Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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いよいよセミナー襲撃です。


File50.M-11~奪還クエスト:聖典を開く"鏡"③~

~『ミレニアム』自治区 『本校正門前』駅前広場~

side-セリカ

 

「――ご馳走様でした。噂通り、大変美味でした」

「あ、ありがとうございます!」

 

―――スープまで一滴残さず飲み干し、丼を置いたお客さん―――金髪を後頭部のシニョンで纏め、頭上にメイドプリムを留めたメイド姿の『ミレニアム』生はそんな単純な、しかし嬉しくなる感想を漏らし、食器洗いの手を止めてお礼を述べる。その服装通り所作は無駄なく丁寧で、服にスープは一切飛び散っておらず、ハンカチで口元を拭く動作も丁寧だ。

 

―――もうすぐ日が沈んで夜に移ろうという時間帯。今回、『柴関ラーメン』キッチンカーはここ『ミレニアム』のリニアライナー駅の一つ『本校正門前』の駅前広場で構える事が出来た。"美食研究会"の宣伝効果は本当に大きく、ラーメン通のコミュニティでも話題になっているのか、『モモッター』で開店告知をする前から私達を待つ様なお客さんが出て来る程になった。キッチンカー周りに据えたテーブルでも何人かの『ミレニアム』生がラーメンを啜っている。

 

「こちら代金です。...ふむ...値段よし、味よし。ボリュームよし。これならきっと()()()も――」

 

 

―――ピンポンパンポーン...

 

『間もなく、"セミナー"()()()()を開始します。訓練に伴い()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()ですので通報の必要はありません。繰り返します。間もなく――――』

 

「――な、何...?」

「――なんだ?訓練とか言ってるが...」

 

―――代金を受け取って確認していると突然、傍の電灯に据えられたスピーカーからそんなアナウンスが鳴り響き、麺を茹でるネイトもキッチンカーの外を見る。あちこちの電光掲示板にも青い背景、『ミレニアム』校章の下に大きな白い文字で『防衛訓練中』と表示され、ラーメンを啜る生徒達や道行く人々もアナウンスで一度足を止めるものの、訓練だと分かったのか気にしていない様に再び歩き出す。

 

「――こちら"04(ゼロフォー)"。......はい、たった今アナウンスを聞いたところです。......承知しました。時間も時間なので、細やかながらお土産も持参して帰還します」

 

―――しかし、メイド服の生徒はおもむろにヘッドセットに触れて誰かと通信を交わす。どうやらアナウンスされた訓練に関わるみたいだけど...

 

「――もう少し余韻に浸りたかったところですが、()より呼び出しを受けたのでそろそろ帰ります。ついでに、お土産にしたいのでこちらの[300カップ]で『柴関ラーメン』二つお願いします。こちら代金です」

「――かしこまりました!少々お待ちください!――『柴関ラーメン』、[300カップ]二つ入ります!

「はいよ!」

 

―――メイド服の生徒は[300カップ]――最近始めた持ち帰り用注文で、保温性のカップに300mlの容量にラーメンを盛ったもので、ゆっくり啜る時間が無かったり、手軽に食べたいお客さんからは好評だ――を二つ注文し、代金丁度と共に請け負ってネイトに伝える―――

 

 


~"セミナー" 司令室~

side-ユウカ

 

「――ノア、本当にアナウンスして良かったの?『貴女達の襲撃には気付いている』って示すことで機先を制することにはなるけど...」

「それだけではありませんよ。ここ『ミレニアムタワー』で、『ミレニアム』の中心地でいきなり()()()()()が勃発しては混乱は必至。その混乱への対応に人手を割かれることはセミナー(こちら)の戦力減にも繋がります。そして、『ミレニアム』全域にアナウンスすることで、『ミレニアム』外の方々に対し、これから『ミレニアムタワー』周辺で起きる出来事は()()()()()()()()という認識を与え、メディアからの追求を抑える狙いもあります」

 

 ノアの答えに納得して頷き、メインディスプレイに映る『ミレニアムタワー』玄関前の広場の様子に目を向ける。

 

―――広場の各所に展開して据えられた折り畳み式バリケードや[M249]を据えた機関銃陣地。死角、搦手を塞ぐ様に"セミナー保安部"部員と―――"セミナー保安部"が保有する戦車[M4A1(76)W*1]六輌が配置されていて、多くの人員、砲口は広場正面の大通り―――『ミレニアムタワー』エリアへ()()()()進入出来る唯一の道を警戒している。

 

「エレン達"保安部"は展開が終わったみたいね。ゲーム開発部(モモイ達)はどう仕掛けてくるか...そう言えば、作戦会議の時にちょっと気になったんだけど...どうしてゲーム開発部(モモイ達)が[鏡]とかいうツールを狙うって分かったの?」

「私は()()()()()から推測しましたが、今回の()()に参加する部活動に関わる押収品の記録を照合すれば、ユウカちゃんでもすぐ推測できるかと。

 "エンジニア部"は直近でのコンピュータ関連の開発品は無し。となれば"ヴェリタス"ですが――"会長"が手ずから押収したハッキングツール[鏡]が該当しました。

 "ゲーム開発部"の娘達が見付けたという『G.Bible』はマニュアルだそうですから、"ヴェリタス"が協力していることを鑑みればデータ媒体でしょう。()()に至った経緯としては..."ヴェリタス"所属の娘達のハッカーとしての実力で以てしても解析は叶わず、"会長"曰くヒマリ部長が開発したという[鏡]の性能を期待して奪還に来た...と、私は推測しました」

「成程ね...」

 

 ふと浮かんだ私の問いにノアはそう答え、納得する。―――私自身で調べてもいいけど、もうすぐ()()が始まるだろうから時間的余裕は無いし―――何よりノアの()()()()をよく知っているからこそ、彼女の言葉は素直に信用出来る。

 

「私からも一つ確認を...既に決まったことなので変更までは望みませんが...室内の防衛は既存のままで大丈夫ですか?」

「『押収品保管室』はこの司令室とオフィスに挟まれた場所にある。このエリアは階層の中心にあるし、セキュリティも私やノアみたいな()()()()()()()()()()()最高レベル。万が一侵入されたとしても、モモイ達では『押収品保管室』には入れない筈よ。そもそも、エレベーター以外の侵入し得るポイントにも――」

 

 

『――こちら"01(ゼロワン)"と"05(ゼロファイブ)"!屋上の警戒オッケーだよ!』

「――こちら"03(ゼロスリー)"。そのまま警戒を。作戦会議でも確認しましたが、敵性勢力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思われます。ですから、お二方には屋上へ降り立つであろう敵性勢力の迎撃をお願いします。――特に、"05(ゼロファイブ)"。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことは努々お忘れなきように」

...ちッ...はいはい、分かってますよーだ』

 

―――インカムにアスナ先輩の報告が入り、メインディスプレイの隅に投影したタワー屋上を映す監視カメラの映像を見れば、銃を携えて警戒する様に歩くアスナ先輩と彼女について行く、足取りすら気怠そうなウカビちゃんの姿が見える。

 司令室に詰めているアカネが改めて襲撃側(モモイ達)が取り得る行動の予測と対応を説明し、ウカビちゃんに釘を刺すとインカムは微かな舌打ちも捉え、渋々と言った返事が返って来る。

 

「ウカビちゃんは相変わらずみたいね...」

「はい。相変わらず隙あらばサボろうとする娘ですが、反抗されない程度に締め付ければしっかり働いてくれます。...アスナ先輩ではサボりを抑えるには向かないと思いますが、戦端を開けばウカビちゃんも――」

 

 

『――こちら"02(ゼロツー)"。タワーへ向かう()()()()と随行する車両複数台を確認。特に()()()()()()()()()。もうすぐそちらからでも視認できる筈だ』

 

―――インカムにタワーから少し離れたビルの屋上に設置した()()()()()()で警戒を行っているカリンの報告が入り、エレン達保安部の部隊が警戒する正面大通りの映像を見る。カリンの報告通り、()()()()()()()装甲車三台を引き連れる()()()()が丁度大通りに出て来る様子が見える。

 

「...あの装甲車と戦車は...!」

「装甲車は保安部が最近整備に出したもの。戦車はリカちゃんの[イビルアイΣ]ですね。[M4A1(76)W(保安部の戦車)]では正面からの撃破も、砲撃の防御も難しいですね。しかし、初動が正面突撃とは...エレンちゃん、そちらからも見えますか?」

『もうこっちからも見えてるわよ~。正面突撃なんて勇気ある娘達ねぇ。――AT班、小隊各車、射撃用意!』

 

 ノアがエレンに状況を問うとそんな返事が返り、映像でもエレンの号令一下[Mk135 SMAW]を装備したAT(対戦者)班の保安部員がランチャーを構え、[M4A1(76)W(保安部の戦車)]の砲塔が動いて砲口を[イビルアイ∑(リカの黒い戦車)]に向ける。

 

―――それでも、[イビルアイ∑(リカの戦車)]と装甲車は止まらない。

 

『もうちょっと引き付けて~。...さて、そろそろ射程に――』

 

 

 

 

 

 

―――ウィィン...

 

『――あら?』

「――え?」

「[M4A1(76)W(保安部の戦車)]の砲塔が――」

 

―――ドドォォンッ!!

 

 

『きゃぁッ?!』

『『『『グワーッ?!』』』』

 

―――突然だった。[M4A1(76)W(保安部の戦車)]の砲塔が()()()()()()()()()()の方へ向き、[イビルアイ∑(リカの戦車)]と同時に発砲する。突然の事で保安部の部隊は対応出来ずにエレン含めた半数以上が爆炎に包まれてバリケードや銃火器ごと吹き飛ぶ。

 

「なっ...何が起きたの?!」

『こ、こちら"第一戦車小隊"二号車!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()くそっ...もう一度...ダメです!車内の緊急停止操作も()()()()()()...!』

 

―――声をあげて状況説明を求めると、一輌の戦車の乗員が悲痛な声で報告を上げる。その内容が意味する事は―――

 

「...やられましたね。[M4A1(76)W(保安部の戦車)]は省力化の為に()()()()()()を始めとした自動化を施し、乗員は一名。そして...()()()()()()()()しています。その実装を主導したのは――」

 

 

 

 

 

『イタタ...いきなりやってくれるわね~...!敵勢力の降車を確認!迎撃して!生き残ったAT手は()()()()()()()()

「――リカね...!いきなりやってくれるじゃない...!」

 

―――辛うじて五体満足で無事だったらしいエレンの指揮の声がインカムに入る中、ノアが言わんとする事を察して思わず歯軋りする。

 映像では、[イビルアイ∑(リカの戦車)]がエリア内に突入して()()()()()()[M4A1(76)W(保安部の戦車)]と共に砲撃しながら走り出し、装甲車は散開して停車し、中からゲーム開発部(モモイ達)を始めとする()()()()が次々降りて戦闘を始める―――

 

 


~『ミレニアムタワー』近郊~

side-ウタハ

 

「......このビルは外れだね。センサー、カメラに感なし」

「ふむ...残る()()()()は二つか。――こちらウタハ。ミユ、そちらからは人影や怪しいものは見えるかい?」

――こちら"RABBIT4"。現在索敵中です...[Rifle, Anti-Tank, .55in, Boys(対戦車ライフル)]であれば多少目立つ筈ですが...

 

―――広告掲示仕様に扮した索敵ドローンを飛ばし、コンソールの画面で映像を確認するヒビキが作戦会議でピックアップした()()()()()()()()()の一つを確認し、誰も居ないと報告する。報告を受けて『ミレニアムタワー』近郊で一番高いビルの屋上に狙撃ポイントを構え、索敵を行っているミユに尋ねるとそんな返事が返って来る。

 

―――『02(カリン)は恐らくタワー周辺のビルや電波塔...高所に狙撃ポイントを構える筈よ。セミナー(向こう)も私達が屋上からの侵入を図ることは察するはずだから。――ミユ、貴女なら何処から狙う?』

―――『そ、そうですね...私なら...

 

―――作戦会議でのチヒロの指摘と、ミユがタワー周辺のビルや電波塔をピックアップしていくやり取りを思い返す。

 私とヒビキ、ミユの役割は"C&C"の狙撃手"02(ゼロツー)"『角楯カリン』の居場所の特定及び()()()()()()()だ。[Rifle, Anti-Tank, .55in, Boys(対戦車ライフル)]の長射程と大口径弾の火力で横槍を入れられては堪らない。カリンを見付けた場合、私が正面から戦闘に臨み、ヒビキが[ファンシーライト(迫撃砲)]で砲撃支援、ミユが狙撃で横槍を入れる体制を取る。

 

『――こちら"RABBIT3"。()()()()()()()を確認!"戦闘部隊"はこれから交戦を始めるよ!そっちの首尾はどう?』

「――こちらウタハ。こちらはまだ――」

 

 

――こ、こちら"RABBIT4"...!カリン先輩を発見しました!タワーよりほぼ真南、一二〇〇メートルのビル屋上です...!

「タワーからほぼ真南一二〇〇メートル...あのビルかな......居た...!こっちでもカリン先輩の姿を確認!」

 

―――オペレーターを受け持つモエにまだ見付かっていないと報告を挙げようとした瞬間、ミユからカリンを見付けたと報告が入る。ヒビキがすぐにドローンを飛ばすと、画面上に映るビルの屋上でうつ伏せで[Rifle, Anti-Tank, .55in, Boys(対戦車ライフル)]を構えて銃口をタワー方面へ向けている様子が見える。

 

「――こちらウタハ。"()()()()"――カリンを見付けた。これより()()()()に移る」

『お、見付かったんだね!――"RABBIT3"了解!』

 

 モエに改めて報告を挙げ、通信を切る。

 

「位置取り的にはタワー正面の大通りの警戒も兼ねているみたいだね。ビルの高さもミユが居るビルと同じ位かな」

「少し手間取ったが、見付かったなら作戦通りに行こうか。――ミユ、そちらの位置取りはどうかな?」

――こちらもポイントを変えました。支援狙撃は可能です...!

「分かった。――さて、()()()と行こうか」

「――了解」

 

 ミユの配置完了も確認し、カリンが居るビルに向けて走り出す―――

 


~『ミレニアムタワー』近郊裏路地 [CMH-MT006]埋設ケーブル点検口~

side-ハレ

 

「――マキ、見付かった?」

「うーん、中々......あ、これ...じゃないや。チヒロ先輩はこの点検口で()()()()()って言ってたけど...うーん...これじゃないし、こっちでもない...」

 

―――[アテナ3号]で周囲を警戒する傍ら、[CMH-MT006点検口]のハッチを開けて何十本も並ぶケーブルやコードを掻き分けて()()()()()を探すマキに状況を尋ねるとそんな返事が返って来る。

 

―――『現"セミナー会長"の体制になって以来、タワーの司令室から自治区全域のセキュリティやシステムへのアクセス、指令が可能になっているわ。例えば自治区境界ゲートに不審車両が近付けば、タワーからでも即座に封鎖できるレスポンスの速さも特徴ね。

――でも、タワーから全域にアクセスできることは、()()()()()()()()()()()()()ことの裏返し。無論、"セミナー"もそれを把握して強力なセキュリティを構築してる。正面から挑めば私でも厳しいでしょうね――()()()()()()()()()()()()だという事実がなければ、だけど。コタマ、ハレ、マキ。貴女達には――――』

 

―――作戦会議でチヒロ先輩が私達に課した役割を思い返す。記録として、以前チヒロ先輩が"セミナー"からの依頼でセキュリティ更新を請け負った事は知っていた。でも―――その依頼の中で()()()()()()()()()()()()()()()のは初耳だった。"ヴェリタス"設立の動機も合わせて考えれば、やっぱりチヒロ先輩も今の"セミナー"に対して()()()があるのだろう。

 

 [CMH-MT006点検口]は『ミレニアムタワー』へと合流する通信回線系統のケーブルやコードを点検するハッチの一つだ。チヒロ先輩曰く、このハッチを通るケーブルやコードの中に()()()()()()()()()()()()()()()を仕込んでいるらしい。そのケーブルは―――

 

 

「――あった!よーく見ると確かに"ヴェリタス"の刻印があるからこのケーブルだよ!」

 

―――マキが声をあげ、ハッチの中に突っ込んでいた上半身と共に一本のネット回線ケーブルを引っ張り出す。

 

「それで、このケーブルの接続部に...これだね!――接続オッケー!」

「――こちらコタマ。()()()()()への接続完了、これより侵入を試みます」

『HQ了解。作業に集中し過ぎて通行人に通報されて見付かる、なんてことはないように警戒は緩めないようにしなさい。侵入と撹乱は貴女達に任せるけど、もしセミナー(向こう)の防御を破れないなら言ってちょうだい』

 

 コタマ先輩がHQ――"ヴェリタス"の部室だ――に報告し、チヒロ先輩が報告を受け取り、仮に私達では侵入が難しい場合の指示も受け取る。

 

「――[アテナ3号]、そのまま周辺警戒。この路地に人が入って来たら教えてね」

〈――イエス、マスター〉

「さーて、一発かまそうか!」

「――リンク開始」

 

 [アテナ3号]に周辺警戒を指示し、私達はそれぞれの端末をケーブルのポートに繋ぐ―――

 

 


~『ミレニアムタワー』正面広場~

side-アヤ

 

『――第一段階、"()()()()()()"及び"()()()()"、"()()()()"成功!第二段階、"()()()()()()()()()()()!"に移行するよ!"戦闘部隊"は予定通り()()()()()ヨシ!』

「久方ぶりの実戦だが――[サンダーアイズ]の改善点も洗い出したいんでな。ちょいと付き合え!」

「ここまで上手く奇襲が嵌るなんてな...!よし、行くぞ!弾幕はパワーだぜ!

「――"RABBIT2"、行きますよ!」

「"RABBIT2"了解!あぁもう、なるようになれ!」

「ただいま『ミレニアムタワー』!ただいま私の古巣!タカネさんが帰ってきたよヒャッハー!」

 

―――"セミナー保安部"が構築していた防衛陣地を突破し、[イビルアイ∑]が[M4A1(76)W(保安部の戦車)]を()()()()()暴れ出す中、オペレーターを受け持つモエさんの号令一下マガンさんやマリサさん達"戦闘部隊"も散開して戦闘を始める。

 

「私達はこのまま待機でいいんだよね?」

「現状はこのままでいいでしょう。"ヴェリタス"が”セミナー"のシステムのある程度の攪乱に成功したら――私とお二方の出番ですよ」

 

 装甲車の陰に潜み、ミドリさんと共に[H&K G3(アサルトライフル)]を構えて警戒するモモイさんの問いに頷く。

 

―――『"戦闘部隊"の目的はあくまで"セミナー"側が展開する部隊の陽動と戦力漸減としましょう。恐らく我々がタワー屋上からの侵入を図ることには気付くと思いますが、その迎撃を図る戦力をできる限り減らすことが狙いです』

 

―――作戦会議でミヤコさんが挙げた提案を思い返す。幾度かの取材を通して"C&C"エージェントの精鋭部隊としての強さはよく知っている。故に、本命である()()()()()()()を図る事にはセミナー側(あちら)も気付くだろう。―――しかし迎撃してくるなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――"セミナー"側の戦車の操作を乗っ取った上での奇襲。狙撃手への攻撃による横槍阻止。システム侵入からの攪乱。"セミナー"メンバーの対応力は未知数だけど、初動で一気にこれだけ仕掛けられては指揮や対応能力も飽和するでしょうね」

 

 [バレットパパラッチ(相棒)]を構えて敵の接近を警戒しつつポツリと呟く。―――現在の"セミナー"には、リオ"会長"以下ユウカさんやノアさんを始めとする優秀な人員が揃っている。しかし、同時多発的にそれぞれ異なる方面から状況を変えられては思考が飽和して一時的に身動きが取れなくなるものだ。だからその間に―――こちらは()()()()()()()()()()()()

 

『――こちら"RABBIT3"!"()()()()()"成功!第二段階"()()()()()()()()()()()!"を実行に移すよ!』

「――了解です。モモイさん、ミドリさん、行きますよ」

「分かった!...空を飛ぶなんて初めてだから、ちょっと緊張するね」

「作戦の本命は私達。失敗しちゃったら『G.Bible』は開けない...頑張らなきゃ...!」

「あまり気負い過ぎないように。私も屋上で一緒に戦ってサポートしますから。――では、失礼しますね。...っしょっと...!」

「わわ...!」

「わっ...!」

 

―――モエさんから"()()()()()"――ハレさん達のタワーシステム侵入と攪乱の事だ――成功の報告が入り、二人を左右の腕それぞれに抱え上げる。

 

―――『屋上にも迎撃戦力は配置されるだろうから大きな効果はないと思うけど、屋上への侵入はハレ達のハッキングでタワーのレーダーやカメラが使えない状況になったタイミングでお願いするわ』

 

―――作戦会議で決められた私達の動きを思い返す。"セミナー"側の対応力を飽和させる為のハッキングはタワーに備えられたレーダーやセンサー、カメラと言った監視機器の制圧も目的だ。私達が屋上に向かう事に気付き、屋上に増援を送られてしまってはモモイさん達の侵入が厳しくなる。故に、屋上に予め配置された戦力だけを相手取れる様にハッキングの成功に合わせて此方も動く。

 

「アヤ、ホントに大丈夫なの?」

「えぇ、平気ですよ。お二方は小柄ですしね。――では、行きましょう。目を瞑り、口は開かないようにお願いしますよ」

 

 モモイさんの気遣いにそう答え、二人が目を閉じた事を確認し、姿勢を低くして背中の翼を広げ―――

 

 

 

 

―――バサッ...!

 

「~~!」

「...!」

 

―――タワー屋上を見据えて飛び立つ。二人が強烈な風で身体を縮こませて耐える様子を確認しながら飛んで行く―――

 

 

~『ミレニアムタワー』屋上~

 

―――スタッ...!

 

「――到着しました。大丈夫ですか?」

「...うん、大丈夫。風がすごくて目を開けてられなかったけど...ここが...」

「...私もなんとか大丈夫、です...ここが...」

 

 高度が高度故に少し強い風が吹くタワー屋上に降り立ち、二人の状態を確認してから降ろし、二人も屋上を見回し―――

 

 

 

 

 

 

「――ふふっ、アカネが言ってた通りに来たね!...ん~?あの翼...何処かで見たような...ま、いっか!――こちら"01(ゼロワン)"、予想通り屋上に敵が来たよ!」

「...本当に来たんだ。こっちも備えてるって分かってて来るなんて、ね...ちっ...警戒言い訳にしてサボりたかったのに...

「...あやや、よりにもよって"C&C"ですか。対応を考えれば精鋭を置くのは当然ですが...」

「誰かしら迎撃しに来るのは覚悟してたけど...まさか"C&C"が居るなんて...!」

「二人だけみたいだけど...それでも精鋭の"C&C"が...!」

 

―――メインの一際大きな換気口の裏側からメイド服の生徒二人―――"01(ゼロワン)"アスナさん、"05(ゼロファイブ)"ウカビさんが姿を現すのを確認し、そう呟きながらモモイさん達と同時に[バレットパパラッチ(相棒)]を構え―――

 

「――あ、ちょっと待って!アカネが貴女達と話したいみたいだから、ホログラム出すね」

 

―――ブゥン...

 

『――ごきげんよう、クロノスの新聞記者、射命丸アヤさん。そして"ゲーム開発部"の才羽モモイさん、ミドリさん。"C&C"、コールサイン"03ゼロスリー"室笠アカネでございます』

「――どうもお久しぶりです、アカネさん。先日の取材はありがとうございました」

「...ど、どうも...」

「...どうも、初めまして」

 

―――アスナさんがそう言って銃を降ろしてヘッドセットに触れれば、二人の前に立つ様にアカネさんのホログラムが現れ、カーテシーで挨拶する、それに対して私達も一度銃を降ろして頭を下げる。

 

『ふふ、翌日に掲載された記事のおかげでC&C(私達)への依頼も増えましたので、こちらこそ感謝しております。――さて、挨拶はここまでとしまして。貴女方は現在、ミレニアム行政組織たる"セミナー"を攻撃するという前代未聞の暴挙に出ております。

 動機はどうあれ、ミレニアムに所属する生徒が行政組織を攻撃するなどあってはならない事態。――即刻攻撃を中止して退くのであれば、罰則は多少軽くなるでしょう。今後の学校生活を少しでも平穏に過ごしたいのであれば、降伏をお勧めいたします』

 

 アカネさんは挨拶を切り上げ、眼鏡の下の瞳を少し細めて降伏勧告を行う。

 

「――今更退けないよ!『G.Bible』は私達"ゲーム開発部"の()()回避の為に必要なんだ!それを開く為の[鏡]を取り返すまで攻撃の手は緩めないよ!」

「...本当はこういうことはしたくなかったんです。でも...()()までに残された時間も少ないので、こうして直接取り返すしか道はないんです。ですから――私達は退きません。行く手を阻むなら、打ち倒して突破します...!」

「――『シャーレ』は現在、"ゲーム開発部"の依頼を遂行中でしてね。今回の()()が依頼達成に繋がるのであれば、我々も支援は惜しみませんし――ここまで来たんです。退くつもりは毛頭ありません」

 

―――そんな降伏勧告に対してモモイさんとミドリさんは一歩も引かずに勧告を拒否し、私も退くつもりは無いと宣言する。

 

『...左様でございますか』

 

 私達の返答を聞いたアカネさんは瞑目し―――

 

 

 

 

 

 

『――ならば、私達も請け負った依頼を遂行するまでです。"C&C"、"01(ゼロワン)"、"05(ゼロファイブ)"。()()()()()()()()()()()()を開始してください』

「りょーかい!任務を開始するよ!」

「...はぁ、面倒臭い...大人しく退いてくれればよかったのに...よっぽど、痛い目をみたいってことだね...!私のサボrゲフンッ!...()()()()()をフイにした鬱憤はアンタ達で晴らす...!」

 

「――私が前衛を受け持ち、できる限り引き付けます。隙を見てお二方は侵入を。ポイントは覚えていますね?」

「うん、バッチリだよ!でも、最初は私達も一緒に戦うよ!ミドリ、いつも通りサポートお願いするよ!」

「うん、分かった。――相手は精鋭二人、気を付けて...!」

 

 

―――眼差し鋭く目を開いたアカネさんの指示を受けて"C&C"のお二方は銃を構え、私達も銃を構える。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
米軍で配備された[M4A1 Shaman]に[76 mm M1 cannon]を搭載し、弾薬庫を湿式に換装して誘爆リスクを軽減したモデル




ということで、セミナー襲撃の開幕でした。

このまま戦闘に移ると二万字も見えそうなので、本格的な戦闘は次回を待て!
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