Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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祝、『ビナー』討伐!

そしてゲームの方は万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)現状登場したメンバー全員実装おめでとう!!ドレスヒナイベ復刻だからまさかと思ったら残りメンバー実装だと?!


File33-Ab.~砂漠の夜明け~

~『カイザーPMC』基地 駐機場~

side-ホシノ

 

<ザワザワ...

<ワイワイ...

 

ひ、ひぃん...あそこに立つの私...?」

「当然だろ。――()()()()()()()()()()したんだ。『アビドス』現役生として皆に感謝は伝えないとな。ほら行くぞ」

「さぁ、行きますよ。...自分も居ますから」

 

 待機場所のコンテナの物陰から()()を覗いて怖気づくユメ先輩の背中を、モコウ先輩と共に押して()()に据えられた即席のステージに出る―――

 

 

 

 

「「「「「......」」」」」

「「「「「......」」」」」

「「「「「......」」」」」

 

―――人、人、人。基地の駐機場に沢山の人がいる。『カイザーPMC』の傭兵達、『カイザーコンストラクション』の作業員達、『ゲヘナ』の娘達、『トリニティ』、『SRT』の娘達。ステージの反対側にはトオルさんとマミゾウさん、"先生"とミヤコちゃん達『シャーレ』の面々が並んでいる。

 

 そして―――目の前に居る『アビドス』の後輩達。皆がステージに登った私達に注目している。

 

 

「」

「...おい、ユメ」

「...ユメ先輩」

「――はっ?!

 

 皆の注目を集めているプレッシャーを受けて白目を剥いて固まったユメ先輩の両肩をモコウ先輩と一緒に小突いて意識を引き戻す。

 

「――音頭の前にまずは、私達に協力してくれた人達に改めて感謝を。

 

――進出してからずっと、私達を支援してくれている『アビドス』の大先輩トオルさん、マミゾウさん。

――初対面は戦闘だったけど、その後は『カイザーPMC』で協力してくれた"便利屋68"。

――私達の要請に応えて、今までアビドス(ここ)に留まって指揮やサポートで支援してくれた『シャーレ』の"先生"と、ミヤコちゃん達"RABBIT小隊"。そしてアヤちゃん。

――セリカちゃんとネイトちゃんが誘拐された時、救出作戦を提案して参加もしてくれた上に、『ビナー』討伐にまで参加してくれた『SRT』の"Кролик小隊"。

――私達『アビドス』に支援戦力として来てくれた『ゲヘナ』、『トリニティ』の娘達。

 

そして――」

 

 それぞれを見ながら挙げて行き―――最後に目の前の『アビドス』の後輩達を見る。まだ包帯やガーゼを所々に付けているけど、元気そうなセリカちゃんとネイトちゃんも居る。

 

「――廃校寸前だったのに、復興を諦めずに一緒について来てくれた後輩の皆――皆、皆...本当に、ありがとう...!

「――ありがとな、皆」

――あ、ありがとう皆...!

 

―――先輩二人と揃って頭を下げる。

 

「――皆が協力してくれたおかげで、セリカちゃんとネイトちゃん(大切な後輩二人)を誘拐してまで『アビドス』を奪おうとした"鬼傑組"の野望を阻止できた上に――トオルさんとマミゾウさん(アビドスの大先輩二人)の願いでもある『アビドス』復興の()()()()()()だった『ビナー』すら()()できた。――私達だけじゃ到底成し得なかったって、今も実感してるよ」

「――まさか、こんなに『アビドス』に手を差し伸べるような好き者が集まるなんて思わなかった。おかげで、復興に向けて大きく前進できる。――ほらユメ、お前だ

ひゃいっ!え、えっと...だ、だから......『アビドス』を狙う大きな悪意と、復興を阻む()()()()()()を跳ね除けられた()()を祝って――皆でこの喜びを分かち合おう!さぁ、グラスを掲げて!

 

―――最後に緊張が解けたユメ先輩の号令一下、皆ジュースやお茶が満たされたグラスを掲げる。

 

 

「――セリカちゃんとネイトちゃんの救出と無事に」

 

「――()()()()()()だった『ビナー』討伐成功に」

 

「――『アビドス』復興への道が拓けた()()と、ここまで私達を助けてくれた()()()()に感謝を込めて――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「乾杯ッ!!」」」

 

 

『『『『『かんぱーーい!!』』』』』

 

―――夜明けが見え始めた空に、皆の嬉しそうな声が重なり響き渡る。

 

 


~『カイザーPMC』基地駐機場 祝賀会会場~

side-"先生"

 

「――あ、"先生"!」

「――あら、もう食べないの?」

「"まだお腹に余裕はあるけど、折角だから皆と話して回ろうかなって思ってね"」

 

―――祝賀会が始まって一時間が経とうとしている。折角だから各校、各勢力の面々と話して回ろうと思い立って歩き出し、最初に声を掛けられたのは『トリニティ』のヒフm..."ファウスト"とテンシだ。

 

「"――『トリニティ』はお嬢様学校って聞いていたから、こういうバーベキューは嫌いかなって不安だったけど..."」

 

<「――こちら頃合いですわ」

<「ありがと。...mgmg...うん、安いって解る味と質だけど、量があるしやっぱり私はこういうのがいいわねぇ」

<「トリニティ(ウチ)の焼肉屋は高くて少ない手合いが多いもんね。その分美味しいけど...たまにはガツガツ行きたくなるよねぇ」

 

―――二人の背後でバーベキューを楽しむ、白い制服を纏う『トリニティ』"砲術委員会"、"ソーサーナイツ"の面々を見回す。目の前の二人もティーカップでは無くジュースが満たされたグラスを持っていて、特にテンシは淑女然とした容姿とのギャップが凄い。

 

「――何も全『トリニティ』生がお嬢様、ということはないわ。ヒh..."ファウスト"も勿論、"砲術委員会"と"ソーサーナイツ"の大半は一般家庭の娘よ。

 私やイクを含めた数少ないお嬢様でも――()()()()()()()()()()()()()()()()()娘しかいないわ」

「"なるほどね...楽しんでくれているなら何よりだよ。――改めて、『アビドス』への来援ありがとう。『アビドス』と『シャーレ』だけじゃ、ここまで脅威を跳ね除けて前進できなかった"」

 

 二人にお礼を言って頭を下げる。

 

「力になれたなら幸いよ。――"ファウスト"と『アビドス』の()()()がなければずっと気付けなかったか、気付けてもどうにもならない状況だったでしょうし」

う“っ......そ、そうですね...あはは...

 

 テンシは"ファウスト"を見て()()()()()()()()、"ファウスト"はビクッと肩を跳ねさせて誤魔化す様に笑いながら視線を逸らす。この様子だと、テンシは―――

 

「――"先生"、ちょっと耳を貸して」

「"...?分かった"」

 

 テンシは私を見てそう頼んで来て、素直に受け入れて耳を寄せる。

 

「...『ブラックマーケット』では()()()()()()()をやったわね。()()だと"ファウスト(あの娘)"も()()()()()()()()()()()()()だったそうだけど...()()()()()()()()()()()()()()ことを()()()()()()()も居るの。『シャーレ』の特性上付きっきりとはいかないでしょうけど――願わくば、()()()()()は二度としないように時々『アビドス』の娘を見てあげてほしいわ」

「"...!"」

 

 耳打ちされた内容に一瞬驚いて声を漏らしそうになるけど、抑え込んで小さく頷く。―――やはり、テンシは―――『トリニティ』は『ブラックマーケット』での()()()()の事を知っている様だ。恐らく"ファウスト(ヒフミ)"の様子を見守る為に人を出していたのだろう。

 

―――テンシは"ティーパーティー"のホスト()()でもあるらしいし、やはり"ファウスト(ヒフミ)"が持つ繋がりは普通とは思えない。

 

―――閑話休題。

 

「――まぁ、『アビドス』を滅びから救う一助になれて嬉しいのは本心よ」

「――はい!『アビドス』の皆さんを助けることができて、私も本当に嬉しいです!」

 

 二人は揃って心から嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「"最初に聞いた時は驚いたけど――本当に、君達が支援に来てくれて嬉しかったよ。...君達は、祝賀会が終わったらどうするんだい?"」

 

 改めてお礼を述べ、二人にこれからの事を尋ねる。

 

「勿論、『トリニティ』へ戻るわ。――"ホストリーダー"から『支援は惜しまないように』って言質は取ったから"砲術委員会"と"ソーサーナイツ"を動員したけど――本当はトリニティ(ウチ)も結構忙しいの。

 永らく対立が続く『ゲヘナ』との宥和の一歩たる()()の締結が目前で少しピリピリしていてね...特に"ソーサーナイツ"は()()()()()に戻らないと"正義実現委員会"の負担が大きいから」

「"()()...いつかの"風紀委員会"襲撃の時もその言葉を聞いたね。一体どんな条約なんだい?"」

 

 "風紀委員会"が攻撃して来た時、アコが"便利屋68"逮捕を口実に私を()()しようとした動機を思い出して尋ねる。

 

「――『エデン条約』。『ゲヘナ』、『トリニティ』両校から人員を送り合って組織する"ETO(エデン条約機構)"を以て両校間の紛争、戦争を阻止する――実現すれば、永きに渡る対立を大きく改善できるわ。――ただ、お互い一枚岩じゃなくてね...()()()()()も少なくない。実現間近でも反対活動は活発だから――"ティーパーティーホスト"を狙った()()()()()の可能性を考えれば"ソーサーナイツ"の護衛は必要よ。...犯人不明だけど実際一人...

 

 テンシは()()―――『エデン条約』という名前の条約について説明してくれる。どうやら『トリニティ』と『ゲヘナ』の関係を大きく改善する為の条約らしい。でも、反対して()()()()()を行う可能性もある程に両校の対立意識は根深い様だ。テンシが悔しそうに何か呟いたのが少し気になるけど―――『エデン条約』については『ゲヘナ』側からも話を聞いた方が良さそうだ。

 

「"なるほどね...トリニティ(自分の学校)が忙しい中『アビドス』の支援に来てくれて、改めてありがとう。祝賀会、楽しんでね"」

「えぇ。こういうパーティーはそう簡単にできないし、楽しめるだけ楽しむわ」

「はい!"先生"も楽しんでくださいね!」

 

 二人に改めてお礼を言ってから離れ―――すぐ傍で集まっている『ゲヘナ』の面々の下へと向かう。

 

 

<「あ、私のハラミ!」

<「へへ、隙を見せたお前が悪い」

 

「――頃合いね」>

「mgmg...美味い!流石サクヤね...!」>

 

「――あら、"先生"。お肉はもういいのかしら?」

「...mgmgmgmg...!...ゴクン..."先生"、作戦での前線指揮お疲れ様」

 

―――『トリニティ』側とは違って楽しそうな喧噪が満ちる『ゲヘナ』の娘達の集まりに近付くと、レミリアとヒナが私に気付く。ヒナは小さな口でチマチマとカルビを食べていた様で、私に気付くと急いで飲み込んで何事も無かったかの様に私を労う。

 

「"二人もお疲れ様。食べるのもいいけど、折角だから皆と話そうかなって思ってね。――改めて、『アビドス』への支援ありがとう"」

 

 二人にそう答え、改めてお礼を言って頭を下げる。―――彼女達が戦車部隊と歩兵戦力を送って来てくれた事も大きな貢献だった。『カイザーPMC』の部隊だけでは数の差が厳しかった状況での、『トリニティ』、『アビドス』と合同での横槍と奇襲が見事に嵌って『ブラックマーケット』()()()()()()の合同部隊をあっという間に壊滅させたと言う。

 『ビナー』討伐でも勿論、"デカグラマトン大隊"と共に最前線で戦い、『ビナー』が操って寄せ集めたオートマタやドローンの迎撃、『ビナー』背部のVLSセルの制圧で作戦に貢献してくれた。

 

「力になれたなら幸いよ。()()()()()()()()()も貴重な経験になったわ。願わくば、今後は()()()()()として時々活用したい所ね」

「...そう言えば、『トリニティ』共々()()()はそうだったわね。...でも、あの()()()()()()は他校自治区からでも見えていた筈だし、世間はそれで納得できるかどうか...」

「そこはウチのマコト("議長"様)の手腕と...随分『アビドス』に入れ込んでるらしい射命丸アヤ(キヴォトス最速のブン屋)次第でしょうね」

 

<「――テンシさん、ちょっとお時間よろしいですか?」

<「構わないけど...変な記事を書いたら許さないわよ。こっちは()()でピリピリしてるんだから」

<「その辺りはよく弁えていますよ。...『アビドス』の意向次第では()()()()の可能性がありますが、記事を書けるのであればできる限り情報は集めたいので。では早速――」

 

 レミリアはヒナの言葉にそう返しながら、私が去った後丁度テンシとのインタビューをアヤは始めたらしいアヤの姿に目を向ける。―――そう言えば、彼女は祝賀会開始早々レミリア達『ゲヘナ』の面々からインタビューをして回っていた。

 

「"...確かに、アヤはよく協力してくれてるね。『アビドス』復興を諦めない原動力を個人的に知りたいって彼女は言っていたけど..."」

「ふむ...なら、彼女は充分知りたい情報、理由は探れたんじゃないかしら。『ビナー』――『アビドス』()()()()()()()()()()()を排除できたのは、私達の支援以上にその原動力が成したことだと思うから。...でも、本当に珍しいことよ。飛び回ってるから自分から会おうとすると中々会えない彼女が一つのものに入れ込むなんて」

「そうね。...ネタの為にあちこち飛び回っているらしい彼女が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――それだけ惹かれたんだと思う。『アビドス』か、若しくは...」

 

 ヒナはそう言って私を見つめる。

 

「"――私?"」

「...あり得るわね。ゲヘナ(ウチ)含め、()()()()()が就いている学校も幾つかあるけど――()()()()()()()()()()()()()は珍しいもの。そんな貴方が、"連邦生徒会"が設立した『シャーレ』という()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に所属していながらその権力を濫用せず、生徒の為に行使する――ここまで生徒に真摯な教職は稀よ。...ゲヘナ(ウチ)の"学園長"とは大違いね、本当...

 

 レミリアは納得した様に頷きながら理由を説明してくれる。『SRT』に"教官"が居た様に、他の学校でも教職に就いている場合があるらしい。そんな中で、私が()から来た事、『シャーレ』に所属しながら権力を濫用しない姿勢は珍しい様だ。最後に何か小さく呟いたのが気になるけど...

 

「"教師は生徒を助け、教え導くものだからね。私はそれを果たそうとしてるだけなんだけど..."」

「その姿勢を全うする姿が珍しいのよ。貴方以外にも教職は居るけど、それでも数は少ないしね」

 

 謙遜するとレミリアは重ねて私の教師としての姿勢が珍しいと返してくる。キヴォトスは生徒が主体故に大人は少ないらしいから、教職の数も少ないというのなら私の珍しさは際立つのだろう。

 

「"なるほどね...『SRT』でサグメ"教官"に会ったし、『ミレニアム』にも"教授"が居るらしいから他の学校の教職も気になる所だね"」

「『トリニティ』は居ないらしいけど、()()()や他の規模が大きい学校には居る筈だから『シャーレ』として各校を回っていけば出会えると思うわ」

 

 どうやら()()()以外の大きな学校には教職が居るらしい。確かに『シャーレ』の仕事であれば色々な学校を回る事になるだろう。その時に会える事を祈ろう。

 

―――閑話休題。テンシが言っていた()()の事を聞いてみよう。

 

「"――さっきトリニティ(隣の方)でテンシから聞いたけど、『トリニティ』と『ゲヘナ』では『エデン条約』っていう条約を結ぶ予定らしいね"」

「えぇ、前の"連邦生徒会長"が()()した時は反対活動が再燃して空中分解しそうになったけど――"副会長"が昇進して条約締結の仲介を引き継いでくれたし、お互い条約の実現を諦めなかったおかげで締結目前まで来ることができたわ」

「『エデン条約』が実現すれば、少なくとも『トリニティ』の方でゲヘナ(ウチ)の生徒が問題を起こす頻度を抑えることができる。――最早当たり前の認識だった両校の対立を融和的に変える大きな一歩になる筈。...もしかしたら、条約締結に絡んで"先生"にも何か依頼が入る可能性がある」

「"...本当に、お互い仲良くなろうとしているんだね。――仲が悪い者同士が歩み寄ろうとするなら、私は止めないよ。銃口を向け合うより、手を握り合う方が余程平和的だしね"」

「"先生"も賛成してくれるなら心強いわね。...少なくとも、生徒個人レベルではお互いの認識に変化があるから、条約が締結されれば大きく変わる筈よ」

 

 レミリアが私の賛意を聞いて微笑むと、すぐ隣の『トリニティ』の娘達の集まり―――の少し離れた方に目を向ける。そこでは―――

 

<「...久しぶり。作戦お疲れ様」

<「そっちこそ、作戦お疲れ様」

<「...まさか、こんな形で会える機会が得られるなんてね」

<「"副議長"から砂漠に行くって聞いた時は面倒臭かったけど――まさか"ソーサーナイツ"まで似た目的で来るなんて予想外だった」

<「私だって、"総長"から急に『アビドス』に()()に行くって聞いて面食らったわ。――でも、貴女の姿が見えたから予想外だったけど頑張れたの」

 

―――"ソーサーナイツ"の娘と、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の娘が()()()()()()()()で会話を交わしていた。両校の対立し合う雰囲気なんて微塵にも感じられない、仲睦まじい雰囲気がこの距離からでも感じられる*1

 

「"あれは..."」

「――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"と"ソーサーナイツ"の()()()()()よ。両組織間では知られていて受け入れられているけど、この関係がお互いの学校で大々的に知られたら――まぁ、お互い()()()()()()()()()()わね」

「...私は実は、あの二人を見るまでは『エデン条約』に懐疑的だった。学校として歩み寄っても、結局生徒――個人が変われなければ意味は無いから。――あの関係を、()()()()()()()()()()()ようにする為にも、『エデン条約』は実現したい」

 

 レミリアとヒナは揃って改めて決意を宿した様な表情を浮かべる。―――少なくとも一組、『エデン条約』を締結する前に()()()()()()を実現している。あの関係を当たり前の様に築ける様にする為にも―――

 

「"...あんな関係を見せられたら、私も協力したくなるね。『シャーレ』の特性上、今回の『アビドス』みたいな付きっきりは今後難しいと思うけど、できる限り協力させてもらうよ"」

「そう言ってもらえると心強いわ。――私の()では『トリニティ』側で()()()()()()()()()()()()けど...ゲヘナ(こちら側)で『シャーレ』に頼る事態が起きたり、逆にゲヘナ(私達)を頼りたい事態が起きたらお互い協力しましょう」

「私達"風紀委員会"は多忙だけど、できる限り協力する。...それから親友としての経験だけど、レミリアの()()()()()()。だから――『トリニティ』に行くことがあったら気を付けて」

「"分かった、肝に銘じておくよ。――改めて、『アビドス』への来援ありがとう。祝賀会、楽しんでね"」

「"先生"も楽しんで。...さて、『アビドス』の娘達と話しにでも行こうかしら。これからも()()()()()は維持したいし、ね

 

 二人の下を離れ、祝賀会の喧騒中をブラブラ歩いていく―――

 

 

「――あ、"先生"じゃん!大の男なのにもうお腹いっぱいなのかな~?」

「...ムツキ、"先生"に失礼だよ」

「"はは...確かに最近ちょっと()を感じ始めてる気がするけど、お腹にはまだ余裕はあるよ。折角だから皆と話して回りたくてね。こうしてブラブラ歩いていたんだ"」

 

―――『カイザーPMC』の傭兵達の集まりから少し離れた所でグリルを囲む"便利屋68"の面々の中でムツキに声を掛けられ、カヨコの窘めに対して苦笑しながら言葉を返して彼女達の下に歩み寄る。

 

「――あら"先生"じゃない。作戦お疲れ様」

「お、お疲れ様です"先生"...!」

「mgmg...ゴクン...お疲れ様、"先生"...」

「お疲れ様"先生"。地上での指揮、お見事だったわ」

 

 ムツキとカヨコに続いて私に気付いた四人がそれぞれ労ってくれる。

 

「"皆もお疲れ様。――改めて、セリカとネイトの救出、作戦への参加ありがとう。君達のおかげで砂漠に放り出された二人を助けることができた"」

 

 私も"便利屋68"の皆を労い、感謝を伝えて頭を下げる。―――初対面は校舎襲撃で敵対したけど、セリカとネイトが誘拐され、"鬼傑組"の策謀で"カタカタヘルメット団"本拠地を攻撃した時に"鬼傑組"から寝返って以来、"カイザーPMC"に雇われる形で『アビドス』に協力してくれた。

 そして、また"鬼傑組"の策謀でセリカとネイトが『アビドス』の砂漠に放り出された時は、トオルの指示を受けて彼女達が救出に向かい、『ビナー』に襲われかけていた所を救い出した。

 

「私達も二人が()()()()()に陥る前に間に合わせることができてよかったわ。"鬼傑組"に雇われていた時はとことん上手く行かなかったけど――これが私達"便利屋68"の実力よ!『ビナー』みたいな巨大な兵器相手だって臆さないわ!」

「くふふ、でもビナー(アイツ)に大きな砂嵐起こされた時はすごく慌ててたよね~、アルちゃん」

「ちょっ、それは...!」

 

 アルは胸を張りながら"便利屋68"の実力だと誇るけど、ムツキがニヤニヤ笑いながら補足すると一瞬で顔を赤くする。

 

「"あんな砂嵐を起こされたら誰だって慌てるよ。私としては、帰還率百パーセントを達成して作戦を成功させられたから良かったよ"」

「...皆で力を合わせて立ち向かったことも大きいね。『トリニティ』も『ゲヘナ』も強力な戦力で支援してくれたし」

「そうね。"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"と"風紀委員会"の戦力には助けられたけど...」

 

 

<「二人共、改めてありがとね~。『トリニティ』もだけど、支援がなかったら状況はもっと厳しかった筈だし、いつかの()()の償い以上に助けられちゃったよ」

<「"鬼傑組"はゲヘナ(ウチ)でも暗躍していたし、あの状況では『ビナー』を討たなきゃいけなかったもの。私達はすべきことをしたまでよ。...願わくば、今後も貴女達『アビドス』とは()()()()を維持したいわ」

<「...そういうのは明日以降にでも改めて話そっか~。今は『ビナー』討伐の喜びを分かち合って楽しもう~。ほら、お肉いい感じだよ~」

<「...そうね。いただくわ」

 

 

 カヨコの言葉を聞いてアルは不安そうな表情を浮かべ、ホシノと会話を交わして焼けた肉を取り分け始める様子にチラリと目を向ける。

 

「"...そう言えば、"便利屋68"は『ゲヘナ』から指名手配されているんだったね。万魔殿と風紀委員会(君達を捕まえる側の組織)のトップ陣まで来ていたら気が気じゃなかったか..."」

「...救出から帰還してトオル"理事"に報告しに行こうとしたら――"万魔殿《パンデモニウム・ソサエティー》"の戦車が基地に次々入って来るのが見えたから"社長"ってば白目剥いて、しかも"副議長"と"風紀委員長"がデサントしてた戦車から降りて来た所も見ちゃって全身真っ白になってたわねぇ...」

「...あれは流石にアルちゃん程じゃなくても、私達皆緊張と困惑で固まっちゃったよね~」

 

 ジョオンの話を聞いて、ムツキも茶化そうとせず苦笑して補足する。―――やはり、便利屋68(指名手配組織)としては万魔殿と風紀委員会(捕まえる側)の人間がカイザーPMC基地(同じ場所)に居るとなれば困惑もするだろう。

 

「...それで、明日にでも『アビドス』の娘達に話すつもりなんだけど――私達"便利屋68"は、これまでの業務と今回の作戦での報酬を貰ったら契約を解除して『アビドス』を出るわ。元々色々な学校、組織から単発的な依頼を請け負う形態だから、こうしてそれなりの期間一所に留まるのはちょっと性に合わないしね」

「それから――今回の報酬で費用は十二分に間に合う試算だから、事務所も移転する予定なの。だから、しばらく身の回りがバタバタして依頼も請け負えないし、会うのも厳しいと思うわ」

 

 アルは真剣な表情でこれからの予定を明かし、ジョオンが補足する。―――指名手配されているなら、一所に留まるのは捕まるリスクを高めるだろう。今回の報酬を利用して、ついでに事務所(拠点)も変えて一度足を眩ませるつもりの様だ。

 先生(教師)としては、指名手配されるような行動を止めて全うな学校生活を送って欲しいけど―――

 

「"――今後も、()()()()()()()()()()()()の便利屋稼業を続ける意思があるなら、私は止めないし、万魔殿と風紀委員会(レミリアとヒナ)に密告もしないよ。でも、何かあったら『シャーレ』に――私に遠慮せず頼ってね。困っている生徒を助けるのが゚先生"だから"」

「――くふふ、キザなこと言うじゃん。じゃあ、困ったことになったらありがたく頼らせてもらうよ」

「...確か、『シャーレ』のビルは"D.U.外郭地区"にあるんだっけ。――移転先がちょうどその地区だから、心強いね」

「ありがたい申し出だけど――寧ろ、"先生"も困ったら私達に遠慮なく頼ってもいいのよ?"護衛から迷子探しまで何でもやります"――それが"便利屋68"よ!」

 

 困ったら『シャーレ』に頼ってもいいと申し出でれば、アルは自信満々に"便利屋68"に頼ってもいいと逆に頼ってもいいと提案する。セリカとネイト救出、『ビナー』討伐作戦で活躍したし、指名手配されていながら逮捕されずにここまで活動出来ているのならやはり実力は高いのだろう。

 

「"じゃあ、お互い困った時は協力しようか。――それじゃあ、私は他の娘達の所に行くよ。祝賀会楽しんでね"」

「既にシオンは沢山食べて楽しんでるけど..."先生"も楽しんで!」

「mg...?!ゴクン...だ、だってこんな沢山のお肉普段は食べられないし...」

「"沢山食べられるのは若さの特権だよ。トオル達が沢山用意しているから遠慮なく、心行くまで楽しんでね"」

 

 アルが一人でお肉を焼いて食べ続けるシオンを見て微笑み、視線に気付いたシオンは急いでお肉を飲み込んで恥ずかしそうに言い訳する。そんなシオンに沢山食べられるのはいい事だと返して"便利屋68"の面々の下を離れる。

 

 

「――"先生"、お疲れ様です」

「――"先生"、お疲れ様。楽しんでるかしら?」

 

―――少し歩けば、ミヤコ達"RABBIT小隊"とイナバ達"Кролик小隊"―――『SRT』の面々の集まりに近付き、ミヤコとイナバが気付いて声を掛けて来る。

 

「"二人もお疲れ様。私も充分楽しんでるよ。――君達も楽しめてるかい?"」

「はい。こうしてイナバ先輩達と語らう機会も中々得られないので、この機にと」

()()()のトップ層も居るし、今後の作戦活動を円滑にする為の渡りを付けられるいい機会...だけど、祝賀会(折角のお祝い)に仕事を持ち込むのは無粋だから抑えているわ」

 

<「mgmg...うん、火が使えるなら焼きマシュマロだよねー。香ばしさと甘さのハーモニー...!」

<「モエ、こっちもお団子いい感じに焼けたよ。後はこの特製みたらしで...ほら、食べなよ」

《small》<「ktkr!ありがとリンゴ先輩!」

 

<「...頃合いか。レイセン先輩、まだ食べるか?」

<「いただきましょう。...そういうサキこそ、焼いてばかりであまり食べてないでしょう?」

<「...そうか?焼きに集中してると自分じゃ気付きにくくて...」

<「では交代しましょう。折角の機会なんですから、食べて楽しまなければ損ですよ」

 

<「...どう?美味しい?」

「mg...はい、美味しいです...!」

<「なら良かったわ。普段はイナバかリンゴがよくやるから慣れてなかったんだけど...」

 

 二人の後ろでは、『SRT』の面々が楽しそうにバーベキューを楽しみながら語らっている。皆楽しめている様だ。

 

「"楽しんでいるなら何よりだよ。――改めて、セリカとネイト誘拐に際して救出作戦の立案と参加、そして『ビナー』討伐作戦への参加ありがとう。ミヤコ達"RABBIT小隊"も居なかったら、そもそも『アビドス』での活動は厳しかった"」

 

―――改めて二人にお礼を言って頭を下げる。イナバ達"Кролик小隊"が居なければ『アビドス』と『シャーレ』だけで救出を行わなければならず―――ミヤコ達"RABBIT小隊"が『シャーレ』指揮下に居なければ私だけで『アビドス』の皆との交流や支援を行わなければならなかっただろう。

 

「私こそ感謝したいわ。"鬼傑組"が他校自治区への介入を行うような行動を取らなければ『ブラックマーケット』を掣肘するきっかけは得られなかっただろうし、救出作戦と討伐作戦は私達にとっても貴重な経験になったから」

「私も同意見です。小隊を結成したばかりで実戦経験が浅い私達にとって、『アビドス』での活動は大きな糧になりました。...願わくば、このまま『シャーレ』指揮下で"先生"をサポートしていきたいです」

「"そうなれば私にとっても凄くありがたいけど..."」

 

 ミヤコ達"RABBIT小隊"が『シャーレ』指揮下に残ってサポートしてくれるならとても心強い。だけど―――

 

「――今回『アビドス』で起きた一連の事件はSRT(学校)だけに留まらず、"連邦生徒会長"に直接報告しなければならないわ。『ブラックマーケット』の犯罪組織による他校自治区介入、『ビナー 』――()()()()()()()撃破による『アビドス』()()()()()()の排除。――状況が大きく動くもの。場合によってはミヤコ達も駆り出されるかもしれない」

 

 イナバが私の言葉を継いで今後『SRT』の動向どうなるかまだ分からないと懸念を挙げる。

 

―――『ブラックマーケット』に君臨する()()()()()()の一角が壊滅すれば、残る組織や他の組織が空隙を狙って争い合い、勢力図は大きく変わるだろう。『ブラックマーケット』の監視、犯罪捜査を行っている"Кролик小隊"はより忙しくなるだろう。

 そして、ミヤコ達"RABBIT小隊"も―――『アビドス』での活動終了後も『シャーレ』指揮下に留まれるか分からない。『シャーレ』も"連邦生徒会"傘下の部活動だけど、『SRT』への指揮命令権は"連邦生徒会長"が直接有している。現会長たる(ユカリ)の命令があれば、ミヤコ達は『シャーレ』を離れるしかない。

 

「――でも、報告の際に"RABBIT小隊"の『シャーレ』指揮下での活動継続を嘆願してみるわ。組織、命令系統の違いはあるけど、『シャーレ』もまたキヴォトス中の学校に介入できる組織。"先生"の指揮とサポートは強力だし、ミヤコ達にとってはこれからも貴重な経験の糧になるだろうから」

「...先輩、ありがとうございます...!」

 

 イナバが嘆願を提案するとミヤコは嬉しそうに瞳を輝かせてお礼を言う。―――憧れの先輩の心遣いに喜ぶ後輩の姿は見ていて微笑ましい。

 

「"ありがとう、イナバ。私としてもミヤコ達のサポートはありがたいから、嘆願が通ることを祈るよ。――それじゃ、私は他の子達の所に行くよ。引き続き祝賀会楽しんでね"」

「ありがとうございます。"先生"も、心ゆくまで楽しんください」

「錚々たる面々が集まっているものね...色々と話したいことはあるでしょう。――"先生"も楽しんでね」

 

 二人と別れ、再びブラブラと歩き出す―――

 

 

 

 

「――あぁ、"先生"!ここに居ましたか」

「"――アヤ?私を探していたの?"」

 

―――他の生徒や『カイザーPMC』の傭兵達、『カイザーコンストラクション』の作業員達ともバーベキューを楽しみながら語らって回って十数分。アヤが小走りで私の下に来た事に気付いて振り向く。

 

「――正確にはトオルさんとマミゾウさんですね。ちょうどホシノさん達三年生組も居まして。"先生"にお礼が言いたいとのことで、インタビュー後に探していたんですよ。マミゾウさん達は即席ステージの傍で集まっています」

「"なるほどね...分かった、早速マミゾウ達の所に行くよ。――アヤはまだインタビューして回っているのかい?"」

「いえ、マミゾウさん、ホシノさん達で大体終わりましたよ。これから楽しむつもりです。今は祝賀会(楽しむべき場)なので話し合っていませんが、ホシノさん達に許可を得られればいい記事が書けそうです」

 

 アヤは私の問いに対して満足そうなホクホクした表情を浮かべる。どうやらインタビューで沢山情報を得られたらしい。ホシノ達はシャーレ(私達)が来る前に()()()()()に騙されて来た経験から、そう言った大人達を寄り付かせる要因になる新聞やネット記事で『アビドス』の事を書かれる事を良く思っていない。―――でも、トオルやマミゾウ、そして"先生()"のおかげで少し信用出来る様になったかもしれないし、アヤは真摯に『アビドス』に協力している。彼女が書くなら、と許してくれる可能性もあるだろう。

 

「"そっか。もし記事を書くことになったら、ホシノ達を困らせるような内容は書かないでね"」

「勿論ですよ。――あぁ、マミゾウさん達の下に行く前に一つ。『アビドス』での活動が終わりましたら、『シャーレ』で"先生"に()()()()()()()()があるので、頭の隅にでも覚えておいてください」

「"...?分かった、覚えておくよ。祝賀会楽しんでね"」

 

 私に頼みたい事とは何だろうかと疑問を浮かべながらアヤと別れ、マミゾウ達を探して歩き出す―――

 

 

「――む、来たか」

「アヤはちゃんと伝えたようだな」

「来た来た~。"先生"、バーベキュー楽しんでる~?」

 

―――アヤが言っていた通り、即席ステージの傍のグリルを囲むマミゾウ達を見付け、マミゾウとホシノから声を掛けられる。

 

「"勿論楽しんでるよ。ホシノ達も楽しんでるかい?"」

「あぁ。これだけ豪勢なバーベキューは今までできなかったからな」

「モコウはよく食べるからね~。私は腹八分目くらいだから焼きに徹してるけど楽しんでるよ!」

 

 モコウ、ユメは嬉しそうな様子で楽しんでいると答える。

 

「"――そう言えば、ノノミやシロコ達は一緒じゃないんだね"」

「ノノミちゃんはサクヤちゃんと一緒に。シロコちゃんはさっきヒh..."ファウスト"の所に行ったよ。アヤネちゃんはモコウ先輩へのお説教を終わらせてから、セリカちゃん、ネイトちゃんと一緒に別の所で楽しんでるよ~」

「...やっぱりアヤネの説教は堪えるな。淡々と、反論も許さない勢いで詰められるとキツい」

「それだけのことをしでかそうとしたんじゃ。お主の治癒能力は強力じゃが――あの行動はそもそも治癒能力も何もない無謀なもの。勇気と無謀は違う――それを肝に銘じることじゃ」

「あぁ、よーく銘じておくよ」

 

 モコウが参ったと言わんばかりに頭を掻くと、マミゾウは咎める様に目を細めて諭し、モコウは降参だと軽く両手を挙げて答える。

 

「全く、ちゃんと反省しているのか..."先生"、改めておじさん達の要請に応えてくれてありがとう。『シャーレ』の支援がなかったらネイトちゃん達を迎える考えは浮かばなかっただろうし、"便利屋68"とも敵対したままだったかもしれない。"鬼傑組"の策謀への対抗もできなくて、()()()()()になっていたかもしれない。"先生"、ミヤコちゃん達――『シャーレ』が居たから、きっとこれだけの繋がりと、支援を得られたんだって思うんだ」

「ホシノちゃんの言う通り、『シャーレ』の支援がなければ『ビナー』討伐なんて()()()()()は起こせなかった。――『シャーレ』が私達の要請に気付いて応えてくれた。これがきっかけになった()()だと私は思うの。だから――"先生"、本当にありがとう!」

「『シャーレ』が来る前だったら、ユメは相変わらずお気楽だとしか思わなかっただろうな。――まさか『ビナー』討伐ができるなんて思ってもみなかった。正に――ユメが言う()()を『シャーレ』が――"先生"が齎してくれた。――ありがとう、"先生"」

 

 ホシノ達三人が私に揃って頭を下げる。

 

「――"先生"、ホシノ達に手を差し伸べてくれたこと、心より感謝する。『ビナー』への対処で手一杯だった俺とマミゾウだけでは、ホシノ達への支援は不十分に終わっただろう。『シャーレ』が来てくれたからこそ、『ビナー』討伐まで果たせたと俺も実感している」

「うむ。――全く、"先生"と『シャーレ』には感謝してもし切れぬな。いくら戦力を注ぎ込んでもまるで刃が立たず、本校を砂に埋められてから凡そ三十年...生きてる内に悲願である復興への道が拓けるとは思わなんだ。――ありがとう、"先生"」

 

 そして、ホシノ達に続いてトオルとマミゾウも頭を下げる。

 

「"――私こそ、皆に感謝してもし切れないよ。()()()()()のせいで大人を信じられなかった君達が、困っている生徒を助けたいという私の意思を信じてくれたから、ここまで君達を支えることができたんだ。『アビドス』復興への道を拓く支えになれて、私も本当に嬉しいよ"」

 

 ホシノ達の謝意に微笑みながらそう返す。―――()()()()()に翻弄されて来たホシノ達が、私達の『アビドス』の苦境を助けたいという意思と善意を信じてくれたからこそここまで支援出来たのだと実感している。活動を続ける内にシャーレ(私達)以外にも支援の手が増えたけど、これもまたホシノ達が受け入れてくれたからこそ彼女達も存分に支援する事が出来た。―――ユメ程あっさり信じる事も問題ではあるけど、他者を信じる事は繋がりを広げる事や困難を乗り越える力となる。ホシノ達が()()()()()()()を取り戻す一助になれた事も、"先生"として嬉しく思う。

 

「本当にありがとね、"先生"。――それじゃあ、おじさん達も動こっか~。レミリアちゃんとは少し話したけど、アヤちゃんのインタビューに応えていたから他の娘達とはまだ話せてなかったからね」

「...正直不安はまだあるが、アヤは今まで真摯にサポートしてくれたからな。委員会で話し合って最終判断を下すが――アイツなら悪い記事は書かないだろう」

「記事の影響によっては、もっと支援を得られるかもしれないしね!...も、勿論()()()()()()も紛れるかもしれないからちゃんと吟味するよ!」

「"無条件で信じることも問題だからね...委員会の皆も居るんだから、話し合って判断を決めることも大事だよ。――まだお開きじゃないし、祝賀会楽しんでね"」

「"先生"も楽しんでね~」

「大人三人でゆっくり語らってくれ。それじゃあな」

「"先生"、本当にありがとう!楽しんでね!」

 

 ホシノ達は軽く手を振りながら歩き出し、マミゾウ、トオルと共に見送る。

 

「――行ったか。実は"先生"を呼び寄せたのは礼を言う以外にもあってのぉ。...生徒達には内緒じゃぞ?」

 

―――三人を見送ると、マミゾウはニヤリと笑いながらコートの裏に手を入れる。二秒程探る様に手を動かして取り出したのは、()()()()()()()()()()()()()のジンジャーエールのラベルを巻いた銀色の300mlの缶三本。マミゾウが内一本のラベルに触れてずらすと―――

 

 

「"ビール...()()じゃないか。『シャーレ』のビルにあるエンジェル24(コンビニ)は勿論、ビル周りのお店でも一切置いてないのに..."」

 

 銘柄は知らないものだけど、缶に直接プリントされた絵柄では堂々と『ビール』と記されている。―――()であればコンビニでも置いてあるお酒とタバコを、キヴォトスでは一切見られなかったから驚いてしまう。

 

「――知っての通り、キヴォトスは()()()()だ。故に生徒――未成年者が多い。俺達のような大人も居るには居るが、生徒より少ないし行政を行っているのはその生徒達だ。――必然的に、未成年に悪影響を及ぼす酒やタバコの製造や流通は()()()()()()()()()。最近『レッドウィンター』で()()()()()()()()()生徒が停学になった、という噂を聞いたが...基本的に酒とタバコは簡単には買えないものだ」

「しかし――酒とタバコは歴史が長く、愛されておる嗜好品。儂ら少ない大人達の需要がある故に、"連邦生徒会"に認可された五指に満たない企業や個人事業主が製造し、()()()()()()()()()()()()()()()()で流通させておる。『カイザー』は残念ながら当然認可されておらなんだが...儂が個人的にそのルートとの繋がりを持っとるおかげで月に一度位じゃが手に入れることができる」

「"生徒主体だからこその事情だね...私は嗜む程度にしか飲まないけど、ふとした時に飲みたくなるからね...こういうバーベキューならビールもよく合うし"」

「...やはり、"先生"も()()だな。――折角だからな、言った通り流通が非常に少ないからこの三本しか無いが、大人三人で楽しもうという訳だ」

 

 マミゾウがジンジャーエールのラベルを戻したビールの缶を受け取る。

 

「酒でのちょっとした酔いと共に弾む話もあるじゃろう。――"先生"なら大丈夫じゃろうが、せがまれても生徒に飲ませるような真似はせぬようにな」

「"勿論だよ"」

 

―――カシュッ...

 

 マミゾウの注意に頷き、缶のプルタブを引けば不思議と心が踊る細やかな快音が鳴る。

 

「――"先生"の来訪とそれが齎した奇跡を祝って」

「――儂らの悲願達成を祝って」

「"――『アビドス』復興への道が拓けたことを祝って"」

 

 

 

 

 

 

「「「――乾杯」」」

 

―――缶を軽くぶつけ合い、傾けて中身を口に含む。夜明けが広がっていく空を見上げながら、喉を通る爽やかな喉越しを嚙み締める―――

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
変わるかもしれない裏設定:"ソーサーナイツ"モブはコールサイン"トリスタン"、"万魔殿"モブは"イゾルデ"の神秘持ち




ということで、宴会的な祝賀会でした。トリモブ×ゲヘモブ(エデン条約)はいいぞ。尊みを感じる。

さて次回はアビドス編のエピローグです。
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