Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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アビドス編、はーじまーるよー



Folder02~砂漠の抵抗者達(Desert Resistance)
File4-Ab.~砂漠の世界の片隅へ~


~『アビドス高等学校』自治区上空 輸送ヘリ機内~

side-"先生"

 

「"...見渡す限りの砂漠、砂に埋もれた街...これが『アビドス高等学校』自治区なんだね"」

「嘗ては『トリニティ』、『ゲヘナ』、『ミレニアム』を超える規模のマンモス校だったそうですが...SRT(私達の学園)で保有していた地図が()()()()()()()()()()()()()()()()とは」

「こりゃすごいねー。地図だとこの辺りは住宅街なのに、現実は電柱か屋根の一部が点々と突き出ているだけの砂漠...陸路だったら迷ってたかもしれないねー」

 

 私達が乗るヘリの窓から見下ろせる一面砂漠の景色を眺めながら呟くと、同乗している"RABBIT小隊"小隊長のミヤコがスマホを見ながら困った表情を浮かべる。その隣ではモエがスマホと窓から見える景色を見比べながら驚いた表情を浮かべている。

 


要請書

要請件名:補給及び救援物資の供給

要請者:アビドス高等学校 一年生 奥空アヤネ

要請文

 私達が所属する『アビドス高等学校』自治区は現在、深刻な状況にあります。私達"廃校対策委員会"は状況解決の為に弛まぬ努力を続けていますが、その努力に必要な物資が枯渇寸前となっています。つきましては、添付したリストの物資の供給をお願い致します。尚、外部より自治区へ入る事が可能な陸路は殆ど遮断されている為、空輸を推奨します。

 


 

―――"RABBIT小隊"を指揮下に迎え、一昨日から本格的に始まった『シャーレ』の仕事。部室のパソコンに次々届く要請の中で気になった、『アビドス高等学校』という学校からの要請文。多くが態々『シャーレ』でやるものではない小規模なものか、学校で止められたからシャーレ(こちら)に許可を求めて送って来たであろうとんでもないものばかりの中で目立った―――切実な要請。

 私はこの要請を受ける事にし、"連邦生徒会"に物資の輸送とヘリ借用の許可を求めた。対応してくれたリン曰く『態々連邦生徒会(こちら)に許可を仰がずとも、シャーレ(そちら)()()()()()()であれば自由に、何でもできますよ?』との事だったけど、緊急でも無ければそういう事はしたくない。

 兎も角"連邦生徒会"の許可を受け、『SRT』からシャーレ()の指揮下に入ったミヤコ達と話し合い、リストの中で特に緊急で必要になりそうな物を選んで(リストの中には『ん、最新のロードバイク』とか『おじさん用のクジラさんの抱き枕』とかそれは緊急か?なんてものもあったけど)輸送ヘリに積み込み、ミヤコ達"RABBIT小隊"を連れて『アビドス高等学校』へ向かっている。リストの物資全てを運ぶのは空輸では限界だった為、アビドスの生徒達(向こう)が認めてくれるなら毎日一便ずつ空輸で供給していこうと考えている。

 

「それに、気になることがあります。要請書に記されていた『アビドス高等学校』の住所ですが...自治区内でもかなり隅の方になっているんです。空から俯瞰すると、()()がある筈の自治区中心部がすっかり砂に埋もれていますから...」

「...中心地が砂漠の下、か。"廃校対策委員会"って組織も気になるな。各校自治区の統治を担うのは大概"生徒会"かそれに相当する組織の筈だ。この一面の砂漠を見れば()()も現実味があるが...」

「"これは想像以上に深刻な状況かもしれないね..."」

 

 ミヤコとサキの言葉に頷き、表情を硬くする。『シャーレ』として初の仕事は想像以上に大変になりそうだ。―――でも、大変だからと言って諦めるつもりは毛頭無い。顧問として、出来る限りの手助けをしよう。

 

『――間もなく目的地です。シートベルト着用をお願いします』

「"もう着くのか...思っていたより速かったね"」

「住所の位置的には『アビドス』の隅の方ですから。外部から『アビドス』に入る分には、距離が短くてありがたいですね」

「空路じゃないと移動が厳しいってのは不便に思うけどな。一体どうしてこんな砂漠が広がっているのやら...」

「『アビドス高等学校』――嘗ては今の三大校を超える規模だった学校の今はどんなものか、楽しみねー」

 

 輸送ヘリのパイロットのアナウンスが聞こえて来て思考を止め、私達はシートベルトを締める―――

 


 

~アビドス高等学校 校庭~

 

―――ガラッ...

 

「では、サキさん達は荷下ろしと運搬をお願いします。私は"先生"と共に挨拶に行きますので」

「了解。モエ、ミユ、行くぞ」

「はいはーい」

「り、了解...」

 

―――ヘリが着陸し、ミヤコがドアを開けて"RABBIT小隊"が降りたのに続いてヘリから降り、ローターの回転で生じる砂煙の中、持って来た物資の荷下ろしの為にヘリの後部に向かうサキ達と別れ、ミヤコと共に校舎に―――七人の生徒らしき人影が並んで待っている所に向かう。

 

―――校庭には少しボロボロの土嚢を積上げたものや、何かが爆発した黒焦げの窪みが点在している。どうやら平和な学校では無さそうだ―――そう思いながら生徒達の前で足を止める。

 

 

「"――連邦捜査部『シャーレ』。『アビドス高等学校』廃校対策委員会の要請に応えて、物資を持って来たよ。私は『シャーレ』の顧問、気軽に先生と呼んでね"」

「『SRT特殊学園』、現在は『シャーレ』指揮下にある"RABBIT小隊"小隊長『月雪ミヤコ』です。――こちらが()()輸送した物資の目録になります。それから、下したものを倉庫などがあればそちらへ運びたいのですが」

「うへ、ありがと~。――『アビドス高等学校』三年生、"廃校対策委員会委員長"『小鳥遊ホシノ』だよ~。...まさか()()()()持ってきてくれるなんてね。おかげで()()()()()にならずに済みそうだよ~。倉庫はすぐ近くだけど、一応案内を付けておくね~。――ユメ先輩、お願いできますか?」

「おっけ~任せて!」

 

 ミヤコから目録を受け取った、ホシノと名乗った生徒は何処か眠たげな表情でにへらと笑いながら私とミヤコを見て―――私に()()()()()()()()()を向ける。

 ホシノの後ろに並ぶ生徒達をチラリと見れば、歓迎する様な視線は一人も居ない。戸惑っている視線、疑念を隠さない視線、何か別の事を考えていそうな視線...そしてユメと呼ばれた生徒も、サキ達の下に向かおうと私とすれ違った時にチラリと向けた目線は決して良いものでは無かった。どうやら私を―――()()()()()()()()()()様だ。

 

「"空輸だから、君達が挙げたリストのもの全ては持って来れなかったけどね。とりあえず、一ヶ月位は持つ弾薬と食糧、武器の整備部品、後は日用品その他も運んで来た。詳しくは目録を見てね"」

「分かったよ~。...折角来てくれたし、中でおもてなしするね~。校内はちょっと砂が入ってるけど、ある意味アビドス(ここ)()()みたいなものだから我慢してくれると嬉しいな~。さ、ど~ぞ~」

 

 ホシノはそう言って背後の校舎の玄関に向かって歩き出す。

 

「..."先生"、どうやら歓迎されていない様子ですね」

「"何か()()()()()()()()()()()があるのかもしれないね。...ともかく、入ろうか"」

 

 小声でミヤコとやり取りし、ホシノと生徒達に続いて校舎に入る―――

 


 

~アビドス高等学校 "廃校対策委員会"部室~

side-ミヤコ

 

「――どうぞ」

「"ありがとう"」

「...ありがとうございます」

 

 アヤネさんからよく冷えた麦茶で満たされたグラスを受け取る。――自己紹介を終え、私達は"廃校対策委員会"の面々と相対している。やはり、"先生"に向けられている眼差しは良いものとは言えない。

 

「――改めてありがとね~。あの量の弾薬があればしばらくは()()を防げそうだよ~」

「"役に立てそうで良かったよ。...それで、君達が良ければだけど――明日から継続してリストにある残りの物資を運びたいんだ。ついさっきも言ったけど、今回持って来たのは特に緊急性が高いものだけだからね"」

「――うへ、そこまでしてくれるの~?」

 

 "先生"がホシノさんにそう提案すると、少し驚いた様に眠たげな目を開く。他の生徒達も驚いたり、困惑したり、疑う表情を浮かべている。

 

「"『シャーレ』にはそれができるだけの力があるし――何より、()()()()()()()()()()()のが教師の、私の役目だからね"」

 

 "先生"はそう言って微笑むけど―――向けられる疑念や困惑の眼差しは晴れない。特に『セリカ』さんという生徒はずっと"先生"に疑念の眼差しを向けている。

 

「...ありがたい提案だけど、これ以上は流石にね~。弾薬と食糧があれば後は私達で――」

「――『シャーレ』は今回貴女達"廃校対策委員会"の要請を、"リストアップされた物資の輸送と供給"を請け負いました。そして、今回輸送してきたのはリストの一部のみ...まだ、()()()()()()()()()()()()()のです。半端なままで仕事を終わらせるのは私達としても不本意ですし、始動したばかりの『シャーレ』の信用に悪影響を及ぼすでしょう。...せめて、要請の遂行だけは全うさせていただけないでしょうか」

「...仕事は半端にしたくない、か。対策委員会(私達)の中にはバイトしてるのも居るしな。仕事を半端にしてると信用を失う要因になるってのは解る。――ホシノ、ここは『シャーレ』がリストの物資を全部運ぶのを見届けるべきだろう。シャーレ(連中)は一先ず要請に応えてくれた。――()()()()()()()()()()()()()じゃないか」

 

 私の言葉に『モコウ』さんという少し不良みたいに見える生徒が瞑目して数秒考え込み、ホシノさんにそう提案する。――セリカさんは信じられないと言った表情でモコウさんを見ている。

 

「...うん、確かに仕事を途中で投げ出すのは良くないね~。じゃあ、もうちょっとだけお願いしよ――」

 

―――ダンッ!!

異議あり!!

 

―――モコウさんの言葉に頷きながら提案を受け入れようとした瞬間、我慢出来ないと言わんばかりに机を両手で叩きながら席を立って大きな声をあげる。

 

「弾薬や食糧を持って来てくれたのは感謝するわ。――でも...ッ...これ以上は余計なお世話だし、そうやって()()()()()()()()()()()()()()()()()んでしょ?!

「セリカちゃん、流石にそれは言い――」

言い過ぎなもんですか!!私が入学した時――いいえ、するより前からアビドス(私達)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の!やれ『支援の限界だ』だの、『こちらにも事情がある』だの――薄っぺらい言い訳して()()()()()()()()()()()()()()()()()()急に支援を止めたり、最悪襲ってきたり...もうウンザリなのよ!私達の頑張りを踏み躙られたり、憐れまれながら支援を打ち切られる(手を振り払われる)のはッ!!

 

 ホシノさんの窘めすら遮り、私達を睨みながらまくし立てる。セリカさんの言葉に、誰もが黙っていた。――いや、言い返せないと表する方が正しいだろうか。

 

―――空から見た『アビドス』は一面砂漠で人が住める場所は殆ど無く、隅に残る居住可能に見える地区も砂漠に侵されつつあった。住宅街に人の気配は殆ど無く、静けさと砂が代わりに満ちている―――傍から見れば、()()()()()()()()()()()()様にしか見えない。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()とする者が―――()()()()対策委員会(彼女達)に接触して来たのだろう。

 

「"...そっか...君達は何度も、私達()()に騙されてきたんだね"」

 

―――セリカさんの言葉を聞いた"先生"は頷きながら瞑目する。

 

「そうよ!物資の輸送をしてくれたからって、それだけで信用できる訳が――」

「"――それでも、私は()()()()()()()()()()()()。これは噓偽りのない本心だ。『教師は生徒に寄り添い、教え導く存在で在るべし』――私と同じく教職にあった親父の言葉だ。生徒が伸び伸びと学んで行けるように、生徒の困りごとや問題の解決の手助けをする――親父がそうしていたように、私も君達の悩みや問題の解決を手助けして、伸び伸び学んで青春を過ごせるようにしてあげたい。――私も人間だ。全部を解決できるとは思っちゃいない。でも、()()()()()()()()()()()()()にはできる限り手を差し伸べるよ"」

 

―――"先生"は目を開き、真剣な眼差しでそう語る。SRT(私達の学園)の"教官"も職務を全うしているけど、この"先生"はそれ以上に教師という職務に真剣に向き合っている。これが、生徒(私達)を常に気に掛け、こうして手助けの手を差し伸べようとしている原動力なのだろう。―――"先生"は本気で『アビドス』が抱える問題を解決しようとしている。

 

「...うへ~、こんなに本気で真剣な目はおじさん初めて見たよ」

「あぁ。ここまで裏を一切感じられない真っ直ぐな大人は初めて見たな。――初めてだからこそ、はいそうですかと信じることはできないが」

 

 "先生"の言葉を聞いたホシノさんとモコウさんは少し困惑した様な表情を浮かべる。しかし、その眼差しは外で初めて対面した時よりは和らいでいる様に見える。

 

「――セリカちゃん、確かにおじさん達は散々()()()に騙されてきた。でもね、先入観で()()()()だって決め付けるのはおじさん良くないと思うんだ~。

 例えば..."理事"は大人だけど、私達を気に掛けてくれるし、時々仕事だってくれるよね?おじさんも"理事"と初めて会った時は信用できなかったけど...時間があれば雑談しに来たり、ラーメン奢ってくれたり、かなり膨大だった借金を見直させて適正なものにしてくれた。...それでも結構な額だけどね~..."理事"はそうやっておじさん達と接することを繰り返して信用を得ていった。

 だから、大事なのはおじさん達の為に行動している様子を見ること。口ではなんだって言えるからね~。最初は信用できなくても、何度も接して、様子を見れば...その行動が本心からか、良からぬことを孕んでいるかが解る筈だよ~。――まずは、対策委員会(おじさん達)が出した物資供給の要請。これをシャーレ("先生"達)が遂行できるかを見極めてみよっか~」

...ッ...分かり、ました...」

 

 ホシノさんの言葉を受け、セリカさんは渋々といった様子で頷いて席に着く。

 

「――じゃ、セリカちゃんは賛成ってことで~。皆はどうかな~?」

「私も賛成です。今回物資を持って来てくれただけでも、私としては充分信用できますが...」

「私も賛成で~す☆」

「ん、ロードバイクがその内貰えるなら信じる」

「私も賛成だ。行動は言葉よりも信じられるからな。――私達を失望させてくれるなよ?」

 

 ホシノさんの問いに委員会の皆さんが一様に賛成する。

 

「おっけ~。じゃ、そういう訳で引き続き――」

 

ドォォォォン!!

 

―――突然外から聞こえて来た爆発音。咄嗟に銃を手に取って部室の窓に駆け寄ると―――

 

 

 

ヒャッハハハ!珍しくヘリが飛んできて何事だと思ったら...随分な量の物資じゃねぇか!いよいよ落ち目の『アビドス』にゃいらないだろ?――全部アタシらのもんだッ!!

 

―――閉じられた校門が爆破されたのか、一部がひしゃげて開口部が出来ている。そこに屯するヘルメットを被った集団―――キヴォトスのあちらこちらで見かける『カタカタヘルメット団』の集団の先頭に立つ赤いヘルメットを被る幹部らしき団員がそう吠えて団員達を引き連れて侵入し始めていた。向かっているのは―――校庭に着陸しているヘリと、まだ運搬し切れていない物資の様だ。倉庫があるらしき方向から、ユメさんが盾を展開してヘリと物資の前に出る様に走っている姿も見える。

 

「"な、何あのヘルメット集団?!"」

「"カタカタヘルメット団"ですね...キヴォトスのあちこちで活動している不良集団"ヘルメット団"の中でも特に有名ですが...まさかアビドス(ここ)でも活動していたとは」

ちっ...襲撃は予想していたが、かなり数が多いな。――とにかく行くぞ。流れ弾を食らいたくなきゃアンタ達は部室(ここ)に居ろ」

 

 モコウさんが舌打ちしながら銃を携えて私達にそう言い残して足早に部室を出ると、ホシノさん達も続く様に銃を手に取って駆け出す。外ではサキさん達がまだ物資を運搬している筈。助けなければ――

 

「"ホシノ、私達も――"」

「――流石にそこまではさせられないね~。()()を招いたのは物資輸送を頼んだ私達の責任だし、"先生"達は一応お客さんでもあるしね~。外で物資を運んでる娘達も、私達が護るから安心して?モコウ先輩も言ってたけど、これから危なくなるからじっとしててね~」

 

 ホシノさんは足を止め、()()()()()()()()()()()を宿した青と赤のオッドアイで私達を見つめながら提案を遮り、モコウさん達の後を追って小走りで部室を去る。

 

―――ダダダダッ!!

 

「"...戦闘が始まった!"」

 

―――少しして銃声が聞こえ始めて窓を見やれば、ユメさんとホシノさんが最前線に立ち、盾で弾幕を受け止めている隙に一線後方に陣取るシロコさん、セリカさんが隙を見せた"ヘルメット団"団員を狙い撃つ。誰かがリロードに入れば後方からノノミさんがミニガンで制圧する。そして―――モコウさんはユメさんが構える盾の後ろや、土嚢の陣地の間を駆けながら散弾で陣地に迫る団員を撃破し、ホシノさんが時折援護射撃を行っている。各々が持つ武器の立ち位置を理解している陣形だ。

 

「――"対策委員会"の皆さんはかなり戦闘慣れしていますね。アヤネさんの姿はありませんが...ドローンが飛んでいるので彼女はオペレーター兼後方支援担当のようです」

「"慣れる程にヘルメット団と戦ってきた、ってことか...でも、ミヤコ達も居るのに頼ろうとしないなんて..."」

「...やはり私達を――いえ、"先生"をまだ信用していないようですね。"ヘルメット団"と交戦中に後ろから...という可能性を考えているのかと」

「"そんなこと私は――"」

「"先生"にそのような企みがなくとも――"先生"が()()()()()という点だけでホシノさん達からすると信用できないのでしょう」

「"っ...あの娘達は大人を信用できなくなる程に酷いことをされてきた、ってことか..."」

 

 "先生"は俯き、手を握りしめる。

 

―――私達も"先生"の指揮下に入ってから1週間も経っていない為、まだ警戒している所はある。

 "先生"と初めて対面したあの日。SRT(私達の学園)で一度"先生"指揮での演習を"FOX小隊"相手に行い、"教官"の指揮とはまるで違う―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()特異性を実感し、少なくとも"先生"の戦闘指揮はキヴォトス(ここ)でも充分に通用するという事は解った。

―――そして、先ほどのやり取りで"先生"は自分の職務にかなり誠実な人物であることも解った。あれ程に真っ直ぐな眼差しは、任務に臨むイナバ先輩と同等かそれ以上だ。少なくとも、"先生"が教師(先生)として行動するのであれば信用出来るかもしれない。

 

―――閑話休題。

 

「――しかし、次々と団員が攻めて来ますね。このままでは...」

 

―――それにしても()()を仕掛けている"カタカタヘルメット団"の数がかなり多い。後方に留まるドローンの下に集められていた弾薬も明らかに残り少ない。数だけ掻き集めたのか重装備が見当たらないのは幸いだけど、このままでは委員会の皆さんの弾薬が先に―――

 

―――ピピッ!

「――こちら"RABBIT1"」

『こちら"RABBIT2"!そっちからも見えてるよな?!"ヘルメット団"の襲撃だってのに、こっちはユメ先輩から"貴女達は一応お客さんだから"って止められて見てることしかできない!』

「私と"先生"も止められていて下手に動けない状況です。しかし、万が一がありますからそちらは――」

 

 

 

 

 

 

 

「"――やっぱり見ているだけじゃ駄目だ!ミヤコ、彼女達を助けよう!"」

先生?!

「――"先生"、モコウさんとホシノさんが言っていたことを忘れたのですか?」

 

―――銃声を背景にしているサキさんと通信している最中、我慢出来ないと言わんばかりに声を挙げる"先生"の言葉に対してそう尋ねる。サキさんも聞こえたのか驚いた声を挙げる。

 

「"...ミヤコはさっき言っていたよね?()()()()()()()()()()()()()()()って。なら、あの物資はまだ輸送中だ。そして、輸送中に私達は襲撃を受けた。――なら、護衛として迎撃しないとね"」

「――なるほど、そういう()()ですか。――"先生"、()()()()

 


~アビドス高等学校 校庭~

side-モコウ

 

「――行かせるかッ!」

「「ギャッ?!」」

 

 土嚢の壁から飛び出し、ユメとホシノの盾の死角から抜けて来た"ヘルメット団"の奴ら二人に散弾を浴びせて纏めて倒し、そのまま隣の土嚢の壁の裏に飛び込む。丁度弾が切れていて、空になったマガジンを抜いてその場に落として次を―――

 

「――クソッ、もう無いか!アヤネ、補給を頼む!」

『――モコウさん、こちらも弾薬が切れました!後は各々の手持ちしか...!』

嘘?!ひぃん、このままじゃ...!』

『ドローンのロケットも手榴弾も無い。これは厳しい...!』

『こちらも――後一秒も撃てませんね~...』

『こっちもマガジン一つしかないわ!急いでいたとは言えもっと持って行けたら...!』

『おじさんも後三発かな~...うへ、これはヤバいかな?』

「――チッ...不味いな...!」

 

―――ポケットに突っ込んだ手にマガジンを掴む感覚が無く、インカムを繋いで補給を要請するも、絶望的な答えが次々返って来て思わず舌打ちをしてしまう。

 

―――戦端を開いてからどれだけ経っただろうか。各人の弾薬も、後方支援のアヤネが用意していた補給も枯渇した。『シャーレ』が持って来た弾薬はヘリの傍に運び切れていないものが残っているが...弾がそのままで使える訳では無い。ホシノの[Eye of Horus]は例外だが、私の[不死鳥の羽]はマガジン式―――空のマガジンに弾を込める作業が要る。次々"ヘルメット団"の連中が私達の陣地を突破しようとしてる中でそんな時間は―――

 

「――ヒャッハー!」

「――おらァッ!!

「グワーッ?!」

 

―――土嚢の壁を越えて来た"ヘルメット団"の奴に向けて咄嗟に[不死鳥の羽(相棒)]を振り回して校門側へ打ち飛ばす。

 

「...あぁ、クソ...!こうなるならアイツらに――」

 

―――『すまない。これ以上は君達を支援できない。砂漠化を食い止めることすらできない時点でもうアビドスは終わりなんだ。それは君達もよく解っているだろう?』

―――『ここまで来てくれて感謝するよ。――ここで君達は倒される。"アビドス生徒会"が無くなれば、空白地帯は我々のものだ!』

 

―――脳裏にこれまで私達が頼り、そして()()()()()()()()()()の姿と言葉を思い出し思考を追い出すように頭を振る。

 

―――『シャーレ』への要請は、通らないだろうと踏んで出したものだった。だからホシノ達には好きなようにリストアップさせたが―――ヘリから物資輸送中の報告と着陸許可の通信が届いた時は驚いた。しかも『シャーレ』は―――"先生"は要請したリストの物資や物品全てを空輸で継続して輸送したいと提案して来た。

 手厚い支援を約束し、こっちにとっては最悪のタイミングで裏切る。『シャーレ』もきっとそうだろうと―――思えなかった。"先生"の微笑みは、セリカの異議に対して語った言葉は一切裏が無い本気のものだった。散々()()()から裏切られて来たからこそ何となく解る、()()()()()()()()を一切感じられなかった。もしかしたら、『シャーレ』なら..."先生"なら―――

 

 

 

 

 

「――モコウ先輩ッ!!」

「――ッ?!」

「ヒャッハー!弾切れならテメェらなんて――」

 

―――ホシノの声が聞こえて思考を止めてハッとして顔を上げると、"ヘルメット団"のヤツが間近で銃を構えていて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グワッ?!」

ッターン...!

 

―――"ヘルメット団"のヤツが被っているヘルメットのバイザーが砕け、衝撃で変な声をあげて仰け反りながら倒れ、一瞬遅れて鋭い銃声が響く。

 

「っ...狙撃、か?スナイパーなんて委員会(ウチ)には――」

 

 

 

 

ザッ...!

 

「――『シャーレ』、"RABBIT小隊"!物資護衛の為これより戦闘に加わります!」

「なっ――」

 

...ザッ...

「私達で抑えるから今の内に下がって弾を込めてくれ、先輩達!もう弾切れだろ?!」

 

―――私の傍にミヤコが立ち、サブマシンガンで弾幕を張り始める。驚いた束の間、小さな兎耳が付いたヘルメットを被った"RABBIT小隊"の隊員―――確か『空井(そらい)サキ』だったか―――がマシンガンを撃ち始めながらそう声をあげる。。

 

「――お前らどうして来たんだ?!部室とその場でじっとしてろって――」

 

ピピッ...!

『"――聞こえるかな?これから私が指揮を執る。ミヤコ達はそのままヘルメット団を抑えて!ホシノ達委員会の皆は一度下がって、今の内に弾薬を補給するんだ!"』

 

―――私の言葉がインカムに入った"先生"の声に遮られる。後ろに振り向けば―――あわあわと困惑しているアヤネの傍に()()()()()()()()()"先生"が立っている姿が見える。

 

『――"先生"、どうしておじさん達の言うこと聞けなかったのかな~?』

『"ホシノ達が私達に配慮してくれた思いを裏切る形になってしまったのは謝るよ。でも――私は言ったよね。"困っている生徒が居たら助ける"、って。

 目の前で戦っていて、しかも弾切れ寸前になっても尚留まり続けようとしていて――私は、それをただ見ているほど薄情にはなれない。

――建前は()()()()()()()()()だけど、君達の助けになりたいのは噓偽りのない本心であり、今の目的だ。...さぁ、弾を込めて!ヘルメット団を撃退するよ!"』

「...分かった。あぁ、分かったよ!ホシノ、ユメ、一度下がるぞ!」

『...うへ、りょうか~い。実際かなりヤバかったし、ここは素直に"先生"達に甘えよっか~』

『了解!早く補給して、"RABBIT小隊"の負担を和らげないとね~』

 

―――ホシノが賛意を示したおかげか、皆後方へと下がっていく。それを確認して私もユメ。ホシノと共に後方へ下がる。

 

「...(全く、ここまで教師(自分の仕事)に誠実とはな。"先生"個人がどんな人間かはまだ解らないが――"先生"としてなら信用できそうだ)」

 

―――"理事"は何度も私達と接した積み重ねで信用を得たが、この"先生"は信じても良い―――そう直感で解った。

 

 

 

―――この"先生"なら、もしかしたら『アビドス』が抱えている問題を解決する力になってくれるかもしれない。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで、対策委員会との馴れ初めでした。次回、アビドスが置かれている状況説明回です。
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