Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『カイザーPMC』基地 医療棟~
side-セリカ
「――異常はありませんね。予定通り、本日退院とします」
「これで異常ありだったらどうしようかと思ったぜ...」
―――ネイトの診察を終えた軍医さんが異常なしと判断し、ネイトは安心した表情を浮かべながら制服のシャツを整える。
―――prrr!
「――こちら診察室。......はい、両名共に異常なし、退院となります。......了解しました。――玄関でマミゾウ"理事"がお待ちです。学校まで送迎する、とのことです」
「マミゾウさんが態々...分かったわ。ありがとう、軍医さん」
「んじゃ、さっさと行くか。一週間ありがとな、軍医さん」
「医師として当然のことをしたまでです。ではお大事に」
軍医さんにお礼を言い、着替えや日用品を詰めたバッグを肩に提げてネイトと共に診察室を出てメインエントランスに向かって歩き出す―――
~『カイザーPMC』基地 メインエントランス~
「――救出されてから一週間。ニュースやらお見舞いついでの話題やら...アタシらが入院中、色々あったなぁ」
「そうね。本当に色々状況が――」
「――あら、おはよう二人共。無事に退院できたのね!」
「――お、"便利屋68"じゃねぇか。おはようさん」
「――おはよう。...その大荷物、本当に『アビドス』を離れるのね」
―――メインエントランスに入ると、私達より多くのスーツケースやカバンを携える"便利屋68"の六人と出会し、我が事の様に笑みを浮かべるアル"社長"と挨拶を交わす。
「...えぇ。稼げたし、居心地は良かったのだけど...私達も事情があるから」
「"社長"の言う通り、
「それに、今回稼いだお金を使って事務所も移転するから、行動は早い方がいいしね~」
残念そうな表情を浮かべるアル"社長"に続いてジョオンとムツキが事情を説明してくれる。
―――"便利屋68"は『カイザーPMC』との契約を解除し、『アビドス』を去る事になった。二日前にお見舞いついでに話してくれた時のアル"社長"は大きな稼ぎが得られて凄く嬉しそうな反面、居心地が良かったのか今みたいな残念そうな表情を浮かべていた。
話を聞いただけだけど、私とネイトが誘拐されている間に"鬼傑組"の策謀で誘導されて"便利屋68"の逮捕――は口実で、実際は"先生"を狙っていたらしい――の為に『ゲヘナ学園』の"風紀委員会"が攻撃して来たと言うから、このまま『アビドス』に留まるのは私達に迷惑を掛けるかもしれないと考えたのだろう。
「トオルさんには引き留められなかったのか?」
「確かに惜しまれたけど、
「流石トオルさんね...」
「うん...あんな報酬額、今まで貰ったことなかった...」
「そ、そうですね...アル様も額の大きさに驚き過ぎて白目を剝いて固まっていましたから」
私の言葉にハルカとシオンが頷く。トオルさんの気前の良さと契約の誠実な履行は相変わらずだ。
―――そんなトオルさんはマミゾウさん共々祝賀会を終えてから忙しそうで、『ビナー』の亡骸が重過ぎて動かせないから囲い込む形で研究サイトを建てる準備や、
「――でも、これから二度と会えない訳じゃないわ。今回みたいな長期契約は...まぁ、事情によりけりだけど――必要になったら依頼を出してちょうだい。報酬はしっかり払ってもらうけど、その分契約はキッチリ果たすから!」
「頼もしいわね...やっと復興への道が拓けたけど、借金はまだあるからトオルさん達みたいに気前よくとは行かないと思うけど、手が必要になったら頼らせてもらうわ」
アル"社長"の自信満々の言葉に頷く。まだ借金返済があるから依頼を出す余裕はあまり無いけど、"便利屋68"の実力の高さは頼りがいがある。もしまた
「――そう言えば、退院ってことはこれから学校に行くことになるわね?」
「あぁ。でもマミゾウさんが送ってくれるっていうから、足は大丈夫だぞ」
「――じゃあ、途中までになるけど護衛してあげるわ!さっき言った通り本来なら
アル"社長"の問いにネイトが頷くと、"社長"は笑みを浮かべてそんな提案を挙げる。―――時刻は大体午前十時前。アヤネや先輩達がお見舞いに来てくれた時に退院したら学校に行くと予め約束していたから、今頃皆待っている筈だ。でも態々私達を護衛しようなんて―――
「護衛って..."鬼傑組"ももう居ないのに大げさな」
「まぁまぁいいじゃん。――アルちゃん格好付けてるけど、私達もトオルさんの計らいで駅まで送ってもらうからさ。そのついでにって訳」
「ちょ、ムツキ...!」
アル"社長"の提案に難色を示すと、ムツキが悪戯っぽく笑って事情を明す。アル”社長"は笑顔から一転、バラすなと言いたげな表情で抗議の声を挙げる。
「そういうことか...まぁ、いいんじゃないか?
「...そうね。無料のサービスならありがたく受けましょうか」
ネイトの言う通り大きな脅威は無くなったけど、それでも『アビドス』には独り身か、小規模なグループを作って潜んでいる不良が居る。それくらいなら私とネイトでも対処出来るだろうけど、"便利屋68"が護衛に付くなら万全だろう。ネイトの意見を受け入れてアル"社長"の提案に頷く。
「ふふ、大船に乗ったつもりで任せなさい!貴女達には銃弾一発だって食らわせないわ!さぁ、行きましょう!」
「...頼もしいのは確かなんだが、時々茶化されて格好付かないのがな...」
「くふふ、それがアルちゃんの可愛い所だよ。でも――外せない所はしっかり決めてくれるし、頼りになるよ」
意気軒昂に声を挙げて歩き出した彼女に続いて玄関に向かう―――
~『トリニティ総合学園』"ティーパーティー"テラス~
side-テンシ
「――――報告は以上よ」
「ありがとうございます、テンシさん」
「ありがとう、テンちゃん。...羨ましいなぁ、そんな戦闘が起きたなら私も参戦したかったよ。『ゲヘナ』が居なきゃなぁ...」
「...相変わらずね、ミカ。前も言ったけど、先入観での決め付けは見える筈のものも見えなくなるわ。それに、貴女は曲がりなりにも"ティーパーティー"を構成する"パテル分派"の現"ホスト"。注目されているのだから、そう言った言動が周囲に聞かれたら影響を及ぼすのよ」
ナギサとミカに向けた『アビドス』での支援活動の報告を終え、二人のお礼を聞きながら紅茶を一口飲んで喉を潤し、ミカが残念そうな表情を浮かべて零した愚痴を窘める。
「う...ご、ごめん。――あ、でも!『アビドス』を助けることができたのは本当によかったね!"鬼傑組"は
「とは言え――"鬼傑組"組長の
バツが悪そうな表情を浮かべて謝り、話題を戻したミカの言葉に対してナギサは苦々しい表情を浮かべる。
―――
「まぁ、
『――こちら現地の川流シノンです!ブラックマーケットで覇権を争っていた深慮遠謀の"鬼傑組"組長、"吉弔ヤチエ"が今
ミカがスマホを操作し、『キヴォチューブ』の『クロノススクール』"報道部"公式チャンネルにアップロードされている中継映像のアーカイブ動画を再生する。他メディアのカメラフラッシュが絶え間無く炊かれ続ける中、『ヴァルキューレ』"公安局"局員の護衛に囲まれた―――
―――『アビドス』で支援活動の後処理を行っている間に、『ブラックマーケット』で"マーケットガード"の取り調べを終えた"鬼傑組"組長『吉弔ヤチエ』は『ヴァルキューレ』へと引き渡された。
おかげで"鬼傑組"以外の幾つかの悪徳企業もついでに『ヴァルキューレ』や各校治安維持組織が検挙、最悪経営陣も逮捕されて潰され、『アビドス』へは同情の声や
「――"連邦生徒会"
ナギサもスマホを操作し、"イシスの恵み"公式サイトの画面を見せてくる。
主催:『アビドス高等学校』廃校対策委員会
協賛:連邦捜査部『シャーレ』
―――『そうだねぇ...まずは募金でも募ってみようかな~。借金は"アビドス生徒会"が背負ったもの――だからその後継であるおじさん達"廃校対策委員会"が稼いだお金で返していくから、復興活動の予算に割けるお金がないんだよねぇ...』
―――祝賀会の翌日。レミリア、ヒナと同席して今後の関係や行動を話し合った際にホシノが提案し、『シャーレ』の支援を得て開設した募金。これまたアヤが
おかげでナギサの言う通り、一週間も経っていないのに既に
「――テンちゃん、この写真って全部本当なんだよね?砂漠から突き出てる家とかビルはちょっと信じにくいんだけど...」
「えぇ、全て事実よ。それに生徒数も現状五十人に満たないから、吹き込んで溜まる砂の掃除もペースがギリギリ追い付かないのよ。帰還前に校内の砂掃除を手伝ったけど――あれは人の手だけでは大変よ」
―――『...ぺっ...砂が口に...これは大変ね』
―――『ふぅ...あ、アビドスの皆さんはこれを毎日...?』
―――『あぁ、基本的にはな。しかもお前達みたいな人手がなければ、使わない教室や部屋は放置するしかない』
ミカの言葉に頷き、砂掃除でのヒフミ、モコウとのやり取りを思い返す。―――お金は勿論、人もまた『アビドス』には足りない。街に吹き込んで溜まる砂の除去は『カイザーPMC』、『カイザーコンストラクション』でも行っているらしいけど、それでもペースは追い付いていない。
『ビナー』が居なくなったものの、それでも砂漠は気が遠くなる程に広大。故に風が運んで来る砂を日々除去するしか出来ないのが『アビドス』の現状だ。
「そっか...現地に行ったテンちゃんが言うなら信じるよ!早速募金しよっと☆ん~...五万円位でいいかな」
動画を閉じて募金サイトを開いたミカは早速募金する。
「そんなあっさりと...いえ、確かにテンシさんは現地に行ったので信憑性はありますね。では私も細やかながら...ふむ...復興をより早める為にもここは
「「それは細やかじゃないでしょ(じゃんね)」」
ミカに続いて募金をしようと結構な額を募金しようとするナギサにミカと揃ってツッコむ。確かにナギサからすれば
「――この募金は公認者たる"連邦生徒会"は勿論、"廃校対策委員会"のチェックも入る筈よ。各人、各企業の名前と募金額は公表されないでしょうけど、
「し、しかし...あくまで
「――それでもナギちゃんが現"ホストリーダー"って事実はついて回るよね?テンちゃんなら兎も角、会ったこともない要人が億単位でお金をポンってあげちゃったら、その"廃校対策委員会"の娘達は
「...う...た、確かに...」
まさか反対されるとは思わなかったナギサは戸惑いつつもあくまで個人の意思だと反論するけど、ミカがナギサの現役職の影響も考えろと追撃して窘める。
「それに、サイトで募金総額はリアルタイムで更新されているし、いきなり億単位で額があがったらSNSでも話題になるでしょうね。――億単位を募金できる人物、企業なんて限られるわ。『トリニティ』だって勘繰られてそこから...」
「...わ、分かりました...では、ミカさんと同額の五万円に抑えておきます」
「その位がいい所ね」
「...そう言えば、テンちゃんは幾ら募金したの?」
「私?私は――」
「――募金の開設が決まった時に、"仮に募金が全く集まらなかったら"って、レミリア"副議長"共々
「「
~『ゲヘナ学園』 "
side-レミリア
「――――報告は以上よ」
「うむ、『アビドス』への遠征ご苦労だった。――まさか『トリニティ』も同じ行動を取るとはな。いつの間に繋がりを得ていたのやら...」
―――報告を聞き終えたマコトはレポートを机に置きながら言ちる。
「来てくれたのが"ソーサーナイツ"――
「おかげで将来的な
「まさか"勁牙組"、"剛欲同盟"――ライバルである筈の組織すら集めるとはな。...
マコトは渋い表情を浮かべながら頷く。
―――『ブラックマーケット』治安維持組織"マーケットガード"の元締めたる現"保安部長"『日白ザンム』。私達の先輩であり―――
―――"風紀委員会"の
現"風紀委員長"であるヒナの様な卓越した戦闘力は無かったけど、巧みな話術と指揮能力を持ち―――同級生にして親友であった"
しかし―――その裏では"
―――何故"
兎も角―――"
「――報告した通り、『アビドス』との関係は今後も維持するわ。とりあえず、まずは定期的な"局地環境での演習"を通して交流を深めていくつもりよ」
「それから"風紀委員会"として、捕縛した規則違反者を懲罰として"『アビドス』復興作業に一定期間従事させる"提案をしたのだけど...断られたわ」
「それは時期尚早だろう。一般的な不良共は兎も角――"温泉開発部"やら"美食研究会"、"双月の悪魔"は
ヒナの言葉にマコトは呆れた半分、同情半分が混ざり合った表情を浮かべる。―――ヒナとしては、『アビドス』の砂漠という
しかし―――
ましてや、マコトが挙げた"温泉開発部"や"美食研究会"、"双月の悪魔"と言った現『ゲヘナ』屈指の問題児、集団はいくら"風紀委員会"(と、稀に成り行きで巻き込まれた"
故に―――ヒナ、"風紀委員会"には申し訳ないけど『アビドス』を規則違反者の懲罰先として利用するのは現実的とは言えない。
「...いい案だと思ったのだけど、そう指摘されると反論できないわね」
「だが、"風紀委員会"の負担を減らしたい意図は理解している。――今回の『アビドス』遠征に投入した"第二装甲大隊"を"風紀委員会"の治安維持活動の支援に宛てる予定だ。元々我が"
...実際、お前達が出払っていることをどうやって知ったのやら..."温泉開発部"と"美食研究会"、その他大勢の不良共が同時多発的に暴動を起こしてなぁ。――まさか"親衛第一装甲大隊"に加えて"虎丸"まで投入することになるとは思わなかった」
マコトは"第二装甲大隊"の運用方針を明かし、私達が居ない間に起きた出来事を思い出したのか遠い目を見せる。―――マコトの言う通り、『アビドス』遠征は学園内に周知していない(周知しても誰も興味を持たないか、これ幸いにと暴動を起こすのがオチだからだ)。しかし、何らかの手段で私とヒナという
「だが、錬成間もなかった"第二装甲大隊"が今回の遠征で実戦経験を積んだからな。どれだけ力になれるかは未知数だが――本格的な"風紀委員会"の支援が行える」
「...そういう意図があったのね。戦車も有効とは言いにくいけど、ないよりはありがたい。――ありがとう、マコト」
「気にするな。学園を統治する
マコトはヒナのお礼に謙遜の言葉を返し、机の卓上時計を見てそんな提案を挙げる。―――確かに、私は
「いいわね。三人で食事も久しぶりだし、行きましょうか。――サクヤは既に"風紀委員会"に復帰しているし、昼食くらいはのんびり取る余裕はあるわ。...だから、ね?」
「...分かった。もうしばらく、アコ達に任せておく」
「キキッ、ヒナもプライベートを考えるようになって何よりだ」
以前であれば報告を終えてすぐ仕事に戻っていただろうけど、親友との付き合いに応える余裕が出て来た様だ。マコトは嬉しそうに笑い、席を立つ―――
~"連邦生徒会"オフィスビル "連邦生徒会長"執務室~
side-イナバ
「――――以上で報告を終わります」
「ありがとう、イナバ。流石『SRT』最精鋭部隊の一角ね」
相変わらず一個人の執務室としては広過ぎる"連邦生徒会長"執務室。執務机の後ろの窓の前に立って街を見下ろす
執務机の傍では、狐耳の間に"連邦生徒会"の小さな制帽を被った金髪のショートヘアの頭上に黄色いヘイローを浮かべ、深い青のネクタイを締めた白いシャツの上に"連邦生徒会"制式の白いジャケットを纏い、インナーが青いロングスカートに白いブーツを履き、背後には明らかに目立つ金色の九尾が覗く―――"連邦生徒会長"の傍に仕える『八雲ラン』"統括秘書官*1"が静かに佇んで私と
「――"鬼傑組"どころか『ブラックマーケット』
さて、"マーケットガード"は
「はい。――"防衛室"の計画通り、本日中に『D.U.中央駅』に護送列車が到着。『ヴァルキューレ』に移送後、"公安局"による取調が行われる予定です」
「結構。『ハイランダー』は大勢詰めかけるメディアへの対応もあって大忙しね」
ラン"統括秘書官"は
「――さて、"Кролик小隊"には引き続き『ブラックマーケット』での監視と犯罪捜査を行ってもらうわ。十中八九、"鬼傑組"壊滅で生じた空隙を狙った勢力争いと抗争が勃発して
「了解しました。――
「――"RABBIT小隊"のことね。勿論、あの娘達は引き続き『シャーレ』指揮下で活動させるわ。『アビドス』での活動実績で『シャーレ』の知名度は大きくなった。これからはより引く手数多――様々な学校で、大小様々な活動を行うでしょう。到底"先生"一人では手が足りないわ。だから"RABBIT小隊"を指揮下から離すなんて非情なことはしないわ。既に"教官"にも話は通してあるから大丈夫よ」
「――ありがとうございます!」
―――
「ふふ、後輩想いの良い先輩ね。さて――」
――prrr!
「――こちら"連邦生徒会長"執務室。...カヤ?どうしたそんなに慌てて―――何だと...?それは確かか?!」
―――ラン"統括秘書官"が執務机でベルを鳴らした内線受話器を取って応対し―――驚いた声を挙げる。相手は『不知火カヤ』"防衛室長"の様だけど―――
「――ラン、どうしたの?」
「
~『シャーレ』オフィスビル 部室~
side-"先生"
「"――書類の内容を読んで、同意したらサインをお願い"」
「了解です」
"シッテムの箱"の画面に書類を映し、タッチペンと共にアヤに渡す。私の後ろに控える"RABBIT小隊"の四人と共にアヤの様子を見守る。
「――書きましたよ。確認をお願いします」
「"よし......不備はないね。アロナ、データの登録と控えの印刷を"」
『了解しました!』
三十秒程経ち、手早くサインを書き終えたアヤから"シッテムの箱"とタッチペンを返して貰い、私の目でも確認してからアロナに指示を出す。十数秒後、コピー機から吐き出された、アヤのサインが載った書類のコピーと共に
S.C.H.A.L.E
―――『シャーレ』所属の"広報員"である事を示す『シャーレ』のロゴも誂えた白い腕章を手渡す。アヤは早速腕章を左腕に付け―――
「――では、改めまして。『クロノススクール』二年生、"新聞部"所属。"文々。新聞"記者兼編集長『射命丸アヤ』――本日付で"連邦捜査部"『シャーレ』
「"『シャーレ』加入を歓迎するよ。よろしくね、アヤ"」
「改めてよろしくお願いします、アヤ先輩」
「まさか『シャーレ』の一員になるなんてな...よろしく頼む、アヤ先輩」
「
「よ、よろしくお願いします...!」
―――満面の笑みで挨拶し、私達も挨拶を返す。
―――『"――シャーレの部員になりたい?"』
―――『はい。――何故アビドスの方々が復興を諦めず、遂にその復興への道を拓くことができたのか。無論、ホシノさん達各生徒の強い意思もあるでしょう。ですが――"先生"、貴方の来訪も大きな影響を与えたと思うんです。
得られた数々の情報、私自身の体験から、アビドスの方々が持っていた大人――ひいては自治区外から来た者への不信感は相当なものだと実感しました。しかし――"先生"の誠意と行動が彼女達の不信感を溶かし、ゲヘナ、トリニティからの支援をも受け入れる下地を作った。私はその様に感じています。
故に私は――"先生"、貴方をもっと知りたい。貴方がシャーレで行う活動がどんな影響を与えるか知りたい。勿論、入部の暁には部員としてすべき仕事も受け入れましょう。――どうです?新聞記者としては、情報面でも大いに貢献できる自信はありますよ』
―――『アビドス』での後処理を終え、"連邦生徒会"への報告書の準備もする為に『シャーレ』のオフィスビルへ戻って作業を進めている最中の小休止中。アヤから切り出された提案と理由を思い返す。
新聞記者としての情報網もありがたいけど―――何より人手が一人増えた事が本当に嬉しい。
『シャーレ』に帰還してすぐに、『SRT』のサグメ"教官"からミヤコ達の『シャーレ』指揮下での活動継続が承認された事を伝えられたけど―――"RABBIT小隊"はあくまで『SRT』から派遣された部隊であり、『シャーレ』に正式に所属している訳では無い。故に、"連邦生徒会長"の命令一つで『シャーレ』を離れてしまう可能性もある。
ビルも業務も、
「まぁ、
「"はは、頼もしいね。――ミヤコ達も、改めてよろしく頼むよ"」
「はい。作戦行動以外でも、サポートが必要であれば何なりとご下命ください」
「『アビドス』の実績が知られれば、引く手数多だろうしな――改めてよろしく頼む、"先生"」
「くひひ...オペレーターと火力支援が必要なら任せてよ」
「至らない所は多々ありますが、できる限り頑張ります。あ、改めてよろしくお願いします、"先生"...!」
アヤの頼もしい言葉に微笑み、ミヤコ達とも改めて挨拶を交わす。―――ミヤコ達も『シャーレ』指揮下での活動継続が認められて良かった。彼女達の戦力もありがたいし、
「"よろしくね、皆。――さて、アヤは学校の寮から通うか、ミヤコ達みたいな住み込み、どっちに――"」
「"――うん...?"」
「――一瞬且つ微かでしたが、何か音が...」
「聞こえた方角は...『D.U.』方面ですね。...時間的にはそろそろ
「"あ、ちょっ――"」
―――アヤは一言断り、私が止める隙も無く即座に部室の窓に駆け寄って開け放ち、そこから空へ飛び立つ。突然の事で呆然とする私達の前に数本の黒い羽根が舞い散る。
「急にどうしたんだ...?『D.U.中央駅』で何か起きたのか...」
「――"先生"、私達も行ってみましょう。
「"分かった。"連邦生徒会"からヘリを借りて行こう!"」
ミヤコの提案に頷き、四人を連れて足早に部室を出る―――
~『アビドス高等学校』校舎~
side-ホシノ
―――マミゾウさんの車が走り去る様子を背景に、降りて来た二人が肩を揃えて歩いてくる。祝賀会の時は所々にあったガーゼや包帯はすっかり無くなっている。おじさん達は二人が近付いてくるのを待って―――
「...我慢できない!セリカちゃん、ネイトちゃんおかえり~!!」
「――二人共、おかえりなさ~い!!」
「ちょ、ユメsむぎゅぅ...」
「うおっ、ノノミ先pむぎゅ...」
―――我慢出来ないと声をあげてユメ先輩が走り出し、続くようにノノミちゃんも走り出して二人に駆け寄り、それぞれセリカちゃん、ネイトちゃんを胸に抱きしめ、驚きの声も抵抗も許さず二人の頭が
「...皆でおかえりって言う手筈だっただろうが...仕方ないな、行くぞ」
「あはは...そうですね」
「ん、二人が窒息する前に引き剝がすべき」
「いやぁ、ユメ先輩とノノミちゃんの柔らかさを知る同志が増えておじさん嬉しいよ」
呆れた様に頭を掻きながら歩き出したモコウ先輩に皆で続く。
「ユメ先輩、離して...!すっごく柔らかいけど息...息が...!」
「ノノミ先輩、離してくれ...!柔らけぇが苦しい...!」
「おらユメ、セリカを離してやれ。そのままだと窒息するぞ」
「ノノミちゃん、一度ネイトちゃんを離そっか~。羨ましいけど、このままだとノノミちゃんの柔らかさに包まれて逝っちゃうからさ~」
「...あッ?!ご、ごめんセリカちゃん!!」
「っぷは...!...し、死ぬかと思った...!」
「...っと、私としたことが...ごめんなさい、ネイトちゃん。今離しますね~」
「っぷは...!...あ“ぁ助かった...」
モコウ先輩と共に声を掛け、二人を解放させる。
「全く...二人共、先輩とノノミちゃんがごめんね?いきなりでビックリしたでしょ」
「...ふぅ...大丈夫よ、ホシノ先輩。確かにビックリしたけど...怒ってはいないから」
「...いや、謝る必要はねぇ。こうなる位心配かけたってことだからな。...それでもこんな歓迎を受けるとは思わなかったが」
「本来は皆揃っておかえりで迎える筈だったんだが...さて、セリカ、ネイト――」
モコウ先輩は軽く頭を掻き、呆れた表情を微笑みに切り替え―――
「――おかえり。無事で何よりだ」
「――おかえり二人共!無事で嬉しいよ!」
「――ふふ、おかえりなさい。これでやっと本当の日常に戻れますね☆」
「――二人共おかえり。無事に帰ってきてくれて嬉しい」
「――セリカちゃん、ネイトちゃん、おかえりなさい。二人が無事で本当に...良かった」
「「「「おかえり、セリカ!」」」」
「――セリカちゃん、ネイトちゃんおかえり。酷い災難に遭ったけど...無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」
―――皆のおかえりの言葉をおじさんが締め括る。二人は顔を見合わせ―――
「っ...!二人共~!!」
「うわ、ちょユメsむぐぅ...?!」
「おいまたkむぐぅ...?!」
「「「「姉貴~!!」」」」
―――満面の笑みでただいまを返した瞬間、感極まったらしいユメ先輩が今度は二人纏めて抱き締め、それを皮切りに元"カタカタヘルメット団"の娘達も一斉に二人の下に駆け寄る。
「...またユメは...」
「でも、二人も満更でもなさそう」
「あはは...」
「ふふ、微笑ましい光景ですね~」
「...うへへ、折角だから写真に残そっか~。アヤちゃん程上手く撮れないけど――」
ユメ先輩に抱かれ、皆にわちゃわちゃされる様子を写真に残そうとスマホを取り出し―――
「――うへ?アヤちゃんから"モモトーク"?」
A88@文々。新聞
ホシノさん!
緊急の情報提供です!
まだ記事はあげていませんが――
「――え...?」
―――アヤちゃんが送って来た
~『トリニティ総合学園』 "ティーパーティー"寮~
「――この速報...事実なら一体何が...!」
――~♪
「...!――もしもし。今電話を寄越したってことは、ナギサも記事を見たのね?!...今は情報収集に専念するべきよ。まだ負傷者の人数や詳細も――――」
~『ゲヘナ学園』自治区 レストラン~
『――クロノススクール"報道部"より速報です!"D.U."近郊の線路上で
「――は...?」
「――な...何だと...?!」
「――一体何が...?」
「兎に角、昼食所ではない!我々も情報収集を行うぞ!それからザンム先輩にも――――」
~『ヴァルキューレ警察学校』 "公安局"オフィス~
「"局長"、落ち着くっす!まだ状況は確定して――」
「落ち着けるものか!!護衛に出したコトヒメ達"捜査一班"と連絡が繋がらないんだぞ?!」
「心配するのは分かるっすけど、
――~♪
「っ?!――もしもし?!...あぁ、コトヒメ無事だったか...!......班員も負傷者多数か。分かった。――それで、何が起きた?お前が知り得る情報を――――」
~『D.U.』近郊 脱線現場上空~
「"...これは..."」
「うっひゃぁ...こりゃ酷いや。編成数は少ないけど、
「火災もあちこちで起きてるな。負傷者も...見たところ多そうだぞ」
「...あのヘリ..."Кролик小隊"も...!」
「"連邦生徒会"に報告に向かっていた筈なので、緊急展開したようですね。――"先生"、ご命令を」
「"よし!私達は――――"」
~何処かの廃駅舎~
side-??
「...一見すれば廃線に伴い放棄された廃駅舎だが――既に拠点として構築しているな。巧妙な偽装だ」
嘗ては我が『ハイランダー鉄道学園』で管理していたが、利用者数低迷に伴い廃線措置が取られ、それに伴い放棄された駅舎の廃墟を―――よく見れば
「――止まれ!...って、アンタは...!」
―――駅舎の地下階層の隅。ホーム駅員の事務所だった部屋の前に立つ
「――約束通り、物資の提供に来た。それから――貴様らの"組長"の様子も見に来た」
「...分かった。ボディチェックと荷物の改めを行う。お前は報告を」
「あぁ。..."若頭"、
見張りの片割れが私のボディチェックと荷物検査を始め、素直に従いつつインカムで通信をやり取りする様子を見守る。
「......!了解しました......許可が下りた。チェックが終わったら入っていい」
「...チェック完了。怪しいものはない」
「そうか。――では、失礼するぞ」
許可が下りたと同時にチェックも終わり、一言断ってから台車を押し、開けられたドアから中に入る。中には十数人の"鬼傑組"構成員と―――
「――昨日も物資を持って来訪したそうですね。態々私に会いに来たというのに断ってしまい、申し訳ございませんでした」
「あんな目に遭ってはダメージも大きいだろう。だが――まだ本調子ではなさそうだが、ある程度メンタルは回復したようで何よりだ」
―――傍に"鬼傑組"若頭『孫ビテン』を控えさせ、比較的状態の良い机で両肘を付いて私を迎える、まだ顔色が悪く見える"組長"『吉弔ヤチエ』と挨拶を交わす。
「――まずは、
「私は
『吉弔ヤチエ』の謝意に表情を変えずに答える。
―――一昨日起きた、"鬼傑組"組長『吉弔ヤチエ』と構成員を護送する列車の
「――しかし、救出を敢行するというのなら何かしら合図が欲しかったですね。...突然列車が大きく揺れたと思いきや横転して脱線。私自身も怪我を負い、辛うじて保てた意識の中で貴女の姿が見え――らしくもなく戸惑いましたよ」
「あぁ、そうだったな。...だが、一報入れなかったのは貴様もだろう。――『アビドス』の制圧を行うなら
全く...貴様が『アビドス』に攻撃を仕掛け、しかし『ゲヘナ』、『トリニティ』まで加わった『アビドス』の強烈な抵抗を受けて壊滅しただけでなく、貴様自身が逮捕されたと知ったのが"文々。新聞"でなければ、救出も間に合わなかっただろう」
『吉弔ヤチエ』の不満に対して私も不満を返す。―――"鬼傑組"が『アビドス』を狙って動き出す時、
―――閑話休題。
「――私もあまり時間がないのでな。貴様に会おうとした目的だが...まだ『アビドス』制圧は
「...意図が読めませんね。『ゲヘナ』、『トリニティ』の支援を受けた『アビドス』のおかげで戦車部隊も、組織そのものも壊滅してこのザマです。『アビドス』に眠る
「――待て。
―――『吉弔ヤチエ』から出た言葉の中に
「...貴女には話していませんでしたか?そもそも『カイザー』が態々『アビドス』に事業を進出させたのは、砂漠に眠る
「――
「...何を言っているのです?『アビドス』には
―――思わず額に手を添えて天井を仰ぎ見て漏らした言葉に『吉弔ヤチエ』は困惑した声で尋ねて来る。...元々
「..."
人手はそれなりに要るだろうが――
「...!」
『アビドス』に眠る"
「...なるほど...恐るべき政治家にして稀代の発明家でもあった"
「『トリニティ』については私もまるで繋がりが推測できないが...『ゲヘナ』はこれからも『アビドス』と関わりを保つだろう。『アビドス』制圧の難易度は高いぞ」
「望むところです。"
「...あっという間に"搦手のヤチエ"が復活したな。兎に角、『アビドス』を狙うつもりがあるなら結構。私も引き続き貴様に協力しよう」
椅子から立ち上がって赤い瞳に野心的な輝きを宿した『吉弔ヤチエ』を見て頷き、協力関係の継続を宣言する。
「情報、ありがとうございます。引き続きの協力関係にも感謝を。...さぁビテン、これから忙しくなりますよ。今は雌伏の時ですが、身を潜めていてもできることはあります。壊滅したネットワークの再構築、人手の拡充、そして『アビドス』の情報収集...やることは沢山あります」
「"組長"が元気になったのなら何だってやりますよ!特効薬みたいな情報、ありがとう!」
―――元気になった『吉弔ヤチエ』の雰囲気にあてられてか、"若頭"『孫ビテン』や構成員達も俄に元気付く。
「やる気が復活したのなら何よりだ。――改めてよろしく頼むぞ、"鬼傑組"、『吉弔ヤチエ』」
「こちらこそ、今後も
『吉弔ヤチエ』と改めて挨拶と共に握手を交わす。
―――
今頃『アビドス』は日常に戻っているだろうが、せいぜい安心で気を抜いているといい―――
―――"鬼傑組"も『カイザー』も『ネフティス』も。そして『アビドス』も。
ということで、アビドス編一章、二章終了!勿論三章もやるよ!まだまだ先になると思うけど!
さて次回からは...ブルアカなら逃せないアレをやっていきます。
あ、ついでに活動報告でアビドス一章二章編投了について書いてます。
リンク:https://syosetu.org/?mode=kappo_submit_edit&kid=320300
~生徒紹介~
名前:
出身校:百鬼夜行連合学院
学年:三年生
装備:HG(