Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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パヴァーヌ編、始まるよ~


Folder04.~名も無き神の遺し子~
File42.M-1~助けてください勇者様!~


~???~

side-"先生"

 

 

―――...すか...―――

 

 

―――声だろうか。ぼんやりとした意識の中で何かが聞こえる。

 

 

―――きこ...すか...―――

 

 

―――徐々に覚醒していく意識に併せて少しずつ、声が明瞭になっていく。

 

 

―――聞こえ...ますか...?―――

 

("...誰だろう...女の子なのは解るけど...")

 

―――声は女の子のもので、私に対して声が聞こえているかと尋ねているらしい。でもそれ以上は分からない。視界も回復し始めたけど眩しい空間らしく白飛びしていて何処かも分からないけど、取り敢えず頷いてみる。

 

―――よかった...貴方は、不(・)慮(・)の(・)事(・)故(・)によって"救世主"として転生したのです―――

 

("救世主...?")

 

―――声は私が不(・)慮(・)の(・)事(・)故(・)に遭ったと説明する。...事故に遭って転生。外(・)ではベタなネタになってしまった展開だ。

 キヴォトスに"先生"としてまだ日も浅いというのに異世界転生なんてとてもとても不味いのだが、身体も意識もまだまだ重く、飛び起きる事も出来ない。

 

―――思い出して...貴方は、私(・)達(・)の(・)呼(・)び(・)か(・)け(・)に応えてここまで来たのです―――

 

("呼びかけ...?")

 

―――声は私が声の主による呼びかけによって何処かに来たらしい。しかし、意識もまだぼんやりとしていて、視界もまだ白飛びしている。

 

 

―――ぼんやりとした意識、視界の中で記憶を思い起こしてみる。確か、私は―――

 

 

―――数時間前―――

 

~『ミレニアムサイエンススクール』自治区付近 上空~

 

「――おっと、管制から通信...こちら"連邦捜査部"『シャーレ』。...機体ナンバーは――――」

「どうやら『ミレニアム』自治区に入ったようですね」

「"そうみたいだね。地平線に林立する高層ビル...『D.U.』や『D.U.外郭地区』以上に未来的だ"」

 

 操縦席でヘリを操るモエが通信を始めたやり取りを耳に留め、『ミレニアム』自治区に入ったのだと察し、ミヤコの言葉に頷いて窓から景色を―――地平線にビルが林立する未来的な印象を持つ遠景を眺める。

 


要請書

要請件名:助けて勇者様!

要請者:ミレニアムサイエンススクール 一年生 才羽モモイ

要請文

 私達ゲーム開発部は現在、廃部の危機に晒されています。部員皆で知恵を寄せ合って、幾つか浮かんだ策を実行してみても上手く行かず...そこで、大人であり、ニュースで見た『アビドス』の苦境解決を成し遂げた"先生"の力を借りたいのです。勇者よ、どうか私達を助けて下さい!


 

―――昨日の業務。相変わらず大量に届く要請書の中で見付けた、『ミレニアムサイエンススクール』所属の部活動らしい"ゲーム開発部"からの救援要請書。『アビドス』からの要請書とは違って具体性はあまり無く、よく見る形式だった。普段なら『シャーレ』が動く対象にはならないけど―――何故か、私はこの"ゲーム開発部"からの要請が気になった。

 次は『ミレニアム』との交流を本格的に深めようかとも考えていたし、信憑性や具体性に欠く要請書に疑念を抱くアヤ、ミヤコ達を説得し、アヤを留守番に置いて"RABBIT小隊"を護衛兼サポーターとして同行させて一路『ミレニアム』に向かっている。

 

「――――第三ヘリパッド了解。――"先生"、自治区入りの許可が下りたよ。"セミナー"の人が出迎えに来るってさ」

「"分かった。..."セミナー"ならユウカかな?"」

「ユウカさん、よく"当番"に来ますからね...最近は三日に一回のペースでのシフト配置が当たり前になってきましたし、すっかり『シャーレ』の常連ですね。"当番"予約は相変わらず熾烈だというのによく...」

 

―――操縦席からこちらに顔を覗かせたモエの報告に頷き、出迎えはユウカだろうかと呟くとミヤコは頷く。『シャーレ』"当番"の受け入れを始めて最初に来て以来、度々ユウカは"当番"として来てくれていて、すっかり『シャーレ』のお馴染みとなっている。

 

「"机上業務は本当に大助かりだよ。...毎度毎度お金のことでお説教されるのはちょっと辛いけど"」

「そりゃ"先生"が悪いだろ...趣味をとやかく言いたくないが、たかが玩具なのにあんな高いものをホイホイ買うんだから」

「"サキ、たかが玩具じゃないよ。『メタルフィギュア』は飾ってよし動かしてよしの最高のフィギュアだよあの精巧なディティールと可動部の剛性は高価な金属製だからこそなんだよ"」

「お、おう...」

 

 そんな会話を続けている内にビル街の上空を通過していく。窓から眼下を見下ろせば、ちょうど駅を出発したらしいモノレールがビルの間を抜けて行く様に走り出す様子が見える。レールを辿っていくと―――

 

 

「"――一際大きなタワーが見えるね"」

「『ミレニアムタワー』――『ミレニアム』の象徴であり、生徒会たる"セミナー"の拠点が最上階にあると聞いたことがあります」

「あんなタワーの最上階なら、『ミレニアム』全体を見渡せるんだろうな...正に生徒会だからこその特権だな」

 

―――ビル街の奥、どんなビルよりも高く聳えるタワーが見えて来て、ミヤコが『ミレニアムタワー』だと説明してくれる。ユウカが所属する"セミナー"の拠点もあそこにあるらしい。タワー最上階から『ミレニアム』を見下ろすセミナー(生徒会)―――立地的には権威的アピールも兼ねているのだろうか。

 

「――後五分ちょいで着陸するよー。シートベルトはちゃんと着けてねー」

「了解だ」

「了解...!」

「"分かった。...いよいよか。名前と有名ぶりは聞いてきたけど、いざ現地に着くとなるとワクワクするね"」

「私達も任務として数える程しか行ったことがないので、少し楽しみです。...忙しくなければ"WOLF小隊"のお二方にも挨拶したいですが...会えるでしょうか」

 

 操縦席から顔を覗かせたモエの言葉に頷き、ミヤコの呟きを耳に留めながらシートに座り直してシートベルトを締める―――

 

 

~『ミレニアムサイエンススクール』第三ヘリパッド~

 

―――ガタンッ...

 

「――はい着陸ヨシ。一応風に気を付けてねー」

 

―――ヘリが着陸して僅かに揺れ、モエの言葉を受けてシートベルトを外す。

 

―――ガラッ...!

 

 ミヤコが先導し、ヘリのスライドドアを開けて機外に降り立つ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――お疲れ様です、"RABBIT小隊"の皆、"先生"。『ミレニアムサイエンススクール』へようこそ」

「遠路はるばるようこそ。歓迎するわ。ふむ...これが『シャーレ』の"先生"...」

 

―――ミヤコ達を連れ、ヘリパッドの出入口付近に立つ二人の人影―――一人はやはりと言うべきかユウカ。そしてもう一人――長い三つ編みを下げた赤い髪の頭上に真っ赤な十字架のヘイローを浮かべ、赤いネクタイを締めた白いシャツの上に赤いベストを纏い、その上に裏地が黒い赤いジャケットを羽織り、赤いスカート、白い靴下と赤いスニーカーを履いた――少し大人びた生徒らしき娘が挨拶して来る。

 

「"やぁユウカ。やっぱり君だったね。お出迎えありがとう。――そして君は..."」

「――『岡崎ユメミ』。『ミレニアム』現役三年生にして最高学位"全知"取得者。そして――"連邦生徒会"公認専属教師。通称"教授"よ。『シャーレ』の活躍は噂に聞いているわ。教職(同業者)と会えて光栄よ」

「"――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問。通称"先生"。こちらこそよろしくお願いするよ、ユメミ教(・)授(・)"」

「ユメミで構わないわ。まだ現役生徒だし」

 

 全身赤づくめの生徒―――ユメミと自己紹介を交わして握手する。

 

「――さて、今回は"ゲーム開発部"からの要請を受けて来られたとのことですが」

「"そうだね。私の助けを必要としていたから、それに応えようと思ってね"」

「流石というか相変わらずというか...とうとう"先生"にも頼り出したわね、あの娘達..."教授"まで協(・)力(・)してるらしいのに...」

 

 ユウカに今回の訪問の理由を確認されて頷くと、彼女は呆れた様な、困った様な表情を浮かべて何か呟く。

 

「"...そんな表情を浮かべるってことは、やっぱり何か問題を抱えてるのかな?"」

「問題というか、解(・)決(・)し(・)よ(・)う(・)と(・)す(・)る(・)気(・)配(・)が(・)見(・)え(・)な(・)い(・)というか...」

「可愛い後輩達が心配なんでしょうけど、ユウカはせっつき過ぎよ。『ミレニアム』に所属する全生徒が貴女やノアみたいに天才で効率的に物事を進められる訳じゃないんだから」

「そ、それは...分かっています!逆に"教授"は"教授"で甘やかし過ぎなんです!廃部の危機だというのに、"教授"が協力しているせいでまるで廃部を避けられたかのようにまた慢心し始めてるんですよ!大体"教授"はいつも――――」

 

 ユウカの言葉に対するユメミの窘める様な言葉にムッとした表情を浮かべたユウカがお説教を始める。三年生(先輩)に対してもお説教を始めるのはユウカらしいけど、ユメミはやれやれと言いたげな表情でお説教を聞き流しながら言葉を続ける。

 

「――こうしてしつこい位にお説教してくるけど、この娘なりに心配してるのよ。素直に廃部にさせたくないって言えばいいんだけど、この娘のプライドが許さないのか、それとも恥ずかしいだk「"教授"、聞いてるんですか!!」はいはい、聞いてるわよー。それより――こんなお説教に時間を費やす位なら、"先生"達の案内がてら部室棟に向かう方が効率的だと思わない?」

「他人事みたいに...!...ま、まぁ時間が惜しいのはその通りです。ヘリの方も後始末が終わったようなので行きましょうか」

「お待たせーって、いいタイミングっぽいね」

 

 どうやらモエも後始末を終えて此方に来た様で、いつの間にかヘリのローター音も聞こえなくなっている。これで『シャーレ』側も全員揃った。

 

「"ゲーム開発部"の部室がある部室棟はちょっと遠いけど、案内がてら歩いていけばすぐよ。気になるものがあったらユウカに聞きなさい」

「勝(・)手(・)に(・)つ(・)い(・)て(・)来(・)て(・)私に丸投げですか...まぁ、いいです。――では行きましょう」

 

 ユウカ、ユメミに続いて歩き出す―――

 

 

~『ミレニアムサイエンススクール』 部活エリア~

 

「――ここから『部活エリア』に入ります。『ミレニアム』に属する大半の部活動の居室や拠点がここに集約しています」

「"エンジニア部"とか、私(・)の(・)研(・)究(・)室(・)とかの規模が大きかったり、独立性、秘匿性が必要な部活動はその限りじゃないけどね」

 

―――三階建ての横長の建物が通りの左右に並ぶエリアに入り、ユウカとユメミの説明に耳を傾ける。

 

「現在は大小五十を越える部活動が活動しており、もうすぐ開催される今年度の『ミレニアムプライス』に向けて特に活発化しています」

「五十を越える...流石三(・)大(・)校(・)だな」

「"すごい数だね...そんなに沢山の部活を抱えて大丈夫なのかい?"」

 

 サキの言葉に続いて尋ねる。部活動が多ければ、その分捻出、分配する予算は多くなるだろう。その予算に間違い無く直に関わっているであろう、"セミナー会計"ユウカは大変ではないだろうか。

 

「えぇ、と っ て も 大変ですよ。しかし――『ミレニアム』においては、"千(・)年(・)難(・)題(・)の(・)解(・)決(・)に繋がるならばあらゆる実験、研究は肯定されるべき"という理念に基づき、どのような分野でも活動意義と齎される成果の説明が認められれば部活動が設立できます。

 ですからこれだけの数の部活動が存在し、我々"セミナー"には各部活動が成果を生み出せるように活動を評価、管理し、必要であれば支援する責務があります。

――ですが、部活動と言いながらその実た(・)だ(・)の(・)個(・)人(・)的(・)趣(・)味(・)し(・)か(・)や(・)ら(・)な(・)い(・)、千(・)年(・)難(・)題(・)解(・)決(・)に(・)繋(・)が(・)り(・)う(・)る(・)成(・)果(・)を(・)出(・)す(・)気(・)が(・)な(・)い(・)部活動というのも幾つか存在します」

「...その部活動に"ゲーム開発部"が含(・)ま(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)、ということでしょうか」

「...その通りよ、ミヤコちゃん。――設立当初こそ酷(・)い(・)評(・)価(・)ば(・)か(・)り(・)なれどゲームを開発して成果を出していました。しかし最近は...ゲ(・)ー(・)ム(・)開(・)発(・)の(・)イ(・)ン(・)ス(・)ピ(・)レ(・)ー(・)シ(・)ョ(・)ン(・)を(・)得(・)る(・)た(・)め(・)のゲームソフトやハードの購入予算申請ばかりで、私がいくら催促しても"難航してるけど開発中"の一点張り。進捗を確かめるべく何度か部室を訪ねましたが――開(・)発(・)中(・)の(・)フ(・)リ(・)す(・)ら(・)粗(・)い(・)のが現状です。...マリサが居るのに何をやっているのかしら全く...」

 

 ミヤコの推理にユウカは頷き、愚痴る様に"ゲーム開発部"の現状を説明する。どうやら"ゲーム開発部"としてゲーム開発をせず、ゲームで遊んでいる事が殆どらしい。つまり―――部(・)活(・)動(・)と(・)し(・)て(・)の(・)公(・)的(・)活(・)動(・)を殆どしていないという事になる。

 

「"なるほど...それが事実なら要請書にあった廃(・)部(・)の(・)危(・)機(・)も当然だね...私達がどれだけ助けになれるか分からないけど、『シャーレ』としてできることをやるよ"」

「"ゲーム開発部"の自業自得の面が強いですが、お願いします。..."セミナー"としては、できる限り廃部判断を下すことは避けたいですから」

 

 ユウカはそう言って私に頭を下げる。―――多くの部活動を抱えているなら、公的活動を行わず予算を無駄にする部活動を廃(・)部(・)にして、その浮いた予算を他部活動に宛てるべきだろう―――廃(・)部(・)に(・)さ(・)れ(・)た(・)娘(・)達(・)の(・)感(・)情(・)を無視出来ればだけど。ユウカは厳しい言葉の裏に優しさや気遣いがある娘だ。感情的には廃部は出来る限り避けたいのだろう。

 

「私からもお願いするわ。最近"ゲーム開発部"に加(・)わ(・)っ(・)た(・)娘(・)はユ(・)ウ(・)カ(・)の(・)お(・)気(・)に(・)入(・)り(・)みたいだから、協力してあげて。私って結構多忙だから、"ゲーム開発部"に付きっ切りという訳にもいかないのよ」

「どの口が言いますか...多忙と言っても専ら『廃墟』の無(・)断(・)探索でしょう。――あ、そうです!"教授"、また勝(・)手(・)に(・)『廃墟』に潜入しましたね?!今朝方"WOLF小隊"から苦情が――」

 

 

―――~♪

 

「――こんな時に...!ちょっと失礼します――もしもし。...ノア、どうしたの?」

 

―――着メロが鳴り響き、ユメミへのお説教を始めようとしたユウカは足を止めてスマホを取り出して電話に出る。ノア...ユウカが"当番"の時の雑談で度々名前を聞く"セミナー書記"『生塩ノア』だろうか。何でも完(・)全(・)記(・)憶(・)能(・)力(・)の持ち主らしいけど―――

 

「...またあの娘は...!...私も向かうわ。"教授"も一緒に居るから"先生"達の案内を引き継ぎするわ。...えぇ、ノアは逃亡先を特定しておいて。それじゃあ――"教授"、"セミナー"の方で問(・)題(・)が発生したのでその対応の応援に向かいます」

「――電話の反応的にあ(・)の(・)娘(・)ね?あれには自信があったんだけどねぇ..."ヴェリタス"も呼んでセキュリティの構築を見直した方が良さそうね。――分かったわ。"先生"達の案内は任せなさい」

「ありがとうございます。――解決したらすぐ戻って来ますからね!ちゃんと案内お願いしますよ!」

 

 ユウカの言葉を聞いたユメミは察した様に頷き、ユウカは釘を刺す様に言い残して元来た道を戻る様に駆け出していく。

 

「"行っちゃった...何が起きたんだい?"」

「"セミナー"の問(・)題(・)児(・)が勝手に部屋を抜け出したのよ。稀(・)有(・)な(・)才(・)能(・)の持ち主なんだけど、致(・)命(・)的(・)に(・)倫(・)理(・)観(・)が(・)低(・)く(・)て(・)よく問題を起こすのよねぇ...」

 

 ユウカを見送り、再び歩き出しながらユメミに尋ねると、何が起きたか説明してくれる。どうやら"セミナー"に所属している生徒が脱走したらしい。ま(・)た(・)と言っていたから、何度も起こしている様だ。

 

「...ユウカさんの応援だけで大丈夫なんですか?」

「今回はノアが気付いたみたいだし、否が応でも慣れちゃってるからあの娘達なら"ゲーム開発部"と交流している間に解決できるはずよ。――さ、見えてきたわね。あの棟に"ゲーム開発部"の部室があるわ」

 

 脱走はすぐに解決するだろうと推測したユメミが指差す先に建つ部室棟を指差しながら歩いて行く。

 

「あそこか...エリア的には隅の方なんだな」

「この辺りは部員数四、五人の小規模な部活動が集まっているの。少人数のまま活動していたり、設立されて間もない新興の部活動が大半よ」

「"なるほどね...さて、一体どんな娘達が――"」

 

 

 

 

 

 

―――ガッシヤァァァン!!

 

―――部室棟に近付くと突如響き渡るガ(・)ラ(・)ス(・)が(・)砕(・)け(・)た(・)音(・)。

 

「――あら?」

「――っ?!」

「うぇっ?!なになに?!」

「な、何だ?!」

「な、何が...?!」

「"な、何が――"」

 

―――ミヤコ達が驚いて咄嗟に銃を構える中、音が聞こえた方向―――"ゲーム開発部"の部室がある方を見上げる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ゴォッ...!

 

「"――え?"」

 

―――刹那、視界一杯にゲ(・)ー(・)ム(・)機(・)ら(・)し(・)き(・)大(・)き(・)な(・)物(・)体(・)が広がり―――

 

 


~???~

 

―――思い出ましたか...?―――

 

("そうだ...ガラスが割れた音が聞こえて、振り向いて見上げたらゲーム機らしき筐体が見えたんだっけか...もしかして、頭にでもぶつかったのかな?")

 

―――そう自分に言い聞かせる様に心中で呟きながら声に頷く。

 

―――悲(・)し(・)い(・)事(・)故(・)でしたが、貴方は五体満足でご無事です。そう...これは運命なのです―――

 

("運命...?")

 

―――勇者よ。我らの危機を救うべき運命を課せられた救世主よ。今こそ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「モ~モ~イ~!!」

 

 

―――突如、聞(・)き(・)覚(・)え(・)が(・)あ(・)る(・)大(・)声(・)が耳を貫いた。

 

 

~『ミレニアムサイエンススクール』 医務室~

 

<「げぇッ!妖怪"冷酷な算術師"!」

<「"教授"から聞いたわよ!なんてことをしてくれたのよ!」

<「うぇっ?!"教授"にユ(・)ウ(・)カ(・)に(・)は(・)う(・)ま(・)い(・)こ(・)と(・)誤(・)魔(・)化(・)し(・)て(・)ってお願いしたのに...!」

<「何処に電話したのかと思ったら...全く、お姉ちゃんは...」

 

「"――はっ...!"」

「――"先生"、ご無事ですか?!」

「"先生"、起きたか...!」

 

―――意識が覚醒し、起き上がるとミヤコ達が駆け寄ってくる。視界に映る無人のベッドや間仕切り、清潔感ある空間から医務室だろうと察する。

 

<「私だってこんなことになるなんて思わなかったよ!っていうか実行犯のアリスをしかるべきだよ!」

<「そもそものきっかけは貴女でしょうが!」

 

「"うん、特に異常はないと思うよ。...医務室みたいだけど、私の身に何が起きたんだい?"」

「"ゲーム開発部"の部(・)室(・)の(・)窓(・)か(・)ら(・)投(・)げ(・)飛(・)ば(・)さ(・)れ(・)た(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)機(・)が、"先生"の脳(・)天(・)に(・)直(・)撃(・)したんだよ。しかも明らかに筐(・)体(・)の(・)角(・)が直撃してた筈なんだけど――アロナちゃんが頑張ったみたいでさ。タンコブ一つもできてないよ」

『――はい!スーパーAIアロナが頑張りました!...でも、突然だったので衝撃までは防げませんでした。ごめんなさい、"先生"...』

 

 モエの事情説明に続き、ベッド傍のテーブルに畳まれて置かれたジャケットの上の"シッテムの箱"からアロナの声が聞えて来る。

 

―――どうやら意識を失う直前に目の前に迫って来たゲ(・)ー(・)ム(・)機(・)が私の頭に直(・)撃(・)し(・)た(・)らしい。アロナが咄嗟に張った"シッテムの箱"のシールドのおかげで負傷は免れたものの衝撃までは防げず、その衝撃で頭を揺さぶられて気絶し、こうして医務室まで運ばれた...と言った所だろうか。

 

<「ある程度色々なゲームに触れたアリスなら次こそは大丈夫だって思ったんだよ!」

<「ア(・)レ(・)は(・)私(・)で(・)す(・)ら(・)気(・)が(・)狂(・)い(・)そ(・)う(・)に(・)な(・)る(・)代(・)物(・)よ!早々慣れる訳ないでしょうが!」

 

「"謝る必要はないよ、アロナ。君の咄嗟の判断のおかげで怪我を負ってしまう事態を避けられたからね。...問題は、あのゲーム機を投げ飛ばしたのは誰か――"」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はい!やっぱりア(・)レ(・)は(・)あ(・)ま(・)り(・)の(・)ク(・)ソ(・)ゲ(・)ー(・)で我慢できず、アリスが思わず投げ飛ばしてしまいました!」

ガタッ...>

「そんな自信満々に話すことじゃないぞ、アリス...」

 

―――ミヤコ達とは反対側。右の方から元気溌剌とした声と呆れてツッコむ様な声が聞こえて顔を向ければ、床で引き摺る程に長い黒髪の上に明るい水色の複数のウィンドウを模したヘイローを浮かべ、『ミレニアム』生の制服である白いワイシャツの襟元に空色のネクタイを締め、少し身の丈に合わない印象があるジャケットを羽織った少女と―――左側のこめかみから三つ編みを垂らす金髪の長髪の頭上に八(・)卦(・)図(・)を(・)象(・)る(・)八(・)角(・)形(・)の(・)黄(・)色(・)い(・)ヘ(・)イ(・)ロ(・)ー(・)を浮かべ、『ミレニアム』生の制服である白いワイシャツの襟元に空色のネクタイを締め、黒い薄手のベストの上に裏地が白い、黒地に黄色いラインが走るパーカーを羽織り、裾に白いラインが走る黒いプレーティングスカート、黒いニーソックスと白黒のスニーカーを履いている少女が居た。...そんな彼女達の傍(・)に(・)置(・)か(・)れ(・)た(・)段(・)ボ(・)ー(・)ル(・)箱(・)が一(・)瞬(・)動(・)い(・)た(・)が気がしたけど、気にせず二人に目を向ける。

 

「"はは、元気な娘だね。――君の名前を教えてくれるかい?"」

「はい!『天童アリス』と言います!"ゲーム開発部"期待の新人であり、勇者を目指す者です!救世主よ、アリスのせいでこんな事態を起こしてしまってごめんなさい!」

 

 アリスと名乗った少女は自己紹介し、謝りながらガバッと頭を下げる。彼女がゲーム機を投げ飛ばした犯人らしい。そして―――ぼんやりとした意識の中で語りかけて来た声の主はこの娘だ。

 

「"ちゃんと反省しているなら許すよ。幸い怪我も負わなかったしね。そして君は――"」

「――『霧雨マリサ』、『ミレニアム』二年生だ。"ゲーム開発部"の...まぁ、諸々の雑用担当だ。ゲーム開発部(ウチ)のが迷惑をかけてしまったこと、私も謝るぜ」

 

 マリサと名乗る少女はそう言って頭を下げる。

 

「アリス、マリサだね。――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"だよ。君達"ゲーム開発部"の要請に応えるべくミレニアム(ここ)に来た。よろしく頼むよ。――それで、要請書を送ってきた『才羽モモイ』って娘は何処に居るのかな?"」

 

 私も自己紹介を返し要請書を出した娘の所在を尋ねる。

 

「...あぁ、モモイなら――」

 

 

 

 

「――今回はなあなあで済ませないわ!悪い子は――こうよッ!!」

「ん‟に‟ゃあ‟あ‟あ‟あ‟あ‟あ‟?!」

「うわ...痛そう...」

 

―――呆れた表情を浮かべたマリサが医務室の出入口の方に目を向け、釣られて目を向けた先ではピンク色のラインが走る黒い猫耳ヘッドフォンと尻尾型のアクセサリーを身に付けた、『ミレニアム』制服の上に少しブカブカなジャケットを羽織った、ユウカより小柄な少女――恐らくこの娘が『才羽モモイ』だろう――がユウカのアイアンクローで白目を剝きながら変な悲鳴を上げる有様が繰り広げられていた。そんな二人を、モモイとお揃いコーデだけど、アクセントカラーは緑で揃えている、双子らしき娘が呆れた表情で見ている。

 

 

―――ウィィン...

 

「――ごめんなさいね。捕(・)縛(・)の(・)後(・)処(・)理(・)でちょっと遅れたわ...って、もうお仕置き食らってるわね」

「に‟ゃあ‟あ‟あ‟あ‟あ‟あ‟!!」

「――あ、"教授"!通(・)報(・)と後処理の引継ぎありがとうございます!"先生"は――って、目覚めたんですね!本当にすみません!まさか私が居ない間にこんなことになってしまうなんて...!」

「"ユウカが謝る必要はないよ。ゲーム機を投げ飛ばした娘――アリスはちゃんと謝ってくれたし、見ての通り私は五体満足で無事だよ"」

 

―――医務室の扉が開き、ユメミが入ってくるとユウカはアイアンクローを止めずにそうお礼を述べ、思い出した様に私の方に顔を向けると私が目覚めていた事に気付いて謝罪して来る。モモイが悲鳴を上げ続ける中、ユウカが謝る必要は無いと返す。

 

「...ご無事なら良かったです。――まだ不十分な気もするけど、これくらいでいいでしょう。ほらモモイ、"先生"に自己紹介と謝罪をしなさい。要請書を出したのは貴女なんでしょう?」

 

 私の返事を受けたユウカは安心した様に息を吐き、そう言いながらモモイをアイアンクローから解放する。

 

「あ‟ぁ...た、助かったぁ...私が要請書を送った『才羽モモイ』だよ!その...私の提案が結果として"先生"をあんな目に遭わせちゃってごめんなさい!」

「...双子の妹、『才羽ミドリ』です。お姉ちゃんがごめんなさい...」

 

 モモイと、やはり双子の姉妹だったミドリが自己紹介し、揃って私に頭を下げる。

 

「"私はこうして五体満足で無事だし、君達からもアリス(部員)に二度とやらないように言って聞かせてくれればいいよ。――ゲーム以外にも言えることだけど、激情に身を任せて物に当たるのはよくないことだ。自分の所有物が壊れるだけなら自業自得で済むけど...今回みたいな他(・)人(・)へ(・)の(・)事(・)故(・)になるとこれだけ大変なことになってしまう。ゲームでも他の遊びでも――マナーと節度を守れば自分も他人も楽しめるからね"」

「はい!アリス、もうゲーム機に当たるなんてことはしません!」

 

 二人の謝罪を受け入れ、そう窘めるとアリスは素直に頷いて宣言する。

 

「"うん、素直でいい娘だね。――ところでアリス。どうして異世界転生モノみたいな呼び掛けをしたんだい?"」

「あっ!ちょっ、アリスそれは――」

 

 

 

 

 

 

「――モモイの提案です!普通に呼びかけるよりは救世主を迎えるような演出を加えた方が、刷(・)り(・)込(・)み(・)で(・)ワ(・)ン(・)チ(・)ャ(・)ン(・)そ(・)の(・)気(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)か(・)も(・)し(・)れ(・)な(・)い(・)からだそうです!」

「人が意識を失っている時に何やってるのよ貴女はぁぁぁ!!」

「ん‟に‟ゃあ‟あ‟あ‟あ‟あ‟あ‟!!」

 

―――何となく浮かんだ疑念をアリスに問うと、そんな答えが返って来た瞬間ユウカがモモイのこめかみに両拳を押し付けて激しくグリグリと回し、アリスの返答を止められなかったらしいモモイは白目を剥いてまた変な悲鳴を上げる。

 

「...私達も止めようとしたんですが、モモイさんが"私達に任せなよ!"と自信満々で、アリスさんもとても乗り気だったので止めるに止められず...」

「本当にすまん...モモイは決めたらそう簡単に折れないヤツでな。いたずらっ子な面もあって、こういうことを偶に目論むんだ。...普段はムードメーカーで可愛いところもあるんだが」

 

 ミヤコが申し訳無さそうな表情を浮かべて事情を話すと、マリサが困った表情を浮かべて頭を掻く。

 

「"...マリサ。一応確認するけど、君達"ゲーム開発部"が廃(・)部(・)の(・)危(・)機(・)にあるのは事実なんだね?"」

「あぁ、紛れもない事実だぜ。"教授"も協力してくれてるが...今のところ成果は図(・)ら(・)ず(・)も(・)部(・)員(・)が(・)増(・)え(・)た(・)くらいでなぁ」

 

 思わず要請書の真偽に疑念が浮かんで来た私の問いにマリサはそう答え―――アリスを見る。

 

「――あぁ、そうだわ。"先生"が協力してくれるなら、廃(・)部(・)を(・)回(・)避(・)す(・)る(・)た(・)め(・)の(・)方(・)策(・)を話すついでにアリスについて話してもいいかもしれないわね。ユウカも事情は知っているし」

「"――何か特別な事情があるのかい?"」

「えぇ。アリスは単(・)な(・)る(・)新(・)米(・)部(・)員(・)ではないのよ――」

 

 

 

 

「――あれは一週間くらい前だったかしら。中々見付からないあ(・)る(・)物(・)を探すべく『廃墟』に繰り出した時よ――」

 

―――ユメミは過去を思い返す様に語り始める―――

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで"教授"、ゲーム開発部との邂逅でした。次回はアリスが既に居る理由の回想です。
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