Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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メイン5章更新なので初投稿です。...ミニとは???

前回に引き続きバニーチェイサー編です


File59.M-20~兎は金羊の皮を跳ねる③~

~『プレイラウンジ』スタッフエリア 監視室~

side-モエ

 

「――っと...!」

「グェ...」

「はーい、ちょっとおねんねしてようねー」

 

―――ドアを静かに開けて中に入り込み、即座に椅子に座る監視員の"バニーガール・ガード"の背後に迫り、首を締め上げて気絶させ、コンソールデスクの下に転がしておく。

 

「――廊下は大丈夫です。では、早速捜索を始めましょうか」

「りょーかい!...でも、規模が規模だからカメラも多いねー」

 

―――廊下を警戒していたアカネ先輩も監視室に入って来てドアを閉め、先輩の言葉に頷きながら壁面いっぱいに並ぶカメラ映像を見上げる。

 

―――ミヤコの提案で二人一組のペアを組んで別れて行動に移り、私はアカネ先輩と共に監視カメラでの"白兎"捜索を受け持っている。

 

「さーて、と......ここじゃない。...これでもない...」

 

 コンソールを操作し、『プレイラウンジ』を映すカメラから目ぼしい視点をピックアップして拡大映像を開いて"白兎"の特徴に合致する姿を探す。

 

「――左隅の方...いえ、髪型が違いますね」

「うーん、すぐには見付からないかー...って、これは...」

 

 捜索を手伝うアカネ先輩の言葉にそう返しながら次のカメラ―――スロットブースの一角を見下ろす映像に切り替えるとまさかの様子が映る。

 

―――音は拾えていないけど、一台のスロットの前に座っているネル先輩がスロットで()()()()()()()()()()()()()()、ウカビが止めようとするもギロリと睨まれてすごすごと退く様子がちょうど映る。

 

―――ミヤコと"先生"、ネル先輩とウカビ、アスナ先輩とミユの三組は『プレイラウンジ』で"白兎"捜索を受け持っている。とは言え、何もせずウロウロするのでは怪しまれる可能性もあるし、こうして『プレイラウンジ』内のゲームをプレイして客として紛れる手段を取っている様だ。

 

「...部長...()()()()()()は寧ろ警戒されるでしょうに」

 

 所謂()()()をかましたネル先輩を見て、アカネ先輩は額に手を当ててため息を吐く。

 

()()()なんて壊すだけで何のメリットもないしねー。私物なら自業自得で済むけど、こういう他所の機材を壊そうものなら――」

 

―――そんな二人の下に"バニーガール・ガード"が歩いて来て、ネル先輩と会話を始める。ネル先輩は抗議するも、"バニーガール・ガード"は慣れた様に、淡々と身振り手振りも加えて注意し、ネル先輩は不満そうな表情を浮かべながら頷き、"バニーガール・ガード"は離れていく。

 

「――案の定ですね。これで()()()()()()を抑えてくれるといいのですが。また同じような行動を取れば、最悪()()()()()()でしょう。ウカビが抑えてくれればいいのですが...」

「そうだねー。迷惑客として目立っちゃっても"白兎"に――」

 

 

 

 

―――映像を切り替えようとした瞬間。橘色のうさ耳カチューシャを被り、同色のバニースーツに黒いタイツ、白いヒールを履いた()()()()()()姿()が映像の端から出て来る。

 

「――ん?え...?」

「...何か見付けましたか?」

 

 アカネ先輩の問にも答えず、ネル先輩とウカビが居るレーンの隣のレーンに入っていく()()()()()()姿()を食い入る様に見つめる。()()()()()()姿()は二人の方を一瞥し、近くのスロットの前に座る。カメラの画角でちょうど横顔が見え、その顔は間違い無く―――

 

 

ピピッ...

『――こちら"RABBIT1"。ラウンジ内、カードブースにて"Кролик1"と遭遇。恐らく残る三人もラウンジ内に居ると思われます』

「..."Кролик"...確か、モエさん達の先輩部隊でしたか」

「うん。"Кролик小隊"――『SRT』最精鋭小隊の一つで、私達の憧れでもある部隊だよ。――こちら"RABBIT3"。現在監視室で"03(ゼロスリー)"と共に"白兎"捜索中。スロットブースでリンゴ先輩――"Кролик3"を確認したよ」

 

 アカネ先輩の言葉に頷き、Кролик3(リンゴ先輩)発見の報告を挙げる。映像では、のんびりとスロットを操作するリンゴ先輩の隣のレーンの筐体の前に座りながら、それとなく耳のインカムに触れているネル先輩とウカビの様子も見える。

 

『やはり居ましたか...プレイしながら"Кролик1"と接触。情報共有を行いましたが――"Кролик小隊"は"()()"()()()()()()()()()可能性が高いです』

「――マジで?」

『――腑に落ちねぇな。特殊部隊が要人護衛に従事する例がないわけじゃねぇが、SRTは広域犯やら政治犯やらの相手が主だろ。その中の最精鋭(上澄み部隊)がなんで"白兎"を――()()()()()()をしてやがる』

『そこまでは探れませんでしたが..."白兎"は何らかの方法でSRTに接触し、護衛を依頼したのかもしれません。パスワードや物理的暗証番号を突破できる才能があれば、SRT(私達の学校)と提携を結んでいる()()()()()()()()()向けの依頼用文書テンプレートを入手し、"セミナー"発信の依頼として偽装することも可能かと』

「ふむ...ミヤコさんの推測は一理ありますね。"白兎"の才能ならば"セミナー"直轄の管理文書も容易にセキュリティを突破して閲覧できるでしょう。その中で『SRT』へ依頼を発出する文書を見付け、私達のような追っ手への対抗策として何らかの任務として偽装し、護衛を依頼した..."白兎"は思ったより頭が回るようで」

「うーん...思った以上に色々やってくれるねー、"白兎"。状況によっては――」

 

 ミヤコの推測、アカネ先輩の分析を聞きながら、カメラを切り替え、他のブースに"白兎"が居ないかと目を動かす。ラウンジ中央に据えられた、大きな柱に四方に据えられた大型スクリーンの一枚を映すカメラに切り替え―――

 

 


 

プレイランク速報

 

 

ランク【A】最速達成者

 

 

『一ノ瀬アスナ』

 

スコア:ルーレット連勝記録:10/勝率100%


 

 

「――へ?」

「――は、え、アスナ先輩...!?」

 

 大型スクリーンにそんなテロップが派手なエフェクトと共に浮かび上がり、ついでドローンが映しているのか満面の笑顔で手を振るアスナ先輩の姿が堂々と映る。そんな先輩の後ろでは制止しようにも最早間に合わず、アワアワと慌てているミユも映っている。

 

「...完全に目立ってる...!ヤバいってこれ!」

『おいおいおい...!流石アスナだが、ラウンジ中に晒されてるってことは――』

『はい。"()()"に()()()()()可能性が――』

 

 

 次の瞬間――映像の端、画角に収まっているルーレットコーナーのテーブルの一つに座っていた、ピンクのツインテールに黄色のメッシュを染め、黒いうさ耳カチューシャを飾り、黒いバニースーツの上にタイトな白い燕尾ジャケットを重ね、白いタイツ、黒いヒールを履いた生徒―――"白兎"の特徴の多くが合致する姿がディーラーに何か言ってそそくさと立ち上がってテーブルを離れ、カメラの画角から消えていく様子が見える。

 

「――こちら"RABBIT3"!ルーレットコーナーで"白兎"発見!白兎(ターゲット)は移動を開始!方向的に多分...受付ホール方面!」

『"ネル、ウカビ、ミヤコは"白兎"を追跡!カリン、サキは現任務を中断!アスナ、ミユと合流してネル達への援護に切り替え!モエ、アカネはできる限りカメラで追跡を!"』

『チッ、気付きやがったか...!行くぞウカビ!』

『り、了解!あ~もう何やってんのさアスナ先輩...!』

『"RABBIT1"、了解!』

『"RABBIT2"、了解した!』

『"02(ゼロツー)"了解。...サキ、気を付けて戻ろう』

「"RABBIT3"了解!アカネ先輩、外の警戒お願いできる?!」

「"03(ゼロスリー)"、了解しました。――分かりました。モエさんは引き続きカメラで状況の追跡を」

 

―――"先生"が下した指示に従い、通信も慌ただしくなる。"白兎"は見付かった。でも、"Кролик小隊"が―――先輩達が()()()()()()()()()()可能性が高い。もしかしたら―――

 

 


 

~『プレイラウンジ』スロットブース~

 

side-ミヤコ

 

『ちょ、部長!?そんなに急いでも――』

『黙ってついて来い!ここで逃がしたら複雑な船の中を探さにゃならねぇ!そうなる前にとっ捕まえる!』

 

 ウカビさんの制止も聞かず、ネル先輩が急いで追跡に移ろうとしているやり取りがインカムに入る。

 

「――私は受付ホール側に先回りできるか試してみます。"先生"はこのまま指揮を」

「"了解。――Кролик小隊(イナバ達)が相手になる可能性があるから、無理はしないように"」

 

 "先生"にそう断ってから離れ、受付ホール方面に向けて足早に歩き出す。

 

『こ、こちら"RABBIT4"...!アスナ先輩が他のお客さんに絡まれて、すぐには動けません...!』

『十連続で大勝ちだ。その幸運にあやかりてぇ輩も出るだろうな!――"RABBIT4"はそのままアスナの傍に付いとけ!一人にしたら何やるか分かったもんじゃねぇ...!』

『り、了解...!』

 

―――"先生"の指示への応答が無かった二人の内、ミユから通信が入る。その報告を受けてネル先輩は現在地で待機を指示し、ミユが了解を伝えるやり取りを聞きながら歩を進める。でも―――

 

「くっ...思ったより、全然前に進まない...!」

 

―――盛況を迎える『プレイラウンジ』は、スロットやルーレット、ポーカー...様々なゲームやサービスに至るまで客が大勢居る。

 道は人で溢れ、何とか隙間を見付けて抜ける他無く、どうしてもスピードを上げる事が出来ない。

 

『――こちら"RABBIT2"および"02(ゼロツー)"。スタッフエリア移動中。もうすぐでラウンジに戻れる』

 

 サキから通信が入り、こちら側の増援も期待出来る―――

 

 

 

 

 

『部長?!それはマz――』

『ッラァァァッ!!邪魔だテメェらァ!!』

 

―――突如鼓膜を震わせる、ネル先輩の咆哮。

 

バラララララ...!!

 

―――銃声と共に銃弾の曳光が天井へと撃ち上がり、数発がシャンデリアに当たってランプのガラスや枝が砕けて落ちる様子が私からでも見える。

 

キャアァァァ...!

ワァァァァ...!

 

 喧騒は悲鳴で塗り替えられ、客が逃げようと波のように動き出す。

 

「――っ...!ネル先輩、なんてことを...!」

 

―――『重ねて注意しておきますが、どうか()()()()()()()コユキを捕まえてくださいね。学内であればセミナー(私達)で何とかできますが――他校自地区内で()()()()()()()()()()()()場合、その対応や負担も大きなものになってしまいますから』

 

―――出発の際に見送ってくれたユウカ先輩の言葉を思い返し、歯噛みする。

 

ジリリリリ...!

 

『ラウンジ内にて発砲を確認。スタッフの指示に従って速やかに避難してください。繰り返します――』

 

 

 直後、ラウンジ内に非常ベルと共にアナウンスが掛かる。"バニーガール・ガード"たちが銃を携えてラウンジ内の各所から動き出し、逃げ惑う客の避難誘導を始めると同時に、スタッフエリア方面からも鎮圧部隊らしき"バニーガール・ガード"十数人が現れ、ネル先輩とウカビさんが居る方へと走っていく様子が見える。

 

―――ネル先輩とウカビさんが心配だけど―――このままでは"白兎"を見失いかねない。

 

「――"RABBIT1"、引き続き"白兎"を追います!」

『"了解。サキとカリンをネルの方に合流させる!ミヤコ、追跡は君に任せるよ!"』

 

 "先生"の声に押されるように、避難していく客の流れに合わせて走る。群れをなす人波の中へ飛び込み、ちらちらと揺れる黒いうさ耳カチューシャとピンクの長いツインテールを目印に、"白兎"を追いかける。

 

「...っく...このまま流れに合わせて...!(逃がさない...ここで捕まえないと――!)」

 

 "白兎"は受付ホール―――ではなく、人の流れから離れて二人の"バニーガール・ガード"を()()()その傍の[VIP ONLY]と銘打たれたドアの方へと向かう。

 "白兎"の現在のランクは分からないけど、"バニーガール・ガード"を護衛に付けられるだけのVIP権力を持っている様だ。私も流れから離れて後を追う。"バニーガール・ガード"がドアを開け、"白兎"が私の方に振り向く―――

 

 

 

 

 

 

「――そこまでよ」

 

―――不意に、目の前に立ちはだかるバニーガール。

 

 

 真っ赤な瞳、ポニーテールで結い上げた長い紫色の髪に黒いうさ耳カチューシャを飾り、紫のバニースーツに黒いタイツ、赤いヒール。

 

「っ...イナバ先輩...!」

 

 [PL-15K(ハンドガン)]を携えたその姿は、明確に"白兎"を守る壁として――真っ赤な瞳を細めて私の前に立つ。

 

「――まさか、貴女達が"白兎"の追っ手だったなんてね。でも――私達には私達の任務がある」

 

 敵意は無い。揺るがない意思を灯した瞳で――イナバ先輩は()()()()()()()()[PL-15K(ハンドガン)]を構える。

 

「これ以上、進ませないわ。“RABBIT1”。――あなたは、ここで止まりなさい」

「っ...(やっぱり、"Кролик小隊"は...あの瞳は本当に私と...)」

 

―――()()()()()()()()()()()()()を目の当たりにして歯を食いしばり、緊張で身体が僅かに震える。

 

―――相手は、憧れ続けた先輩。

 

 けれど今は――追い求めるべき存在ではなく、追わねばならない白兎(ターゲット)を護る()

 

「――任務を請けているのはこちらも同じです。ですから――ここを突破します...!」

 

 瞑目し、深呼吸して目を開き―――[RABBIT-31式短機関銃(サブマシンガン)]を構える。

 

―――止まる訳には行かない。イナバ先輩と―――憧れの人と銃火を交えようとも―――!

 


side-イナバ

 

「――ミヤコ、退くなら今の内よ」

 

―――答えは分かり切っているけど、敢えて撤退を勧める。

 

―――タッ...!

 

―――ミヤコは絨毯を蹴って走り出して応える。絨毯を爪先が擦る音、疾風のような軌道。

 

 

タタタ――!

 

 左へ回り込み、回避動作を兼ねた低姿勢から三発。

 

「――!」

 

 私は即座に横跳びで退避し、牽制弾を二発撃つ。

 

「っく...!」

 

 ミヤコはギリギリで避け、流れるように身体をひねり、次の動きに繋げる。

 

 柱の陰に隠れて遮蔽として使い、そこから再び火線を放つ。音速の弾丸が私の肩口を掠め、壁面で火花を散らす。

 

「...流石ね。常に訓練は怠っていない証左ね」

 

 そう呟き、照準を彼女の動線へ―――撃つ。

 

「っ...!」

 

 当然弾道を読まれ、躱される。だが―――回避でバランスを崩したミヤコの動きがわずかに鈍る。

 

 私は一歩踏み込む。一方ミヤコは体勢を立て直しながら、斜め方向に再展開。まるで軌道を測るようなステップで距離を詰めてくる。

 

「...!(至近距離――近接攻撃ね...!)」

 

 その瞬間、私は理解する。[PL-15K(ハンドガン)]をホルスターに収め、両手を開く。

 

「――ふっ...!」

 

 瞬間―――ミヤコが跳ぶ。狙い澄ました突進。私の胴体めがけての体当たりに近い力任せな踏み込み。

 

「っち...!」

 

 私は左腕で彼女の突進を受け止め、右足で膝裏を払う。

 

「ぐっ...!」

 

 重心が崩れたミヤコの身体を、私は背負い投げの要領で地面に叩きつける。

 

 

―――ドンッ!

 

「っは...?!ま、まだ...!」

 

 ミヤコは[RABBIT-31式短機関銃(サブマシンガン)]を取り落とし、彼女のスマホも()()()()()()()()()()()()瞬間も視界の端に捉える。しかし彼女は粘る。床を転がりながら足を絡め、私の足を狩ろうとしながら、空いた右手がホルスターに伸びるのを制し―――背後に回る。

 

「――ミヤコ、ここまでよ。降伏しなさい」

 

  首に腕を回し、改めて地面に押し倒す。私の膝が彼女の肩を押さえつけ、完全な制圧態勢だ。

 

「ぐっ...!まだ...です...!」

 

 ミヤコはなおも抵抗を続ける。呼吸が荒くなり、全身を使って暴れ、拘束を引き剥がそうとする。だが、この体制は力任せでは崩せない。ミヤコを抑え付ける力を強め―――

 

『――こちら"Кролик2"。現状況を引き起こした"C&C"のエージェント二名の制圧を確認。()()()()()()()()()()、流石に数の暴力には敵わなかったみたいね』

『――こちら"Кролик3"、監視室に居た"C&C"のエージェントとモエ――"RABBIT3"を制圧。"バニーガール・ガード"が手間取ってたから、ちょっと手伝ったよ』

『――こちら"Кролик4"。スタッフエリア内にて、ラウンジに向かおうとしていた"C&C"エージェント一名、および"RABBIT2"を発見。交戦し制圧しました』

 

―――私のインカムに二人からの報告が入ると同時にミヤコの顔色が変わる。恐らく彼女は制圧された瞬間の通信を拾ったのだろう。

 

「――よくやったわ、ミヤコ。でも――()()()()()()よ」

「っ...先輩...」

 

 私はそう宣言し、僅かに力を緩める。

 

「スマホを...私のスマホ...」

 

 ミヤコの呟きを聞き、私達の傍の絨毯に落ちているスマートフォンに目を向ける。

 

 「...その中に...“白兎”の、情報が...あります...()()()()()で、開きます...どうか...」

 

 苦し気だけど―――()()()()()()()()()、そんな必死さがあった。

 

 私は手を伸ばし、ミヤコのスマホを拾う。

 

「――ありがとう。必ず、確認するわ」

「...お願い、します...」

 

 私の言葉を聞くと、ミヤコは安心した様に抵抗をやめ、静かに目を閉じる。恐らく制圧を解いても彼女はもう抵抗しないだろう。でも、念の為に制圧を続ける。

 

タッタッタ...!

 

―――私の背から聞こえる複数の足音。

 

「武装した生徒を確認、即時拘束を――」

「――私はVIPである"白兎"が雇った護衛の一人、『優曇華院イナバ』よ。この生徒は――ラウンジの騒動に呼応した行動を取った。協力者の疑いがあるわ」

 

 私達を囲む"バニーガール・ガード"に対して手を掲げ、静かに告げる。

 

「...確認します。――こちら"第二班"。BランクVIP"白兎"様の護衛を名乗る『優曇華院イナバ』様と接触。鎮圧された暴走客の関係者を制圧しています。...はい......了解――確認が取れました。鎮圧へのご協力感謝します。後は我々が引き継ぎます」

 

 "バニーガール・ガード"の一人が通信で確認を取り、私は頷いて拘束を解いて離れる。"バニーガール・ガード"達がミヤコを立ち上がらせ、手錠を掛ける。

 

「......」

 

 彼女は何も言わずなすがままに手錠を掛けられ―――私をチラリと見る。その瞳が私に何かを託していると感じ取れる。

 

「――拘束完了。留置場に連行します」

 

 "バニーガール・ガード"達に囲まれながら彼女は連行されていき、受付ホールを出て行くその背中を最後まで見送る。

 

『――暴徒鎮圧が完了しました。後処理が完了次第、ラウンジを開放します。お客様に多大なご迷惑をお掛けしたこと、申し訳ございません。繰り返します――――』

 

―――アナウンスが鎮圧完了と後始末の開始を伝え、ラウンジ内に残っている"バニーガール・ガード"達が銃弾や薬莢の回収、破壊された物品の交換を始める。

 

『――"Кролик1"、イナバ先輩。"白兎"です!スタッフさんから聞きましたよ。私を追い掛けてきた追っ手を止めたと!いやぁ、流石SRTですね!これで私も一安心です!にはは!』

 

―――そんな中、左耳のデバイスから"白兎"の嬉しそうな通信が聞こえる。

 

「...期待に応えられて何よりよ。それで、ラウンジが開放されたら、また挑んで"ランクS"を目指すのかしら?」

『そのつもりですが――その前に、捕まった追っ手のご尊顔を見に行こうかと!捕まった以上もう手出しもできないでしょうしね!にはは!あ、イナバ先輩には私への随行をお願いします!()()()()()()()()()()()()ので、もうコソコソする必要もありませんから』

「...分かったわ」

『お願いします!では、受付ホールで一度落ち合いましょう!』

 

 ”白兎"の指示に明らかな慢心を感じつつも指示を受け入れ、通信を切って受付ホールへ歩き出す。

 

―――私の手元には、ミヤコのスマートフォン。

 

「...見てみましょうか」

 

 真っ暗な画面を見つめて呟き、指を滑らせて画面を点け、ロックを解除する。パスコードは―――ミヤコの誕生日。画面が開くとそこには―――

 

「――これは...!」

 

―――"白兎"、『黒崎コユキ』のプロフィール。

 

―――所属校である『ミレニアム』内で起こした事件や、先日の()()()()()()()()への関連容疑。

 

 受付ホールに出て、近場のソファに座って私はミヤコが任務に向けて整理した情報を読み進める。

 

―――驚くべき情報ばかりだ。パスワードや物理的暗証番号であれば一瞬で突破する才能。彼女の倫理観の低さと組み合わされて引き起こされて来た数々の脱走、ハッキング事件。

 

 最後に―――ミヤコの個人的なメモと思われる一文が目に入る。

 

 

『"Кролик小隊"は騙されている可能性あり。"白兎"――黒崎コユキは、偽造した依頼を用いて護衛任務を装っている可能性がある?』

 

 

「...成程、ね。ありがとう、ミヤコ」

 

 スマホの画面を閉じ、瞑目してスマホをそっと胸に抱いて呟く。

 

―――()()()()()()()()()()は見出せた。三人にもこの情報と、()()()()()()()()()を伝えよう―――

 


~『ゴールデンフリース号』 留置場~

side-ミヤコ

 

「――入れ」

 

―――捕まって護送されながら歩き続けて暫く経っただろうか。"バニーガール・ガード"が留置場に並ぶ房の内一つのドアを開け、私は素直に中に入る。そこには―――

 

「――ミヤコ...!お前まで捕まったのか...」

「ミヤコも捕まっちゃったかー。いやー、ごめん。まさかリンゴ先輩がこっちに来るなんて思ってなくてさ...」

 

―――私を見て驚くサキと、申し訳無さそうに頭を搔くモエ。

 

「...お前まで捕まっちまったか。あぁクソ...!最悪な状況だ...」

「いやいや誰のせいだt「あ゛ぁん?」ヒエ...」

「――ウカビさんに八つ当たりした所で、部長が原因となった事実は消えませんよ」

「今回は流石に部長が悪いよ。ユウカから()()()()()()()()って何度も注意されてたこと、忘れてたでしょ」

「...ちっ...!」

 

―――私を見てガシガシと頭を掻き、ウカビさんの指摘を黙らせるも、アカネ先輩とカリン先輩のツッコミにぐうの音も出ず舌打ちするネル先輩―――"C&C"の四人。

 

―――"先生"、アスナ先輩、ミユが居ないのが気になるけど、それでもこの状況は最悪だ。

 

「――イナバ先輩と交戦中に、通信で制圧される瞬間の声を聞きましたが...皆さんはそれぞれどうやって制されましたか?」

 

 扉を閉め、施錠した"バニーガール・ガード"が離れて行くのを見届け、ベンチの空いている所に座りながらそれぞれがどうやって制圧されたのかを尋ねる。

 

「...あたしとウカビは"バニーガール・ガード"共の数の暴力で押し潰された。増援が次々来て、あたしが空けた包囲の穴をすぐに埋めやがってな...だが一番ムカついたのは()()()()()()()()()()()()だ!アレの横槍がなけりゃ突破できた筈だったんだクソ...!」

「多分サプレッサーでも嵌めてたんだろうけど、いやらしいタイミングで狙撃して来たから相当な腕前だよ」

 

 ネル先輩はそう答え、悔しそうに頭を搔く。狙撃は十中八九セイラン先輩によるものだろう。"バニーガール・ガード"側に立って支援を行った様だ。

 

「私とカリン先輩は、ラウンジを目指して移動中に"Кролик4"――レイセン先輩と出会してな。流石先輩だ、CQCでカリン先輩共々あっという間に制圧された」

「油断はしてなかったつもりだったんだけどね...流石『SRT』の精鋭だった」

 

 サキとカリン先輩は揃って悔しそうな、でも感心した様な表情を浮かべる。―――レイセン先輩は"オペレーター"だけど、室内での近距離戦闘の腕は小隊内でもトップクラスだ。私達と同様まだまだ未熟なサキや、初対面であろうカリン先輩では厳しい相手だっただろう。

 

「私とアカネ先輩は監視室に陣取ってたけど、掌握に気付かれて"バニーガール・ガード"が制圧に来てさ。最初は何とか捌けてたんだけど...」

「混乱を誘う為、監視室に密かに()()()()()()()()()ので、それを起爆してからラウンジへ合流しようかと思ったのですが――()()()()()()()()()()()()()()んです。そこに現れたのが、"Кролик3"――リンゴさんでした」

 

 モエとアカネ先輩は悔しそうな表情を浮かべる。―――通信でモエの驚いた声を拾っていたけど、こちらにはリンゴ先輩が来ていた様だ。アカネ先輩が()()()()()()()()()事は気になるけど―――モエと仲が良く、しかしそれは相手の癖を解っている事の裏返しでもあり、リンゴ先輩は爆薬を無力化した上で"バニーガール・ガード"の制圧に味方した様だ。

 

―――流石、"Кролик小隊"の先輩達だ。私はイナバ先輩と、サキとアカネ先輩はレイセン先輩と真っ向から交戦したけど、サポートでもやはり腕が立つ。

 

「...こうしてとっ捕まっちまったのは最悪だが――"Кролик小隊"が"白兎"のチビの()()に付いてるってことは確定だな」

「そうですね。"Кролик小隊"は潜入や隠密任務に長けた小隊。あのような環境に紛れての護衛は、先輩達が得意とする所です」

「木を隠すには森。ドレスコードもあって厄介ですね。しかし、問題は――」

「――どうやってこの状況を打破するか、だね」

 

 ネル先輩の言葉に頷き、アカネ先輩が挙げた言葉をカリン先輩が引き継ぐ。この留置場から出られなければ、そもそも"白兎"を追う事も叶わない。

 

「通信機は捕まった時に没収されたし、"先生"とアスナ先輩、ミユが今どうしているか分からないのが痛いな。留置場(ここ)に来てくれれば――」

 

 

 

 

 

 

―――コツコツ...

 

「――にはは!本当に"C&C"の皆さんでしたね!知らない方々も居ますが...私を捕まえようとする脅威だったなら一緒に捕まって良かったです!」

 

―――ヒールの靴音が聞こえて来て顔を向けると、ピンクのツインテールに黄色のメッシュを染め、黒いうさ耳カチューシャを飾り、黒いバニースーツの上にタイトな白い燕尾ジャケットを重ね、白いタイツ、黒いヒールを履いた生徒―――"白兎"こと『黒崎コユキ』さんが鉄格子越しに私達を見回して勝ち誇った様な、見下す様なニヤニヤした笑みを浮かべていた。

 

「......」

 

―――その背後では、状況が変わったのか直接護衛に付いているらしいイナバ先輩が、静かな、感情が読みにくい表情を浮かべて控えている。

 

「テメェ...!何をやらかしたのか分かってんのか?!テメェが賭けてる金は何処のものだ?!」

「お金は天下の回りものですよ。貯めるくらいなら有効に使うべきです。()()を果たすついでに経済を回してあげているというのに...何故そんな声を荒らげるんです?」

「...ダメだ。コイツ話が通じてねぇ」

 

 ネル先輩が立ち上がり、鉄格子を掴んで声を荒げながら詰問するも、コユキさんは何を言っているのかと不思議そうに首を傾げ、ネル先輩はとんでもないものを見る様な目でコユキさんを見つめながら言葉を零す。

 

「..."白兎"...コユキさん。貴女は本当に、『プレイラウンジ』のカジノで"ランクS"を取るつもりですか?」

「には?なんで見ず知らずの人が私の名前を...あぁ、"C&C"と行動してるなら情報は共有されますか。――当然ですよ!"ランクS"は()()()()()()()()()()()()()()()()()、凄まじいVIP待遇ですよ?これさえ勝ち取れれば――私は()()()()を得られるんです!」

 

 コユキさんに目的の真偽を尋ねると、既に勝ったつもりでいるのか素直に肯定する。―――カジノという運が絡む方法でVIP権限(自由)を得ようとする無謀さは理解出来ないけど―――ピンクの瞳は嘘を吐いていない。彼女は本気で"ランクS"を得るために、手近で且つ莫大な『ミレニアム』の債権を―――

 

 

 

 

ガチャ...キィィ...

 

「――おや?...あれは...!」

 

―――ふと、留置場の出入口の方からドアが開く音が聞こえ、コユキさんが顔を向けるとより嬉しそうに目を輝かせる。一体何故―――

 

 

 

 

「――あ、居た居た!やっぱり皆ここに居たんだね!」

「み、皆...大丈夫、ですか...?」

「"――やっぱり、皆捕まっていたんだね。通信が繋がらなかったからもしやと思っていたけど..."」

 

―――房の前にアスナ先輩、ミユ、そして"先生"が"バニーガール・ガード"()()()()姿を現し、コユキさんが浮かべた表情の理由を察する。私が捕まってからも時間が経っている。その間に三人は...!

 

「また知らない方々が二人...ですが、"C&C"の最後の一人も()()()()()()()にっはっは!これでもう私は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「...んー?()()()()()()()()()()()()()()?」

「――へ?」

 

―――アスナ先輩が不思議そうに首を傾げて発した言葉を聞いて、コユキさんと揃って目を点にする。

 

「...アスナ、何を言ってやがる?状況的にどう見ても...」

「"...アスナ。ちゃんと説明しないと分からないよ"」

「あ、そうだね!えーっと、アスナはね――」

 

 "先生"が促すと、アスナ先輩は()()()()()()()()()()()()金色のネックレスを掲げ―――

 

 

 

 

 


 

 

VIP RANK

 

 

‪☆‪☆‪☆ S ‪☆‪☆‪☆

 

 

一ノ瀬アスナ

 


 

「――"ランクS"に到達したから、()()()()()()()()んだよ!」

 

―――ネックレスからホログラムで浮かび上がった内容と、アスナ先輩の言葉を受け、誰もが固まって呆然としていた。

 

 

―――To be Continued―――

 

 

 




ということで次回は―――



百花繚乱編2章前編、色々凄かったですね。シリアスとギャグが適度に混ざって読みやすく、明らかになっていなかった要素も色々出たし、まさの人物も出たり...何よりアヤメが明らかになったのが大きいですね。おかげで百花繚乱編のプロットが進む進む...

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=326903&uid=187500
↑上記活動報告にて、ちょっとした報告があります。

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