Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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筆が乗ったので連続投稿です。

アビドス夏イベ続きです。


File77.MS-Ab~アビドスリゾート探索委員会②~

~『Hidden Paradise』裏側の森~

side-モコウ

 

「――コイツは...焚き火の跡か?状態的に()()()()()()()()な...」

 

―――()()()()()()()()を見付け、軽く掘ってみると灰と一部が炭になった枝数本が姿を現す。

 

「写真撮っておこうか。...本当に、私達以外にも誰かが...」

 

 私とペアを組んでいるユメがスマホで掘り出した灰と枝を撮り、不安そうに瞳を揺らして呟く。

 

「マミゾウが言ってたが、僻地だがそれ故に()()()()()()()()。"ヘルメット団"みたいな不良、"鬼傑組"みたいな犯罪組織連中が()()を作るにはおあつらえ向きだ。立地は最悪だが、少しずつ船で物資を運んでいけばやれないこともないだろうしな」

 

―――船での往復には時間が掛かるし、ヘリも離着陸に向く土地は少ない。()()()便()()()()はリゾート地として客を呼び込むには最悪だが、()()()()()()()()()()を構えるとすれば、自給自足が必要な僻地である事に目を瞑れば最適だ。

 

「そうだね...もし、本当に私達以外の人間が居て――()()()()()()()()()()...」

「その時は()()()()()()()()()()()までだ。――幸い、防衛システムがあるらしいからソイツが動かせれば追い払うのは楽になる」

 

 ユメの不安そうな懸念にそう返す。―――施設でインフラ周りを調べていた"先生"、アヤネ、モエから報告された防衛システムの存在はこの場合僥倖だ。()()()()()()()が実際存在しているとした場合、その数は現状不明。私達の人数を超える可能性も否定出来ない。

 だが、防衛システムがあれば人手も負担も減らせる。弾薬はこちらもシステム側も有限だろうが、それまでに撃退出来ればいい。だが―――

 

 

「――ただ、マミゾウは()()()()()()()()っぽかったな。本当に()()()()()()()が居たとして、ソイツらが()()()なら...」

 

―――方針を共有されて解散となった直後のマミゾウが考え込んでいた姿を思い返す。―――あの表情は、単に()()()()()()()()()()()()()()()を思案してる様には見えなかった。仮に()()()()()()()が居たとして、もし()()()()()()()()なら―――

 

「話し合えるならその方がいいよ!この島を拠点にしようとするなら、きっとその娘達は()()()()かもしれない。撃ち合う前に話し合えたら、バカンスももっと...!」

「...相変わらずお気楽な頭だな。――こんな僻地じゃ中継地点にも向かないし、恒久的な拠点にもしにくい。それを呑めるような連中は大体()()()()()()()()。"窮鼠猫を噛む"なんて言うだろ?追い込まれたヤツってのは――」

 

 

 

 

『――調査班総員、大至急ビーチへ帰還せよ!現在儂らは()()()()()()()を受けておる!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

―――インカムに入る、銃声や爆発音を背景にしたマミゾウの声にユメと顔を見合わせる。()()を必要にするなんて一体どんな連中が―――

 

 

 

 

 

 

『――敵対勢力は"ヘルメット団"の一派及び、"災厄の狐"じゃ!繰り返す、調査班総員、大至急ビーチへ帰還して来援を求む!』

「――は?」

「...さ、"災厄の狐"って確か...!」

「急いで戻るぞ!」

「う、うん...!」

 

―――続くマミゾウの急報の内容を聞いてユメ共々困惑で頭が一瞬真っ白になるが、すぐさま我に返ってユメの手を引いて走り出す―――

 

 


~未完成のビーチ 海の家~

sideー"先生"

 

ダダダ...!

バララララ...!

 

「あなた様~!すぐに()()()()()()()から、待っていてくださいませ~!」

 

ダダァンッ!

 

『っぐ...!威力も速射性も滅茶苦茶だね~..."七囚人"の一角なだけはある...!』

 

―――閑散とした雰囲気が銃声鳴り響く戦場に様変わりしたビーチに乗り上げたホバークラフトの上。()()姿()()ワカモが私に向ける様に声を張り上げ、[真紅の災厄(ボルトアクションライフル)]とは思えない速射でホシノを狙い撃ち、ホシノは即座にシールドで防ぎながらオッドアイの眼差しを鋭くする様子を確認する。

 

『――こちら"RABBIT1"!ヘルメットペイントから"ジャブジャブヘルメット団"の一派と推測します!数は約三十!』

 

―――次いでミヤコから敵勢力についての報告が入り、ホバークラフトの前面で戦列を組む"ジャブジャブヘルメット団"の面々に目を向ける。その中には―――以前『D.U.外郭地区』の裏路地で出会い、かなり困った状況になっていたと知って手助けをしたことがある『河駒風ラブ』の姿もある。ただ、その表情は―――

 

「やはり"ヘルメット団"の一派であったか!リゾートの方で防衛システムの立ち上げを行っているアヤネ、モエの報告が来るまで戦線を維持せよ!...全く厄介なことになりおったな。"ヘルメット団"は兎も角、"七囚人"の一人が居るとは...!」

 

 マミゾウは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべてワカモと"ジャブジャブヘルメット団"を見回す。

―――彼女達の襲撃は突然だった。調査班とインフラ稼働班に分かれ、モコウ達調査班の調査範囲をそれぞれ振り分けて送り出し、私はインフラ稼働班の指揮を執るべく施設の方へ向かおうとしていた所で、『サドガシマ号』ではない()()()()()()()()が聞こえて来た。

 何事だろうと戻れば、ビーチにホバークラフトが乗り上げ、ワカモと"ジャブジャブヘルメット団"が攻撃を仕掛けて来た。インフラ稼働班を防衛戦力に転用して施設にはアヤネとモエを向かわせ、防衛システムの起動を最優先に行う様に指示を出している。『サドガシマ号』を泊めている埠頭と、私達が乗ってきたヘリを降ろしている岩場とは少し距離があり、このままなら狙われる事は無いだろう。

 

「――"先生"、その表情を見るにあの連中は知り合いか?」

「"――そうだね。あの"ヘルメット団"は『河駒風ラブ』率いる"ジャブジャブヘルメット団"のグループだ。..."災厄の狐"――ワカモは...()()()()()()()()()()()()()()、世話焼きな娘だよ"」

 

―――仮設の本部である海の家の中で私の指揮を補佐するマミゾウとトオルの問いに答えると、二人揃って目を点にする。その反応も当然だろう。ワカモが"災厄の狐"―――七囚人(犯罪者)として指名手配されている存在だから、『シャーレ』の面々の()()にも彼女との関係性は明かしていなかった。

 

「――何だと?"災厄の狐"はあの混乱に乗じて『矯正局』を脱獄したキヴォトス全体で暴れる不良、表現を変えれば犯罪者だぞ。そんな存在を『シャーレ』で受け入れているのか?」

「"――初対面は"シッテムの箱"を回収する為にオフィスビルに突入した時だった。それから『シャーレ』が立ち上がって以来、私が残業とかで一人『シャーレ』に泊まり込んでいる時を狙って来てくれるんだ。夜食を作ってくれたり、仕事を手伝ってくれたり...少なくとも、()()()()()()()大人しくて献身的な娘だよ。

――トオルの言う通り、ワカモが"災厄の狐"なんて呼ばれる位に危険な特性を持っているのは知っている。でも、ワカモもそれを自覚して何とかしようとしているし、()()()()()()()()()()抑えようと努力している。――不良でも、犯罪者でも。()()困っているならそれは私が手助けするべき生徒だからね"」

「...何とも"先生"らしい、底なしの献身じゃな。――まぁよい。"災厄の狐"との関係の詮索は後じゃ。とりあえず、"先生"はあの連中とは知り合いなんじゃな?」

 

 呆れたため息を吐いたマミゾウの問いに頷く。恐らくマミゾウの狙いは―――

 

「"そうだね。...それを尋ねるということは、()()()()を狙ってるんだね。それができれば双方被害も少なく済む。――ただ、ワカモは()()()()()献身的だけど...勘違いや早とちりでそれが()()()()()ことがあるんだ。私の見立てだと――今のワカモは正にその状態に陥っている"」

 

―――『シャーレ』に居る時以外でも、私が()()()外を出歩いていると偶にワカモがフラリと現れ、自発的に護衛に付いてくれる事がある。けど、ワカモが私に向ける感情は()()に近い。そのせいで、私が過去に助けた事がある不良と世間話をしていたら()()()()()()()()()()()()()()()()()攻撃してあわや大騒ぎになりかけた事もあった。

 私が割って入って止めればワカモは話を聞いてくれるけど―――それは()()()()()()だからこそ出来る事だ。今の様な状況では、シッテムの箱(アロナ)のシールドがあっても割って入ってワカモを止めるのは()()()()だ。

 

「"――ワカモは多分、私が『アビドス』の皆と一緒に居ると()()()()()()()んだ。前に世間話で『アビドス』での活動のことを話したこともあったから、()()()()()()()()()すれば...ワカモは止まってくれる筈だ。

 ラブ――"ジャブジャブヘルメット団"が一緒に居る理由は分からないけど...ワカモは偶に傭兵、用心棒で雇われることもあるって言っていたからその可能性がある。だから――()()()()()()()()()()()()()()()かもしれない"」

「――成程。話し合いの余地があるのは僥倖だが、()()()()()()()()()な」

「うむ。――"先生"は"シッテムの箱"のバリアで守られておるとは言えども、あの鉄火場に飛び込むのは無謀。しかも現状数はこちらが不利。調査班は皆大急ぎ戻ってきておる筈だが――」

 

『――こちら"RABBIT1"!"ジャブジャブヘルメット団"の()()()()()のか、攻勢はそれほど激しくはありません!現状でも防衛線は維持できますが――』

『――っく...!今はおじさんがターゲットを取ってるけど、あの火力が他に向けられたらキツいね~。モコウ先輩が来てくれれば攻めに行けるんだけどな~』

 

 ミヤコの報告に続いて、ワカモの狙撃を防いだホシノが意見を挙げる。

 

「"――"災厄の狐"、ワカモが脅威ってことだね。ここは防衛システムを使って足止めするしかないか。アヤネとモエは――"」

『――こちら"RABBIT3"とアヤネ!必要電力確保!防衛システム、いつでも起動できるよ!』

 

―――状況を尋ねようとインカムに触れた瞬間、モエから報告が入る。高い実力を持つワカモを相手に防衛システムがどれだけ阻止出来るか未知数だけど、調査班としてあちこちに分かれている皆が戻って来る時間は稼げる筈だ。

 

「"分かった!――防衛システムの起動準備が整った!全員、施設の方に下がるよ!"」

『"RABBIT1"了解!――"RABBIT2"!』

『あぁ!――煙幕を展開する!持ってるスモークは全て投げるぞ!』

『私が風で煙幕を広げます!』

 

 ミヤコとサキがスモークグレネードを取り出し、アヤは翼を広げて構える―――

 

 

『『――スモーク!』』

 

ボフン...!

ボフン...!

ボフン...!

 

『――煙幕展張!』

 

サァァァ...!

 

―――二人がスモークグレネードを投げて煙幕が広がり、アヤが風を起こして間を遮る様に煙幕が広がる。

 

「"――よし!皆施設の方へ後退するよ!"」

「急げ!"災厄の狐"が何をしてくるか分からん!煙幕がある内に退くんじゃ!」

 

 指示を出し、マミゾウ、トオルと共に海の家を出てホシノ達と共に施設の方へ駆け出す―――

 

 

~『Hidden Paradise』正面玄関前広場~

 

「"――こちら"先生"!全員敷地内に入った!防衛システムを!"」

『"RABBIT3"了解!防衛システムの射線がどうなるか分からないから、念の為玄関側に寄っておいて!』

「"分かった!――皆、玄関前に集まって!これから防衛システムを起動するよ!"」

 

―――ヤシの木のレプリカを飾っている正面ゲートを抜けて正面玄関前の広場に入り、アヤネとモエに指示を出して返って来たモエの提案を受け入れて皆と共に玄関前に集まる。

 

「――"先生"、ホシノ!皆無事だったか!」

「皆無事でよかった...!」

「モコウ先輩、ユメ先輩...!」

 

―――そのタイミングで、玄関からモコウとユメが出て来る。

 

「"――モコウ、ユメも無事でよかったよ。他の調査班の娘達は?"」

「全員合流してるぞ。アヤネから防衛システムを動かすって聞いたんでな。中で待機していたところだ」

 

 調査班も無事に全員戻って来た様だ。モコウとユメは調査範囲が施設裏側の森で少し距離が遠かった筈だけど、合流出来たのが何よりだ。

 

「"――よし。アヤネ、モエ!防衛システムを起動して!"」

『"RABBIT3"了解!アヤネちゃん、起動しちゃって!』

『了解!――パスワードも()()()()でよかった...防衛システム、起動します!』

 

 アヤネとモエに防衛システム起動を指示し、アヤネが安心した様に呟きながら宣言する―――

 

 

ウィィン...

ガチャガチャ...

カチャン...

 

...()()()()()()()()()()...まさか...いや、だとしたら...システム起動待て!今動かしたら――」

 

―――広場中央の人魚の石像が割れて機関銃を据えたタレットが姿を現したり、石畳に擬態していたらしいハッチが開いてガトリングガン二門を備えたロボット――ウタハの[雷ちゃんMk.2]に似たデザインの、市販の警備ロボットだ――数体が姿を現したり、ヤシの木の実が割れてドローンが姿を現したりする中、トオルが何か違和感を感じたのか呟き、一転して大きな声をあげ―――

 

 

 

 

ウィィン...

ウィィン...

ウィィン...

 

「"――え...?"」

「――は?」

「――うへ?なんで()()()()()()()()()――」

 

 

ダダダダ...!

 

「"っ?!"」

「ユメッ!」

「きゃっ?!」

 

―――瞬間、タレットやロボット、ドローンの銃口が一斉に()()()()()()()、戸惑う隙も与えず()()()()()()()()()全員咄嗟に身を伏せる。玄関の軒先を支える柱を銃弾が抉っていき、玄関のドアや窓のガラスも割れていく。

 

「一体どうなってる?!アヤネ!システムを止めろ!」

『だ、ダメです...!"()()()()()()()()()"と出ていて、()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

 モコウがアヤネに止めるように指示するも、アヤネは困惑した声で返答する。システムは迎撃を優先しているのか止められない様だ。これは一体―――

 

「――俺としたことが失念していた...!()()()()()()()()()()()()()()()()()!つまり――()()()()()()()()()()()()()()()()()状態だ!緊急停止すら受け付けないのはどんな仕様だと思うが...!」

「何だそりゃ?!」

「ひぃん!ど、どうするの?!」

 

 銃声が響く中でトオルが事態の原因を挙げ、モコウが素っ頓狂な声をあげる。―――先に詳しく調べておくべきだった。マミゾウが()()()()()()()()の発見を受けて全員を緊急集合させたことでその時間は無かったけど、他のインフラ調査を後に回していれば―――

 

『――"先生"、アロナに任せてください!調査中に気付けなかった私にも原因はありますが、私なら...!』

「"――そうか、君が居た!アロナ!防衛システムにアクセス、識別情報に私達の情報を入れるんだ!"」

 

―――"シッテムの箱"からアロナが声をかけた事で脳内で対応方法を思い付き、即座にアロナに指示を出す。

 

『分かりました!――"サンクトゥムタワー"にアクセス!必要情報を確保!――防衛システム内識別システムにアクセス!情報を登録――適用します!』

 

―――ウィィン...

 

―――瞬間、銃声が一斉に止んでタレットの旋回音やロボットがタイヤを動かす駆動音だけが聞こえてくる。

 

「...と、止まった...?」

「...そのようだな。――"シッテムの箱"、アロナ...やはり無法なツールだな。この場合は大いに助かったが」

「"な、何とかなった...ありがとう、アロナ。ワカモ、ラブ達が来る前に間に合って――"」

 

 

―――ダダダダ!

 

―――お礼を言いながら立ち上がった瞬間、タレットやロボット、ドローンが再び射撃を始める。その銃口は私達とは反対側―――()()()()()()()()()()()()

 

 

~『Hidden Paradise』正面ゲート付近~

side-ラブ

 

ダダダダ...!

 

「ぎゃッ?!」

「グワーッ?!」

 

「二人倒れた!手が空いてたら引き摺って後ろに下げて!」

 

―――先行して正面ゲートを抜けた二人が広場に据えられたガトリングガンそ装備したタレットの弾幕を受けて倒れ、後送の指示を出す。

 

「無人のリゾートであった筈なのにタレットとは...!やはり"()()"()()()()()()()()備えていましたのね!何と悪辣な!ただ殲滅するだけでは贖えない罪...!」

「いやそんな訳ないでしょ!今突っ込んだら蜂の巣だよ!落ち着いて!」

 

 ワカモが[九九式短小銃(ライフル)]を握りしめてワナワナと震え、今にも突っ込んで行きそうな雰囲気を感じ取って肩を掴んで制止を図る。

 

「備えてたならビーチで防衛線なんて張らずにここで待ち構えるはず...!お願いだから一回落ち着いて!うちも"先生"には恩があるし、本当に攫われてるなら助けたいよ!でも、そもそも"先生"が()()()()()()()()()()()()()()()()のに決め付けるのは――」

 

 

「――あの程度の防衛設備など羽虫に過ぎません!忌むべき敵が集まっているなら好都合!あなた様、今すぐそちらに参りますッ!!」

「あっ?!ちょっ待っ――」

 

―――しかし制止も虚しくワカモは[九九式短小銃(ライフル)]のコッキングレバーを引いて装弾して広場へ突っ込む様に駆け出す。

 

ダァンッ!!ドォンッ!!

 

「あぁもう...!なんでこんなことに...!こうなるなら無理にお金捻出してまで雇うんじゃなかった...!」

 

 すぐに銃声や爆発音が聞こえ始め、思わず頭を抱える。

 

―――偵察が"先生"と()()()()()()()()生徒の集団の存在を報告したらワカモが食い付き、"先生"が()()()()()()と勝手に決め付け、うちらの制止虚しくホバークラフトを動かそうとした。ホバークラフトはうちらの移動手段でもあり、大枚叩いた大切な財産だ。勝手に動かされ、故障したり、破壊されたりしたら堪ったものじゃない。なし崩し的にうちらもホバークラフトに乗り込み、ワカモに急かされ煽られてビーチに突っ込み、今に至っている。

 

「――隊長、どうするよ?なし崩し的に戦闘始めちまったが、あいつら結構強いぞ...」

「......」

 

 仲間の言葉を受けて頭を抱えたまま思考を巡らせる。―――ワカモの独断専行が無ければ、身を潜めつつ"先生"と一緒に居る連中の状況を探って行動方針を決めるつもりだった。うちらより弱そうなら攻撃してカツアゲし、強そうなら一度退く。―――元々偶然見付けただけの島だし、しっかりした建物とインフラがあるけど交通の便は悪い。他の連中が、強い連中が居るなら潔く退く。それを念頭に置いて隠れて拠点作りの準備を進めていた。

 強い連中に単体で挑むな。戦うなら他の強いヤツと組んで―――弱肉強食の不良界隈での生き抜き方だ。うちらは規模はそれなりだけど、それでも"ジャブジャブヘルメット団"の一派でしかない。他の連中みたいに荒事は得意じゃないし、強い連中のコバンザメをやったりとセコいやり方しか出来ないけど、うちには隊長として皆―――一緒に中退した仲間達を養う責務がある。その為ならセコいやり方ばかりになったって構わない。

 

「――ワカモとは前払いで契約したし、手を切ってもうちらが契約不履行で恨まれることはない...筈。ここは――」

 

 

 

 

 

「――も、申し訳ございませーーーーん!!」

 

―――突然、施設の方からワカモの大声が聞こえてくる。思考を巡らせていたら銃声や爆発音も既に止んでいる。聞こえて来た言葉的にワカモは―――!

 

「い、一体何が...?!」

「――方針変更!うちらも行くよ!」

 

 指示を出し、ゲートを抜けて正面玄関前の広場に入る―――

 

 

 

 

 

 

「申し訳ございません...!私は...!ワカモはまたしても早とちりを...っ...!申し訳ございません...っ...!」

「"よしよし...被害が大きくなる前に止まってくれてよかった..."」

 

―――広場のあちこちで黒煙を上げる()()()()()()()残骸。玄関前で崩れ落ち、涙声で謝罪の言葉を繰り返すワカモ。よく見れば狐の面が外れて傍に落ちていて、涙で表情をぐしゃぐしゃにして泣いている。そんなワカモの背中をさすって宥める"先生"。

 

「...む?お主ら...こやつ――"災厄の狐"が止まって様子見に来たか。ちょうどよい――少し、話さぬか?」

 

―――ワカモの思わぬ姿に困惑して仲間達と共に固まっていると、狸の耳を持った大人らしき女がうちらに気付き、しかし銃を向ける事も無く話し合いを提案して来た。

 

 


~『Hidden Paradise』ロビー~

side-モコウ

 

「――――ふむ...そこな"災厄の狐"の独断専行に巻き込まれてなし崩し的に、か」

 

―――"ジャブジャブヘルメット団"の隊長だという『河駒風ラブ』からこの島に居た理由、私達を攻撃した理由を聞いたマミゾウが瞑目して内容を吟味する。ラブと、その後ろに並ぶ"ジャブジャブヘルメット団"の連中は緊張した表情でその様子を見守っている。

 

「...モコウ、どう思う?」

「...ジャブジャブヘルメット団(アイツら)表情()を見るに、事実なんじゃないか?"災厄の狐"――"七囚人"の一角だ。不良集団程度じゃ制御は至難の業だろう」

 

 マミゾウと"ジャブジャブヘルメット団"の話し合いの場を囲んで見守る輪の中、ユメの問いにそう答え、"先生"の隣に立ち、涙目で時折鼻を啜る"災厄の狐"を一瞥する。―――噂程度でしか知らないが、前"連邦生徒会長"()()による混乱で『矯正局』から脱獄した危険人物七人"七囚人"。その一人である"災厄の狐"『狐坂ワカモ』は、不良の煽動や破壊活動を常習的に行い、『百鬼夜行』で停学処分を下されて『矯正局』に入れられたらしい。そんな危険人物が―――

 

グスッ...グスッ...

「"...大丈夫だよ、ワカモ。君は聡明な娘だ。反省して次に繋げればいい"」

 

 "先生"は"災厄の狐"の頭を撫でる。その後ろには"RABBIT小隊"が囲む様に立っていて、四人とも緊張した表情で()()()()()()場合に備えている。

 

「...まさか"先生"と()()()()()だとはな。不良であっても()()()として接する"先生"らしいっちゃらしいが...」

「流石"先生"だねぇ...おかげでモコウとホシノちゃんがケガしなくて済んだから、私は安心したよ」

 

 私の言葉にユメは安心した表情を浮かべる。

 

―――『"ワカモ!一旦止まるんだ!私の話を聞いて!"』

 

―――防衛システムの識別システムが動いて私達が狙わなくなったのは良かったが、単身突っ込んで来た"災厄の狐"は広場のタレットやロボット、ドローンを()()()()()()()()()()()。"七囚人"と呼ばれるだけの実力はあると実感し、ホシノと共に直接銃火を交えて撃退しようとして―――"先生"が"災厄の狐"に声を掛けると動きが止まった。

 

―――『あ、あなた様...?何故私を止めるのです...?私は、ワカモはあなた様をお助けしたいだけなのに...』

―――『"どうしてそんな判断に至ったか分からないけど...ワカモ、よく見てほしい。君が言う通り捕まっていたらこんな最前線には出ていないよ。――この娘達は"アビドス"の生徒達だ。私は彼女達の依頼を請けてここに来ている"』

―――『...た、確かに...あなた様が捕まっているようには見えません......だとしたら、私は...ワカモは()()...!』

 

―――そして"先生"がそんな言葉をかけると"災厄の狐"は[九九式短小銃(ライフル)]を落として震えだし、その場に崩れた。その弾みで狐の面が落ちたが―――涙を溢れさせて顔をぐしゃぐしゃにしていた様には驚いた。

 その後に"ジャブジャブヘルメット団"の連中も広場に入って来たが私達と同様にワカモの豹変ぶりを目の当たりにして困惑し、マミゾウが連中に気付いて()()()()を持ち掛け、今に至っている。

 

「――まず、言っておく。この島は儂の『カイザーコンストラクション』である客に売ったものじゃ。しかし、安値にも関わらず分割ローンを滞納して()()。気付くのが遅れてしもうたが...債権者としては差し押さえるのが必然。つまり――お主らは()()()()を犯していることになる」

「――そんなことは分かってる。そもそもヘルメット団(不良集団)に所属してる以上、法を犯さなきゃうちらは生きていけないし。...うちらの界隈は弱肉強食。弱いヤツは強いヤツに食われるか、従ってなけなしの分け前で細々と生きるしかない。――拠点にするには交通の便が最悪だけど、ちゃんとした建物とインフラがある。...パッと見誰も居なかったし、チャンスだと思ってコソコソ準備してた。まぁ...ダメなら潔く諦めるよ。なし崩し的とは言えアンタ達を攻撃したことは謝る。――ごめんなさい」

 

―――マミゾウの言葉に対してラブはそう返して頭を下げる。ヘルメット団(不良連中)にしては理性的なヤツだ。恐らくネイト達みたいな()()()()()()()()()で不良になったのかもしれない。

 

「――儂らへの襲撃に関しては"災厄の狐"の独断専行に巻き込まれたという証言を信じよう。じゃが、そもそも()()()()を行い、儂らはそれに気付いた。捕まえてヴァルキューレ(然るべき機関)に突き出すのが自然じゃな。だが――」

 

 マミゾウは一度言葉を切り、眼鏡を指先で軽く押し上げてニヤリと笑う。

 

「――こんな僻地の孤島。『カイザーコンストラクション』としては取り戻しても商品にはならぬ。そこで、この島はこの『二ツ岩マミゾウ』()()()()()()()ことにする。それにあたり――」

 

 

 

 

「――お主らを()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――は?」

「――え...?」

「...何か企んでいるとは思っていたが、予想通りだな」

 

―――マミゾウの提案にラブ達"ジャブジャブヘルメット団"の連中は揃って目を点にして、トオル以外の私達も驚きや戸惑いで騒めく。

 

「――リゾートとしては未完成なれど、インフラまで備えているこれら施設や設備を放置するのも惜しい。僻地の孤島じゃが、リゾートには最適な環境でもある。()()()()()()()()()として整備するにも人手は必要――お主らは屋根とインフラがある拠点を手に入れ、儂はリゾートを維持できる人手を得る。どうじゃ――Win-Winじゃろう?無論、こんな僻地では自給自足化も時間を要する。儂個人で足りぬもの、入用なものは支援しよう」

「...ち、ちょっと待って。皆と相談する...!」

 

 マミゾウの言葉を受けてラブは戸惑った声で相談すると宣言し、"ジャブジャブヘルメット団"の連中が顔を突き合わせてひそひそ話を始める。

 

「"――マミゾウ、本当に彼女達を雇うのかい?"」

「噓は吐かん。...この施設の完成度を見て思い付いたんじゃ。――()()()()()()()()()()()()()()()()()()やもしれぬ、とな。手付かずの無人島であればこのアイデアは思い付かなんだ。あわよくば程度ではあったが...話せる連中であったのも実に僥倖。儂個人の見立てじゃが――『河駒風ラブ』は仲間の為に働ける者と見た。仲間を安定して養えるチャンスとなれば間違いなく...」

 

 "先生"が尋ねるとマミゾウはそんな答えを返す。―――確かに、この島の環境はバカンスを楽しむには最適だ。暑過ぎず、海も波が穏やかで泳ぎやすい。しかし、客を呼び込めるリゾート施設にするには不適。そして個人のリゾートにするにしても、こんな僻地の孤島じゃ資材資源を運ぶにも時間が掛かるし、維持管理も大変だ。

 ラブが言っていた通り、"ヘルメット団"を始めとした不良界隈は弱肉強食だ。そんな中でグループを維持出来てる辺りラブもやり手みたいだし、もしかしたら本当に―――

 

「――『二ツ岩マミゾウ』。本当に...うちらを雇うつもり?」

「噓は吐かぬ。今は手書きにはなるが契約書もしたためよう。――『河駒風ラブ』、"ジャブジャブヘルメット団"。この契約、結ぶか?」

 

 

 

 

「――いいよ、乗った。うちらはアンタと契約を結ぶ」

「――うむ、良き眼じゃ。よろしく頼むぞ」

 

―――ラブは契約を結ぶと宣言し、マミゾウは鷹揚に頷いて握手を交わす。

 

「ほっ...よかった~。戦わないで済むならそれに越したことはないし、未完成でも施設があるなら手放すのも惜しいからね。インフラを維持管理できる人手は私達だって欲しいし...」

「マミゾウなら悪い契約にはしないしな。最初は戸惑うかもしれないが...」

 

 安心してため息を吐くユメに頷く。―――攻撃された時はどうなるかと思ったが、"先生"のおかげで"災厄の狐"も暴れなくなったし、ラブ達もマミゾウの下に付いた。色々気になる点は多いが―――

 

「――さて。契約の仔細は後で詰めるとして...最初の命を下す」

 

 マミゾウはラブ達"ジャブジャブヘルメット団"の連中を、そして私達を見回す―――

 

 

 

 

 

 

「――()()()()の為、儂らの島内調査に協力し...()()()()()()()()()()()()()

 

マミゾウが下した指示を受け、驚きと困惑で場が沈黙する―――

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで騒動は解決。次回やっとバカンスです。

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