Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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総合評価pt300到達しました。拙作をご愛読いただき感謝に堪えません。とりあえず次に目指すは500pt。遠い道のりですが、エタらないように頑張ります。

さて、ワイルドハントイベントも出たので初投稿です。科が実質部活動みたいだから公的部活動が無かったり、治安維持組織枠っぽい寮監隊になんか既視感ある生徒が幹部で居たり、生徒会であろう芸術評議会会長の名前が結構印象的な姓だったり...ただ、何というか芸術系なのに規則秩序が厳しい所がある学校って感じですね。作品置いてるならそうなるかもですが。とは言え、ミヨちゃんみたいな調達屋が居る辺り少なくない反感はありそうで。
あ、ワイルドハントにも勿論東方キャラはキャスティング予定です。大体察しが付くでしょうけど。

前回のあらすじ:アリスは勇者を目指す者です!!


File75.M-34~千年都市の今~

~『ミレニアムサイエンススクール』技術棟 会議室~

side-ウタハ

 

「――各々忙しい中、集まってくれて感謝する」

 

―――会議室の上座に座り、集まった面々を見回す。ニトリ、リカコ、タカネ、リカ、ヒビキ、コトリ...一(・)人(・)を(・)除(・)い(・)て(・)、皆真剣な表情だ。

 

「――五日前、私達は大(・)切(・)な(・)友(・)人(・)救出の為に協力し、その最中で世(・)界(・)終(・)焉(・)の(・)危(・)機(・)に直面した。彼(・)女(・)がこれまで関連する情報をひた隠しにしていたこともあって、ミレニアム(この学校)に近い場所にまさか、あれ程の脅威が眠っていた事実が判明した驚きは大きい」

 

―――五日前。"ゲーム開発部"、"C&C"、"ヴェリタス"、"特異現象捜査部"、『シャーレ』、『SRT』の"Кролик小隊"と共に『エリドゥ』で防(・)衛(・)線(・)崩(・)壊(・)が(・)そ(・)の(・)ま(・)ま(・)世(・)界(・)終(・)焉(・)に(・)繋(・)が(・)る(・)、決死の防衛戦を思い出したのか皆苦々しい表情を浮かべる。

 

―――"無名の司祭"、『名もなき神々の王女』、『Key』。遥か過去のキヴォトスに存在した文明の産物。彼(・)女(・)が秘めていた力を目の当たりにして、過去には確かに強大な文明が―――世(・)界(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)得(・)る(・)程の力を実現する文明が存在していたのだと実感した。

 

「あのような、人知を超えた存在がまた現れる可能性は否定出来ない。何せ最大級の遺構である『廃墟』はミレニアム(私達の学校)の傍にあり、未だに謎ばかりだからね。故に――」

 

 

 

 

 

 

「――リ(・)オ(・)が(・)横(・)領(・)し(・)、資(・)産(・)運(・)用(・)で(・)増(・)や(・)し(・)た(・)隠(・)し(・)資(・)産(・)の一部がミレニアム(学校)に還元される形で入った追(・)加(・)予(・)算(・)。この配分は慎重に決めなければならない」

「はいはい!私の[ヒソウテンソク]建造加速の為に五(・)割(・)をおくれよ!そっちの宇宙戦艦建造よりは形にしやすいしさ!」

「異議ありです![ヒソウテンソク]と違って[光の剣:スーパーノヴァ(試作兵装)]しかできておらず、それもアリスさんに譲っています!今回の追加予算は宇宙戦艦建造を前進させるチャンスなんです![アバンギャルド君]のおかげで新たな可能性を見出せましたし、装甲材全体の内七(・)割(・)も頂ければ大きく前進します!」

「――そんないつ完成するかも分からない代物より、私の[イビルアイΣ]に予算を投じる方が現実的なのです。[アバンギャルド君]の装甲材の技術もあれば、[イビルアイΣ]は最強究極に近付けるのです。だから[アバンギャルド君]装甲材の解析データと共に、追加予算の内四(・)割(・)をこちらに寄越しやがれなのです!」

「あーもう好き放題言わないでよ!!案の定宇宙戦艦建造でまたゴッソリ持っていくつもりだし、この時点で追加予算超過してるし!!今回ばかりは私が決めるよ!!」

「異議あり!予算配分を一方的に決めるのは拒否させてもらうよ!ちゃんと私の意見も汲んで――――」

「意見を汲ませろと主張するなら私達も――――」

 

―――私の音頭を皮切りに、ニトリ、コトリ、リカが口々に要求を挙げ、しかしタカネが机を叩いて憤慨して自身が予算配分を決めると宣言し、ニトリとコトリが抗議の声をあげて会議室は一気に紛糾と混乱に満ちる。

 

「...はぁ...案の定ね。これはまた私の配分(取り分)も少なくなりそうね...」

「君も配分を主張すればいいじゃないか。――今回の追加予算はこちらの想定以上に多かった。全く、リオの巧妙な横領と資産運用の技能には驚かされる...私達の宇宙戦艦建造は、理論と設計図ばかりで形になったものが[光の剣:スーパーノヴァ(レールガン)]以外にない。だから、予算配分は多く欲しい所だ。これはチャンスなんだよ」

「...予算は多ければ多いほど開発も促進される。タカネ先輩もそれは理解している筈だけど...」

「...まぁ、部長もヒビキもそ(・)っ(・)ち(・)側(・)よね。主張したところで、どうせニトリや部長(声が大きい主張)に潰されるのがオチなんだから...」

 

 呆れたため息を吐くリカコのぼやきに対する私の言葉にヒビキが賛意を示し、リカコは呆れた表情を変えずに半目で私達を見る。相変わらずリカコは主張が控えめだ。入部して間もない頃はもう少し主張が強かった記憶があるけど、何が彼女を控えめにさせているのだろうか―――

 

「あーもうどいつもこいつも!!お金は有限だって根本的事実をなんで理解できないかなぁ?!っていうかサ(・)ナ(・)エ(・)は(・)ま(・)だ(・)合(・)流(・)し(・)て(・)な(・)い(・)の?!あの娘が居たらもう少し理性的に――――」

「――そう言えば、サナエはまだ来てないね」

「サナエなら、直前で電話が掛かって来てそれに応対してるわ。...口振り的には身(・)内(・)みたいだけど――」

 

 

~『技術棟』 会議室付近の廊下~

side-サナエ

 

『――――つまり、サナエ自身大きなケガは負っていない。後遺症もなし。これは確かなんだね?』

「もう、さっきから、こ(・)れ(・)ま(・)で(・)の(・)電(・)話(・)でも何度も言ってるじゃないですか...私を心配してくださっているのは素直に嬉しいですが、何度も確認されると流石にしつこさが上回りますよ?」

 

―――スマホの向こう。百鬼夜行(母校)の学院長(頂点)にして教(・)職(・)であり、私にとって家(・)族(・)同(・)然(・)の(・)大切なお方の言葉に思わず愚痴るように言い返してしまう。『エリドゥ』での一件が外部に報道されて以来、もう何度目かも分からない直(・)接(・)の(・)電話は、相変わらず内容に殆ど変わりがない。

 

『まーまー、そろそろしつこいなーって私も思ってるけどさ。あの報道見て心配になったのは本心だよ?ミレニアム(学校)の近くに世(・)界(・)を(・)滅(・)ぼ(・)せ(・)る(・)存(・)在(・)が(・)ま(・)だ(・)埋(・)も(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)も(・)し(・)れ(・)な(・)い(・)遺跡があるんだ。――人(・)知(・)を(・)超(・)え(・)た(・)得(・)体(・)の(・)知(・)れ(・)な(・)い(・)存(・)在(・)の脅威についてはサナエだって解ってるでしょ?』

「...はい」

 

―――もう一人、百鬼夜行(母校)の理事長(影の頂点)にして同様に教(・)職(・)であり、家(・)族(・)同(・)然(・)の(・)大切なお方の言葉に頷く。そう、百鬼夜行(母校)にも『Key』―――アリスちゃんの中に潜んでいた存在とは方向性が違うものの、現(・)行(・)の(・)技(・)術(・)、知(・)識(・)で(・)は(・)理(・)解(・)出(・)来(・)な(・)い(・)存(・)在(・)が潜んでいる。百鬼夜行(母校)の同級生であり、"陰陽部"の最(・)高(・)戦(・)力(・)でもある彼(・)女(・)は不良を鎮圧するが如く見付ければ平然と祓(・)う(・)けど、本来は接触しに行く様な存在ではない。

―――閑話休題。

 

『お前だって珍しくい(・)つ(・)も(・)の(・)雰(・)囲(・)気(・)を(・)崩(・)し(・)て(・)オ(・)ロ(・)オ(・)ロ(・)し(・)て(・)い(・)た(・)だろうに...しかし、あれ程の情報をつい先日までひた隠しにしていたことも驚きだよ。当代"セミナー会長"は随分やり手のようだね』

 

 関心した様な言葉に頷く。

 

―――『エリドゥ』でのアリスちゃん救出作戦、その最中に直面した世(・)界(・)終(・)焉(・)の(・)危(・)機(・)。それらを解決に導いた翌日。リオ会長は内外からメディア、キヴォトス構成校生徒会関係者等々を招いて記者会見を開催した。『エリドゥ』の存在と自身が取った行動、そして―――"無名の司祭"なる、『廃墟』の様な遥(・)か(・)過(・)去(・)の(・)文(・)明(・)が生み出した脅(・)威(・)の存在について情報を公開した。

 

『だが――孤(・)独(・)故(・)の(・)苦(・)悩(・)と(・)不(・)安(・)定(・)さ(・)もあの会見から見えた。学校運営を預かる生徒会トップ――組織の頂点とは必然的に孤独になる。何せ自(・)身(・)よ(・)り(・)上(・)が(・)存(・)在(・)し(・)得(・)な(・)い(・)からね。行動、決断の責任は自(・)分(・)で(・)取(・)る(・)し(・)か(・)な(・)い(・)。その重圧は大人でさえ時に苦痛となる程だ。

 私や"シャーレの先生"とやらのような教(・)え(・)導(・)く(・)大(・)人(・)という存在が居れば、多少は責任の重圧も和らいだかもしれないが...つい先日まで、どんな影響を与えるかも分からない情報を一人で抱えていたのは彼女なりの優しさであり、しかし独り善がりの善意だったんだろうね。だが――あの会見はその在り方が変わった証左だろう』

「...そうですね。留学当初、挨拶に伺った時は"ビッグシスター"という二つ名の通り、全(・)て(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)様(・)な(・)、得(・)体(・)の(・)知(・)れ(・)な(・)い(・)上(・)位(・)者(・)という印象でした。ですが今は...不器用ながらも、他者に歩み寄ろうとしているようにも見えます」

 

 留学初日、リオ会長への挨拶に伺った時、初対面時の印象と今を脳裏で比べながら頷く。『エリドゥ』で、リオ会長の心情にどんな変化があったのかは分からない。ただ―――リオ会長が一人で抱(・)え(・)込(・)む(・)事(・)を(・)止(・)め(・)た(・)のは事実だろう。あの会見以来、リオ会長は『ミレニアム』のあちこちで姿を見かける様になった。ウタハ部長曰く、リオ会長が"セミナー"に加入して以降籠ってしまってばかりだったらしいけど、それも合わせて考えると―――リオ会長の考え方、心情はいい方向に変わりつつある。

 

『ま、セミナー会長(学校の頭)がいい方向に変わってるならミレニアム(学校)そのものもいい感じになるでしょ。――とりあえず、無事で危機を乗り越えたなら安心だよ。留学期間は有限。サボらず自分の糧になる学びと経験を得るんだよ』

『それから、偶には百鬼夜行(ウチ)に戻ってきておくれよ。近々、"ゲヘナ"の"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"を招いて"和楽姫"公演を催す予定でね。お前も好きだっただろう?』

『主演は"和楽姫の体現者"チセが受け持つ予定でさ。おかげで"陰陽部"...いや、カホが大張り切り。私も公演は久しぶりに見るから楽しみだよ』

「――分かりました。予定を組んで一度百鬼夜行(そちら)に帰省します。...と言っても、"エンジニア部"も多忙なので予定が変わる可能性はありますが」

『絶対に帰ってこいとは言わないよ。サナエ自身がやりたいことを優先しな。――それじゃあ、ミレニアムでの勉学、頑張るんだよ』

『それじゃあね~』

 

―――通話が切れ、スマホを耳から離して電話アプリを落とす。

 

「――ああ、思ったより長話しちゃったわね。部長達大丈夫かな...今回の追加予算は結構多いし、大揉めは必至...タカネちゃんの負担が増える前に私が何とかコントロールしないと――」

 

 画面に映る現在時刻を確認し、今頃の会議室は紛糾しているだろうと予想しながら会議室に向かう―――

 

 


~"ヴェリタス"仮部室~

side-ハレ

 

―――ウィィン...

 

「――皆、ガレージに移動拠点用のトラックが届いたよ!」

 

―――仮部室のドアが開く音が聞こえて振り向けば、嬉しそうに笑うマキが顔を覗かせてそんな報告を挙げる。

 

―――『エリドゥ』での騒動から五日。リオ会長が『エリドゥ』建造、維持の為に横領し、資産運用で増やした隠(・)し(・)資(・)産(・)が、『ミレニアム』全生徒へ謝罪の一環として各部活に向けて追(・)加(・)予(・)算(・)として還元された。その総額は概算でも四(・)年(・)度(・)分(・)の(・)全(・)校(・)予(・)算(・)に匹敵するらしいから、リオ会長の資産運用能力の巧妙さと高さが伺える。

 ただ、表向き"セミナー"反抗組織であり、予算が降りた試しが無い私達"ヴェリタス"にもまさか追(・)加(・)予(・)算(・)が配分されるとは思わなかった。

 まさかの予算獲得に驚きつつも、これは"ヴェリタス"再建を早期に行えるチャンスでもあり、早速移動拠点用の大型トラックを注文した。中に積み込む機材は実際の車両を見てから選定するつもりでいる。

 トラック注文、今後の機材選定での支出を抜きにしても追加予算はまだまだ余っているから、移動拠点の目処が付いたら次は本拠点の整備だ。

 

「...納車、思っていたより早かったな。電気系だけは特注オプションを注文したが、それ以外普通のトラックだけならこんなものか」

「とりあえず確認しに行こうか。荷台の規模次第で載せる機材も決まるし」

「そうですね。――あ、副部長からトークです。用事が終わったので、これから戻るそうです。私からトラックの納車と、確認でガレージに居ると伝えておきますね」

「早く早く!あたし達の新しい拠点だよ!」

 

 急かすマキに応える様に立ち上がり、仮部室を出る―――

 

 

~近くのガレージ~

 

「...注文通りだが、こう見るとテクスチャ貼り付け前のモデルみてぇだな」

「これが、私達の移動拠点になるトラック...」

「真っ白な車体!グラフィティのキャンバスにピッタリじゃん!」

「運転席と荷台も、注文通りに通路で接続されていますね。エンジンユニット整備時の邪魔にならないように可変式...このような特異な仕様にも応えてくれるとは、副部長には感謝しなければなりませんね」

 

―――仮部室がある建屋の近くにあるガレージ。そこに鎮座する白い大型トラックの前に立ち、各々感想を漏らす。トラックを発注したのはチヒロ先輩がソフトやネットインフラ関係の営業によく出向いている『ミレニアム』内の車両メーカーで、その繋がりと信用がこちらの少し無茶な要求仕様に応えてくれた要因になったのだろう。

 

「それじゃ、荷台の中身を見てみよっか!こんなリモコンもあるから、外からでも色々動かせるよ!」

「おぅ、そうだな。中身も注文通りだといいが...」

 

 マキに続いて後部に周り、納車時に受け取ったらしいリモコンをマキが後部の扉に翳す―――

 

「――さぁ、御開帳!」

 

ウィィン...

 

「...まぁ、広さは荷台の外観そのままだね。...よし...飲み物用の冷蔵庫も小型なら置けそうかな...」

「これで見た目以上に広々空間だったらどんな謎技術だ...電源ポート、諸々ラックやフックも充分あるな。サーバー、コンピュータ...サイズ制限は必要だが、五人詰めて作業するには充分な広さは確保できそうだな」

「どのように設備を配置するか...ハウジング系のゲームみたいで少しワクワクしますね」

 

―――後部の扉が開き、自動で降りてきたタラップを登って荷台の中に入り、何も置かれていない空っぽの空間を見回す。電源ポートやケーブル用のラックやフックもレイアウトに困らない最適な距離感で、コタマ先輩の感想の通りどんな風に設備を据えていくか考えるだけでもワクワクして来る。

 

 

「――皆お疲れ。その様子だと、仕様通りに届いたみたいだね」

 

―――外からチヒロ先輩の声が聞こえて振り向くと、いつの間にか合流していたらしいチヒロ先輩が荷台を覗き込んでいた。

 

「――先輩お疲れ様ー!ちゃんと注文通りだよ!ここから設備を据えて、インフラを構築すれば...!」

「お疲れさん、先輩。トラックだから容量的な制限はあるが、移動拠点として完成した姿にゃワクワクするな」

「先輩、お疲れ様。思っていたより早く移動拠点が実現しそうだよ。これで、私達の活動範囲もより広がる」

「お疲れ様です、副部長。――移動拠点が完成すれば、ハッキング(私達の本業)での仕事や営業も円滑に行えるでしょう」

 

 私達の感想を聞いたチヒロ先輩は微笑みながら頷く。

 

「――そっか。仕様通りに納車されたならよかった。...さて、こうして移動拠点構築の準備も大詰めな所に水を差すんだけどさ。一(・)点(・)気(・)に(・)な(・)る(・)こ(・)と(・)があるんだ――」

 

 チヒロ先輩が指で眼鏡をクイッと上げながらそんな言葉を挙げ、私達は何だろうと首を傾げる―――

 

 

 

 

「――この中に、大(・)型(・)免(・)許(・)持ちは居る?因みに私は普通ATしかないよ」

 

―――チヒロ先輩が眼鏡の下の瞳に既(・)に(・)分(・)か(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)様な、呆れた眼差しを浮かべる中。私達はす(・)っ(・)か(・)り(・)忘(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)事(・)実(・)を思い出して沈黙する。

 

 


~『岡崎研究室』 "教授"オフィス~

side-ユメミ

 

「――なぁ"教授"、ちょっといいか?」

「...何かしら、チユリ?」

 

―――"先生"とシッテムの箱(アロナ)の同意を得たあ(・)る(・)プ(・)ロ(・)ジ(・)ェ(・)ク(・)ト(・)の仕上げを進めていると、隣の"助手"デスクで作業を進めているチユリのおもむろな問いに答えながら顔を向ける。

 

「――こうして"教授"がエ(・)リ(・)ド(・)ゥ(・)か(・)ら(・)持(・)っ(・)て(・)来(・)た(・)データをア(・)イ(・)ツ(・)に入れてるが、ずっと気になってたんだ。...結局狙いはア(・)イ(・)ツ(・)の(・)為(・)の(・)A(・)I(・)デ(・)ー(・)タ(・)回(・)収(・)だったのか?」

 

 チユリが指し示す先、オフィスとマジックミラーの壁で隔てた部屋の中央―――

 


 

Revolutionary Utilitarian Kinetics with Organic-like Thinking and Operation*1

Project R.U.K.O.T.O

 

Installing Personality data...

K(・)e(・)y(・).exe:■---------:11%

 

 

―――ベッドに目を閉じて横たわる、緑色のショートヘアにメイドプリムを被り、襟に水色のリボンタイを締め、白いエプロンと青のワンピースのメイド服スタイルの少女―――によ(・)く(・)似(・)せ(・)た(・)ア(・)ン(・)ド(・)ロ(・)イ(・)ド(・)の頭上のディスプレイに映る人(・)格(・)A(・)I(・)の(・)イ(・)ン(・)ス(・)ト(・)ー(・)ル(・)進(・)捗(・)に目を向けると、チユリが問いかけて来る。

 

―――『Project R.U.K.O.T.O』。私が発案し、研究室全体で進めているアンドロイド開発プロジェクト。頭文字を取って"R.U.K.O.T.O"―――『る~こと』と命名予定だったけど、『廃墟』でアリスを見付けたことで大きく状況が変わった。

 ヘイローを持ち、人間と遜色ない身体、容姿であり、人格を持ち学習すらする―――私(・)と(・)研(・)究(・)室(・)と(・)し(・)て(・)の(・)目(・)標(・)で(・)あ(・)る(・)、人(・)間(・)と(・)見(・)分(・)け(・)が(・)付(・)か(・)な(・)い(・)レベルのアンドロイドの発見は、アリスが持つ人間とは思えない機能、"無名の司祭"系統の技術の産物である可能性を抜きにしてもプロジェクトを大いに前進させる要素となった。そして―――

 

「――『Key』のデ(・)ー(・)タ(・)サ(・)ル(・)ベ(・)ー(・)ジ(・)はあわよくば程度で狙っていただけよ。アリスが"先生"と"ゲーム開発部"の娘達に救われて自身の主導権を取り戻し、『Key』が排(・)除(・)される瞬間をね。...殆(・)ど(・)破(・)損(・)も(・)な(・)い(・)完(・)璧(・)な(・)状(・)態(・)でサルベージできちゃったのは予想外だけどね」

 

 『Key』のデータインストール進捗を見ながらそう答える。チユリが受け持っているのは進捗確認と、『Key』が覚(・)醒(・)しないかの監視だ。

 

―――『Key』がアリスの内に秘められた『AL-1S』としての本性を覚醒させ、"ヴェリタス"部室全壊を代償にネルが鎮圧し、リオが本格的に動き出したあの事件。否―――『廃墟』で[G.Bible]を捜索していた時のアリスの反応や、データインストール時のOSの挙動を目の当たりにしてから、AL-1S(アリスの本来の姿)の覚(・)醒(・)を(・)図(・)る(・)存(・)在(・)の可能性を見出していた。

 真偽は『Key』の覚(・)醒(・)の是非に掛かっているけど、『Key』が居ない状態は正(・)常(・)で(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)可能性がある。AL-1S(アンドロイド)が『天童アリス』としてあれ程の人格、性格を確立する高度なAIを有しているのは、世(・)界(・)を(・)滅(・)ぼ(・)す(・)兵(・)器(・)として見れば―――余(・)り(・)に(・)も(・)不(・)確(・)定(・)要(・)素(・)過(・)ぎ(・)る(・)。そして『Key』の口振り―――神(・)秘(・)の(・)ア(・)ー(・)カ(・)イ(・)ブ(・)化(・)とか言う世(・)界(・)を(・)滅(・)ぼ(・)す(・)と(・)同(・)義(・)の(・)目(・)的(・)を頑なに果たさせようとしていた様子は、『AL-1S』としての目的を果たさせるべく指摘、或いは矯正させる為に『Key』は外(・)付(・)け(・)で(・)付(・)与(・)さ(・)れ(・)た(・)存(・)在(・)かもしれないと、私は考えている。

 その真偽を明かすべく、"ゲーム開発部"と協力者達による『天童アリス』救出に合わせ、『Key』の分(・)離(・)、デ(・)ー(・)タ(・)サ(・)ル(・)ベ(・)ー(・)ジ(・)を図ってリ(・)オ(・)の(・)側(・)に(・)付(・)い(・)た(・)。

 

―――勿論、寂しがり屋な癖に責任感と職務を全うせんとする意思は人一倍強い、不(・)器(・)用(・)な(・)幼(・)馴(・)染(・)に(・)し(・)て(・)親(・)友(・)の傍に付いて負担を和らげる意図もあった。そして―――

 

―――『"...アリスも、リオも救って、世(・)界(・)を(・)滅(・)ぼ(・)す(・)可(・)能(・)性(・)す(・)ら(・)阻(・)止(・)す(・)る(・)。...私が言えたことじゃないけど...それは強欲、傲慢じゃないかい?"』

―――『手(・)が(・)伸(・)ば(・)せ(・)る(・)なら、届(・)く(・)か(・)試(・)み(・)て(・)も(・)いいでしょう?――せめて、私(・)の(・)手(・)が(・)届(・)く(・)範(・)囲(・)位は笑(・)え(・)る(・)結(・)果(・)を導きたいの』

 

―――『ゲストハウス』地区の公園で、"先生"に今回の私の作戦を明かした時の反応を思い返す。

 

―――"ゲーム開発部"がアリスをか(・)け(・)が(・)え(・)の(・)無(・)い(・)大(・)切(・)な(・)仲(・)間(・)として、AL-1S(世界を滅ぼし得る存在)としての本性の発露も構わず助けようとする意思もよく解るからこそ、と(・)こ(・)と(・)ん(・)生(・)徒(・)の(・)為(・)に(・)行(・)動(・)す(・)る(・)"先生"が苦悩する事は予測、理解出来た。そんな彼の迷(・)い(・)を(・)断(・)ち(・)、ゲ(・)ー(・)ム(・)開(・)発(・)部(・)が(・)ア(・)リ(・)ス(・)を(・)救(・)え(・)る(・)様(・)な(・)導(・)き(・)、支(・)え(・)とする為にも私は敢(・)え(・)て(・)リオの傍に付いた。おかげで―――

 

 

「――"ゲーム開発部"は天童アリス(大切な仲間)を取り戻し、神秘のアーカイブ化(世界が滅ぶ危機)も阻止。アリスに匹敵するKey(人格データ)も獲得できてプロジェクトも大いに前進。そして――リオ(親友)も己(・)の(・)行(・)動(・)と(・)向(・)き(・)合(・)い(・)、他(・)者(・)に(・)歩(・)み(・)寄(・)る(・)意思を持つようになった。――奇(・)跡(・)じみた、八方好しのハッピーエンドよ」

 

 椅子の背もたれに背を預けて軽く背を反らせて天井を見上げ、手を広げてハッピーエンドの導出を改めて祝う。

 

―――皆(・)が(・)笑(・)え(・)れ(・)ば(・)、き(・)っ(・)と(・)未(・)来(・)は(・)明(・)る(・)い(・)。教授(教職)になってからの私(・)の(・)矜(・)恃(・)だ。傲慢が過ぎる自覚はあるけど―――せめて己(・)の(・)手(・)が(・)届(・)く(・)範(・)囲(・)には笑顔を振り撒きたい。今回は色々な要因が重なって八方好しとなった。こんな奇(・)跡(・)は早々お目にかかれないだろう。

 

「――相変わらず"教授"の頭はよく分からん。結果が良くて嬉しそうなのは解るが...研究者が奇(・)跡(・)な(・)ん(・)て(・)非(・)論(・)理(・)的(・)な(・)要(・)素(・)故の結果を喜んでいいのか?」

「リオは論(・)理(・)的(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)ってぼやくでしょうけど――」

 

 

 

 

「――奇(・)跡(・)みたいな結果が出ることもまた、未(・)知(・)と(・)い(・)う(・)神(・)秘(・)故ってことよ。全(・)て(・)が(・)理(・)論(・)理(・)屈(・)で(・)証(・)明(・)で(・)き(・)る(・)世(・)界(・)なんて、研究者(私達)の存在意義を喪わせるし、そんな世界はきっとつまらないわ」

 

 背を戻し、椅子の軸をクルリと回して反転。視界に収まった窓から見える、巨大で複雑なヘイローが浮かぶ空を見上げる。今頃リオは―――

 

 


~"連邦生徒会"オフィスビル ヘリポート~

side-リオ

 

―――ガタン...

 

「――着陸完了しました」

「――ご苦労様」

「――送迎、ありがとうございます。では、私が先に」

 

―――ヘリが着陸し、"セミナー保安部"のパイロットの報告を受けて労い、トキがベルトを外して席を立ってドアに取り付く様子を横目に、タブレットのガラスフィルムの反射を利用して自身の装い――普段のタートルネックインナーではなく白いシャツに水色のネクタイを締め、黒のジャケットの上に"セミナー会長"制式の白いコート――"セミナー会長"就任時、直後の挨拶回り以来となる、本(・)来(・)の(・)"セミナー会長"制服の乱れの有無を確認する。

 

―――ガラッ...

 

「――会長、どうぞ」

「えぇ。ありがとう、トキ」

 

 ドアが開かれ、トキにお礼を言いながら機外へ降り立ち、数メートル前方に立つ二人の"連邦生徒会"役員―――

 

「――"連邦生徒会"、首席行政官"『七神リン』です。あ(・)の(・)報(・)道(・)以来ご多忙にもかかわらず、連邦生徒会(我々)からの要請に応えていただき、誠にありがとうございます」

「――同"防衛室長"『不知火カヤ』です。...こうして直にお会いするのは"セミナー会長"就任時の挨拶以来でしたかね」

「――『ミレニアムサイエンススクール』"セミナー会長"『調月リオ』です。今回我が『ミレニアム』で起きた事件はミレニアム(我が校)単独で収まる問題ではない。キヴォトス全体の行政を預かる"連邦生徒会"が、直に状況把握を図ることは承知しているわ」

 

―――七神"首席行政官"と不知火"防衛室長"と挨拶を交わし、握手を交わす。

 

―――『エリドゥ』で起きた世(・)界(・)終(・)焉(・)の(・)危(・)機(・)とその対処、『廃墟』に潜む"無名の司祭"の脅威。開示による多方面への影響を考慮してずっと秘匿していた情報を五日前―――『エリドゥ』から『ミレニアム』へ帰還した翌日に私自身で会見を主催し、ある程度確実性がある情報を『ミレニアム』内外に向けて公表した。『クロノス』新聞記者であり、『シャーレ』"広報員"でもあるアヤの存在もあり、内容は瞬く間にキヴォトス全体に拡散した。

 当然ではあるけど、"連邦生徒会"にも例外なく会見の内容は届いていた様で、昨日"連邦生徒会"から"会見内容について詳細に知りたい"と出頭要請が届き、応えて今に至っている。

 

「――では、こちらへ」

「分かったわ。...トキ、貴女はここで待機しておいてちょうだい」

「――承知いたしました」

「――まさか、我が"防衛室"にて封鎖、監視を行っていた『廃墟』に世界を滅ぼし得る脅威が存在していたとは。そして、その存在を予測して『エリドゥ』を――あの規模の要塞都市を建造されて備えていた。常(・)人(・)であれば現実逃避で逃げていたでしょうね。調月会長、貴女はセミナー会長(生徒会長)として稀有な責任感の強さの持ち主ですね。私共も見習うべき在り方です」

「...お褒めの言葉、感謝するわ」

 

 七神"首席行政官"が先導して歩き出し、トキをヘリに留守番として置き、不知火"防衛室長"と共に私も足を進め、彼女の感心した様な言葉に胸がズキリと痛みつつ、顔には出さずに謝意を述べる。

 

―――『エリドゥ』での一件が終わった直後は、逃(・)げ(・)出(・)し(・)た(・)い(・)一(・)心(・)だった。"無名の司祭"の産物は実在し、全知(現世代屈指の天才)二人でも対応出来ない異質な技術と性能を目の当たりした事。"無名の司祭"の脅威顕現にユメミとヒマリ(親友二人)、エンジニアやヴェリタス(校内の部活動)、『シャーレ』...多くの人間を巻き込んでしまった事。そして―――結果的に避ける事は出来たけど、天童アリス(生徒)を排(・)除(・)―――言葉を飾らなければ殺(・)そ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)事。負ってしまった罪のあまりの大きさを自覚してしまい、『ミレニアム』の、キヴォトス(世界)の為だと自分に言い聞かせていた覚悟は雲散霧消してしまった。結果として最悪は回避出来たけど、その過程で負った罪はとても償えるものではない。

 

―――だから、『エリドゥ』から『ミレニアム』に帰還したそ(・)の(・)日(・)の(・)夜(・)に、私が研究や調査で集めた情報をユメミとヒマリ(親友二人)に向けて纏め、謝罪の書き置きを残して『ミレニアム』外のセーフハウスに逃げようと準備し、決行した―――

 

 

―――『...ふむ、概ね予測時間通りですか』

―――『こんばんは、リオ。こんな時間にお出掛けかしら?』

 

―――けど、『ミレニアムタワー』内に秘密裏に構築した脱出ルートを抜け、『ミレニアム』自治区境界地区の一つに出た所でユメミとヒマリ(親友二人)に止められてしまった。

 

―――『...私は到底償えない罪を犯してしまった。...死んでも償えない大罪人である私に何を求めるの?』

―――『下水道に流れる水とて浄水場まで流れ、浄化されます。...ですが、配管が耐え切れずに破損してしまえば漏れてあらぬ方向へと流れてしまうこともあるでしょう。その配管を直すのは下水道の水自身では不可能。故に――外(・)部(・)か(・)ら(・)異(・)常(・)に(・)気(・)付(・)い(・)て(・)直(・)す(・)者(・)が居るのですよ』

―――『...ま、貴女でも受け止め切れずに逃げ出したくなる罪の大きさ、多さよね。その気持ちは理解できる。でもね――広(・)げ(・)て(・)散(・)ら(・)か(・)し(・)た(・)も(・)の(・)を(・)片(・)付(・)け(・)る(・)のは小さな子供でもできることよ。ましてや片(・)付(・)け(・)る(・)っ(・)て(・)約(・)束(・)も(・)し(・)た(・)んだから』

 

―――二人の言葉は逃げ出そうとする私の想いを掴んだ。それでも、背に負っている罪への罪悪感は私の背中を押し続けて抵抗する。でも―――

 

―――『償いの可否は関係ないわ。大事なのは罪(・)を(・)自(・)覚(・)し(・)、そ(・)れ(・)を(・)償(・)お(・)う(・)と(・)す(・)る(・)姿(・)勢(・)と(・)誠(・)意(・)。逃げ出すことは簡単だけど、逃げ出した先にあるのは――後悔だけよ。償いは貴女自身で行うべきだけど...ここに、そ(・)の(・)重(・)さ(・)を(・)支(・)え(・)ら(・)れ(・)る(・)存(・)在(・)が(・)二(・)人(・)居(・)る(・)でしょう?』

―――『...私達が知らない所で一人で無理をして、耐え切れずに倒れて一人で泣いて...昔から貴女は変わりませんね。――読心術という技術は存在しますが、それとて絶対ではない。人間には高度な知性、感情を表現する頭脳と、それを言葉として出力する口があります。――これ程高性能な機能を使わず腐らせるのは非合理的ではありませんか?』

 

―――私(・)が(・)背(・)負(・)う(・)罪(・)の(・)償(・)い(・)を(・)傍(・)で(・)支(・)え(・)る(・)。以前までであれば、背負うのは一人だけが合理的だと拒絶していただろう。でも、圧し掛かる罪の大きさに心身共に疲弊していた今の私には、二人の言葉は救いの様に感じられた。

 

―――私は一人ではない。"先生"や他の娘達にも指摘されていたけど、合理、理論を追及するあまり私は人(・)間(・)一(・)人(・)の(・)限(・)界(・)をすっかり忘れてしまっていた。

 

―――五日前の会見はその反省の一環でもある。『ミレニアム』内では"自分の研究の邪魔にならないなら構わない"という反応が大半で、私が横領し、資産運用で増やした『エリドゥ』維持、"無名の司祭"対策用の隠(・)し(・)資(・)産(・)の未使用分を、全(・)部(・)活(・)動(・)向(・)け(・)に(・)追(・)加(・)予(・)算(・)と(・)し(・)て(・)還(・)元(・)す(・)る(・)と表明した時の方が明らかに反応が大きかった程だ。

 そして、『トリニティ』や『ゲヘナ』、『百鬼夜行』等の他校からは"今後の事態推移を注視する"といった形式的なコメント程度の表明しか無かったものの―――"連邦生徒会"だけはこうして私に直接の出頭を求める程に会見に強(・)く(・)食(・)い(・)付(・)い(・)た(・)。連邦構成校の自治独立性が強く、権威は最低限あるものの実務、政治面では構成校からはあまり頼りにされておらず、前(・)"連邦生徒会長"による『SRT』開校、そして『シャーレ』設立まで強力な介入組織が無かったあの"連邦生徒会"が、だ。

 

「――到着しました。まずは"調(・)月(・)会(・)長(・)お(・)一(・)人(・)で(・)"、と指示を受けております」

 

―――七神"首席行政官"の言葉が耳に入り、思考を止めて現実に戻る。ビルに入り、エレベーターでかなり上階まで登っていた自覚はある。そして、彼女の隣にある扉のネームプレートには―――

 

 

 

 

 

 

――『連邦生徒会長執務室』――

 

「...調月会長も困惑されていますね。何せ、我々も未だ困惑していますから。――あの会見を見て真(・)っ(・)先(・)に(・)反(・)応(・)し(・)た(・)のが"連邦生徒会長"でした。私と"首席行政官"もあの会見に関連して事情把握と協議を予定しておりますが――"ま(・)ず(・)は(・)調(・)月(・)会(・)長(・)と(・)一(・)対(・)一(・)で(・)話(・)し(・)た(・)い(・)"、と。...あのような眼差しを浮かべたのは初めて見ました」

 

―――まさかの人物が私と話したいと知って驚くと共に、私自身の出頭を求めた理由を察した。不知火"防衛室長"も眉を少し八の字に曲げ、出頭要請の裏事情を明かす。

 

「――分かったわ。相手が誰であれ、『エリドゥ』で起きた事態、その背景を知りたいというなら、知り得ることを話しましょう。その為に出頭したのだから」

「――ありがとうございます、調月会長。...七神です。......はい、調月"セミナー会長"が到着されました。......分かりました。――確認と入室許可が取れました。"連邦生徒会長"がお待ちです」

「――ありがとう」

 

 七神"首席行政官"がドアの傍のインターホンに触れ、小声で誰かとやり取りを交わし、私に向き直って入室許可を伝え、数歩離れてドアへの道を空ける。彼女に礼を告げ、ドアに向かって歩き出す―――

 

 

~"連邦生徒会長"執務室~

 

―――ウィィン...

 

―――私の背後でドアが閉まる音を聞きながら、真っ直ぐ歩き出す。一個人の執務室としては縦にも横にも広すぎる空間。キヴォトスの空を一望できる壁一面の窓。私が歩く先、執務机の向こう―――

 

 

 

 

「――この度は要請に応えていただき感謝しますわ、調月会長。本格的な協議の前に、こうして貴女と一対一での会談をセッティングしたのは、あの会見で気になる内容が多くあったからですの――」

 

―――"連邦生徒会"制式の白い制帽の下、少しパーマが掛かった長い金髪とロングコートが揺れ、窓から景色を見ていたらしい、現"連邦生徒会長"『八雲紫(ユカリ)』が振り向いて紫色の瞳を私に向ける。その眼差しはまるで―――

 

 

 

 

 

 

「――報道にて公表された"無名の司祭"なる存在、その産物について、詳しく教えていただけます?」

 

―――そ(・)の(・)存(・)在(・)を(・)許(・)さ(・)な(・)い(・)と言わんばかりの鋭いものだった。

 

 


~"ゲーム開発部"部室~

side-???

 

「......」

 

―――私以外に誰も居ない部室で『TSC』のSEとBGM、コントローラーのボタンの押下音だけが響く。普段は隅のロッカーに籠っている彼女の気配も、今は感じられない。

 

―――『廃墟』で目覚めたあの時。私には記(・)憶(・)も(・)目(・)的(・)も(・)無(・)か(・)っ(・)た(・)。モモイは困惑しながらも私を"ゲーム開発部"に迎え入れると宣言し、私は提案されるがままに『アリス』という名前を受け入れ、『ミレニアム』までついて行き、あっという間に一年生『天童アリス』として編入された事になった。

 

「...何故、周りは『TSC』をクソゲー呼ばわりするのでしょうか。このカオスな展開は、何(・)が(・)起(・)き(・)る(・)か(・)分(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)現実を彷彿とさせるのに...」

 

―――記憶も目的も思い出せず、何をすべきかも思い付けない私に、モモイ達がプレイさせてくれた『TSC』は、私の思考回路に凄まじい刺激を―――エ(・)ラ(・)ー(・)を(・)吐(・)き(・)続(・)け(・)る(・)程(・)の(・)刺激と経験を与えてくれた。

 幾ら予測しても予想外に推移する展開。理論的に考えて明らかに異質な要素。

 

そして―――己(・)の(・)正(・)義(・)を(・)貫(・)く(・)勇(・)者(・)の(・)在(・)り(・)方(・)。

 

 勇(・)者(・)―――『TSC』のプレイを切っ掛けにしてその存在に興味を抱き、勇(・)者(・)、それに類する存在が登場するゲームを次々プレイし、勇(・)者(・)への理解を深めた。―――勇(・)者(・)を(・)目(・)指(・)し(・)た(・)い(・)と強く願う様になるのに時間は掛からなかった。

 

―――そんな私の願いを、モモイ達は満場一致で肯定してくれた。"エンジニア部"や"教授"、チビメイド先輩。他の部活動の面々も私の夢を肯定し、応援してくれた。

 

「――ついにラスボス戦です。...主人公の勇者に突き付けられた、前(・)世(・)は(・)魔(・)王(・)で(・)あ(・)り(・)、今(・)の(・)魔(・)王(・)を(・)倒(・)せ(・)ば(・)自(・)身(・)が(・)魔(・)王(・)を(・)継(・)ぐ(・)運(・)命(・)。でも――勇者はそ(・)れ(・)を(・)否(・)定(・)し(・)、勇(・)者(・)と(・)し(・)て(・)の(・)使(・)命(・)を(・)突(・)き(・)通(・)す(・)と宣言しました」

 

―――勇(・)者(・)を目指す最中、望まずして秘(・)め(・)て(・)い(・)た(・)本(・)来(・)の(・)機(・)能(・)を発現させてしまい、モモイ達を傷付けてしまった時。リオ会長が私を世(・)界(・)を(・)滅(・)ぼ(・)す(・)魔(・)王(・)と呼び、私は秘(・)め(・)て(・)い(・)る(・)力(・)の(・)危(・)う(・)さ(・)を自覚してしまい、勇(・)者(・)に(・)は(・)な(・)れ(・)な(・)い(・)のだと諦めかけた。

 

―――でも、モモイ達は『エリドゥ』に突入してまで私(・)は(・)勇(・)者(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)も(・)い(・)い(・)と言ってくれた。力(・)の(・)使(・)い(・)方(・)は(・)自(・)分(・)自(・)身(・)で(・)決(・)め(・)る(・)べ(・)き(・)―――"先生"の言葉も私(・)の(・)願(・)い(・)を改めて決める切っ掛けになった。

 

「――これで真エンド到達です。...うーん、殆どタイムは変わりませんね。流石にやり込み過ぎて時短要素は掘り尽くしてしまいましたか...次は――」

 

―――『TSC』真エンドのエンドロールが流れ始め、コントローラーを起きながら呟く―――

 

 

 

 

 

 

―――ガチャ...

 

「おはよーアリス!」

「おはよう、アリスちゃん」

「お、おはよう...」

「おはようさん、アリス」

 

―――部室のドアが開き、掛(・)け(・)替(・)え(・)の(・)無(・)い(・)大(・)切(・)な(・)四(・)人(・)の(・)パ(・)ー(・)テ(・)ィ(・)ー(・)メ(・)ン(・)バ(・)ー(・)の挨拶が聞こえる。私は立ち上がって振り向く―――

 

 

 

 

「――はい!おはようございます!アリスは今日も絶好調です!今日のクエストも頑張ってクリアしましょう――モモイ、ミドリ、ユズ、マリサ!」

 

―――私は。アリスは『天童アリス』。『ミレニアムサイエンススクール』一年生であり、"ゲーム開発部"の部員(パーティーメンバー)。

 

 

 

 

 

 

―――そして、勇者を目指す者です!!

 

 

 

―――The hero goes forth again today...―――

 

 

*1:
有機的な思考と行動を持つ、革新的かつ実用性重視の動作システム




ということで今後への伏線撒きつつパヴァーヌ編終了!以下リンクの活動報告でパヴァーヌ編投了に伴う個人語りを挙げています。
リンク:https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=330356&uid=187500

さて、次回より二回目のメモロビやグルスト編に入ります。

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