Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
遂にミレニアムプライスです
~『ミレニアムプライス』会場~
side-"先生"
ワイワイ...
―――観覧席を埋めていく住人や、『ミレニアム』内外の生徒達の喧騒が会場に響く。私達はその喧騒から少し離れた、ステージ側面二階の
ここから全体を見渡せる観覧席の奥では、"セミナー"と『クロノス』所属らしき娘達がそれぞれカメラを設置してライブ中継、撮影の準備を行っている。
「...この時が来ましたね。私も、不思議と緊張しています」
「"私も同じだよ。提出まで寝る間も惜しんで手伝ったから、まるで我が事みたいに思ってしまうんだろうね"」
緊張で表情を少し強ばらせているミヤコの言葉に頷き、『TSC2』提出までの
―――
―――でも、ありがたい事に私達『シャーレ』以外にも、『TSC2』開発を手伝ってくれる娘達が何人か来てくれたおかげで負担や疲労は少し和らいだ。
―――『モモ、ミド、皆お疲れー!ちょっと時間が空いたから手伝いに来たよ!』
―――『
―――"ヴェリタス"からはマキとマガンが部室を訪ねて来て、ユズ、モエでも追い付いていなかったデバッグの殆どを受け持ってくれた。
―――『やぁやぁ、進捗はどうだい?"部長"命令でちょっと手伝いに来たよ。まぁ、私達はプログラミングは不得手だからそっち方面じゃ力になれないけど』
―――『
―――"エンジニア部"からはニトリとサナエが部室を訪ねて来て、テストプレイや物資の買い出しを受け持ってくれた。
―――『...こりゃ随分大所帯なこって。そこの
見た所――エナドリやらエナジーバーの類しか食ってねぇな?眠気飛ばしと即座の補給にゃ丁度いいだろうが...ちったぁちゃんとしたものを食わねぇと
―――手伝いの為の来訪者で驚くべきは、ネルが訪ねてきた事だろう。あの戦闘の後で私達の事情を知った様で、そう理由を挙げて中半無理矢理に給湯室を占拠し――生鮮食品や調味料は殆ど無かったから私やアリス、ハタテが買い出しに走らされたけど――所謂
私達『シャーレ』だけじゃなく、これまで"ゲーム開発部"が得た繋がりが多くの支援を齎してくれた。おかげで―――
「提出は結局
「"私達だけじゃなく沢山の娘が手伝ってくれたんだ。『TSC2』開発に携わった思い入れ補正は無視できないけど...大丈夫。きっと受賞できるよ。それに――"」
観覧席の一角に並んで座っている"ゲーム開発部"の面々へと目を向けながら、ミヤコの言葉にそう返し、スマホを操作してある画面を開く―――
★★★☆☆
思っていた以上に楽しめた
『Project Stories』と『TSC』をプレイしていたのでまさかの続編リリースに戦慄していたが、二作品の様なクソゲーではなくなっていてクリエイターとしての成長を感じられた。一部の不便なUIやシビアな操作に思うところはあるが、過去二作品よりは受け止めやすくなったシナリオ、キャラ背景の狂いっぷりにはポテンシャルを感じられた。
★★★★☆
これがあの『TSC』を作った所の作品ってマジ?
『TSC』がクソ過ぎて、同タイトルに"2"のナンバリングがされていて戦慄したが、拙い所はあるもののレトロチックなRPGとしてプレイできるクオリティだったとは驚いた。シナリオのトンチキっぷりも緩和されたし、普通にゲームとして遊べるようになったからこのトンチキなシナリオが『TSC』シリーズの味になりそうで今後に期待できる。
★★★☆☆
クソゲー卒業おめでとう
しがないクソゲーハンターとしてはクソゲーから脱皮したのは残念だが、ゲーマーとしてはこれからに期待できるタイトルだと思う。
「"――『Jeung-gi』のレビューもいい感じだ。審査員の選考にこれが加味されているかは分からないけど..."」
「『かべちゃんねる』でも少し話題になっていましたね。こちらでも結構いい評価が多いです」
ミヤコもスマホを操作し、『かべちゃんねる』のあるスレを開いて私に見せる―――
【RPGは】かべちゃんRPG総合スレ Part413【いいぞ】
475:名無しのゲーマー ID:Or8TIi5cS
これからに期待できるタイトルだと思ったので紹介する。
リンク↓
[Jeung-gi] Tales Saga Chronicle 2
476:名無しのゲーマー ID:Zk7AQ9+Pc
>>475
TSCの後継か?スレチだからクソゲー発掘隊のスレにあげろよ
477:名無しのゲーマー ID:mrpuRzmLD
>>476
とりあえずダウンロードしてプレイしてみろ。容量は少ない方だし、実際にプレイすれば何故このスレにあげられたか分かるはずだぞ。
478:名無しのゲーマー ID:+Bl3TQ+Nw
>>475
まさかクソゲーがこれからに期待できるタイトルに脱皮するとは思わんかった。開発経験が浅いが故の拙さは所々にあるけど、RPGが大好きなんだってクリエイターの想いがよく伝わってきた。
479:名無しのゲーマー ID:/fCcMXtPg
シナリオとキャラの設定のトンチキっぷりは前作と比べると緩和されたけど、これくらいならシリーズとしての味になりそうだから開発者には頑張ってほしい所やね。
480:名無しのゲーマー ID:AbefVyB7a
前作で多用された上にクソだったQTEシーンは今作では重要な場面に絞られているし、ドットグラフィックでも没入感がすごい。相変わらず入力判定はシビアだし、失敗するとバッドエンド行きの場面もあるけど、ただのRPGにはしたくないって開発者の意思が伝わってくる。
481:名無しのゲーマー ID:6tu4Iuhaw
『クロノス』"新聞部"の記者が記事あげてたから紹介しておくぞ。
文々。新聞↓
【ゲーム】将来性あるRPG『Tales Saga Chronicle 2』
花果子念報↓
【ゲーム】『Tales Saga Chronicle 2』は王道を往かない
482:名無しのゲーマー ID:vKsjtEn9z
>>481
『花果子念報』が珍しく新しめの話題出しててビックリ。本当に記事は読みやすいんだけどなぁ。
483:名無しのゲーマー ID:d5uA08gx+
>>481
記事リンク乙。『文々。新聞』、TSC2のストアリリース当日に開発者インタビューしてて草。相変わらず最速だなこの記者。
484:名無しのゲーマー ID:eawOa3oof
>>481
『クロノス』の有名な"ダブルスポイラー"が同じ話題を出すのもちょっと久しぶりじゃね?『花果子念報』はこうやって新しい話題を記事にしていけば『文々。新聞』といい勝負ができると思うんだが...
―――ミヤコの言う通り、掲示板でも高評価が多い。掲示板の評価を審査員が加味するかは分からないけど、『TSC2』をプレイ人達は高評価を挙げている。これならもしかしたら―――
『――お集まりの皆様!遂にこの時が来ました!我がミレニアムに集う数多の技術の粋を競う"ミレニアムプライス"が、今年度も開催されます!司会は私、"エンジニア部"一年生"豊見コトリ"が務めさせていただきます!』
―――そんな中、ステージ袖からコトリが姿を現し『ミレニアムプライス』開催を宣言する。
~"ゲーム開発部"部室~
side-"先生"
「――お姉ちゃん、提出フォーマットはできたよ!後は
「もうちょっと待って!...誤字なし新たなバグなしデータ破損なし...」
―――ユズのパソコンで提出フォーマットを確認していたミドリがモモイに声を掛け、モモイは自身のパソコンでデータを確認しながらそう答える。
「もうちょい...後ちょっと...!――よし、出来た!ユズ、転送するよ!」
「――転送確認...!後は添付して...うん...フォーマットに問題なし――これで...!」
「て...提出完了...!」
「やったー!間に合ったー!」
「やった...!何とか間に合った...!」
「ぱんぱかぱーん!提出クエスト達成です!」
「何とか間に合ったか...はぁぁ...一気に疲れが吹き出してきたぜ」
―――画面に
「――提出完了おめでとうございます。私達のサポートもその一助になれたなら幸いです」
「期限の時間
「くひひ、提出できたならいーじゃん!今は無事に提出できたことを喜びなよ、サキ!」
「お、おめでとう皆...!」
「――
「皆、おめでとう。私はガッツリ最初から関わってはいないけど、それでも少し手伝った身としては嬉しいわ」
「"皆、よくやったよ!
ミヤコ達"RABBIT小隊"、アヤとハタテに続いて私も"ゲーム開発部"の面々を労う。―――そう、
「...次は、
―――モモイ達に向き直ったマリサの言葉に、モモイ達は一転表情を固くする。
「――『ミレニアム』外部より招かれた審査員による、
「"『ミレニアム』
「そうだったんだ...私達、『ミレニアムプライス』提出は今回が初めてだからさ。流石新聞記者...アヤは詳しいね!」
アヤの言葉にモモイと揃って関心した言葉を返す。―――
「過去に取材経験がありましたから。――しかし、選考中の一週間。提出した側にできるのは受賞を祈ること位でしょう。この場に居る方々は大体
アヤがそんな提案を挙げると、私達の間に疲労疲弊に満ちた雰囲気が漂い始める。―――期限までに提出出来るか。その不安と緊張が無くなった事で、仮眠や休憩で癒し切れなかった疲労が一気に湧きあがって来た様だ。
「あぁ、アヤに賛成だぜ。ちゃんと
「――その前に!せっかく出来上がったんだし、『Jeung-gi』に『TSC2』を
―――モモイが唐突に挙げた提案。疲れを隠せていない表情で賛意を示したマリサも含め皆目を点にしてモモイを見つめる。
「...お姉ちゃん、忘れたの?ユズちゃんは『Project Stories』をアップロードして、
「アップロードする前からそんな悲観的な見方はダメだよミドリ!目的は『ミレニアムプライス』への作品提出だけど――
「確かにそうだが...ユズは作ったゲームが酷い評価を受けてトラウマになってる。それを考えればアップロードは――」
「...や、やろう...!確かに『Project Stories』はあんな酷い評価を受けたけど...『TSC2』は、"先生"や『シャーレ』の皆、他にも沢山の人が手伝ってくれた。だ、だから...きっと酷評ばかりにはならないはず...!それに――モモイの言う通り、
―――ミドリとマリサが懸念を挙げるけど、ユズは意を決した表情で『TSC2』を『
「――そうか。ユズがやろうって言うなら、私は止めないぜ」
「...ユズちゃんがやりたいなら、私も止めないよ」
「アリスにとって『TSC』は多くの学びを得られた神ゲーでした。アリス達や皆で力を合わせて作った『TSC2』は――間違いなくいい評価が得られる筈です!」
マリサがフッと笑って賛意を示すと、ミドリとアリスも続いて賛意を示す。
「...っ...皆、ありがとう...!じゃあ、早速準備して...!」
マリサ達が揃って賛意を示した事に感極まった様に息を吞んだユズはお礼を言い、自身のパソコンに向き直る。
「――テストプレイは少しやりましたが、『
「ついでにちょっとした記事でも書こうかしら。新聞記者として贔屓はできないけど、読んだ人に興味を持ってもらえそうな内容を書く自信はあるわよ」
「"選考期間は一週間。ボリューム的には一周目クリアまでは行けるだろうからいい考えだね"」
アヤとハタテの提案に頷き、私も一週間の間にダウンロードしてプレイしてみようと思いながらユズの作業を見守る―――
~『ミレニアムプライス』会場~
side-ミヤコ
『――続きまして第七位!我が"エンジニア部"より"白石ウタハ"部長の作品[光学迷彩下着セット]がランクインです!身に付けていてもその下の素肌が見えてしまう為、着ているのか着ていないのか分からないというエキセントリックな作品ですが――――』
「"...これまた凄い作品がランクインしたね..."」
「光学迷彩...
―――『ミレニアムプライス』が始まって少し時間が進み、
光学迷彩という高度な技術を態々下着に利用するとは技術の無駄遣いと感じてしまうけど―――所謂
『――――続きまして第六位!こちらは"トレーニング部"”よりスミレ部長の作品がランクイン!テーマは――――』
コトリさんは続いて六位にランクインした作品の発表に移る―――
~『ミレニアムプライス』会場 観客席~
side-マリサ
『――皆様、お待たせしました!遂に第一位の発表です!前回は"セミナー"書記であるノア先輩より提出された[思い出の詩集]が、睡眠導入剤としての高い効果を評価されて見事一位を獲得しました!果たして今回は、どのような作品が選ばれるのか?!』
―――会場が薄暗くなり、スポットライトが揺れ始めると同時にドラムロールが鳴り始める。
「お願い...!ここまで発表されなかったんだから、ここで一位を取れればユウカも...!」
「お願い...!ここで受賞できなかったら私達は...!」
「お、お願いします...!『TSC2』を...!」
「アリス、
「頼むぞ...あんな
私含め皆手を組んだり目をギュッと閉じたりして『TSC2』のランクインを必死に祈る。
―――第二位までにランクインしたのは、"エンジニア部"や"新素材開発部"、"セミナー"やら有名所の部員が提出した作品ばかりだった。一部はなんでそんなものを作ったのか理解出来ないものもあったが、なるほどランクインすると納得出来る作品ばかりだった。
だが―――ここまでで『TSC2』の名前は出ていない。
『第一位は――!』
『"ヴェリタス"より"小鈎ハレ"先輩および"幽玄マガン"先輩の連名で提出された[エナドリメーカー]です!』
「...え?」
「...えっ...噓...」
「そ、そんな...」
「『TSC2』が...呼ばれませんでした...」
「...噓だろ...」
『おめでとうございます!トロフィーと副賞の贈呈を行いますので、提出者のお二方はご登壇をお願いします!さて、こちらの[エナドリメーカー]は自分が好きなフレーバーの材料を投入することで好みのエナドリを作ることができる優れものです!欲しいフレーバーが売られていない時にこれを使えば、モチベーション向上も期待できます!更に――――』
―――
―――『G.Bible』を求めて『廃墟』を探索し、見付けたはいいがセキュリティや暗号はすぐには解読出来ず。"ヴェリタス"が作った[鏡]であれば解読出来ると、[鏡]を押収した"セミナー"を
―――だが、それでも今回の『ミレニアムプライス』審査員の
『――――改めて、第一位の受賞おめでとうございます!――さて!前回まではここで終幕となりますが...今回は、審査員の皆様から
―――コトリのそんな司会が聞こえ、顔を上げるとステージの袖から
『――こうしてステージに直接立つのは今回が初めてでしょう。皆様初めまして。我々が今回の審査を受け持ちました。まずは――今回、ミレニアムの技術の粋に触れる機会を頂けたことに感謝を申し上げたい』
代表らしき横長頭の
『――さて。ミレニアムプライスはこれまで、生徒の皆さんの才能と能力が生み出した作品に対し、
頭を上げると、『ミレニアムプライス』の開催理念について話し始める。最早
『――ですが。例年以上に多い提出作品の中で、
―――
『よって――今回我々は主催である"セミナー"に掛け合い、
『――我々は、"ゲーム開発部"提出作品『Tales Saga Chronicle 2』に贈ります』
―――代表の宣言と共に、背後のスクリーンに『
『これはまさかまさかの受賞です!
「...呆けてないで行くぞ」
「...あ、うん!ほらミドリ!ユズも行くよ!」
「う、うん...!」
「ほ、本当に...『
「やりました!ランキングではありませんが、それでも
コトリが『TSC2』について説明し始める中、私と同様にまさかの発表で呆けていたモモイ達を促して席を立ち、ステージに登壇する。
『――――ということで、レトロチックなゲームにも未来への可能性があるとして特別賞に選ばれました!おっと、"ゲーム開発部"の皆さんが登壇しましたね!それでは、
「...ユズ、トロフィーはお前が受け取るへきだ。副賞は私が受け取ろう」
「っ...わ、分かった...」
―――ステージに登壇すると、ちょうど説明を終えたコトリが私達に気付き、進行を合図に、運営スタッフなのか"セミナー"らしき生徒二人がステージ袖から出て来て審査員の代表と獣人の審査員に、虹色に光る『ミレニアム』校章のホログラムが浮かんだトロフィーと、副賞らしき包装された少し大きな箱を渡す。
ユズは私の提案に頷き、緊張でガチガチなぎこちない動きながらも審査員の前に歩き出し、私も後に続く。
『――"ゲーム開発部"提出作品"Tales Saga Chronicle 2"。過去の経験や懐かしさが未来への可能性を拓く一例を示したことを評価し、ここに特別賞を授与します。――おめでとう』
「...っ...あ、ありがとうございます...!」
「――『
審査員の代表が
『"ゲーム開発部"の皆さん、おめでとうございます!それでは――特別賞を受賞した"ゲーム開発部"の皆さんに拍手を!』
「...や...やったんだ...本当に私達は...!」
「...やった...!私達、やったんだ!」
「うん...!これで
「ぱんぱかぱーん!メインクエスト達成です!」
―――コトリの音頭で会場に拍手が響き渡る。コトリや審査員達も拍手を送り、モモイ、ミドリ、ユズが感極まった様に会場を見回し、アリスが一際大きな動きで万歳して
「"...!"」
「...!」
―――少し遠いが、私の視線に気付いた二人が微笑みながらサムズアップする反応が見える。
―――これで、"ゲーム開発部"の
「...ありがとな、皆」
ポツリと呟き、会場に満ちる拍手を一身に受ける―――
ということで、無事廃部回避!次回、パヴァーヌ編前半の区切りです。