Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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東方キャラ生徒を掘り下げるメモロビ的なヤツ。第一号はこの生徒。


Folder03.~神秘と幻想の記録①~
File35.-ML-FM~その炎翼は熱く優しい~


~『シャーレ』オフィスビル 部室~

side-"先生"

 

「...ユメ、その項目見直してみろ」

「え...?...あ...噓...?!ひぃん、またやり直しだよぉ...!

 

 私の席から見て左側の机二つに据えたパソコンの前に座り、書類作業を行っているモコウとユメ。モコウがユメのパソコンの画面をチラリと見て指摘すると、見直したユメはミスを確認して声をあげながら机に突っ伏す。

 

「またですか...これで三回目ですよ」

 

 私の席から見て右側の机で同じ様に作業を――モコウ、ユメ、そして私よりも遥かに効率的に――進めている今日の"当番"の一人、『早瀬ユウカ』*1が呆れた表情を浮かべる。

 

―――『アビドス』での活動を終えてから始めた"当番募集"。『シャーレ』"広報員"となったアヤの宣伝のおかげで多くの生徒が興味を持ち、向こう二週間の"当番"枠はビッシリ埋まっていて、今回はモコウ、ユメ、ユウカの三人が来てくれている。

 『アビドス』での活動実績の効果は大きく、『シャーレ』始業最初に要請メール専用のボックスを見れば()()()()()要請が挙げられている程だ。

 やはり大半は態々『シャーレ』が請け負う必要が無いか、『シャーレ』の権限を利用して押し通したいとんでもない内容のものばかりだけど――基本的にアロナ、ミヤコ達"RABBIT小隊"とアヤが分別と整理を行ってくれるおかげで私の決裁や決定が楽になっている。

 そんなミヤコ達は今、『D.U.』に近い小さな学校自治区で起きた不良達の暴動鎮圧の支援に向かっていて(アヤは戦闘よりも、『シャーレ』の活動を宣伝する為の写真撮影やインタビュー目的で同行している)、恐らく現地で一泊する事になるだろう。その為、"連邦生徒会"に上げる書類の作成や日々舞い込む要請の確認と選別、受託可否の判断と言った机上業務を三人に手伝わせている。

 

「しかも、さっきミスした所をまたお前は...」

「うーん...ちゃんと自分で確認してる筈なのに...何でぇ...?

「自分で見て気付かないで、他人(私やユウカ)が見て指摘して気付くんじゃあな。一度なら兎も角二回も三回も...パソコン上だからいいが、紙だったら尚更大変だっただろうな」

「ひぃん...」

 

 モコウは呆れ返った表情を浮かべ、反論も出来ないユメは泣きそうな表情ですっかり聞き慣れた悲鳴を漏らす。

 

「"...見てて感じたんだけど、ユメは自分で思っている以上に()()()()()だと思うよ。ある程度打ち込んだら確認してるけど、そこで何度もミスが出るってことはちゃんと確認できていないことの証左だ。効率は落ちるけど、一つ一つ項目を打ち込んだら自分で見て、モコウか私にも見てもらって...丁寧に進めていこう。――『アビドス』の苦境だとパソコンを使う機会はあまりなかっただろうけど、時間にはまだ余裕がある。最悪私で処理するから、丁寧に進めて慣れていこう"」

「それが良いですね。最初は誰しも手早く効率的に...とはできないですから。まずは作業に慣れる所から始めましょう」

「はーい...うぅ、こんなザマじゃまたホシノちゃんに睨まれるよぉ...

 

 私とユウカの指摘とアドバイスにユメは頷き、弱音を吐きながらも作業に戻る。

 

「――よし、"先生"。私が受け持った分は終わったぞ。確認してくれ」

「"分かった。ありがとう、モコウ"」

 

 数分してモコウが作業を終え、ファイルが転送されたのを確認してお礼を言ってから確認を始める。

 

「...お、流石にもう同じミスはしないか。その項目は――――」

「あ、だから何度も...ありがとう、モコウ!」

「はいはい。全く、これくらいは間違えないで欲しいが...」

 

 確認しながらモコウとユメをチラリと見れば、椅子をユメのすぐ隣に移したモコウが画面を指差したり、時々キーボードに手を伸ばして打ちながらアドバイスを行う様子が見える。素直にアドバイスを受け入れてお礼を言う姿は、そういうやり取りを何度も交わしていて―――それだけ深い二人の仲の良さも感じられる。

 

「"...二人は本当に仲がいいんだね"」

「...どうした急に。そりゃあ実家が隣同士の幼馴染だからな」

「えへへ...いつも私を助けてくれるし、時々無茶するモコウを助けてるからね!」

 

 私の呟きを耳に入れた二人が作業の手を止め、モコウは当然だと言いたげに鼻を鳴らし、ユメは心底嬉しそうな笑みを浮かべて答える。

 

「"仲がいいなら何よりだよ。一人だけでは限界があっても、二人で、三人でなら色々なことができるからね"」

「そうだね!仲間や大切な人が一緒なら乗り越えられないものはないよ!」

「あぁ、そうだな。...特にコイツは一人にしたらどうなるか分かったものじゃないからな」

「う‟っ...」

 

 私の言葉に頷くユメに対してモコウが補足するとまた言葉を詰まらせる。でも、ユメは嫌そうな表情を浮かべない辺り、一応自分の短所だと自覚している様だ。

 

「"だったら尚更、しっかり幼馴染を見てあげるんだよ。――さて、仕事を進めようか"」

「あぁ、残り半分は切ってる。このペースで終わらせるぞ」

「はーい!」

 

 ユメ(幼馴染)の事を見守るようにと言い置き、コーヒーの残りを飲み干してパソコンの画面に目を向けて仕事に戻る―――

 

 


~『D.U.外郭地区』裏路地~

 

「――あの倉庫か」

「"そうだね。...急な仕事だけど受け入れてくれてありがとう、三人共"」

「気にするな。RABBIT小隊(ミヤコ達)もアヤも業務で出払っているなら仕方ない」

「こういう()()はモコウの得意分野だしね!」

「いつかのビル奪還作戦の時のように違法FMJ弾を浴びたくはありませんが...『シャーレ』の業務ですからね。"当番"である以上、しっかり熟しますよ」

 

 『D.U.外郭地区』の静かな裏路地にある倉庫の前で足を止め、三人にお礼を言う。

 

―――『もしもし、シャーレですか?!私、D.U.で細やかながら銃弾を製造販売している者でして――――』

 

―――机上業務を一通り終わらせ、小休止を取ろうと思い立った矢先に舞い込んだ緊急の依頼。『D.U.』で経営している小さな銃弾メーカーの倉庫を、何処かからか侵入した不良グループが占拠してしまい、立て篭もった上に納品前の銃弾を強奪して迎撃に使っているらしい。最初は『ヴァルキューレ』に通報して鎮圧部隊が送り込まれたものの、撃退されてしまったという。―――そこで、私達『シャーレ』に白羽の矢が立った。

 

『――生体反応確認!数は...確認できる限りでは二十人です!』

「――依頼主からの情報通りですね。特に何処かのグループに所属している訳ではない、流れの不良グループとのことですが...それにしては多いですね」

「"中を見てみようか。――アロナ、倉庫内のカメラをハッキングして覗けるかい?依頼主からは許可を得てるから大丈夫だよ"」

『スーパーアロナにお任せください!――ハッキング完了!倉庫内の各カメラの映像を投影します!』

 

 アロナにカメラをハッキングする様に指示を出し、数秒してハッキングを終えたアロナは"シッテムの箱"から四つの仮想画面を―――監視カメラの映像を浮き上がらせる。

 

「これは...銃弾を詰めた箱を遮蔽物や壁として利用していますね。勿論棚に並べられているものも全て銃弾でしょう」

「銃弾が人質ってこと?あ、もしかして...『ヴァルキューレ』の娘達はこれで攻めあぐねて撃退されたのかな?」

「下手をしたら銃弾が誘爆する可能性があるから攻め込めなかったって訳か...ん?このカメラ、ズームできるか?」

 

 カメラ映像を眺めていると、モコウが映像の一つを―――倉庫を占拠した不良達が屯する倉庫中央の空間を見下ろすカメラ映像のズームを指示する。アロナは指示通りズームして―――

 

 

『――これが限界です』

「少し遠いが...やっぱりな。――ユメ、このSR(スナ)持ちのスケバンの痣に見覚えがないか?」

「え?...うーん...確かに何処かで...あ!もしかして私達が一年生の頃にモコウがボコボコにした不良の娘?!」

 

 映像に映るスケバンの一人を指差すモコウの問にユメは思い出した様に声をあげる。目を凝らせば、確かにマスクからチラリと青痣が見えている。

 

「――このスケバンと面識が?」

「あぁ。――一年生の時、ユメと自治区の巡回をしてたら絡まれてな。あの時は三人位引き連れてたが、私が睨んでやったらソイツらはすぐに逃げた。で、残されたコイツが破れかぶれに私を襲ってきて――ボコボコにしてやった。頬の痣はトドメの一撃の時にできたものだ」

「あの時からモコウは凄かったんだよ!モコウが巡回で歩けば不良の娘達は鳴りを潜めるから、ホシノちゃんが入学してくるまでは巡回を一手に引き受けてたんだ」

 

 ユウカの問いにモコウはそう答え、ユメは自慢げに補足する。―――二人が一年生の時だから、三年生位前になるだろうか。その時に撃退したという不良が今、目の前の倉庫を占拠している。

 

「あの時みたいに、だが今度は随分な人数の取り巻きを集めたみたいだな。銃弾を詰めた箱を利用して攻めを躊躇わせるなんて小賢しいこともするようになったか..."先生"、二人共。作戦を思い付いた。聞いてくれ――――」

 

 

 

 

―――バララララ...!

 

ひぃん!向こうの[M134(ミニガン)]がまた撃ち始めたよぉ!』

 

―――"シッテムの箱"が、盾を構えるユメに向けて[M134(ミニガン)]を構えるスケバン二人の弾幕が集中する様子を映し出す。

 

「"――ユメ、大丈夫かい?!"」

『すっごく撃たれてるけど、まだ耐えられるよ!ユウカちゃんは大丈夫?!』

『――今、シールドリチャージが終わりました!マガジンもリロード済です!』

「"よし!ユウカはシールド発動の上制圧射撃しつつ前進!同時にユメも一線前進して!"」

『『了解!』』

 

 ユウカが<Q.E.D(シールド)>を発動して遮蔽として利用していたコンテナから飛び出して[MPX-K(サブマシンガン)]二丁を構えて[M134(ミニガン)]を撃つスケバン二人に向けて制圧射撃を行いながら走り出す。

 [MPX-K(サブマシンガン)]の弾幕は数発スケバンを掠め、まさか銃撃されるとは思ってなかったらしいスケバン二人が慌てて射撃を止めて段ボール箱の遮蔽に身を隠す。

 同時に、ユメがシールドを構えながら五メートル程先のコンテナの陰へ走り出し、滑り込む様に入り込んで防御態勢を取る。その傍にユウカも駆け込み、二人の一線前進が完了する。

 

『――前進完了!"先生"、モコウの動きは?!』

「"――裏手側からの侵入に成功、もうすぐで敵陣地の背後に展開できそうだ...!"」

 

 仮想画面に映る、倉庫の裏手(反対)側から隠密で侵入したモコウが不良グループが屯する陣地の背後を目指してゆっくり警戒しながら進む様子を確認する。―――不良グループはユメとユウカの方にすっかり注意を向けていて、背後から迫ってくるモコウには気付いていない。

 

『なら良かった...!あ、でも...!()()()()()()()()()()()()()()私達も同時に突入するから、"先生"もちゃんと見ててね!』

「"勿論――"」

 

 

 

 

『――ん?って、テメェまさか...?!』

『――よぉ。大体三年振りだな。目先の脅威に集中しすぎて後ろがすっかり疎かだったぞ。――"連邦捜査部"『シャーレ』だ!鎮圧依頼に従い、お前らを鎮圧する!

 

ドゴッ!!

「「グワーッ?!」」

「「な、なんだコイツ?!」」

「おい誰も後方見てなかったのかよ?!」

 

―――しかし、陣地の背後に到着したモコウが声を張り上げてスケバン達の真っ只中に突っ込んで奇襲を掛け、カメラが拾う音声でも、倉庫から聞こえ始めた喧噪でもスケバン達が一瞬で混乱状態に陥った様子が見て取れる。作戦通りだけどタイミングが悪い...!

 

「"――言った傍からモコウが突入した!二人もこのまま突入!"」

『モコウはまた...!()()()()()()()からって本当に毎回...!ユウカちゃん、行くよ!』

「「グエッ?!」」

『あ、はい!...たった一人で集団に突っ込むなんて...

 

 即座に二人にも指示を出し、ユメが[M9(ハンドガン)]を構えて[M134(ミニガン)]を構えている、後方で起きた混乱に目を向けるスケバン二人の頭を撃って気絶させ、ユウカと共に倉庫内に突入する――――

 

 

 

 

「...ふぅ...こんなところかな?ユウカちゃんの方は?」

「こちらも終わりました。...まさかたった一人で半数以上を、それも――()()使()()()()()()()()制圧してしまうなんて...」

 

「...なんで...なんでテメェが...?!」

「今日は『シャーレ』の当番でな。緊急でお前らの鎮圧が依頼されたからそれに従っただけだ」

「クソ...クソッ...!ここまで仲間を集めたってのに...!」

 

―――倉庫内の制圧が確認され、倉庫に入る。ユメとユウカが気絶したスケバン達の手首をロープで縛って拘束しているその先で、モコウが目の前で倒れ伏す不良グループのリーダー――過去に一度撃退したという――スケバンの目の前でしゃがんでいる。スケバンはモコウを見上げて信じられないといった表情を浮かべて声を震わせている。

 

「なんだってこのD.U.(連邦生徒会のお膝元)でこんなことをやったのか知らんが...不法占拠は犯罪だからな。『ヴァルキューレ』でたっぷり絞られてこい」

「グエッ...」

「...よし、()()()()()()()()()()な」

 

 モコウは銃床でスケバンのリーダーを殴って気絶させて立ち上がり、銃弾で所々裂けた制服のシャツやカーゴパンツの下の傷を確認しながら呟く。

 

「――あ、こらモコウ!すぐ治るからってまた傷を...!応急処置するからじっとしてて!」

「その内治るんだから別n「言い訳無用!」っでぇ?!いきなり消毒液を塗るな!」

 

 スケバン達の拘束を終えたユメがモコウに気付き、シールドの小物入れから救急キットを取り出しながら歩み寄り、応急処置を拒否するのも構わず消毒液を染み込ませたガーゼを頬の傷に無理矢理あてがう。

 

―――"シッテムの箱"が映す映像で見たモコウの動きは凄まじかった。近距離で銃撃を浴びて()()()()()()()()()()()()()()()()()投げ飛ばしたり、捕まえたスケバンを武器にして振り回して吹き飛ばしたり―――彼女が持つ()()()()()()があるからこそできる動きで、()()()()()()()()()をモコウ一人が制圧した。

 一方スケバン達は数を活かして全方向から囲んで撃とうとしていたけど、そこにユメとユウカが突入して挟撃され、混乱状態のまま全員制圧されたのが今の状況だ。依頼は達成出来たけど―――

 

「"――モコウ、君の活躍であっという間に制圧できたけど...作戦ではユメとユウカと示し合わせて同時攻撃だったよね?"」

「...あのスケバン共の隙だらけの背中を見ていたらつい、な。ユメとユウカも随分集中砲火を食らってたし、早く潰そうと思ったんだ」

 

―――モコウの独断専行を咎めると、申し訳なさそうに頭を掻きながら言い訳を返す。確かに、ユメとユウカは[M134(ミニガン)]の集中砲火に晒され続けていたけど、私の指示で防御を優先していたからダメージは殆ど受けていなかった。それに―――

 

「"――"二人がタンク役として攻撃を受け止め、私の指揮で被弾を最小限に抑える"って決めていたし、私もそれを果たしたつもりだよ"」

「"先生"の言う通りだよ!確かにタンク役は大変だったけど、それはモコウが作戦通り背後から奇襲を掛ける為に忍び込んで、同時に動くって信じていたからできたんだよ?...私達の負担を考えてくれたのは嬉しいけど――逆にモコウが私達の為にって傷を重ねると、こっちが悲しくなっちゃうの。――モコウ、私達の実力は信じられない?」

 

―――私の言葉に続いて、応急処置を終えたユメが眉を八の字に曲げて窘め、真剣な眼差しで尋ねる。

 

 状況の急変で作戦とは違う行動を取らざるを得なくなるのは仕方ないけど、今回は作戦通りに進められる状況下だった。けど―――モコウがユメとユウカの負担に配慮した独断専行で同時攻撃による挟撃が破綻してしまい、()()()()()()()()()()()けどモコウが多く被弾する結果になってしまった。

 

―――モコウの気持ちも理解出来るけど、今回は悪手だ。予め決まっていた行動と違う行動を勝手に取られてしまうと、皆の為だと理由付けされても素直に信じられないものだ。"私達の力が信用されていない"――そう捉えられてしまう可能性がある。だから、ユメはモコウに対してその信用を確かめようとしている。

 

「――分かった、分かったよ!...そんな目で見るな。――"先生"、ユウカ、ユメ。すまなかった」

 

 モコウは降参だと言う様に両手を挙げ、私達に頭を下げる。

 

「...目の当たりにしてもまるで理解できませんが...()()()()()()()からと被弾上等で単身突入するのは見ていて不安になりました。

 傷付けば痛いでしょうし、きっとその治癒能力にも限界はあるでしょう?――目標達成し、且つ損害を最小限に抑える最善を導出する為に作戦は組むんですから」

「何回言ったか分からないけど...無茶は程々にね!私や"先生"も居るんだから、頼れる時に頼るべきだよ!」

「"二人の言う通りだよ。作戦外の行動を取られると、その対応で負担も増えてしまうし、どんな影響が現れるか分からないからね。...常々君がユメや後輩達に言って聞かせていることを、君自身が遂行できていないんじゃいつか信用を失うよ"」

「...あぁ、よーく肝に銘じておくよ」

 

 私達の言葉を受け、モコウはやれやれと頭を掻いて苦笑しながら頷く。

 

―――ウゥゥゥ...!

 

「――あ、パトカーのサイレン...『ヴァルキューレ』の娘達かな?」

「恐らく依頼主が鎮圧を確認したので、逮捕の為に呼んだのでしょう」

「"よし、スケバン(この娘)達を引き渡したら、依頼主に完了を報告して依頼は終了だ。倉庫の外に運んでおこう"」

「あぁ、了解だ」

「はーい!」

「私は倉庫の被害調査を簡単に行っておきますね。後でメーカーや『ヴァルキューレ』でも行うでしょうが、速報値位は知りたいでしょうから」

 

 徐々に近くなるパトカーのサイレンを聞きながら三人に指示を出し、各々動き出す――――

 

 


~『シャーレ』オフィスビル 部室~

 

「ん...zzz...」

「...ぐっすりだな。パソコン作業の方が余程疲れたか...」

「"パソコンもパソコンで目を長く使うし、姿勢があまり変わらないから身体も痛む。初めてなら尚更だよ"」

 

 応接用ソファに寝かされ、ぐっすりと眠るユメに毛布を掛けたモコウの呟きに苦笑しながら答える。

 

―――依頼主への報告とスケバン達の『ヴァルキューレ』への引き渡しを終え、遅くなった昼食を終えた午後は依頼の完了報告書の作戦と提出、そして残りの机上業務を進めていた。ユウカが"セミナー"の仕事があるからと昼食後に帰ってしまったおかげで少し効率は落ちたけど、それでも一時間半程で終わらせる事が出来た。

 ユメは午前中の様にミスを頻発しない様にとずっと画面に目を凝らしていたし、緊張のせいか体勢も強張っていた。その疲労に加え、作業が終わった達成感と安心感も眠気を誘ったのだろう。私とモコウとで片付けと整理を行っている時にユメが妙に静かだと思ったら、彼女は机に突っ伏して眠ってしまっていた。

 

「"――モコウは大丈夫かい?疲れたなら君もユメみたいに休んでもいいよ"」

「いや、大丈夫だ。仕事も終わりなら、ソファーに座ってのんびり休むだけで充分だ」

「"そっか...なら、コーヒーでも飲むかい?インスタントしかないけど...三時過ぎだし、おやつタイムにしようか"」

「もうそんな時間か...あぁ、いただこう。ブラックでいいぞ」

「"分かった、ソファでゆっくりしてて"」

 

 モコウは私の提案に頷き、席を立って部室に隣接している給湯室に向かう。お湯を沸かしている間にクッキーを皿に盛り、三、四分して沸いたお湯でマグカップ二つにコーヒーを淹れる。それらをお盆に乗せて部室に戻る。

 

「"――お待たせ。エンジェル24(下のコンビニ)で買い出ししたものだけど"」

「気にするな。アビドス(ウチ)は手に入れられればそれでよかった時期が長かったしな。余程酷くなければ気にしないさ」

 

 テーブルにお盆と、『シャーレ』制式のジャケットの内ポケットから取り出した"シッテムの箱"を置き、残る二つの応接用ソファの片方に座るモコウにマグカップを渡してから私ももう片方のソファに座る。

 

「"――改めてお疲れ様、モコウ。午前中、緊張で受けた依頼の遂行にもユメ、ユウカ共々参加してくれて助かったよ"」

「それが"当番"だろ?すべきことをしたまでだ」

 

 コーヒーを一口啜り、改めてお礼を言うとモコウは気にするなとひらひらと手を振りながら謙遜して答える。

 

「"謙遜することはないよ。『シャーレ』にはミヤコ達とアヤが居るけど、それでも手が足りないからね。"当番"の人手は本当にありがたいんだ"」

「そうか...ユメ共々"先生"の力になれたなら幸いだ」

 

 モコウはそう言ってフッと微笑み、コーヒーを啜る。

 

「"――モコウは、アビドスを卒業したらどうするんだい?"」

「卒業したら、か...具体的にどうするかは決めかねてるが――()()()()()()()()ことだけは決めてる。――今のコイツを一人にしたらどうなるか分かったものじゃないからな」

 

―――話題を卒業後の進路に切り替えて尋ねればそんな答えが返って来て、モコウは向かい側のソファで眠るユメに目を向ける。

 

「"――本当に、ユメのことを大事に想っているんだね"」

「家が隣同士だったしな。...ユメの両親は小二の頃に揃って病気で亡くなってな。元々家族ぐるみで付き合いがあったから藤原家(ウチ)で引き取って、それ以来同じ屋根の下で過ごしてきた。...だが、『アビドス高校』入学式が目前の頃に大きな砂嵐が起きて、避難中に親父とお袋とはぐれてな。砂嵐が治まった後にユメと一緒に探したら見つかった――()()()()()()()()()()()()()()姿()でな」

「"――ごめん。まさか二人がそんな過去を持っていたなんて..."」

 

 モコウはそんな過去を明かし、懐かしむ表情に陰が差す。まさかそんな過去を抱えていたとは思わず、モコウに謝る。

 

「"先生"が謝る必要はない。見つけちまった時、大泣きしたユメと違って涙は流さなかったが、それでも胸に広がった悲しみは高校入学後も続いた。

――だが、いつまでも親父とお袋の死を引き摺られる程『アビドス』の状況は楽じゃなかったからな。親父とお袋の分も生きて、『アビドス』復興を目指すのが手向けだろうと、ユメ共々前を向くことを決めた」

「"――モコウ、ユメも強いね。肉親の死を受け止めて前を向けるその精神の強さはきっとご両親の教育の賜物だね"」

 

 揺らがない決意を宿した深紅の瞳を光らせるモコウを見て微笑む。

 

「...そうかもな。親父もお袋も、いつも"人生命があれば失敗も巻き返せる"って言ってたしな」

「"...午前中のこともそうだけど、()()()()()()()()()()をよくやるよね、モコウは"」

「...それは反省してるよ。()()()()()()に慣れてるとついつい"この程度ならすぐ治る"って判断してな...」

 

 モコウの言葉に対して呆れた表情を浮かべて返すと、モコウは敵わないと苦笑する。

 

「"いつも周囲に言って聞かせていることを、その当人がやっていないのは信用を失いかねないからね。ユメや、『アビドス』の皆を想うなら、命を大事にできることをやっていこう"」

「あぁ、そうだな――」

 

 モコウは私の言葉に素直に頷き、コーヒーを啜り―――

 

 

 

 

 

 

「――そういう"先生"も、無茶はするなよ。()の人間は私達キヴォトス人より遥かに脆いらしいじゃないか。生徒を想う誠意と責任を背負う覚悟は尊敬するが...()()()()()()()()()()()()()。万が一"先生"が()()()()()になったら――私もユメも皆も...()()()()()()()()()()()()()だろうからな」

「"――肝に銘じておくよ"」

 

―――無茶をするなと言って、深紅の瞳で私を見つめるモコウに頷いた。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
不動のメモロビ童貞被卒業生徒




ということで、モコウを掘り下げるメモロビ的なヤツでした。
"先生"とのやり取りと共に、原作生徒との掛け合いがメインになると思います。...ユメ先輩原作じゃ故人?当作品では生きてるから!

さて、しばらくは羽休めも兼ねて東方キャラ生徒の掘り下げ的なメモロビや短編を執筆する予定です。
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