Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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前回のあらすじ:防衛戦力との戦闘終了


File71.M-32~対世界終焉都市救出戦E.R.I.D.U⑤~

~『エリドゥ』セントラルタワー 玄関ホール~

side-ヒマリ

 

―――ウィィン...

 

―――エレベーターのドアが開き、エイミと共に()()()()()()()()()()()玄関ホールに出る。既に"先生"と"ゲーム開発部"の子達は居らず―――

 

 

 

 

「――あら、ヒマリとエイミじゃない。()()()出てきたのね」

 

―――ホールの中央で、ジャケットや髪、顔が煤けた状態で大の字で仰向けで横たわっているユメミが居て、近付く私とエイミに気付いて首を少し反らせて私達を見上げる。

 

「誰もが認めるミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーである私が態々出張らずとも、防衛戦力を突破できると見込んでいましたからね。...しかし、洪水の濁流の様な貴女らしくないですね」

「何よ、私は真剣に相手したわよ。その結果が()()なんだから――」

 

 

 

 

「――彼女が、マリサが交戦しながらミニ八卦炉(オーパーツ)のチャージを行っていたこと、煙に紛れて撃ってくる可能性は()()()()()()でしょう?」

 

 

―――ユメミの言葉を遮って指摘してやる。

 

―――ハッキングした監視カメラを通してユメミと"ゲーム開発部"の子達の戦闘を見ていた。相変わらず滅茶苦茶な範囲と炸裂数の大技の後に煙幕の様に煙が暫く残るのは私でも知っている。[レッドクロス・クライシス!]の使い手であるユメミなら尚更熟知しているだろう。

 それなのに―――マリサが煙に紛れてミニ八卦炉(オーパーツ)を構えてチャージし、レーザー砲を撃って来た事に対応せず()()()()()()()()()。『ミレニアム』()()()()()であるユメミが、視界が悪い中で相手が強力な攻撃を準備して仕掛ける戦術に気付けない筈がない。

 

「...あと少しの所まで来て、一方的に打ち負かしても面白くないでしょう?[レッドクロス・クライシス!(この子)]の大技を耐え抜いて、乾坤一擲で強力な一撃を撃ち込んだ――ラストダンスを踊り切った喜びに水を差す程薄情じゃないわ」

 

 私の指摘に対し、ユメミは()()()()()()()()()と言いたげに頬を膨らませて反論する。―――相変らず、ゲームの様な演出、遊びをそれとなく組み込んでいたらしい。アリスを助けようという意思を持ちながら、リオ(腐れ縁の親友)の覚悟を尊重してその側に付いて最後の障害として立ちはだかる―――ここに至っても、()()()()()()()()()()()()()()()。洪水の濁流の様な腐れ縁の親友はどんな展開を描こうとしているのだろうか。

 

 

―――ウィィン...

 

「――クリア!」

「――クリア!」

 

―――正面の自動ドアが開き、"RABBIT小隊"が入ってきてクリアリングを行う様子と声が響いて聞こえて来る。どうやら[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]と[アバンギャルド君]と交戦していた面々も到着した様だ。

 

「――大通りで戦ってた娘達も合流したみたいね。...っと...!」

「...そんな動きで起き上がれるのなら、やはり()()()()()()()()()()()()()()ようですね」

 

 ユメミも"RABBIT小隊"の子達の声を聞き、足を一度曲げ、それを戻す力をバネにして立ち上がる。そんな動きが出来る様子からまだまだ元気そうだと察して半目でユメミを見る。

 

「貴女と駄弁ってる間にちょっと体力が回復した――そういうことにしておいて。さて、皆を迎えてから私達も上に行きましょうか」

「...えぇ、そうですね」

 

 [レッドクロス・クライシス!]を拾い上げ、背中に背負うユメミの言葉に頷く。

 

―――今頃、"先生"と"ゲーム開発部"の子達はリオとアリスの下に辿り着いているだろう。リオは指揮官には向くし、いざとなれば自身も銃を抜いて戦う覚悟も併せ持つ。が、自身での正面戦闘は不得手だと常に言っている。それを考えれば、リオが取り得る選択は―――

 

 


~『エリドゥ』セントラルタワー 司令室~

side-"先生"

 

―――ウィィン...

 

「――ここまで来てしまったのね」

「"教授"は倒した!――後は貴女だけだよ、リオ会長!」

 

―――エレベーターのドアが開き、私達は司令室へと侵入する。メインの大きなディスプレイには『エリドゥ』全体図と、それを囲う様に各所の監視カメラの映像が映し出されている。その下には複数人での有人操作も兼ねているらしいオペレーター席とコンソールが十程並び、その上座である司令席らしきデスクからリオが立ち上がる。メインディスプレイの下方には―――

 


Endgame Neutralization Kinetic Interface

世界終焉脅威破壊システム

E . N . K . I

 

エネルギー充填率

9 3 %


 

―――物々しい名称の装置のエネルギー充填状況が表示されていて、マジックミラーらしき大窓の先に目を向ければ―――

 

 

 

 

 

 

「......」

 

―――部屋の中央に鎮座している、到底単なるベッドではなさそうな大掛かりな装置。その下にアリスが寝かされている様子が見える。

 

「――居た、アリスちゃん...!」

「アリスちゃん...!」

「見た目だけでヤバそうな装置だって解るな...しかも、ディスプレイに映ってる充填率も九割を突破してやがる...!」

「何するつもりかは分からないけど...エネルギー充填は止めるよ!アリスをやらせはしない!」

 

 遂にアリスを見付け、彼女が寝かされている装置のエネルギー充填率を見てモモイは[ユニーク・アイデア(アサルトライフル)]を構える。しかしリオは冷静に、しかし()()()()()瞑目し―――

 

「――推測は合っているわ。ただ...()()()()()()()()()()()()()()()()。[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]運用の代償で、"ヴェリタス"が既にシステムの奥深くまで入り込んでいるから。...()()ならすぐに反撃して追い出せるでしょうが――そのつもりはなさそうだし、ね」

 

―――リオは目を開いてそう答えながらディスプレイに映る監視カメラ映像群の一角に目を向ける。私達も乗ったここ司令室直通であるエレベーター三機の籠内部の映像で、"RABBIT小隊"とハタテ。"C&C"と、トキを背負うアヤ。"ヴェリタス"と"特異現象捜査部"の面々、そして―――マリサの一撃で倒した筈のユメミも、制服や顔は少し煤けているものの五体満足でヒマリらしき人物の傍に立っている。

 

「――"先生"、そして"ゲーム開発部"。本当に...あなた達は『AL-1S』を救い出すの?世界を滅ぼし得る力を秘めた危険な存在を――()()()として、()()()()()として受け入れるの?」

「当然だよ!世界を滅ぼすかもしれないとか、魔王かもしれないとか会長は言うけど――それはゲーム開発部(私達)()()()()()()()()()()()()()()から、そういう判断しかできないんだよ!」

 

 私達に確認する様に、しかし一方()()()()()()()()()()()()()()()()()()言葉にモモイが大きく頷いて答える。

 

「...確かに、百キロ以上ある[光の剣:スーパーノヴァ(レールガン)]を軽々取り回すし、眠る必要もないし、あの変なドローンに触れただけで動かすような、普通じゃない力をアリスちゃんは持っています」

「そ、それに...『廃墟』で初めて出会った時はロボット、アンドロイドみたいに無機質で、私達みたいにヘイローを持っていることにも驚きました。でも――今のアリスちゃんは元気一杯で、勇者を目指すと意気込む向上心が強い子になりました」

「...世界を滅ぼす魔王とも言える、普通じゃない力を持っているのは確かだ。その一端を目の当たりにした事実は否定しないさ。だが――それだけでアリスの存在を否定するのは短絡的だろ。『TSC』をやらせてから、アリスは明らかに感情豊かになった。それこそ私達と何ら変わらない位に。だから、私達を攻撃した時も、会長から魔王呼ばわりされた時もアイツはショックを受けた。だが――ショックを受けたなら、立ち直らせることもできる筈だ。魔王のような力を持っていたとしても、アリスは勇者だ。私達の掛け替えのない仲間だ。――アリスは勇者になれるんだと、例え世界が否定しても私達はそれを主張し続ける」

 

 続くミドリ、ユズ、マリサの言葉に私も頷き、一歩前に出てリオを見つめる。

 

「"――アリスが持っている能力、或いは才能は確かに危険だ。使い方によっては君の懸念通り世界を滅ぼすかもしれない。君は『ミレニアム』を預かるセミナー会長(生徒会の長)として、『ミレニアム』を守るだけでなく、キヴォトス(世界)をも守ろうして行動を起こした。そんな君の覚悟に、君の懸念を補強するだけの情報や理由を集めたことに敬意を表する"」

 

 でも―――と言葉を置き、リオ越しに装置に横たわるアリスを一瞥し、脳裏でアリスと一緒に行動した時の様子を思い返す。

 ネルやユメミ(実力者の先輩)相手でも臆さず、どんな事にも興味を持ち、笑ったり驚いたりして―――そして、ゲーム開発部(仲間)を誰よりも大事に想っている。一方で世界を滅ぼし得る程の力を秘めている事は否定出来ない。だけど―――

 

「"――世界に存在する全ての要素が理論や合理で説明、解決できるものではないと私は思うよ。特に...君も勿論、私達が持つこの感情はね。エリドゥ(ここ)に向かう道中でリカコが言っていたんだけど、剃刀は使い方によっては髭を整える美容道具にも、皮膚を、血管を裂く凶器にもなる。その使い方を最終的に決めるのは――()()()()()に、()()に他ならない"」

 

 リオは少し困惑した様に、しかし静かに私の言葉に耳を傾けている。―――『ミレニアム』を訪ねてから聞いたリオに関する噂や、実際にリオと相対して感じた事がある。彼女程の覚悟を貫ける様な上位の責任者は()でも数える程しか居ない。ただ、彼女に足りないのは―――

 

「"――リオ。君は()()()()()()()()()()()()()姿()()を持って、()()()()()()()べきだよ。全てを一人でやろうとするのは、皆を危険に巻き込みたくないという君なりの優しさなんだろう。究極的には一人でできれば人的損失も少なくて済むのは確かだ。でも――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。リオ...君もそれは理解できる筈だ"」

 

―――私の指摘に対してリオは表情を変えないけど、よく見れば赤い瞳が微かに震えている。やはり、リオも合理、理論を追求する内面はしっかり感情を持つ人間だ。アリスの()()を進めようとしているその内心では葛藤や辛い想いを抱いているのだろう。

 

「ここまで、『AL-1S』の()()が目前まで迫ったこの段階で――()()()()()()()()()()と言うの?」

「"――今、君を止めなければ君にとっても、皆にとっても取り返しがつかないことになる。...今、一度だけの決断でもいい。どうか――モモイ達"ゲーム開発部"のアリスへの想いを信じて欲しい"」

 

 私はそう締め括り、リオは考え込む様に瞑目する―――

 

 

 

 

 

 

「――分かったわ。あなた達を信じましょう。もう、あなた達を止められる防衛戦力はないし、ね」

 

―――タタッ...

 


Endgame Neutralization Kinetic Interface

世界終焉脅威破壊システム

E . N . K . I

 

システム停止

隔離解除


 

―――目を開いたリオはそう言って傍のコンソールのタッチパネルを操作する。ディスプレイの表示がシステム停止と隔離解除に変わり、ディスプレイのちょうど真下にある装置がある部屋に入れるのであろうドアのロックランプが赤から緑に変わる。

 

「ドアが...!皆、行こう!」

「うん...!」

「う、うん...!」

「やっとだ...待ってろアリス。今行くからな...!」

 

 それを確認し、モモイ達が小走りで装置がある部屋に向かって動き出す。

 

―――ウィィン...

 

―――そして、私達の背後でエレベーターのドアが開く音が聞こえて振り向けば、エレベーターに乗り込んでいた面々が司令室に入って来る。

 

「――"先生"、お疲れ様です。現在の状況は?」

「"リオが説得に応えてくれた。あの部屋の装置にアリスは寝かされていて、モモイ達がちょうど向かっているところだよ。君達も合流しているということは、[アビ・エシュフ(Abi Eshuh)]と[アバンギャルド君]は撃破できたんだね"」

「はい。それから、"セミナー"支援部隊も間もなく到着する予定です」

 

 ミヤコが真っ先に私の下に来て、お互いに状況を報告するけど、途中で困った様に眉を顰める。

 

「...しかし、"エンジニア部"は現在、撃破した[アバンギャルド君]を()()()()()()()為の即席の改造中で合流していません。一方"ヴェリタス"はマガン先輩とマキさんが[アバンギャルド君]のシステムコードの吸い出しを終え、駅でハッキングを行っていたチヒロ先輩、コタマ先輩、ハレさんと合流しています」

「"成程..."エンジニア部"らしいね。もう攻撃される恐れはないけど、念の為"セミナー"支援部隊から護衛を抽出してもらおう。支援部隊向けのチャンネルは?"」

「[192.33]です」

 

「...ユメミ。まさか貴女が負けるなんてね」>

「あの子達の絆と連携が強かったのよ。最強の一角であっても、負ける時は負けるわ」>

「...勝率百パーセントは実現困難ですからね。あの"00(ダブルオー)"でもゲームでは負けしかないのですから」>

 

 ユメミ達がリオの下に合流したやり取りを背に、ミヤコから支援部隊に繋がる回線周波数を共有して貰い、インカムを弄って回線を合わせる。

 

『――こちら"セミナー"支援部隊です』

「"――こちら『シャーレ』の"先生"。リオはこちらの説得に応じてアリスの()()を止めてくれた。現在、"ゲーム開発部"がアリスへの接触を図っているよ"」

『そうですか...作戦の主目標は達成間近、と見なして良さそうですね』

 

 通信を繋いだのはヘリのローター音を背にしたノアで、こちらの状況を共有すると安心した声色で答える。

 

「"ただ、"エンジニア部"は[アバンギャルド君]撃破後も現地に留まって機体の改造を行っているみたいなんだ。念の為、護衛を送ってくれるかい?"」

『既に一個班を護衛として抽出しています。特に襲撃、攻撃もないので"エンジニア部の作業を手伝っているようです』

「"――流石だ。もう護衛を付けてくれたんだね"」

 

 既に護衛を付けていた様で、手放しにノア達"セミナー"支援部隊の先見の明を褒める。

 

『ふふ、ありがとうございます♪――中央のタワーが見えてきました。間もなく私達も合流します。ユウカちゃんはリオ会長にお説教をすると息巻いているので、恐らく大丈夫だと思いますが――リオ会長を逃がさないようにしておいてください』

「"了解。待ってるよ"」

 

 通信を切り、ディスプレイにある『エリドゥ』市街地を映す広域カメラの映像に目を向け―――

 

 

 

 

―――ブゥン...

 

「"――え?"」

 

―――突然、見ようとしていたカメラの映像が()()()一色に変化する。

 

パパパパ...!

 

―――それを皮切りに、ディスプレイの全ての映像、コンソールのタッチパネルも()()()に次々覆われていく。

 

「な、何だ...?!おいリオ!お前まだ何か仕込んでやがったのか?!」

「もう私の手札は尽きているわ!...これは...まさか?!」

 

 ネルの言葉にリオは困惑した表情で自分のせいではないと答え、一転顔を青ざめさせてアリスが寝かされている部屋へと駆け出す。私も慌てて彼女について行くと―――

 

 

 

 

 

 

「――アリス?!」

 

「――否定。本機の機体名は『AL-1S』。或いは――『()()』。無関係な名称の使用は存在の目的と本質を乱します」

 

―――装置の上で上体を起こし、装置を囲うモモイ達を見回すアリス。しかし、その瞳とヘイローは()()()で、眼差しは無感情に、冷ややかだった。

 

 


sideユメミ

 

[Divi:Sion]

 

「おいおい、何が起きてやがる?!」

 

―――ネルの言葉には答えず、即座に傍のコンソールに取り付いて起動、操作を試みる。パスワードはハッキングで突破するけど―――

 

「これは...ハッキングというより()()()()()()()()()()()...!ハッキングではどうすることも...!」

「――これが()()()()()()()()()()()()()()()の正体、ということですか。ミレニアムのメンターであり、天才清楚系病弱美少女たる私でも、土俵そのものを変えてしまうような存在には...ですが――諦める理由にはなりません。そうでしょう、ユメミ?」

「――えぇ、そうね。チヒロ!貴女達"ヴェリタス"も協力して!」

 

 私の隣にヒマリも付き、自身のデバイスとコンソールを接続するも私と同じ評価を下して眉を顰める。けど、一転して面白そうだと言いたげな表情を浮かべて私に問う。私も頷いて賛同し、チヒロ達"ヴェリタス"も呼び寄せる。チヒロ達が動き出した事を確認してコンソールを操作して食い止めを図る。

 

 

 

『――『AL-1S』は『王女』であり、私はそれを補佐し、成すべき使命へ導く『(Key)』。それが私たちの存在であり目的。今、我々を妨害しようとしていた脅威の停止を確認しました。只今よりエラー修正し、本来あるべき王座に『王女』を戴く為の復旧シーケンスを開始します』

 

 アリス―――否、()()()()()()()()()()()()()はスピーカーを掌握したのか、自身を『王女』を補佐する鍵―――『Key』と呼称する無感情な声が司令室内に響く。

 

『――『AL-1S』に接続された利用可能リソースを確保するため、全体検索を実行』

 

「...っく...浸食が止まらない!」

「こちらはパターン解析を試みます...!せめて、メインシステムだけでも守り抜きましょう。とは言えこのような、ハッキングとは言えない形態ではどれだけ保持できるか分かりませんが...!」

 

―――そもそもハッキングとも違う、()()と形容すべき異質な侵入を止める事は出来ず、システムのコードが文字化けして()()()に侵されていく様を見ているしか出来ない。

 

『――リソース名、要塞都市『エリドゥ』。一万エクサバイトのデータを確認。現時点をもって、『PROTOCOL ATRAHASIS』稼働――』

 

 

 

 

『――コード名"アトラ・ハーシスの箱舟"起動プロセスを開始します』

 

ゴゴゴゴゴゴ...!

 

「こ、これは一体...?!」

「司令室が()()()()()()に覆われているぞ!何なんだコレ?!」

 

 『Key』の宣言と同時に、領域を拡大する様に司令室の空間が()()()により浸食され始め、ミヤコ達は戸惑った様子で各々の得物を構える。

 

『箱舟生成に必要なリソース確保...二十三パーセント...四十六パーセント...』

 

「――カウンターハッキングシステムオフライン...いや、()()()()()()()()()()()()()?!」

「これが"無名の司祭"の遺物――"名も無き神々の王女"の力...!そもそも土俵を作り変えようとする存在相手では抵抗しても...!」

 

 チヒロの急報を聞いてそう呟きながらも手は止めない。"名も無き神々の王女"―――リオも把握している、『AL-1S(アリス)』と()()()()である、()()()()()()()()()()の呼称。保有する機能、存在や目的については断片的な情報しか無く、()()()()()()()()()()()であるとしか推測出来なかった存在。成程この様な性能を持っているなら、世界を滅ぼせるだろう。そんな事は当然許したくないけど―――

 

『――――九十パーセント到達。間もなくリソース確保シーケンス完了。"王女"は鍵を手に入れ、箱舟は用意される。"無名の司祭"の要請により、この地に新しい()()()()()()を建立する。その到達で初めて、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

アリス(アイツ)、何を言ってやがる...?!」

「意味は分からないけど――()()()()()()()()()()()()()()()()のは確かだ...!リーダー、私達には何が――」

 

 

―――タッ...!

 

「――『エリドゥ』()()()()()()()を起動します!後は()()()()()()()!!貴女達は"セミナー"のヘリで脱出しなさい!」

 

―――司令室に戻って来るなり、リオがとんでもない宣言を挙げる。

 

「"それはダメだ!君も一緒に――"」

()()()()()()()()()()()()()()()()()前に何がなんでも止めなければいけないの!..."名も無き神々の王女"の顕現を阻止する為に手を尽くした『エリドゥ』が...()()()()()()()()()()()が――()()()()()()()()となる前に、()()()()()()()()()()()()()()()()!もう問答してる余裕もない!――ノア、聞こえてるわね?!これから()()()()()()()を外に脱出させるわ!迅速に回収して離脱を――

 

 リオについて来た"先生"が即座に反対するけど、覚悟を決めてしまえばそう簡単には折れない性分であるリオだ。案の定一切意見を曲げず、ノアに通信を繋いで指示を飛ばす―――

 

 

 

 

『――会長。申し訳ありませんが()()()()()()()()()()()

 

―――しかし、淡々とした、でも()()()()()()()()()声色でノアはリオの指示を拒否する。

 

「貴女まで...!どうか従ってちょうだい!ここで全員纏めて居なくなっては、仮に『ミレニアム』が滅びから生き延びたとしても――」

 

 

 

 

 

 

『――"Key"なる存在の宣言はこちらにも届いています。...()()()()()()()()()()()()()()()、一時凌ぎなれど()()()()()()()()筈ですね』

「それはそうだけど...!この状況でどうやって――」

 

 

 

『――はっちゃ!ノア先輩、()()()()()()()()()を掌握しました!』

「これ...この()()()()()()()()()()()()()()()()()()痕跡は...!」

 

―――コユキの声がインカムに入り、ログを追っていたらしいチヒロが驚いた声をあげる。まさかコユキまで連れているなんて一体何を―――

 

 

 

 

 

 

『――()()()()()()()()()()()()()。これより緊急遮断を開始します。――えいっ♪』

 

―――バツンッ...!

 

『――九十九パーセント。リソース確保失敗。システムシャットダウンを確認』

 

―――突然だった。広域チャンネルでノアの可愛らしい宣言が届いた瞬間、視界が一瞬で真っ暗闇に染まり、すぐに非常電源に切り替わったのか赤い電灯が司令室を照らし、『Key』の宣言が響く。

 

「――成程ね。『エリドゥ』を稼働させているリソースの大元――電力の供給を断ってしまえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!...我ながらとんだ盲点ね」

「...珍しく意見が合いましたね。滅びの瀬戸際故に、即応性の高い才色兼備の美少女である私でもそこまで思考が回りませんでした」

 

 ヒマリが珍しく同調した意見を挙げる。―――"全知"保有者としてらしくない醜態ではあるけど、これで反撃のチャンスが生まれた。この状況なら()()を―――

 

 

 

 

『リソース確保プロセスエラー。緊急状況発生。電源リソース、プロトコル実行者を保護するため[Divi:Sion]のエリドゥ中央タワーへの集結を要請』

 

「"――[Divi:Sion]?"」

「おい待て()()()()()ってことはアリス(アイツ)まさか――」

 

 

 

 

『――こちらエレン!エリドゥ西部の防壁に()()()()()()()()()()()()が接近!取り付いて登り始めてるわ!』

「――ユメミ!コンソールを操作してるなら偵察ドローンを出せる?!システムが生きてるなら少しでも視覚的な情報を...!」

「了解!...システムはまだ無事よ!――偵察ドローン射出!」

 

 リオの指示に応えてコンソールを操作し、システムが無事である事を確認してドローンを射出し、別の仮想画面でドローンのカメラ映像を立ち上げて西へと飛ばす―――

 

 

 

 

「――これは...!『廃墟』で確認されているドローンやロボット?!」

 

―――ドローンが防壁を越えて映し出した映像では、『廃墟』で見た事があるオートマタや"ガーディアン"と呼称されているドローンが次々森を抜け、防壁に取り付いて登っている光景が映し出されていた。その様はさながら、獲物を見付けて大挙して押し寄せるゾンビだ。その光景に驚きながら仮想画面を拡大してヒマリやリオにも見える様にする。

 

「――確かに、以前ユメミから得た情報通りの見た目のオートマタやドローンね。でも何故『AL-1S』の...いえ、『Key』の指示を受けて...」

「あのオートマタやドローンもまた"無名の司祭"の遺物の一部ってことでしょうね。それより問題は――」

「――呼び寄せた目的は電源供給の復旧...即ち発電設備の奪取でしょう。メインの発電設備はこのタワーの地下にあります。...今の状況においては、守るべき目標が分かりやすいことに感謝ですね」

 

 ヒマリの言葉に頷く。―――状況は変わらず予断を許さない。けど、取るべき行動は分かりやすい。このタワーを守って発電設備への接近を阻止し、且つ―――

 

「――おい、あたしらはどうすりゃいい」

「"――リオ、ユメミ。私達はどうしたらいいかな?"」

 

―――私達の下にネルと"先生"が来て、これからすべき事を問う。

 

「――タワーの外に出て、侵入を図るオートマタやドローンを迎撃して。...『エリドゥ』の防衛設備は()()を受けていて殆ど使えないけど、一階ホールにある非常用資機材倉庫に土のう袋や折り畳みバリケードがある。防壁を乗り越え、タワー(ここ)まで迫るまでに防衛準備を整える時間はある筈よ」

「――分かった。ハッカー連中はそのままアリス(チビ)の行動を止めておけ。戦闘は――あたしらに任せとけ」

「"――了解だよ。『シャーレ』も防衛戦に――"」

 

 

 

 

「――"先生"、貴女はここに残って欲しいの。貴方と、"ゲーム開発部"には...()()()()()をお願いしたい」

 

―――リオの指示に頷き、ネルに続いて動き出そうとした"先生"を呼び止め、ジャケットのポケットからUSBメモリを取り出す。

 

―――『Key』の顕現は予想していたけど、アリスが秘める力を発揮させた事、その力の強大さは予想を超えていた。でも、これはチャンスだ―――

 

 

 

 

―――()()()()()()()()()()()を導く為には、()()()()()()()()()()()()()

 

 


~『エリドゥ』セントラルタワー 正面玄関前広場~

side-ミヤコ

 

―――スタッ...!

 

「――防壁を乗り越えたオートマタやドローンの第一陣が一心不乱にこのタワーを目指して前進しています!恐らく五分もしないであの大通りに繰り出してくるでしょう」

 

―――偵察に出ていたアヤ先輩が降り立ち、オートマタやドローンの侵攻状況を報告する。

 

―――リオ会長が全体の指揮を受け持ち、ユメミ"教授"、"特異現象捜査部"のヒマリ部長。"ヴェリタス"のチヒロ先輩、コタマ先輩、ハレ先輩は『Key』による()()の阻止を受け持つことに。そして―――"ゲーム開発部"と"先生"はタワー司令室でユメミ"教授"が提案した()()()()を実行する為の準備に入っていて、タワーの司令室に残っている。今頃は作戦の実施に入っているだろうか。

 そして、私達『シャーレ』と"C&C"含めて()()に向く生徒はタワーの外でオートマタやドローンを迎撃する為に防衛陣地を構築して待ち構えている。反対側では"ヴェリタス"のマガン先輩、マキさん。"特異現象捜査部"のスミレコ先輩、レンコ先輩、メリー先輩、エイミさんが陣地を構築し終えて待機中だと先程報告が入っている。本来ならば"エンジニア部"も加わる予定だけど―――

 

「――狙いは予想通り、タワー(ここ)の地下の発電設備か。...ハタテはまだ戻ってねぇか?"エンジニア部"の連中がこのままだと――」

 

 

『――こちらハタテ!"エンジニア部"の[アバンギャルド君]()()が終わったわ!これからそっちに合流するけど、間に合わなさそうなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()つもりよ!』

「――了解しました。ですが、敵勢力の総数は現状不明。数の暴力で包囲されてはどうすることもできません。安全確保及び、こちらへの合流を優先してください」

『了解よ!』

 

―――インカムにハタテ先輩の報告が入り、了解と共に合流優先を伝える。

 

「――"エンジニア部"も大丈夫そうだな。..."セミナー"のヘリもタワー周辺を飛んで警戒してるし、対地攻撃である程度の数は纏めて捌けるな」

 

 丁度大通り上空を"セミナー"支援部隊のヘリ数機が飛んでいく様子を見上げるネル先輩の言葉に頷く。―――弾薬に限りはあれど、ヘリの存在は大きい。『廃墟』から来ているらしい敵勢力の総数が不明なのは怖い所だけど―――

 

「――よし、作戦を確認するぞ。...つっても至極単純に、タワーを守り抜くだけだが。タワーに入れるのはここ正面玄関だけだ。地下からのルートもあるが、そこはリオが()()()()()()()。だが、タワーの窓を割って新たに入り口をこさえる可能性は否定できねぇ。できる限り、()()()()()()()()()()()()()()()()のがあたしらの役割だ」

 

―――ネル先輩が作戦内容を説明し、皆と一緒に頷く。

 

「――敵がどれだけ来るかは分からねぇ。だが、突破を許したらあたしら所か()()()()()()だ。弾薬はリオが寄越したあるだけの備蓄をタワー内(後方)に集積してある。だが――弾がなくなっても最悪直接殴ろうとする位の()()は持っておけ!」

「"01(ゼロワン)"りょーかい!」

「"02(ゼロツー)"、了解」

「"03(ゼロスリー)、任務了解致しました"」

「"04(ゼロフォー)"、了解致しました」

「"05(ゼロファイブ)"、了解...!」

 

 ネル先輩の音頭に"C&C"エージェントの()()が頼もしく頷く。―――そう、()()だ。

 

「...トキ(新入り)。本当に大丈夫なんだな?」

「...()()()()()に手酷くやられましたから、万全ではありませんが――会長より託されたのです。故に、"C&C"エージェントとして、そして...会長の懐刀として必ず守り抜く覚悟はできております」

 

 頬や額に絆創膏やガーゼを貼り付け、髪も煤けているものの、ノースリーブ、ミニスカートの軽装なメイド服を纏う"04(ゼロフォー)"トキさんは、無愛想な表情にしっかりとした眼差しを宿して頷く。

 

「――ならいい。状況としちゃ手はいくらあっても足りねぇ位だ。"C&C"エージェントとして恥ずかしくねぇように働けよ」

「――そちらこそ、あまり攻め過ぎないようにご注意ください。...()()()()()では、敵軍勢に吞み込まれてしまった場合、()()()()()()()()()()()()()から」

「...[アビ・エシュフ(リオの大層な玩具)]のおかげであたしらと対等にやれてた癖によく言うじゃねぇか。...そんな減らず口が叩けるなら言うことはねぇ。戦力として頼りにしてやるからな。しっかりやるべきことをやって任務を遂行しろよ」

「...あのリーダーが、抑えた...?!」>

「あらあら...アリスちゃんのおかげでしょうか」>

 

 ネル先輩に確認に対してトキさんは煽りを混ぜて大丈夫だと答える。ネル先輩はピクリと眉を上げるものの、悪態を吐きながらも受け止め、改めて指示を出す。...ウカビさんとアカネ先輩のひそひそ話が私にも漏れ聞こえたけど、身長にコンプレックスを抱くネル先輩が一瞬キレそうになりながらも、それを抑えるとは...アリスさんの()()()煽りで耐性でも付いたのだろうか。

 

 

―――タッタッタ...

 

「――ごめんなさい、少し遅れたわ!"セミナー"支援部隊、防衛戦に加わるわ!」

 

―――そこに、ユウカ先輩が先頭に立つ"セミナー"支援部隊の面々が到着し、ユウカ先輩が参戦を宣言する。先程大通りを飛んで行ったヘリから降りて来た面々だ。これで防衛戦力は更に強化される。

 

「...よーし、"セミナー"も来たか。これで――」

 

 

 

 

ザッザッザッ...

 

「...!大通りに()()()()()()()()()()()()()の侵出を確認!」

 

―――もうすぐ明け方に移ろうとしている夜空に金属質の足音や駆動音が無数に響き始める。アヤ先輩が大通りに目を凝らし、()()()()()()()()()()()()()の接近を報告する。

 

―――遂に来た。タワー司令室で()()に臨んでいる"先生"と"ゲーム開発部"を妨害させる訳には行かない―――!

 

 

 

 

 

 

「――よしお前ら、配置に付け!迫り来る敵を全部()()()()ぞ!!」

『『『『『了解!!』』』』』

 

 

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで次回、決着です。今回で収まらんかった...

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