Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

74 / 115
前回のあらすじ:実はラスボスの最側近だった強い仲間がラスボス前で立ちはだかるシチュエーションをリアルでやるな


File70.M-31~対世界終焉都市救出戦E.R.I.D.U④~

~『エリドゥ』セントラルタワー 軟禁部屋~

side-ヒマリ

 

―――カタッ...

 

「――来ましたか。概ね予測時間通りですね」

 

―――軟禁部屋の天井から微かに音が聞こえ、展開している仮想画面から目を離して天井を―――人一人が通れそうな大きさの換気ダクトを見上げる。

 

―――カタッ...ガタ...

 

―――ガタンッ...!

 

 ダクトの格子が小刻みに数度揺れ、格子が外れてプラプラと揺れ―――

 

 

「――部長、無事...っぽいわね」

 

―――帽子を片手で抑えたレンコが開口部から顔を覗かせる。

 

「全知にして聡明かつ俊英たるこの私が、下水道に流れる水である彼女に害されるなどあり得ませんよ。...あのようなやり方でもその実内面は面倒なんですから全く...

「何か言った?...ま、無事ならそれでいいわ。今から降りるからちょっと待ってて」

 

 概ね予測通りとは言え、部員達がしっかり救助に来た安心感からか、()()()()()()呟きを思わず零してしまう。しかし幸いにしてレンコは内容までは聞き取れなかった様で、そう言って顔を引っ込める。数秒後ラペリングロープが垂れ下がって私の目の前に先端が落着し―――

 

 

―――シュルル...!

 

スタッ...!

 

「っと...!――敵影なし。お待たせ部長」

「――ご無事で何よりです、部長」

「ヒマリのことだからピンピンしてるだろうと思ったけど、予想通りね。――()()()のおかげで助かったわ」

 

―――レンコ、メリー、エイミ、そしてスミレコ。それぞれがラペリングロープでダクトから降りて来て、"特異現象捜査部"が勢揃いする。

 

「...その仮想画面、軟禁中暇はしてなかったみたいだね」

()()()に残ってたログ的にも軟禁中に色々やってたっぽかったしね。...だとしたら自力で出られたんじゃないの、ヒマリ?」

()()が下水道の水の如く、ドアを閉じた後で錠前コンソールを破壊しただけでなく――()()()()()()()()()するなんて所業まで講じたんですよ。キヴォトスのあらゆる情報を観測できるこの天才美少女ハッカーとて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよ」

 

 私が車椅子のコンソールから展開している仮想画面に気付いたエイミとスミレコの言葉に肩を竦めながらそう返す。キヴォトストップクラスの腕前である私のハッキングに対してシステム面で何ら対抗策を講じない代わりに、()()()()()()()()()物質的に閉じ込めるとは何とも彼女らしいやり口だ。尤も―――

 

「――万が一強行突破の状況に陥った時の為に持って来てたけど、まさか役に立つ機会に恵まれるなんてね」

 

 エイミは背負っていたバックパックを下ろし、中から起爆装置を取り付け済の[C4]を取り出す。―――流石エイミだ。正反対な快適温度でぶつかる事もあるけど、『ミレニアム』所属にして我が"特異現象捜査部"にスカウトされただけはある明晰な頭脳は強行突破の可能性も考慮していた。これで()()()()脱出出来る。室内の監視カメラは()()()()()()()だし、ハッキングで調べたタワーの内部構造的にドアを発破してもすぐには気付かれないだろう。何せ―――

 

「――それで見ていたのが外の状況だったのね。見た感じ救出作戦組は三つに分かれてるっぽい?」

「えぇ。――強力な防衛戦力が三つ投入された為、救出作戦組(あちら)は元々人手も多かったので別れたようです。どうやら...各所共に決着が近いようですね」

 

 仮想画面を覗き込んだスミレコの言葉に頷き、仮想画面を見回す―――

 

 


~『エリドゥ』 中央大通り~

side-ネル

 

「――――了解です。こちらから合図を出すので、()()()()()()()()()()()待機をお願いします」

「――アヤ、"ヴェリタス"に手伝いは取り付けたか?」

「はい。チヒロさんが()()()()()()のシステム掌握に既に動いています」

 

―――インカムから手を離したアヤに確認を取る。

 

「ならいい。――アヤが提案した作戦は誘導役のお前らの働きにかかってる。トキ(あの新入り)もバカじゃねぇだろうから、建物への誘導を見抜けば警戒する筈だ。だから――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()動きが重要になる。必然的にトキ(あの新入り)の攻撃を多く受けることになるが――覚悟は出来てるな?」

 

 アヤの返答に頷き、路地に集まる"C&C"のメンバーを見回す。

 

「勿論だよ!()()()()()()()()()()()()()()()()()って言ってるし、私達ができることをやろう!」

「――覚悟はとっくにできてる。それに、あの回避システムを破る方法を見出せたんだ。――絶対にこの機は逃さない」

「初戦は一方的でしたが、やっと反撃に移れますね。――私達の任務は撃破だけでは終わりません。今頃アリスちゃんを助けに向かっている皆様を支援する為にも――ここで撃破しましょう」

「...楽じゃない作戦だけど、せっかくあのチートじみた回避システムを破れるんだから逃す手はないよね。――私は"C&C"エージェント"05(ゼロファイブ)"。任務はやり切るよ」

「――彼女がこちらの狙いに気付いてしまわないか不安ではありますが、アスナさんの()も勿論――"C&C"エージェントたる皆さんの実力を信じていますよ」

「...全員、覚悟はできてるみてぇだな」

 

 メンバーとアヤの言葉に頷いて瞑目し―――

 

 

 

 

「――お前ら、トキ(あの新入り)を落とすぞ!」

「「「「「了解!」」」」」

 

 

 

 

バラララ...!

 

「っと...!おらおら、そんなんじゃあたしは捉えられねぇぞ!」

 

 

―――あたしを狙った[トライ・ポッド]の弾幕を躱し、()()()()()()()()への道をひた走りながらトキ(新入り)を煽る。

 

―――作戦開始から暫く経ったが、今の所は順調だ。最初はこっちが攻撃を積極的に仕掛け始めた事を訝しんでいたが、トキ(あの新入り)からすればあたしらを撃破できるチャンスでもある。こうして時々煽りも入れてあたしに気を引き付ける事を狙っているが―――

 

「......」

 

 バイザーで目が隠れた状態では初対面の時から無愛想に見えていた表情がより解らず、しかし脚部スラスターをより吹かしてこちらに迫って来る―――

 

 

―――ダァンッ...!

「...!」

 

―――先行して次の狙撃ポイントに付いていたカリンの狙撃音が大通りに響き、[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]は()()()()()()()()スラスターを吹かして躱し―――

 

 

―――バッ...!

 

「――ここは...!」

「アスナ達が相手だよー!」

 

―――あたしが通り抜けた左右の路地からアスナとウカビが躍り出てそれぞれの得物で銃撃を浴びせ―――

 

 

 

 

「...回避成功。カウンター掃射」

 

バラララ...!

 

「うわっ...?!」

「わわっ?!」

 

―――[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]はまた()()()()()()様に回避し、両腕をそれぞれ左右に向けてカウンターの様に弾幕を張り、二人は反応の鋭さに驚きながらも路地の奥へと飛び込む様に回避する。

 

「ちっ...!分かっちゃいたが、とことんチートじみた回避システムだな!だが――」

 

 

 

 

「――その大層なシステムの加護も()()()()()()()だ!アカネ、吹っ飛ばせ!」

『――"03(ぜろすりー)"、了解致しました』

 

 そのまま目的地目指して走りながらインカムでアカネに合図を出す。刹那―――

 

 

ドォォンッ!!

 

ガラガラガラ...!

 

 

―――()()()()()()()爆薬が炸裂し、あたしとトキの丁度間の左右のビルの基礎が盛大に爆発してトキを挟み込む様に瓦礫が降り注ぎ―――

 

 

 

 

―――ゴオッ...!

 

「――タイミングは最適でしたが、()()()です」

「ッ...?!しまっ――」

 

―――トキはスラスターを一気に吹かして()()()して瓦礫の下を飛び抜け、あたしに一気に迫り―――

 

 

 

 

「――この距離では先輩と言えど、回避不可能でしょう」

 

 

バラララ...!

「がはッ...?!」

 

―――ほぼゼロ距離で[トライ・ポッド]のガトリング六門が斉射され、()()()()()()事を選択したあたしも弾数の暴力で吹っ飛ばされ―――

 

 

 

 

―――ドゴォッ...!

 

「っぐぇ...!...流石にゼロ距離で弾幕を貰うと痛ェ――」

 

―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のホールの奥へと吹き飛び、()()()()()()()()のドアにぶつかって落ち、腹に残る痛みに悪態を吐きながら立ち上がろうと―――

 

 

 

 

―――ゴオッ...!

 

「――これでチェックメイトです」

 

―――()()()()中に入って来た[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]が[トライ・ポッド]の銃口六門をあたしに向けて見下ろし、トキが静かな声でチェックメイトを宣言する。

 

「...はっ...チェックメイトか。あたしを撃破できれば後は楽だとでも思ってるのか?」

「――貴女は"約束された勝利の象徴"と謳われる『ミレニアム』最強の一角です。"C&C"エージェントそのものも精鋭ですが、チームとしても、戦力としてもトップである貴女の無力化は以降の防衛戦闘においても――」

「――一年生(後輩)の癖に、あたしを落とせば勝ちだと踏んでる気の大きさは評価してやる。こうして被弾してることもお前に勝利を確信させてるんだろう。だが――」

 

 

 

 

ポーン...ウィィン...

 

「――何故あたしが"約束された勝利の象徴"って呼ばれてるのか、それを分かっちゃいねぇな」

「...エレベーター?」

 

―――不敵に笑うと、背後で()()()()貨物エレベーターのドアが開く。チヒロは既に掌握済の様だ。トキは少し戸惑った様な声を零し―――

 

 

 

 

<無双風神>

 

―――ヒュッ...

 

ドゴォッ!!

「ッ?!」

「っぐ...!」

 

ガシャッ...!

 

―――刹那、()()()()()()()()()()()()()で飛び込んで来たアヤが[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]の背後からタックルする様に吶喊し、[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]の回避システムでも()()()()()()()()()()()()()()のか、そのままタックルが直撃して[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]はエレベーター内に飛び込む―――

 

 

バサッ...

 

っく...ネルさん、後はお願いします!」

「おう、任せろ!!」

 

―――[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]がエレベーター内の壁に激突して床に崩れ、エレベーター内から出て来たアヤが()()()()()()()()あたしにそう吼え、それに応えながら立ち上がろうと動く[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]を見据えてエレベーターに入る。

 

ウィィン...

 

「――エレベーターが...一体何を...!」

「――このあたしが直々に相手してやる。そのチートみてぇな回避システムに頼らず――」

『――エレベーターシステムリミット解除』

 

グゥゥン...

 

―――[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]が態勢を立て直し、インカムにエレベーターをハッキングしているチヒロの声が入る中、トキが目に見えて戸惑った様に口を歪ませながら[トライ・ポッド]を構え―――

 

 

 

 

『――上昇速度パラメータ無制限!加速するよ!』

―――ズンッ...!!

ガシャン...!

「ッ...?!」

「っぐぉぉ...!こりゃ思ったよりデカい負荷だが――」

 

―――チヒロの宣言とほぼ同時に()()()()()()()()()()し、上から掛かる強烈な負荷が[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]を抑え付ける様に態勢を崩させ、あたしも思わず片膝を付く。思っていたより急加速によるGは重いが―――

 

 

 

 

「――立体駐車場で落ちてた時みてぇに()()()()()()()()()()()だろ?!これで条件は対等だ!さぁ来やがれ!"約束された勝利の象徴"が相手してやるよ!!」

「っぐ...何という手を...!」

 

―――アヤの推測が的中したらしい、()()()()G()()()()()()()()()()()()()()()悔しそうに歯を食い縛りながら明らかにぎこちない動きで立ち上がろうとする[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]を見据え、[ツインドラゴン]を構えて吼える―――

 

 

side-アヤ

 

「――少し痣ができていますね。ですが、脱臼の様子はありませんので大丈夫でしょう」

「ありがとうございます...イタタ...あのスピードで金属の塊にタックルは流石に堪えますねぇ...」

 

―――ネルさんが[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]と共にエレベーターに入り、チヒロさんがリミッターを解除してエレベーターを超高速で上昇させ始めた報告を聞いた後。ビルに入って来た"C&C"メンバーを迎え、タックルした左肩をアカネさんに診てもらい、異常は特に無いと判断され、まだ残る痛みに思わず顔を顰めながら制服のシャツを着直す。

 

「――エレベーター上昇時の()()()()()()()()()()()()()G()()()()()()なんてね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()推測は当たってよかったけど――アヤとリーダーには無茶をさせることになった」

「私よりもネルさんが大変ですよ。[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]が回避システムを発揮できないように、急上昇のGを掛けていますが――それは()()()()()()()()ですから」

 

―――『成程な...()()()()()()()()()()()()()、落ちてる時みてぇな負荷を再現する為に――エレベーターに乗ってて、上昇し始めた時に一瞬感じるあの()()()()()()()()()()()()みてぇな感覚をより強烈にするって訳か。

――いいぜ、トキ(アイツ)とのタイマンはあたしに任せろ。何故あたしが"C&C"のリーダー"00(ダブルオー)"なのか、"約束された勝利の象徴"なのかを直々に叩き込んでやる』

 

―――作戦を説明した時のネルさんの言葉を思い返す。立体駐車場での戦闘で、落下時に回避システムが発動しなかった事から[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]の回避システムが他の制御システムと両立出来ない可能性を見出した。そこでエレベーター上昇時のGを利用して落下時の状況を再現し、回避システムが発揮出来ない条件下でネルさんが直接相手をする作戦を提案した。

 チヒロさんに依頼して[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]が動ける大きさの貨物エレベーターが配備されている建物を捜索して貰い、そこを目指して[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]と交戦しつつ誘導。道中でビルを爆破して倒壊させて瓦礫で落とそうと見せかけ、[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]が入れるように目的地のビルの出入口も爆破。ネルさんの煽りや啖呵に合わせてチヒロさんがハッキングしたエレベーターを操作し―――最終段階であるエレベーター内でのタイマン決戦が始まった。

 

「このビルの高さ、エレベーターの速度...三分位で最上階に到達する筈。それまでにリーダーが[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]を落とせればいいけど...」

「大丈夫だよウカビちゃん!リーダーなら絶対勝てるよ!()()()()()()()()()()って言ってるし!」

「でも、リーダーと言えども強力なGが掛かっている条件下では――」

 

 

ズゥゥンッ...

 

「――ん?」

「――上の方から音が...?」

「もしかして...」

 

『――こちらチヒロ!エレベーターのシステムオフライン!恐らく最上階に到達した衝撃でエレベーターの箱が外れた可能性がある!』

 

「――成程。私が見てきます。皆さんは通信でネルさんに状況を聞いてみてください」

「承知しました。――念の為、左肩はまだ無理に動かさないようにして下さいね」

「了解です」

 

 

バサッ...!

 

 チヒロさんの通信を聞き、最上階に到達して止まったらしいエレベーターの状況を把握するべく一度ビルの外に出て、翼を広げてビル屋上を目指して飛び上がる―――

 

~『エリドゥ』 高層ビル屋上~

 

―――スタッ...!

 

「――あやや...これは酷い。――こちらアヤです。エレベーターは屋上をぶち抜いています。かなりのスピードで上昇していたのでこうもなりますか」

 

―――屋上に降り立つと、屋上のコンクリートをぶち抜いて鎮座するエレベーターの箱を目の当たりにし、通信で報告する。箱も目に見えて歪んでいて、これではドアも―――

 

 

ゴンッ...

 

ドガッ...!

 

―――突如、歪んだドアが内部から蹴り出された様に外れ、薄暗い内部が露になる。

 

 

 

 

「――こちら"00(ダブルオー)"。()()()()()()だ」

 

―――エレベーターから出て来たのは、額から少し血を流し、顔に擦り傷や切り傷を幾つも造り、制服やスカジャンも所々破れた、インカムに手を添えて不敵な笑みを浮かべるネルさん。その背後のエレベーター内部では―――

 

 

 

 

「......」

 

―――弾痕に塗れ、所々歪んだ装甲、銃身が軒並み歪んだ[トライ・ポッド]と、目に見えてボロボロの[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]。そして―――砕けたバイザーの下で瞑目し、気絶し(ヘイローが消え)て動かないトキさんが壁に背を預けてガックリと項垂れていた。

 

 


 

―――時を少し遡る―――

 

~『エリドゥ』大通り 横の路地~

side-ミヤコ

 

『――こちらハタテ、屋上に着いたわ。いつでも行けるわよ!』

『――よし、コイツだな![アバンギャルド君]もエリドゥのシステムに繋がってるのは幸いだ!――こちらマガン!これからマキ共々[アバンギャルド君]へのハッキングを始める!ハタテの合図で仕掛けてくれ!』

「――了解しました。"RABBIT4"、ヒビキさん、ニトリ先輩、スタンバイ」

『"RABBIT4"了解...!』

『――了解。こっちはいつでも撃てるよ』

『了解だよ!今度こそ撃破してやる...!』

 

―――ハタテ先輩とマガン先輩の言葉を受け、対装甲火力を持つ三人へ指示を出す。

 

「――ミヤコ、上手くいくのか?」

「――[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]へ『エリドゥ』内九割のリソースを注ぎ込んでいる以上、[アバンギャルド君]への外的支援は少ない筈です。ハッキングへの防御も薄くなっているとのことですから、恐らく[アバンギャルド君]のハッキングへの防御は()()()()()()()。――後は上手くいくと祈るだけです」

 

 サキの言葉にそう答えて大通りの方に目を向ける。

 

―――『[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]にエリドゥのリソースの大半を注ぎ込んでるなら、多分ハッキングに対しての防御は弱い筈よ。だからマガンとマキをこっちに呼んでハッキングして動きを止められれば...!』

 

―――マガン先輩の報告を受けた際にハタテ先輩が作戦を提案した時の言葉を思い返す。[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]の投入は"C&C"とアヤ先輩という強力な戦力の一部の抽出を強いられた反面、"ヴェリタス"の人員に余裕を持たせるチャンスを作ってくれた。

 マガン先輩の報告通り[アバンギャルド君]が『エリドゥ』の防衛システムに繋がっている事も幸いだった。"ヴェリタス"では荒事向けとは言え、曲がりなりにもハッカーであるマガン先輩とマキさんの力を借り、ハッキングにより[アバンギャルド君]のソフト面での動きを止める。更に、対装甲火力を一気に叩き込んでハード面からも動きを止めて無力化する―――これがハタテ先輩の提案を基に組み上げた作戦だ。作戦を組み上げ、人員も配置した以上、後は成功を祈るのみ―――

 

『――っと...!ハッキングすると[アバンギャルド君]は()()()()するようになってるっぽいね!でも――』

『――足掛かりをこさえたらもうこっちのもんだ!目に付くシステムは全部無力化しちまえ!』

 

―――マガン先輩とマキさんは[アバンギャルド君]のシステムへのハッキングを進めて行く。ハッキングへの防御手段は講じられていたものの、流石"ヴェリタス"のハッカー。既に侵入していた様だ。

 

『――こちらハタテ![アバンギャルド君]の挙動が()()()()()()()()()()!...アームを適当に振り回したり、頭をグルグル回したり...なんかもっとアバンギャルド(前衛的)になってる!でも――()()()()()()()()()()っぽい!』

「――了解。攻撃を許可します...!」

 

『了解...!』

『了解...!――砲撃開始!』

『了解だよ!さーて、ぶちかますよ!』

 

ドドド...!

 

―――ハタテ先輩の観測報告を受けて攻撃を指示する。数秒後には大通りから狙撃音や砲撃音が聞こえて来る。

 

『ヒビキ、照準そのまま!皆いい感じ![アバンギャルド君]が()()()()()()()()()!』

『――こっちは[アバンギャルド君]のメインシステムに深く入り込んだ!流石に自己防衛機能が抵抗してくるが、もうちょいで...!』

 

 

『――よし![アバンギャルド君]、メインシステム()()()()()()()!』

『――[アバンギャルド君]、()()()()!』

 

 

「――了解。私達も確認を兼ねて大通りに出ます!」

「了解だ!」

『了解。やっと無力化できたか...[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]程ではないけど、厄介だったね』

 

―――路地で待機していたウタハ部長達"エンジニア部"メンバーにも大通りに出る様に伝え、私もサキとモエを連れて大通りに出る―――

 

 

 

「――凄いねこれは...履帯は兎も角、装甲は多少歪みや凹み...焦げはあるが、()()()()()()()()。"新素材開発部"でもこのレベルの装甲材は開発できてない筈だ」

「本当にすごいよコレ!レシピさえ分かれば、私の『ヒソウテンソク』の装甲にも使えそうだ!」

「...こんなものに履帯を使っていることは戦車への冒涜ですが、確かに装甲はすごいのです。[イビルアイ∑]の更なる強化につかえるのです」

 

「...こりゃよくできたシステムだ。基本は『エリドゥ』の防衛システムによる管制とデータ支援を受けてるが、システム経由での[アバンギャルド君]へのハッキングの兆候を検知すると――即座にシステムから切り離して、内蔵AIによる自律行動に切り替わるのか...私らの侵入が遅かったら苦戦は必至だったな」

「見た目は兎も角、防衛兵器としては高い完成度だね。見た目は兎も角。後で皆で調べる為にシステムのコードコピっておこっか」

 

―――顔の電光が消えた状態で項垂れ、アーム四本全てがダラリと垂れた[アバンギャルド君]の周りで、一足先に着いていた"エンジニア部"と"ヴェリタス"が集まって調査を行っている。

 

「――真っ先に調査するのは流石『ミレニアム』ねぇ。あの様子だと時間掛かるんじゃない?」

「そうですね...応答できるか分かりませんが、とりあえず"先生"に報告を――」

 

 

ズゥゥン...>

「――ミヤコ、聞こえた?」

「――はい。私達の後方となると...[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]との交戦開始地点でしょうか」

 

―――インカムに触れようとした瞬間、後方から微かに音が聞こえて来た。私と同様に聞き留めたらしいハタテ先輩の言葉に頷く。[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]との交戦中に何か―――

 

 

 

 

『――こちら"セミナー"支援部隊のノアです。作戦参加中の皆さんに向けて広域チャンネルで繋いでいます。こちらは間もなくエリドゥに到着します。現在の状況はどうなっていますか?』

 

ババババ...>

 

―――インカムにノア先輩の通信が入り、微かにヘリのローター回転音も聞こえて来る。どうやら"セミナー"の支援部隊が到着した様だ。『ミレニアム』本校から『エリドゥ』までの距離を考えれば、チヒロ先輩による支援要請から今まで時間が掛かってしまうだろう。

 

「――こちら"RABBIT1"。現在『エリドゥ』防衛兵器と各所で交戦中。我が"RABBIT小隊"、"エンジニア部"および"ヴェリタス"は[アバンギャルド君]というロボット型の防衛兵器を撃破しました」

『――こちらシャーレのアヤ。"C&C"と共にパワードスーツ型兵器[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]を撃破しました。小休止と軽傷の治療を行っていますが、間もなく復帰、合流可能です』

「アヤ先輩...![アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]を撃破できたんですか?」

『えぇ。幸い回避システムの弱点を見出せましてね。少々身体を張りましたが、撃破できました』

 

―――私の報告に続いてアヤ先輩が[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]撃破を報告し、驚いて思わず尋ねると先輩は肯定する。あの未来予知の様な回避システムに弱点があったとは...

 

―――閑話休題。今は防衛戦力撃破により私達もタワーに向かえる事が重要だ。でも、合流する前に―――

 

『――成程。防衛戦力の撃破は順調ということですね。..."先生"からの応答はありませんが、そちらは状況を把握していますか?』

「――いえ。私達が[アバンギャルド君]との交戦を始めてすぐ、"ゲーム開発部"の皆さんと"教授"と共に目的地――『エリドゥ』中央のタワーに向かいましたが、以降は何も通信はありません」

『[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]投入により余剰リソースが少ない以上、道中の妨害も殆どない筈ですが...タワーで新たな防衛戦力と交戦しているのでしょうかね?』

「...[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]、[アバンギャルド君]と来て、他に防衛戦力があるのか?ロボットやドローン位なら"先生"と"ゲーム開発部"、"教授"なら余裕だと思うが...」

 

―――状況を把握したノア先輩の言葉にそう答えるとアヤ先輩が推測を挙げ、それに対してサキが疑問を挙げる。

 

「――"先生"に通信を繋いで状況把握を試みます。応答してくれるといいのですが...」

 

 先輩達にそう断り、インカムを弄ってチャンネルを切り替える。

 

―――時間的余裕は決して多くはない。"先生"達がアリスさんの下に辿り着けているといいけど―――

 

 


~『エリドゥ』セントラルタワー 玄関ホール~

side-ユメミ

 

「やぁぁ!」

タタタ...!

 

―――モモイが吼えながら[ユニーク・アイディア(アサルトライフル)]を撃って来る。

 

「ふっ...」

 

 息を軽く吐きながらステップで射線を躱し、[レッドクロス・クライシス!]を構える―――

 

 

―――タァンッ!

 

「――あら危ない」

 

―――ギィンッ!

 

「嘘?!また読まれた?!」

 

―――と見せかけてグルリと背後に[レッドクロス・クライシス!]を突き立て、狙撃を図ったミドリの銃撃を外装で防ぐ。その間に左手で[SOCOM Mk.23(ハンドガン)]をホルスターから抜き、驚くモモイに銃口を向け―――

 

 

ッポン...!>

「――そろそろ飛んでくると思ったわ」

 

―――耳が捉えた、ユズの[にゃん's ダッシュ(グレネードランチャー)]からグレネード弾が放たれる微かな音に合わせて銃口を向け直し―――

 

 

―――パンッ...

 

ドォォン...!

「うわぁ?!」

 

―――銃弾一発を放ち、グレネード弾の弾頭に直撃してモモイの頭上で爆発し、爆風と衝撃波を受けてモモイが咄嗟にしゃがみ込む。すかさず[SOCOM Mk.23(ハンドガン)]をそのモモイに向け―――

 

「"――マリサ、ユメミに弾幕を張って牽制!"」

「あぁ!――モモイ、今助けるぞ!」

ダダダダ...!

 

「っと...!」

 

―――"先生"の指示を受けたマリサが声をあげながら[バレットシャワー・ブルーム(マシンガン)]で弾幕を張って妨害して来て、咄嗟に飛び退いて射線から離れて[レッドクロス・クライシス!]を肩に担ぐ。―――状況は何度目かの仕切り直しだ。

 

「モモイ、大丈夫か?」

「うん、大丈夫...ユズの[にゃん's ダッシュ(グレラン)]攻撃を頭の上で爆発させるなんてビックリしたよ」

 

 マリサがモモイの下に駆け寄り、手を差し伸べてモモイが立ち上がるのを手伝う様子を見守る。

 

―――"ゲーム開発部"との戦端を開いてからどれ程経っただろうか。"先生"は四人の連携を崩さない程度に指揮を抑えているものの、危険な場面ではハッキリと指示を出してサポートしている。様々な形での連携の悉くを捌いて来たけど―――四人の士気は未だに折れていない。そう感じて思わず頬が少し緩む。

 

「――見事な絆の強さね。アリスが見ていたらきっと喜んでいたでしょうね」

「――本当に喜ばせる為にも、私達を通して欲しいんだがな」

 

 私の言葉に対しマリサはそう返して目を細める。覚悟を決めたその眼差しの奥には、僅かに疲労の色が混ざっている。士気は折れていないけど、体力的には厳しくなりつつある様だ。しかし―――

 

 

「――言ったでしょう?貴女達への試練は"私の撃破"よ。ワザと負けてリオに付くと決めた覚悟を嘘にするつもりはないわ」

 

―――改めて()()()()と宣言し、[レッドクロス・クライシス!]を構える。

 

「――そうか。...だったらとことんやるしかないな。モモイ、ミドリ、ユズ。まだ行けるな?」

「勿論!"教授"を倒して、アリスを助けるんだ!」

「...大丈夫。私もまだ行けるよ...!」

「わ、私も大丈夫...ここまで来て、諦める訳にはいかない、から...!」

 

 マリサの確認に対して三人それぞれ肯定を返し、各々の得物を構える。

 

「――やる気充分、大いに結構!」

 

 四人の答えに私は不敵に笑って頷き―――

 

 

 

 

「――さぁ、来なさい。(試練)を乗り越えて、貴女達の大切なものを取り戻してみせなさい!」

「"――皆、今度こそ君達の連携でユメミを倒すよ!"」

「「「「了解!」」」」

 

―――"先生"の号令一下、"ゲーム開発部"の四人は意気軒昂に応える。

 

 

「やぁぁ!」

 

―――モモイが吼え、[ユニーク・アイデア(アサルトライフル)]を撃ちながら迫って来る。

 

「...!」

 

 長物である[レッドクロス・クライシス!]では間に合わないと判断して[SOCOM Mk.23(ハンドガン)]を構えて迎撃を―――

 

 

ッポン...!>

 

「――予測通り」

―――タッ...!

 

「――へっ...?」

 

―――ユズの[にゃん's ダッシュ(グレネードランチャー)]の発射音を耳に留め、神秘を込めた脚力で以て()()()()()()―――

 

 

ドォォン...!

 

「っと...!」

「と、飛んだぁ?!」

 

―――グレネード弾炸裂時の爆風でモモイの頭上高く跳躍し、体勢を変えて落下しながら[レッドクロス・クライシス!]を構えてモモイの脳天を狙い澄まし―――

 

 

 

「――お姉ちゃん!」

―――ッタァン...!

 

「――やっぱり、そうやって横槍を入れるわね」

 

ギィンッ...!

 

「えっ...?!」

「空中で防御しただと...?!」

 

―――ミドリの[フレッシュ・インスピレーション(スナイパーライフル)]による狙撃音を聞き、即座にミドリが居る方向に[レッドクロス・クライシス!]の側面を向けて銃弾防ぐ。その行動に驚くミドリとマリサの声を聞きながら銃把を回転―――

 

―――ガコンッ...!

 

「"皆、()()()()()()()()()――"」

 

 

―――[レッドクロス・クライシス!]を縦にして突き立てながら着地して引き金を引き、横軸の外装を展開してマイクロミサイルポッドをアンロック―――

 

 

 

 

「――さぁ、凌いでみなさい!」

 

《Strawberry Cross Crisis!!》

 

ドドドドド...!

 

 

―――ポッドからマイクロミサイルが次々放たれ、赤い十字架の爆炎をホール内に次々林立させる。

 

「む、無茶苦茶だー!」

「っく...!避けても避けても次gきゃっ...?!」

「み、ミドrくぅっ...?!」

「ミドリ、ユズ?!...早く...!早く()()()()終われ...!

 

 モモイとマリサは何とか回避していくものの、ミドリとユズは早々に爆炎に挟まれて吹き飛び、マリサの声が響く。

 

「それだけ避けられるだけでも優秀ね。でも――攻撃はミサイルだけではないのよ」

 

 呟きながら[SOCOM Mk.23(ハンドガン)]を構え、モモイを狙う。"ゲーム開発部"の士気の柱であり、その容姿相応に子供っぽい所はあるけど、ユウカに散々絞られても、今の様な苦境に陥っても諦めない精神の強さは唯一無二だろう。

 

「わっ!うわっ?!」

 

 モモイが回避する先を予測して銃弾を放ち、モモイは私の銃撃まで加わって変な声をあげながらも何とか回避していくけど―――

 

「――うわぁ?!」

「モmぐおっ?!」

 

―――回避した先で爆炎にぶつかってしまってモモイは吹き飛び、その瞬間を目の当たりにしたマリサも動きを止めてしまい、目の前で炸裂した爆炎で姿()()()()()()()()

 

―――シュゥゥ...パラパラ...

 

 そのタイミングで[レッドクロス・クライシス!]のミサイルポッドが全弾撃ち切り、爆炎が治まる代わりに黒煙がホールを漂い、視界が悪化する。

 

「......」

 

―――瞑目し、気配を探る。"先生"はシッテムの箱(アロナ)のシールドで無事。ミドリ、ユズ、モモイが動いている気配は感じられない。爆炎に吹き飛ばされ、その衝撃で床か壁に打ち付けられて気絶したのだろう。そしてマリサは―――

 

 

 

 

 

―――キラッ...!

 

「――吹き飛べッ!」

 

<マスタースパーク>

 

 黒煙の中に見えた閃光を捉えた瞬間、黒煙を吹き飛ばして七色の極太レーザーが私に迫る―――

 

 

―――to be continued―――

 

 




次回、遂にパヴァーヌ編決着です。

感想、評価、お気に入り、栞、ここすきは大歓迎です。作者が喜びでわっぴ~します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。