Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『アビドス』砂漠 市街地跡の廃ビル~
side-ネイト
「...まだ夜は明けそうにないわね...」
「見えているのが満天の星空なだけありがてぇな。時計なんてねぇから何時かも分からねぇのは辛いが...それでも助けは来る筈だ。絶対にな...!」
毛布の代わり...とも言えない、大きいけどボロボロで薄い布切れに二人で包まりながらガラスが殆ど残っていない窓から夜空を見上げて言ちると、ネイトは変わらず助けは来ると言って励ましてくれる。
―――夜は未だ明けない。ここに移動する際にオートマタに追われはしたけど、『ビナー』はまだ動いていないらしい。
「...セリカ、足の具合はどうだ?」
「特に変化なしよ。...ネイトこそ大丈夫?こうして撒けたけど、オートマタに追いかけられて全力疾走してたでしょ?」
「...へっ、アタシを誰だと思ってる。アレくらい屁でもねぇさ」
運悪く、市街地跡に入って早々に徘徊していたオートマタに見付かってしまい、この廃ビルに逃げ込む時にネイトは全力疾走だった。そのせいで疲弊してないか尋ねると、ネイトは鼻を鳴らして大丈夫だと答える。―――でも、瞳や顔色には明らかに疲労が浮かんでいるから強がっている。
「...強がってるじゃない。瞳と顔色は正直よ」
「...こういう場面だからこそ強がってねぇとダメだろ。気弱になってりゃどんどんネガティブになっちまう」
「...で、でも...オートマタだけじゃないのよ。『ビナー』が出てきたら――」
「――その時はアタシが守るさ。
―――『セリカ。お前が危ない目にあったら、その時はわたしが守る。何せ、わたしにとっても初めてで、同じくアビドス復興の想いを持つ大事な友達だからな!』
―――ネイトの覚悟を決めた眼差しでの言葉を受け、脳裏に記憶の断片が過る。―――今でも時々通うあの公園のブランコ。その隣の方に座って、小学生の私を見つめて
「...どうした?やっぱり足が痛むか?」
「――あのさ、ネイト。こういう状況で言うことじゃないと思うんだけど...私...
「...そういや、誘拐された時に言いかけてたなそんなこと。...アタシとセリカが初めて出会ったのはあの前哨基地攻略の時だ。それ以前に会った記憶...なんて...」
ネイトと出会ってから度々感じる
「...まさか、ネイトも?」
「...そうかもしれねぇ。"カタカタヘルメット団"から『アビドス』の生徒になって、満足にできなかった学校生活を取り戻そうと躍起になって...それで気付いてなかったのかもしれねぇ、この
「っ?!」
「爆発...?!」
―――突然、隠れている廃ビルの外で爆発音が響いたとほぼ同時に廃ビルが揺れる。
「このデカい爆発...嫌な予感がする!急いでここから逃げるぞッ!!」
「わっ、ちょ...!」
ネイトは包まっていた布切れを剥ぎ―――米俵みたいに私を右肩に担いで駆け出す。突然担がれて驚くけど、急いで逃げるなら私の抱え方に拘っている暇は無い...!
[...!]
[Gi...!]
「――オートマタ二体!しかも白いヤツよ!」
「ちッ...この状況じゃ撃つ暇はねぇ!さっさとビルの外に逃げるぞ!体勢がキツいだろうが、セリカは後ろを見ていてくれ!」
「分かったわ!」
隠れていた部屋を飛び出ると、廊下を歩いていたらしい
チュゥゥン...!
「っち...!景気よく撃って来やがって!」
「機械の癖に精度が悪いのが幸いね...!」
私達の左右を掠める銃撃に当たらない様にネイトは右へ左へ動きながら走り、階段を降りていく。
「...もうすぐ外に出る!だが、ここから何処に逃げ――」
―――廃ビルの外に出た瞬間だった。
「ネイ――」
「セリ――」
―――ミサイルらしきものが私達の下に突っ込んで来たのが見えたけど、避ける間も無く爆炎が視界一杯に広がり、爆風と衝撃が私達を襲って―――
~『アビドス』砂漠上空 ヘリ機内~
side-ホシノ
「――『アビドス』自治区に入ったよ!このまま校舎方面でいいよね?」
「うん。このまま全速で向かって!」
「了解!――ミヤコ、通信ついでにナビお願いするよ。話には聞いていたけど、初見だと迷っちゃいそうな程に広い砂漠だねこりゃ...!」
「了解です。――進路このままでお願いします」
『SRT』で運用している[MH-60K Black Hawk*1]の機内。操縦席のリンゴちゃんがキャビンに顔を覗かせて進路を確認して来て、頷いてこのまま校舎方面に全速で進む様に指示を出す。リンゴちゃんは頷いて顔を引っ込め、ナビゲーターを引き受けたミヤコちゃんがナビゲートを始める。
「...本当に自治区の大半が砂漠化しているのね。砂から突き出ているビルや家屋が見えなければ、嘗ては市街地だったとは信じられなかったでしょうね」
「これが『アビドス』だ。傍から見れば確かに滅びかけているようにしか見えないだろうが...それでも――私達は復興を諦めるつもりはない。"鬼傑組"なんかに渡してたまるか」
窓から眼下に広がる砂漠を眺めて呟いたセイランちゃんの言葉にモコウ先輩は決意を新たにそう返す。
―――『...モコウ先輩!"Кролик小隊"も...!無事だったんですね!』
―――『おう、ホシノ達も無事に逃げられたか...無事の離脱を喜びたいところだが、そんな時間はないな』
―――『えぇ。――ヘリの点検と整備を急いで終わらせてアビドスに向かいましょう』
―――『ブラックマーケット』近郊、偶然にも『アビドス』方面寄りの位置に作られた"Кролик小隊"のセーフハウス兼格納庫。当初の作戦では、私達潜入部隊が救出成功後"鬼傑組"拠点を離脱して、格納庫にあるヘリで帰還する段取りだった。
結局救出は出来なかったけど、当初の作戦通りにセーフハウスを目指し、私達が先に辿り着いた。すぐに発てる様にと機材の確認や点検、専門ではないけど出来る事を進めていたらモコウ先輩達も無事に辿り着き、皆で点検と整備を行った後に離陸して今に至る。
「防衛に加わる為にもできる限り急いで戻らないとね。――ミヤコ、まだ"先生"達に通信は繋がらない?」
「反応はありますが、向こうが回線を繋げないので――来ました!こちら"RABBIT1"!"鬼傑組"拠点から離脱し、現在帰還中です!"先生"、そちらの状況は?」
イナバちゃんがミヤコちゃんに声を掛け、"先生"達に通信が繋がらないかと確認すると、ちょうど通信が繋がった様でやり取りを始める。
「......了解しました。こちらも順調に行けば十数分程で到着します。......え?ほ、本当ですか...?!」
「ミヤコ...?」
「...校舎の方で何か起きてるのかな?」
―――突然ミヤコちゃんが驚いた様に声をあげる。どうやら"先生"達は何か驚く事に―――
「――皆、窓から外見て!何か
「リンゴちゃんまで...一体何が――」
「何が――」
「急にどうし――」
―――続いてリンゴちゃんが外を見ろと声をあげ、窓から外を覗くと―――
ドォォンッ!!
―――爆炎と共に砲塔が吹き飛ぶ"鬼傑組"の戦車。その傍を走り抜ける『ゲヘナ学園』の校章を描いた戦車。ハーフトラックのキャビンに乗り込んで銃を掃射している
そして―――死屍累々という言葉が似合う程、黒煙や炎をあげて擱座している戦車やハーフトラック。その中で"鬼傑組"やそれとは違うらしい組織の構成員達が気絶していたり、逃げ惑う光景が広がっていた。
「――何だこりゃあ..."鬼傑組"が一方的にやられてるな。...おいおい、あのボリュームたっぷりの白い髪は『ゲヘナ』の"風紀委員長"じゃないか?」
「――うへぇ...これは蹂躙ってやつだよね...」
モコウ先輩と共に、私は呆然として蹂躙を見下ろしながら呟く。何故"風紀委員会"が『アビドス』に居るのだろうか。あの襲撃事件で接点はあるけど、『アビドス』に来るという連絡は受けていない。...いや、もしかしたら私達が留守の間に接触して来たのかもしれない。それ以上に気になるのは―――
「...嘘...少なくとも接点は殆どなかった筈なのに何故...?」
「...イナバ先輩、どうしたんだ?」
イナバちゃんを見やれば、困惑した表情で眼下で繰り広げられている蹂躙を―――特に砂漠でマントらしきものを翻して走り回り、銃を掃射する
「...イナバ、あれって...」
「えぇ、幻覚ではないわ。――思った以上に、『アビドス』を気にする勢力は多いみたいね...」
「あの
「――見間違いじゃなければ、あの
「――は?"ティーパーティー"ってのは確か...」
「――なんで『トリニティ』の、そんな地位が高い部隊が
―――イナバちゃんの返答を聞くと、モコウ先輩と揃って驚きで固まってしまう。『ゲヘナ』は接点があるから分かる。でも、『トリニティ』はヒフミちゃん位しか出会っていないのに何故
~『アビドス』砂漠~
side-ヒナ
―――[
「...張り合いがない。
弾幕に捉えられて一人残らず気絶した事を確認して息を吐き、愚痴る様に零す。
―――レミリア率いる"
空では私達を下ろしたヘリ三機が旋回して空を警戒しつつ撃ち漏らしを索敵し、"鬼傑組"―――否、『ブラックマーケット』の
奇襲を受けた構成員達、特にハーフトラックに乗っていた歩兵部隊は悲惨で、車外に出て抵抗出来ればまだ良い方で、多くは"ソーサーナイツ"の乗り込み奇襲と掃射、白兵で纏めて倒されている。
「...演習、訓練の視察は二、三回しかしなかったけど、こうして実戦を見ていると如何に精強なのかが分かる。主任務は"ホストの護衛"と聞いているけど、こんな攻勢、乱戦を熟すなんて。特に――」
―――背後で戦車の車載機銃の銃声が聞こえて振り向く。"鬼傑組"の戦車が全速で後退しながら弾幕を張っている。しかしその相手―――
「――!」
―――"ソーサーナイツ"を組織し、"総長"として纏め上げている『比那名居テンシ』は弾幕を物ともせず―――否、
―――しかし機銃の弾帯が尽きたのか途中で弾幕が止み―――
―――主砲が火を吹き、75mm砲弾が彼女に
「――ふっ...!」
―――しかし
「っと...!」
「ふぅ...戦車撃破。...あぁ、肩の方がちょっと破れてるじゃない!まずい、イクに怒られる...」
―――手榴弾を車内に投げ入れ、跳躍して離れて砂地に着地した瞬間爆発音が響き、衝撃でこじ開けられた戦車のキューポラやハッチから黒煙が吹き出して沈黙する。それを見届けた比那名居テンシはハンカチで頬の煤を拭い、僅かに裂けた制服の左肩を見て声をあげる。
「...傍から見てると『トリニティ』らしからぬ戦い方ね」
戦闘時とその後に制服の破れを気にするギャップに苦笑して呟き、彼女の下に歩み寄る。
「――あら、見てたの?」
「...すぐ背後で戦っていたら嫌でも気にする。戦車の砲弾すら弾くのは流石"
「
「...見てたのね。流石に75mm砲弾は私でも...試したことはないから分からないけど」
歩み寄る私に気付いた比那名居テンシの二つ名を挙げて褒めると、そう言い返されて苦笑する。―――数分前、ハーフトラックの歩兵部隊を掃討したけど、気絶した構成員達に埋もれていたらしい狙撃手の狙撃を近距離で食らい――しかし私にとっては
「そんなの試すものじゃないでしょ...ま、敵を撃破できるならなんだっていいのよ。どうやろうと、少なくとも私は気にしないわ」
「...本当、『トリニティ』らしくないとつくづく感じるわね」
比那名居テンシの『トリニティ』生らしからぬ物言いにまた苦笑してしまう。―――ふと思い返せば、『トリニティ』は武闘派が多い様に思う。奇声をあげて狂戦士の如く戦うという"正義実現委員会"委員長。真っ先に突撃し、砲弾の如く敵を吹き飛ばすという"救護騎士団"団長。
―――閑話休題。
「――銃声、砲撃音も減ってきた。大体は掃討したみたいね」
「えぇ。奇襲が想像以上に嵌ったせいか、士気崩壊が早くてあっという間だったわね。ただ、気になるのは...この部隊の指揮官級――
「...確かにサクヤやレミリアからも報告はない。あれだけの規模で下っ端だけということは有り得ない。少なくとも一人は幹部級が居る筈」
比那名居テンシが挙げた懸念に頷く。―――数的規模はレミリアが率いる戦車部隊と同等で、その指揮統制を下っ端だけで出来るとは思えない。だから、
――ピピッ!
『――こちら"雨雲号"のアヤネです!戦闘領域にSRTのヘリ一機が接近中。同乗している、救出作戦に向かっていたホシノ先輩達が直接直接況を知りたいと付近への着陸を要請しています!』
「随分急に...いえ、この状況を見れば困惑もするわね。空から見ても分かると思うけど、大勢は決した。私達が居る辺りは戦闘もないから着陸できると思う。応対は私と比那名居テンシとで行うわ」
『了解しました!あちらにその旨を伝えます!』
―――"雨雲号"から通信がインカムに入る。どうやら"鬼傑組"拠点に向かって救出作戦を行っていた面々が戻って来たらしい。戻って来たら『ゲヘナ』と『トリニティ』の部隊が肩を並べて敵を蹂躙して大勢を決しているのを目の当たりにすれば困惑するだろう。ちょうど手空きになった私と比那名居テンシとで説明を行うと伝えて通信を切る。
「――本当に『SRT』まで協力しているのね。犯罪者の巣窟の癖に一丁前に学校同然の自治独立を保っている『ブラックマーケット』にメスを入れられるチャンスでしょうし、人質救出は『SRT』の得意分野でもあるものね。協力しない訳がないか」
「自治独立している学校とその自治区に
「えぇ」
通信を聞いていた比那名居テンシは『アビドス』に差し伸べられている手の多さに眉を上げ、私と共に歩き出す―――
side-チヤリ
「...ひぇぇ...こんなのただの蹂躙だよ...!何で『ゲヘナ』と『トリニティ』が肩を並べてるのさ...!」
―――戦場の隅の方で撃破されたハーフトラックのキャビンに身を潜め、遠目に見えていた二人の人影が去っていくのを見送りながら愚痴を吐く。未だに脳内は混乱しっぱなしだ。
"鬼傑組"の"組長"ヤチエは『アビドス』生と『カイザーPMC』を相手取ると説明していた。傭兵業で名が売れていて、戦車部隊も有している『カイザーPMC』対策で戦車やハーフトラックを大量に揃えていて負ける筈が無いと思っていたのに―――
「ビテンもエノコも何処に行ったのやら...せめて捕まらずに逃げられていれば――」
~♪
「ひぇっ?!...って、スマホの着信...?!――も、もしもし...!」
―――突然の着メロとバイブレーションに肩を震わせて咄嗟に辺りを見回し、敵は居ないと判断してスマホの画面を見て、即座に通話を繋いで出る。相手は―――
『――私だ。チヤリ、無事か?...電話に出てるなら一先ずは無事か』
「ど、"同盟長"...!じ、自分は何とか無事っす...今の所は」
―――私の上司である『
『そうか。――そっちに向かおうとしていた"勁牙組"の脳筋
「は、はい。...制圧作戦は最早こっちの負けっす。"同盟長"から預けられた構成員達も大半が...本当に、申し訳ないっす...!」
『構わん。組織風土故に元より大した結束力もないし、荒事をやりたいヤツらを寄せ集めただけだからな。だが――』
"同盟長"は言葉を切り―――
『――
「に、逃げろって言われても...『ゲヘナ』の戦車も残敵を求めて徘徊してるし...空もヘリが飛んでて...」
『普段は引きこもりで面倒臭がりだが、やる時はやる性質なのは分かっているぞ。――二度は言わん。
通話が切れて規則的な切断音だけが耳に入る。―――普段は適当にやってる様に見えて、構成員の事は的確に把握してるのが"同盟長"の恐ろしい所だ。でも―――
「――っぷは..."同盟長"が手伝えって言ったんだ。何としても逃げ延びてやる...!ビテンとエノコが心配だけど、あの二人ならきっと逃げられる筈...!」
―――スマホをしまい、無事だったトマトジュースのパックにストローを刺してパックを握り潰して一気飲みして覚悟を決め、逃げる算段を考える―――
~『ブラックマーケット』"鬼傑組"拠点 "組長"執務室~
side-ヤチエ
『く、"組長"!"マーケットガード"の連中gグワーッ?!』
―――何故?
『"組長"!せめて貴女だけdギャーッ?!』
―――何処で間違えた?
『応戦するな逃げろ!連中重装まで持ち込nグエーッ?!』
―――情報は間違っていなかった筈。『アビドス』は止まらない砂漠化で人口流出著しく、数年の内に自治区全てが砂漠に呑まれる運命にあった。
『"組長"!"組長"応tグワーッ?!』
―――だから現地の不良勢力に接触し、支援を与えた上でけしかけて生徒達の追い出しを図った。しかし支援の中抜きや独占のせいで進展はまるで無く、前哨基地が破壊された時点で見限って次の手に―――
『不味い!事務所nギャーッ?!』
―――『ブラックマーケット』外で、それも自治独立している学校から生徒を誘拐すれば"連邦生徒会"は当然、治安維持組織たる"マーケットガード"も黙っていない懸念はあった。しかし―――誘拐を決行しても"マーケットガード"は
<「くそ!せめて執務室には近付kギャーッ?!」
―――だから、動かれる前に一気に計画を進めようとした。『ゲヘナ』の車輌のメーカー整備の為の移送に介入して上手い事装甲戦力の入手に成功して、"勁牙組"と"剛欲同盟"にも声を掛けて一時的な共闘体制を気付いて更に戦力を強化した。
更に、誘拐した生徒二人を拠点に捕らえている様に見せかけて救出に動くであろう『アビドス』生を誘い出し、生徒二人は見せしめと陽動も兼ねて
<「撃て撃て!兎に角近付kギャーッ?!」
「...何故
「――ッ?!」
―――状況が理解出来ず巡り続ける思考に耽っていてまるで気付けなかった。執務室のドアが開いた事に驚いてハッと顔を上げると―――
「――随分と混乱しておるようじゃな。態々この儂が訪ねてきたというのに、出迎えは酷く精細を欠いておったぞ」
「――に、『
―――"マーケットガード"の精鋭である"エリートガード"を背後に控えさせ、私を見て不敵な笑みを浮かべている―――黒味を帯びた紫色の長髪。その前髪から小さな角を一対覗かせ、頭上には
彼女のすぐ右後ろには、先端を真っ直ぐ揃えた黒い長髪の前髪にロザリアを模る目元を隠す程大きな髪飾りを留め、頭上には
「自分の胸に手を当てて考えてみよ。お主自身よく分かっておるだろう?」
「っ...何故、今になって...!」
「流石に
故に――『ブラックマーケット』の治安を預かる"保安部長"としては、マーケットを守らねばならぬ。マーケット外で大きな犯罪を犯したお主を"連邦生徒会"に突き出してケジメを付けるのが最善であろう。お主に協力した"勁牙組"と"剛欲同盟"も追求するが...元より対立し合う仲。今頃は尻尾切りに走って逮捕までは行けぬだろうな。
そういう訳じゃ。大人しくお縄に付くがよい。――あぁ、お主が混乱しておったおかげで逃げ道は全て塞げたぞ。無論、その机に仕込んでいる逃走経路もな」
「なっ...?!」
ザンムの言葉が信じられず、机の下に仕込んでいるボタンを何度も押す。―――しかし、椅子の真下のトラップドアの仕掛けは動かない。どうやらザンムの言葉は事実らしい。私とした事が、予想外の事態に混乱していたとは言え逃げ道を塞がれるとは...!
「...何故...!"連邦生徒会"が動く犯罪だというのなら、我々が『アビドス』生を誘拐した時点で動くべきだったでしょう...?!」
「その時点で動いては証拠隠滅しておったじゃろうが。地道に証拠を積むことも大事じゃが――現行犯の方が早く確実であることはよく分かっておろう?
――『吉弔ヤチエ』。お主を"ブラックマーケット治安維持法"違反で逮捕する。"連邦生徒会"の方で生徒誘拐と他校自治区への武力攻撃の余罪も加われば...まぁ、『矯正局』は免れぬであろうなぁ」
「くっ...!」
ザンムの合図で"エリートガード"が動き出し、私を立たせて手錠を付ける。―――逃げ道が全て潰されてしまった以上、抵抗する術は無かった。――しかし、一糸報いる手はある...!
「――さっさと歩け」
「言われずとも...!(『アビドス』の砂漠に放逐した生徒二人は今頃野垂れ死んでいる筈...!情報が確かなら、
~♪
「...む。――もしもし。あぁ、儂だ。......ほう、そうか。やはりアレ共の実力は充分高い、ということか。......うむ、どこまでやるかはお主に任せる。じゃが、目的は忘れるなよ。ではな。――では、連行するとしよう。ヒサミ、第二、第三班も動かせ。"勁牙組"と"剛欲同盟"にもガサ入れを行う」
「承知致しました」
―――ザンムが着メロを鳴らすスマホを取り出して誰かと通話を交わし、しかしすぐに通話を終えてスマホをしまい、私を歩かせながら"秘書"に指示を出す―――
<「ほら歩け!」
<「気絶してるヤツらにも手錠は付けろ!護送中に暴れられたら堪らん!」
「――お疲れ様です、"保安部長"」
「うむ、ご苦労。『吉弔ヤチエ』を本部に連行するついでに儂らも戻る」
「了解しました。――どうぞ」
―――あちこちで組員達が逮捕され、護送されたり証拠品の押収に走り回る喧騒の中に連れ出されて数分後。拠点の外に停車している黒塗りのワゴンに乗せられる。両隣を"エリートガード"が固め、逃げる隙を与えようとしない。
「――よし、出せ。...っと、そうじゃ。ついさっき入ってきた情報じゃが――」
ワゴンがら走り出してすぐ、助手席に座るザンムが思い出した様に話し始める。今更何を―――
「――お主が砂漠に放り出した人質だった生徒二人。便利屋共の手で
「なっ――」
―――その言葉を聞いた瞬間、意識が飛ぶ。視界が暗転する瞬間に見えたのは、全てが己の掌中だと言わんばかりの不敵な笑みだった。
という事で大勢は決しました。後は...
~生徒紹介~
名前:
年齢:18歳
出身校:ゲヘナ学園
所属:"マーケットガード"保安部長
装備:HG(
名前:
年齢:18歳
出身校:ゲヘナ学園
所属:"マーケットガード"保安部長専属"秘書"
装備:HG(