Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
そしてゲームの方は
~『カイザーPMC』基地 駐機場~
side-ホシノ
<ザワザワ...
<ワイワイ...
「ひ、ひぃん...あそこに立つの私...?」
「当然だろ。――
「さぁ、行きますよ。...自分も居ますから」
待機場所のコンテナの物陰から
―――人、人、人。基地の駐機場に沢山の人がいる。『カイザーPMC』の傭兵達、『カイザーコンストラクション』の作業員達、『ゲヘナ』の娘達、『トリニティ』、『SRT』の娘達。ステージの反対側にはトオルさんとマミゾウさん、"先生"とミヤコちゃん達『シャーレ』の面々が並んでいる。
そして―――目の前に居る『アビドス』の後輩達。皆がステージに登った私達に注目している。
「」
「...おい、ユメ」
「...ユメ先輩」
「――はっ?!」
皆の注目を集めているプレッシャーを受けて白目を剥いて固まったユメ先輩の両肩をモコウ先輩と一緒に小突いて意識を引き戻す。
「――音頭の前にまずは、私達に協力してくれた人達に改めて感謝を。
――進出してからずっと、私達を支援してくれている『アビドス』の大先輩トオルさん、マミゾウさん。
――初対面は戦闘だったけど、その後は『カイザーPMC』で協力してくれた"便利屋68"。
――私達の要請に応えて、今まで
――セリカちゃんとネイトちゃんが誘拐された時、救出作戦を提案して参加もしてくれた上に、『ビナー』討伐にまで参加してくれた『SRT』の"Кролик小隊"。
――私達『アビドス』に支援戦力として来てくれた『ゲヘナ』、『トリニティ』の娘達。
そして――」
それぞれを見ながら挙げて行き―――最後に目の前の『アビドス』の後輩達を見る。まだ包帯やガーゼを所々に付けているけど、元気そうなセリカちゃんとネイトちゃんも居る。
「――廃校寸前だったのに、復興を諦めずに一緒について来てくれた後輩の皆――皆、皆...本当に、ありがとう...!」
「――ありがとな、皆」
「――あ、ありがとう皆...!」
―――先輩二人と揃って頭を下げる。
「――皆が協力してくれたおかげで、
「――まさか、こんなに『アビドス』に手を差し伸べるような好き者が集まるなんて思わなかった。おかげで、復興に向けて大きく前進できる。――ほらユメ、お前だ」
「ひゃいっ!え、えっと...だ、だから......『アビドス』を狙う大きな悪意と、復興を阻む
―――最後に緊張が解けたユメ先輩の号令一下、皆ジュースやお茶が満たされたグラスを掲げる。
「――セリカちゃんとネイトちゃんの救出と無事に」
「――
「――『アビドス』復興への道が拓けた
―――夜明けが見え始めた空に、皆の嬉しそうな声が重なり響き渡る。
~『カイザーPMC』基地駐機場 祝賀会会場~
side-"先生"
「――あ、"先生"!」
「――あら、もう食べないの?」
「"まだお腹に余裕はあるけど、折角だから皆と話して回ろうかなって思ってね"」
―――祝賀会が始まって一時間が経とうとしている。折角だから各校、各勢力の面々と話して回ろうと思い立って歩き出し、最初に声を掛けられたのは『トリニティ』のヒフm..."ファウスト"とテンシだ。
「"――『トリニティ』はお嬢様学校って聞いていたから、こういうバーベキューは嫌いかなって不安だったけど..."」
<「――こちら頃合いですわ」
<「ありがと。...mgmg...うん、安いって解る味と質だけど、量があるしやっぱり私はこういうのがいいわねぇ」
<「
―――二人の背後でバーベキューを楽しむ、白い制服を纏う『トリニティ』"砲術委員会"、"ソーサーナイツ"の面々を見回す。目の前の二人もティーカップでは無くジュースが満たされたグラスを持っていて、特にテンシは淑女然とした容姿とのギャップが凄い。
「――何も全『トリニティ』生がお嬢様、ということはないわ。ヒh..."ファウスト"も勿論、"砲術委員会"と"ソーサーナイツ"の大半は一般家庭の娘よ。
私やイクを含めた数少ないお嬢様でも――
「"なるほどね...楽しんでくれているなら何よりだよ。――改めて、『アビドス』への来援ありがとう。『アビドス』と『シャーレ』だけじゃ、ここまで脅威を跳ね除けて前進できなかった"」
二人にお礼を言って頭を下げる。
「力になれたなら幸いよ。――"ファウスト"と『アビドス』の
「う“っ......そ、そうですね...あはは...」
テンシは"ファウスト"を見て
「――"先生"、ちょっと耳を貸して」
「"...?分かった"」
テンシは私を見てそう頼んで来て、素直に受け入れて耳を寄せる。
「...『ブラックマーケット』では
「"...!"」
耳打ちされた内容に一瞬驚いて声を漏らしそうになるけど、抑え込んで小さく頷く。―――やはり、テンシは―――『トリニティ』は『ブラックマーケット』での
―――テンシは"ティーパーティー"のホスト
―――閑話休題。
「――まぁ、『アビドス』を滅びから救う一助になれて嬉しいのは本心よ」
「――はい!『アビドス』の皆さんを助けることができて、私も本当に嬉しいです!」
二人は揃って心から嬉しそうな笑みを浮かべる。
「"最初に聞いた時は驚いたけど――本当に、君達が支援に来てくれて嬉しかったよ。...君達は、祝賀会が終わったらどうするんだい?"」
改めてお礼を述べ、二人にこれからの事を尋ねる。
「勿論、『トリニティ』へ戻るわ。――"ホストリーダー"から『支援は惜しまないように』って言質は取ったから"砲術委員会"と"ソーサーナイツ"を動員したけど――本当は
永らく対立が続く『ゲヘナ』との宥和の一歩たる
「"
"風紀委員会"が攻撃して来た時、アコが"便利屋68"逮捕を口実に私を
「――『エデン条約』。『ゲヘナ』、『トリニティ』両校から人員を送り合って組織する"
テンシは
「"なるほどね...
「えぇ。こういうパーティーはそう簡単にできないし、楽しめるだけ楽しむわ」
「はい!"先生"も楽しんでくださいね!」
二人に改めてお礼を言ってから離れ―――すぐ傍で集まっている『ゲヘナ』の面々の下へと向かう。
<「あ、私のハラミ!」
<「へへ、隙を見せたお前が悪い」
「――あら、"先生"。お肉はもういいのかしら?」
「...mgmgmgmg...!...ゴクン..."先生"、作戦での前線指揮お疲れ様」
―――『トリニティ』側とは違って楽しそうな喧噪が満ちる『ゲヘナ』の娘達の集まりに近付くと、レミリアとヒナが私に気付く。ヒナは小さな口でチマチマとカルビを食べていた様で、私に気付くと急いで飲み込んで何事も無かったかの様に私を労う。
「"二人もお疲れ様。食べるのもいいけど、折角だから皆と話そうかなって思ってね。――改めて、『アビドス』への支援ありがとう"」
二人にそう答え、改めてお礼を言って頭を下げる。―――彼女達が戦車部隊と歩兵戦力を送って来てくれた事も大きな貢献だった。『カイザーPMC』の部隊だけでは数の差が厳しかった状況での、『トリニティ』、『アビドス』と合同での横槍と奇襲が見事に嵌って『ブラックマーケット』
『ビナー』討伐でも勿論、"デカグラマトン大隊"と共に最前線で戦い、『ビナー』が操って寄せ集めたオートマタやドローンの迎撃、『ビナー』背部のVLSセルの制圧で作戦に貢献してくれた。
「力になれたなら幸いよ。
「...そう言えば、『トリニティ』共々
「そこはウチの
<「――テンシさん、ちょっとお時間よろしいですか?」
<「構わないけど...変な記事を書いたら許さないわよ。こっちは
<「その辺りはよく弁えていますよ。...『アビドス』の意向次第では
レミリアはヒナの言葉にそう返しながら、私が去った後丁度テンシとのインタビューをアヤは始めたらしいアヤの姿に目を向ける。―――そう言えば、彼女は祝賀会開始早々レミリア達『ゲヘナ』の面々からインタビューをして回っていた。
「"...確かに、アヤはよく協力してくれてるね。『アビドス』復興を諦めない原動力を個人的に知りたいって彼女は言っていたけど..."」
「ふむ...なら、彼女は充分知りたい情報、理由は探れたんじゃないかしら。『ビナー』――『アビドス』
「そうね。...ネタの為にあちこち飛び回っているらしい彼女が
ヒナはそう言って私を見つめる。
「"――私?"」
「...あり得るわね。
レミリアは納得した様に頷きながら理由を説明してくれる。『SRT』に"教官"が居た様に、他の学校でも教職に就いている場合があるらしい。そんな中で、私が
「"教師は生徒を助け、教え導くものだからね。私はそれを果たそうとしてるだけなんだけど..."」
「その姿勢を全うする姿が珍しいのよ。貴方以外にも教職は居るけど、それでも数は少ないしね」
謙遜するとレミリアは重ねて私の教師としての姿勢が珍しいと返してくる。キヴォトスは生徒が主体故に大人は少ないらしいから、教職の数も少ないというのなら私の珍しさは際立つのだろう。
「"なるほどね...『SRT』でサグメ"教官"に会ったし、『ミレニアム』にも"教授"が居るらしいから他の学校の教職も気になる所だね"」
「『トリニティ』は居ないらしいけど、
どうやら
―――閑話休題。テンシが言っていた
「"――さっき
「えぇ、前の"連邦生徒会長"が
「『エデン条約』が実現すれば、少なくとも『トリニティ』の方で
「"...本当に、お互い仲良くなろうとしているんだね。――仲が悪い者同士が歩み寄ろうとするなら、私は止めないよ。銃口を向け合うより、手を握り合う方が余程平和的だしね"」
「"先生"も賛成してくれるなら心強いわね。...少なくとも、生徒個人レベルではお互いの認識に変化があるから、条約が締結されれば大きく変わる筈よ」
レミリアが私の賛意を聞いて微笑むと、すぐ隣の『トリニティ』の娘達の集まり―――の少し離れた方に目を向ける。そこでは―――
<「...久しぶり。作戦お疲れ様」
<「そっちこそ、作戦お疲れ様」
<「...まさか、こんな形で会える機会が得られるなんてね」
<「"副議長"から砂漠に行くって聞いた時は面倒臭かったけど――まさか"ソーサーナイツ"まで似た目的で来るなんて予想外だった」
<「私だって、"総長"から急に『アビドス』に
―――"ソーサーナイツ"の娘と、"
「"あれは..."」
「――"
「...私は実は、あの二人を見るまでは『エデン条約』に懐疑的だった。学校として歩み寄っても、結局生徒――個人が変われなければ意味は無いから。――あの関係を、
レミリアとヒナは揃って改めて決意を宿した様な表情を浮かべる。―――少なくとも一組、『エデン条約』を締結する前に
「"...あんな関係を見せられたら、私も協力したくなるね。『シャーレ』の特性上、今回の『アビドス』みたいな付きっきりは今後難しいと思うけど、できる限り協力させてもらうよ"」
「そう言ってもらえると心強いわ。――私の
「私達"風紀委員会"は多忙だけど、できる限り協力する。...それから親友としての経験だけど、レミリアの
「"分かった、肝に銘じておくよ。――改めて、『アビドス』への来援ありがとう。祝賀会、楽しんでね"」
「"先生"も楽しんで。...さて、『アビドス』の娘達と話しにでも行こうかしら。これからも
二人の下を離れ、祝賀会の喧騒中をブラブラ歩いていく―――
「――あ、"先生"じゃん!大の男なのにもうお腹いっぱいなのかな~?」
「...ムツキ、"先生"に失礼だよ」
「"はは...確かに最近ちょっと
―――『カイザーPMC』の傭兵達の集まりから少し離れた所でグリルを囲む"便利屋68"の面々の中でムツキに声を掛けられ、カヨコの窘めに対して苦笑しながら言葉を返して彼女達の下に歩み寄る。
「――あら"先生"じゃない。作戦お疲れ様」
「お、お疲れ様です"先生"...!」
「mgmg...ゴクン...お疲れ様、"先生"...」
「お疲れ様"先生"。地上での指揮、お見事だったわ」
ムツキとカヨコに続いて私に気付いた四人がそれぞれ労ってくれる。
「"皆もお疲れ様。――改めて、セリカとネイトの救出、作戦への参加ありがとう。君達のおかげで砂漠に放り出された二人を助けることができた"」
私も"便利屋68"の皆を労い、感謝を伝えて頭を下げる。―――初対面は校舎襲撃で敵対したけど、セリカとネイトが誘拐され、"鬼傑組"の策謀で"カタカタヘルメット団"本拠地を攻撃した時に"鬼傑組"から寝返って以来、"カイザーPMC"に雇われる形で『アビドス』に協力してくれた。
そして、また"鬼傑組"の策謀でセリカとネイトが『アビドス』の砂漠に放り出された時は、トオルの指示を受けて彼女達が救出に向かい、『ビナー』に襲われかけていた所を救い出した。
「私達も二人が
「くふふ、でも
「ちょっ、それは...!」
アルは胸を張りながら"便利屋68"の実力だと誇るけど、ムツキがニヤニヤ笑いながら補足すると一瞬で顔を赤くする。
「"あんな砂嵐を起こされたら誰だって慌てるよ。私としては、帰還率百パーセントを達成して作戦を成功させられたから良かったよ"」
「...皆で力を合わせて立ち向かったことも大きいね。『トリニティ』も『ゲヘナ』も強力な戦力で支援してくれたし」
「そうね。"
<「二人共、改めてありがとね~。『トリニティ』もだけど、支援がなかったら状況はもっと厳しかった筈だし、いつかの
<「"鬼傑組"は
<「...そういうのは明日以降にでも改めて話そっか~。今は『ビナー』討伐の喜びを分かち合って楽しもう~。ほら、お肉いい感じだよ~」
<「...そうね。いただくわ」
カヨコの言葉を聞いてアルは不安そうな表情を浮かべ、ホシノと会話を交わして焼けた肉を取り分け始める様子にチラリと目を向ける。
「"...そう言えば、"便利屋68"は『ゲヘナ』から指名手配されているんだったね。
「...救出から帰還してトオル"理事"に報告しに行こうとしたら――"万魔殿《パンデモニウム・ソサエティー》"の戦車が基地に次々入って来るのが見えたから"社長"ってば白目剥いて、しかも"副議長"と"風紀委員長"がデサントしてた戦車から降りて来た所も見ちゃって全身真っ白になってたわねぇ...」
「...あれは流石にアルちゃん程じゃなくても、私達皆緊張と困惑で固まっちゃったよね~」
ジョオンの話を聞いて、ムツキも茶化そうとせず苦笑して補足する。―――やはり、
「...それで、明日にでも『アビドス』の娘達に話すつもりなんだけど――私達"便利屋68"は、これまでの業務と今回の作戦での報酬を貰ったら契約を解除して『アビドス』を出るわ。元々色々な学校、組織から単発的な依頼を請け負う形態だから、こうしてそれなりの期間一所に留まるのはちょっと性に合わないしね」
「それから――今回の報酬で費用は十二分に間に合う試算だから、事務所も移転する予定なの。だから、しばらく身の回りがバタバタして依頼も請け負えないし、会うのも厳しいと思うわ」
アルは真剣な表情でこれからの予定を明かし、ジョオンが補足する。―――指名手配されているなら、一所に留まるのは捕まるリスクを高めるだろう。今回の報酬を利用して、ついでに
「"――今後も、
「――くふふ、キザなこと言うじゃん。じゃあ、困ったことになったらありがたく頼らせてもらうよ」
「...確か、『シャーレ』のビルは"D.U.外郭地区"にあるんだっけ。――移転先がちょうどその地区だから、心強いね」
「ありがたい申し出だけど――寧ろ、"先生"も困ったら私達に遠慮なく頼ってもいいのよ?"護衛から迷子探しまで何でもやります"――それが"便利屋68"よ!」
困ったら『シャーレ』に頼ってもいいと申し出でれば、アルは自信満々に"便利屋68"に頼ってもいいと逆に頼ってもいいと提案する。セリカとネイト救出、『ビナー』討伐作戦で活躍したし、指名手配されていながら逮捕されずにここまで活動出来ているのならやはり実力は高いのだろう。
「"じゃあ、お互い困った時は協力しようか。――それじゃあ、私は他の娘達の所に行くよ。祝賀会楽しんでね"」
「既にシオンは沢山食べて楽しんでるけど..."先生"も楽しんで!」
「mg...?!ゴクン...だ、だってこんな沢山のお肉普段は食べられないし...」
「"沢山食べられるのは若さの特権だよ。トオル達が沢山用意しているから遠慮なく、心行くまで楽しんでね"」
アルが一人でお肉を焼いて食べ続けるシオンを見て微笑み、視線に気付いたシオンは急いでお肉を飲み込んで恥ずかしそうに言い訳する。そんなシオンに沢山食べられるのはいい事だと返して"便利屋68"の面々の下を離れる。
「――"先生"、お疲れ様です」
「――"先生"、お疲れ様。楽しんでるかしら?」
―――少し歩けば、ミヤコ達"RABBIT小隊"とイナバ達"Кролик小隊"―――『SRT』の面々の集まりに近付き、ミヤコとイナバが気付いて声を掛けて来る。
「"二人もお疲れ様。私も充分楽しんでるよ。――君達も楽しめてるかい?"」
「はい。こうしてイナバ先輩達と語らう機会も中々得られないので、この機にと」
「
<「mgmg...うん、火が使えるなら焼きマシュマロだよねー。香ばしさと甘さのハーモニー...!」
<「モエ、こっちもお団子いい感じに焼けたよ。後はこの特製みたらしで...ほら、食べなよ」
《small》<「ktkr!ありがとリンゴ先輩!」
<「...頃合いか。レイセン先輩、まだ食べるか?」
<「いただきましょう。...そういうサキこそ、焼いてばかりであまり食べてないでしょう?」
<「...そうか?焼きに集中してると自分じゃ気付きにくくて...」
<「では交代しましょう。折角の機会なんですから、食べて楽しまなければ損ですよ」
<「...どう?美味しい?」
<「mg...はい、美味しいです...!」
<「なら良かったわ。普段はイナバかリンゴがよくやるから慣れてなかったんだけど...」
二人の後ろでは、『SRT』の面々が楽しそうにバーベキューを楽しみながら語らっている。皆楽しめている様だ。
「"楽しんでいるなら何よりだよ。――改めて、セリカとネイト誘拐に際して救出作戦の立案と参加、そして『ビナー』討伐作戦への参加ありがとう。ミヤコ達"RABBIT小隊"も居なかったら、そもそも『アビドス』での活動は厳しかった"」
―――改めて二人にお礼を言って頭を下げる。イナバ達"Кролик小隊"が居なければ『アビドス』と『シャーレ』だけで救出を行わなければならず―――ミヤコ達"RABBIT小隊"が『シャーレ』指揮下に居なければ私だけで『アビドス』の皆との交流や支援を行わなければならなかっただろう。
「私こそ感謝したいわ。"鬼傑組"が他校自治区への介入を行うような行動を取らなければ『ブラックマーケット』を掣肘するきっかけは得られなかっただろうし、救出作戦と討伐作戦は私達にとっても貴重な経験になったから」
「私も同意見です。小隊を結成したばかりで実戦経験が浅い私達にとって、『アビドス』での活動は大きな糧になりました。...願わくば、このまま『シャーレ』指揮下で"先生"をサポートしていきたいです」
「"そうなれば私にとっても凄くありがたいけど..."」
ミヤコ達"RABBIT小隊"が『シャーレ』指揮下に残ってサポートしてくれるならとても心強い。だけど―――
「――今回『アビドス』で起きた一連の事件は
イナバが私の言葉を継いで今後『SRT』の動向どうなるかまだ分からないと懸念を挙げる。
―――『ブラックマーケット』に君臨する
そして、ミヤコ達"RABBIT小隊"も―――『アビドス』での活動終了後も『シャーレ』指揮下に留まれるか分からない。『シャーレ』も"連邦生徒会"傘下の部活動だけど、『SRT』への指揮命令権は"連邦生徒会長"が直接有している。現会長たる
「――でも、報告の際に"RABBIT小隊"の『シャーレ』指揮下での活動継続を嘆願してみるわ。組織、命令系統の違いはあるけど、『シャーレ』もまたキヴォトス中の学校に介入できる組織。"先生"の指揮とサポートは強力だし、ミヤコ達にとってはこれからも貴重な経験の糧になるだろうから」
「...先輩、ありがとうございます...!」
イナバが嘆願を提案するとミヤコは嬉しそうに瞳を輝かせてお礼を言う。―――憧れの先輩の心遣いに喜ぶ後輩の姿は見ていて微笑ましい。
「"ありがとう、イナバ。私としてもミヤコ達のサポートはありがたいから、嘆願が通ることを祈るよ。――それじゃ、私は他の子達の所に行くよ。引き続き祝賀会楽しんでね"」
「ありがとうございます。"先生"も、心ゆくまで楽しんください」
「錚々たる面々が集まっているものね...色々と話したいことはあるでしょう。――"先生"も楽しんでね」
二人と別れ、再びブラブラと歩き出す―――
「――あぁ、"先生"!ここに居ましたか」
「"――アヤ?私を探していたの?"」
―――他の生徒や『カイザーPMC』の傭兵達、『カイザーコンストラクション』の作業員達ともバーベキューを楽しみながら語らって回って十数分。アヤが小走りで私の下に来た事に気付いて振り向く。
「――正確にはトオルさんとマミゾウさんですね。ちょうどホシノさん達三年生組も居まして。"先生"にお礼が言いたいとのことで、インタビュー後に探していたんですよ。マミゾウさん達は即席ステージの傍で集まっています」
「"なるほどね...分かった、早速マミゾウ達の所に行くよ。――アヤはまだインタビューして回っているのかい?"」
「いえ、マミゾウさん、ホシノさん達で大体終わりましたよ。これから楽しむつもりです。今は
アヤは私の問いに対して満足そうなホクホクした表情を浮かべる。どうやらインタビューで沢山情報を得られたらしい。ホシノ達は
「"そっか。もし記事を書くことになったら、ホシノ達を困らせるような内容は書かないでね"」
「勿論ですよ。――あぁ、マミゾウさん達の下に行く前に一つ。『アビドス』での活動が終わりましたら、『シャーレ』で"先生"に
「"...?分かった、覚えておくよ。祝賀会楽しんでね"」
私に頼みたい事とは何だろうかと疑問を浮かべながらアヤと別れ、マミゾウ達を探して歩き出す―――
「――む、来たか」
「アヤはちゃんと伝えたようだな」
「来た来た~。"先生"、バーベキュー楽しんでる~?」
―――アヤが言っていた通り、即席ステージの傍のグリルを囲むマミゾウ達を見付け、マミゾウとホシノから声を掛けられる。
「"勿論楽しんでるよ。ホシノ達も楽しんでるかい?"」
「あぁ。これだけ豪勢なバーベキューは今までできなかったからな」
「モコウはよく食べるからね~。私は腹八分目くらいだから焼きに徹してるけど楽しんでるよ!」
モコウ、ユメは嬉しそうな様子で楽しんでいると答える。
「"――そう言えば、ノノミやシロコ達は一緒じゃないんだね"」
「ノノミちゃんはサクヤちゃんと一緒に。シロコちゃんはさっきヒh..."ファウスト"の所に行ったよ。アヤネちゃんはモコウ先輩へのお説教を終わらせてから、セリカちゃん、ネイトちゃんと一緒に別の所で楽しんでるよ~」
「...やっぱりアヤネの説教は堪えるな。淡々と、反論も許さない勢いで詰められるとキツい」
「それだけのことをしでかそうとしたんじゃ。お主の治癒能力は強力じゃが――あの行動はそもそも治癒能力も何もない無謀なもの。勇気と無謀は違う――それを肝に銘じることじゃ」
「あぁ、よーく銘じておくよ」
モコウが参ったと言わんばかりに頭を掻くと、マミゾウは咎める様に目を細めて諭し、モコウは降参だと軽く両手を挙げて答える。
「全く、ちゃんと反省しているのか..."先生"、改めておじさん達の要請に応えてくれてありがとう。『シャーレ』の支援がなかったらネイトちゃん達を迎える考えは浮かばなかっただろうし、"便利屋68"とも敵対したままだったかもしれない。"鬼傑組"の策謀への対抗もできなくて、
「ホシノちゃんの言う通り、『シャーレ』の支援がなければ『ビナー』討伐なんて
「『シャーレ』が来る前だったら、ユメは相変わらずお気楽だとしか思わなかっただろうな。――まさか『ビナー』討伐ができるなんて思ってもみなかった。正に――ユメが言う
ホシノ達三人が私に揃って頭を下げる。
「――"先生"、ホシノ達に手を差し伸べてくれたこと、心より感謝する。『ビナー』への対処で手一杯だった俺とマミゾウだけでは、ホシノ達への支援は不十分に終わっただろう。『シャーレ』が来てくれたからこそ、『ビナー』討伐まで果たせたと俺も実感している」
「うむ。――全く、"先生"と『シャーレ』には感謝してもし切れぬな。いくら戦力を注ぎ込んでもまるで刃が立たず、本校を砂に埋められてから凡そ三十年...生きてる内に悲願である復興への道が拓けるとは思わなんだ。――ありがとう、"先生"」
そして、ホシノ達に続いてトオルとマミゾウも頭を下げる。
「"――私こそ、皆に感謝してもし切れないよ。
ホシノ達の謝意に微笑みながらそう返す。―――
「本当にありがとね、"先生"。――それじゃあ、おじさん達も動こっか~。レミリアちゃんとは少し話したけど、アヤちゃんのインタビューに応えていたから他の娘達とはまだ話せてなかったからね」
「...正直不安はまだあるが、アヤは今まで真摯にサポートしてくれたからな。委員会で話し合って最終判断を下すが――アイツなら悪い記事は書かないだろう」
「記事の影響によっては、もっと支援を得られるかもしれないしね!...も、勿論
「"無条件で信じることも問題だからね...委員会の皆も居るんだから、話し合って判断を決めることも大事だよ。――まだお開きじゃないし、祝賀会楽しんでね"」
「"先生"も楽しんでね~」
「大人三人でゆっくり語らってくれ。それじゃあな」
「"先生"、本当にありがとう!楽しんでね!」
ホシノ達は軽く手を振りながら歩き出し、マミゾウ、トオルと共に見送る。
「――行ったか。実は"先生"を呼び寄せたのは礼を言う以外にもあってのぉ。...生徒達には内緒じゃぞ?」
―――三人を見送ると、マミゾウはニヤリと笑いながらコートの裏に手を入れる。二秒程探る様に手を動かして取り出したのは、
「"ビール...
銘柄は知らないものだけど、缶に直接プリントされた絵柄では堂々と『ビール』と記されている。―――
「――知っての通り、キヴォトスは
「しかし――酒とタバコは歴史が長く、愛されておる嗜好品。儂ら少ない大人達の需要がある故に、"連邦生徒会"に認可された五指に満たない企業や個人事業主が製造し、
「"生徒主体だからこその事情だね...私は嗜む程度にしか飲まないけど、ふとした時に飲みたくなるからね...こういうバーベキューならビールもよく合うし"」
「...やはり、"先生"も
マミゾウがジンジャーエールのラベルを戻したビールの缶を受け取る。
「酒でのちょっとした酔いと共に弾む話もあるじゃろう。――"先生"なら大丈夫じゃろうが、せがまれても生徒に飲ませるような真似はせぬようにな」
「"勿論だよ"」
マミゾウの注意に頷き、缶のプルタブを引けば不思議と心が踊る細やかな快音が鳴る。
「――"先生"の来訪とそれが齎した奇跡を祝って」
「――儂らの悲願達成を祝って」
「"――『アビドス』復興への道が拓けたことを祝って"」
―――缶を軽くぶつけ合い、傾けて中身を口に含む。夜明けが広がっていく空を見上げながら、喉を通る爽やかな喉越しを嚙み締める―――
ということで、宴会的な祝賀会でした。
さて次回はアビドス編のエピローグです。