Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『アビドス高等学校』校舎付近の商店街~
side-ミヤコ
「――お、見えてきたね~。あれこそが『アビドス』随一のラーメン屋――『
モコウ先輩が"カタカタヘルメット団"の幹部との
「『柴関ラーメン』の特徴は何と言っても"安くて美味い"、ですね~☆看板メニューの"柴関ラーメン"はなんと一杯五八〇円なんですよ☆」
「"や、安い...このお店の大きさだと千円近い値段のラーメンを出しそうだけど..."」
ノノミ先輩の説明に"先生"は驚いた表情を浮かべて『柴関ラーメン』の看板を見上げる。ラーメンの相場は分からないけど、外食としては安い値段である事は解る。でも、大抵は値段が低い分質が落ちている印象もある。"安くて美味い"―――よく聞くその謳い文句は果たして事実なのか。
「ラーメンか...『SRT』に入学してからは訓練や任務ばかりで、そもそもこういう外食が久しぶりだなぁ」
「確かにそうですね...専ら学園内の食堂か購買、任務中は
「それは随分大変だね~。折角だし、お互いの学校生活のことでも話そっか~。さ、入るよ~」
~柴関ラーメン 店内~
side-ミヤコ
「へいらっしゃい!」
「いらっしゃいませー!」
店内に入ると、大きく快活な男性の声と―――
「"あれ?この声って..."」
「ま~ま~、取り敢えず座ろっか~」
"先生"も気付くけどホシノ先輩に背中を押されていき、私達は空いている席に座る。店内は明るく清潔に保たれていて、壁にはメニューを記した木札が並んでいる。
「ん、これメニュー表」
「ありがとうございます。...醤油、味噌、塩...それに炒飯や餃子といった付け合わせも色々ありますね」
私の向かい側に座ったシロコ先輩からメニュー表を受け取り見てみると、ラーメンや炒飯、餃子等色々なメニューが並んでいる。
「"ふむ...初めてだし、看板メニューを試してみるかな。『柴関ラーメン』の...久しぶりだし
「うへ、流石大人で男の人だね~」
"先生"はすぐに注文を決め、ホシノ先輩は関心した様に笑う。―――その眼差しは
「...私は塩ラーメンにします」
「私はチャーシュー麺にするぞ」
「私は味噌にしよっかなー。あ、食後にアイス二つも付けよっと」
「...し、醤油ラーメンで」
「ん、今日は醤油の気分」
「私は味噌にしましょう☆」
「塩ラーメンでお願いします」
「...大分動いたし、『柴関ラーメン』にするか」
「私も『柴関ラーメン』にしよ~っと」
"先生"の決定を皮切りにして各人頼みたいものを挙げていく。
「おじさんは醤油にするかな~。――よし、皆決まりだね~。すみませ~ん、注文お願いしま~す!」
<『はーい!』
ホシノ先輩が厨房に向けて声を挙げると、やはり
「――はい!ご注文...を...」
―――頭にバンダナを巻き、襟元に空色のリボンを止めた黒いシャツの左胸に『柴関ラーメン』の"アルバイト店員"である事を示すカードを留め、スカートの上に店名を誂えた紺色のエプロンを巻いたセリカさんが注文票を留めたバインダーを片手に、私達の前に立つなり瞳を点にして固まる。
「"聞き覚えがあるなぁと思ったら...やっぱり君だったんだね"」
「やっほ~セリカちゃん、相変わらず精が出るね~」
「な...なな...」
―――店内にセリカさんの叫び声が響き渡った。
「ハッハッハ!見ない顔が居ると思ったが、まさか『アビドス』の外から来たなんてなァ。
「"やっぱり
『柴関ラーメン』のロゴマークを誂えた青い作業着の腰にエプロンを巻き、バンダナから耳を覗かせる"犬獣人"の
「ん?
「"そうだね。――私は前の連邦生徒会長の指名で
今回、ホシノ達対策委員会の要請を受けてね。要請に応えるついでに『アビドス』の問題を解決する手助けをするつもりだよ"」
「私達は『SRT特殊学園』所属ですが...現在『シャーレ』指揮下にあり、"先生"のサポートをしています」
「――そうか...俺はこうしてラーメンを出す位しかできねェが、嬢ちゃん達の頑張りに気付いて手ェ差し伸べる存在が新たに現れるとはな...『アビドス』の住人としても頼む、嬢ちゃん達を手伝ってやってくれ」
「"勿論だよ。どこまでできるか分からないけど...できることは全てやるつもりだよ"」
大人同士である故か、"先生"と柴大将はすぐに打ち解けた様だ。彼もまた『アビドス』を、復興を目指す生徒達を想う
「――っと行けねェ行けねェ!セリカ、嬢ちゃん達の注文取ってくんな!初見さんも居るし、今日は
柴大将はセリカさんにそう言って厨房に戻っていく。
「あ、はい!――ほら、さっさと頼んで!人数が人数だから私も手伝わないと!」
「セリカちゃん、
「ノノミちゃんの言う通りだよ~。初見さんも居るし、最初の印象は大事だよ?」
「"こらこら煽らない。――
――
―――いたずらっぽくセリカさんを煽るノノミ先輩、ホシノ先輩に対して"先生"は真面目な表情を浮かべてそう窘める。
「――うへ~、"先生"らしい言葉だね。でも納得できるし...ごめんね、セリカちゃん?」
「――確かに、ちょっと意地悪だったかもしれませんね~。ごめんなさい、セリカちゃん」
「...だ、大丈夫よ。お客さんは大体馴染みのある人ばかりだし...まさか"先生"達が来るなんて思わなかっただけ。――さ、改めて!ご注文を伺います!」
ホシノ先輩、ノノミ先輩が謝るとセリカさんは大丈夫だと手を振り、注文を取っていく―――
「"ホシノ、もしかして――セリカが
「うへ、その通りだよ~。セリカちゃんは恥ずかしがって
<「大将、麺あがりました!」
<「はいよ!」
厨房に目を向けると、"大将"と共に厨房内を忙しなく動き回り、ラーメンを作っていくセリカさんの姿が見える。"大将"に比べれば所々拙い所はあるものの、"大将"のペースについて行っているだけでもかなり手慣れていると解る。
「セリカちゃんは
「...稀に
「...セリカさんは委員会の会計担当ですよね?そんな人が詐欺に引っ掛かるなんて...」
モコウ先輩の言葉に思わず表眉を顰める。
「バイトの求人とか探してるのは専らセリカちゃんだからね~。『アビドス』の現状のせいでそもそもの求人がかなり少ないし、いつもスマホとかチラシと睨めっこしているんだ~。詐欺だと気付けないのはそうやって必死だからってところもあるから、一概にセリカちゃんが悪いとは言えないね~」
「だから、セリカちゃんが新しくバイトを見付けてきたら私達でチェックするんだけど...
ユメ先輩はそう言って困った様に眉を下げて笑う。セリカさんも彼女なりに出来る事をやっている様だけど、詐欺に引っ掛かってしまうとは...
「――はいよ!『柴関ラーメン』大盛り一丁、普通二丁!」
「"お、来た――"」
―――白いラインが一本走る赤い丼に盛られた、縁を囲う味玉と海苔、麺も見えない程山の様に盛られたチャーシュー、コーン、メンマ、モヤシ。
―――モコウ先輩、ユメ先輩が頼んだものと比べると"先生"が頼んだ
「...わーお」
「な、なんだこのデカさ...?!」
「み、見てるだけでお腹いっぱいになりそう...」
「ハッハッハ!大盛りを頼む客は久しぶりでなァ。
「...う、うへ~...まさか
厨房に戻っていく"大将"が残した豪快な笑い声と言葉も聞き流してしまう程に、"先生"が頼んだ『柴関ラーメン』は巨大だった。―――注文を決めた時にホシノ先輩は一瞬いたずらっぽい眼差しを浮かべていたけど、今は冷や汗を流し、貼り付けた様な笑みを浮かべながら"先生"の『柴関ラーメン』を見ている。
「..."先生"、大丈夫ですか?」
「"...ミヤコ、大人には...男には退けない戦いがある。――今がそうさ。いただきます!"」
意を決した表情を浮かべた先生は割り箸を手に取って割り、挨拶して食べ始める。
「...『柴関ラーメン』は美味しいんだけど、こんな風に"大将"の気分次第で
ホシノ先輩は『柴関ラーメン』を食べ進めていく"先生"を見ながら申し訳無さそうな表情を浮かべて私達にそう説明する。
「...わ、私達のは大丈夫だよな?」
「どうだろうな...さっきホシノも言ってたが、初見さん相手だとほぼ確実に"大将"は張り切る。"先生"程にはならないだろうが――」
「――失礼するぞ。...委員会の皆――と、初めて見る顔があるな」
「――"大将"、失礼するぞ~...おや、確かに
―――お店の引き戸が開いて声が聞こえて振り向くと、黒いスーツの上に同色のコートを羽織った大柄な"
「いらっしゃいませ――って、『マミゾウ』さん、『トオル』さんじゃない!」
「へいらっしゃい!――おぉ、"理事"さん達か!ちょいと久しぶりじゃないかい?」
「少し仕事が立て込んでおったんじゃが、ひと段落着いたのでな。久方振りに"大将"のラーメンが食べくなってこうして足を運んだ次第じゃ。――ホシノ、隣失礼するぞい」
「うへ、どうぞ~。久しぶりだねぇマミゾウさん」
「――隣、構わないか?」
「"あ、どうぞ...ってヤバい、箸を止めたら見ただけで..."」
"大将"が嬉しそうに二人を出迎え、女性と男性はセリカさんからそれぞれ『マミゾウ』さん、『トオル』さんと呼ばれながら空いている席に座る。
「...ふむ...何処かで見たと思ったら、『文々。新聞』の記事にあった
「"うん、その通りだよ。――そう言う貴女達は?ホシノ達と知り合いみたいだけど...あ、もしかして――"」
「ふむ、ホシノ達からある程度は聞いておったか。――儂は『
「――『
二人はそれぞれ自己紹介しながら名刺を取り出して"先生"に渡す。―――この二人が、
「...して、兎耳を付けたお主らは『SRT』の"
そして、マミゾウさんは私の視線に気付いて顔を向けてそう尋ねて来る。
「...はい、その通りです。現在は『シャーレ』――"先生"の指揮下で行動していますが。貴女方の会社のことはよく知っていますよ。――何度か、
「そうであろうのぉ。お主ら『SRT』が
「...分かりました」
マミゾウさんは勘弁してくれと言う様に手をひらひらと振り、警戒するなと言う。―――私達が入学する以前の記録では特に『カイザーローン』の
「"マミゾウさんにトオルさんか。よろしくね"」
「さん付けは止しとくれ。マミゾウで構わぬぞ」
「俺に対してもさん付けはいらん。『シャーレ』は今の所顧客でもないしな。――"大将"、『柴関ラーメン』二つだ」
「はいよ!」
トオルさんの注文に"大将"は快活に応えて作業に戻る。
「っと...お待たせしました!醬油、味噌、塩それぞれ二丁、チャーシュー一丁!」
入れ替わる様にセリカさんが丼を二つ乗せたお盆を三往復して運んで来て、私達の前に並べていく。
「――して、"先生"よ。お主は何故
「"確かに、初日から要請メールが次々届いてきたね。でも、殆どが態々
"先生"がマミゾウさんにそう説明すると、トオルさんが心配そうな表情(は変わらないけど眼に心配の色を宿している様に見える)を浮かべる。
「...ホシノ、物資が足りなかったのなら、
「――最近暴れた
トオルさんの言葉にホシノ先輩はそう返す。
「ふむ...確かに幹線道路の解放をせねば儂らも厳しい状況ではあるが、物資をお主らに分ける余裕はあったぞ。『シャーレ』という儂ら以外に頼れる伝手を見付けたのは良いが、卒業生――先輩として後輩を助けるのは当然のこと。遠慮せず頼っても良いのじゃぞ?」
「...相変わらず後輩想いな大先輩達だね~。分かった、『シャーレ』でも手が足りない時は頼ってみるよ」
マミゾウさんの言葉にホシノ先輩は素直に頷く。"先生"以外でホシノ先輩達が
「"...ホシノ達によく目を掛けてるんだね"」
「当然であろう。――儂らは
"先生"の言葉にマミゾウさんはそう返し、トオルさんと揃って真面目な、決意を宿した表情を浮かべる。部室での状況説明で見た、砂嵐に呑まれる高層ビル群の写真の様な光景をこの二人は直接見たらしい。―――なるほど、"対策委員会"の『アビドス』復興を目指す努力を支援する訳だ。
「――俺達は『カイザーコーポレーション』に就職し、いつか偉くなって『アビドス』で復興事業を展開することを夢見て努力してきた。...とは言え、周囲から見れば『アビドス』は最早滅亡寸前。
「命令を快く請け、将来的には復興事業を展開することを目指し、儂らは拠点を進出させた。――数十年振りに見た『アビドス』は想像以上に滅亡に瀕しておったがな。気が遠くなりそうな程嵩んでいた借金を見直させ、報酬付きの仕事を回したりしてホシノ達"対策委員会"の信用を得て、今もこうして支援を続けておるのじゃ」
マミゾウさんはそう言葉を締める。―――この二人も、"先生"と同じ様に本気で『アビドス』復興を願っている。だからこそ、
「――じゃが、ホシノが言っておったように
「――滅亡寸前の苦境にある『アビドス』で、ホシノ達は滅亡を避ける為にできることをしている。その範囲を広げる為にも――どうか頼む」
マミゾウさんとトオルさんは揃って"先生"に頭を下げる。
「"勿論そのつもりだよ。困っている生徒を助けるのが私の――教師の役目だから"」
「――感謝する」
「期待しておるぞ、"先生"よ」
「――お待たせしました!」
「――へいお待ちどォ!!『柴関ラーメン』二丁だ!」
―――"先生"が二人の頼みを引き受けたタイミングで"大将"とセリカさんが『柴関ラーメン』を運んで来る。"先生"が頼んだ大盛り程ではないけど、それでも普通とは思えないボリュームだ。
「――相変わらずじゃな"大将"。儂らは"先生"以上に齢を食っておるんじゃが...」
「すまねぇな!久しぶりってんで
「最悪持ち帰りだな。..."先生"、今度からは普通に頼むといい。"大将"の
「"そうだね。今、身をもって実感してるよ。...夕飯入るかな..."」
"先生"は後悔した表情を浮かべながら『柴関ラーメン』を再び食べ進める。
―――それから私達はマミゾウさんとトオルさんから『アビドス』が砂漠に覆われる前の話を聞いたり、ホシノ先輩達とお互いの学校生活の事を語らった。途中で"大将"の計らいで休憩時間として私達の輪に加わったセリカさんも、初対面の時より私達や"先生"と少し打ち解けた様に感じた。
という事で、"理事"と―――『カイザーローン』代表取締役兼もう一人の"理事"としてマミゾウさんが生えました。現在作者が考えている大人のキャスティング基準から少し外れていますが...妖怪としてはかなり格が高い人物でもあるので大人としてキャスティングしてみました。原作でも幻想入り前は人間相手に金貸しもしてたし。深秘録でスーツ姿も披露してたしね!
また、カイザーPMC理事本人も綺麗になり、『
『カイザーコーポレーションの』組織形態は
『カイザーコーポレーション』"理事"会
┃ トップ:プレジデント
┣━『カイザーローン』
┃ トップ:二ツ岩マミゾウ
┣━『カイザーコンストラクション』
┃ トップ:二ツ岩マミゾウ
┣━『カイザーPMC』
┇ トップ:御門トオル
上記の様な解釈で構成しています。
さて次回、ヘルメット団前哨基地攻略...の予定。
~人物紹介~
名前:
所属:カイザーコーポレーション"理事"会
役職:カイザーローンおよびカイザーコンストラクション"代表取締役"
卒業校:アビドス高等学校