Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
さて、オラトリオ2章も解禁ですね。
やっぱりラッパ娘厄ネタじゃん!ベアおばが閉まっていたのを開けたらしいから、封じておくべきヤバいものってことよな。しかも複数体居るのはミメシスの類か?団長あの状況から纏めて吹っ飛ばすのは流石。そしてスチルのシーンを見てこっちも顔を覆った。他人の意見や意思を尊重できることがこの場合悪く作用してしまった...後悔や無力であんな表情にもなろう...それはそれとしてアリスク糾弾でヒヨリだけノーコメスルーは草生えた。ヒヨリさぁ...はたしてアリウスはこれからどうなるのか...
そして相変わらず月ごとのライブ。ホント今年は精力的だなぁ。ゲーム外コラボの新情報はアビドスと山海経メイン。クロコも一緒に出られるようになってよかった...
そしてゲーム内では限定ピックアップ第1号まさかのマジカルなスズミとレイサ!!初登場から4年半...!遂に新規来たぞぉぉぉぉ!!レイサのツインドリルすげぇ可愛い!!
そしてイベ報酬はラブぅ??!!いやまぁ見た目とか情報でトリニティっぽいなとは思ってたけど...!まさか来るとは...!
イベントはゲヘナとトリニティ境界遊園地を舞台にした"魔法少女ヘヴィキャリバー"!チラッとシミコも居てよかった...ってその覚悟何??!!横乳まであってエデン条約してるのかよ??!!ビジュアル的には悪の幹部役っぽいけど...いつかの魔法少女ものアニメみたいな既視感ががが()
そして総力戦でイェソド新規追加!後はネツァクのみ...!
そしてまさかのレイサ3D??!!うるさ可愛い!!ちょっと空回ってるところも弱気なしっとりも好き!!そしてオチ。宇沢さぁ...
そして5周年イベ告知!キービジュ元気いっぱい可愛い!センターをミヨが張ってるのは意外だなぁ。日数も規模も少し小さくなってるっぽいし、防音設備無くてVRブース用意できなかったのは残念だけど楽しみやね。
さて、今回はふわふわ頭なあの娘のメモロビです
~『ミレニアムタワー』 "セミナー"オフィス~
side-ユウカ
「――ユウカ~。"保安部"の今月分の予算申請で何かあったかしら~?」
―――オフィスの出入口ドアが開き、エレンがタブレット端末片手に入室して私の席の前に来る。相変わらず、どこかふわふわとして捉え所が分からない
「いきなり呼び出してごめんなさいね、エレン。――昨日送ってきた申請書なんだけど...まずは、自分で見直してみて」
「あら?何か忘れてたかしら...ん~...」
呼び出した要件を明かしながら、申請書を映したタブレット端末をエレンに渡す。彼女は端末を受け取り、スワイプしたりズームイン、ズームアウトしたりして時折首を左右に傾げながら中身を確認していく。
「...あ!この箇所ね~。ちゃんと直そうと思ってたんだけど、
エレンは申請書の記入ミスに気付き、その箇所を映した端末を私に返す。―――今回は自分で気付けたけど、彼女の
「...やっぱりね。この位なら私がサッと直すけど...こういう些細なミスの積み上げが
「はいはい、分かってるわよ~。...ふふ、ユウカは相変わらず優しいわね。ちょくちょくこんな些細なミスしちゃう私を怒らないで、優しく諭してくれる。――そんなふわふわした雲みたいな優しさがあるから、皆に好かれるのね。貴女と同僚になれて幸運だって、つくづく思うわ。じゃあ、用事がないならそろそろ行くわ。仕事頑張ってね~」
「...えっ?ちょっ、いきなり何を――」
いきなり私を褒める様な言葉を零されて一瞬呆け、我に返って思わず引き留めようとするけどエレンはひらひらと長くボリュームがある金髪を揺らし、それと共に手を振りながらオフィスを出て行ってしまう。
「...行っちゃった...いきなりあんなことを言ってくるのも相変わらずね」
少し気恥ずかしくなって頬が少し上気する感覚を覚えながら椅子に座り直し、仕事を再開する前に何となく傍の窓に目を向けて空を見上げる―――
「――雲に例えるべきは貴女の方だと思うけどね、エレン」
―――見上げた先、青空をゆっくり流れていく綿雲を眺めながら呟く。
―――『竹本エレン』。
~『ミレニアムサイエンススクール』自地区内~
side-ノア
「――こちらノア。コユキちゃんの進路の推定はできましたか?」
『――今の進路だと...狙いはモノレールっぽいわね~』
―――本校正門前の大通りを走る"セミナー保安部"指揮車両内。各所の監視カメラ映像とコユキちゃんのGPS追跡映像を確認しながらインカムをエレンちゃんに繋ぎ、コユキちゃんの逃走先を尋ねれば彼女の予測が―――私と同じ予測内容が返って来る。
―――最近は大人しくしていた為、偶には『反省部屋』の外で活動させてもいいだろうと、部屋から出して"セミナー"オフィスで仕事を手伝わせていたら、トイレに行きたいとお願いされて行かせた隙を突かれて
個室まで付き添うのは流石に過剰だけど、せめてトイレ室内で監視も兼ねて待機しておくべきだった。私もユウカちゃんも手が離せない仕事の最中だったのは運が無かった。
―――ただ、エレンちゃんと"セミナー保安部"即応部隊として配置されていた、エレンちゃん直率の"CLOUDチーム"が動かせたのは幸いだった。コユキちゃんの脱走対策で彼女の髪留めに仕込んだGPSトラッカーの反応を追ってエレンちゃんと即応部隊が後を追い掛け、私はサポートとして指揮車両に便乗しているのが今の状況だ。
「私も同じ予測を立てています。――さて、"CLOUDチーム"としてはどう動きますか?」
『――作戦案は二つあるわ。一つ..."コユキちゃんがモノレールに乗る前に、モノレール運行を少し止めて、駅構内に先回りして捕まえる"。もう一つは..."このままモノレールに乗せちゃって、自地区内の適当な駅で止めて捕まえる"。サッと浮かんだのはこんな所ね~』
「ふむ...一つ目は分かりやすいですが、二つ目の作戦...敢えて泳がせる意図は?」
エレンちゃんが挙げた作戦案二つの内、二つ目の作戦内容を組んだ意図を尋ねてみる。
『人って追い込まれると、普段やらないことだってやっちゃうじゃない?コユキちゃんの才能との組み合わせは民間人や生徒達に被害を齎しかねない。それを抑えるのが一つ。そしてもう一つ――逃げることに成功したらコユキちゃんは安心して油断が生じる筈。
何度も脱走しては追われて捕まってるし、流石にある程度警戒はするでしょうけど...そこは
エレンちゃんが挙げた作戦の意図について説明を受け、内容を吟味する様に考え込む。―――コユキちゃんと言えど捕まる度に反省(自身の行動、倫理観の低さではない)し、学習している。脱走を重なる度に偽装や欺瞞を仕込んで少しでも逃げる時間を稼ごうと策を講じて来ている。
エレンちゃんの言う通り、このまま一気呵成に捕縛を図り、コユキちゃんを焦らせて思わぬ二次被害を発生させるのは悪手だろう。それに―――
「――安心させた所で捕まえれば、"
『了解よ!――一人、"CLOUD6"は駅に入ってコユキちゃんの移動を確認して!残りは指揮車両で先回りするわよ!
直近のモノレールは自地区外行きの急行便。次の停車駅で捕まえちゃうわよ!さぁ、行動を開始して!』
『"CLOUD6"、了解!』
二つ目の作戦案を採用すると宣言すると、エレンちゃんはすかさず部隊に指示を飛ばす。
「――本車両も駅に向かいます!」
「はい、お願いします。...相変わらず、普段どこかふわふわとしているとは思えない姿ですね」
ドライバーの言葉に頷き、シートに座り直しながらフッと呟く。
―――空を漂う雲は天候や気流等に左右されて形や特性が変わる。発展した科学技術によりその変化はある程度予測、分析出来るけどそれも確実ではない。そんな雲の様にふわふわと漂い、捉えどころが分からない普段の姿を見ていると、"セミナー保安部"部長として指揮を執る姿はらしくない、と思う。
『――こちら"CLOUD6"!"白兎"がモノレールに乗り込みました!二番線、"M-Iライン"の急行便です!私も乗り込んで動向を監視します!』
『予想通りね。...次の停車駅的に......うん、その方がいいわね...車両はこっちで適当なものを借りる!ノアはそのまま指揮車両でコユキちゃんが乗った路線の直近の停車駅に向かって!』
「直近となると"第八境界検問前"ですね。了解しました」
コユキちゃんの逃走報告を受けたエレンちゃんの指示に頷き、ドライバーも進路を変える。
―――路線のダイヤはそう簡単に変えられるものではないし、敢えてモノレールに乗り込ませたコユキちゃんも、追い込まれていないから態々
「――さて、どうやってコユキちゃんを待ち構えましょうか...」
指揮車両は時短の為最寄りの高速道路に入り、スピードが上がっていく車内でコユキちゃんを捕まえる方策を思案する―――
~モノレール駅『第八境界検問前』駐車場~
『――"CLOUD"全チーム配置に着いたわ!ノア、カメラはどんな感じ?』
「――こちら指揮車両。私から見ても、パッと見ただけでは
―――駅敷地内の駐車場に停めた指揮車両内。ハッキングした駅構内各所の監視カメラ映像を見回しながらエレンちゃんの問にそう答える。カメラの映像には、住人や駅員に混じってベンチでスマホを弄っていたり、談笑しながら行き来している私服姿の生徒―――に
当のエレンちゃんは、コユキちゃんが乗っているモノレールが到着する予定のホームに出ていて、ベンチに座ってイヤホンを弄る風に見せかけてインカムを弄っている。
『ふふ、ノアがそう言うなら変装は完璧みたいね~。...時間的に、もうすぐモノレールが着くわね。"CLOUDチーム"、スタンバイ!』
エレンちゃんの指揮一下、チームメンバーがコユキちゃんを捕まえるべく、構内を行き来するごく普通の生徒として振る舞いながら配置に付いていく様子をカメラ越しに確認する。
―――作戦は単純。モノレールを降りて改札を出るまで、"CLOUDチーム"は変装を解かずにコユキちゃんを尾行しながら包囲していき、駅の外に出ようとした所で捕まえる。また、抵抗が強い場合は私自身も出張る手筈になっている。
『――ふふ、来た来た...こちら"CLOUDリーダー"、モノレールがホームに到着。間もなく停車するわ』
『――こちら"CLOUD6"、
―――二、三分経過すると、二番線ホームにコユキちゃんが乗っている急行便のモノレールが速度を落としながら入って来る様子をカメラの映像で確認し、コユキちゃんを直接尾行している"CLOUD6"からも下車は確実だと報告が入る。
モノレールが速度を落としていき、停車して数秒後ドアが開き―――
「――”白兎"の下車を確認。周りを警戒しながらこちら側――北口改札に向かっています」
『こっちでも確認したわ。――"CLOUDチーム"、行動開始』
―――モノレールから降り、不安そうにキョロキョロ辺りを見回しながら指揮車両を停めている駐車場がある方向の出口側の改札に向かって歩き出すコユキちゃんの姿を確認し、エレンちゃん達も下車して改札に向かう他の乗客に紛れて動き出す。
「...こちらに気付いている様子はありませんね。間もなく改札を通過します」
『了解よ。それじゃあ...ちょっと泳がせて出入口を出たら仕掛けましょうか』
「了解しました。――出入口付近では"CLOUD3"と"CLOUD4"が既に配置に付いています。最適なタイミングで、こちらから合図を出しますね」
『は~い。任せたわよ、ノア!』
エレンちゃんの了解の返事を受け取り、監視カメラの映像を通してコユキちゃんと、尾行する"CLOUDチーム"の面々の動きを見守る。コユキちゃんはキョロキョロと辺りを見回しながら改札を抜けて北口のホールに足を運び―――
「――今です」
『――は~い、こんにちは~コユキちゃん。こんな自治区の端っこに来て、何か企んでるのかしら~?』
『うぇっ?!な、なんでエレン先輩が...?!』
『ふふ、私一人じゃないわよ~?』
―――合図を出した瞬間、ふわりと軽やかな足取りでエレンちゃんがコユキちゃんの背後に迫って肩を優しく掴んで声をかける。掴まれた肩をビクッと跳ねさせ、青ざめて声をあげる間に周りの"CLOUDチーム"の面々も彼女を囲う様に近づいてくる。
『下手に野放しにしちゃうと色々と危険な貴女をあっさり逃がすわけがないでしょ?――ノアも首を長~くして貴女を待ってるわ。は~い、大人しくお縄につきましょうね~』
『な、なんでぇ~...今回は逃げ切れるって思ったのに~』
エレンちゃんに肩を掴まれていては、走って無理矢理逃げ出す事も叶わないと察したのかコユキちゃんはガックリと項垂れ、なすがままエレンちゃんに手錠を掛けられる。
『――は~い、捕縛完了よ。これからそっちに連行するわね~』
「了解しました」
手錠を掛け終えてエレンちゃんに連れられ、"CLOUDチーム"に囲まれながらコユキちゃんは駅の外へと歩き出し、北口ホールの監視カメラの画角から外れていく。
「帰還準備に入ります。――指揮サポートお疲れ様です、ノア先輩」
「"CLOUDチーム"の皆さんもお疲れ様です。――これで
ドライバーの娘がエンジンを始動して車両が揺れ始め、彼女の労いの応えながら"CLOUDチーム"を褒める。単なるお世辞では無く、エレンちゃんが"セミナー保安部"に所属してチームが設立されてから今まで積み上げて来た実績に裏打ちされたものだ。...尤も、割合として一番多いのはコユキちゃん捕縛への対応だけど。
「"CLOUDリーダー"――エレン先輩のおかげです。普段はふわふわとして掴みどころが分からないし、忘れっぽい所もありますが...保安部で作戦行動を行うとなれば一転して的確な指示を飛ばし、私達チームメンバーへの気配りができる存在になります。
指揮は感覚的ですが、それでもこうして最終的には成功させてしまうんですから。――本当に、エレン先輩にはお世話になりっぱなしです」
「...ふふ、エレンちゃんはよく慕われているようですね。
彼女のエレンちゃんを称賛する言葉を受け、私も嬉しさが湧き上がって微笑む。
―――『は~い。今日から"セミナー"でお世話になります"竹本エレン"で~す。ちょっと忘れっぽい所もあるけど、皆の支えになれるように頑張りま~す』
―――ユウカちゃんと共に"セミナー"へ加入した一年生のあの日。自己紹介での雰囲気は今も変わらない、雲の様にふわふわとした掴みどころが分からないものだったけど、不思議と鋭い感覚での指揮や周囲への気配りは私含めた皆の支えになっている。正に時には綿雲の様に、時には雷を伴う入道雲の様に―――
「――振る舞いの雰囲気だけでなく、内面の人としての在り様も雲のよう...ですね」
~『シャーレ』オフィスビル 部室~
side-"先生"
「――エレン、ちょっといい?」
「は~い。どうしたのカリン?」
―――部室の"当番"用デスクで隣り合う席で机上業務を進めていると、今日の"当番"として来てくれた二人―――片方のカリンがもう片方のエレンに話しかけ、エレンは椅子を寄せてカリンの傍に付く。
「この項目、どうにも計算が合わないのかエラーを吐くんだ。書式は弄ってないんだけど...」
「どれどれ~?...ん~...」
カリンがパソコンの画面を指差し、エレンは身体を少し寄せてキーボードを打ち、時折首を傾げる。
「...あら?もしかして...あぁ、やっぱり!――カリン、
一、二分程キーボードをあれこれ打っていると、エレンはカリンの手元にある書類を見て手早く入力する。それによって計算が上手く行ったのか、エレンは納得したように声をあげ、カリンに指摘する。
「...あ、本当だ。そうか...項目名が少し似ていて気付かなかった。ありがとう、エレン」
「ふふ、どういたしまして」
指摘を受けたカリンは自身のミスに気付き、エレンに謝意を示すと彼女も嬉しそうに微笑む。仲睦まじくて"
「"――そういえば、カリンは元々"セミナー保安部"所属だったっけ?"」
「――そう。エレンとは入学以来同じクラスで、入りたいと思う部活動が決まらなくて悶々としていた時に彼女から"セミナー保安部"に誘われたんだ。
狙撃の腕には自信があったけど...『ミレニアム』は研究や開発活動が主体だからね。それを活かせる部活動が見つからなくて...でも、"セミナー保安部"では色んなチームから引っ張りだこだった。あっちへこっちへ大変だったけど...頼りにされて嬉しかったし、やり甲斐もあった」
私の問にカリンは頷き、懐かしそうに目を細める。エレンとはクラスメイトで、その縁で"セミナー保安部"に誘われ、かなり頼りにされていた様だ。
「ふふ。一年生の時の射撃技能試験でカリンの狙撃の腕を見て、治安維持を担う"セミナー保安部"でなら...って思ってたの。
誘いを掛けた時は、カリンの意思を尊重したかったし無理強いはしなかったけど――その日に
「あの時の先輩達との初対面は懐疑的だったのが懐かしいね。...クラスメイトとして見ても、エレンのふわふわとした性格と、忘れっぽい所のおかげで素直に言葉を信じられなかったから」
「も~、貴女もだったの?私は本心から貴女の腕を認めていたし、だからこそ保安部でなら活かせるって本気で思ってたのに~」
カリンが"セミナー保安部"加入時の事を話すとエレンは不満そうに頬を膨らませて抗議する。
―――"
「"――その欠点を補うのが、カリンを"セミナー保安部"に迎え入れて活躍の場を与えたような――周りを見る感覚の鋭さだね。
『ミレニアム』生で理論理屈よりも感覚主体なのは意外だけど..."当番"に来た時のノアやユウカ達
「確かにそうだね。――エレンのおかげで喧嘩や対立もすぐに収まった事態は少なくないし、クラスでもエレンを中心にして人間関係も良好。...浮いた性格と忘れっぽさも補ってあまり有る才能だと思う」
「も~、そんなに褒めたって何も出せないわよ~?」
私とカリンの言葉を受けて恥ずかしくなったのか、エレンは頬を少し赤らめながら頭を掻き―――
「"――エレン、そう言えば...今日の君の髪はいつも以上にふわふわしてるね"」
「...あら、あらら?朝に整えてきたのに...あ、まさか...!」
私の指摘を受けたエレンは髪に触れながら戸惑った表情を見せ―――
「...エレン。黙ってたんだけど...ここに来てから
「そういうのは黙ってないで指摘してよ~!整え直すの大変なんだから!」
カリンが察した様子で指摘すると、エレンはデスクに置いていたポーチから櫛と手鏡を取り出しながら椅子を動かして
「"――
「うん。エレンは人一倍、静電気や放電の影響を受けやすいんだ。...多分、今回はディスプレイ由来の静電気かな。
グローブは静電気、帯電対策を徹底した特注品だけど――結局、静電気とか放電が生じると空間、空気中を通して髪に影響しちゃうんだ」
「...ぐぬぬ...あ~もう~!全然直らない~!!」
カリンはエレンの体質について説明する。どうやらエレンの帯電体質は特に髪に影響する様だ。エレンが何度も髪を梳いても、ここまででかなり帯電してしまったのか髪はふわふわとしたボリュームから殆ど改善されず、彼女はどうにもならないと声をあげ、再び櫛で自身の髪との格闘を再開する。
「...一年生の頃が懐かしいな。冬場なんかは、皆してエレンの髪のボリューム具合で静電気の多さを把握する目安にしたものだ。
あの頃から毎朝しっかり髪を整えていたけど、今みたいに時間が経つと静電気が帯電して段々ボリュームが増えていくんだ。エレンに隠れて、偶にクラスメイトとどこまでボリュームが増えるか予想し合って賭けてみたりもしたね」
「偶にコソコソ話してたな~と思ってたけど、貴女達そんなことしてたの?!」
カリンが懐かしそうに目を細めながら一年生の時の事を語ると、事情を知らなかったのか、自身の髪と格闘しながらエレンが驚いた様に声を上げる。
まだ冬でもないのに静電気の影響がここまでだとすると、乾燥が激しい冬になると―――カリン達がエレンの髪で弄るのも理解出来る。"
「私はやり取りを聞いているだけで参加しなかったけどね」
「そういうのは止めずに見てるだけでも共犯よ共犯!」
「その代わり、時々髪を整え直すの手伝ったじゃないか。私自身は勿論、"C&C"に移ってからはアスナ先輩やアカネの髪のケアの手伝いの糧にもなったしね」
「...ま、まぁ確かに...カリンが度々手伝ってくれたのは大いに助かったわ。貴女にとってプラスになったなら...この髪も悪いことばかりじゃなくてよかったわ」
エレンの抗議に対してカリンは整え直しの手伝いとその経験を活かせている事で帳消しだと主張を返す。エレンはそれを聞いて少し悩みながらも、嬉しそうに微笑む。
こうしてやり取りを見ていると、真面目なカリンがこうして茶化すような言動を取るのはそれだけ―――
「"――"
「..."C&C"で活動してるとそういうことをする余裕がないだけ。でも...エレンと出会えたことに後悔はないよ。彼女のおかげで才能を活かせる場も得られたしね」
「ふふ、そう言われると嬉しいわ。お礼に――私の髪を梳く権利をあげちゃうわ。今日の髪は妙に頑固みたいだからやり甲斐たっぷりよ~?」
私の言葉にカリンは少し遠い目を浮かべながら理由を挙げ、次いでエレンと出会いに後悔は無いと改めて宣言する。それを受けてエレンは笑みを浮かべながら遠回しに髪の整え直しの手伝いを要求する。
「...そんな遠回しに言わなくてもやってあげるよ。確か自分のが...あぁ、あった。少し久しぶりだから、腕が落ちてたらごめん」
「大丈夫よ。貴女なら"C&C"でメイドさんになって尚更腕を上げてるでしょうし、期待してるわ」
カリンは遠回しな要求に呆れた半目を返しつつ、自身のバッグから櫛や寝癖直しスプレーを取り出し、席を立ってエレンの背後に移動する。
エレンはカリンの前置きの謝罪を否定して期待の言葉を返し、カリンは寝癖直しをスプレーしながら髪を梳き始める。
「...うん。見た目に反したサラサラ感としっかりした太さ...髪質の良さも昔と全然変わってない。ケアは全く怠ってないみたいだね。...でも帯電体質は昔より悪化した?この寝癖直し、値段相応に効果が高いものなんだけど...」
「...そ、そんなに酷いの?...じゃあ、しょうがないわね。貴女の限界に任せるわ」
「仰せのままに」
そんなやり取りを交わしながら、カリンはエレンのふわふわとした金髪に寝癖直しを振り撒き、櫛で手早く、且つ丁寧に梳いていく。
その光景は、カリンが"C&C"に移籍してからも二人の関係は変わっていない事を示している。
―――髪も金色の雲の様にふわふわとしているけど、エレンの性格も雲の様にふわふわと、浮いていて気まぐれである反面、他者を優しく包み込めるからこそだろう。
ということでエレンのメモロビでした。セミナー保安部繋がりでカリンとの絡みも新たに掘り下げてみました。
こういうふわふわした性格の娘は描写が難しい...
さて、次回はエンジニア部の面々です。
感想、評価、お気に入り、栞、ここすきは大歓迎です。作者が喜びでわっぴ~します。