Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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アビドス編エピローグです。


File34-Ab.~これから~

~『カイザーPMC』基地 医療棟~

side-セリカ

 

「――異常はありませんね。予定通り、本日退院とします」

「これで異常ありだったらどうしようかと思ったぜ...」

 

―――ネイトの診察を終えた軍医さんが異常なしと判断し、ネイトは安心した表情を浮かべながら制服のシャツを整える。

 

―――prrr!

「――こちら診察室。......はい、両名共に異常なし、退院となります。......了解しました。――玄関でマミゾウ"理事"がお待ちです。学校まで送迎する、とのことです」

「マミゾウさんが態々...分かったわ。ありがとう、軍医さん」

「んじゃ、さっさと行くか。一週間ありがとな、軍医さん」

「医師として当然のことをしたまでです。ではお大事に」

 

 軍医さんにお礼を言い、着替えや日用品を詰めたバッグを肩に提げてネイトと共に診察室を出てメインエントランスに向かって歩き出す―――

 

 

~『カイザーPMC』基地 メインエントランス~

 

「――救出されてから一週間。ニュースやらお見舞いついでの話題やら...アタシらが入院中、色々あったなぁ」

「そうね。本当に色々状況が――」

 

 

「――あら、おはよう二人共。無事に退院できたのね!」

「――お、"便利屋68"じゃねぇか。おはようさん」

「――おはよう。...その大荷物、本当に『アビドス』を離れるのね」

 

―――メインエントランスに入ると、私達より多くのスーツケースやカバンを携える"便利屋68"の六人と出会し、我が事の様に笑みを浮かべるアル"社長"と挨拶を交わす。

 

「...えぇ。稼げたし、居心地は良かったのだけど...私達も事情があるから」

「"社長"の言う通り、稼ぎ(実入り)はかなり良かったんだけどねぇ。便利屋68(私達)は指名手配組織だし、色々な所から依頼を請けて回るのが基本だから」

「それに、今回稼いだお金を使って事務所も移転するから、行動は早い方がいいしね~」

 

 残念そうな表情を浮かべるアル"社長"に続いてジョオンとムツキが事情を説明してくれる。

 

―――"便利屋68"は『カイザーPMC』との契約を解除し、『アビドス』を去る事になった。二日前にお見舞いついでに話してくれた時のアル"社長"は大きな稼ぎが得られて凄く嬉しそうな反面、居心地が良かったのか今みたいな残念そうな表情を浮かべていた。

 話を聞いただけだけど、私とネイトが誘拐されている間に"鬼傑組"の策謀で誘導されて"便利屋68"の逮捕――は口実で、実際は"先生"を狙っていたらしい――の為に『ゲヘナ学園』の"風紀委員会"が攻撃して来たと言うから、このまま『アビドス』に留まるのは私達に迷惑を掛けるかもしれないと考えたのだろう。

 

「トオルさんには引き留められなかったのか?」

「確かに惜しまれたけど、便利屋68(私達)の事情を理解してくれたから契約解除を受け入れてくれた。"個人的にも感謝したい。これはマミゾウからの分も含んでいる"って、契約履行分の報酬に更に上乗せしてくれたよ」

「流石トオルさんね...」

「うん...あんな報酬額、今まで貰ったことなかった...」

「そ、そうですね...アル様も額の大きさに驚き過ぎて白目を剝いて固まっていましたから」

 

 私の言葉にハルカとシオンが頷く。トオルさんの気前の良さと契約の誠実な履行は相変わらずだ。

 

―――そんなトオルさんはマミゾウさん共々祝賀会を終えてから忙しそうで、『ビナー』の亡骸が重過ぎて動かせないから囲い込む形で研究サイトを建てる準備や、ビナー(脅威)が無くなったから行けるようになった()()()()――かつて()()()()()()があった中央区の調査準備。引き続きの『アビドス』の治安維持や私達への支援―――忙しそうだけど、その表情は明るいものだった。

 

「――でも、これから二度と会えない訳じゃないわ。今回みたいな長期契約は...まぁ、事情によりけりだけど――必要になったら依頼を出してちょうだい。報酬はしっかり払ってもらうけど、その分契約はキッチリ果たすから!」

「頼もしいわね...やっと復興への道が拓けたけど、借金はまだあるからトオルさん達みたいに気前よくとは行かないと思うけど、手が必要になったら頼らせてもらうわ」

 

 アル"社長"の自信満々の言葉に頷く。まだ借金返済があるから依頼を出す余裕はあまり無いけど、"便利屋68"の実力の高さは頼りがいがある。もしまたアビドス(私達)だけじゃ手が足りない状況になったら、素直に依頼を出して頼ろう。

 

「――そう言えば、退院ってことはこれから学校に行くことになるわね?」

「あぁ。でもマミゾウさんが送ってくれるっていうから、足は大丈夫だぞ」

「――じゃあ、途中までになるけど護衛してあげるわ!さっき言った通り本来なら報酬(お金)をもらうけど、今回はサービスで無料(タダ)よ!」

 

 アル"社長"の問いにネイトが頷くと、"社長"は笑みを浮かべてそんな提案を挙げる。―――時刻は大体午前十時前。アヤネや先輩達がお見舞いに来てくれた時に退院したら学校に行くと予め約束していたから、今頃皆待っている筈だ。でも態々私達を護衛しようなんて―――

 

「護衛って..."鬼傑組"ももう居ないのに大げさな」

「まぁまぁいいじゃん。――アルちゃん格好付けてるけど、私達もトオルさんの計らいで駅まで送ってもらうからさ。そのついでにって訳」

「ちょ、ムツキ...!」

 

 アル"社長"の提案に難色を示すと、ムツキが悪戯っぽく笑って事情を明す。アル”社長"は笑顔から一転、バラすなと言いたげな表情で抗議の声を挙げる。

 

「そういうことか...まぁ、いいんじゃないか?アビドス(ここ)の"カタカタヘルメット団"、"鬼傑組"の部隊は壊滅してデカい脅威は殆どねぇが、安全に越したことはねぇだろ。それに、一応アタシら病み上がりだしな」

「...そうね。無料のサービスならありがたく受けましょうか」

 

 ネイトの言う通り大きな脅威は無くなったけど、それでも『アビドス』には独り身か、小規模なグループを作って潜んでいる不良が居る。それくらいなら私とネイトでも対処出来るだろうけど、"便利屋68"が護衛に付くなら万全だろう。ネイトの意見を受け入れてアル"社長"の提案に頷く。

 

「ふふ、大船に乗ったつもりで任せなさい!貴女達には銃弾一発だって食らわせないわ!さぁ、行きましょう!」

「...頼もしいのは確かなんだが、時々茶化されて格好付かないのがな...」

「くふふ、それがアルちゃんの可愛い所だよ。でも――外せない所はしっかり決めてくれるし、頼りになるよ」

 

 意気軒昂に声を挙げて歩き出した彼女に続いて玄関に向かう―――

 

 


~『トリニティ総合学園』"ティーパーティー"テラス~

side-テンシ

 

「――――報告は以上よ」

「ありがとうございます、テンシさん」

「ありがとう、テンちゃん。...羨ましいなぁ、そんな戦闘が起きたなら私も参戦したかったよ。『ゲヘナ』が居なきゃなぁ...」

「...相変わらずね、ミカ。前も言ったけど、先入観での決め付けは見える筈のものも見えなくなるわ。それに、貴女は曲がりなりにも"ティーパーティー"を構成する"パテル分派"の現"ホスト"。注目されているのだから、そう言った言動が周囲に聞かれたら影響を及ぼすのよ」

 

 ナギサとミカに向けた『アビドス』での支援活動の報告を終え、二人のお礼を聞きながら紅茶を一口飲んで喉を潤し、ミカが残念そうな表情を浮かべて零した愚痴を窘める。

 

「う...ご、ごめん。――あ、でも!『アビドス』を助けることができたのは本当によかったね!"鬼傑組"はトリニティ(こっち)でも犯罪ネットワークを構築して暗躍してたみたいだし、治安を脅かす脅威が一つなくなって一安心って所かな」

「とは言え――"鬼傑組"組長の()()に合わせて"正義実現委員会"が特定した"鬼傑組"拠点の検挙に乗り出したものの、人や重要な書類を抑えられなかったのは痛いですね」

 

 バツが悪そうな表情を浮かべて謝り、話題を戻したミカの言葉に対してナギサは苦々しい表情を浮かべる。

 

―――ソーサーナイツと砲術委員会(私達『アビドス』支援部隊)が出払っている間にナギサとミカも動いていた様で、『トリニティ』内で暗躍していた"鬼傑組"と関連組織の捜査と検挙を行っていた。しかし、予め組に何か起きた場合の対処方法を決めていたのだろう。"鬼傑組"構成員の逮捕や犯罪追求に繋がる証拠の押収までは出来なかった様だ。

 

「まぁ、組長()()()されちゃったら"鬼傑組"もしばらくまともに動けないでしょ。何なら、本来相争う間柄の"勁牙組"と"剛欲同盟"とか言う『ブラックマーケット』内で覇権を争う暴力組織が、これ幸いにってマーケット内で勢力拡大に動くだろうから――居場所そのものがなくなっちゃうんじゃない?」

 

『――こちら現地の川流シノンです!ブラックマーケットで覇権を争っていた深慮遠謀の"鬼傑組"組長、"吉弔ヤチエ"が今()()()()()()()()()()()に乗せられました!ヴァルキューレ"公安局"の護衛が付くこの列車は"D.U."まで護送され、同"公安局"にて取り調べが――――』

 

 ミカがスマホを操作し、『キヴォチューブ』の『クロノススクール』"報道部"公式チャンネルにアップロードされている中継映像のアーカイブ動画を再生する。他メディアのカメラフラッシュが絶え間無く炊かれ続ける中、『ヴァルキューレ』"公安局"局員の護衛に囲まれた―――()()()()()()()して暗い表情で俯く『吉弔ヤチエ』が列車に乗り込む様子が映る。

 

―――『アビドス』で支援活動の後処理を行っている間に、『ブラックマーケット』で"マーケットガード"の取り調べを終えた"鬼傑組"組長『吉弔ヤチエ』は『ヴァルキューレ』へと引き渡された。

 ()()()()()()()でこの情報を公開したのは、やはりと言うか当然と言うべきか―――ホシノ達"廃校対策委員会"の許可を得たアヤの"文々。新聞"だった。『吉弔ヤチエ』逮捕の速報と共に『アビドス』を勢力下に納めんと暗躍した"鬼傑組"を一面で取り上げ、更に『アビドス』が直面していた苦境を明かし、その苦境に付け込んだ"鬼傑組"以外の()()()()()も遠回しに批判する記事をぶち上げた。

 おかげで"鬼傑組"以外の幾つかの悪徳企業もついでに『ヴァルキューレ』や各校治安維持組織が検挙、最悪経営陣も逮捕されて潰され、『アビドス』へは同情の声や()()()()支援の提案が多く寄せられた。そんな『アビドス』は―――

 

「――"連邦生徒会"()()の『アビドス』()()()()活動"イシスの恵み"。開設から一週間も経っていませんが、募金としては結構な額が集まっているようですね」

 

 ナギサもスマホを操作し、"イシスの恵み"公式サイトの画面を見せてくる。

 


連邦生徒会公認募金

イシスの恵み

――あなたの恵みが、アビドス砂漠に実りを与えます――

 

主催:『アビドス高等学校』廃校対策委員会

協賛:連邦捜査部『シャーレ』


 

―――『そうだねぇ...まずは募金でも募ってみようかな~。借金は"アビドス生徒会"が背負ったもの――だからその後継であるおじさん達"廃校対策委員会"が稼いだお金で返していくから、復興活動の予算に割けるお金がないんだよねぇ...』

 

―――祝賀会の翌日。レミリア、ヒナと同席して今後の関係や行動を話し合った際にホシノが提案し、『シャーレ』の支援を得て開設した募金。これまたアヤが()()()()()()()で記事として取り上げて宣伝を行い、記事と募金サイトに掲載された『アビドス』の砂に埋もれた街や家屋、砂だらけの校内を掃除する生徒達の様子等の写真もあってSNSでトレンドに急浮上する程に話題になった。

 おかげでナギサの言う通り、一週間も経っていないのに既に()()()()()集まっている。今頃"対策委員会"の皆は目を白黒させているだろうか。

 

「――テンちゃん、この写真って全部本当なんだよね?砂漠から突き出てる家とかビルはちょっと信じにくいんだけど...」

「えぇ、全て事実よ。それに生徒数も現状五十人に満たないから、吹き込んで溜まる砂の掃除もペースがギリギリ追い付かないのよ。帰還前に校内の砂掃除を手伝ったけど――あれは人の手だけでは大変よ」

 

―――『...ぺっ...砂が口に...これは大変ね』

―――『ふぅ...あ、アビドスの皆さんはこれを毎日...?』

―――『あぁ、基本的にはな。しかもお前達みたいな人手がなければ、使わない教室や部屋は放置するしかない』

 

 ミカの言葉に頷き、砂掃除でのヒフミ、モコウとのやり取りを思い返す。―――お金は勿論、人もまた『アビドス』には足りない。街に吹き込んで溜まる砂の除去は『カイザーPMC』、『カイザーコンストラクション』でも行っているらしいけど、それでもペースは追い付いていない。

 『ビナー』が居なくなったものの、それでも砂漠は気が遠くなる程に広大。故に風が運んで来る砂を日々除去するしか出来ないのが『アビドス』の現状だ。

 

「そっか...現地に行ったテンちゃんが言うなら信じるよ!早速募金しよっと☆ん~...五万円位でいいかな」

 

 動画を閉じて募金サイトを開いたミカは早速募金する。

 

「そんなあっさりと...いえ、確かにテンシさんは現地に行ったので信憑性はありますね。では私も細やかながら...ふむ...復興をより早める為にもここは()()()程――」

「「それは細やかじゃないでしょ(じゃんね)」」

 

 ミカに続いて募金をしようと結構な額を募金しようとするナギサにミカと揃ってツッコむ。確かにナギサからすれば()()()()()()()()()()()()だろう。でも―――

 

「――この募金は公認者たる"連邦生徒会"は勿論、"廃校対策委員会"のチェックも入る筈よ。各人、各企業の名前と募金額は公表されないでしょうけど、()()()()()()()わ。もしかしたらナギサと同じ額を募金しようとする娘が出るかもしれないけど――二億円という大金をー個人が――それも()()()()()()()()()が募金したと"連邦生徒会"が知って、何かの間違いでその情報が漏れたら...」

「し、しかし...あくまで()()()()()での募金ですから――」

「――それでもナギちゃんが現"ホストリーダー"って事実はついて回るよね?テンちゃんなら兎も角、会ったこともない要人が億単位でお金をポンってあげちゃったら、その"廃校対策委員会"の娘達はナギちゃん("ホストリーダー")()()()()を勘ぐっちゃうと思うよ」

「...う...た、確かに...」

 

 まさか反対されるとは思わなかったナギサは戸惑いつつもあくまで個人の意思だと反論するけど、ミカがナギサの現役職の影響も考えろと追撃して窘める。

 

「それに、サイトで募金総額はリアルタイムで更新されているし、いきなり億単位で額があがったらSNSでも話題になるでしょうね。――億単位を募金できる人物、企業なんて限られるわ。『トリニティ』だって勘繰られてそこから...」

「...わ、分かりました...では、ミカさんと同額の五万円に抑えておきます」

「その位がいい所ね」

 

 私達(親友二人)の言葉を受けて降参した様にナギサは頷き、ミカと同額の五万円を募金する。

 

「...そう言えば、テンちゃんは幾ら募金したの?」

「私?私は――」

 

 

 

 

「――募金の開設が決まった時に、"仮に募金が全く集まらなかったら"って、レミリア"副議長"共々私費(ポケットマネー)()()()募金して来たわ。サイト開設もまだだったから記録には残ってないでしょうけど」

「「テンシさんも大概では(テンちゃんも大概じゃんね)?!」」

 

 

 


~『ゲヘナ学園』 "万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議長執務室~

side-レミリア

 

「――――報告は以上よ」

「うむ、『アビドス』への遠征ご苦労だった。――まさか『トリニティ』も同じ行動を取るとはな。いつの間に繋がりを得ていたのやら...」

 

―――報告を聞き終えたマコトはレポートを机に置きながら言ちる。

 

「来てくれたのが"ソーサーナイツ"――()()推進派の『比那名居テンシ』だったのが幸いだったわ」

「おかげで将来的な()()締結後の協働の演習にもなったし、『ブラックマーケット』()()()()()()合同部隊の壊滅も実現できた」

「まさか"勁牙組"、"剛欲同盟"――ライバルである筈の組織すら集めるとはな。...()()()の言う通り、『アビドス』、『シャーレ』だけでは厳しかっただろう。つくづく()()()の慧眼は頼もしい反面、恐ろしくあるな」

 

 マコトは渋い表情を浮かべながら頷く。

 

―――『ブラックマーケット』治安維持組織"マーケットガード"の元締めたる現"保安部長"『日白ザンム』。私達の先輩であり―――

 

 

―――"風紀委員会"の()()”風紀委員長"だった人物。

 

 現"風紀委員長"であるヒナの様な卓越した戦闘力は無かったけど、巧みな話術と指揮能力を持ち―――同級生にして親友であった"()()"()()()()()()()()()の『ゲヘナ』を、"雷帝(彼女)"の意向に従って治安維持を務めていた。

 しかし―――その裏では"()()"のやり方を危険視していた私達(私とサクヤは()()()()で留年したけど)現三年生組と協力してクーデターを計画、実行し―――成功後すぐに"()()"()()()()()()()()()()()()()()()として唐突にヒナに委員長職を引き継がせ、()()"行政官"であった腹心『豫母都ヒサミ』と共にゲヘナ(学校)を中退。―――しばらくして『ブラックマーケット』で"保安部長"に就任したと知らされた。

 

―――何故"()()"に協力しながら、私達のクーデターにも協力し、"()()"の耳目から巧妙に隠しつつ共に実行したのか。同級生にして親友でもあった筈の"()()"を何故裏切ったのか―――ザンム先輩自身が明かさないから分からないけど、"()()"が去った後に残された()()の捜索と破壊に今も協力してくれている。今回『アビドス』で確認された()()も、ザンム先輩の言葉が無ければ私達だけでは気付くのが遅れただろう。

 

 兎も角―――"()()"の()()は、"鬼傑組"の様な犯罪組織や―――()()()()()()に使わせてはならない。確実に見つけ出し、確実に破壊する。その為にも―――

 

「――報告した通り、『アビドス』との関係は今後も維持するわ。とりあえず、まずは定期的な"局地環境での演習"を通して交流を深めていくつもりよ」

「それから"風紀委員会"として、捕縛した規則違反者を懲罰として"『アビドス』復興作業に一定期間従事させる"提案をしたのだけど...断られたわ」

「それは時期尚早だろう。一般的な不良共は兎も角――"温泉開発部"やら"美食研究会"、"双月の悪魔"は()()()()()()()()()()()()だろう。何ならアビドス(先方)の自治区内で()()()()()をしでかして『アビドス』に要らぬ迷惑をかけかねん。...そうしたい気持ちは理解するが」

 

 ヒナの言葉にマコトは呆れた半分、同情半分が混ざり合った表情を浮かべる。―――ヒナとしては、『アビドス』の砂漠というゲヘナ(ウチ)の『ヒノム火山』を始めとする火山地帯とは異なる局地環境での労働、活動を強いる事で懲罰として抑止力に変え、犯罪発生率を減らし、結果として"風紀委員会"の多忙さを和らげたいのだろう。

 しかし―――()()()()()()()()()()()な『ゲヘナ』の不良連中は()()()。この逞しさ故に犯罪、暴動発生率は万年高止まりになっている。

 ましてや、マコトが挙げた"温泉開発部"や"美食研究会"、"双月の悪魔"と言った現『ゲヘナ』屈指の問題児、集団はいくら"風紀委員会"(と、稀に成り行きで巻き込まれた"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)")が鎮圧しても――釈放後暫くしてまた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 故に―――ヒナ、"風紀委員会"には申し訳ないけど『アビドス』を規則違反者の懲罰先として利用するのは現実的とは言えない。

 

「...いい案だと思ったのだけど、そう指摘されると反論できないわね」

「だが、"風紀委員会"の負担を減らしたい意図は理解している。――今回の『アビドス』遠征に投入した"第二装甲大隊"を"風紀委員会"の治安維持活動の支援に宛てる予定だ。元々我が"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"も成り行きで巻き込まれて鎮圧活動を行うこともあったから今更だが。

...実際、お前達が出払っていることをどうやって知ったのやら..."温泉開発部"と"美食研究会"、その他大勢の不良共が同時多発的に暴動を起こしてなぁ。――まさか"親衛第一装甲大隊"に加えて"虎丸"まで投入することになるとは思わなかった」

 

 マコトは"第二装甲大隊"の運用方針を明かし、私達が居ない間に起きた出来事を思い出したのか遠い目を見せる。―――マコトの言う通り、『アビドス』遠征は学園内に周知していない(周知しても誰も興味を持たないか、これ幸いにと暴動を起こすのがオチだからだ)。しかし、何らかの手段で私とヒナという()()()()()()()が居ない事を知った問題児達が大暴れしたようだ。"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の象徴(シンボル)たる"虎丸"まで実戦投入するとは、余程の大暴れだったのだろう。

 

「だが、錬成間もなかった"第二装甲大隊"が今回の遠征で実戦経験を積んだからな。どれだけ力になれるかは未知数だが――本格的な"風紀委員会"の支援が行える」

「...そういう意図があったのね。戦車も有効とは言いにくいけど、ないよりはありがたい。――ありがとう、マコト」

「気にするな。学園を統治する行政組織(ケツ持ち)としての責務を果たしているだけだからな。――いい時間だな。どうだ、久しぶりに三人で昼食でも食べに行かないか?実は行きつけのレストランが友人、家族を伴う複数人での食事でデザート一品無料、料金割引のサービスを催していてな。一緒にどうだ?」

 

 マコトはヒナのお礼に謙遜の言葉を返し、机の卓上時計を見てそんな提案を挙げる。―――確かに、私は万魔殿(マコトと同じ組織)所属だから一緒に食事を取る事はよくある。けど、ヒナも交えて親友三人で...というもの自体本当に久しぶりだ。

 

「いいわね。三人で食事も久しぶりだし、行きましょうか。――サクヤは既に"風紀委員会"に復帰しているし、昼食くらいはのんびり取る余裕はあるわ。...だから、ね?」

「...分かった。もうしばらく、アコ達に任せておく」

「キキッ、ヒナもプライベートを考えるようになって何よりだ」

 

 以前であれば報告を終えてすぐ仕事に戻っていただろうけど、親友との付き合いに応える余裕が出て来た様だ。マコトは嬉しそうに笑い、席を立つ―――

 

 


~"連邦生徒会"オフィスビル "連邦生徒会長"執務室~

side-イナバ

 

「――――以上で報告を終わります」

「ありがとう、イナバ。流石『SRT』最精鋭部隊の一角ね」

 

 相変わらず一個人の執務室としては広過ぎる"連邦生徒会長"執務室。執務机の後ろの窓の前に立って街を見下ろす(ユカリ)"生徒会長"は背を向けたまま謝意を述べる。

 執務机の傍では、狐耳の間に"連邦生徒会"の小さな制帽を被った金髪のショートヘアの頭上に黄色いヘイローを浮かべ、深い青のネクタイを締めた白いシャツの上に"連邦生徒会"制式の白いジャケットを纏い、インナーが青いロングスカートに白いブーツを履き、背後には明らかに目立つ金色の九尾が覗く―――"連邦生徒会長"の傍に仕える『八雲ラン』"統括秘書官*1"が静かに佇んで私と(ユカリ)"会長"のやり取りを聞いている。

 

「――"鬼傑組"どころか『ブラックマーケット』()()()()()()共々『アビドス』に仕掛けて来たのは思わぬ収穫だったわね。『ゲヘナ』と『トリニティ』が()()()()()支援に来たのは予想外だったけど、()()締結を考えれば協働できると分かったのは僥倖ね。

 さて、"マーケットガード"は勁牙組と剛欲同盟(残る二組織)の逮捕までは踏み込めなかったようだけど...マーケット内での勢力争いで勁牙組と剛欲同盟(二組織)もマーケット()に目を向ける余裕はしばらくないでしょう。――ラン、『吉弔ヤチエ』、及び構成員の護送は順調?」

「はい。――"防衛室"の計画通り、本日中に『D.U.中央駅』に護送列車が到着。『ヴァルキューレ』に移送後、"公安局"による取調が行われる予定です」

「結構。『ハイランダー』は大勢詰めかけるメディアへの対応もあって大忙しね」

 

 ラン"統括秘書官"は(ユカリ)"会長"の問いに答える。―――『アビドス』で後処理を行っていた間に、"鬼傑組"は"組長"及び、彼女共々逮捕された構成員の取調が終わって『ヴァルキューレ』へと引き渡されていた。今頃『D.U.中央駅』では『クロノス』を始めとするメディアが大勢詰めかけ、今か今かと到着を待っているだろう。

 

「――さて、"Кролик小隊"には引き続き『ブラックマーケット』での監視と犯罪捜査を行ってもらうわ。十中八九、"鬼傑組"壊滅で生じた空隙を狙った勢力争いと抗争が勃発して()()()()()()でしょう。()()()()()()()としての更なる活躍を期待するわ」

「了解しました。――(ユカリ)"会長"、一つ嘆願したいことがあるのですがよろしいでしょうか」

 

 (ユカリ)"会長"からの指示を受領し、嘆願を――ミヤコ達"RABBIT小隊"の『シャーレ』指揮下での活動継続について切り出す。

 

「――"RABBIT小隊"のことね。勿論、あの娘達は引き続き『シャーレ』指揮下で活動させるわ。『アビドス』での活動実績で『シャーレ』の知名度は大きくなった。これからはより引く手数多――様々な学校で、大小様々な活動を行うでしょう。到底"先生"一人では手が足りないわ。だから"RABBIT小隊"を指揮下から離すなんて非情なことはしないわ。既に"教官"にも話は通してあるから大丈夫よ」

「――ありがとうございます!」

 

―――(ユカリ)"会長"は説明せずとも私の嘆願を察し、"RABBIT小隊"の配置は変えないと明言する。ミヤコ達の期待に応えられる嬉しさで少し上ずった声が出てしまうけど、姿勢を正して敬礼する。

 

「ふふ、後輩想いの良い先輩ね。さて――」

 

 

――prrr!

「――こちら"連邦生徒会長"執務室。...カヤ?どうしたそんなに慌てて―――何だと...?それは確かか?!

 

―――ラン"統括秘書官"が執務机でベルを鳴らした内線受話器を取って応対し―――驚いた声を挙げる。相手は『不知火カヤ』"防衛室長"の様だけど―――

 

「――ラン、どうしたの?」

(ユカリ)"会長"、カヤ"防衛室長"より緊急速報です!逮捕した"鬼傑組"を護送中の列車が――――」

 

 


~『シャーレ』オフィスビル 部室~

side-"先生"

 

「"――書類の内容を読んで、同意したらサインをお願い"」

「了解です」

 

 "シッテムの箱"の画面に書類を映し、タッチペンと共にアヤに渡す。私の後ろに控える"RABBIT小隊"の四人と共にアヤの様子を見守る。

 

「――書きましたよ。確認をお願いします」

「"よし......不備はないね。アロナ、データの登録と控えの印刷を"」

『了解しました!』

 

 三十秒程経ち、手早くサインを書き終えたアヤから"シッテムの箱"とタッチペンを返して貰い、私の目でも確認してからアロナに指示を出す。十数秒後、コピー機から吐き出された、アヤのサインが載った書類のコピーと共に()()()()()()()()()()()を―――

 

 

 

 


 

Independent Federal Investigation Club

S.C.H.A.L.E

広報員

 


 

―――『シャーレ』所属の"広報員"である事を示す『シャーレ』のロゴも誂えた白い腕章を手渡す。アヤは早速腕章を左腕に付け―――

 

 

 

 

「――では、改めまして。『クロノススクール』二年生、"新聞部"所属。"文々。新聞"記者兼編集長『射命丸アヤ』――本日付で"連邦捜査部"『シャーレ』()()()()()及び"広報員"として加入します!"先生"、"RABBIT小隊"の皆さん――改めましてよろしくお願いします!」

「"『シャーレ』加入を歓迎するよ。よろしくね、アヤ"」

「改めてよろしくお願いします、アヤ先輩」

「まさか『シャーレ』の一員になるなんてな...よろしく頼む、アヤ先輩」

新聞記者(ブン屋)の情報網も侮れないからありがたいね。よろしくね、アヤ先輩」

「よ、よろしくお願いします...!」

 

―――満面の笑みで挨拶し、私達も挨拶を返す。

 

―――『"――シャーレの部員になりたい?"』

―――『はい。――何故アビドスの方々が復興を諦めず、遂にその復興への道を拓くことができたのか。無論、ホシノさん達各生徒の強い意思もあるでしょう。ですが――"先生"、貴方の来訪も大きな影響を与えたと思うんです。

 得られた数々の情報、私自身の体験から、アビドスの方々が持っていた大人――ひいては自治区外から来た者への不信感は相当なものだと実感しました。しかし――"先生"の誠意と行動が彼女達の不信感を溶かし、ゲヘナ、トリニティからの支援をも受け入れる下地を作った。私はその様に感じています。

 故に私は――"先生"、貴方をもっと知りたい。貴方がシャーレで行う活動がどんな影響を与えるか知りたい。勿論、入部の暁には部員としてすべき仕事も受け入れましょう。――どうです?新聞記者としては、情報面でも大いに貢献できる自信はありますよ』

 

―――『アビドス』での後処理を終え、"連邦生徒会"への報告書の準備もする為に『シャーレ』のオフィスビルへ戻って作業を進めている最中の小休止中。アヤから切り出された提案と理由を思い返す。

 新聞記者としての情報網もありがたいけど―――何より人手が一人増えた事が本当に嬉しい。

 

 『シャーレ』に帰還してすぐに、『SRT』のサグメ"教官"からミヤコ達の『シャーレ』指揮下での活動継続が承認された事を伝えられたけど―――"RABBIT小隊"はあくまで『SRT』から派遣された部隊であり、『シャーレ』に正式に所属している訳では無い。故に、"連邦生徒会長"の命令一つで『シャーレ』を離れてしまう可能性もある。

 ビルも業務も、シッテムの箱(アロナ)のサポート込みでも私一人では到底回せない。だからこそ、アヤの『シャーレ』部員としての加入はありがたい。

 

「まぁ、文々。新聞(自分の新聞)もあるので兼務ではありますが、できる限りサポートしますよ。書類仕事から不良鎮圧まで――私の実力で応えられる範囲であれば請けましょう!」

「"はは、頼もしいね。――ミヤコ達も、改めてよろしく頼むよ"」

「はい。作戦行動以外でも、サポートが必要であれば何なりとご下命ください」

「『アビドス』の実績が知られれば、引く手数多だろうしな――改めてよろしく頼む、"先生"」

「くひひ...オペレーターと火力支援が必要なら任せてよ」

「至らない所は多々ありますが、できる限り頑張ります。あ、改めてよろしくお願いします、"先生"...!」

 

 アヤの頼もしい言葉に微笑み、ミヤコ達とも改めて挨拶を交わす。―――ミヤコ達も『シャーレ』指揮下での活動継続が認められて良かった。彼女達の戦力もありがたいし、イナバ(憧れの先輩)に近付ける様な経験を積ませる一助になれるなら先生(教師)としても嬉しい。

 

「"よろしくね、皆。――さて、アヤは学校の寮から通うか、ミヤコ達みたいな住み込み、どっちに――"」

 

 

 

 

 

 

 

 

ズゥゥン...

 

「"――うん...?"」

「――一瞬且つ微かでしたが、何か音が...」

「聞こえた方角は...『D.U.』方面ですね。...時間的にはそろそろ()()()()()()が到着する頃合い..."先生"、ちょっと行ってきます!

「"あ、ちょっ――"」

 

 

――ガラッ...!

 

 

バサッ...!

 

―――アヤは一言断り、私が止める隙も無く即座に部室の窓に駆け寄って開け放ち、そこから空へ飛び立つ。突然の事で呆然とする私達の前に数本の黒い羽根が舞い散る。

 

「急にどうしたんだ...?『D.U.中央駅』で何か起きたのか...」

「――"先生"、私達も行ってみましょう。()()()()()()――『吉弔ヤチエ』と"鬼傑組"構成員を護送する列車に何か起きたのかもしれません」

「"分かった。"連邦生徒会"からヘリを借りて行こう!"」

 

 ミヤコの提案に頷き、四人を連れて足早に部室を出る―――

 

 


~『アビドス高等学校』校舎~

side-ホシノ

 

ブロロ...

 

―――マミゾウさんの車が走り去る様子を背景に、降りて来た二人が肩を揃えて歩いてくる。祝賀会の時は所々にあったガーゼや包帯はすっかり無くなっている。おじさん達は二人が近付いてくるのを待って―――

 

 

 

 

「...我慢できない!セリカちゃん、ネイトちゃんおかえり~!!

「――二人共、おかえりなさ~い!!」

「ちょ、ユメsむぎゅぅ...

「うおっ、ノノミ先pむぎゅ...

 

―――我慢出来ないと声をあげてユメ先輩が走り出し、続くようにノノミちゃんも走り出して二人に駆け寄り、それぞれセリカちゃん、ネイトちゃんを胸に抱きしめ、驚きの声も抵抗も許さず二人の頭が()()()()()に埋もれる。

 

「...皆でおかえりって言う手筈だっただろうが...仕方ないな、行くぞ」

「あはは...そうですね」

「ん、二人が窒息する前に引き剝がすべき」

「いやぁ、ユメ先輩とノノミちゃんの柔らかさを知る同志が増えておじさん嬉しいよ」

 

 呆れた様に頭を掻きながら歩き出したモコウ先輩に皆で続く。

 

ユメ先輩、離して...!すっごく柔らかいけど息...息が...!

ノノミ先輩、離してくれ...!柔らけぇが苦しい...!

「おらユメ、セリカを離してやれ。そのままだと窒息するぞ」

「ノノミちゃん、一度ネイトちゃんを離そっか~。羨ましいけど、このままだとノノミちゃんの柔らかさに包まれて逝っちゃうからさ~」

「...あッ?!ご、ごめんセリカちゃん!!

っぷは...!...し、死ぬかと思った...!

「...っと、私としたことが...ごめんなさい、ネイトちゃん。今離しますね~」

っぷは...!...あ“ぁ助かった...

 

 モコウ先輩と共に声を掛け、二人を解放させる。

 

「全く...二人共、先輩とノノミちゃんがごめんね?いきなりでビックリしたでしょ」

「...ふぅ...大丈夫よ、ホシノ先輩。確かにビックリしたけど...怒ってはいないから」

「...いや、謝る必要はねぇ。こうなる位心配かけたってことだからな。...それでもこんな歓迎を受けるとは思わなかったが」

「本来は皆揃っておかえりで迎える筈だったんだが...さて、セリカ、ネイト――」

 

 モコウ先輩は軽く頭を掻き、呆れた表情を微笑みに切り替え―――

 

「――おかえり。無事で何よりだ」

「――おかえり二人共!無事で嬉しいよ!」

「――ふふ、おかえりなさい。これでやっと本当の日常に戻れますね☆」

「――二人共おかえり。無事に帰ってきてくれて嬉しい」

「――セリカちゃん、ネイトちゃん、おかえりなさい。二人が無事で本当に...良かった」

「「「「おかえり、セリカ!」」」」

「「「「姉貴、おかえり!!」」」」

 

「――セリカちゃん、ネイトちゃんおかえり。酷い災難に遭ったけど...無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」

 

―――皆のおかえりの言葉をおじさんが締め括る。二人は顔を見合わせ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――ただいま、皆」」

 

っ...!二人共~!!

「うわ、ちょユメsむぐぅ...?!

「おいまたkむぐぅ...?!

「「「「姉貴~!!」」」」

 

―――満面の笑みでただいまを返した瞬間、感極まったらしいユメ先輩が今度は二人纏めて抱き締め、それを皮切りに元"カタカタヘルメット団"の娘達も一斉に二人の下に駆け寄る。

 

「...またユメは...」

「でも、二人も満更でもなさそう」

「あはは...」

「ふふ、微笑ましい光景ですね~」

「...うへへ、折角だから写真に残そっか~。アヤちゃん程上手く撮れないけど――」

 

 ユメ先輩に抱かれ、皆にわちゃわちゃされる様子を写真に残そうとスマホを取り出し―――

 

 

「――うへ?アヤちゃんから"モモトーク"?」

 


―――今日―――

 

A88@文々。新聞

 ホシノさん! 

 緊急の情報提供です!  

 まだ記事はあげていませんが――  

 


 

 

 

 

 

 

「――え...?」

 

―――アヤちゃんが送って来た()()を見た瞬間、目の前の喧噪が遠くなる錯覚を感じた―――

 

 

 

 


~『トリニティ総合学園』 "ティーパーティー"寮~

 

「――この速報...事実なら一体何が...!」

――~♪

「...!――もしもし。今電話を寄越したってことは、ナギサも記事を見たのね?!...今は情報収集に専念するべきよ。まだ負傷者の人数や詳細も――――」

 

 

~『ゲヘナ学園』自治区 レストラン~

 

『――クロノススクール"報道部"より速報です!"D.U."近郊の線路上で()()()()()()()模様です!この列車は"鬼傑組"組長吉弔ヤチエと構成員を――――』

 

「――は...?」

「――な...何だと...?!」

「――一体何が...?」

「兎に角、昼食所ではない!我々も情報収集を行うぞ!それからザンム先輩にも――――」

 

 

~『ヴァルキューレ警察学校』 "公安局"オフィス~

 

「"局長"、落ち着くっす!まだ状況は確定して――」

「落ち着けるものか!!護衛に出したコトヒメ達"捜査一班"と連絡が繋がらないんだぞ?!」

「心配するのは分かるっすけど、局長(トップ)が慌てているのは――」

――~♪

っ?!――もしもし?!...あぁ、コトヒメ無事だったか...!......班員も負傷者多数か。分かった。――それで、何が起きた?お前が知り得る情報を――――」

 

 

~『D.U.』近郊 脱線現場上空~

 

「"...これは..."」

「うっひゃぁ...こりゃ酷いや。編成数は少ないけど、()()()()()なんて初めて見た...」

「火災もあちこちで起きてるな。負傷者も...見たところ多そうだぞ」

「...あのヘリ..."Кролик小隊"も...!」

「"連邦生徒会"に報告に向かっていた筈なので、緊急展開したようですね。――"先生"、ご命令を」

「"よし!私達は――――"」

 

 

 

 

 

 


~何処かの廃駅舎~

side-??

 

「...一見すれば廃線に伴い放棄された廃駅舎だが――既に拠点として構築しているな。巧妙な偽装だ」

 

 嘗ては我が『ハイランダー鉄道学園』で管理していたが、利用者数低迷に伴い廃線措置が取られ、それに伴い放棄された駅舎の廃墟を―――よく見れば()()()()()()()()()()()()が見て取れる建物を見上げ、()()を詰めた段ボール箱を幾つか積んだ台車を押して建物に入る―――

 

 

「――止まれ!...って、アンタは...!」

 

―――駅舎の地下階層の隅。ホーム駅員の事務所だった部屋の前に立つ()()()()()()()()()()()()、頭上に緑色のヘイローを浮かべた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の見張り―――"鬼傑組"構成員二人が[QBZ-95()]を向け―――しかし私を見て驚いた表情を浮かべながら[QBZ-95()]を下げる。

 

「――約束通り、物資の提供に来た。それから――貴様らの"組長"の様子も見に来た」

「...分かった。ボディチェックと荷物の改めを行う。お前は報告を」

「あぁ。..."若頭"、()()()()()()()()()()が来訪しました。物資の提供と――"組長"に会いたいと...はい、はい...

 

 見張りの片割れが私のボディチェックと荷物検査を始め、素直に従いつつインカムで通信をやり取りする様子を見守る。

 

......!了解しました......許可が下りた。チェックが終わったら入っていい」

「...チェック完了。怪しいものはない」

「そうか。――では、失礼するぞ」

 

 許可が下りたと同時にチェックも終わり、一言断ってから台車を押し、開けられたドアから中に入る。中には十数人の"鬼傑組"構成員と―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――昨日も物資を持って来訪したそうですね。態々私に会いに来たというのに断ってしまい、申し訳ございませんでした」

「あんな目に遭ってはダメージも大きいだろう。だが――まだ本調子ではなさそうだが、ある程度メンタルは回復したようで何よりだ」

 

―――傍に"鬼傑組"若頭『孫ビテン』を控えさせ、比較的状態の良い机で両肘を付いて私を迎える、まだ顔色が悪く見える"組長"『吉弔ヤチエ』と挨拶を交わす。

 

「――まずは、()()()()()()上に、ビテン達『アビドス』から()()()()()()()()()()()の手引き。そしてこの様な()()()()()()()()()()()()ことに感謝します」

「私は()()()()()()だからな。私としても――まだ貴様の力が必要だ」

 

 『吉弔ヤチエ』の謝意に表情を変えずに答える。

 

―――一昨日起きた、"鬼傑組"組長『吉弔ヤチエ』と構成員を護送する列車の()()()()。これは()()()()()()()()()()()()()()()ものだ。『吉弔ヤチエ』逮捕の情報を知った時から()()の決行まで時間的余裕が余り無く、我ながら()()()()()()()()になってしまったが、幸いにして今の所どの学校、組織も()()()()()である事には気付いたが"『ハイランダー』の人間が関与している"という推測にまで踏み込めていない。

 

「――しかし、救出を敢行するというのなら何かしら合図が欲しかったですね。...突然列車が大きく揺れたと思いきや横転して脱線。私自身も怪我を負い、辛うじて保てた意識の中で貴女の姿が見え――らしくもなく戸惑いましたよ」

「あぁ、そうだったな。...だが、一報入れなかったのは貴様もだろう。――『アビドス』の制圧を行うなら()()()()()()()()と要望していた筈だぞ。これでお互い様だ。

 全く...貴様が『アビドス』に攻撃を仕掛け、しかし『ゲヘナ』、『トリニティ』まで加わった『アビドス』の強烈な抵抗を受けて壊滅しただけでなく、貴様自身が逮捕されたと知ったのが"文々。新聞"でなければ、救出も間に合わなかっただろう」

 

 『吉弔ヤチエ』の不満に対して私も不満を返す。―――"鬼傑組"が『アビドス』を狙って動き出す時、()()()たる私にも一報入れると決めていた筈だが、『吉弔ヤチエ』はその約束を守らなかった。大方、自分の利益を多く取ろうとしたのだろう。"鬼傑組"は『ゲヘナ』から戦車を秘密裏に奪って戦車部隊を備えていたし、その強大な戦力での慢心もあった筈だ。―――その結果が先述の通りだが。私にも一報入れてくれれば、敗北した際の逃亡の手引きや支援が出来ただろうに...

 

―――閑話休題。

 

「――私もあまり時間がないのでな。貴様に会おうとした目的だが...まだ『アビドス』制圧は()()()()()()か?」

「...意図が読めませんね。『ゲヘナ』、『トリニティ』の支援を受けた『アビドス』のおかげで戦車部隊も、組織そのものも壊滅してこのザマです。『アビドス』に眠る()()()()を――」

 

 

 

 

 

 

「――待て。()()()()だと?」

 

―――『吉弔ヤチエ』から出た言葉の中に()()()()()()()()を聞き留め、思わず言葉を遮って尋ねる。

 

「...貴女には話していませんでしたか?そもそも『カイザー』が態々『アビドス』に事業を進出させたのは、砂漠に眠る()()()()()()()()()()()が目的だったんですよ。内偵を送って調べた限りでは、動かせることができればキヴォトス掌握も夢ではない程の性能を――」

 

 

 

「――()()()()()()の為に『アビドス』を狙ったのか...私はてっきり『カイザー』も()()狙いで進出したと推測していたんだが...」

「...何を言っているのです?『アビドス』には()()()()以外にも何かあるというのですか?」

 

―――思わず額に手を添えて天井を仰ぎ見て漏らした言葉に『吉弔ヤチエ』は困惑した声で尋ねて来る。...元々()()狙いではなかったのなら"鬼傑組"にこの情報を共有するのは危険かもしれないが...背に腹は代えられない。

 

 

 

 

「..."()()"は知っているな?――『アビドス』には"()()()()()"が眠っている。それも...()()()()級の大物がな。

 人手はそれなりに要るだろうが――()()()()なんて仮に発掘できても現行の技術で動かせるのかも怪しい代物よりは確実に動かせる筈だ」

「...!」

 

 『アビドス』に眠る"()()()()()"について明かした瞬間―――『吉弔ヤチエ』の顔に生気が戻り始める。"()()()()()"が現行の技術の産物である事の真意を察したのだろう。―――()()()()なんかより確実に動かせる上に、()()()()級となれば『吉弔ヤチエ』が狙うキヴォトスの覇権も夢ではないだろう。

 

「...なるほど...恐るべき政治家にして稀代の発明家でもあった"()()"謹製の兵器郡たる"()()"。まさか『アビドス』にまで手を伸ばしていたとは...あぁ成程。だから『ゲヘナ』が介入した訳ですね」

「『トリニティ』については私もまるで繋がりが推測できないが...『ゲヘナ』はこれからも『アビドス』と関わりを保つだろう。『アビドス』制圧の難易度は高いぞ」

「望むところです。"()()()()()"が我が手に収まるのであれば努力は惜しみませんよ」

「...あっという間に"搦手のヤチエ"が復活したな。兎に角、『アビドス』を狙うつもりがあるなら結構。私も引き続き貴様に協力しよう」

 

 椅子から立ち上がって赤い瞳に野心的な輝きを宿した『吉弔ヤチエ』を見て頷き、協力関係の継続を宣言する。

 

「情報、ありがとうございます。引き続きの協力関係にも感謝を。...さぁビテン、これから忙しくなりますよ。今は雌伏の時ですが、身を潜めていてもできることはあります。壊滅したネットワークの再構築、人手の拡充、そして『アビドス』の情報収集...やることは沢山あります」

「"組長"が元気になったのなら何だってやりますよ!特効薬みたいな情報、ありがとう!」

 

―――元気になった『吉弔ヤチエ』の雰囲気にあてられてか、"若頭"『孫ビテン』や構成員達も俄に元気付く。

 

「やる気が復活したのなら何よりだ。――改めてよろしく頼むぞ、"鬼傑組"、『吉弔ヤチエ』」

「こちらこそ、今後も()()()()を続けられることを願いますよ――『朝霧スオウ』さん」

 

 『吉弔ヤチエ』と改めて挨拶と共に握手を交わす。

 

―――()()()()()()()()()()を狙っていたと聞いた時は組む相手を間違えたかと思ったが、"()()()()()"について明かしたらあっという間に"搦手のヤチエ"が復活した。逮捕にまで至った失敗も反省し、より悪辣な手も使うだろう。

 今頃『アビドス』は日常に戻っているだろうが、せいぜい安心で気を抜いているといい―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――"鬼傑組"も『カイザー』も『ネフティス』も。そして『アビドス』も。()()()()()()()()為の()()()になって貰うぞ。

 

 

―――The malice is still there...―――

 

 

 

 

*1
統括室所属




ということで、アビドス編一章、二章終了!勿論三章もやるよ!まだまだ先になると思うけど!
さて次回からは...ブルアカなら逃せないアレをやっていきます。

あ、ついでに活動報告でアビドス一章二章編投了について書いてます。
リンク:https://syosetu.org/?mode=kappo_submit_edit&kid=320300

~生徒紹介~
名前:八雲(やくも) ラン
出身校:百鬼夜行連合学院
学年:三年生
装備:HG(M1911(式神の守護))
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