Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~ブラックマーケット金融街~
side-"先生"
「"あれが『ブラックマーケット』での取引量随一の
カフェのテラス席から一望出来る向かい側の大きなビル―――『ブラックマーケット』で最も取引数が多いと言う
「建物の規模は『トリニティ』にある銀行と比べると少し小さいですね...あ、あの...本当に、やるんですか?」
「ん、勿論。――やると心の中で決めた時、行動はスデに終わっている。...ヒフミの覆面は昨日のたい焼きの紙袋で代用になっちゃうのだけは残念」
「あぅ...決行前提で話が進んでる...?!」
「やると決めたシロコは止まらないぞ、ヒフミ。嫌なら昨日さっさと帰ってりゃよかったのに」
「うぅ...で、でも昨日助けられて恩を返さないのはよくないし...うぅ~!」
やる気満々のシロコの言葉を受けてヒフミは顔を青くするけど、半ば諦めた様な、或いはヤケクソの様な表情のモコウに諭されて唸りながら頭を抱える。
―――昨日のシロコの『銀行を襲う』宣言から、トントン拍子に話は進んでしまった。セリカとネイト誘拐の事を知ったヒフミが『助けて貰った恩返しです!』と私達の活動を手伝うべく一泊したものの、結果としてシロコ発案の銀行強盗に巻き込まれる事となってしまった。
―――『ん、今回の目標設定の場合のチャートもある』
―――『なんであるんだよ...こんなに綿密でリスク回避も徹底してるんだよ...どれだけ銀行強盗したいんだよ...』
―――『ごめんなさい、サキちゃん...考えるだけならって黙認していたんですけど、まさか実行する状況になってしまうなんて...』
―――暇さえあれば詰めていたシロコ謹製の銀行強盗チャートのおかげであっさり作戦内容は決まってしまったし。
―――『まさか後輩共が犯罪者に片足を突っ込むことになろうとは...じゃが、マーケット
―――マミゾウは天を仰ぎながらも銀行強盗実行を認め。
―――『...
―――受け入れたくない、困惑した表情に合わせる様に頭の兎耳も
―――必要な物の準備を終え、今日を―――銀行強盗決行日を
「セリカちゃんとネイトちゃんの為とは言え、まさかシロコちゃんが常日頃やりたいって言い続けていた銀行強盗に加担することになっちゃうなんて...うへぇ、おじさんビックリだよ~」
「ひぃん...寧ろ二人の為だって言い聞かせないとやれないよぉ。
「ん、
「...金輪際やらないと言わない辺り、正に筋金入りですね」
困った様な表情を浮かべるユメの言葉に対するシロコの返事を聞いて、ミヤコも目に見えて困った様に眉を曲げて苦笑する。
「"――それじゃあ、今回の作戦について確認しようか"」
コーヒーを飲み干し、そう音頭を取ると皆真剣な表情を浮かべる。―――これからやる事が銀行強盗とは言え、成功すればセリカとネイト救出に一歩近付ける。
「"――今回私達はあの
「ん、了解」
作戦の概要を改めて伝え、シロコに促すと銀行内の概略図と銀行周辺の地図(ミヤコ経由で"Кролик小隊"から貰ったものだ)を広げる。
「――まず、メンバーを"強盗班"と"別働班"に分ける。"強盗班"は"先生"とアロナがシステムを制圧した後銀行内に突入して強盗を行う。覆面は忘れないで。あくまで出納帳や取引記録が目的だから、お金を差し出されても受け取らないこと。貰ったら、発信機の類は必ず確認して。あれだけ大きいと強盗犯への対処手段を講じている筈だから。
"強盗班"は"先生"指揮、アヤネ補佐の下、実行役のモコウ先輩、ユメ先輩、ホシノ先輩、ノノミ、アヤ、ヒフミ、そして私で構成する。アヤには動画の撮影もお願いする。今後の資料になるし、"別働班"への合図にもなるから」
「了解です。...今後がないことを祈りますよ」
アヤはシロコの言葉に頷きながら頭を掻く。
「また、『ブラックステートバンキング』は"マーケットガード"が直接警備を請け負っているみたいだから、ホシノ先輩とモコウ先輩は突入したらまず警備の制圧をお願いする」
「うへ、了解だよ~」
「分かった。...室内戦だからチョークは絞っておかないとな」
シロコから警備制圧を任された二人は頷く。
「次に、"別働班"はミヤコ達"RABBIT小隊"で構成する。勿論、覆面は忘れずに。"別働班"はアヤが撮影する映像を見て強盗開始を合図にこの裏口から侵入。電源室制圧と爆弾設置を行ってこのポイントまで離脱。設置箇所は任せるけど、あくまで爆破は逃走の為の陽動だってことに留意して。流石に建物の爆破解体はマズい」
「了解しました。持ち込む爆薬は気を引ける最小限にします」
「了解だ。ついでにサーバールームも近いから制圧するか。もしかしたらデータが漁れるかもしれない」
「くひひ...まさかまた爆破の機会がくるなんてね」
"別働班"の説明にミヤコ達が頷く。
「強盗が終わったら、十中八九"マーケットガード"が外で展開するだろうからノノミの弾幕で制圧しつつ煙幕を展開。このマンホールから逃げる。その時に、ミヤコ達が仕掛けた爆弾を起爆して更なる混乱を誘って追撃を阻止する。マンホールから下水道に入ったら、北側に向かえばマーケット外に出られる。――以上が作戦。質問は?」
「はーい☆...チーム名や各人のコールサインはどうしますか?マミゾウさんからできる限り身元がバレる要素は減らすようにと言われていますし、考えておいた方がいいと思います☆」
説明を終えたシロコが質疑応答を促すと、ノノミが質問を挙げる。――確かに、銀行強盗を行えば沢山の人が姿を見て、やり取りを聞く事になる。覆面で顔は隠せても、各人の呼び方が普段通りでは逃げても追求される可能性がある。ノノミの言う通り、偽装の為のチーム名やコールサインは必要だろう。
「"じゃあ、チーム名と各人のコールサインを考えよう。"Кролик小隊"も待機中だから長い時間は取れないけど"」
「はーい!私チーム名思い付いたよ!ズバリ――――」
「"――――これでコールサインも全員決まったね。それじゃあ、他に質問は?"」
質問を促すも、沈黙が返って来る。シロコの綿密な銀行強盗チャートのおかげで補足も再確認も必要無いおかげだ。
「"無いようだね。――私から、改めて皆に言っておくよ。今回、私達は銀行強盗という犯罪行為を犯すことになる。でも、これはセリカとネイトを救出する為の一歩であり、幸いここ『ブラックマーケット』では"マーケットガード"に捕まらなければどうとでもなる性質を持っている。――目標達成以外の余計なことをせず、迅速に実行し、迅速に離脱する。これを徹底して欲しい"」
そう訓示を述べて皆を見回す。シロコは早くやりたいと言わんばかりに目をキラキラさせてフンスと鼻息荒くしているけど、他の皆は真剣だ。勿論、シロコも目的は理解しているだろうけど...のめり込み過ぎない様に見ておかないと。
―――決行を宣言し、私含め各々がポケットやカバンから覆面を取り出す―――
~『ブラックステートバンキング』裏側~
side-ミヤコ
「モe..."ハメツウサギ"、こちら"イヤシウサギ"。"強盗班"の動きはどうですか?」
『今のところ"Mr.S"と"すーぱーA"がシステム掌握中かな?行内に特段変化なーし』
インカムでモエさんに状況を確認すると、そう返って来る。私達が配置に着いた事は既に伝えてある。後は"強盗班"の突入を待つだけだ。
「..."ツンデレウサギ"、爆弾は大丈夫ですね?」
「あぁ、装置も爆薬も問題ない。リモコンは私だけじゃなく"ハメツウサギ"も予備で持っているしな。...うっかり押されやしないかが怖いところだが」
『大丈夫だって!...この強盗は成功させなきゃイナバ先輩達も動けないし、少し真面目にやるよ』
サキさんがモエさんに起爆用リモコンを持たせている事に不安を漏らすけど、モエさんは珍しく真面目な口調で言い返す。―――"先生"も言っていた通り、セリカさん、ネイトさんを救出する為の大きな一歩になるのだから、流石にモエさんもふざけるつもりは無い様だ。
「...ミy..."イヤシウサギ"、爆弾は何処に設置するの?」
「そうですね...やはり、電源室とサーバールームにしまょう。幸い近い距離に両方ともありますし、爆破して損害を与えられれば私達が離脱した後も混乱は続く筈です。ミy..."ゴミバコウサギ"、頼りにしていますよ。サーバールームは流石に警備が留まるでしょうから、その
「うん、頑張る...!」
『――お、行内のディスプレイで"すーぱーA"が大量発生して荒ぶり始めた。潜入準備を』
「了解しました。――行きましょう」
「了解だ」
「了解...!」
"強盗班"がそろそろ動き出す様で、モエさんの通信にそう答えて従業員出入口へと歩き出す―――
~『ブラックステートバンキング』ホール~
side-アヤ
「ぜ、全員その場に伏せて!!」
「あ、あはは...全員、動かないでくださいね...」
「ん、全員動かないで!」
「動かないでその場で伏せてください!抵抗するなら――この弾が皆さんの眉間に飛び込みますよ!」
行内のディスプレイでアロナさんが大量発生して荒ぶる状況に混乱している中でガラスドアを割って突入し、"ドリーマー"ユメさんと"ファウスト"ヒフミさん、"ゴートーオオカミ"シロコさんが銃を構えて客や行員をその場で伏せさせる。私は天井に[
「...!」
「「グエッ?!」」
「おらっ!」
「「ギャッ?!」」
ホールに立つ警備の"マーケットガード"達が即座に気付くも、"フェニックス"モコウさんと"リトルバード"ホシノさんが銃床で殴りつけてあっという間に制圧していき、ホシノさんは警備室へと突っ込んで行く。
<「「グワーッ?!」」
<「「ギャーッ?!」」
「"パパラッチ"、端末の処理を」
「了解です。じゃあ、大人しく端末は全部出してくださいねー」
シロコさんに自身のコールサインを呼ばれ、警備室から聞こえて来るホシノさんの一方的な制圧の音を聞き流しながら傍に置かれていた大きな花瓶から花を抜いて花瓶を持ち、伏せている客や行員からスマホやタブレット、携帯ゲーム機等の端末を奪って中に入れていく。
「......おやおや、その手はなんですか?鉛弾を食らいたくなければ端末は全部出してくださいね」
「ひぃっ...な、なんで装置が...」
"すーぱーA"アロナさんのシステム侵入で通報装置も使えない筈だ。受付カウンターで伏せている行員の一人に近付けば、机の下に手を入れたまま困惑した表情を浮かべている辺り、実際装置が機能していないのだろう。―――これで、"マーケットガード"の展開が遅れる。
「うへへ、警備は全部鎮圧したよ~。――それじゃあ、リーダー"ファウスト"、指示を願う!」
「うぇっ?!わ、私がリーダーですか?!」
「ん、あまり名前は出さないで。リーダーはそういうの嫌うんだから」
「...おっとと、おじさんうっかりしてたよ~。ごめんねリーダー。じゃあ、改めて指示をお願いするよ~」
端末の始末を終えたとほぼ同時に、モコウさん共々警備を完全制圧したホシノさんがヒフミさんをリーダーと仰ぐと、彼女は紙袋に開けた目抜き穴から覗く瞳を点にして驚く。当然だろう―――グループ名ややる事は決めたものの、リーダーは誰も決めなかったのだから。
しかし、ヒフミさんには悪いものの上手い偽装の仕方だ。ヒフミさんは現状今回限りの協力者であり、『アビドス』とはほぼ無関係と言える。仮に追求されても、ヒフミさんが『トリニティ』生であると分かれば早々手出しは出来ない筈だ。
「...うぅ...ごめんなさい、ナギサ様、テンシ様...わ、分かりました!では、早くブツを頂戴しましょう!この銀行の責任者は誰ですか?」
ヒフミさんは伏せている客や行員達に呼び掛けて見回すも、沈黙が返って来る。
「おら、リーダーがお呼びだぞ。答えないってんなら...こんな風に、散弾のペレット一粒残さずお前らの頭に――」
「じ、自分でありますぅ!!」
モコウさんが[
「素直に名乗り出りゃいいものを。...さて、この銀行の記録類は何処にある?」
「あ、あちらの鍵付きキャビネットの中です...し、しかし鍵は...」
「開けられないってか?...この状況でよくそんな言葉をほざけるな、えぇ?」
モコウさんの問に対して店長は震えた声と手で奥に並ぶキャビネットの一つを示すものの、鍵について言い淀む。やはり、早々開け渡せるものでは無いのだろう。抵抗を見たモコウさんは視線を鋭くして店長を見下ろす。
「ひっ...お、お金でしたら幾らでも差し上げますから...!」
「マーケットの汚い金なんか要らないんだよ。私達"覆面水着団"が欲しいのはそんな金よりもっと価値のある
「――普段ニコニコ営業スマイルしてるだろうその
―――左手で店長の襟元を掴んで持ち上げ、右手に持つ[
「モk..."フェニックス"さん、すごい様になっていますね」
「見た目は不良っぽいところはありますからねぇ。正にハマり役ですね。...多分、本人はこういうのやりたくないでしょうけど」
従業員が抵抗しないように睨みを効かせる私の傍でまだ生きているノートパソコンを調べている"エルフメガネ"アヤネさんの呟きにそう答える。
モコウさんには悪いけど、不良みたいな印象があるおかげで随分と様になっている脅しだ。これには大人も堪らず震え上がるだろう。
「...やはり、データ上で記録は残していませんね。ミy..."イヤシウサギ"ちゃん達がサーバールームも制圧している筈ですから、そちらの結果も気になる所ですが...」
「電子データは嵩張りませんが、高度な技術や技能があれば抜き取りも改竄もできますからねぇ。紙ならハッキングなんてできませんし、最悪焼却抹消できますから」
調べ終えて成果無しとため息を吐くアヤネさんにそう答える。データか紙かは状況による。こういった
―――閑話休題。
「ひぃぃ...!と、取引記録なんて出したら...お金は幾らでもあげますからどうかぁ!!」
「往生際が悪いなぁ、えぇ?!お前が選べるのは鍵を渡すか開けるか――この場で散弾顔面整形を受けるかだ!!」
尚も抵抗する店長の眉間に銃口をグリグリと押し付けてモコウさんは声を荒げる。
「わ、分かりました!!こ、こちらが鍵です!!」
「最初から素直に出せばいいものを。後はそこで――寝とけ!」
「グエッ?!」
「ん、流石"フェニックス"。すごく様になってた」
堪らず観念した店長がポケットから出した鍵束を受け取ると、モコウさんは銃床で殴り付けて叩きつける様に店長を気絶させてキャビネットへ向かう。それを確認したシロコさんがカバンを持ってついて行き―――
―――行内の電灯が消え、赤い非常灯が代わって行内を照らす。どうやら電源室の制圧が終わった様だ。
「"..."ウサギ"達が
「あぁ、分かった。...これか、取引系の記録は」
「ん、流石に多いね...とりあえず、直近五年分を持っていこう」
"シッテムの箱"を見ている"Mr.S""先生"がミヤコさん達が作戦を終えた事を伝え、答えたモコウさんがシロコさんと共に鍵を開けたキャビネットの中を懐中電灯で照らしながら書類を次々取り出してカバンに入れていく。
「――よし、こんなものだろう。リーダー、ブツは手に入れたぞ!」
「は、はい!じゃあ、早く逃げましょう!」
「うへぇ、外はもう"マーケットガード"が展開し始めてるね~。仕事が早いや。じゃあノn..."クリスティーナ"ちゃん、弾幕任せるよ~」
「は~い☆"クリスティーナ"にお任せ、だお☆」
目標達成を確認したホシノさんが外を見て"マーケットガード"が展開し始めた事を確認し、"クリスティーナ"ノノミさんがにこやかに答えて[
「ん、私もドローンはいつでも飛ばせる。弾頭もしっかり発煙弾を装填済」
「"――よし、"ウサギ"達も離脱。合図を待ってるみたいだ。さぁ、皆逃げるよ!帰るまでが遠足だ!"」
"先生"の号令一下、足早に皆銀行の外へと出て行く。
「...さて、皆さんにはもう暫く伏せていることをオススメしておきますよ。
最後になった私は伏せている客や従業員にそう言い残してから銀行を出て―――
―――黒塗りの兵員輸送車やフル装備の"マーケットガード"部隊が半包囲で展開して投降を呼びかける様子を見回す。
「シールド多数、しかもライフルマン共の[
「"正面突破なんて到底無理だね。――そのつもりはないけど。"クリスティーナ"!"」
「は~い☆」
"先生"がノノミさんに指示を出すと、彼女は[
「――発煙弾発射!」
―――すかさずシロコさんがバックパックからドローンを展開してポッドからロケット弾を全弾撃ち出して広域に煙幕を展開する。
「――マンホール開けたよ~。それじゃお先に~」
「"慌てないで、一人ずつ丁寧に素早く降りるんだ"」
―――ほぼ同時にホシノさんがマンホールの蓋を開けてスルリと下水道へと降りる。そこからモコウさん、ユメさんと次々降りて行き―――
「"――一応気を付けてね。撮影中の画面が下水道に降りたことを確認した瞬間起爆するから"」
「了解です」
―――弾幕の制圧を終えて下水道に降りたノノミさんの後に続く"先生"の注意に頷き、続いて降りて行ったのを確認して私も梯子を掴んで降り始め―――
―――マンホールの蓋を閉める瞬間、爆発音と振動が伝わって来た。
「......銀行強盗は成功したようです。......はい、ヒフミさんは『アビドス』生共々捕まっていません。......了解しました。我々も離脱します。――任務終了、帰投しましょう」
「「了解」」
「...しかし、素直にこのまま報告していいのかどうか...我が"総長"は兎も角、ナギサ様が聞いたら...」
~"鬼傑組"拠点~
side-イナバ
「――なぁ、金融街での騒ぎの話聞いたか?」
「あぁ、『ブラックステートバンキング』で強盗だってな。しかも金じゃなくて取引記録を奪ってったって話らしいな。犯人がマーケットの中の人間か外の人間かもまだ分からないらしい」
「おかげで
「まぁ、私ら下っ端組員としてはもうしばらくのんびりできそうだからいいけどな。間近になってる
「そうだなぁ...」
「......」
―――組員二人がそんな会話を交わしながら傍を通り過ぎたのを確認し、前進する。"Кролик4"がオペレートの傍ら"鬼傑組"拠点内のシステムに侵入して目標二名の居場所を探しているけど、こちらも分散して単独行動でより特定を早める事を図っている。
―――『アビドス』のホシノ達と共にミヤコ達が敢行した銀行強盗の影響はすぐに現れた。結構な数の組織が『ブラックステートバンキング』で取引を行っていたのだろう。"鬼傑組"以外にも多くの組織が
おかげで私達の侵入はまだ気付かれていない。今後、これ程のチャンスは得られないだろう。今の内に内情把握と、
「...(けど...重火器を多数保有できるだけあってかなり広い。大事なものは奥に仕舞い込むのが定石だからまだまだ先の筈だけど...これまであまり内部潜入ができなかったのが痛いわね)」
―――"鬼傑組"拠点は嘗て工場だったらしい建物を活用した拠点だけあって広く複雑な構造だ。これまでは情報収集と活動監視に徹していたせいで内部の把握はあまり出来ていない為、どうしても慎重になってしまう。
―――ピピッ!
『――こちら”Кролик4"。監視システムのハッキングにより
「...確認したわ。これは...私が一番近いわね。よくやったわ。"Кролик2"、"Кролик3"も合流して」
『"Кролик2"了解』
『"Кролик3"、了解だよー。今資料室でちょっと情報漁ってるから少し遅れるかもだけど』
―――そこに、"
~ブラックマーケット "マーケットガード"本部~
side-??
「...ふむ。強盗犯共の足取りはそれ以上は掴めぬ、と」
『も、申し訳ございません...煙幕展開から逃走に入ったことは察せましたが、直後に銀行裏手で爆発が起きたのでそちらにも人手を割かざるを得ず...』
「構わぬ。調査は適当に切り上げて暴力組織共の監視の方に人を回せ。連中取引記録を奪われたことと犯人不明が相俟って疑心暗鬼でピリピリしておる。――
『り、了解しました...』
『ブラックステートバンキング』で起きた銀行強盗の鎮圧を行っていた部隊の隊長との通信を切る。
「――よろしかったのですか?マーケット随一の闇銀行での強盗を鎮圧、犯人逮捕ができなかったとなれば"保安部長"の名に傷が付くのでは?」
「確かに影響は大きかったが、その程度で儂の実績と権威は揺らがぬ。それに――強盗鎮圧が成功しようが失敗しようが構わぬ件故に二線級の部隊を回したからな。どう結果が転んでも
我が"秘書"の問に鼻を鳴らしながら答える。―――銀行強盗の発生は想定外だったが、寧ろ"鬼傑組"を動かせる圧力になると判断して
「現に、"鬼傑組"は火消しに多くの人員を割きつつも
「"鬼傑組"絡みなら好きに行動させておけ。
"秘書"の言葉にそう返す。普段であれば"連邦生徒会"が送り込んで来たあの『SRT』の"Кролик小隊"―――
「
「狙っていようがいまいが、そもそも『アビドス』を狙っているのであれば止めねばならぬ。――全く、『アビドス』という滅びかけの学校にすら手を出していたとは思わなんだ。...いや、滅びかけだからこそ
"秘書"にそう答えながらスマホを取り出す。
―――"鬼傑組"が『アビドス』を伺う素振りを見せた頃に狙いを知ろうと軽く探りを入れた結果、まさか
「――つくづく、
そう呟きながら画面を弄ってある連絡先へと繋ぐ。―――"鬼傑組"の野望を阻止するには『アビドス』と『シャーレ』では手が足りない。
『――もしもし』
「――あぁ、儂だ。久しいのぉ『マコト』。
『相も変わらず毎日鎮圧活動中だ。――貴女が居たらもう少しマシになっていたと思うんだがな』
「またそれか。すべきことはやって身を退いたんじゃ。押し付ける形にはなったが、あの性格なら受け入れたであろうしな」
『だがあれはあまりにも...いや、今更だな。――で、"
通話先の
「うむ。――『アビドス高等学校』、知っておるな?」
『あぁ。膨大な借金を抱えた、住人人口も生徒数も少ない滅びかけの学校。つい最近、"風紀委員会"が危うく学校間問題に発展しかねない行動を起こしてな。そのおかげで"鬼傑組"が妙な動きをしていることに気付けたが...多忙過ぎるのも考えものだな、全く』
「ほぅ、接触しておるなら話は早い。――『アビドス』か『シャーレ』から協力要請があったら、是非とも全面的に協力してやって欲しい。『シャーレ』も居るが、それでも今直面しておる事態の解決には手が足りぬ可能性がある」
『――何故協力を?学校間問題を起こしかけた償いはあるが、そこまでする理由は――』
―――そう伝えた瞬間、向こうの雰囲気が変わったのを感じた。
という事で、銀行強盗でした。やっぱりアビドス編をやるなら避けられない(確信)
さて次回から終盤―――状況が大きく動き出します。