Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
所謂決戦前の会話回です。
~『ミレニアム』自治区 地下貨物駅~
side-マリサ
「――クリア!」
「――クリア!」
―――先行して駅構内に入ったミヤコ達"RABBIT小隊"が敵影無しを報告する。
「"――よし、貨物積込が終わって出発する前に乗り込んでしまおう"」
「了解です。ハタテ、行くわよ」
「はいはいっと。...隠された都市なんてネタは逃したくないけど...そんな状況じゃないわね」
「時間はあまりねぇ。デカい荷物を先に入れるぞ。
「――リカ、これから貨物用エレベーターを動かす。[ふらわ~戦車]をいつでも動かせるように待機してくれ」
「制御室はあっちだな。必要ならハッキングで制御を乗っ取ってこっちの荷物を入れるぞ」
"先生"の指示を受け、アヤやネル先輩達がガンケースやキャリーケースを手に持って構内に向けて歩き出す。
―――ガシャン...
「...あれが『エリドゥ』に向かう貨物リニアか」
「ちょうど貨物を積載中だね。あれに乗り込めば『エリドゥ』に――アリスを助けに行ける」
―――"先生"達に続いて構内に入り、ロボットアームやクレーンが貨物リニアの各車両にコンテナや大型の箱を搬入する様子を見ながら、補給用の弾薬を詰めたバックパックを背負うモモイとそんな会話を交わす。
―――『特定できたわ。この貨物専用路線はエリドゥがある
―――"教授"の意見を受けて"ヴェリタス"が大急ぎで調べて特定された、『エリドゥ』に繋がる地下鉄路線。これを利用して私達は『エリドゥ』に潜入する事となり、具体的な作戦は
―――『私とノアは"セミナー"で部隊を編成して付近で待機するわ。エリドゥの防衛設備を無力化できたらこちらも突入するわ』
―――『私はレンコ達に合流するから、そっちはそっちで動いて構わないわ。...
ユウカ達は"セミナー"で増援、支援部隊の編成中。スミレコ先輩は『エリドゥ』を見付けた"特異現象捜査部"の三人に合流すると言って別行動中だ。しかし、ドローンを近付けたら通信障害―――ジャマーの類で妨害されているおかげで地上、空からの侵入は厳しいという事から、もしかしたらレンコ達が近付いていることに『エリドゥ』――リオ会長が気付いている可能性は否定出来ない。無事だといいが...
「オーライオーライ!――よし、一旦停止!」
「――全く...[イビルアイΣ]が持ち込めないのが残念なのです」
「列車で運ぶ以上、大型の
―――少し離れた所では貨物エレベーターの扉が開き、赤く塗装された[M24 chaffee*1]を改造した戦車[ふらわ~戦車]が構内に入って来て、誘導を行っていたニトリが一度止める。[ふらわ~戦車]のキューポラを開けて出て来たリカのボヤきにニトリはそう返して制御室に向かう様子を横目にリニアへと近付く。
「――マリサ、モモイ。ここと前後の車両は荷物の積載が少ないみたいだから私達が乗り込むには最適だよ」
「おう、分かった」
「荷物だけ置いて手伝いに回ろっか」
車両の傍でノーパソを弄っていたハレが私達に気付き、礼を言って車両に乗り込み、モモイと共に近くにバックパックを下ろす。
「戦車があるって頼もしいね。[
「あぁ。リカのことだから、実戦の機会を逃したくないだろうとは思ってたが...今回はありがたい戦力だな」
クレーンが[ふらわ~戦車]を吊り上げ、前側の車両へと運んでいく様子を見ながらモモイとそんな会話を交わす。
―――『そんなことを目論んでいたなら私も呼びやがれなのです。最強究極の戦車を実現するには、もっともっと実戦データが要るのです』
―――ウタハ部長がアリス救出作戦についてリカに共有すると、案の定二つ返事でリカは作戦参加を承諾した。直前まで[イビルアイ∑]を持ち込もうと揉めたが、今回はデータ収集だけで我慢してくれとなんとか説得出来た。
戦力的には[イビルアイ∑]の方が尚良かったが、小ぶりで装甲も薄いが、火力はそれなりにある
「...っと、駄弁ってないで動くか。リニアは自動制御だし、次の便を詰まらせたら何が起きるか分かったもんじゃない」
「うん。急ごう!」
[ふらわ~戦車]が下ろされる様子を見届け、モモイと共に歩き出す―――
~貨物リニア車内 メンテナンスルーム~
side-"先生"
「――間違いないわね。このリニアは
「"よかった...これで間違っていたらその分潜入が遅れて、
―――走り出して数分程経った貨物リニアの先頭車両。コタマと共に保守点検用の制御端末をハッキングして調べていたチヒロの報告を受けて安心する。
「制御システムのコードを見ると、二十分程で着くみたいね。...時間はあるし、皆の状況を確認して回るのもいいんじゃないかしら。私とコタマはここで、もう少し他に情報がないか調べてみるわ」
「"分かった。何かあったら連絡お願いね"」
「了解よ」
チヒロの提案を受け入れ、彼女と別れて先頭車両のメンテナンスルームを出て次の車両―――[ふらわ~戦車]を積み込んでいる貨物車両に移動する。
「――主砲も問題なしなのです。[ふらわ~戦車]のコンディションは万全なのです」
「――砲弾の積み込みも終わりました!」
―――車両に入ると、赤く塗装された車体、砲身を飾る白い花が目立つ[ふらわ~戦車]の主砲を見ているリカと、キューポラから出て来るサナエ。
「――こっちのアームはいいわよ。...ジェットパックの実用化が間に合わなかったのが痛いわね。ヘリが使えない以上、『シャーレ』のアヤ、ハタテみたいな
「はいはいっと。...この前試作したのは出力はよかったけど、制御がまるで効かなかったしねぇ」
―――少し離れた所で、大きな緑のバックパックから伸びたアームをメンテナンスしながら会話を交わすリカコとニトリ。
「――システムは異常なしです!」
「よし...機体も問題なし。[雷ちゃんMk.2]は万全だ。強化の余地を見出してくれたユズには感謝しなければね」
「――"教授"に頼んで作ってもらった[EMP弾]も問題なし。ドローンやロボットが多いなら有効的な筈...」
―――リカコ、ニトリとは反対側で[雷ちゃんMk.2]を囲むウタハ、コトリ、ヒビキ。
―――"エンジニア部"の面々が各々『エリドゥ』潜入前のメンテナンスと準備を進めている所に歩み寄る。
「――やぁ"先生"。チヒロ、コタマと一緒に先頭車両に向かっていたのは見かけたけど、何か情報はあったかい?」
「"制御システムを調べて、このリニアは間違いなく『エリドゥ』に向かっていることが分かったよ。二十分程で着く予定だ"」
ウタハが私に気付いて先頭車両での首尾を尋ね、到着予定の時間を伝える。
「二十分か。準備を整えるには充分な時間だね。――リオがアリスを
"セミナー"全体に真偽を問うこともせず、彼女一人の判断で一方的に処分を決定するなんて...これが前例となれば、私達"エンジニア部"や他の部活動、生徒にも悪影響を及ぼすだろうからね。一個人の意思で全てが決まる――
ウタハは一転真剣な表情を浮かべ、リオが下した決定について
「...部長、言葉が固いよ。――部長は勿論、私達はアリスに恩がある。[
「そうですね。アリスちゃんは困っている様子を見れば、どんなことでも積極的に手伝ってくれましたから。あの
姿勢はまさに勇者の在り方です。そんな娘が魔王だなんて――私は信じません!」
―――ヒビキが少し呆れた表情を浮かべてそんな補足を挙げると、[ふらわ~戦車]の準備を終えたらしいサナエがリカと共に場に合流していて、ヒビキの言葉に頷く。
「アリスには[
「"先生"共々、我が[ヒソウテンソク]への理解者だしね。スーパーロボットを理解できる娘が魔王な訳がない!」
「アリスちゃんはお手伝いだけでなく、私の説明も煙たがらず真摯に聞いてくれます!そんな娘が世界を滅ぼす魔王になる可能性なんて否定しましょう!――
「――皆と同じ意見よ。確かにアリスにはおよそ人間とは思えない力がある。でも...力があるという事実だけで一方的に脅威と認定するのは短絡過ぎる。コトリの言う通り、力は使い用で変わる――剃刀は使い方によって髭を整えて顔立ちを変えるし、動脈を切って致命傷にもなるのだから」
サナエに続き、リカ、ニトリ、コトリ、リカコも賛意を示す。―――皆、アリスが
「"――皆、ありがとう。その言葉を伝える為にも、一致団結して臨もう"」
「はい!アリスちゃんを助けて、皆で証明しましょう!少なくとも私達にとっては――アリスちゃんは勇者であると!」
車両内にサナエの朗々とした宣言が響き渡る―――
「――コード、システムに問題なし」
「――機体も問題なしだ。
〈――機体コンディションの復調を確認。感謝します、マガン、マスター〉
「...整備は問題なし。弾も充分。あたし達のメインはハッキングだろうけど、
―――次の車両に移ると、ハレ、マガン、マキの"ヴェリタス"の三人がドローンと各々の銃器の整備を進めていた。整備が終わったらしい[アテナ3号]が嬉しそうに二人の周りを浮遊し、マキは[
〈――"先生"の接近を確認〉
「――本当だ。"先生"、お疲れ様」
「――あ、"先生"!お疲れー」
「お疲れさん、"先生"。先輩二人と先頭の方に行ってたが、二人はまだ情報漁りの途中か?」
「"皆お疲れ様。そうだね。得られた情報としては――このリニアは間違いなく『エリドゥ』に向かっていることと、二十分位で着くことだね"」
[アテナ3号]が私に気付き、マガン達も気付いて声を掛けてくる。それに応え、ついでにチヒロが得た情報を共有する。
〈――リニアの現在速度、及び出発地と目的地の距離からの予測時間算出。"先生"の情報は正しいと判断します〉
「補足ありがとう、[アテナ3号]。――準備は万全にするけど、それでも緊張するね」
「あのリオ会長が造った要塞都市だからな。隠蔽も徹底してたし、どんな仕掛けがあるか分かったもんじゃねぇ」
「でも、誰も知らない隠された場所に潜入するのはワクワクするよね。ハッカーとしてはどんなシステムであの都市が動いているのか気になるしさ」
ハレとマガンが緊張している一方、マキはワクワクした表情を浮かべる。
「...確かに興味がない訳じゃねぇが――マキ、私らの目的は忘れてねぇな?」
「勿論忘れてないよ。――あんな元気いっぱいな娘が魔王、ラスボスになるかもしれないなんて、あたしは信じられないよ」
マガンの釘刺しにマキは頷き、真剣な表情を浮かべる。
「あの変なドローンに触れただけで起動させて、部室を吹き飛ばして攻撃を仕掛けてきたのは事実だけど...それ以前までの交流を考えると、あの事件だけでアリスが脅威と見做せるのは短絡的だと思う」
「部室は吹っ飛んじまったが、それだけで
「"――そう言えばチヒロとコタマもだったけど、皆部室がなくなってしまったのにあまりショックは受けていないんだね"」
ハレとマガンの言葉を受けて気になっていた事を思い出して尋ねてみる。―――活動において重要なサーバーやツールがある部室がその設備ごと吹き飛ばされてしまったのに、目の前の三人も、チヒロとコタマもそれを引き摺っている様子は無い。
「直近のヤツは一緒に吹っ飛んじまったが、これまでのデータは私らのセーフハウスにバックアップがあるからな。ヒマリ先輩謹製のセキュリティもあってリオ会長にバレてない場所だ。...[鏡]も試験が終わったら開発データをそこに入れる予定だったんだがな。会長の方が早かった」
「それから――あの部室もサーバーとか機材の増設でかなり狭くなってたから、
「しかも、部屋だけじゃなくて大型トラックの荷台を改造しての移動式拠点も計画してるんだ!遠隔だと通信ラグが気になる時もあるし、遠くに行ってもすぐデータにアクセスできれば即応性も上がるしね」
「――サーバーもパソコンもそこそこ高いものだったから、補填での出費は痛いけど...リオ会長を
「寧ろ次の部室をどう構築してやろうかってワクワクの方が上だな。部屋が広くなりゃ置ける機材も増えて手段も増えるし、移動式拠点なら
ハレとマガンはそう締め括る。―――どうやら"ヴェリタス"としては大きなダメージを負っている訳ではない様だ。確かに、パソコンやサーバーと言ったハードはお金さえあればまた買えるけど、ハードと共に中のデータが失われてしまえばその復旧はかなり難しいだろう。その備えとしてのバックアップが健在だから精神的ダメージは少ない様だ。
「"――そっか。前向きなのはいいことだ。でも...その将来設計を進める為にもリオを止めて、アリスを助けなきゃね"」
「そうだね。あたしはアリスちゃんが魔王だなんて信じないけど、万が一――
「だな。横領してまで造り上げたってんだから覚悟は決めてるんだろうが――はいそうですかって諦める理由にゃならねぇ。"アリスは魔王なんかじゃねぇ"――私らはそれを信じて止めてみせる」
「――
私の言葉を受けて三人共揃ってリオを止め、アリスを助けると決意を示す。―――これならハレ達も大丈夫そうだ。
「"――君達の覚悟、受け止めるよ。一緒に頑張ろう。...じゃあ、私は他の娘達を見てくるよ"」
「分かった。...二十分位だと充分休める訳でもないけど、"先生"もできる限りは英気を養うようにね」
「"勿論。――それじゃ"」
ハレの言葉に頷き、三人の下を離れて歩き出す―――
「――"先生"」
「"や、カリン、皆。準備は大丈夫かい?"」
―――複数のコンテナを挟んだ向こう側では"C&C"の五人が各々準備や整備を進めていた。小型の携帯コンロと小さなヤカン、ティーポットとカップが並ぶレジャーシートを囲む面々の中でカリンが私に気付き、皆が私に顔を向ける中準備状況を尋ねる。
「見ての通り、準備は終わってちょっとしたティータイムだ。――未知の場所で未知の戦力が相手だ。少しでも気を落ち着けねぇとな」
「"気を張り詰めすぎるのも良くないしね。...ウカビは相変わらずみたいだけど"」
「...今回はちゃんとやることやったから。『エリドゥ』に入ればサボる暇なんてないだろうし、今の内にやり残しは消化しておかないと」
「...ウカビちゃんの言う通り、準備は既に終わりましたから。その分、『エリドゥ』ではしっかり働いてもらいますが」
胡坐を掻いて紅茶を一口啜るネルの言葉に頷き、その隣で[
「"準備が万全なら言うことはないよ。――君達もアリス救出に加わってくれて本当にありがたいよ。『ミレニアム』の特務部隊である
「あたしはただ、油断してたとはいえ後ろを取って意識を刈り取ったアイツをボコりてぇだけだ。
「あはは、リーダーも素直じゃないな~。リーダー含め皆、アリスちゃんを助けたい想いは一致してるから安心してよ、ご主人様!」
「...うるせぇ。
ネルがアリス救出は目的ではないと澄ました表情で答えるけど、アスナが悪戯っぽく笑いながら指摘すると少し恥ずかしそうに目を逸らしながらそんな言い訳する。
―――プライドも高いけど、その高さ故にあの時リオからの要請を納得出来ないと断ったし、"ゲーム開発部"の廃部回避に向けた活動中には"自分の我儘が悪影響を与えたら申し訳ない"と手伝う義理堅さもある。言葉とは裏腹に、アリス救出に真剣に臨んでいると解る。
「"――それなら安心だ。...『エリドゥ』ではどんな戦力が私達を迎撃してくるか不明だ。『ミレニアム』特務部隊としての実力、頼りにさせてもらうよ"」
「――任せて、"先生"。どんな任務も確実に遂行するのが"C&C"だから」
「私達に任せてよご主人様!」
「――お任せください。アリスちゃん救出を阻む障害は全て
「――今回は生徒一人と、最悪世界がかかってるからね。サボらないで
「――任せとけ。
改めて頼りにしていると伝えると、五人共頼りがいのある返事を返す―――
―――次の車両には、『シャーレ』の面々と"ゲーム開発部"の娘達が集まっている。
「――サキ、弾薬は大丈夫ですか?」
「あぁ、予備もバックパックに充分詰めた。...今回の任務は長丁場になりそうだからな。ミヤコも大丈夫か?」
「私も準備は万全です。――モエ、ミユも準備は?」
「...ツールよし。私はOKだよ。『エリドゥ』のセキュリティがどんなものか分からないのがちょっと怖いところだねー」
「...私も準備完了。[RABBIT-39式対戦車ライフル]も大丈夫...」
―――各々の前に銃器やツール、弾薬を並べて状態や員数を確認し合う"RABBIT小隊"の四人。
「――――その表現はちょっと悪意が強過ぎない?もっと、こう...こんな感じでさ」
「それじゃ読者の気を惹くには弱いわよ。...まぁ悪意が強過ぎたのは問題ね。なら――――」
―――お互いのスマホの画面を見せ合いながら記事の文章を考えているらしいアヤとハタテ。
「"――や、皆。準備は終わったかい?"」
「――"先生"」
「――あやや、"先生"お疲れ様です。チヒロさん、コタマさんと先頭車両に向かっていましたが、何か情報はありましたか?」
「"うん。このリニアは間違いなく『エリドゥ』に向かってるよ。二十分位で着く見込みだ"」
声を掛けると皆私に気付き、アヤの問いにそう答えながら歩み寄る。
「二十分...リニアといえどそれ位はかかりますか。しかし、準備には充分なのでありがたいですね」
「そうですね。とはいえ、私達も準備は殆ど終えてしまいましたが」
「そうね。私とアヤは暇だったから、今回得た情報を基に記事の内容を考えてた所よ」
アヤ、ミヤコ、ハタテはそれぞれ答える。準備は殆ど終わって、アヤとハタテは新聞記者として記事を考えていた様だ。『エリドゥ』は今まで誰にもバレなかった都市だ。しかも、リオが一人で秘密裏に造り上げたものとなれば大きなネタだろう。
―――閑話休題。
「"そっか。準備ができてるなら心配ないね。――『エリドゥ』は内部構造については詳しく分かっていないし、どんな戦力が私達を迎え撃ってくるか分からない。皆、気を引き締めて作戦に臨んでほしい"」
「――勿論です。アリスさんを必ず救出する為に全力を尽くします」
「――
「あんな元気一杯な娘が
「わ、私もアリスちゃんが世界を滅ぼし得る脅威だとは思えません...もっと沢山、しっかり触れ合えれば、リオ会長もアリスちゃんのことを理解できる...筈、ですから」
私の言葉にミヤコ達は頷いて各々の決意を示す。アリスが連行されてしまった時は迷って決められなかったけど―――今はもう迷わない。『シャーレ』顧問として恥じない決断と指揮を心掛けねば。
「――『シャーレ』としてアリスさんを助けると決まった以上、部員として全力を尽くしましょう。余力があれば『エリドゥ』を調べて更にネタを掘り出したい所ですが...」
「それは高望みでしょ。...新聞記者としては『エリドゥ』は色々気になるんだけどさ。部員としては『シャーレ』の活動を優先しないといけないのはアヤ共々理解しているわ。――魔王として一方的に責められて処断される幕引きより、皆で助け出した上で勇者として力を使うんだって示して見せる方が綺麗な終わり方だろうし、ね」
続いてアヤとハタテも同様に全力を尽くすと決意を示す。記者としてネタを気にしつつも、しっかり『シャーレ』部員としての活動を優先してくれる様だ。―――数少ない
「"――皆の決意、確かに聞いたよ。改めて言っておくけど、相手は未知が多い。何が起きてもすぐに対応できるように、油断なくアリス救出に臨もう!"」
「"――や、皆。準備はどうかな?"」
「――お、"先生"。準備はもう少しで終わるぞ」
「――あ、"先生"!チヒロ先輩達と先頭の方に行ってたのは見かけたけど、何かあった?」
―――ミヤコ達から離れた所で集まり、各々の装備の整備や準備を行っている"ゲーム開発部"の面々に声を掛けると、[
「"このリニアは間違いなく『エリドゥ』に向かっていることと、距離的に二十分位で着くことが分かったよ。チヒロとコタマは今も先頭車両で情報を調べている筈だよ"」
「二十分か...準備を終わらせるには充分だな」
「行き先が間違ってたら大変なことになってたね。...時間的にもう少しで『エリドゥ』に着くね。いよいよだ...」
マリサが頷き、モモイはスマホで時刻を確認しながら呟く。
「"――『エリドゥ』ではどんな戦力が私達を迎え撃つか分からない。少なくとも、リオは
「もちろんだよ!どんな迎撃だろうと妨害だろうと跳ね除けて、絶対アリスを助けるよ!」
「勿論、です。あの時はアリスちゃんが自分から連れて行かれちゃって止められなかったけど...アリスちゃんが魔王になるなんて、私は信じません。助け出して、アリスちゃんは勇者になってもいいんだと言ってあげたいです...!」
「...正直に言えば、これから激しい戦いが起きるのは確実だし、私なんかがどこまで戦えるか、不安です。で、でも...わ、私もアリスちゃんを助けたいです...!アリスちゃんに魔王は似合わない。勇者を目指そうとする姿が眩しくて...アリスちゃんらしいって、説得してみせます...!」
「――リオ会長の一方的な魔王呼ばわりは許せないしな。それに...アリスに
勇者を目指そうとしていたアリスが、
私の確認に対し、四人それぞれ覚悟と決意を示す。―――四人共、アリスを助け出して魔王ではなく勇者になっていいんだと説得するつもりのようだ。マリサの言う通り、力も道具もその使い方次第で他者に与える影響は変わる。
私達が目の当たりにして来たアリスの
「"皆、覚悟は出来ているようだね。その覚悟を貫き通して、アリスを助けよう。そして、皆で言ってあげるんだ――"」
―――私の言葉に、四人共力強く頷く。
~『エリドゥ』地下 秘匿貨物駅~
「――よーし一旦停止!部長、リカはちょっと待機でいいね?」
「あぁ。いきなり
「了解なのです。できる限り早く戦端が開かれることを待ち望んでいるのです」
―――[ふらわ~戦車]が一度止まり、ニトリ、ウタハと行動方針をやり取り車両エレベーターに向かって再び走り出す。
「私達"ヴェリタス"はまず、『エリドゥ』システムへのアクセスを試みる。恐らく何処かに侵入の足掛かりになる穴はある筈。それを探すわよ」
「了解です」
「了解だ。...あのリオ会長のことだ。セキュリティは徹底してるだろうから苦労しそうだな」
「でも、私達でもシステムを掌握できないと皆が苦労することになる」
「なるべく早く侵入したい所だねー」
―――タブレットやノートパソコンと言った端末を手に歩いて行く"ヴェリタス"の面々。
「ふー、着いたね。...ここから地上に出れば『エリドゥ』なんだよね」
「あぁ、座標的にも間違いない筈だ。――どんな戦力が来ても打ち破るつもりだが、それでも緊張するな...」
「でも、アリスちゃん救出を諦める理由にはならない。行こう、皆...!」
「う、うん...!」
―――バックパックやガンケースを手に歩き出す"ゲーム開発部"の面々。
「さーて、いよいよだ。お前ら、覚悟はできてるな?特にウカビ、今回サボりはあたしも許さねぇからな」
「...分かってるって。私だってサボるべきじゃない状況ならちゃんと働くよ」
「その言葉、信じますよ?――さて、リオ会長はどう迎え撃つでしょうか...」
「どんな戦力でも打ち破って、彼女を助け出そう。"C&C"は請けた任務は必ず遂行する」
「カリンってばちょっと堅いよ~。いつも通り、自然体自然体!」
「...そうかな?自分ではいつも通りだと思うけど...」
―――各々の装備を携えてリニアを降りて歩き出す"C&C"の面々。
「地上への進出は私達"RABBIT小隊"で先行します。既にここは敵地の真っ只中。何が起きるか分かりませんから。油断なく索敵は密に」
「「「了解!」」」
「私達も最初は地上メインになるわね。"ヴェリタス"が対空システム辺りを掌握したら、そこからは私達の本領発揮よ」
「アンタの速さなら問題ないと思うけど...ま、リスクは減らすに越したことはないしね」
―――そして、先行して索敵するべく少し足早に歩き出す"RABBIT小隊"とアヤ、ハタテ。
「"さて、私も――"」
それらを見送りながら私もリニアを降りて―――
「――"先生"、いよいよね」
「"――ユメミ"」
―――私に続いて降りてきたユメミが声を掛けて来て、足を止めて振り向く。
「リオは兎に角リスク排除、軽減に拘る性格よ。間違いなく私達の潜入も想定して迎撃態勢を整えているでしょう」
「"それでも、私は皆を指揮してアリスを助けてみせるよ。それが――
ユメミの言葉にそう返す。―――アリスがリオに連れて行かれた時は迷ってしまったけど、今は覚悟を―――
「――ふふ、それでこそ"先生"ね。おかげで、
ユメミは微笑み―――
ということで次回から横領都市決戦です
感想、評価、お気に入り、栞、ここすきは大歓迎です。作者が喜びでわっぴ~します。