾウさんはどうしてノノミちゃん達と一緒に居るの?」
おじさん達の会話に混ざるマミゾウさんが気になって尋ねる。
「おぉ、言いそびれておったな。――実は、『カイザーローン』内の調査を行ったら秘密裏に横領してその金を"鬼傑組"に流しておる輩がおってな。流れを追ったら最終的に
マミゾウさんは頭を搔きながら答える。マミゾウさんもマミゾウさんで"鬼傑組"が絡む事件に巻き込まれたらしい。その調査を行ったはいいものの、証拠を得られず諦めているらしい。情報屋が依頼を拒否する程に"鬼傑組"の影響力は大きいみたいだ。
「そっかー。マミゾウさんもマミゾウさんで大変みたいだね。本当、待つしかないのがもどかしいよ」
「"Кролик小隊"を――イナバ先輩を信じるしかありませんね。しかし、情報では"鬼傑組"の戦力規模は強大で、隙を作れなければ―――」
「――ん、提案」
―――ふと、シロコちゃんが手を挙げる。その目はキラキラと輝いていて、妙に自信満々な表情を浮かべている。何だろう、嫌な予感がする。
「"Кролик小隊"の潜入は、"鬼傑組"に隙を作ることができれば成功率はあがる。――マミゾウさん、証拠としては何が欲しい?」
「ん?そうじゃな...
「ん、ありがとう。――犯罪取引の証拠になり得るものに手を出されれば"鬼傑組"も少なからず動揺して、証拠隠滅とかで人を割く筈」
「あり得る影響だが...マミゾウさんが求める出納帳をどうやって手に入れるんだ?
「サキの言う通り、交渉して貰えるものじゃない。――でも、
「...シロコお前...」
「し、シロコちゃんまさか...!」
「...予想はついちゃうんだけど、おじさんは敢えて聞くよ。――どうするつもりかな~?」
「え?え??」
ヒフミちゃんが戸惑っている中、おじさん達はシロコちゃんが言わんとする事を察してしまうけど、一応続きを促す―――
―――自信満々の表情でカバンから覆面を取り出したシロコちゃんの宣言が『ブラックマーケット』の空に吸い込まれた。
ということで"Кролик小隊"登場。そして次回、例 の ア レ です。