Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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バニーチェイサー編、本格的にスタートです。


File60.M-19~兎は金羊の皮を跳ねる②~

~『ゴールデンフリース号』船団航路付近の海上~

side-"先生"

 

「――お、見えてきたよ!あれが『ゴールデンフリース号』だよ!見た感じ、いつも通りの船団構成だね」

 

 ヘリを操縦するモエの言葉を聞いて窓に目を向けると―――白くよく目立つクルーズ船と、その後ろに追随するタンカーを中心に、駆逐艦や巡洋艦と言った武装を載せた艦船十数隻が護る様に囲んで同航する船団が遠目に見える。あれが『ゴールデンフリース号』の普段通りの船団構成らしい。

 

「大型船舶二隻に対して護衛十隻以上とは物々しい。まぁ、しこたま金が集まるであろうカジノをやってるなら、海賊の類に襲われる可能性もあるって考えりゃこれだけの護衛は要るか」

 

 同じ様に窓から『ゴールデンフリース号』の船団を見下ろすネルが興味津々に瞳を輝かせる。

 

「"――見たところ、『ゴールデンフリース号』とタンカー以外に大型船舶は見当たらないね"」

「『オデュッセイア』は自治区の中核を成す大型船舶複数隻とその護衛を基本編成とし、複数の船団を構成して方々の海域を航行していますから。年に一度か、『オデュッセイア』全体での催し、若しくは緊急事態で、分かれて航行する船団が合流して一堂に会する時以外はあの規模での航行が普通です」

 

 ミヤコの説明に成程と頷く。ヘリで接近中の『ゴールデンフリース号』の船団はキヴォトス中の海を航行する船団の一つでしかないらしい。あの船団規模が複数...一堂に会すればかなり大規模な船団になりそうだ。

 

「――見た目からして、確かにカジノを保有してそうなクルーズ船だ。債権大量発行事件、脱走発覚からの時間の経ち方を考えれば、"白兎"は既にあそこに...」

 

―――カリンも窓から『ゴールデンフリース号』を眺め、そう呟くと機内の皆の表情が引き締まる。

 

―――私達はカジノを楽しみに来た訳では無い。カリンの言う通り、既に乗り込んでいるであろう"白兎"―――『黒崎コユキ』を探し出し、騒(・)ぎ(・)を(・)起(・)こ(・)さ(・)ず(・)捕縛して『ミレニアム』に連れ戻さなければならない。その為に―――

 

 

「――まさかバ(・)ニ(・)ー(・)ガ(・)ー(・)ル(・)が、『プレイラウンジ』でのド(・)レ(・)ス(・)コ(・)ー(・)ド(・)とはなぁ。"エンジニア部"のヒビキが居なきゃ、潜入は延びてたかもしれねぇな」

「"――今更だけど、スカジャンは持ってきたんだね。おかげで皆の中で浮いてるよ"」

 

 

―――頭を搔くネルのバニーガール姿を見て私は思わず呟く。

 

―――『...任務でバ(・)ニ(・)ー(・)ガ(・)ー(・)ル(・)の衣装が早急に要る、ね。――分かった。大方潜入任務だろうから、場に馴染むようによく似合うデザインを繕うよ』

 

―――『ゴールデンフリース号』乗船手続きを担ってくれたユウカから、生(・)徒(・)の(・)ド(・)レ(・)ス(・)コ(・)ー(・)ド(・)としてバ(・)ニ(・)ー(・)ガ(・)ー(・)ル(・)衣装の着用を求められた。しかし"C&C"も、勿論ミヤコ達も衣装なんて持っている筈が無く。ユウカからの情報で、"エンジニア部"のヒビキが衣装作成が得意だと知り、『技術棟』に赴いて彼女の下を訪ねた。

 いきなりの訪問とお願いにも関わらずヒビキは快諾してくれた。すぐに採寸や好みの色、デザインのインタビューを受け、翌日―――今朝の集合時には全(・)員(・)分(・)の(・)衣(・)装(・)を持って来てくれた。ネルの言う通り、彼女が居なければ『ゴールデンフリース号』への潜入開始は延びていただろう。

 

 試着と時短の為、ヘリに乗り込む前に皆バ(・)ニ(・)ー(・)ガ(・)ー(・)ル(・)衣(・)装(・)に(・)着(・)替(・)え(・)て(・)い(・)て(・)、嵩張る大型の銃器や任務に必要なツールは分解してスーツケースに詰めている。

 因みに私は男だけど、『ゴールデンフリース号』には企業の社長や重役なんかも『プレイラウンジ』でのカジノや話(・)合(・)い(・)で乗船する事があるらしく、それら向けに定められたド(・)レ(・)ス(・)コ(・)ー(・)ド(・)であるパーティー用のスーツをヒビキに繕って貰った。潜入任務なので目立つ事を避けて身に着けていないけど、『シャーレ』制式の白いジャケットも念の為にと持ち込んでいる。

 

「スカジャンはあたしの魂だ。これがなきゃ『美甘ネル』じゃねぇ。...しかし、こうして見回すと――」

 

 ネルはさも当然の様に必要だと返し、"C&C"のメンバー、次にミヤコ達を見回す。

 

―――ポニーテールで結い上げた髪にピンクのうさ耳カチューシャを被り、紺色のバニースーツに白いタイツ、黒いヒールを履いたミヤコ。

―――普段はヘルメットを被っているからか、黄色のうさ耳カチューシャを被ったショートヘア全体がよく見えて珍しい、水色のバニースーツに黒いタイツ、黒いヒールを履いたサキ。

―――コックピットに居るから今は全体像が見えないけど、白いうさ耳カチューシャを被り、青いバニースーツに黒いタイツ、黒いヒールを履いたモエ。

―――後頭部で三つ編み二本で結い上げ、黄緑色のうさ耳カチューシャを被り、水色のバニースーツと白いタイツ、黒いヒールを履いたミユ。

 

―――四人共よく似合っているけど、ネルは衣装ではなく―――衣(・)装(・)故(・)に(・)ハ(・)ッ(・)キ(・)リ(・)分(・)か(・)る(・)箇(・)所(・)を見比べている。

 

「――あ(・)た(・)し(・)だ(・)け(・)目(・)立(・)つ(・)ってことがなくてよかったぜ」

「...リーダー、やっぱり気にしてたんだ。まぁ、普段のメイド服でもハ(・)ッ(・)キ(・)リ(・)分(・)か(・)る(・)面子が多いからねー。リーダーだけ明(・)ら(・)か(・)n「あ゛ぁん?」...スミマセンナンデモナイデス」

 

 ネルの言葉を聞いたウカビ――黄色のうさ耳カチューシャを被り、黄色のバニースーツに白いタイツ、赤いヒールを履いている――がニヤニヤ笑って煽るけど、ネルにすごまれて一瞬で縮こまる。―――バニーガールになっているからこそ、身(・)体(・)的(・)な(・)差(・)はハッキリと分かってしまう。口には出さないけど、ネルは身長程ではなくとも気にしている様だ。

 

「――――はいはい了解。皆、着船許可下りたからもうすぐ降りるよ!」

「"了解。――さぁ皆、気を引き締めて"」

 

 モエがコックピットから顔を覗かせて着船を伝え、私は頷いて皆に気を引き締めるようにと促す。窓から見下ろせば、機体は『ゴールデンフリース号』の真上に差し掛かっていて、高度を下げながら船上後部の甲板に並ぶヘリパッドの一つへと向かう―――

 

 


~『ゴールデンフリース号』 『プレイラウンジ』受付~

side-イナバ

 

「――"連邦生徒会統括室"『優曇華院イナバ』様、受付情報を確認しました。ようこそ『プレイラウンジ』へ。...別のお客様より、こちらを預かっております」

「――!」

 

―――受付の"バニーガール・ガード"がカウンターのパソコンを操作して私の情報を確認すると、カウンター下の棚から、ピ(・)ン(・)ク(・)の(・)リ(・)ボ(・)ン(・)を(・)首(・)に(・)巻(・)い(・)た(・)白いウサギのぬいぐるみを取り出し―――リボンに小さくS(・)R(・)T(・)の(・)校(・)章(・)がプリントされている事に気付く。

 

「...確かに受け取ったわ。他に何か伝言でも預かってないかしら?」

「いえ、お渡ししたもの以外には何も」

 

 ぬいぐるみを手に取りながら、これ以外に何か受け取っていないかと尋ねてみるも、受付は何も受け取っていないと答える。―――サングラス下の目にも嘘は見えない。このぬいぐるみが恐らく―――

 

「...分かったわ、ありがとう」

「どういたしまして。――お客様の幸(・)運(・)を祈っております。行ってらっしゃいませ」

 

 受付カウンターを離れ、スーツケースを引いて先に受付を済ませた三人の下に向かう。

 

「――お、来た来た。私達だけ通ってイナバだけ...ってならなくてよかったよ」

 

―――橘色のうさ耳カチューシャを被り、同色のバニースーツに黒いタイツ、白いヒールを履いたリンゴが私に気付いて声を掛ける。

 

「乗船手続きは貴女がやったことでしょうに。――カジノは相変わらず盛況みたいね。何処かの企業の社長や重役もチラホラ...」

 

―――浅葱色のうさ耳カチューシャを被り、同色のバニースーツに黒いタイツ、赤いヒールを履いたセイランはリンゴにツッコミを入れながら、開け放たれた扉の先―――『プレイラウンジ』へと吸い込まれる様に入場していく乗船客を見回す。

 

「『プレイラウンジ』は一攫千金を求める他に、カジノを隠れ蓑に話(・)し(・)合(・)い(・)を行える場ですからね。"Sランク"のVIPでもない限り、『ゴールデンフリース号』の人員は顧客情報は死守しますし、水(・)面(・)下(・)の(・)取(・)引(・)にも最適です」

 

―――白いうさ耳カチューシャを被り、黒いバニースーツに白いタイツ、黒いヒールを履いたレイセンが頷く。

 

「――入る前に軽く確認しておくわ。私達の任務は、ここ『ゴールデンフリース号』で潜(・)入(・)任(・)務(・)を行っている『ミレニアム』生の護衛。護衛すべき生徒が何者かは――これで分かる筈。受付が私に向けて渡してきたものよ」

 

 今回受領した任務の内容を確認し、受付で受け取ったぬいぐるみを三人に見せる。

 

「ちょい貸して。...ふーむ...白ウサギにピンクのリボン、そしてSRT(学校)の校章。――多分、ぬいぐるみとリボンが護(・)衛(・)対(・)象(・)の(・)特(・)徴(・)かな?校章は任務を受けるであろう部隊に宛てたものであることの証明。...乗船は"連邦生徒会統括室"名義にしてたのに、イナバに渡すように受付に頼んでいたことがちょっと引っ掛かるねー。どうやってКролик小隊(私達)が任務を受けるって把握したんだか...」

 

 リンゴにぬいぐるみを渡し、彼女はぬいぐるみを見回したり弄りながら、特徴や私が受け取った状況を分析して推測を挙げる。

 

「――お?やっぱり入(・)っ(・)て(・)た(・)。はてさて中身は――」

 

―――リンゴはぬいぐるみの中に何(・)か(・)が(・)入(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)と気付き、背中のファスナーを開けて中身の綿を掻き分ける。取り出したのは―――

 

「――片耳イヤホン型の通信デバイスね。遠目でなら目立ちにくい小型...校章もあるし、十中八九『ミレニアム』製でしょうね」

「――まずは通信で接触しろってことね。私が接触するわ」

 

 リンゴからイヤホンを受け取り、左耳に装着してスイッチを入れる―――

 

 

『――あー、あー。聞こえてますかね?』

「――通信良好よ。貴女がSRT(私達)に護衛を依頼した潜(・)入(・)任(・)務(・)中(・)の(・)生(・)徒(・)ね?」

 

―――数秒して少し幼さを感じる声が耳に届き、人定確認を行う。

 

『にはは、その通りですよ!正直ダメもとでの依頼だったんですが――これで私も一安心です!...っと自己紹介がまだでしたね。そうですねぇ...私のことは"白兎"、と呼んでください』

「"白兎"――Кролик(私達の部隊名)と同じ意味を含んだコードネームとはね。私達は『SRT』三年生、"Кролик小隊"。通信中の私は小隊長"Кролик1"『優曇華院イナバ』よ」

 

 依頼主が挙げたコードネームと"Кролик(私達の部隊名)"の意味的な繋がりに少し驚きつつ自己紹介を返す。視線をサッと動かして"白兎"らしき生徒が見えないかと見回すけど、リンゴが予測したぬいぐるみの特徴に当てはまる生徒は見当たらない。少なくとも受付ホールには居ない様だ。

 

『"Кролик1"、イナバ先輩ですね。今回はよろしくお願いします!』

「えぇ、よろしくね。――受付ホールには姿が見当たらないけど、『プレイラウンジ』に居るのかしら?」

『はい。私の姿を確認したければ、受付を通してお渡ししたぬいぐるみがヒントになっていますので。それから――姿(・)を(・)確(・)認(・)し(・)て(・)も(・)、露(・)骨(・)な(・)接(・)触(・)は(・)し(・)な(・)い(・)ようにお願いします。任(・)務(・)の(・)都(・)合(・)上(・)、目(・)立(・)つ(・)と(・)マ(・)ズ(・)い(・)ので』

 

 

「――分かったわ。それで、貴女をどんな脅威から守ればいいのかしら?」

『...実は、誰が、どんな組織、勢力がという具(・)体(・)的(・)な(・)こ(・)と(・)は(・)分(・)か(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)。任(・)務(・)の特性上、確(・)実(・)に(・)私(・)を(・)捕(・)ま(・)え(・)に(・)来(・)る(・)という確信しかないんですよねぇ。ですから――私(・)が(・)脅(・)威(・)を(・)判(・)断(・)し(・)て(・)指(・)定(・)し(・)ま(・)す(・)ので、それに合わせて護衛を行ってください』

「...曖昧な注文ね。そもそもの疑問だけど、『ミレニアム』なら"C&C"に護衛を依頼すればよかったんじゃないかしら?」

 

 "白兎"の注文に疑問を抱きつつ、"白兎"を狙う脅威について尋ねればそんな曖昧な答えが返って来て、眉を顰めながら疑問を挙げる。そもそも、『ミレニアム』で行っている任務だと言うなら、"C&C"という学校所属の特務部隊が居るのだから、態々SRT(私達の学校)に依頼を出す必要は無い。―――しかし、実際に"白兎"はSRT(私達の学校)に依頼を送り、Кролик小隊(私達)が請けている。

 

『にはは...それができればよかったんですが、"C&C"も忙(・)し(・)い(・)みたいで。それに..."C&C"は今回護衛には向かないと思うんですよ。何せ爆破や破壊活動を平気でやりますからね。カジノでそんなことをされたら大騒ぎは確実です。...シ(・)ェ(・)ル(・)タ(・)ー(・)に(・)逃(・)げ(・)て(・)も大量のC4で無理矢理ぶち抜いてきたときはビックリしましたよ本当...』

「...逃げた?」

『あっ、やば...聞こえてた...!こ、こっちの話です!お気になさらず!――兎に角、私(・)を(・)狙(・)う(・)脅(・)威(・)はこちらで見かけ次第指示しますので、"Кролик小隊"の皆さんはそれに従って、任(・)務(・)の(・)都(・)合(・)上(・)必(・)要(・)な(・)"Sランク"到達まで護衛をお願いします!』

「...了解したわ」

 

 "C&C"に依頼しなかった理由の後に微かに漏れ聞こえた呟きが気になって聞き返すも、"白兎"は慌(・)て(・)た(・)様(・)に(・)何でもないと誤魔化し、改めて指示に従って脅威からの護衛をお願いして来る。

 

―――気になる点は多いけど、判断するにはまだ情報が足りない。ここは素直に指示に従おう。

 

『では、お願いしますね!さっきも言った通り私はプレイラウンジに居ますので、"Кролик小隊"の皆さんも来てください。それでは!』

 

 "白兎"はそう言って通信を切る。

 

「――どうだった?まぁ、その表情(顔)を見るに依(・)頼(・)主(・)は(・)怪(・)し(・)さ(・)満(・)点(・)っぽいけど」

「えぇ。依頼主(クライアント)、"白兎"は――――」

 

 リンゴが首尾を尋ね、"白兎"とのやり取りを三人に共有する。

 

「――――ということで、まずは"白兎"の指示に従うことにするわ」

「接(・)触(・)は(・)避(・)け(・)て(・)ほ(・)し(・)い(・)、ねぇ。護衛を傍に付けないで環境に紛れさせるのはよくあるやり方だけど、私達が払うべき脅(・)威(・)の(・)具(・)体(・)性(・)が(・)な(・)い(・)のは困るし、怪しく感じちゃうね」

「ぬいぐるみがヒントとは言うけど、護(・)衛(・)で(・)あ(・)る(・)私(・)達(・)に(・)す(・)ら(・)容(・)姿(・)の(・)説(・)明(・)が(・)少(・)な(・)い(・)点も気になるわね。よっぽど自(・)分(・)を(・)目(・)立(・)た(・)せ(・)た(・)く(・)な(・)い(・)のかしら」

「怪しい点は多いですが、判断材料はまだ足りません。イナバの言う通り、しばらくは情報収集も兼ねて依頼主(クライアント)の指示、意向に従うべきでしょう」

 

 説明を終えると、やはり三人共"白兎"に疑念を抱いている反応を見せる。レイセンの言う通り、今は指示、意向に従い、状況や指示から"白兎"の素性や脅(・)威(・)を把握していこう。その結果次第では―――

 

「――じゃあ、荷物ロッカーに入れてから白兎(クライアント)が居る『プレイラウンジ』に向かいましょう。目立たないように、持ち込む装備は小型で最小限に」

「「「――了解」」」

 

 三人に指示を出し、近くのロッカールームに向かう―――

 

 


~『プレイラウンジ』スタッフエリア 休憩室~

side-サキ

 

「...きゅぅ...」

「...あっ。気絶しちゃった...」

「またか...こ(・)れ(・)で(・)三(・)人(・)目(・)だぞ」

 

―――カリン先輩の尋(・)問(・)に耐え切れなかった"バニーガール・ガード"の頭上のヘイローが消えてしまい、カリン先輩がや(・)り(・)過(・)ぎ(・)た(・)と後悔した表情を浮かべ、私は思わず半目で先輩を見る。

 

 

―――『これだけ大所帯で纏まって行動しては目立ってしまいます。ここは、二人一組での行動を提案します』

 

―――『ゴールデンフリース号』に降り立ち、無事『プレイラウンジ』入場受付を済ませ、入場を前にミヤコが提案した二人一組での行動。

 私達『シャーレ』の五人と、"C&C"のエージェント五人。合わせて十人が纏まって動けば、確かに"白兎"に気付かれる可能性が高い。現地入りしてから"白兎"の所在は確定しておらず、仮に所在が確定しても現在の行動、位置も不明。情報収集の為にも別れて行動する方が効率的だろう。

 "先生"とネル先輩も賛意を示し、各組で行動目標を決めて行動に移っている。私はカリン先輩と組み、『プレイラウンジ』スタッフである"バニーガール・ガード"からの"白兎"に関する情報の収集を受け持っているが―――

 

「――先輩のく(・)す(・)ぐ(・)り(・)テ(・)ク(・)ニ(・)ッ(・)ク(・)は(・)凄(・)ま(・)じ(・)い(・)ってのは分かったが、口(・)を(・)割(・)る(・)前(・)に(・)気(・)絶(・)したら意味がないぞ...」

「ご、ごめん...普段はア(・)カ(・)ネ(・)の(・)爆(・)破(・)とか、ネ(・)ル(・)先(・)輩(・)の(・)吶(・)喊(・)、ア(・)ス(・)ナ(・)先(・)輩(・)の(・)直(・)感(・)で大体解決してるからこの尋(・)問(・)は久しぶりで...」

 

 私の言葉に対し、カリン先輩は申し訳無さそうに目を伏せる。

 

―――『...まぁ、そう簡単に口は割らないか。じゃあ――お(・)し(・)お(・)き(・)だ』

―――『あっ♡あぁっ♡やめっ♡そこっ、弱いのぉぉ♡♡』

―――『な、なんてテクニックだ...ただ脇(・)下(・)を(・)く(・)す(・)ぐ(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)だけなのに、こ、こんな...』

 

―――『プレイラウンジ』の区画の裏側に広がるスタッフエリア。そこに私達は潜入し、単独行動の"バニーガール・ガード"を狙って背後から忍び寄って気絶させ、適当に見繕った休憩室を隠れ場所兼尋問室として(無断だが)借り上げ、"尋問は任せてくれ"とカリン先輩が自信有りげに提案した為、後学の為にと任せてみたら―――まさかのく(・)す(・)ぐ(・)り(・)攻(・)撃(・)だった。

 しかし、そのテクニックは凄まじく、拘束して椅子に座らせて尚敵意を私達に向けていた"バニーガール・ガード"はあ(・)っ(・)と(・)い(・)う(・)間(・)に(・)見(・)せ(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)表(・)情(・)に変わり―――耐えられないと口を割ろうとした瞬間に限(・)界(・)を(・)迎(・)え(・)て(・)気(・)絶(・)す(・)る(・)事態がここまで三(・)連(・)続(・)で(・)続いている。

 

「――情報の有無に関わらず、流石に次(・)が(・)最(・)後(・)だな。これ以上は巡(・)回(・)の(・)穴(・)に気付かれる」

「分かった。...私は残って、気絶した娘が目覚めないか待ってみる」

「...次は頼むぞ。先輩のテクニックはよく分かったから、口(・)を(・)割(・)れ(・)る(・)ように加減してくれ」

 

 カリン先輩にそう念押しして、私は休憩室を出る。

 

「モエとアカネ先輩は監視カメラの掌握に向かってるし、ミヤコ達は『プレイラウンジ』で"白兎"を探している。私達が情報を得られなくても何とかなると思うが...」

 

 


~『プレイラウンジ』~

side-ミヤコ

 

<「は、外れた...?!」

<「入れ...入れ...!ここで当たればランクが...!」

 

「クソ...!なんで当たらねぇんだ!」>

「おいテメェ!イカサマしただろ?!」>

 

「"――この喧騒、アニメや漫画で見るカジノそのものだね"」

「一攫千金を狙う生徒だけではありませんね。この喧騒に紛れて――」

 

 "先生"の言葉にそう返して辺りを見回せば―――

 

<「...では、契約は我が社にて」

<「...あぁ、それで頼むよ。君の所とはこれからも――」

 

―――各ゲームのブースから離れたテーブル席や間仕切りされた個室では、企業の社長、重役らしき大人達がカードゲームや飲食に紛れて話(・)し(・)合(・)い(・)を行っている様子も見える。

 

「"ゲームや飲食に紛れて隠すようなやり方ってことは、そ(・)う(・)い(・)う(・)取(・)引(・)かな"」

「そうだと思います。『ゴールデンフリース号』の独立性を隠れ蓑に、公(・)に(・)は(・)で(・)き(・)な(・)い(・)取(・)引(・)を行っている者も居る...とイナバ先輩は言っていましたから」

 

 "先生"の言葉に頷く。―――『ゴールデンフリース号』の独立性の高さは、『オデュッセイア』生徒会ですら『プレイラウンジ』運営の実態を把握出来ていない程だ。乗船客の情報に関しても生徒会相手にすらそう簡単には開示しない為、『ゴールデンフリース号』船内であれば機密性は保証されている。故に、公(・)に(・)出(・)来(・)な(・)い(・)取(・)引(・)を行うには最適という訳だ。『SRT』としては見逃せないけど―――

 

「"――ドレスコードは厄介だね。アクセサリーや服装で個性を出しているとは言え、これだけ盛況だと紛れてしまって探しにくい"」

 

―――"先生"は足を止め、スマホの画面に"白兎"―――コユキさんの肖像写真を立ち上げて辺りを見回す。

 

―――今は"白兎"の捜索と捕縛が私達の任務だ。私達がネル先輩、ウカビさんのペア、アスナ先輩とミユのペアと共に受け持つ"『プレイラウンジ』内での"白兎"捜索"を遂行せねばならない。でも、乗船する生徒のドレスコードがバニーガールと指定されている為、これだけ人が多いとコユキさんのピンク色の長いツインテールも目立ちにくい。

 

「"うーん...折角だ。ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)だ(・)け(・)カジノに挑んでみようか"」

「――その行動を取る理由は?」

 

 数秒悩んだ"先生"はそんな提案を挙げ、私は理由を尋ねてみる。理由は何(・)と(・)な(・)く(・)察(・)せ(・)ら(・)れ(・)る(・)けど、私と同じ考えであるかを確認しておきたい。

 

「"一つは、何もしないでウロウロしていては"白兎(ターゲット)"や"バニーガール・ガード(スタッフ)"に怪(・)し(・)ま(・)れ(・)る(・)可能性があること。

 二つ目は運(・)次(・)第(・)だけど、勝利を重ねてランク入り、ランクアップで目立てば"白兎(ターゲット)"が焦って目(・)立(・)つ(・)よ(・)う(・)な(・)動(・)き(・)を(・)取(・)る(・)ことを誘発するのが狙いだ。

 勿論、歩き回っている内に見つかればそれに越したことはないけどね"」

「成程...ユウカ先輩からは、"作(・)戦(・)の(・)一(・)環(・)で(・)使うことがあれば"とそれぞれお金を――カ(・)ジ(・)ノ(・)に(・)挑(・)む(・)元(・)手(・)に(・)な(・)る(・)最(・)低(・)限(・)の(・)額(・)をいただいています。...カジノは初めてですが、挑戦する意義はあるかと」

「"私も、ゲーム中のミニゲーム的なものの経験しかないから、こういう本物のカジノは未経験と言っても過言じゃないよ。例え負けても、客として紛れるから一つ目の懸念を晴らすことはできる"」

 

 "先生"が挙げた理由は私が考えていたメリットとほぼ同じだった。揃ってカ(・)ジ(・)ノ(・)は(・)未(・)経(・)験(・)である事が懸念点だけど、乗船客として紛れる事も"白兎(ターゲット)"にバレない様に捜索するには大事だ。

 

「"それじゃあ、"白兎"を探しながらプレイするゲームを吟味しようか"」

「はい」

 

 "先生"に続いて歩き出す―――

 

 

~『プレイラウンジ』 カードブース~

 

「"...この辺りはカード系が集まってるみたいだね"」

「ポーカー、ブラックジャック...他にも違う種類のゲームもありますね。どのようなものかは私には分かりませんが」

 

―――"白兎"とプレイしてみたいゲームを探しながら歩く事数分。道中で"バニーガール・ガード"から貰ったジンジャーエールのグラスを傾けて一口飲んで見回すと、私達はカード系のゲームが集まるブースに来ている事に気付く。

 

「"...ふむ...ブラックジャックに挑戦してみようか。ルールは分かりやすい方だしね"」

「分かりました。...テーブルは分かれましょう。仲間だと見られては談合やイカサマを疑われる可能性もありますから」

「"その方がいいね。...お、あそこが一人離れた。私はあのテーブルに行くよ"」

「私は――」

 

 

 

 

「――クソッ!また負けた!もう賭ける金がねぇ...!コ(・)イ(・)ツ(・)がスイスイ決めるせいで変に焦っちまったか...!」

 

―――ふと耳に入った、悔しがる客の声が聞こえた方に目を向ける。

 

 

「――あら、私のせいとでも言いたいの?」

 

 

―――ポニーテールで結い上げた長い紫色の髪に黒いうさ耳カチューシャを飾り、紫のバニースーツに黒いタイツ、赤いヒールを履いた後ろ姿からす(・)っ(・)か(・)り(・)聞(・)き(・)慣(・)れ(・)た(・)声(・)がすました様に立ち上がっている客に尋ねる。

 

「...んなことする程狭量じゃねぇさ。アンタの決め方が迷いなくて、こっちが勝手に焦っただけだ。...じゃあな。アンタの幸(・)運(・)を祈ってるぜ」

 

 客はそれ以上食い下がる事はせず、財布を持ってテーブルを離れる。

 

「――私はあちらのテーブルに行きます」

「"分かった。ミヤコの幸(・)運(・)を祈ってるよ"」

 

 "先生"に断りを入れ、テーブルへと向かう―――

 

 

 

「――いらっしゃいませ。これより新たにゲームを始めますが、参加なさいますか?」

「――はい。...隣、大丈夫でしょうか?」

 

―――テーブルに近付くと、トランプをシャッフルしていた、黒いサングラス、うさ耳カチューシャ、バニースーツ、白いタイツ、黒いヒールを纏うディーラーらしきバニーガールが確認して来て、それに頷きながら空いている席に座り、逸(・)る(・)気(・)持(・)ち(・)を(・)抑(・)え(・)込(・)ん(・)で(・)出(・)来(・)る(・)限(・)り(・)普(・)段(・)通(・)り(・)に隣の客に相席の是非を尋ねる―――

 

 

 

 

「――!...えぇ、構わないわ」

 

―――私の隣、バ(・)ニ(・)ー(・)ガ(・)ー(・)ル(・)姿(・)の(・)イナバ先輩は即座にミヤコ(私)であると気付き、しかしすぐに他(・)人(・)に(・)接(・)す(・)る(・)様(・)な(・)眼差しに切り替え、構わないと頷く。

 

―――『...〈任務中に他部隊と出会した場合、基本的には他(・)人(・)の(・)フ(・)リ(・)を(・)し(・)て(・)接しろ。諸君らは特殊部隊。請け負う任務は公に晒されると大きな影響を及ぼす可能性があるものばかりだからである。例えSRT(身内)だからと気を許して任務に関する情報を明かして、外部に漏れない可能性は排除できない。――しかし、情報の共有が任務成功に繋がる可能性もあるだろう。そこで、本講義では任務中に他部隊と出会し、情報を共有したい場合の伝達手段を学んでもらう〉』

 

―――"教官"の講義で学んだ、『SRT(学校)』の他部隊と任務中に遭遇した場合の対応を思い返す。この場合は―――

 

「――では、ラウンドを開始します。プレイヤーはベットを」

「――見た所、一年生ね。カ(・)ジ(・)ノ(・)は(・)初(・)め(・)て(・)?」

「――!...はい。今日は友(・)達(・)三(・)人(・)と(・)一(・)緒(・)に(・)来(・)ま(・)し(・)た(・)。今は...それぞれでゲームをプレイしている筈です」

「あら、奇遇ね。私も友(・)人(・)三(・)人(・)と(・)来(・)た(・)の(・)。今頃は各(・)々(・)好(・)き(・)に(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)に(・)興(・)じ(・)て(・)る(・)筈」

 

―――ディーラーの音頭に合わせてチップを六枚――レートはチップ一枚辺り一万円だから六万円分だ――テーブルに置きながらイナバ先輩の質問に答えると、先輩は少し驚いた様に眉を上げる反応を示す。

 

―――初対面での他愛の無い話題に見せかけ、動(・)員(・)し(・)て(・)い(・)る(・)小(・)隊(・)メ(・)ン(・)バ(・)ー(・)の(・)数(・)をお互いに把握出来た。イナバ先輩も"Кролик小隊"全員で来ているらしい。私達と同様に別れて行動しているという事は、先輩達も恐らく何(・)ら(・)か(・)の(・)任(・)務(・)中(・)なのだろうと改めて認識する。

 

 

「――プレイヤーは左席からカードオープン」

 

 ディーラーが手早く、慣れた手付きでシャッフルしたカードが配られ、音頭に合わせて目の前のカード二枚を捲る。―――私は[♥6]と[♣7]。ディーラーが捲った一枚目は[♦8]。ブラックジャック(21)を狙うには8のカードを狙わないといけないけど、無理に狙うと22以上―――バーストで負けてしまう。ここは―――

 

「――ヒット。...スタンド」

 

―――カードを一枚追加するヒットを宣言し、ディーラーが頷いてカード一枚を私の下に流す。捲ってみると―――[♣6]の絵柄が見える。これで合計19。ディーラーが20、ブラックジャックを出せば私の負けだけど、私の合計より下回る組み合わせが出る可能性の方が高い為、スタンドを選択する。

 

「――ヒット。...ふむ...スタンド。貴女は、プレイラウンジ(ここ)には何で来たのかしら?」

「...カジノに興味があったのと――生徒会の先輩からの頼みでカ(・)ジ(・)ノ(・)に(・)の(・)め(・)り(・)込(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)知(・)り(・)合(・)い(・)を(・)探(・)し(・)に(・)き(・)た(・)んです」

 

 次の手番であるイナバ先輩もヒット一回でスタンドを宣言し、プレイラウンジ(ここ)に来た理由―――任務内容を尋ねて来る。"セミナー"のユウカ先輩からの依頼で"白兎"の捜索、捕縛を任務として請けている事を、知(・)り(・)合(・)い(・)の(・)捜(・)索(・)と例えて答える。

 

「――ダブルアップ。...あぁ、バーストした!」

「――ヒット。...もう一回ヒット!...スタンドだ。微妙だな...これ勝てるか...?」

「――ショーダウン」

「カジノにのめり込んでいる、ね...私達も似た感じね。カジノは暇潰しを兼ねているけど――」

 

 

 

 

 

 

「――"S(・)ラ(・)ン(・)ク(・)"を(・)取(・)る(・)ん(・)だ(・)っ(・)て(・)息(・)巻(・)く(・)知(・)り(・)合(・)い(・)の(・)お(・)目(・)付(・)け(・)役(・)が本来の目的なの」

 

「――え...?」

「――ヒット。...スタンド」

 

 

―――ディーラーが二枚目を捲り、[♦10]を出して[♦8]と合わせて18となり、私はラウンドに勝った。けど―――イナバ先輩が答えた内容が私達の任務と被る要素があり、驚きと困惑で耳が遠くなる。

 

 

―――"白兎"は"Sランク"の待遇を利用して"セミナー"の捕縛から身を守ろうとして、『プレイラウンジ』に逃げ込んでいる可能性が高い。だから、私達は"Sランク"到達前に探し出して捕縛しようとしている。

 

"S(・)ラ(・)ン(・)ク(・)"を(・)取(・)る(・)ん(・)だ(・)っ(・)て(・)息(・)巻(・)く(・)知(・)り(・)合(・)い(・)...まさか―――

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで、"Кролик小隊"とかち合いました。はたしてどうなる?!

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=326397&uid=187500
↑の活動報告でも挙げましたが、5月11日に二次創作日間ランキング『20位』へのランクインを確認しました。まさか拙作が日間とは言えランキング入りするとは思わんかった...これを励みに引き続き執筆していく所存です。

【挿絵表示】


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