Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『D.U.外郭』 "便利屋68"事務所~
side-ハルカ
「...うん、変わらず元気そうだね」
「そうですね...さぁ、お水ですよ...」
ビル一階の空き部屋。少し日当たりが悪い窓の周りに並べて置いているプランター代わりのバケツや空き箱に詰めた土から生えている雑草達―――[ハコベ*1]や[メヒシバ*2]、[タンポポ*3]、その他諸々の状態を見るシオンさんの言葉に頷き、如雨露で水をあげていく。
「...この子達を置けるスペースがあってよかったね」
「えへへ...そうですね。...この子達は逞しいですし、最悪外の邪魔にならない所に移そうとも考えていましたが...」
水やりを進めながらシオンさんの言葉に頷く。―――『アビドス』での活動で得られた稼ぎで、移転前の事務所よりも広く部屋も多いビルに移る事が出来た。おかげで、移転前は空き家でひっそりと育てていた
「...よし、皆に水やりができました」
「じゃあ、上に戻ろっか。朝ご飯もできてる筈」
「はい、行きましょう」
水やりを終え、シオンさんの言葉に頷いて部屋を出る―――
「――戻ってきたね。朝ご飯できてるよ」
「さぁ、二人も席について。移転後初めての朝食だから、皆で食べないとね!」
「...今までよりも品が増えてる...!」
「くふふ、
―――事務所の居住区画のリビングに戻ると、アル様達がテーブルを囲んで私達を待っていた。そのテーブルには朝食が―――ご飯とお味噌汁、鯖の塩焼きに加えて、移転前までは殆ど並ばなかった小鉢の添え物が二つ並んでいてシオンさんは喜色を浮かべる。そんなシオンさんを微笑ましく思いながら空いている席―――ジョオン"会計士"の隣の二つ空いている席の片方に座る。
「ほら、涎垂らしてないで姉さんも座って」
「...あ、うん...」
ジョオン"会計士"に声を掛けられ、口から涎が垂れつつあったシオンさんは慌てて袖で涎を拭って私の隣、ジョオン"会計士"の隣―――いつも通りの席に着く。
「それじゃあ――いただきます!」
「「「「「いただきます」」」」」
―――そして手を合わせて皆で挨拶する。
「mgmg...美味しい...!」
「ほら姉さん、口にご飯粒付いてるわよ」
「ん...」
瞳を輝かせて一心に食べ進めるシオンさんの口にご飯粒がくっ付いている事を見咎めたジョオン"会計士"がティッシュで拭き取る。
「美味しいって言ってくれるのは嬉しいけど...そんなに早いペースで食べてたら喉に詰まらせるよ。料理は逃げないんだから、落ち着いて味わおう?」
「ご、ごめん...美味しかったから箸が...」
その様子を見ていたカヨコ"課長"が呆れた表情を浮かべて窘め、シオンさんは恥ずかしそうに頬を薄っすら染める。
「旗揚げからずっと変わらないわねぇ、シオン。私が見出す前の苦境を考えれば仕方ない所はあるんだけど...」
「...そう言えば、二人をどういう経緯で雇ったか知らないんだよね。"社長"が『居場所がなくて困ってたから二人も雇うわ!』って言ってたことは覚えてるんだけど...」
「あ、それ私も知らな~い。雇って紹介された時の二人は
アル様の呟きを聞いたカヨコ"課長"とムツキ"室長"がジョオン"会計士"とシオンさんを雇った経緯を知らないと揃って口にする。...確かに、私もお二人を雇った経緯を詳しく知らない。私達は数日の差はあるけど、大体同じタイミングでアル様に誘われて"便利屋68"に加わっている。ムツキ"室長"はアル様と幼馴染だから心配で(その反面面白そうな、悪戯っぽい表情も浮かべていた気がする)ついて来たと言っていたし、カヨコ"課長"の経緯についても私は詳しく知らないけど―――
「あら、ちゃんと話してなかったかしら...シオンとジョオンから話したこともなかった?」
「えぇ、別に聞かれなかったし」
「...私も、話したことはない、筈...」
アル様の問いにお二人は揃って否定を返す。お二人の方から経緯を話した事も無いらしい。ジョオン"会計士"はいつも通りの涼しい表情を浮かべているけど、ムツキ"室長"が言っていた事に加えてあの時は警戒心が強かったし、シオンさんは今よりも不安げな雰囲気を纏っていた様に思う。
「...じゃあ、話してもいいかしら?とは言え、食事を彩るような楽しい話じゃないし、二人が嫌なら話さないけど」
「私は構わないわ。不利益は特にないし、皆ならイジることはないでしょう」
「...私も、大丈夫」
アル様がお二人に尋ねると揃って話しても大丈夫だと答える。
「分かったわ。...あれは、私が"便利屋68"起業を志して社員集めをしてきた時だったわ――――」
~『ゲヘナ学園』自治区~
side-アル
「今のところは順調ね...でも、もう二人くらいは人が欲しいわねぇ...」
相も変わらず銃声や爆発音が耐えない自治区内でも珍しく静かで平和な隅っこの地区。その通りを一人歩きながら呟く。
静かではあるけど、その理由が数年前にこの地区で起きた大きな暴動の結果廃屋や廃墟が多く生まれ、しかしその後
住人やお店が無い訳ではないけど少ないし、それ故に得るものも大して無いから不良も寄り付かないおかげで静かで平和になっている。
―――
―――常識、規則に縛られない生き方。即ち
偶に悪戯を仕掛けられるけど、何だかんだ私の意向に従ってくれる幼馴染のムツキ、無愛想だけど本当は優しい先p...三年生のカヨコ、そして"
既に各人の役職は決めてあるけど、それは起業が成った時に明かすつもりだ。私を含め四人...これでも会社は回せると思うけど―――呟いた通り、後二人位は欲しい。
「お金の扱いが得意な娘が欲しいのよねぇ...三人の中だとカヨコが得意だけど専門的じゃないし――」
「――雨?!さっきまで晴れてたのに...!」
頬に当たる雨粒の感覚で空を見上げた瞬間、いつの間にか晴れ空を覆っていた曇天から一気に雨が降り始め、慌てて近くの空き家の軒下に駆け込む。
「なんてついてない...通り雨だったらいいけど――」
「――アンタも災難ね。十中八九、そんな願望は通らないわよ」
「――っ?!」
―――突然背後、空き家の壊れかけで開いた扉の方からどこかぶっきらぼうな声が聞こえて来て咄嗟に振り向くと―――
「...見たところ、私達と同じ学年みたいね。それに、私達と違ってマトモに学校生活も送れてるのかしら?羨ましいことね」
「......」
―――少し汚れている様に見えるツインの縦ロールの金髪に金色のヘイローを浮かべ、同じ様に汚れたワンピースを纏う少女が私を見て不快そうな表情を浮かべてそんな言葉を零す。そんな彼女の隣では、汚れている上に手入れも殆どされていないのか青いボサボサの長髪の上に青いヘイローを浮かべ、所々擦り切れた灰色のパーカーを羽織り、同じ様に擦り切れた青いミニスカートを履いた少女が蹲っている。表情は見えないけど―――
「...ご、ごめんなさい!まさか人が居たなんて...!」
「別に気にしてないわよ。私達も
まさか人が居るとは思わず謝るけど、ツイン縦ロールの娘は声色を変えずに気にするなと返す。二人もこの空き家の持ち主という訳では無いらしい。...なら、汚れているのは何故だろうか。まるで―――
「な、ならいいのだけど...うーん...まだ止みそうにないし、折角だしお話でも――」
スカウトできる雰囲気じゃないけど、雨宿りの暇潰しに二人とお話でもしようと切り出して屋内に足を―――
「――来ないで。
「......!」
「――え...?」
―――一歩踏み出した瞬間、青いボサボサの長髪の娘の肩がビクッと震え、ツイン縦ロールの娘が語気を強めて私の接近を拒絶する。私を見つめ―――否、睨む瞳には警戒心がありありと宿っている。
「...き、急にどうしたのよ...?私はただ貴女達と――」
「――っ?!」
―――突如背後、空き家の外で轟音が響き、何事かと軒下に出ると、目の前で一気に雨足が強くなって飛び散る雨粒が顔に触れる感触を感じ取る。曇天もより黒くなっている様にも見える。
「...今のは雷ね。でもどうして
「...私の、せいだ...私が...
「姉さんのせいじゃない!もっと前向きに考えて!雷が自分のすぐ傍に落ちるなんて――――」
―――背後でツイン縦ロールの娘とは違う、まるで自信が無さそうな、弱々しい声が聞こえて振り向けば、俯いたまま肩を震わせるボサボサの長髪の娘をツイン縦ロールの娘が肩を抱いて励ますような言葉を掛けていた。どうやらボサボサの長髪の娘はツイン縦ロールの娘の
「ね、ねぇ...大丈夫――」
「...ひっ...!」
「来ないでッ!姉さんがますます...!」
―――大丈夫かと声を掛けてまた一歩屋内に踏み出した瞬間、ボサボサの長髪の娘が小さく怯えた声を零し、ツイン縦ロールの娘が[
「わ、分かったわ!これ以上近付かないから...!」
「...少しでも動いたら撃つわよ。...姉さん、大丈夫よ。所詮通り雨なんだから。じっとしていれば雨雲もコイツも――――」
足を止め、両手を挙げて近寄らないと約束する。ツイン縦ロールの娘は[
―――本音を言えば、二人の傍に歩み寄って話を聞いてあげたい。『ゲヘナ』は他校に比べて治安が悪いとは言え、この二人の様子は不良に襲われたとかのそれとは違うものだと感じられる。
「...(ボサボサの長髪の娘は、"
二人の様子を見ながら推察する。
「...落ち着いた?」
「...う、うん...」
―――数分後。ボサボサの長髪の娘の震えが治まり、ツイン縦ロールの娘の言葉に小さく頷く。
「...なら良かった。...本当、どうしたものかしらね...
ツイン縦ロールの娘は安心した表情を浮かべるけど、一転して暗い表情を浮かべて何か呟く。
「...ねぇ、私でよければ事情を話してくれない?初対面でこんな提案をするのも失礼だと思うけど...誰かに話したら楽になるかもしれないわ。まだ雨も止みそうにないし、それまでの間でいいから...どうかしら?」
「...アンタには関係ないわ。...そうやって話を聞いて、
私の提案を聞いたツイン縦ロールの娘は瞳に宿した警戒心を消さずに否定の言葉を返す。どうやら過去に自分達の事情を話して酷い目に遭った経験がある様だ。十中八九、ボサボサの長髪の娘が持つ
「――じゃあ、[
―――[
「...そうまでして私達の事情を知りたいの?」
「...何だか放っておけないから。せめて、話だけでも聞いてあげたいの」
「...とんだお人好しね。...姉さん、大丈夫?」
「...大丈夫...多分、この人は...悪い人じゃない、と思う...」
ツイン縦ロールの娘は呆れた様な表情を浮かべ、ボサボサの長髪の娘に確認を取り、彼女は少し顔を上げて暗く物憂げな青い瞳で私を見つめてそう答える。
「...分かった。――単刀直入に言えば、姉さんは
ツイン縦ロールの娘が事情を話し始め、ボサボサの長髪の娘はその時の事を思い出したのか暗い表情で俯く。―――雷の直撃なんて早々起きる事では無い。基本的には避雷針があるし、他に出来る対策もある。...しかし、ボサボサの長髪の娘が齎す
寮側の対応は薄情に見えるけど―――入寮している他の娘達を守る為には
―――そういう対応をされたら、ボサボサの長髪の娘はますます
「――そこから自地区内の寮やらアパートやらをあちこち回ったけど、私達の事情を聞いて、同情して受け入れてくれるだけ最初はマシだったわ。...実際に
受け入れられて、
「門前払いって...いくら
ツイン縦ロールの娘が続ける言葉を聞いて思わず手を握り締める。―――恐らく噂ではボサボサの長髪の娘が齎す
「...幸い、私は
「...それで、こういう空き家で過ごすようになったのね」
「そうよ。こういう空き家に転がり込めれば儲けものだけど...何処かで唐突に、大体は
ツイン縦ロールの娘は私の言葉に頷き、そう答えてため息を吐く。
信じざるを得ない。
「...こんな所かしらね。ほら、聞いたってどうにもならないでしょ?」
「...えぇ。貴女達の事情はよーく分かったわ」
ツイン縦ロールの娘の言葉に頷く。
―――
そんなある意味私人間とは切っても切れない
信じたくないけど―――唐突な雨、そして今も時折響く雷鳴...
―――しかし。ボサボサの長髪の娘が齎す
また、
―――能力であろうと、
―――だからこそ。
―――これまで目の前の二人ケアもせず、支えようともしなかった連中に代わって私が...!
「だから、もう一度警告するわ。――悪いことは言わない。私達なんかほっといて、雨が止んだらさっさと――」
「――ますます放っておけないわ。...貴女も分かってるんじゃない?今のままじゃ何も変わらない。何なら――
「...っ...この場の初対面でしかないアンタに何が分かるってのよ!!姉さんには私しか居ないの!!例えこのまま不運に苛まれ続けようと!せめて私が傍に居てあげなきゃ――」
「――なるほど、誰もがその娘の
「じゃあどうしたらいいのよ?!どれだけ、何度私達が助けを求めて、悉くその手を振り払われてきたか!誰も助けてくれないなら、私しか――」
「じ、ジョオン...落ち着いて――」
「――だから、
―――声を荒げるツイン縦ロールの娘と、彼女の剣幕に驚きつつも宥めようとして手を伸ばすボサボサの長髪の娘に対してそう断言した瞬間、背後で雨音が一気に消えていき、雲まで晴れたのか、開かれたドアの前に立つ私の影を陽の光がハッキリと浮かび上がらせる。
「...雨が...」
「...!」
「実は私、起業すべく人材募集中でね。スカウトできそうな人材を探していたの。――貴女達は
雨が晴れて陽の光が差し込む様子に揃って驚く二人に微笑み、目的を明かす。ボサボサの長髪の娘は兎も角、ツイン縦ロールの娘が話していた"
「――正に貴女達は私が求めていた人材にピッタリ。是非とも雇いたいわ」
「...ジョオンは兎も角...私も、いいの?
「ね、姉さん...?!」
ボサボサの長髪の娘が私を見てそう尋ねると、ツイン縦ロールの娘―――ジョオンと呼ばれた娘が驚いた表情を浮かべる。
「勿論よ!貴女の妹だけ雇って貴女だけを雇わないなんて差別はしないわ。――それに、
「...ジョオン、この人について行こう。...この人は噓を吐いてない。本気で、私を雇おうとしてる...」
「...姉さん...」
ボサボサの長髪の娘の問いに力強く頷くと、彼女は賛意を示してジョオンを誘う。ジョオンは警戒心と疑念の眼差しで私を見つめ―――
「...こんな私達を雇いたいなんて、本当にお人好しね。――約束して。仮に
「約束するわ。"社長"として、雇った社員の面倒を見るのが責務だもの。どれだけ不運な目に遭って苦境に陥ろうとも――雇った娘達だけは決して見捨てないわ」
呆れつつも
「――私は『陸八魔アル』。これから貴女達の上司になる者にして――かけがえのない仲間になる者よ」
「――『依神シオン』。ジョオンは私の双子の妹。...不運しか齎せない私だけど、よろしく...」
「――『依神ジョオン』、シオン姉さんの妹よ。...姉さん共々、お世話になるわ」
―――お互い自己紹介を交わし、二人は私が差し伸べた手を握り、手を引いて立ち上がらせる。
「――さぁ、雨も止んだし行きましょう!」
「...だ、大丈夫かな...歩いてる途中でまた雨が降ったら...」
「そうやって悪い方向に考えるから良くないことが起きるのよ。"雨はもう降らない"――そう強く思えば
空き家の外へ出て、軒下に立て掛けておいた[
「...前向きに...分かった。...雨は降らない...雨は降らない...大丈夫...」
「前向き、ね...その方が雰囲気も暗くならないものね。――それで、どういう会社を起業するつもりなの、"社長"さん?」
「ふふ、よく聞いてくれたわ!私達が立ち上げる会社は――――」
~『シャーレ』オフィスビル 部室~
side-"先生"
「――――まぁ、起業して最初の依頼で見事に
「"なるほど...アルは君達にとって本当にかけがえのない恩人なんだね"」
―――キーボードを打つ手を止め、ジョオンは身の上話を締め括る。改めてアルとジョオン達"便利屋68"の面々の絆の強さを実感しながら頷く。
―――今日の『シャーレ』"当番"はシオンとジョオンの依神姉妹だ。"便利屋68"がここ『D.U.外郭地区』に事務所を移転した翌日―――即ち今日が"当番"を予約していた日で、残る四人は今日付の依頼遂行に向かっている。
―――『もし、シオンが
―――脳裏にアルが電話で伝えてきた言葉を思い返す。二人が『シャーレ』に来た当初、シオンは明らかに落ち込んでいた。ジョオンがフォローしてもあまり改善せず、どうしたものかと悩んでいたら掛かってきたアルからの電話。渡りに船だと彼女の言葉をシオンに伝えたら、"社長がそうしろって言うなら...うん、頑張る...!"と前向きになってくれた。
―――このやり取りからも、アルが二人にとってどれだけ大きな存在であるかが解る。
「...ジョオン、今大丈夫?...ここの項目は、どうしたらいい...?」
「あぁ、そこは――――」
―――私達の会話に混ざらず、たどたどしくもパソコンで作業を進めていたシオンが頃合だとジョオンに教えを乞う。ジョオンは素直に快く応え、シオンの傍に椅子を寄せて教え始める。―――そんな姉妹の関係は見ていて微笑ましくなる。
―――シオンが持つ
他人のせいで自分が大きな迷惑を被っているのに、決して八つ当たりせず妹として傍に居続け、支える―――ジョオンはシオンにとっても掛け替えの無い、素晴らしい妹だろう。
「...わぁ、こんな簡単に...!流石ジョオンだね」
「これくらい基本的なものだけど...まぁ、褒められると悪い気はしないわね」
「...えへへ。...いつもありがとうジョオン」
「......な、何よ急に。...ど、どういたし――」
「...へ?」
「...は?」
「"...ん?"」
―――ジョオンのアドバイスに対しシオンがお礼を述べ、ジョオンは戸惑い、恥ずかしそうにしながらも返事を返そうとした瞬間。微かに
「――仲睦まじい姉妹のツーショット、いただきました!いやぁ、普段ネガティブな表情ばかりのシオンさんも、気難しい表情か営業スマイルが多いジョオンさんもこんな表情を浮かべるんですねぇ。これはいい広報材料に――」
―――部室の出入口側。スマホのカメラをこちらに向けて構えた、いつの間にか帰って来ていたらしいアヤ。スマホを下ろし、いいネタを得たと言わんばかりの笑顔でそう宣言し―――
「――今すぐ、その写真を消しなさい。じゃないと――今日は
―――頬を赤らめるジョオンが[
「...じ、ジョオン...?別に写真位――」
「姉さんが良くても私が良くないのッ!」
シオンが落ち着かせようと声を掛けるけど、ジョオンはそれを遮って自分の都合が悪いと返す。
「"...アヤ、ジョオンが嫌がってるし流石に――"」
「――広報には使いませんが、
「...その写真で私を脅そうっての?」
「さぁ、どうでしょう?」
アヤを諭そうとするけど、そんな理由を挙げて写真を残す事は譲ろうとしない。それを聞いたジョオンが尋ねると、アヤは思わせぶりな表情で肩を竦め―――
「――いいわ。自分の意思で消さないなら...
「おっと...!実力行使に出るならば、ここは逃げるしかありませんね!」
―――ジョオンは椅子を蹴飛ばしてアヤに向かって走り出し、アヤもすかさず部室から出て逃げ出す。
「...せ、"先生"...どうする?」
「"...被害が大きくなる前にどちらか捕まえて止めようか。...アヤにはまず追いつけないだろうから、ジョオンを止めよう"」
「...分かった。...でも、たかが写真一枚でなんであんなに...?普段は積極的に撮ったりするのに...」
二人して部室に残され、戸惑うシオンの問にそう答えて立ち上がり、ジャケットに袖を通しながら歩き出す。シオンも同様に立ち上がり、首を傾げて呟きながらついて―――
―――~♪
「"...ちょっと待って。『モモトーク』が..."」
―――スマホから『モモトーク』の着信通知音が鳴り、足を止めてスマホを取り出す。
A88@文々。新聞
"先生"!
折角なので写真共有しておきますね!
教師としてはこういう光景は微笑ましいでしょう?
―――トークの下には、先程撮ったらしき写真が載せられている。ネガティブさが無い、素直に嬉しそうな微笑みを浮かべるシオンと、恥ずかしそうに頬を赤らめるジョオンが向き合う微笑ましい情景。シオンはこういう表情を浮かべる事が出来ると解って安心出来るけど、ジョオンがこういう表情を浮かべるイメージは無い。―――アヤが言っていた
「"――アヤ...
「..."先生"?」
「"――シオン、急ごう!このままじゃアヤだけじゃなく私も大変なことになりかねない...!"」
「わ、分かった...!」
シオンは戸惑いながらも頷き、早足で歩き出した私について来る―――
という事で、依神姉妹でした。別でそれぞれの掘り下げはやる...かもしれない。最後のオチは皆さんのご想像にお任せします。
シオンがこれまでの話含めて食べてばっかりな描写が多いのは個人的な趣味要素です。いっぱい食べる君が好き。