Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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出したい生徒も居るので、ちょっとした日常的なアレです。


File61.M-22~千年都市にて~

~"岡崎研究室" "教授"オフィス~

side-"先生"

 

「――――って仕様で進めようと思うけど..."先生"、アロナ、どうかしら?」

「"――実現できれば()()()()()()()()ね。私は賛成するよ"」

『はい!スーパーAIであるアロナであれば()()()()です!まさか()()()()()()()を思い付くなんて...流石"教授"です!』

 

―――ユメミの説明を聞いた、机上に置いた"シッテムの箱"からホログラムを投影しているアロナが目を輝かせて頷く。

 


 

Prof.ユメミ

 "先生" 

 時間取れるかしら  

 

シャレ先

 今日は特に用事はないから大丈夫だよ 

 どうしたのかな? 

 

 

Prof.ユメミ

 『シャーレ』の業務について提案したいことがあってね 

 研究室の私のオフィスに来れるかしら 

 

 

シャレ先

 了解、オフィスだね 

 ヘリでそっちに向かうね 

 

Prof.ユメミ

 あ、"シッテムの箱"は忘れずにね 

 


 

―――『ゴールデンフリース号』での捕物騒動から五日経った今朝、『モモトーク』でユメミから彼女の研究室に来れないかと尋ねられた。ミヤコ達は依頼で朝から出払っていたけど、ハタテが『ミレニアム』で用事があるという事で、『シャーレ』にはアヤを留守に置き、"連邦生徒会"からヘリパイロットを借り、ハタテと共に『ミレニアム』に来て、彼女と分かれて"岡崎研究室"のユメミのオフィスに来ている。

 

「ふふ、ありがとう。――それじゃあ、この仕様で開発を進めるわ。他の仕事とか研究も同時並行で進めてるから少し時間がかかるけど、出来たら連絡するわ」

「"分かった、楽しみにしてるよ。...っと、思ったより早く終わっちゃったね"」

 

 ユメミの言葉に頷き、スマホを見れば予定よりかなり時間が―――午前の半分、午後一杯が空いてしまった。『シャーレ』に関わる事だからと長く時間を取ったけど、ユメミの説明は分かりやすく、確認もすぐに終わってしまったからだろう。

 ハタテから連絡は無い、まだ用事の途中だろう。どうしたものか...

 

「なら、『ミレニアム』を回ってみるのはどうかしら?"セミナー"、"エンジニア部"、"ヴェリタス"、"ゲーム開発部"...これら以外にも部活は沢山あるし、生徒達との交流も兼ねて、『シャーレ』の人脈を広げるいい機会じゃない?」

「"――確かに、ちょうどいい機会だね。でも、私自身『ミレニアム』の土地勘はあまりないけど..."」

「私はちょっと用事があるし...岡崎研究室(ウチ)から誰かガイド役を出すわ。んー、そうねぇ...」

 

 ユメミはそう提案し、タブレットを取り出す―――

 

 


~"岡崎研究室" 正面玄関~

 

「――おぉ!アリスは"先生"とアリスのドッペルゲンガーにエンカウントしました!」

 

―――ユメミの指示で私のガイド役となった"岡崎研究室"所属の二年生『真神アリス(Alice)』と共に玄関を出ると、そんな声をあげながら駆け寄ってくるアリスと出会す。

 

「ドッペルゲンガーって...名前が被ってるだけでしょうに」

「名前被りは物書き(ライター)にとって問題です!ルビで識別しなければ...あれ?アリスは謎の電波を受信していました!」

「"どんな電波を...?それにしても――君が一人で居るなんて珍しいね、アリス"」

「モモイ達は部室でゲーム開発の最中です!アリスは手空きでやることがなかったので、探索クエストに繰り出しています!」

 

 私の言葉にアリスはそう答える。以前受けたの依頼の後も、"ゲーム開発部"はサボらずゲーム開発を行っている様だ。

 

「"そっか。モモイ達がしっかり開発に打ち込んでいるならよかったよ"」

「はい!モモイが時々サボりそうになりますが、マリサが目を光らせてるおかげでサボりは少なくなっています!」

「面倒見がいいのは相変わらずね、マリサは。"エンジニア部"に居た時は悩んでいることが多かったし、"ゲーム開発部"は天職だったみたいね」

 

 アリスの返事に対してアリス(Alice)は安心した様な、懐かしむ様な表情を浮かべる。どうやら彼女はマリサと何かしら関わりがある様だ。

 

アリス(Alice)はマリサと知り合いなんですか?」

()()()()()()()()()()けど、中等部の頃に出会ってからの腐れ縁よ。ミレニアム(ここ)に進学してマリサは"エンジニア部"に、私は"エンジニア部"の喧騒を嫌って単独で研究活動を進めてたら"教授"にスカウトされて、"岡崎研究室"所属になって以降はちょっと疎遠になっちゃったけど」

 

 首を傾げるアリスの疑問に対してアリス(Alice)はそう答える。中等部―――中学生の頃からの付き合いなら性格や好みを解っていてもおかしくないだろう。

 

「疎遠...だったら、マリサに会いに行きませんか?アリスは"ゲーム開発部"の部員(パーティーメンバー)なので案内できますよ!」

「気持ちは嬉しいけど...今は"先生"のガイド役を"教授"から任されてるの。"先生"は『ミレニアム』と関わりを持ってからまだ日も浅いしね」

「――!ならアリスも一緒に行きたいです!探索クエスト中ですが、アリスはミレニアム(ここ)で知らないことは多いですから!」

 

 アリス(Alice)が私のガイド役を受け持っているとアリスの提案を断ると、アリスはパアッと瞳を輝かせてついて行きたいと提案する。―――アリスも『廃墟』で発見され、『ミレニアム』生徒として()()されてから日は経っていない。"ゲーム開発部"以外には"エンジニア部"や"ヴェリタス"、"セミナー"や"C&C"と関わりを持ったけど、規模が大きな『ミレニアム』なら私は勿論、アリスも知らない部活もあるだろう。

 

「ふむ..."先生"、どうする?是非は貴方に任せるわ」

「"――断る理由はないね。一緒に『ミレニアム』を見て回ろうか、アリス"」

「はい!ぱんぱかぱーん!勇者アリスはパーティーを結成しました!」

 

 アリス(Alice)から是非を尋ねられ、二つ返事で提案を受け入れるとアリスは満面の笑みを浮かべてそんな宣言を挙げる。

 

―――アリスとアリス(Alice)。名前が同じ不思議なコンビとの『ミレニアム』探索の始まりだ。

 


~『ミレニアムサイエンススクール』構内 河川敷~

 

「――おや、アリス...が二人居ますね」

「おぉ!アリスはスミレ先輩とエンカウントしました!」

「――あら、スミレじゃない。相変わらずトレーニングに余念が無いわね」

「"君は...?"」

 

―――河川敷を歩いていると、スポーツウェアに身を包んだポニーテールの生徒が私達に気付いてランニングを止めてこちらに歩いて来る。スミレという、二人は見知っている生徒の様だけど―――

 

「――彼女は『乙花スミレ』、二年生よ。"トレーニング部"部長を務めてるの。専門は...まぁ、()()健康科学になるのかしら」

「"運動好きなんだね。――私は"連邦捜査部『シャーレ』顧問、通称"先生"だよ。よろしくね、スミレ"」

「『シャーレ』...あぁ、"文々。新聞"のアヤさんが所属している"連邦生徒会"傘下の部活動でしたか。彼女には最近宣伝取材でお世話になりました。――初めまして、"先生"。『ミレニアムサイエンススクール』二年生、"トレーニング部"部長を務めております『乙花スミレ』です」

 

 アリス(Alice)の紹介を受け、自己紹介するとスミレは納得した様に頷く。どうやらアヤと関わりがあった様で、彼女と自己紹介を交わして握手する。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()きらいはあるけど、トレーニングには一切妥協しない娘よ。運動不足が気になるなら頼りになるわ」

「スミレ先輩はすごいです!アリスが編入されるにあたって身体測定を担当してくれた時に、短距離走でも長距離走でもアリスと並走できる程の速さと持久力を見せてくれました!」

「ふふ、アリスちゃんがすごいんですよ。まさかあれ程の――()()()()()()()()と錯覚する程の瞬発力と体力を持つとは...上には上が居ると思い知らされました。握力も平均を凌駕していましたし、アリスちゃんの筋肉量は体格以上です」

 

 瞳を輝かせるアリスに対し、スミレは感心した様に頷く。―――スミレの話を聞くと、やはりアリスは()()()()()()()()()()を持っていると実感出来てしまう。

 

「おかげで、()()()()()()()()()()()のきっかけになったんです。まだアリスちゃんには届きませんが、このまま続けていけば...」

「...筋肉優先は相変わらずみたいね、スミレ」

 

 スミレが言葉を続けるとアリス(Alice)は呆れた様に眉をひそめる。どうやら彼女が行うトレーニングには何か問題がありそうだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()筈ですから。特に――筋肉は鍛えれば鍛えただけ応えてくれます」

「アリス知ってます!スミレ先輩の考え方は脳筋というヤツです!」

「...失礼だけど、脳筋の表現が当てはまるから否定できないわね。それでいてやり方はしっかり健康科学に基づいてるから、()()()()()()()()()()()効果的なのが質が悪いのよね」

 

 アリス(Alice)の言葉に対してスミレが真剣な表情で言い返すと、アリスが脳筋だと表現し、アリス(Alice)は苦笑する。どうやらスミレは筋肉に対してかなり拘りがある様だ。()()()()()()()()()()()というアリス(Alice)の前置きを考えると、本当に妥協が無いトレーニングを考案、実施しているのだろう。

 

「――こうして新たな出会いを得られた縁です。お三方も一緒にランニング、どうですか?」

「"生徒の誘いだし...と言いたいけど、今は出会いや繋がりを広げる為にアリスと一緒にミレニアム(ここ)を見て回っていてね。ランニングやトレーニングはまた別の機会にしてくれるかい?"」

「私は"先生"とアリス――ミレニアム(ここ)の土地勘が弱い二人のガイド役だから、離れる訳にはいかないわ」

「...そう言った事情であれば仕方ありませんね。――"トレーニング部"は自らの身体的可能性を拓きたいと志す者全てに門戸を開いています。ご興味がありましたら、拠点である『トレーニングジム』までお越しください。では!」

 

 スミレは"トレーニング部"を宣伝し、ポニーテールとジャケットを翻して走り出す。―――()で偶に見かけたランナーやアスリートのそれよりも美しく、且つ()()ランニングを見送る。

 

「...脳筋な所はあるけど、インドア派が多いミレニアム(ここ)としては運動を啓発してくれるからありがたい存在よ」

「アリスはスミレ先輩と走るのは楽しいです!でも、モモイ達は何度誘っても()()()()()()()()のが残念です...」

「"はは...多分モモイ達はすぐにへばっちゃうだろうね。行動力と体力は違うものだから"」

 

 そんな会話を交わしながら、次なる出会いを期待して河川敷を歩き出す―――

 


~"特異現象捜査部"部室~

 

「――ここよ」

 

特異現象捜査部

-Special Phenomena Investigation Department-

 

―――アリス(Alice)の案内で屋内へと戻り、彼女は"特異現象捜査部"と銘打たれたドアの前で足を止める。

 

―――『..."先生"は、"特異現象捜査部"と面識はある?あそこの活動方針と範囲を考えれば、シャーレとの繋がりがあればありがたいと思うの』

 

―――"特異現象捜査部"については、"ヴェリタス"を設立した『明星ヒマリ』なる生徒が引き抜かれる形で部長となった事は彼女達から聞いている。その話の中で、"特異現象捜査部"設立にあたって()()()()()()と言っていた事を思い出し、その()()()を知る事が出来るかもしれないとアリス(Alice)の提案を快諾し、ここまで来た。

 

「多分()()は在室でしょうけど、他の実働組はどうかしら...」

 

 アリス(Alice)はそう呟きながらドアをノックする。数秒後―――

 

 

カチャ...

 

 

「"――寒ッ...?!"」

「わぁ?!冷凍庫を開けた時のような冷たさです!」

 

―――ドアが開いたと同時に()()()()()()が私達を襲い、アリスと揃って身震いする。

 

「...あぁ、()()()は確実に居るわね。いきなりごめんなさいね、『レンコ』。貴女達に会わせたい人達が居てね、訪ねてみたの」

「いや、こっちこそウチの『エイミ』が相変わらずで...で、後ろの二人がその会わせたい人?...なんか見たことある気がする生徒...と、その大人はもしかして...」

 

 アリス(Alice)はドアから顔を出した生徒―――茶色のショートヘアの左もみあげに白いリボンで短いおさげを結い、頭上に()()()()()()()()()()()()()を浮かべ、『ミレニアム』制式の白いシャツに水色のネクタイを締め、黒いジャケットを軽く着崩して羽織り、()()()()()()()()()、黒いスカート、ブーツを履いた―――『レンコ』なる生徒と謝罪を交わし、私とアリスを見て思い出そうとする様に首を捻る。

 

「"や、初めまして。"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"だよ"」

「アリスは『天童アリス』です!"ゲーム開発部"の部員(パーティーメンバー)にして、勇者を目指す者です!」

「"先生"、アリス...あぁ、部長が言ってたっけ。――私は『宇佐見(うさみ)レンコ』、"特異現象捜査部"の実働担当の二年生よ」

 

 レンコは思い出したようにポンと手を鳴らし、自己紹介する。アリスについては兎も角、"特異現象捜査部"部長―――ヒマリはこちらを知っているらしい。キヴォトスでも屈指の腕前を持つハッカーらしいから、その技術で情報を集めていたのだろう。

 そう言えば、"ゲーム開発部"からの依頼を受けて『ミレニアム』と関わりを持って以来、シッテムの箱(アロナ)とハタテが上げて来る()()()()()()()()()()()()()()()()()()の報告が増えた気がする。もしかしたら―――

 

「――初見さんなら、()()()()()()()から紹介するわ。...寒いのはごめんなさいね。()()()()()()()()()()()()()娘が居るの。さ、入って入って」

「"お邪魔するよ"」

「お邪魔するわね」

「"特異現象捜査部"邂逅イベント開始です!」

 

―――レンコがドアを大きく開け、冷気がより強まる中で部室に入る。

 

 

「――皆、お客さんよ。部長が前に言ってた『天童アリス』って娘と、『シャーレ』の"先生"」

 

―――部室の天井には業務用のそれよりも一回り以上大きな冷暖房が据えられていて、静かながら()()()()()()()程の冷風を吐き出している。

 その下には楕円形のテーブルがあり、資料や何かのホログラム、タブレットやノートパソコンが乱雑に置かれている。そのテーブルを囲う椅子に座っている―――

 

「『シャーレ』...確か、"連邦生徒会"が最近立ち上げた()()()()()()を持つ部活動だっけ。――どうも初めましてね。私は『宇佐見スミレコ』、"特異現象捜査部"副部長にして――オカルトを探求する"秘封倶楽部"初代会長よ!...後者は()、だけど。それからレンコと同姓で察せると思うけど、レンコとは従姉妹の関係よ」

 

―――手元に黒い帽子を置いた、茶色のショートヘアの頭上に()()()()()()()()()()()()()()()を浮かべ、茶色の瞳の目の上に赤いアンダーリムの眼鏡を掛け、『ミレニアム』制式の白いシャツ、水色のネクタイの上に紫のチェック柄のベストを身に付け、その上に裏地にルーン文字の模様を誂えた黒いコートを羽織り、紫色のチェック柄のスカート、靴下とスニーカーを履いた、『宇佐見スミレコ』と名乗る生徒。

 

「...部長が言ってた、"教授"が『廃墟』で見付けて連れてきた生徒がそんな名前だったわね。――初めまして。"特異現象捜査部"所属、二年生の『小泉(こいずみ)メリー』です。正確には『マエリベリー』という名前ですが、ちょっと長くて親しみにくいので、どうか『メリー』と呼んでもらえると嬉しいです」

 

―――手元にモブキャップ風の帽子を置いた、少しウェーブが掛かる金髪ショートヘア、頭上に()()()()()()()()()()を浮かべ、『ミレニアム』制式の白いシャツに水色のネクタイを締め、紫色のジャケットを羽織り、更に毛布を重ね、紫色のスカート、ブーツを履いた、『小泉メリー』と名乗る生徒。

 

 そして―――

 

 

「...『天童アリス』、『シャーレ』の"先生"...部長が興味を示してた存在だね。――一年生、"特異現象捜査部"の『和泉元(いずみもと)エイミ』だよ。よろしくね、二人共。...んむ...」

 

―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を晒した、ピンクのロングヘアに同色のヘイローを浮かべ、首元に赤いヘッドホンを掛けた、『和泉元エイミ』という生徒は淡々と自己紹介し、手にしていたソーダ味らしきアイスバーの包装を破って中身を取り出して口に咥える。

 体型も相俟って()()()()()()()()()()()服装だけど、()()()()()()この室内で平然としていて、且つアイスを食べている事の方が異質だ。

 

「...ま、初見さんで且つ男性(異性)なら気になっちゃうよね。エイミは()()()()()()でさ。これでもエイミ的には()()()()って宣うのよねぇ...」

特異現象捜査部(ウチ)の実働組では、効率重視で八面六臂に活躍できる優秀な娘なんだけど...()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが心配なんだよねぇ」

 

 アイスを食べるエイミを見ながら、レンコが苦笑、スミレコが心配そうな表情を浮かべて事情を説明する。―――エイミを改めて見れば、露出された肩や足にガーゼや湿布が貼られているのが分かる。傍に置いてある銃器も[SPAS12(ショットガン)]だし、恐らく戦闘では積極的に前に出るのだろう。

 

「暑ければ服を脱いで温度調整するのは誰もがやることなのに...それに、任務はすぐに終わる方がいいでしょ。それだけ私達ができることが増えるんだし」

「エイミの場合はそれ以上脱がれると困るのよ。いくら私達が頑丈だからって怪我していい理由にはならないし」

 

 アイスを一口齧って飲み込み、口から離したエイミの言葉にレンコが言い返す。―――キヴォトスで過ごす住人は総じて銃撃や爆発に耐性があり、特にヘイローを持つ生徒はより頑丈で耐性も強い事はこれまでの活動で解っている。

 でも、レンコの言う通り頑丈さを理由に負傷も厭わない行動を取るのは危険だ。効率の追求はリスクの増大に繋がる。大きな怪我を負ってしばらく動けなくなってしまえば、その期間中に出来た筈の事も出来なくなって結果として効率の低下に繋がる。

 

「退き時は弁えてるから、大事を起こすつもりはないよ。...でも先輩達の心配も分かるし、無茶はやっても無理はしないようにはする。――それで、"先生"とアリスは私達"特異現象捜査部"に挨拶に来ただけなのかな」

「"挨拶と、君達"特異現象捜査部"そのものについて知りたくてね。以前、"ヴェリタス"から"特異現象捜査部"の設立に()()()あったと聞いていて、少し気になってたんだ"」

 

 エイミの確認にそう答えると―――

 

...そういや『シャーレ』の権限って...これはワンチャン...!聞きたいなら教えよう!現"セミナー会長"『調月リオ』の()()で私達がどんな酷い目に遭ったか...!」

「私達じゃなくて、実質()()()()()でしょ。残念ではあったけど、()()()()()()()()()()()()()()し」

 

―――何か呟いたスミレコが茶色の瞳を輝かせ、そんな宣言をする。しかし、レンコは呆れた半目でスミレコを見ながらそんなツッコミを挙げる。

 

「レンコうるさい。――さて、私スミレコ、そしてレンコ、メリーは元から"特異現象捜査部"所属じゃなかったの。元々は"秘封倶楽部"っていう()()()()()()()部活動で活動していたの。

 "秘封倶楽部"の活動方針はズバリ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ!科学では解明できない現象、生物、様々な事象の情報をサーチし、その真偽を調べるの」

 

 スミレコはレンコのツッコミをピシャリと黙らせ、"秘封倶楽部"について説明する。活動方針は如何にも『ミレニアム』らしいものだ。

 

「私とメリーは元々無所属で、ぼんやりと"オカルト絡みの研究とかしたい"なーって考えてたら、スミ姉から誘われてね。部活動設立の最低人数は満たせなかったけど、廃部措置は取られないだけの成果はポツポツと出せてた」

「ですが...あれは本当に突然でした。――私達の部室にリオ会長が直接訪ねてきて、"特異現象捜査部"設立にあたり、"秘封倶楽部"を()()()()()()()()()()()と宣言したんです」

 

 レンコがメリーと共に"秘封倶楽部"に加入した経緯を話し、続けてメリーが状況の変化を説明する。―――これが、コタマが軽く流した()()()だろう。

 

「あぁ、今でも思い出すとムカつく...!"特異現象捜査部"の活動方針が秘封倶楽部(ウチらの部活)と似ていたのは分かる。予算とか人手的に()()は妥当な方法だってのも分かる。でも――これから設立する部活動に、()()()()()()()秘封倶楽部(ウチらの部活)の方を()()()()()のはおかしいと思わない?!普通逆でしょ?!」

 

 スミレコはそう声を上げて私達に同意を求める。―――活動方針が似てる。つまりほぼ同じ活動を行う部活動を二つ並立させるよりは、一つに纏めた方が予算や決裁を考えればなるほど効率的だろう。

 しかし、"セミナー会長"リオは設立しようとしている―――即ち活動実績が無い部活である"特異現象捜査部"に、"秘封倶楽部"を()()()()()形での統合を行った。スミレコの言う通り、"特異現象捜査部"を"秘封倶楽部"に合流させるのが自然だろう。

 

「でも、リオ会長は"ヒマリ(部長)の才能は"全知"に恥じないものであり、彼女を部長()に据えた方がより効率的になる"とか、"秘封倶楽部が提出する成果は()()()()()()()()()()()()()からその補強が必要"とか、"特異現象捜査部は()()()()()()()()になるから、活動はより柔軟に行える"とか...スミ姉の抗議の尽くを淡々と潰してね。

 私とメリー的には()()()()()()()の方針から大して変わらないし、人手と頭脳が増えるなら、()()()()()()()()()()だから賛成したの。...()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とまで言われて、スミ姉も反論手段失って唸るだけになってたし。――そういう訳で、スミ姉が泣く泣くリオ会長の提案を受け入れて"秘封俱楽部"は"特異現象捜査部"に合流したの」

 

 レンコはそう説明してやれやれと頭を掻く。―――この経緯はヒマリが開発した[鏡]の没収経緯と似ている。現"セミナー会長"であるリオとは会えていないけど、感情や反感を考慮せず、効率や合理性を重視、追及する性格であることは推測出来る。研究者、エンジニアらしくはあるけど、ユメミと比べると誰もが抱く感情への考慮が薄い気がする。

 ユメミは教授(教職)でもあるからこそ感情面にも目を向けているのだろうけど、それでもリオの判断や措置は聞いた限りでは反感を抱かれるものばかりだ。セミナー会長(学校のトップ)としては効率、合理性を求めるべきだけど、そもそもは学びの道にある生徒―――子供だ。彼女はセミナー会長(学校のトップ)として背負う責任に耐えられているのだろうか。

 

―――閑話休題。

 

「実際、ヒマリ部長の頭脳、才能は"全知"の通りでしたし、エイミちゃんも極度の暑がりと効率主義に目を伏せれば優秀で、"秘封俱楽部"の時よりも多くの成果を出せるようになりました」

「"秘封俱楽部"で出してた成果もちゃんと汲んでくれたし、現場で動ける人員が四人居るからヒマリ部長も助かってるっぽいし、"特異現象捜査部"への合流は悪くないと思ってるわ。――説明はこんな所かな。"秘封俱楽部"の合流措置に思わない所がない訳じゃないけど、やりたいことはやれてるからあまり気にしてないわ」

「"なるほどね...ありがとう、よく分かったよ"」

 

 レンコの言葉に頷き、お礼を言う。―――多少の不満、禍根はあるものの、部活動としては部員間の仲も良好で成果も出せている様だ。

 

「私は絶対忘れないからね!"特異現象捜査部"は()()"秘封俱楽部"の下地があるってこと!...ヒマリについては、性格は今もよく解ってないけどね。顔合わせした時は渋々要請を受け入れたって言って憚らなかったし、ことある毎に"下水道を流れる水"なんてリオを罵倒するし、でも活動は精力的に進めてるし...全知(天才)っていうのはやっぱり思考の次元が違うのかしらねぇ」

「――そのヒマリ部長は居ないの?普段は部室に籠って()()()()()()印象があるけど」

「アリスも気になります!アリスの学籍を作ってくれた恩人なので、お礼と挨拶がしたいです!」

 

 スミレコの言葉に対してアリス(Alice)が疑問を挙げ、アリスも続く。確かに、この部室には四人しか居ない。私もヒマリとは会ってみたかったけど、外出でもしているのだろうか。

 

「部長は朝から出かけてるよ。何処に行ったかは私達も分からない。ただ――」

 

 アイスを食べ終えたエイミが包装と棒を傍のゴミ箱に捨てながらヒマリは出かけていると答え―――

 

 

 

 

「"()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()"って言い残してたから、もしかしたら――()()()()()()()()かもしれないね」

 


~『ミレニアム』構内のビル~

side-???

 

ウィィン...

 

「――来たわね」

「――これで揃ったわね」

 

―――自動ドアが開き、車椅子を動かして入室すると、『ミレニアム』の夜景が一望出来る窓を背に、現"セミナー会長"にして"下水道を流れる水"であるリオと、"連邦生徒会"公認教師"教授"にして"洪水の濁流"であるユメミ。

―――()()()()()()()()()()()()()()である私と()()()()()()である事が奇跡とも言える人間性だけど、その頭脳と才能は確かな二人が私に振り向く。

 

「この超天才清楚系病弱美少女ハッカーを態々自治区の隅っこにまで呼び出すとは...調査活動がなければ断っていましたよ」

 

 そう愚痴を零しながら車椅子を動かして二人の下へと向かう。

 

―――今朝、『モモトーク』でリオから"()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()"と呼び出しがあり、そろそろ()()だろうと纏めたデータを軽く整理してから呼び出し先―――リオのセーフハウスの一つであるこのビルまでリニアやモノレール、地下鉄を乗り継いで来た。

 

「朝にリオから呼び出しを受けて、こんな夜になってやっと全員集合になった辺り、相変わらずマイペースね、『ヒマリ』」

「それは貴女もでしょう、ユメミ。相変わらず"行けたら行く"と曖昧な返事を返して、来たのは夕方だったじゃない」

「こっちも仕事があるんですー。本分は生徒だけど、"教授"としてやるべきこともあるんだから」

 

 ユメミの言葉に対し、リオが半目で睨んでツッコミを入れると、不満そうに頬を膨らませて言い返す。

 

「あら、()()()()()()()()()()()して、()()の動向を追うことが"教授"の()()()()()()なんです?」

 

 二人の下で車椅子を止めて微笑み、移動の道中で調()()()()()気付いた事を指摘してやる。

 

―――道中暇だった事もあるけど、私が()()を調査した結果と、()()()()()()()()の様子とを比べて確認するべく、『ミレニアム』内各所の監視カメラを()()()いた。

 ()()だけでなく、噂の『シャーレ』の"先生"、()()と同名である岡崎研究室(ユメミの研究室)の娘も一緒に居て、予想外に観測データも得られたのは僥倖だった。

 "特異現象捜査部(私が率いる部活)"を訪ねた後は、『ミレニアム』の様々な部活動の面々の下を、()()の好奇心のままに引っ張られながら訪ねて回っていた。

 

―――ジェットパックらしき開発品の飛行試験を敢行したものの、制御系に不具合を起こして河に突っ込む様に落ちた"エンジニア部"のリカコを助けたり。

―――()()()()()()()隠れてサボり中の"C&C"エージェントの一人であるウカビちゃんに誘われた()()がゲーム対戦に挑み、連敗を重ねるウカビちゃんが途中でアカネに見つかってしまい、問答無用で引き摺られて行ったり。

―――お昼時には、ユウカとノアに出会して一緒に昼食を取ったものの、ノアが()()()()()()()()()()()()()()()結果、案の定跳ねたカレーが制服に掛かってしまってちょっとした騒ぎになってしまったり。

 

 カメラを通して眺めていると、()()はとても楽しそうで―――

 

「...()()()()()()()()()とは思ってたけど、案の定ね。悪戯好きで気まぐれな貴女と違って、こっちは()()()()を兼ねてたのよ」

「それはこちらもですよ。気まぐれ屋は貴女も大概でしょう?"澄み切った純正のミネラルウォーター"と"制御できない洪水の濁流"を一緒にして欲しくはありませんね」

 

―――ユメミの言葉に言い返す。やはり、彼女は私の行動と同じ事をやっていた様だ。ユメミと同様、私も()()()()()には気付いていた。でも、反論の材料とする為に痕跡は記録して彼女の行動は放置していた。()()()()()()()であったという事は、彼女の行動も―――

 

「――それ以上は不毛な議論よ。相変わらず、チヒロが聞いたら頭を抱えそうなやり取りね。...本題に入りましょう。貴女達を呼んだのは、『廃墟』で見付かったアンドロイド『AL-1S』――現在は我が『ミレニアム』一年生の生徒として編入されている『天童アリス』が()()()()()()()()()()()の結論を出す為よ」

 

―――リオがそう会話を切り、傍の机にあるコンソールを操作して()()―――『天童アリス』の肖像ホログラムを展開する。

 

―――彼女の生徒としての編入を請け負った私が、追認の対価としてユメミと共にリオから依頼されていた、"『天童アリス』の調査"。身体能力や人格、様々な面からのアプローチで調査を行った。道中での確認も経て()()()()()()()()()()けど、リオがこうして呼び出したという事は、あらゆる情報を収集、把握しようとする彼女も()()()結論を出した様だ。

 

「貴女もやっと結論を出せたみたいね。――情報やデータは共有してるし、さっさと結論を挙げちゃいましょうか」

「そうですね。超天才美少女ハッカーである私の能力故に、暇ではありませんから」

「...そうね。『AL-1S』、『天童アリス』は――」

 

 

 

 

 

 

「――世界を終焉に導く兵器」

「――可愛い後輩ですよね♪」

「――()()()()()()()可能性の塊よ」

 

―――静寂が部屋に満ちる。

 

「――は?」

 

―――数秒後、我に返った私はリオに対してそんな声を零す。まさか、リオがそんな物騒な結論を出すとは予想外だ。

 

「――『廃墟』は"無名の司祭"達の時代の遺構の一つよ。私が集めたデータに散見された、"名も無き神々の王女"に関する情報と『AL-1S』の調査で分かった種々の特徴から――()()()()()()()()()()()()()を見出したわ」

「..."無名の司祭"、ですか...それに関する情報はリオ、貴女が詳しいことは把握していますが――そのような情報は私にも共有してもらいたかったですね。周囲に情報の共有を求め、しかし自身は情報を故意に隠す...だから"下水道に流れる水"なんですよ、貴女は」

「...謎の多い過去の存在の情報が拡散されたらどうなるか分からないわ。だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが合理的よ」

 

 リオを半目で睨んで情報の共有不足を指摘するけど、彼女は当然だと澄ました表情で反論する。―――『ミレニアム』に進学し、"セミナー"所属となった頃からリオはこうだ。合理性を追及し、その為にあらゆる情報、データを収集する癖に、()()友人である私達にすら()()()()()()事が多い。そのおかげで何度苦労した事か...

 

「"無名の司祭"に関しては私も調べてたけど...そこまで分かってたなら、ヒマリの言う通り共有して欲しかったわね。"三人寄れば文殊の知恵"――シングルコアよりもトリプルコアの方が演算はより高速で効率的よ」

「想定外の不具合で他二つのコアに影響が出てはあっという間に機能不全よ。だったら、一つのコアでできる限りの処理を可能にする方が効率的で――安全でしょう?」

「...はぁ...全く、リオは相変わらず...」

 

 ユメミにも同様に反論し、ユメミは額に手を添えてため息を吐く。

 

「――兎に角。結論を違えたことは残念よ。『AL-1S』を調べていて、()()()()()()()()()()()身体能力や()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()...アンドロイドとしても異質であることから、()()()()()()()()()()()を見出せなかったのかしら」

「貴女こそ、彼女の学校生活を見ていなかったんですか?好奇心で周囲を振り回す所はありますが、生徒――後輩として見れば可愛いものでしょう?あのような人格が形成されている以上、貴女が考える脅威になるとは思えませんが」

「――感情は関係ないわ。『AL-1S』が持つ能力が()()()()()()()()()()()()()()時点で、『ミレニアム』を――キヴォトスを"無名の司祭"の脅威から守る為に()()すべきよ」

「...そうですか」

 

 リオの結論が変わらない事を確信し、息を吐く。

 

「...なら、依頼も達成したことですし私達の協力関係もここまでですね。貴女が『天童アリス』を脅かすというのなら――」

 

 

 

 

 

 

―――チャッ...

 

「――は?」

 

―――赤く塗装された[SOCOM Mk.23(ハンドガン)]が私に向けられる。

 

「...ごめんなさいね、ヒマリ。貴女が()()()()()()なら――私は()()()()()()

「何を言って――」

 

 

 

 

―――フッ...

 

―――ガンッ...!

 

「がっ...?!」

 

―――背後から誰かが私の後頭部を強打し、意識が薄れていく。

 

 

 

 

「ユメミ、どういうつもり...?!」

「――リオの言わんとすることも理解できる。だから...せめて私だけは貴女に――」

 

 薄れゆく意識の中で、戸惑うリオと、()()()()()()ユメミの声が聞こえて来る―――

 

 

―――to be continued―――

 

 




 ということで、ミレニアム巡りで『特異現象捜査部』との邂逅でした。秘封俱楽部は原作での活動方針が特異現象捜査部と似ている所がある事。現状同捜査部がヒマリとエイミしか居らず、二年生で間を埋めたい事もあってこのような形になりました。
 菫子は原作において高1ですが...蓮子と比べて年上っぽいし、明言されてないけど同姓だから蓮子のご先祖っぽいし...で、当作品では三年生、レンコの従姉となりました。

 さて、ラストで察せるかと思いますが―――次回、パヴァーヌ二章本格突入です。

感想、評価、お気に入り、栞、ここすきは大歓迎です。作者が喜びでわっぴ~します。

~生徒紹介~

名前:宇佐見(うさみ) スミレコ
所属校:ミレニアムサイエンススクール
学年:三年生
部活動:特異現象捜査部(旧:秘封俱楽部)
役職:副部長(旧:秘封俱楽部会長)
装備:HG(Glock18(ラスト・オカルティズム))

名前:宇佐見(うさみ) レンコ
所属校:ミレニアムサイエンススクール
学年:二年生
部活動:特異現象捜査部(旧:秘封俱楽部部員)
装備:SR(M14(スターゲイザー))

名前:小泉(こいずみ) メリー(正式:マエリベリー)
所属校:ミレニアムサイエンススクール
学年:二年生
部活動:特異現象捜査部(旧:秘封俱楽部部員)
装備:HG(M1911(ボーダー・ウォッチャー))
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