Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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百花繚乱編2章後編更新されたので初投稿です。朽木先生は物書きの鑑。ブルアカは神、はっきりわかんだね(小並感)続きが気になる終わり方しやがって!

前回のあらすじ:直感チート


File60.M-21~兎は金羊の皮を跳ねる④~

~『ゴールデンフリース号』 留置場~

side-"先生"

 

「は...?え...?なんで...?」

 

 アスナが示した"ランクS"の証明を愕然とした表情で見つめ、コユキは震えた声で疑問を零す。

 

「"最初は潜入して解放するつもりだったんだけど。アスナが"今ならもっと連勝できるかも!"って言い出してルーレットやらポーカーに挑んでね。そしたら――()()()()()()()()()"ランクS"に到達したんだ。お客さんもディーラーも、皆呆然としてたよ"」

「ほ、本当に凄かった...明らかに危険なハイローラーばかりだったのに、全部的中させてた...」

 

 私の説明を聞いたミユが凄いものを見る様にアスナに目を向ける。

 

―――『んー...これかな!』

―――『ま...また一点賭け...?!流石に当たらないんじゃ――

―――『"...あ、当たった...!この配当とレートだと...うわ...凄い額になった。ディーラーも呆然としてるよ..."』

 

―――アスナの直感は凄まじかった。どんなゲームでも、どんなラウンドの状況でも、()()()()()()()を見抜き、ユウカから支給されたお金はあっという間に()()()()()()()()()()()()。その結果、『プレイラウンジ 』史上()()で"ランクS"に到達。そのVIP待遇の権限は高く、アスナが"留置場に送られた人達を解放して"と要望すれば、あっという間にネル達の拘留解除が行われた。成程"白兎"―――コユキが"ランクS"を得ようとする訳だ。

 

―――閑話休題。

 

「...こうなるなら、最初からアスナにカジノやらせて"ランクS"取らせときゃよかったな。あたしらの存在がバレちまっても――この船の中じゃ逃げ場も限られる。VIP権限使ってガード共も動かせば尚更だ」

「"過ぎたことを悔いても仕方ないよ。――アスナ、ネル達を解放してあげようか"」

「はーい!じゃ、部長達の解放お願い!」

「――承知しました」

 

―――アスナが"バニーガール・ガード"に指示すると、素直に頷いて動き出し、房の扉の鍵を開ける。最初に出て来たのはネル―――

 

「あ...や、ヤバ...!」

「――これで、形勢逆転だなぁ?さぁ、大人しく――」

 

 

 

 

「――何でなんでなんでーーーー!?」

「うわっ?!」

「ひゃっ...?!」

「"わっ...?!"」

 

―――コユキはそんな叫び声をあげ、私とアスナ、ミユを突き飛ばしながら留置場の出入口へと脱兎の如く走り出す。

 

「あっ?!クソ、待ちやが――」

 

 ネルが即座に追い掛けようとして―――

 

 

 

―――スッ...

 

「――待ちなさい」

「なっ...テメェ、邪魔するつもりか?!」

「い、イナバ先輩...?!」

 

―――イナバがネルの前に立ちはだかり、ネルは敵意を剝き出しにして声をあげ、ミヤコが困惑した表情を浮かべる。

 

「――まずは、貴女達に謝らせて。私達が偽装と気付かず請けた任務により、『ミレニアム』"C&C"、『シャーレ』が遂行中の任務を妨害してしまい――申し訳ございませんでした」

 

 イナバは姿勢を正し、そう謝罪の言葉を述べて頭を下げる。

 

「お、おう...って、どういうことだ?!コイツは"白兎"の護衛じゃねぇのか?!」

「...イナバ先輩、もしかして――」

「――えぇ。貴女が明かしてくれた情報のおかげで気付けたの。情報は共有できたから、返すわ」

 

 イナバの謝罪にネルが戸惑った声をあげ、ミヤコが彼女との交戦時に何かやり取りをしたのか驚いた様な、嬉しそうな表現を浮かべると、イナバはミヤコのスマホを取り出して私達に見せ、ミヤコに返す。

 

「ミヤコお前...!相手がКролик小隊(身内の先輩)だからって任務に関わる情報を...!」

「そうですね。本来なら褒められたものではありませんが...私達が持つ情報は、Кролик小隊(先輩達)にとって必要な情報かもしれないと思ったんです」

「...思い切った、ですが今回は的確な決断ですね。"白兎"については、彼女が持つ機密情報の漏洩リスクから『ミレニアム』内で解決することを目指し、『SRT』との"特逮協定"発効の対象としていませんでしたから。"Кролик小隊"が"白兎"について知らず、結果騙されてしまうのはあり得るでしょう」

 

 どうやらミヤコはスマホに入れていた情報をイナバに明かした様で、サキがミヤコを咎める様に声をあげるけど、アカネはミヤコの行動をフォローする様に意見を挙げる。

 "特逮協定"―――学校自治区外でも問題行動を起こす生徒や組織を捕まえる際に、その学校の治安維持組織だけでは対応出来ない場合に、『SRT』の部隊との協働を行う為の協定。

 でも、"白兎"―――コユキは自身が持つ才能で『ミレニアム』の機密情報を握っている。ミヤコやイナバが任務中にそれを知ったとしても悪用する事は有り得ないだろうけど、情報というのは一度拡散してしまえば止められない。他の誰かが、何処かで漏らしてしまう事を繰り返し、多くの人間に情報は広まっていく。そのリスクを考えれば、『ミレニアム』が"白兎"についての情報を『SRT』に共有していない事に納得出来る。

 

「えぇ。今回に関しては、ミヤコが取った行動で私達は――()()()()()()事態を避けることができる」

「――それは、()()()()()()()()()って認識でいいのか?」

「えぇ。――我々"Кролик小隊"は現時点を以て"()()"()()()()()()()()()()()。以降は――"C&C"及び『シャーレ』が遂行中の任務の支援を提案したいわ」

 

 イナバは"白兎"から受けていた護衛任務を放棄すると宣言し、私達への支援を提案する。

 

「『SRT』の精鋭小隊が味方になることはありがたいですが...具体的にはどのような支援を?」

「...幸い、"白兎"は真っ先に逃げ出してこの場に居ない。一つ、作戦を提案するわ――――」

 

 


~『ゴールデンフリース号』船内~

side-セイラン

 

「..."白兎"、確認しました...!」

「――こちら"Кролик2"、白兎(ターゲット)確認。現在メインホールを移動中。進行方向は第二甲板方面」

 

―――吹き抜けからホールを見下ろしていると、"白兎"が客に紛れてコソコソと移動している様子をミユと共に確認し、通信で共有する。

 

『こちら"02(ゼロツー)"、こちらからも白兎(ターゲット)を確認した。――"Кролик1"の()()が上手く行ってるね』

 

 ホールで客に紛れて"白兎"を探していた"C&C"のエージェント"02(ゼロツー)"カリンも報告を挙げ、()()()()()()()()()()が順調に進んでいると安心した様に呟く。

 

『順調ならいい。あたしは作戦通りに()()()()()()()()()()。――堂々暴れられねぇのがもどかしいな、ったく...』

『"01(ゼロワン)"のVIP権限があるとは言え、騒ぎを無駄に起こさず遂行できることに越したことはありません』

『分ぁってるよ。...よーし、白兎(ターゲット)視認。仕掛けるぜ。――"Кролик小隊"の連中も、白兎(ターゲット)に狙いがバレるなんてヘマするなよ』

 

 エージェント"00(ダブルオー)"ネルの愚痴を"03(ゼロスリー)"アカネが窘め、ネルは白兎(ターゲット)へ接触するべくそう言って通信を切る。

 

―――『私達"Кролик小隊"は"白兎"護衛任務を放棄。現時点より"C&C"及び"シャーレ"が遂行中の任務の支援を行う。但し――"白兎"は先に逃げ出していて、彼女自身が動転していて私達の方針変更に気付いていない。そこで、私達は"白兎"の()()()()()()()()()()()()()()()()。目的は――――』

 

―――イナバが私達に指示した作戦の内容を思い返す。"白兎"―――『ミレニアム』の一生徒の捕縛の為に"C&C"と『シャーレ』が動いていると知った時は嫌な予感を覚えていた。

 "C&C"という『ミレニアム』屈指の精鋭エージェントチームと、言わずもがなの『シャーレ』が協働してまで捕縛を目指す"白兎"についての情報をイナバから共有された時、予感の的中と―――早々『SRT(私達の学校)』には明かせない理由を察せる数々の情報に驚いた。

 電子戦を行う者からしたら垂涎ものの才能を持ちながら、倫理観の低さ故に自身の行動の影響の大きさ、罪を理解出来ないままに罰を受け続け、反発して更に罪を重ねている"白兎"―――『黒崎コユキ』。

 

 『SRT』所属の生徒(兵士)として、例え犯している罪に無自覚であろうと、"白兎"を野放しにする訳には行かない―――!

 

『――こちら"00(ダブルオー)"。()()()()()()()()()()()!作戦通り頼むぜ!』

「――"Кролик2"了解。ミユ、貴女も行けるわね?」「はい...!」

 

―――"00(ダブルオー)"ネルから通信が入り、観測手を受け持つミユに確認を取ってから[ステルスシューティング(相棒)]を構え、スコープを覗く。ホールを行き来する乗船客の動きを注視し続け―――

 

 

「――"白兎"確認...!」

「こっちも見えた。"00(ダブルオー)"も追って来てるわね」

 

―――()()()()()()"白兎"が乗船客を掻き分ける様にホールに入って来て、その後を"00《ダブルオー》"ネルが追い掛けている様子を確認し、スコープを覗き込む右目に意識を集中する―――

 

 

―――ピシュッ...!

 

―――行き来する客の流れの切れ目、ポッカリと空いた空間に"白兎"と"00(ダブルオー)"が差し掛かった所で、()()()()を狙って引き金を引く。

 放たれた亜音速弾は寸分違わず狙い通りに着弾。"00(ダブルオー)"ネルは驚いた()()()()()足を止め、"白兎"は脇目も振らずに乗船客の流れに再度突っ込み、流れを掻き分けてホールを抜けていく。その様子を確認し、スコープから右目を離して狭窄した視野を回復させる。

 

「ナイスショット...!流石先輩です...!」

『――ラウンジでガード共を相手取ってた時の狙撃、テメェだったのか..."Кролик2"。あん時はよくもやってくれたなぁ?』

()()()()は拒否させて貰うわ。あの時は護衛任務中だったし。...どうしてもと言うなら作戦終了後にしてほしいわね」

 

 "00(ダブルオー)"ネルがこちらを見上げながら通信でそんな言葉を零し、噂で聞いていた彼女の好戦性を気にしてそう返す。

 

『...そのつもりはねぇよ。今騒ぎを起こす訳にもいかねぇしな。――あたしはこのまま"白兎"を追う。そっちも()()()は忘れんじゃねぇぞ』

 

 "00(ダブルオー)"ネルはそう言い置いて通信を切り、ホールを抜けて行く様子を見届ける。

 

「――こちら"Кролик2"。"Кролик4"、そっちの準備は?」

『――こちら"Кролик4"。間もなくこちらの準備は完了します。"白兎"の動向は?』

()()()()()()()()。このまま行けば――」

 

 


~『ゴールデンフリース号』監視室~

side-リンゴ

 

「――"白兎"確認!第三甲板船尾側、客室区画に進入したよ!」

 

―――コンソールを弄りながら船内各所のカメラ映像を確認するモエが報告を挙げ、ピックアップした映像を見れば、客室区画の廊下で頻りに後ろを確認しながら走る"白兎"がカメラの前を通り過ぎる様子が見える。

 

「よーし、作戦通りに来たね。ここで騒ぎを起こすのはマズいから――"Кролик1"、"RABBIT1"。"白兎"は()()()()()()()()。客室区画を抜けた先、エレベーターホールで仕掛けて」

『"Кролик1"了解。――"RABBIT1"、行けるわね?』

『"RABBIT1"、配置に付いています。合図があれば何時でも動けます』

 

 モエの報告に頷き、イナバとミヤコに通信を繋げば了解の返事が返って来る。

 

「了解。こっちはしっかりカメラで追ってるから、何かあったら連絡するよ。――いやー、"ランクS"のVIP権限様々だね。()()()()()()様子を監視できるここの使用すら可能にするなんてねー」

 

 通信を切り、そう呟きながら部屋の出入口で見張りに立つ"バニーガール・ガード"をチラリと見る。

 

―――イナバから共有された"白兎"に関する数々のとんでもない情報と、それに伴う()()()()()。私はモエと共にカメラでの"白兎"追跡を受け持っているけど、『プレイラウンジ』のスタッフエリアにある監視カメラでは範囲が足りなかった。

 

―――『じゃあ、私が"ランクS"の権限で船全体の監視室を借りれるように言っておくよ。()()()()()()()()()()V()I()P()()()なんてすごいよね!』

 

―――けど、"C&C"のエージェント"01(ゼロワン)"アスナが持つ"ランクS"権限のおかけでこの監視室を借りる事が出来た。

 "ランクS"は到達するだけでも難しく、その権限の行使にも稼いだ額の多くを使う。それをアスナは―――()()()()()()()()であらゆるゲームで()()()()()()()を見抜いてどんどんお金を増やしている。

 ()()()()()()()()の持ち主はアスナ以外にも『百鬼夜行』にも()()()()と噂話程度の情報で知っているけど―――目の当たりにすると正に()()()だ。護衛任務中に遠目で様子を見ていて、運が向かず結構苦戦していた様だった"白兎"が可哀想になるレベルだ。

 

「――あ、そろそろエレベーターホールに出るね」

「結構足が速いねー。正に脱兎の如く――"Кролик1"、"RABBIT1"、準備(レディ)

『『――了解』』

 

―――モエの報告を聞いて思考を止め、二人に準備するように指示を出してモエがピックアップしたエレベーターホールのカメラ映像に注目する。幸いエレベーターホールは無人で―――

 

 

 

『はぁ...はぁ...あ、あのエレベーターに乗って最上甲板に出れば――』

『――白兎(ターゲット)確認!』

『うわぁ?!』

 

―――エレベーターに向かう"白兎"を捕まえるべく、ミヤコが身を隠していたトイレからバッと出て来て迫り―――

 

 

『運は向いてきているみたいだけど――捕まえさせはしない!』

『っく...!』

 

―――自販機ブースの隙間に隠れていたイナバも即座に動き出し、"白兎"とミヤコの間に割って入り、そのままミヤコと組み合う。

 

『行きなさい!最上甲板、ヘリポートよ!』

『は、はいぃ!』

 

 イナバはミヤコを抑えながら"白兎"にそう叫んでミヤコとCQCを打ち合い始め、"白兎"は慌ててボタンに取り付き、幸いにも止まっていたおかげでドアはすぐに開き、"白兎"は飛び込む様に籠に入って、数秒してドアが閉まる。

 

「――"白兎"の移動確認。"Кролик1"、"RABBIT1"はもう止めていいよー。..."先生"、こちら"Кролик3"。"白兎"の移動確認。ヘリポートまでもうすぐだよ」

『"――了解。こっちは相変わらず()()()()()()()()()()()()()()。ザックリした試算だけど――()()()()()()()()()()()()()()()()だね。

 "白兎"が()()したらこっちも切り上げるから、連絡をお願いするよ"』

「そりゃぁ凄いや。()()()()()様々だねー。"Кролик3"了解。それじゃ」

 

―――『プレイラウンジ』で"01(ゼロワン)"アスナを見守っている"先生"に報告すると、()()()()()で更に稼いでいると聞いて思わず口笛を鳴らし、了解を伝えて通信を切る。

 

「...あー、リンゴ先輩。エレベーターホールで()()()()()()()()発生。イナバ先輩とミヤコが...」

「...ん?何かあった――」

 

 

『っふ...!やるわね、ミヤコ...!』

『はっ...!まだ...!』

 

―――モエの報告を受けてカメラ映像を見上げると、二人はまだCQCで組み合って激闘を繰り広げていた。もう"白兎"はエレベーターに乗ったから()()()()()()()のに。仲の良さも考えものだと天を仰ぐ。

 

「あーあーあー。二人とも久しぶりに組み合うからって熱くなっちゃって..."Кролик2"、"RABBIT4"、聞こえる?"白兎"が逃げたエレベーターホールで()()()()()()()()()()()()が居るからさ。次のポイントに付く前に介入して止めてくれる?」

 

 セイランとミユに繋ぎ、二人を止めるようにと依頼する。流石に割って入れば止められると思うけど―――

 

 


~『ゴールデンフリース号』最上甲板~

side-サキ

 

「オラオラオラァ!!」

 

バラララ...!

 

「うわぁぁーーーー?!」

 

―――ネル先輩の[ツインドラゴン(サブマシンガン二丁)]から放たれた弾幕が"白兎"の周りを跳ね、"白兎"は悲鳴をあげながら更に逃げ足を速める。

 

「あぁ、クソ...!ネル先輩、考え無しに追い立ててこっちのペースが..."02(ゼロツー)"、カリン先輩聞こえるか?!」

『――こちら"02(ゼロツー)"、配置に着いた。状況は...あぁ、こっちでも見えた。リーダーの追い立てがいつも以上にすごい...でも、このままだと()()()()()に入るね。――任せて。()()()()()()()()()()()()()()()

「了解!」

 

 ネル先輩の行動は()()()()だがこのままでは()()()()()に逃げ込まれる可能性があり、しかしネル先輩に行っても止まらないだろうからとカリン先輩に通信を繋ぐと、ちょうど配置に着いた様でこちらの状況を確認して頼もしい返事を返す。

 

「待てやオラァ!!」

「うわぁぁーーー?!誰か助けてよーー!!」

 

 必死に逃げる"白兎"、それを追うネル先輩―――

 

 

―――ダァンッ!

 

「うわぁッ?!」

「ッ?!...今の狙撃はカリンか?!危ねぇぞ今の狙撃は!」

 

―――船橋の作業員用足場に付いていたカリン先輩の狙撃が決まり、"白兎"は()()()()()()()()へと―――ヘリポートに繋がるデッキへ逃げ込み、ネル先輩は驚いて足を止めてカリン先輩に抗議する様に通信を繋ぐ。

 

『そうだよ。"白兎"が違うルートに逃げ込みそうになったから妨害したんだ。...リーダーは突っ込み過ぎだよ。作戦で決めてたルート取り、忘れてたでしょ』

「...わ、忘れてるわけねぇだろ。ピーピー泣きながら逃げるもんだから、ちょっとばかり興が乗っただけだ」

 

 ネル先輩の抗議に対してカリン先輩は呆れを含んだ声色で返答すると、ネル先輩は図星だったのか一瞬黙り込み、取り繕う様に言い訳する。

 

「と、兎に角!あと少しで()()()()だ!このままあたしらはヘリポートまで追うからな!」

『了解。...遠目だけど、()()()()()()()()()()()ように見えるから、最後まで油断しないで』

「分ぁってる。――おら、行くぞサキ!()()()()()()()に勘づけない位にビビらせるぞ!」

「だったらもう少し突っ込みを抑えてくれ!追い付くのが精一杯だ...!」

 

 ネル先輩にそう返しながら"白兎"を追ってヘリポートを目指して走る―――

 

 

~『ゴールデンフリース号』最上甲板 ヘリポート付近~

 

「――ヘリポートが見えて来たな!アカネ、()()()()()()()はどうだ?!」

『――こちら"03(ゼロスリー)"。配置は完了しております。"白兎"を()()()()()()()()()()()には充分です』

「ソイツは結構!――ったく、アスナ様々だな!VIP権限がなかったら間違いなく大騒ぎだっただろうな」

「それでも、()()は少なからず騒ぎになるだろうが...船の運営(向こう)側もよく認めたな」

 

―――ヘリポートへと繋がるデッキを走りながらネル先輩はアカネ先輩に通信を繋いで確認を取る。()()()は終わっている様で、後は―――

 

 

「――"白兎"がポイントに到達した!アカネ、吹っ飛ばせ!」

『――了解しました』

 

ドォォォンッ!!

 

 

「うわぁぁーー?!」

 

―――ネル先輩の合図で、"白兎"が通り過ぎたデッキにある浮き輪や救命ボートが()()し、"白兎"は悲鳴をあげながら一心不乱にヘリポートデッキへと繋がる階段を駆け上る。

 

―――アスナ先輩が持つ"ランクS"のVIP権限を利用したアカネ先輩仕込みの爆薬は、先輩の計算通り、()()()()程度の、モエが見れば物足りないと不満を零すであろう小さな爆発を起こした。

 

 だが―――"白兎"を()()()()()()()()()()()()

 

「よし、"白兎"を追うぞ!サキ、仕上げと行こうじゃねぇか!」

「了解!」

 

 ネル先輩に頷き、[RABBIT-26式軽機関銃(相棒)]を構えて"白兎"を追ってヘリポートデッキへと向かう―――

 

 

 

 

 

「うわぁ来た?!早く!早く出してくださいぃ!!」

 

「待ちやがれ!」

「待て!」

 

ダダダダ...!

 

―――ヘリポートデッキに出れば、ヘリパッドに駐機されている複数機のヘリの内一機―――"Кролик小隊"配備機がローターを回していて、乗り込んでいる"白兎"が私達に気付いて顔を青ざめさせ、白目を剥いてコックピットに居るであろう"Кролик4"、レイセン先輩に向けて叫ぶ。私達は得物を構えて弾幕を張る―――

 

 

 

 

―――ガコンッ...

 

 

「クソ!離陸しやがった!」

「マズい...!」

 

バラララ...!

 

―――しかし()()()()()()()()()弾幕が当たるはずも無く、機体は離陸して高度を取り始める。私達は()()()()()()()()撃ち続ける―――

 

 

 

タタタタ...>

 

「――行ったか」

「――あぁ。こちら"RABBIT2"及び"00(ダブルオー)"」

 

―――機体が水平線に消えていく様子を見送り、先輩と揃って銃を下ろして作戦中に構築した共通回線に繋ぐ―――

 

 

 

 

「――()()()()()()()()()()()()()()。繰り返す――()()()()()()()()()()()()()()

 

 


~???~

side-コユキ

 

「......!......!」

 

―――誰かの声が聞こえて来て、寝落ちしていた意識が覚醒し始める。

 

「......ぅ...んん...」

 

―――人が折角安心して眠っているのに、()()()()()()()()()()()うるさい声だ。眠気でぼんやりした意識で無視しながら、私が遭ってきた()()()を思い返す。

 

「......!...キ...!」

 

―――"セミナー"が持っていた債権をお金に換えて、『プレイラウンジ』の"ランクS"を勝ち取って()()()()()()()()()()VIP権限を得ようと、更に保険を掛けて『SRT』の部隊に護衛まで依頼した。

 

「...キ...!...キ...!」

 

―――"C&C"が()()()()まで連れて捕まえに来た時は本当に驚いた。全く()()()はしつこい。でも、護衛に付いた"Кролик小隊"の皆さんはしっかり役目を果たしてくれた。

 

「...キ...!...ユキ...!」

 

―――"C&C"が起こした騒ぎでしばらく『プレイラウンジ』に入れなかったので、折角だからと捕まった"C&C"と()()()()の顔を見に行った。学校で散々私を()()()()()()()()()()連中が悔しそうに私を見ていたのには清々した。

 

「...キ...!...ユキ...!」

「...中々起きませんね。余程疲れたのでしょうか」

 

―――でも、捕まっていなかったアスナ先輩が"ランクS"を―――私が勝ち取りたかったVIP権限を持って留置場に来た時、()()()()()()()()()()()()()。"Кролик小隊"が居なければ、船内で追い詰められて捕まっていただろう。

 

「...ユキ...!...コユキ...!」

 

―――"Кролик小隊"から()()()()()()を提案され、真っ先に飛び付いた。それでも"C&C"と()()()()――イナバ先輩曰く『シャーレ』という組織らしい――はしつこく私を追い回し、"Кролик小隊"の皆さんの護衛のおかげでなんとかヘリに乗って飛び立つ事が出来た。

 

「...コユキ...!...コユキ!」

 

―――『ミレニアム』外に逃げるのは初めてで土地勘はまるで無いから、ヘリを操縦している"Кролик小隊"のレイセン先輩には()()()()()()()()()()に送る様にとお願いした。それまでの間に少しでも休もうと寝ていたけど―――

 

 

「――コユキ!起きなさい、コユキ!」

 

―――耳に届く声が大きく明瞭になって来て、意識も覚醒しつつあって回想を止める。やっぱり()()()()()()()()()()()声だけど、まだ寝ぼけている意識でははっきり分からない。

 

「...う~ん...うるさいなぁ...誰――」

 

 一度起きて抗議してやろうと寝ぼけ眼を開いて―――

 

 

 

 

「――やっと目を覚ましたわね」

「――は?」

 

―――スライドドアが開け放たれて外の―――()()()()()()()()()()()()()()がチラリと見えるヘリの機内。私の目の前に立って見下ろす、青い髪と瞳、"セミナー会計"の黒い制服に"セミナー"制式ジャケットを羽織るユウカ先輩を目の当たりにして意識が一瞬で覚醒する。

 

 その次に浮かんだのは()()。ヘリの外を確かめる為にも機内から出ようと左側に目を向ける―――

 

 

 

 

 

 

「――ふふ、余程お疲れだったようですね。夕方...丸一日()()()()()ようですし、さぞ()()()()()でしょうね」

 

―――ヘッドギアを付けた長い銀髪、"セミナー"制服とジャケットを羽織り、糸目で私を見つめて微笑む()()()()先輩―――ノア先輩が立っていた。

 ユウカ先輩の後ろに目を向ければ、コックピットからこちらに顔を覗かせて微笑むレイセン先輩の顔も見える。

 

 

―――先輩二人がこの場に居るおかげで、私でも状況は分かってしまう。

 

「――遊び倒したなら、次は...分かるわね――コ・ユ・キ?」

 

 

 

 

 

 

「うあぁああああ——なんで——!」

 

―――打つ手無しとなり、私は叫ぶ事しか出来なかった。

 


~『ミレニアムサイエンススクール』 ヘリポート~

side-"先生"

 

<「普段ならユウカちゃんに任せますが...今回はまず私が()()()するので、そのつもりでお願いしますね、コユキちゃん♪」

<「囧」

 

―――コユキがノアに引き摺られてヘリポートを離れていく様子を見送る。

 

「..."先生"、『シャーレ』、"C&C"の皆さん。今日中のコユキの捕縛、ありがとうございました。また...カジノでという手段は少々気になりますが、コユキが無断発行した債権分の回収まで行っていただき、感謝に堪えません」

「"どういたしまして。君達の力になれたなら幸いだよ"」

「使うかもしれねぇって、あたしらに金渡したのはお前だろ。使い道も指定されてなかったし、感謝するならあっという間に稼いだアスナにしとけ」

 

 私達に頭を下げるユウカに私は微笑みながらそう返し、ネルはこの位遂行出来て当然だと澄ました表情でそう返す。

 

―――『ミレニアムサイエンススクール』構内のヘリポート。ここには私と"RABBIT小隊"、"C&C"はネルが居る。他のエージェントについては、ウカビが()()()()()()()()()()事でアカネがお説教するべく、()()()()()()()()()()()()()()()アスナにカリンが付き添い、一足先に部室に戻っている。そして―――

 

「――そして、『SRT』"Кролик小隊"の皆さん。この度は、我が校の生徒による虚偽の任務によって、本来我々だけで解決すべき事件に巻き込んでしまい、誠に申し訳ございませんでした。また、依頼していないにも関わらず"C&C"、『シャーレ』に依頼した任務への支援を行っていただき、感謝に堪えません」

「謝罪を受け入れましょう。"白兎"――『黒崎コユキ』の才能や人格が原因であれば、状況としては私達が騙される形になってしまったのは仕方ないことよ。私達でなくとも騙されていたでしょうし。――"白兎"については"特逮協定"の発効対象外なので、こちらが入手した情報は抹消済よ。フックとして利用するつもりもないから安心して」

「...重ね重ねありがとうございます」

 

―――ユウカは"Кролик小隊"、イナバに向き直って深々と頭を下げて謝罪と感謝を伝える。イナバはコユキの才能や人格であれば騙されても仕方ないとし、ミヤコが明かした情報も抹消したと伝え、ユウカは改めて頭を下げる。

 

「――では、私もコユキの説教に向かいますのでこれにて。改めて――"C&C"、『シャーレ』、"Кролик小隊"の皆さん。この度はありがとうございました」

 

 ユウカは私達に向き直って頭を下げて改めてお礼を伝え、踵を返してヘリポートから離れて行く。

 

「"――イナバ、今回はありがとう。護衛()として相対した時は驚いたけど、途中からは護衛を継続しているように見せかけて私達に協力してくれて、本当に助かったよ"」

 

―――ユウカを見送り、イナバに向き直って頭を下げる。"Кролик小隊"のおかげでコユキの捕縛は上手く行った。彼女達が居なければ、アスナの"ランクS"のVIP権限があったとしても()()()()()になっていただろうし、そのまま護衛()として交戦を続けていたら厳しい戦いを強いられただろう。

 

「こちらこそ、()()()()()事態を避けられてよかったわ。――本来ならば褒められない行動を、メリットがあると踏んで実行したミヤコのおかげよ」

「...あ、ありがとうございます...!」

 

 イナバはそう言ってミヤコに顔を向けて微笑み、ミヤコは嬉しそうに笑ってお礼を言う。

 

―――SRT(身内)であろうと、コユキ(目標)の護衛という敵へ情報を渡す事は、こちらの作戦が読まれて対応されるリスクが大きい、利敵行為に繋がりかねない行動だ。

 でも―――ミヤコは"Кролик小隊"がコユキについての情報を知らない可能性。コユキが任務を偽装している可能性を見出し―――情報を渡す決断を下した。その結果が、"白兎(コユキ)"護衛任務を放棄し、"白兎(コユキ)"へは()()()()()()()()()()()()()()、実際には私達への支援を行うというものだった。

 

―――狭き門である『SRT』に入学出来るだけでも優秀だろうけど、イナバが目を掛けているだけあって、ミヤコは特に優秀だ。きっと彼女はイナバにも引けを取らない特殊部隊の兵士(SRTの生徒)となるだろう。

 

「――任務の支援にゃ感謝してる。だが...それでもあたしらの敵として立ちはだかった事実は消えねぇ。お礼参りも兼ねて、SRT(特殊部隊)の上澄み戦力がどんなものか見てぇ」

「...噂通りの好戦性ね、"00(ダブルオー)"。でも――私達は連邦生徒会長()への報告があるからすぐに帰還しないといけないの。偽装だったけど任務放棄は事実だし、顛末についても報告しなければ」

「"ダメだよ、ネル。イナバ達には『ブラックマーケット』での任務もあるし、君個人の我儘で拘束するのはよくないことだよ"」

 

 ネルがギラリと目を光らせて勝負を望むけど、イナバは『SRT』として帰還と報告を優先すると返し、私も賛意を示す。帰還中に事情を聞いたけど、イナバ達が請けた"白兎(コユキ)の護衛"は"連邦生徒会長(ユカリ)"が()()()()()()()任務だったそうだ。偽装と判明したものの、任務放棄は事実であり、その経緯や顛末を早急に報告しなければ内外への印象は悪くなってしまうだろう。

 

「...どうしても言うなら、『シャーレ』の"当番"で一緒になった時にでも受け立つわ」

「...チッ!それで勘弁してやらぁ。言質は取ったからな」

 

 しかし、イナバはネルの好戦性に配慮して譲歩する。対してネルは不満そうに舌打ちを返すけど、それで折れてくれた様だ。 

 

「――では、"Кролик小隊"は帰還するわ。"RABBIT小隊"、これからも『シャーレ』、"先生"の支えとなれるように励んでね」

「今回は私達もいい経験になったよ。四人とも頑張ってねー」

「今回は危うく()()()()()()()()()所だった。――四人共、この経験を糧にしてより成長することを期待するわ」

「「「はい!」」」

 

 イナバの言葉に対し、ミヤコ達は敬礼を返す。それを合図に、"Кролик小隊"のヘリのローターが回り始め、リンゴとセイランが乗り込む。

 

「"――イナバ、改めて今回の支援ありがとう。『ブラックマーケット』での任務も頑張ってね"」

「...ありがとよ、"Кролик小隊"。不満はあるが、支援が助かったのは事実だ。――"当番"でかち合ったら覚悟しとけよ」

「――ありがとう、"先生"、ネル」

 

 イナバは私とネルにも敬礼し、ヘリに乗り込む―――

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで、バニーチェイサー編終了です。次回はミレニアム巡りを挟んで―――二章、横領都市編です

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