Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『カイザーPMC』基地外縁 西側トーチカ~
side-ノノミ
『――ノノミ。正面、オートマタ多数』
「了解で~す!――全弾発射~!」
上階の監視所に詰めているシロコちゃんの通報を受け、今まで以上に濃い砂煙の中に見えたオートマタの影複数に向けて銃座にマウントした[リトルマシンガンV]の弾幕を浴びせる。
[[Gi...?!]]
嘗ての『アビドス』が製造していたオートマタと、その中にチラホラ混ざっている
「――ふぅ...全滅を確認。シロコちゃん、他に敵は居ますか?」
『今のところは確認できない。小休憩と弾薬補給は今のうちにやるべき』
「そうしましょうか~。...交換よし。皆さん、私は小休憩に入りますね~」
「はいよ。その間の警戒は任せとけ!」
シロコちゃんの提案に頷き、[リトルマシンガンV]の弾帯を交換してからトーチカに詰めている傭兵の皆さんと警戒を交代してトーチカに据えられたベンチに向かう。
「――お疲れ様、ノノミ。これでも飲みなさい」
「――姉さん!わぁ、ありがとうございます~☆」
―――横から聞き馴染みがある声が聞こえて振り向けば、私にプカリスウェットのボトルを差し出す姉さんが居て、お礼を言いながらボトルを受け取る。
「ふふ、どういたしまして。...隣、失礼するわ。――それにしても凄い砂嵐ね。十秒でも外に出ると
「度々砂嵐は起きますが、これ程の規模は私達も初めてですね~。...マミゾウさんが言っていた、
―――『まさか
一口飲み、隣に座った姉さんの言葉にそう返しながら――辛そうな、心底申し訳なさそうな表情を浮かべたマミゾウさんの言葉を思い出して俯いてしまう。
―――"便利屋68"の皆さんがセリカちゃんとネイトちゃんを救出し、これまでの行動パターンを破ってまで猛追して来た『ビナー』を撃退した翌日。朝起きたらカーテンを開けても陽の光が一切入らない程の砂嵐が起きていて驚いた。
姉さんが言った様に、
―――しかし授業所ではない状況だと判断して本来"先生"とホシノ先輩、アヤネちゃん、ミヤコちゃんだけで行く事になっていた『カイザーPMC』からの招集に便乗して私達も基地へ向かい、こうして基地防衛に参加している。
サクヤ姉さん達"風紀委員会"と"
「...それに、この砂嵐にも関わらず攻めてくる壊れたオートマタやドローンも気になるわ。確か...数十年前の『アビドス』で製造、運用されていたモデルの他に、出処不明の
「はい。大半は砂漠をフラフラと彷徨っていていますが、偶に校舎がある地区に迷い込んだりして、私達や『カイザーPMC』で討伐を行ったことも何度かあります」
「ふむ...彷徨うだけの存在が、今は何か意志を持ったようにこの基地を攻めているのはおかしいわね。数十年前のものだと言うのなら既に中身は酷く劣化していて、辛うじて残ったプログラムに従ってるだけでしょうに...」
姉さんは顎に指を添えて今の状況を考察する。―――私達もこのオートマタやドローン達の攻撃はおかしいと感じている。謎の多い
そんなオートマタやドローン達が、今は明確に―――偶然敵と判断したのではなく、明らかに『カイザーPMC』基地を目標に攻め寄せている。まるで―――
「――何か
「まさか......いえ、否定できないわね。『ビナー』は謎が多い
「...なら、どうして...『ビナー』は今まで見向きもしなかったオートマタやドローンすら操って攻撃しているのでしょうか?今起きている砂嵐だけでも充分過ぎる程『アビドス』への脅威、攻撃になっているのに...」
「...そうね......私が『ビナー』なら――」
「――自身の堅牢な装甲を正面から撃ち抜く性能を持つ兵器を有する敵勢力は早期に潰したいわ。傷を回復している間にオートマタやドローンを操り、波状攻撃で基地を制圧できれば脅威は大きく減るもの」
―――プカリを一口飲んだ姉さんはそう予測を立てた。
~同基地 作戦会議室~
side-"先生"
「――諸君。現在の逼迫した状況にも関わらず集まってくれたこと。そして昨夜から発生しているオートマタによる攻撃に対する防衛戦への参加についても――心より感謝する」
「儂も同様に――『アビドス』の先輩として皆に感謝したい。特に、"鬼傑組"含む
会議室に集まった面々を―――『アビドス』からはホシノとアヤネ。『シャーレ』からは私とミヤコ、モエ。協力者のアヤ。『SRT』からはイナバとリンゴ。『ゲヘナ』からはヒナとレミリア。『トリニティ』からはテンシとヒフミ。"便利屋68"からはアルとカヨコが来ている―――見回し、トオルはマミゾウと揃って頭を下げる。
「この砂嵐では帰還も厳しいし、今の状況に陥った『アビドス』を放置して帰るなんて後味最悪でしょ。..."ファウスト"もまだ私達を扱き使うつもりみたいだし、ね。今朝、
「私達も同意見よ。状況は
トオルとマミゾウの礼を受け、レミリアとテンシは揃って見捨てるつもりは無いと答える。
「――それから、『SRT』の協力にも感謝したい。"鬼傑組"は襲撃に合わせて卑劣な罠を仕掛けていたが、"連邦生徒会"の懐刀たる諸君らが居なければ、『アビドス』単体では救出は厳しいものになっていただろう」
「"鬼傑組"の罠に早期に気付けなかった上に、最終的に救出を成し遂げたのはそちらの"便利屋68"。感謝される程の貢献はできていないと思うけど...私達の方こそ感謝したいわ。『ブラックマーケット』にのさばる犯罪組織へ一撃を与えるチャンスを作ってくれたのだから。少なくとも『アビドス』制圧作戦の失敗で"鬼傑組"はしばらくマトモな活動はできない筈よ」
続くトオルの『SRT』への感謝を受けてイナバは感謝される程の貢献はしていないと謙遜しながら逆に感謝を伝える。"鬼傑組"はマーケットの外で犯罪ネットワークを構築して犯罪活動を行っていたというから、『SRT』としてはその活動を抑え込むチャンスだっただろう。
「『アビドス』に協力してくれている。我々としてはこれだけでも充分ありがたい。――さて、挨拶と感謝の言葉はここまでとしよう。現在、『アビドス』が置かれている状況は非常に厳しい」
トオルはそう言って本題に移り、ディスプレイに『アビドス』自治区全域の地図を映し出す。そして地図を覆う様に茶色い靄の様なもの―――砂嵐の表示が追加される。
「救出部隊を猛追した『ビナー』は"
地図の
「この砂嵐の規模は、嘗て『アビドス』本校と中央地区を砂に埋めた砂嵐よりも巨大だ。"気象班"の観測とシミュレートの結果――」
トオルは言葉を一度切る。よく見ればディスプレイ操作用のリモコンを握る手が震えていて―――
「――
今の校舎がある地区を砂漠が覆い尽くし、『アビドス』の砂漠そのものも
「――更に、これは現状の
地図上で渦巻きがゆっくりと動くと、砂漠が侵食する範囲もそれに合わせて広がっていく。
「"――絶対に止めなきゃいけないね。他の学校にまで被害を及ぼす訳にはいかない"」
「"先生"の言う通り、『ビナー』の研究だの情報収集だのと言っている暇はない。――今討たねば、『アビドス』だけの問題では済まなくなる」
トオルは私の言葉に頷いて『ビナー』討伐を宣言し、私含め皆が頷く。―――勿論、『アビドス』を滅ぼさせるつもりは無いけど、他校にまで被害を広げかねない事も大問題だ。一週間とはあくまで試算。『ビナー』の行動次第では早まる可能性もある。故に―――早く討たなければならない。
「――だが、『ビナー』だけに全集中とはいかない状況でもある。...アヤ、メディアはどうだ?」
「学校を滅ぼしかねない
我が『クロノス』は勿論、他のメディアも『アビドス』入りして取材を試みようと動いている、と個人的なコネも通して把握しましたが――"
しかし...
「メディアの余計な流入を止めることも充分な貢献だ。作戦に余計な妨害要素は入れたくない。引き続きメディア対策を頼む」
「了解です」
アヤのメディア対応の報告を受けてトオルは引き続き対応を続ける様に頼み、アヤは頷く。
―――濃霧の様な砂に覆われている私達は見えていないけど、他校からはディスプレイに映っている様な
情報を止める事は出来ても、(今回は『ビナー』のせいだけど)自然現象は止められるものでは無い。そして、到底自然現象とは思えない規模での砂嵐なんてメディアからすれば逃せない特ダネだろう。より詳しく状況を知ろうと、直接『アビドス』に向かおうとしたり、問い合わせを図ったりしているらしい。―――アヤの行動は作戦遂行の上でも重要だ。つくづく、彼女の協力を得られて良かったと実感する。
「――では、次の問題要素だ。砂嵐の発生から少し遅れる形で、砂漠のあちこちを彷徨うオートマタやドローンがこの基地を狙って集まり、散発的に攻撃を仕掛けている」
<『来たぞ!さっきより数が多い...!』
<『全く酷い砂嵐だ!ここまで近付かれないと目視できない!』
<『私戦車乗りなのになんで歩兵を...!』
<『
<『不良共でももっと避ける動きはするからまだ楽だぞ!』
ディスプレイに複数の画面が映し出される。基地の外縁に構築されている複数のトーチカに据えられたカメラの映像で、『カイザーPMC』の傭兵や"便利屋68"、"対策委員会"の皆、"風紀委員会"や"
「――これは今まで確認されなかった動きだ。大半は数十年前の旧いモデルで保守整備も碌にされておらず、OSやシステムも破損していて辛うじて残ったプログラムに従って彷徨い、目に付いたものを攻撃するだけだった。要するに映画で見る様なゾンビに似た挙動だな。
だが――現在は見ての通り明確にこの基地を攻撃する為に動いている。広域レーダーは砂嵐で性能が落ちているが、それでも砂漠のあちこちからこの基地に向かっている様子は確認されている。
この攻撃が行われた当初、撃破されたが破損が少ない数体を回収して解析をした結果、動き自体はこれまでと変わっておらず、OSやシステムが改善された様子はなかったが――
新たな画面が立ち上がり、文字化け、空白が多いコードの羅列が並ぶ。その中でハイライトされたコードの一部は―――
「"...[
「そうだ。...このコードがオートマタやドローンに対して
「
トオルの説明を聞いてリンゴが推測を述べる。確かに、『ビナー』は未だ謎が多い
「確かに、あり得る可能性だな。――だが、今はこのオートマタやドローンによる攻撃という状況が問題だ。砂漠を徘徊しているオートマタやドローンの総数は我が『カイザーPMC』でも把握し切れていない。時間を置いて散発的に攻撃しているのは幸いだが、攻撃が止む兆候は未だに見えない。
故に、オートマタやドローンの迎撃の為に『ビナー』討伐に際しては全戦力は割けない。そもそも『ビナー』の武装は対軍を想定したものだからな。数を頼みにした攻撃は通用しないだろう。――では、このまま作戦会議に移る」
トオルはそのまま議題を作戦会議へと切り替え、ディスプレイの画面を整理して『アビドス』自治区全体の地図のみを映し、机には砂漠に姿を現し、砂嵐を巻き起こして自身の姿を隠す『ビナー』のホログラムを投影する。
「――まず、前段として現在『ビナー』が自身を中心に発生させている砂嵐をどうするか、だ。この砂嵐ではヘリは当然、ドローンも飛ばせない。故に初動は地上戦力を向かわせる他ないが――砂嵐そのものの風速は
ホログラム上で、飛行するヘリやドローンが途中で失速、或いは気流で姿勢を崩されて墜落していき、地上では砂嵐に突っ込んだ戦車が浮き上がって吹き飛ばされる様子が映し出される。
「これじゃ
「...空も陸も絶望的ね。それで、どうするつもり?手が出せないからって何もしないのでは論外よ」
テンシのぼやきに続き、レミリアはそう質問を挙げてトオルを見定める様に見つめる。
「策は二つある。まず甲案――地上部隊を砂嵐の被害を受けないギリギリまで近付けさせ、可能であれば『ビナー』が居る方角へ攻撃を仕掛ける。この策は、『ビナー』が
"大道の劫火"や"アツィルトの光"で以て部隊に攻撃を仕掛けるとなれば、自治区を砂で覆う程の
ホログラム上で新たな戦車、装甲車の混成部隊が砂嵐に近付き、『ビナー』に向けて攻撃を行うと『ビナー』は砂嵐を止めてミサイルを撃ち出す。
「これまでの行動パターンを取ろうとする推測と運に任せて攻撃チャンスを作るってことね。...うーん、人為的とはいえ砂嵐なら...ということは、それが失敗した場合の策が乙案かしら?」
テンシの言葉にトオルは頷く。
「そうだ。乙案は――諸君ら生徒での高高度からの空挺降下だ。『ビナー』が発生させている砂嵐は砂を巻き込んだ台風のようなもの。つまり――『ビナー』が居る中心の目は無風で舞い散る砂も少ない筈だ。そこへ直接空挺降下で飛び込み、甲案と同様
ホログラム上で、砂嵐の遥か上空を大型の輸送機が通過していき、複数の光点が輸送機から飛び出して降下していき、気付いたビナーが砂嵐を止めてミサイルを撃ち出して迎撃を図り、そこに戦車部隊が突入していく。
「乙案は確実性が高いが――懸念としては、まず空挺降下によって生徒達を危険に晒すこと。空挺降下の強みは制空権さえあれば後方、直上からの奇襲が可能であることだが、空挺で運べる装備は限られる。ましてやこの作戦では『ビナー』への直接攻撃を仕掛けることになる。身軽な歩兵戦力は兎も角、重火器は降下中に迎撃されて損害を受けかねない。奇襲効果の代償は火力と装甲の乏しさだ。
そして――現状『アビドス』を起点とした航空機の運用は到底不可能である為、自治区外の――
「『アビドス』としてはそういう噂で人が寄り付くのは避けたいかな~。アヤちゃんにもっと苦労をかけちゃうし、『ビナー』をどうにかして討たなきゃいけないのに戦力を集中できないのは問題だよねぇ」
乙案を聞いてホシノが否定的な意見を挙げる。―――現在の『アビドス』には
「やはり、乙案は厳しいか。ここは甲案での前段作戦を――」
「――トオル"理事"、甲案の
―――テンシが挙手し、甲案の追加修正を提案する。その内容に皆耳を傾け―――
「――――では、各隊の配置はこれでいいな?」
「『アビドス』としても異存ないよ~。いやぁ、ホログラムで見ても壮観だねぇ」
「...『ゲヘナ』としても問題ない」
「同じく『トリニティ』としても異存ないわ」
―――ホログラムに映る部隊配置を確認し、皆頷く。
「分かった。...念の為確認するが、本当に大丈夫なんだな?」
「えぇ。――
トオルの念押しの確認に対しテンシは冗談も交えて大丈夫だと頷く。
―――テンシの提案を受け入れた事で前段作戦は決まり、その後の後段作戦である『ビナー』討伐作戦の内容と配置もとんとん拍子で決まった。
「そうか。――では、本作戦は総括して"サン・シップ*1"と命名し、前段作戦を"マンジェット*2"、後段作戦を"メセケテット*3"と命名する――」
トオルは席を立ち、作戦名を命名する。
「――嘗て、『ビナー』はアビドス本校を砂嵐に飲み込み、そこから自治区をどんどん砂の中に飲み込んだ。そして今――あの時より更に巨大な砂嵐を発生させて『アビドス』全体を砂漠に飲み込もうとしている。ホシノ達現『アビドス』生の復興に向けた努力を、『アビドス』卒業生としての俺とマミゾウの支援を、そして苦境に手を差し伸べてくれた諸君らの善意を砂に攫われる訳にはいかない
―――だが、作戦にあたっては人命を第一とする。成功したとて、その後待っている後処理――そして復興に向けたあれそれに加われないのでは無意味だ。『アビドス』、我が『カイザーPMC』だけでなく、『ゲヘナ』、『トリニティ』、そして間接的だが『ミレニアム』も――
―――トオルの訓示で会議は締め括られ、各々席を立つ。
という事で作戦会議でした。少し短いですが切れがいいので。次回、作戦前の各人のやり取りです。
メタい話ですが、『ビナー』が行ったのはデカグラマトンが行う