Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
今回は残酷な描写にご注意ください。
~『アビドス』砂漠~
side-"先生"
『――"先生"!間もなく会敵予測地点です!』
「"分かった!...本当に酷い砂嵐だ。地図頼りにしないと見失う...!"」
アロナの報告に頷き、乗り込んでいる指揮車の車載カメラが映す砂嵐を見て顔を顰める。相変わらず濃霧の如く、そして砂嵐に接近しているせいかより酷い視界不良を齎す砂嵐だ。この砂嵐をどうにかしなければ『ビナー』の姿も見えない。
「"――テンシ、もうすぐ会敵地点に到達するよ!本当に大丈夫なんだね?"」
『こんな早く前倒しになるなんて予想外だったけど――体調も武器も万全、大丈夫よ』
インカムを通してテンシに確認を取れば、自信を感じられるしっかりした返事が返って来る。―――"サン・シップ"作戦の前段作戦"マンジェット"の要は彼女だ。仮に失敗した場合は作戦を大きく変えなければならない。そのロスは『アビドス』をより
―――もうすぐ夕方になろうという頃。『ビナー』が砂嵐を維持したまま前進を開始したという急報を受け、トオルの判断で"サン・シップ"作戦の発動が大幅に前倒しとなった。『カイザーPMC』、"
故に前段作戦"マンジェット"が成功してもすぐに部隊が投入出来る訳ではなく―――初動は生徒達で構成された部隊"セベク*1"が主体となる。神秘を込めた攻撃は有効とは言え、対軍武装の高火力広範囲の攻撃は充分脅威だろう。尤も、砂嵐をどうにかしなければ攻撃を仕掛ける事も難しい。だから―――
『――会敵地点です!』
「"――会敵地点に到達!全車両一時停車!――頼んだよ、テンシ!"」
『――任されたわ』
アロナの合図を受けて部隊を止め、テンシに指示を出し、銃座を足場に屋根に登る物音が聞こえて来る。砂嵐で見えないけど、先頭を走っていた装甲車に乗り込んでいるテンシが屋根に登っている筈だ。
『...っと...本当に凄まじい砂嵐ね。何故ここまでするのか、こうまでして何を守ろうとしているのか分からないけど――アビドスだけでは済まないこの脅威は止める』
テンシが呟き―――カメラの映像が映す砂嵐の中に
『テンシさんに向かって何かしらのエネルギーが集まっています。ビナーが居る方角からだけでなく、私達からも...』
「"それが
―――『"緋想の剣"。我が比那名居家伝来の剣であり、"オーパーツ"に類する代物よ。この剣は、目に見えずとも生物・無生物に関わらず宿しているとされる
―――私が提案するのは、"緋想の剣"による
アロナの報告にそう答えながら作戦会議でテンシがトオルに提案した内容を思い返す。―――会議中の説明だけではよく分からなかったけど、こうして
『...う~ん...よーく目を凝らすと、本当に薄っすらとだけど
『...確かによく目を凝らせば何となく見える気がするな。ユメもホシノもシロコもノノミも...
『わ、私には見えないよぉ...』
インカムにホシノ達の会話が入る。どうやらホシノとモコウには
『――テンシさんに集まる
続いてアロナから報告が入り、カメラの映像を見れば砂嵐の中で灯る
『...まだまだ集められるわね...ここまでの量は初めてだわ...!』
『――総領娘様、お身体は大丈夫ですか?』
『寧ろ剣の負荷の方が心配よ。まぁ、"オーパーツ"なら大丈夫でしょうけど...ここは吸収量を上げるわ。――"緋想の剣"よ、もっと気質を集めなさい。全てを砂に埋めんとする砂嵐を祓う力を...!』
テンシの呼び声に応える様に更に
―――テンシが吼え、カメラの映像が
―――砂嵐があっという間に晴れて
―――『ビナー』が怒りを孕んだ様な咆哮をあげる様子が露になった。
~『カイザーPMC』基地 司令部~
side-マミゾウ
「――砂嵐の消失を確認!」
「――『ビナー』、"セベク"への攻撃を開始!」
「よし、後段"メセケテット"作戦発動!"デカグラマトン大隊"、『ゲヘナ』"第二装甲大隊"及び混成ヘリ部隊"アテン*2"は出撃せよ!続いて『トリニティ』"砲術委員会"は有効射程圏内まで展開用意!――"L.A.R."は展開準備を開始せよ!」
砂嵐の消失を確認し、即座に各部隊に指示を出す。
『了解。――ギリギリ全車準備が終わったタイミングとは幸いね。"第二装甲大隊"、出るわよ!』
『"Aten4"、"RABBIT3"了解!全速で前線の支援に向かうよ!』
『――了解した。基地屋上に移動開始する』
インカムに次々各部隊、人員の応答が入り、司令部内も俄に慌ただしくなる。
「――こちら司令代理のマミゾウ。電源車両の受け入れと準備の進捗は?」
『現在六割程の車両が到着、順次接続を行っています!』
「急ぐんじゃぞ。最前線の娘らが"L.A.R."で狙い撃つ隙を生み出して、こちらが準備中で撃てぬでは話にならん。――しかし、トラブルを起こさぬように安全、確実にな」
『了解しました!』
PMC"設備課"の指揮所に繋いで"L.A.R."用の外付け電源を構築する電源車両の受け入れと準備状況を尋ねる。『カイザーコンストラクション』から派遣した人員もフルに使って大車輪だが、それでも少しばかり進捗が遅い。
しかし、色々と初の試みばかり故動きが遅くなるのは仕方ない事。"急がば回れ"―――慌てず、安全、確実な作業を進める様に釘を刺す。
―――『後段作戦"メセケテット"は単純だが重要だ。"緋想の剣"による砂嵐の無力化に成功したら、ホシノ達生徒で構成する部隊"セベク"は攻撃を開始。トリニティ"砲術委員会"は[L118]と人員を空輸して有効射程圏内へ展開、ビナーの位置は常に司令部から伝える。
同時に"デカグラマトン大隊"とゲヘナ"第二装甲大隊"、及び混成ヘリ部隊"アテン"は出撃。速度的に先に着くのは"アテン"だろうから攻撃や回避機動で以て適度にビナーを引き付けろ。
攻撃を続けている間に基地では"L.A.R."の砲撃準備を行う。救出作戦の時とは違い、外付け、急造の大規模電源設備を以て
この"L.A.R."で狙うのは只一点――
―――作戦会議で説明された後段作戦"メセケテット"の内容を思い返す。やる事は単純―――『ビナー』を引き付け、トオルの判断でL.A.R."を撃ち、頭部を穿つ。そして強烈なダメージで倒れた所を全火力で以て集中攻撃、撃破する。単純だが重要なのは―――
「――トオル。本当に大丈夫なんじゃな?」
『――今更退けるものか。
――いつかのゲヘナとの学校対抗演習。
別回線でトオルに念押しで確認すると、彼奴は平然と大丈夫だと答え、懐かしむ様に忘れたくとも忘れられない――学生時代の
「――あの時は参謀として、完全に手詰まりじゃと諦めかけておったんじゃぞ。まさか超遠距離狙撃を決めて大逆転するとは思わなんだ...今は、あの時のような奇跡にも縋りたい。――頼むぞ」
『――奇跡は
トオルはそう締めくくって通信を切る。
「...相変わらずじゃな。厳しい状況でも冷静で、勝利を狙い続けるのがトオルの良い所じゃ。おかげで儂も、ホシノ達も――」
『――こ、こちら東部トーチカの"ファウスト"です!
「――なんじゃと?!」
―――トーチカに詰めている"ファウスト"なる『トリニティ』生の報告を受け、メインディスプレイに映る基地周辺のレーダー画面を見れば、方々から攻撃を仕掛けているオートマタやドローンを示す赤い光点が次々とトーチカから離れて同じ方向に―――『ビナー』との交戦地点へ動き出していた。
~『アビドス』砂漠 『ビナー』交戦地点~
side-モコウ
「っと...!」
目の前にミサイルが着弾して爆炎と共に砂を撒き散らし、回避機動と衝撃で装甲車が揺れる。銃座にしがみついて振り落とされない様に耐え抜き、[
「モコウ、大丈夫?!」
「大丈夫だ!――おら、落ちろッ!」
私を心配したユメにそう答え、[
『――さぁ、もっと撃ってきなさいな!ご自慢の砂嵐を無力化したのは私よ!』
『総領娘様、あまり無茶は――』
『――ここで無茶しないでいつするのよ!無理になったら変わってもらうから心配無用よ!』
―――インカムにテンシとイクのやり取りが入り、前方を見やれば、次々ミサイルが飛んで来る中を掻い潜って疾駆する装甲車の銃座で、白いサーコートをはためかせながら[
―――『ビナー』が言葉を理解出来るのか、そもそも音声認識機能があるのかは知らないが、前段作戦"マンジェット"が成功して姿を現してから『ビナー』はテンシとイクが乗り込む装甲車を執拗に狙い続けている。
「...つくづく、お嬢様らしからぬヤツだ。ヒh..."ファウスト"も大概だが、『トリニティ』には見た目に反してヤバいヤツが多いのか?――ミヤコ、そこの所どうなんだ?」
「...情報だけですが、確かに見た目と性格、行動のギャップが激しい方は何名か――」
『――こちら司令部!皆聞こえておるな?!基地を攻撃しておったオートマタやらドローンやらが
「――は?」
「――え、嘘...?!」
「――それが事実なら、私達は...」
―――突然インカムの回線に割り込んだ緊急通信で、マミゾウから齎された急報を聞いてユメとミヤコに動揺が広がる。だが―――
『――それはヤバいね。マミゾウさん、後続の主力部隊は?』
『"デカグラマトン大隊"、ゲヘナ"第二装甲大隊"、混成ヘリ部隊"アテン"は既に出撃しておる!機動力からして"アテン"が一足先に到達する筈じゃ!』
『...レミリア達は全数整備と補給が間に合ったのね。こちらにも増援が来るなら決して不利ではない』
―――ホシノが丁度、私が聞こうとした事をマミゾウに聞き、マミゾウの回答に続いてヒナが前向きな意見を挙げる。
『――じゃが、一時的にお主らに負担を増やすことになるのは間違いない。今少し戦闘は続くじゃろう。あまり無茶はするでないぞ!』
マミゾウはそう締め括って通信を切る。
『"――皆、聞いていたね?多分、この周囲のオートマタやドローンも加えてこっちに来r...いや、もう接近し始めてるね。アロナの索敵情報を各車オペレーターの端末に共有、更新するよ!"』
「――索敵情報の更新を確認!これは...数は少ないですが、あらゆる方向から敵性反応が接近しています!」
「ひ、ひぃん...!『ビナー』の攻撃も凄く激しいのに...!」
「基地じゃ"L.A.R."も準備中だろうに、こっちに全部突っ込むつもりか。随分お冠らしい、なッ!」
"先生"から更に情報が齎され、ユメが弱気な言葉を漏らすのを他所にこちらに飛んで来たミサイルを迎撃する。
『...前向きに考えれば、おかげで基地では"L.A.R."の準備に集中できる。直に見ていないけど、あんな巨躯で、軽く神秘を纏わせた程度では弾かれる堅牢な装甲を――
――集中力を削ぐ脅威がこちらに集まるなら好都合。私達の負担は大きくなるけど、後続の主力部隊ももうすぐ到着するなら対応できるわ』
『とは言え、何人かは迎撃に割かないとだね。――私達アビドス組で一時的な迎撃に出るよ。テンシちゃん達はこのままビナーの相手を』
ヒナの前向きな意見にホシノが
『っし、ミサイルは一波凌いだ...!――私は賛成するわ。ビナーは変わらず私達狙いだし、一時的なら負担もそこまで大きくならない筈よ』
『"――分かった。ホシノ達アビドスの皆は接近するオートマタやドローンの迎撃の為に一時散開!後続の主力部隊到着までの迎撃をお願いするよ!"』
―――"先生"が判断を下して指示を出し、私含め皆が了解と応える。
「...ドライバー、このまま真っ直ぐお願いします。すぐ近くにオートマタ数体の反応があるのでその迎撃を行います」
「はいよ!」
端末で共有されているアロナの索敵情報から直近の迎撃目標を選んだミヤコが行先を指示し、装甲車はスピードを上げて走り出す―――
~『アビドス』砂漠上空~
side-アル
「――こちら"Aten1"!『ビナー』の姿を捉えたわ!これより攻撃を開始する!」
『了解。――"社長"、皆。気を付けて』
司令部で混成ヘリ部隊"アテン"のオペレーターを受け持つカヨコが報告を受け取り、通信を切る。インカムから手を離し、開け放った扉から見えるオーロラが揺れる夜空を軽く眺める。
「――オーロラなんて、実物は初めて見たわね。のんびり眺めていたいけど――」
「うわうわ!『ビナー』ミサイル発射!気付くの早いね!」
―――『ビナー』の咆哮が耳を震わせ、ミサイルの発射炎が次々夜空に現れる。
「それだけ
『"Aten2"了解。――姉さん、ハルカ!基地のトーチカを襲ってた連中の姿が見えたら全部撃ちなさい!』
『は、はいぃ...!』
『わ、分かった...!』
「――"Aten3"、聞こえるわね?!貴女はジョオン達と一緒に地上の援護を!」
『"Aten3"、了解しました!』
迎撃と回避機動を指示し、"Aten2"に乗り込むジョオンと"Aten3"――"雨雲号"を操るアヤネには地上部隊の支援を指示する。ほぼ同時に出撃した主力部隊たる"デカグラマトン大隊"と『ゲヘナ』"第二装甲大隊"はまだ戦域に到達していない。
地上でも数台の装甲車がオートマタやドローンの迎撃に向かおうと散開しているけど、主力である彼女達の負担は出来る限り減らしたい所だ。
『――こちら"Aten4"!私達はこのままビナー狙いでいいのかな?』
「そうね、私達"Aten1"、そして"Aten5"と一緒に『ビナー』に仕掛けるわよ!"Aten5"は
『了解!"Aten5"にも伝えておくよ!くひひ...前の作戦の時とは違って火力全開...!ワクワクするね!』
『アビドス』から借りた"雨雲2号"を操っている"Aten4"モエの問を肯定し、モエ達"RABBIT小隊"の母校『SRT』の先輩だと言うリンゴが操る"Aten5"と協働する様にと指示を出す。
「――さぁ、仕掛けるわよ!ムツキ、ミサイル迎撃は任せたわ!」
「はいは~い!私達を邪魔するミサイルは全部ぶっ
私の指示を合図にヘリが『ビナー』へ接近を始め、ムツキが楽しげに声をあげながら[
「...まだ...まだよ...もう少し――」
「――ここッ!」
―――スコープに『ビナー』の頭部を捉え、自らの神秘を込めた銃弾を放つ―――
~『アビドス』砂漠 『ゲヘナ』"第二装甲大隊"指揮車~
side-レミリア
『――オートマタの一群撃破!』
「よろしい。――目標変更、前方の『ビナー』」
十時の方向から駆け寄って来ていたオートマタ数体の群れに榴弾を撃ち込み、一撃で纏めて吹き飛ばした事を確認して―――背中からミサイルを放ちながら移動する『ビナー』への目標変更を指示する。
『了解!――打ち合わせ通り、このまま榴弾でよろしいですね?』
「えぇ。――『ビナー』の装甲は堅牢。[
けど――榴弾なら
狙うのはあの黒い
『『『『了解!』』』』
インカムに小隊各車砲手のしっかりとした応答が一斉に入る。
「元気でよろしい。――"デカグラマトン大隊"、こちら『ゲヘナ』"第二装甲大隊"。そちらの展開状況は如何に?」
『――こちら"デカグラマトン大隊"、全隊展開完了。我々は作戦通りにビナー背部のVLSセルを狙う。120mm滑腔砲でも装甲は抜けずとも、衝撃でセルの蓋を損壊させて発射不能にできれば御の字だ』
「了解。――我々が攻撃を仕掛ければ、流石に『ビナー』も無視できないでしょう。砂嵐の回避は厳しくとも、ミサイル対策の自走対空砲は我々を護る要よ。しっかり護りましょう」
『了解。――間もなく有効射程圏内』
「了解。――"第二装甲大隊"、砲撃準備」
"デカグラマトン大隊"指揮車との通信を切り、大隊内回線に切り替えて指示を出し、砂煙を上げながら走る自車含めた各車の砲身が俯仰を調整して上下する様子が見える。有効射程圏内まで―――
「――撃て」
号令一下、全車の砲口に発砲炎が煌めく―――
~『アビドス』砂漠 地上主力部隊"セベク"指揮車~
side-"先生"
―――一瞬の風切り音が聞こえ、『ビナー』の側頭部や背面に何度目かの戦車部隊の砲撃が着弾する。煙が晴れて露になった装甲に損傷は見られないが、衝撃は伝わっているのか嫌そうに唸る。
―――"デカグラマトン大隊"と『ゲヘナ』"第二装甲大隊"が到着して主力部隊"セベク"が揃い、混成ヘリ部隊"アテン"も到着したものの、状況は好転したとは言えない。『ビナー』の装甲は堅牢で戦車の砲撃も有効打とは言えず、加えてオートマタやドローンはあちこちから接近して来て私達に攻撃を加えてくる。その迎撃にも戦力を割かなければならない事もあってどうにか作戦通り戦域に留める事で精一杯だ。
作戦の要であり、『ビナー』に有効打を出し得る"L.A.R."はまだ電源供給が終わっておらず、次の段階に進めない。
『ビナーに砲撃着弾!...やはり、損傷はありませんね』
「"相変わらずの硬さだね...でも、衝撃はある程度効いているみたいだし、まるで無力という訳じゃ――"」
『――ビナー、潜行!』
「"全員警戒!砂嵐が来るよ!"」
―――『ビナー』が唸り声をあげながら砂漠に頭を突っ込んで潜り始めた事を確認し、砂嵐を警戒する様に皆に指示を出す。
『砂嵐発生!数は六つです!』
「"索敵情報を注視して回避を優先!"」
―――数秒後、『ビナー』が完全に潜行する直前に尻尾を大きく振り回して竜巻の様な砂嵐を六つ発生させた事を確認し、回避優先を指示する。
『竜巻が多いな...!ミヤコ、しっかり軌道を読めよ!』
『っく...風が...!気流に巻き込まれて落ちないように気を付けて!』
『各車、あの砂の竜巻から距離を取りなさい。あの規模と強風だと戦車をも吹き飛ばしかねないわ』
各部隊の回避指示がインカムに入る。カメラの映像と"シッテムの箱"が映す部隊の位置情報を見れば、ランダムな軌道で暴れ狂う様に動く砂嵐を回避しようと車輌やヘリが散開する様子が見える。私が乗り込んでいる指揮車も強風で揺れ始める。
『っとと...!こりゃすごい竜巻だね...!油断したら乱気流に捕らわれて墜落待ったなしだ!』
『あの竜巻より遥かに規模は小さいけど、それでも強力で数も出せるなんてね...!イク!端末の索敵情報はしっかり見てなさい!』
『...正に対軍、大規模集団を相手取ることに特化した攻撃手段ね。サクヤ、
しかし、部隊の皆は砂嵐を物ともせず回避機動を取りながら『ビナー』の再出現を警戒する。
『――大きな振動を検知!位置は――』
「"モコウ、ユメ、ミヤコッ!!
―――アロナより早く、インカムでモコウ達に吼える様に回避を指示する。このままだとモコウ達が―――
『なっ――』
『えっ――』
『
―――しかし、『ビナー』が咆哮を挙げながら砂煙と共に姿を現し―――
「"――モコウ、ユメ、ミヤコッ?!"」
『先輩ッ...?!』
『ミヤコ?!』
―――見えてしまった。姿を現した『ビナー』に吹き飛ばされて空中で舞う装甲車と
~『アビドス』砂漠 装甲車落下地点~
side-ユメ
『"ユメ!モコウ!ミヤコ!応答して!"』
『ユメ先輩!モコウ先輩!無事なら応答して下さい!』
『"RABBIT1"!ミヤコ!応答して!まずい!砂嵐の回避で皆距離が...』
「...ぅ...う~ん...」
―――耳鳴りが酷くてまるで内容が聞こえないインカムの通信を耳にしながら目を覚ますと、砂が視界一杯に広がっている。
「...た、確か......そ、そうだ!真下から『ビナー』が現れて、それで吹き飛ばされて――」
「...ぅ...」
「――ミヤコちゃんッ?!」
―――顔を上げると、数メートル先で倒れていて呻き声を漏らすミヤコちゃんの姿が見え、駆け寄ろうとして―――
「――あ...」
―――『ビナー』が私達を見下ろして唸り声をあげているのを見てへたり込んでしまう。
『まずい...!オートマタやドローンが多数接近中!』
『このタイミングで...!』
『ちょっと多くない?!これじゃ先輩達の救出に割ける人手が...!』
―――耳鳴りはちょっとだけ治まったけど内容は殆ど聞き取れず、それでも状況が不味い事は何となく分かる。
「あの光...ま、まさか...?!」
『び、ビナー口内に高エネルギー反応!』
『っく...!オートマタやらドローンが...!誰か行けないの?!』
『地上は厳しいわ。オートマタやドローンの数が多い上に、戦車は足が遅い...!』
『装甲車で行けるかも厳しいわ!ドローンが狙ったみたいに攻撃してくる...!』
『空も厳しいわ!妨害するようにミサイルが...!』
―――でも、『ビナー』が口内の砲身を展開して砲口に光が―――"アツィルトの光"のチャージが始まって呆然としてまた耳が遠くなる。このままじゃ私達が―――
「っ...ダメ...!ここで動かないなんて先輩失格!...シールドはないけど...!」
―――自分に言い聞かせる様に呟き、立ち上がってミヤコちゃんの下に駆け出す。私の神秘でどこまで守れるか分からないけど―――!
「っ...!」
―――"アツィルトの光"が砲口で収束した瞬間、ミヤコちゃんの前に立って腕を広げて自分の神秘を全身に巡らせて―――
「――きゃっ?!」
―――突然、誰かが横から、
「――っ?!」
―――閃光が目の前の
「...っ...?」
―――閃光が消えて視界が回復すると、すぐそばに
「...っぐ、ぉぉ...」
「モコウッ??!!」
―――私の目の前で、
ということで―――後編に続く!