Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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アビドスの状況説明回です。


File5-Ab.~砂漠の支配者と抵抗者達~

~アビドス高等学校 校庭~

side-モコウ

 

「クッソー!!今日は勘弁してやらァ!!」

 

 ジャージをボロボロに焦がし、ヘルメットのバイザーの左目側も砕けた"カタカタヘルメット団"幹部がそう叫び、ボロボロの団員共を連れて退いて行く。

 

「――ん、泣きのもう一発」

 

―――ドゴォォォンッ!!

「「「「「グワーッ?!」」」」」

 

 シロコがドローンを操作し、ポッドからロケット弾を一発"カタカタヘルメット団"に撃ち込む。()()()()()()()()数人が派手な爆発と共に派手に吹っ飛び、恐れをなした団員共は散り散りに逃げていく。

 

―――ドサッ...

―――あ、幹部のヤツがこっちに落ちて来た。丁度いい、捕虜として捕まえておくか。()()()()()もあるし。

 

「うへ、すごい爆発だね~。いつもよりすごくな~い?」

「ん、モエが物資からくれた。『SRT』で運用してる()()()ロケット弾だって。運良く私が使ってるロケット弾と規格が同じだった」

「さ、最新って...一発の値段結構するんじゃ...」

「くひひ、火力があるならいいじゃんいいじゃん!私達が持って来たものだから無料(タダ)だしね~」

 

 シロコの言葉に委員会(ウチ)の会計担当のセリカが顔を青くするが、モエは気にするなと笑いながら棒キャンディを咥える。―――幹部のヤツを縛って肩に担いで振り向けば、委員会の皆と"RABBIT小隊"は打ち解けた様に会話を交わしている。

 

「っし...どうにか()()を凌げたな。――"先生"、"RABBIT小隊"、ありがとな。アンタ達が居なかったら、弾切れでこの()()()()()()()()()()ところだった」

「"先生"の指揮もすごかったですね~。私達だけで戦う時よりずっと戦いやすかったです☆」

「そうですね...私よりも正確な情報と指示を出していましたし、これが()()の力なのでしょうか?」

「"私はこのタブレット("シッテムの箱")の性能と、優秀な君達に助けられただけだよ"」

 

 "先生"は頭を掻きながら謙遜した言葉を返す。―――正確な情報を得られても、それを効果的に利用出来なきゃ意味は無い。"先生"の指揮や合図は的確で、何より私達は()()()()()()()()()()()。アヤネには悪いが、後方から指揮を行う点では"先生"はかなり優秀だと評価出来る。

 

「ん、"RABBIT小隊"の皆も強かった。私達とは初対面なのに、私達の装備と立ち位置を把握して上手く連携してくれた」

「そうだね~。校舎の方から支援狙撃してくれた...『ミユ』ちゃん、だっけ?銃声だけ聞こえるのに、()()()()()()()()()()()()()()()のは敵にしたら怖いね~。"ヘルメット団"もどこから撃たれたのか解らず右往左往しててやりやすかったよ~」

「あ、ありがとうございます...」

「"対策委員会"の皆さんが戦闘慣れしていたおかげでもあります。"先生"の指揮も相俟って私達も非常に戦いやすかったです」

「ホシノ先輩も凄かったな。左手に盾、右手にショットガン――まるで特性が違う装備なのにまるで自分の一部みたいに振るって、攻めも守りも効果的に立ち回っていた。あれは敵に回したくないな」

「ね、ホシノちゃんすごいでしょ?!一年生の頃はショットガンだけだったんだけど、いつも最前線でタンクを張る私と、苛烈に攻めるモコウに憧れたのか盾まで持ち始めてね~。理由を聞いたr「ユメ先輩、膝枕ノノミちゃんを専属にしますよ?」ひぃん、ごめんなさ~い!

 

―――委員会(ウチの連中)と『シャーレ』から来た連中は仲良くなれそうだ。セリカは―――

 

「...指揮は皆が言っている通り良かったわ。...で、でも!まだ完全に信用していないんだから!」

「"今回の支援だけであっさり信用されても戸惑うしね...君達の信用を得られるように私達も頑張るよ。――さて、残りの物資も運んでしまおうか。ヘリも特に損傷は無い。一度帰しておこう"」

「あぁ、そうだな。誰かしら見張りに残してさっさと終わらせよう」

 

 "先生"の言葉に頷き、捕虜を担ぎ直して校舎に歩き出す―――

 


~アビドス高等学校 "廃校対策委員会"部室~

side-ミヤコ

 

「――では、『アビドス』が置かれている状況について説明させていただきます」

 

 アヤネさんが音頭を取り、ホワイトボードに地図や写真を貼り付けていく。

―――物資の運搬を終え、ヘリも一度帰し、屋上での見張りとして引き続きミユさんを配置して私達は委員会の部室に再び集まっている。

 

「――数十年前まで、『アビドス高等学校』はキヴォトス屈指の規模を誇る学校でした。砂漠は学校、及び自治区成立時点で存在していましたが規模は現在よりかなり小さく、当時は観光名所として管理、整備されていたらしいです」

 

 アヤネさんが説明しながらヘリから空撮したらしい、少し古い写真を指し示す。―――並び立つビルの先に広がる砂漠と、目立つ規模のオアシス。そしてオアシスを囲む様にテントが沢山並び、人も多く居る様に見える。

 

「――ですが、当時の"アビドス生徒会"が『セイント・ネフティス社』による砂漠横断鉄道の開設事業を承認し、工事が始まってしばらくして――こちらの写真の()()()()()()()()()()()()()が突如現れました」

 

 次にアヤネさんが示した空撮写真では―――黒い可動部を白く無機質な外郭が覆い、オレンジ色に光るラインが全体に走り、短い角を三本伸ばした頭部には四つの眼光を光らせ、頭上に()()()()()()()()()()()()()()()()()()を浮かべている、クジラの様な尻尾を持つ巨大な機械、或いは兵器の大蛇らしきものが砂煙と共に工事車輌や作業員を吹き飛ばしている様子が写っている。

 

「なんだこりゃ...蛇、なのか?こんなデカいのがあの砂漠に居るのか?」

「はい。――当時の『アビドス』の生徒の皆さんも『セイント・ネフティス』社私有の戦力、雇った傭兵の方々と一緒に迎撃を行ったそうですが...背部に備えられた無数のVLS、口内に装備された巨大なレーザー砲、巨躯を暴れさせて巻き起こす砂嵐により一方的に蹴散らされてしまった――と、記録が残っています」

 

 サキさんの言葉にアヤネさんは頷き、厳しい表情を浮かべて説明を続ける。

 

「この迎撃不可能な脅威を目の当たりにしても、『セイント・ネフティス社』は尚事業の継続を目指し、出撃地点や法則を見出しながら敷設を進めていきました。そして――()()()()()()()()()()()()()は、()()()()()()()()()()()()()()()()()させました。これにより――『アビドス』の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と記録されています」

 

 次に示された写真は―――()()()()()()()()()()()()()()()()が都市を飲み込んでいく空撮写真だった。写真ではあるけど、見た事が無い光景に私達は息を吞む。

 

「一週間に渡る砂嵐により、生徒、住人の皆さん、『セイント・ネフティス社』の方々に多くの犠牲が出ました。――この時、『セイント・ネフティス社』は...っ...()()()()()()()()()()()()()()()し、"アビドス生徒会"が必死に行っていた救助や状況確認を手伝うこともせず、寧ろ『アビドス』内で同社が運営していた小中学校の運営も"アビドス生徒会"に押し付けて()退()()()()()()()のです」

「"...酷い話だね。自分達が始めた事業も一因だろうに、被災者の救助や支援もしないでそそくさと逃げたのか。こんなことをされたら大人を信用なんてできない訳だ"」

 

 アヤネさんの説明を聞いて"先生"は顔を顰める。――本当に酷い話だ。()()()()が齎した甚大な被害により会社にも損害は出たのだろう。それでも、被災者救助や支援もせず事業の破棄と撤退―――会社を守る事をあっさり優先してしまうとは。当時の『アビドス』の生徒達はどんな感情を持って事態を目の当たりにしたのか...私達では計り知れない。

 

「――"アビドス生徒会"はそれでも全力で復興に臨みましたが...日に日に広がる砂漠により居住区は減っていき、()()まで喪い、生徒の転校や住人の流出が相次ぐようになりました。人口流出を止める為に"アビドス生徒会"はあらゆる手を使ったようです――借金を重ね続け、所謂()()にすら手を出して。

 それでも――()()()()()()()()()()()()()を止めることも、砂漠化を抑制することもできず、借金が増えていくばかりでした。――更に追い討ちをかけるように、『アビドス』に残る資産や利益を出せるものを搾ろうとする()()()まで寄り付き――ユメ先輩、モコウ先輩が"アビドス生徒会"に入った頃には到底返済できそうにない額の借金だけが残されていました。既に生徒会以外の生徒は、もう...」

「――私達が生徒会に入った頃は、誰もが憔悴し切っていて、絶望していて...私達を歓迎する余裕なんてなかった。精神も既に擦り切れていたんだろうね~。"生徒会"入りして一か月位経った頃だったかな。()()()()()()()()()()()()()()()していって――メンバーは私とモコウだけになっちゃったんだ~」

 

 ユメ先輩はそう言って懐かしみ、けど悲しい表情を浮かべながら語る。

 

「まぁ、入った時の雰囲気からして予想はできていたがな。ユメを取り敢えず"生徒会長"に据えて私達は活動を始めたが...()()()()()に騙されたりしながら、少しづつ借金を――いや、私達だけじゃ利息の支払で精一杯だった」

「おじさんが入学して生徒会入りした時も、その状況は変わらなかったけど――『カイザーPMC』がおじさん達に接触して来たんだ~」

「"『カイザーPMC』?皇帝の意味を持つ単語を冠するなんて仰々しいね"」

「『カイザーコーポレーション』という、キヴォトス中で幅広く事業を展開している一大財閥の中でPMC事業を専門とする企業ですね。――何度か傘下企業の()()()()を制圧したことがある経験から言わせてもらえば、()()()が多い印象がありますが...受け入れたんですか?」

 

 "先生"にそう説明し、眉を顰めながらホシノ先輩に尋ねる。

―――PMC、金融、建設、工場。様々な事業をキヴォトス中で展開しているものの、利益の為ならどんな事でも―――()()()()()()か、()()()()()()()()すら躊躇わず手段として利用する悪徳企業として『カイザーコーポレーション』は有名だ。そんな企業の一部門、それもPMC(荒事)を扱う分野の企業と接触するなんて...

 

「確かにおじさん達も最初は警戒したよ。()()『カイザーコーポレーション』だからね~。でも、直接会いに来た"理事"は――なんと『()()()()()()()()だったらしくてね~。しかも"先生"みたいにおじさん達生徒を思い遣る人物だったんだ~。どうせ上辺だけだろうって警戒してたんだけど...仕事をくれたり、ラーメン奢ってくれたり...何なら膨大だった借金を見直させて、どうにか返済できそうな額にまで減らしてくれたんだ~」

「..."理事"は数少ない()()()()()()()()()()の一人よ。こっちに回してくれる仕事もちゃんと労力に見合う報酬を用意してくれるから、借金返済の一助になってるわ」

 

―――ホシノ先輩とセリカさんの言葉が事実なら、『カイザーPMC』の"理事"は真っ当な経営者の様だ。しかも『()()()()()()()()でもあるという。それなら今の『アビドス』の状況を何とかしたいと"対策委員会"の皆さんを支援するのも納得出来る。

 

「――借金については、バイトしたり"理事"から仕事を貰ったりして稼いでいけば何とかなるんだけど...現状の問題は"カタカタヘルメット団"だね~」

「あぁ。――最近は連中の()()頻度が上がっていてな。だからこっちの弾薬備蓄が想定より早く枯渇しかけて『シャーレ』に補給を要請したんだが...あれだけあれば反撃できるかもしれない」

()()()()()()()()...撃退されてもすぐに装備や損害の補填が可能ってことは――アイツら、()()()()()()()()()()()のか?」

 

 サキさんの考察にモコウ先輩やホシノ先輩、アヤネさんが頷く。襲撃の頻度が高いという事は、それだけ()()()()()()()()()という事でもある。今回の襲撃は数こそ多かったものの、車両や機関銃と言った重装備は無かった。つまり―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性が高い。

 

「その可能性は高いと思います。...ですが、私達はずっとこの校舎の防衛だけで手一杯だったので周辺の偵察もできず――」

「――それなら、使()()()()()()()()()()()()()()()が居る。幹部クラスなら、何かしら情報を持ってる筈だ」

 

 モコウ先輩がアヤネさんの言葉を遮る様に提案する。―――そう言えば、シロコ先輩が追撃で撃ち込んだロケット弾で幹部クラスの団員が校舎(こちら)側に吹っ飛んで来ていて、モコウ先輩が縛って担いでいた。どうやら校内に閉じ込めているらしい。

 

「――方針が決まりそうだね~。"カタカタヘルメット団"が何処か近くに構えた拠点を見付けて制圧。それに加えて、『シャーレ』によるおじさん達が挙げたリストの物資の継続的な供給の確認――この二つが今すべきことかな~?」

 

 ホシノ先輩の言葉に委員会の皆さんが頷く。

 

「"――ホシノ、私達にも手伝わせて欲しい。少なくとも物資輸送が全部終わるまではアビドス(ここ)に留まらないといけないし――何より困っている君達生徒の手助けをしたいから"」

「さっきの()()の撃退も手伝ってくれたしね~。――じゃ、お願いしよっかな~。おじさん達が信用できるように頑張ってね?」

 

 "先生"の提案をホシノ先輩はあっさり受け入れる。――まだ眼差しは"先生"を見定めているけど、群を抜いて職務に誠実な"先生"ならきっと――

 

「――じゃ、方針も決まったし今日は解散だよ~」

「私は閉じ込めてる幹部のヤツと()()()くる。...上手く行けば昼前には終わる筈だ」

「――あ、もうこんな時間じゃない!()()の迎撃が長引いたら最悪休むつもりだったけど...皆お疲れ!それじゃ!」

 

 モコウ先輩はそう言い置いて部室を出て行く。そして―――スマホで時間を確認したセリカさんがそう声をあげ、バッグを担いで慌てた様に部室を出て行く。

 

「――そうだ!ホシノ先輩、『シャーレ』の皆さんの歓迎会を()()()で行うのはどうでしょうか?きっと皆さん気に入ってくれるはずですよ~☆」

「――うへへ、それいいね~。時間になったら皆で行こっか~」

 

―――それを見送ったノノミ先輩が唐突にホシノ先輩にそう提案すると、ホシノ先輩はいたずらっぽく笑って提案を受け入れる。

 

「...歓迎会、ですか?」

「物資を持って来てくれたし、()()の迎撃も手伝ってくれたしね~。お礼に何かするのが礼儀ってものだよ~――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――"先生"、"RABBIT小隊"の皆はラーメン好きかな?」

 

―――To be Continued―――

 

 




ということで、状況説明回でした。以下ざっくりした経緯

ネフ「砂漠横断する鉄道敷くで。交通も便利になるし観光資源にもなるで!」
生徒会「いいっすね~」

好みの画像を保存して去る蛇ビナー「何()()に近付いとるんやワレ!出てけ!」
ネフ&生徒会「「ファッ?!」」

ネフ「出て来る場所は迂回して敷設するで。結構金かけてるから諦められへん!」
ビナー「――もう怒ったで。二度と近付けんように砂漠広げちゃる!」
ネフ&生徒会「「ファッ??!!」」

生徒会「砂漠がどんどん広がってるンゴ...何とかして食い止めるンゴ...!」
ネフカス「もうアカンわコレ。悪いけどウチらは撤退させてもらうで。ほな...あ、ウチの小中学校は残すから安心してや」
生徒会「えっ」

生徒会「本校から撤退させられてもうた...アカン...いくら金つぎ込んでも上手く行かへん...あのデカ蛇が暴れるせいで対策しても全部砂に埋もれる...借金と利息だけが増えるンゴ...」
悪い大人達「もうアビドスは終わりンゴねぇ...復興支援のフリして搾れるだけ搾って小銭稼ぐンゴw」
生徒会「」

カイザーPMC「本社の命令で進出したはええが...お宝探し以前の問題やんコレ!まだ残ってる生徒達とも協力してあのデカ蛇どうにかせんと!」
対策委「借金は見直し入って大分減ったンゴ...でもどうにかできる手段が無いンゴ...アカン、物資も...」

シャーレ「困っている生徒達が居ると聞いて来ますた」←今ココ

大体こんな感じです。ビナーがレイドよろしく暴れたり襲ってきたりするのでPMCは()()捜索の余裕が無い状況です。――さて次回、"先生"とウサギ達は洗礼を受ける!そして―――匂わせてきた"理事"の登場です。
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