Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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エラの野望イベ来ましたね。メンテ中にマジカル宇沢の3Dお披露目ショートが出ておったまげた。前のライブでデフォルト制服の3D来てからコレ速すぎない???

そしてイベントはすっごくよかった。スズミは元正実で、苦手なものや弱みを見せるところがあったり、レイサはヘヴィキャリバーオタクだったし、ラブもよく慕われていたり、シミコが結構ヤバい娘だったり...ただ、疑似科学部のアイツが出て来るのは予想外だった。君吾妻姓だったんやね。

さて、メモロビというよりはグルストみたいになったのでGSカテゴリです。メインはエンジニア部の金庫番。


File83.GS-KN/SR/AR←YT~バカみたいな天才達と金庫番~

~車輛整備場~

side-ウタハ

 

「――ウタハ部長、お疲れ様です!」

「やぁ、お疲れ様」

 

―――電動工具やエンジンの駆動音で騒がしい車輛整備場に入ると、工具箱を片手に提げた整備場所属の"車輛整備班"――"エンジニア部"傘下の、車輛整備と整備場の維持管理を受け持つチームだ――の娘と出会し、挨拶を交わす。

 

「車輛の整備はいつも通り順調かな?」

「はい。"セミナー保安部"から移送された装甲車と...あ、"新素材開発部"などの他部活動から依頼された改(・)造(・)も幾つかありますね」

「...改(・)造(・)?どんなものがあるか、教えられる範囲で教えてくれるかい?」

 

 私の問いにそう答え、整備場の各デッキに並んで整備や改造を受けている車輛に目を向ける。改造がどんなものか興味が湧き、尋ねてみる。

 

「そうですね..."新素材開発部"からだと、あちらが開発した素材で造られた装甲版への換装を依頼されています。仕様書では既存の装甲より性能を若干上回りつつ、重量も軽量化されているみたいです」

「それはすごい。流石"新素材開発部"というべきか。...でも、そういう改造ならエンジニア部(私達)も請け負うのに」

「...あはは。私達"車輛整備班"に頼みたいとの要望でしたので。それに、車両なら私達でもやれますから」

「確かに...車輛整備に従事しているからこその専門性に頼ったのか」

 

 私の軽い不満を聞いた彼女は苦笑しながら一(・)瞬(・)目(・)を(・)逸(・)ら(・)し(・)、理由を挙げる。目を逸らした理由は気になるけど、"車輛整備班"の専門性を頼ろうとしたなら納得出来る。

 

「――とは言え、君達で手に負えない案件が来たら遠慮せず私達に回してくれ。時には専門ではないアイデアが打開策となることもあるからね」

「はい。その際は頼らせてもらいます。――所で、態々部長がいらしたのは何かご用件があってのことですか?」

「――おっと、そうだった。リカは居るかい?彼女に渡したいものがあってね」

 

 彼女の問いを聞いてしっかり用事があって整備場を訪ねた事を思い出し、右手に提げたファイルケースを見せながら尋ねる。

 

「リカちゃんでしたらいつものように専(・)用(・)ガ(・)レ(・)ー(・)ジ(・)に籠っていますよ。ご案内しますか?」

「いや、大丈夫だ。君は君の作業に戻るといい。...そうだ。エンジニア部(私達)側に挙げたい要望とかはあるかな?」

「いえ、私は特に...ですが、リカちゃんなら色々要望はあると思います。いつも[イビルアイΣ]の改造案を考えて、資機材や予算が許す限り試していますから」

「相変わらずみたいだね、リカは。――分かった。用件ついでに聞いてみるとしよう。それじゃあ」

 

 軽く手を振り、リ(・)カ(・)の(・)専(・)用(・)ガ(・)レ(・)ー(・)ジ(・)―――というよりはリ(・)カ(・)の(・)学(・)内(・)で(・)の(・)住(・)処(・)と言うべき『第一戦車ガレージ』へ足を向ける―――

 

 

~車輛整備場 第一戦車ガレージ~

 

「――おーい、リカ。居るかい?」

 

―――ガレージのシャッター傍のドアを開けて中に入ると、真ん中のデッキに鎮座する[イビルアイΣ]が私を出迎える。デッキの足場が上げられて車体下部へアクセス出来る空間が出来ていて、リカの足がチラリと見えたので傍でしゃがみ、少し大きな声を出して呼び掛ける。

 

「――聞いた声だと思ったら部長でしたか。...あたいに何か用ですか」

 

 数秒してリカは自身が寝そべる作業用スライダーを動かして車体下部から出て来て、邪魔されたと言いたげな不満そうな表情を浮かべて私を見上げる。

 

「君の端末に"渡したいものがあるからガレージに居るように"ってメッセージは送っていたんだけどね。...作業がいい感じでのめり込んで他のことを忘れることはよくあることだ。作業を邪魔することになってしまったのはすまない。――ほら、君が欲しがっていたレ(・)ー(・)ル(・)ガ(・)ン(・)の(・)設(・)計(・)図(・)と(・)素(・)材(・)表(・)だ」

「――ッ!!」

 

―――作業を邪魔した事を謝罪しながらファイルケースを開けて封筒を取り出して差し出そうとした瞬間、リカは目の色を変えてバッと起き上がって封筒をひったくる様に受け取る。

 

「――こ、これは...[光の剣:スーパーノヴァ]の設計図以外にもよ(・)り(・)大(・)型(・)の(・)も(・)の(・)...戦(・)車(・)の(・)主(・)砲(・)向(・)け(・)の(・)仕(・)様(・)まで...!」

「レールガンを[イビルアイΣ]の主砲にしたいと言っていたからね。[光の剣:スーパーノヴァ]は歩兵携行火器サイズだから、戦車の主砲とするには少々小ぶり。だから――私なりに戦車の主砲として載せる場合の設計を考えてみたんだ」

 

 封筒を開けて設計図を取り出したリカは瞳を輝かせながら設計図を食い入るように見つめ、聞こえているかは分からないけど設計図を書いた経緯を説明する。

 

―――今はアリスの相棒となっている[光の剣:スーパーノヴァ]は元々宇宙戦艦の主砲として設計、開発を行っていたが、小型化を突き詰め過ぎてあの歩兵携行火器(と言ってもアリス並の身体能力が無ければ扱えないが)サイズにまでなってしまった。

 そこで、リカに[光の剣:スーパーノヴァ(レールガン)]の設計や仕様を共有するにあたり、戦車の主砲として載せられる様に大型化して設計図を引いてみたのが、今リカが食い入るように見つめている設計図だ。

 

「とは言え、私が引いた仕様は戦車の主砲として機能させられる最低限のものだ。細部の設計や仕様変更は君自身が行うといい」

「ありがとうなのです、部長!これで[イビルアイΣ(この子)]もより強くなれるのです!」

「ふふ、どういたしまして。――本当に見違えたものだね。これが元々[M1A2 SEP V2(只のMBT)]だったとは初見では分からないよ」

 

 嬉しそうに礼を述べるリカに微笑みながらそう返し、[イビルアイΣ]を見上げる。

 

―――『...戦車が一輌欲しい?』

―――『はい。あたいの夢を実現する為には絶対に必要なのです』

―――『ふむ..."セミナー保安部"の装備更新で"車輛整備班"に下ろされた[M4 Shaman(中戦車)]なら――』

―――『あんな古(・)臭(・)い(・)戦(・)車(・)ではダメなのです。より最新の――主(・)力(・)戦(・)車(・)が欲しいのです』

 

―――リカが"エンジニア部"に加入したその日。開発活動にあたって欲しいものを尋ねたら返って来た要求には驚かされたものだ。『ミレニアム』では数の確保と整備性を重視して[M4 Shaman]系列を主力として採用、配備しているが、他三大校の『トリニティ』、『ゲヘナ』ですら強力な戦車と言えばそれぞれ[Churchill MkⅦ]と[Tiger Ⅰ]といった重戦車だ。

 [Centurion Mk.1]などの初(・)期(・)の(・)主力戦車なら三大校規模の予算があればあ(・)る(・)程(・)度(・)数(・)を(・)揃(・)え(・)ら(・)れ(・)る(・)が―――[M1 Abrams]などの最新鋭主力戦車となれば一個中隊相当を購入するだけでも大きな出費となり、補修部品や維持管理費も合わせればより大きな負担となる。故に、主力戦車を戦力として運用可能な数を動かせるのは『カイザー』の様な大企業に限られる。

 

―――『――主力戦車はここ『ミレニアム』でも数を揃えにくいものなのです。故に、一輌だけ備え、一騎当千の力を持たせることで数の代替とする。――それが、あ(・)た(・)い(・)が(・)描(・)く(・)最(・)強(・)究(・)極(・)の(・)戦(・)車(・)なのです』

 

―――リカが持つ最(・)強(・)究(・)極(・)の(・)戦(・)車(・)への情熱に私は動かされ、当時の予算の四割以上を割いて[M1A2 SEP V2(主力戦車)]一輌と補修用、予備部品を購入し、『車輛整備場』のガレージの一つを開発拠点として与えて今に至っている。

 

「まだまだ[イビルアイΣ(この子)]は強くなれるのです。戦車を冒涜しやがった[アバンギャルド君]の装甲材の利用でどんな砲弾も弾く装甲は殆ど実現しました。後は更なる機動力と、どんな装甲も貫く究極の主砲。――部長のおかげで主砲は実現に大きく近付けたのです」

「力になれたなら幸いだ。――さて、用事は終わったからそろそろ『技術棟』に戻るけど...他に要望とかはあるかな?」

「要望...ちょっと待ってて欲しいのです」

 

 リカはそう断り、ガレージの隅にある六畳程の部屋――ガレージ内で空いていた倉庫を利用したリカの生活スペースだ――に小走りに入る。一、二分経ち―――

 

「――これをタカネ先輩に通(・)し(・)て(・)欲(・)し(・)い(・)のです。時間的に主砲は設計からなので間に合いませんが...エンジン回りの改造案は目途が付いたので資機材購入の為に追加予算が欲しいのです」

「成程...タカネはまた文句を言いそうだけど、何とか通せるよう努力してみよう」

 

―――数枚の書類を挟んだファイルを持ってきて、そう説明しながらファイルを私に差し出す。ファイルを受け取ってファイルケースにしまいながら通せる努力をすると答える。

 

「タカネ先輩はお金周りにうるさ過ぎるのです。あたい達の予算消費が早いのは理解していますが、夢(・)や(・)ロ(・)マ(・)ン(・)実(・)現(・)の(・)為(・)の(・)致(・)し(・)方(・)無(・)い(・)犠(・)牲(・)なのです。"エンジニア部"所属ならあたい達の情熱を理解している筈なのです」

「タカネは頑固ではないからね。しっかり説明して情熱を理解してくれれば最終的には頷いてくれる。――そろそろ戻るとしよう。[イビルアイΣ]の更なる強化、楽しみにしているよ」

 

 リカの愚痴にそう答え、彼女と別れてガレージを出る―――

 

 


 

~技術棟 『第二ガレージ』~

 

―――ウィィン...

 

「だーかーらー!ない袖は振れないって何度言ったら分かるのさ!」

「そんなこと言わずにユウカも認める金勘定の才能でなんとかしておくれよ!部長達の宇宙戦艦建造でまた予算吸われたし、私もいい加減『ヒソウテンソク』の建造を進めたいんだよ!」

「お金は無から生えないって何度も言ってきたよね?!もう何回追加予算の申請をユウカに出したか...!」

「ユウカが認めるなら"セミナー"にはま(・)だ(・)余(・)裕(・)が(・)あ(・)る(・)ってことじゃないか!なら、部長達ばかりじゃなく私にも予算をおくれよ!」

 

―――『第二ガレージ』に入るなりタカネの怒声がガレージ内に響き渡る。私の前方、『核熱造神ヒソウテンソク』建造ドックの傍に怒声の発生源(タカネ)とニトリが居て、ニトリはタカネの怒声に怯まず掌を合わせながら重ねて予算融通を頼み込む。―――どうやらニトリが出したらしい予算申請書に問(・)題(・)が(・)あ(・)る(・)様だ。

 

「――二人とも、一旦落ち着くんだ。どうやら予算絡みでトラブルのようだね?」

 

―――ツカツカと二人の間に割って入る様に歩み寄り、声をかけると二人揃ってバッと顔を私に向ける。

 

「あ、部長!戻ってきたんだね。...そうだよ、毎(・)度(・)の(・)如(・)く(・)ね!エリドゥ(この前の一件)で会長から還元された追加予算も皆(・)し(・)て(・)食(・)い(・)尽(・)く(・)し(・)て(・)さぁ...!アレでも尚足りないのが信じられないんだけど?!」

「私(・)達(・)の(・)開(・)発(・)欲(・)を満たすには全(・)然(・)足(・)り(・)な(・)い(・)よ!部長達の宇宙戦艦建造のおかげで尚のことね!私の『ヒソウテンソク』がが(・)ら(・)ん(・)ど(・)う(・)の(・)頭(・)だ(・)け(・)の状況からいい加減進展させたいんだ!」

 

 私の問に二人はお互いに一切譲歩する気配が見えない答えを返す。予算による対立は"エンジニア部"ではよくある事だけど、タカネが"セミナー"から移籍して来て以来対立はより激しいものになっている。

 

「ふむ...とりあえず申請書を見せてくれるかい?もしかしたら私達の予算から融通できるかもしれない」

 

 仲裁のアプローチ方法を探るべく、まずはニトリが欲する予算を把握する事にした。タカネが私に差し出したタブレットを受け取り、画面に映る予算申請書の内容を読む。

 

「...目的は機体パーツ製造。必要資材、機材......必要予算は......うん。申請内容自体に不備はないね。この額は私達が取った予算から融通は可能だけど...融通するとこちらの開発が進まなくなってしまう。

 そうだね...申(・)請(・)額(・)の(・)二(・)割(・)ならこちらへの影響は最低限で済むけど、どうかな?」

「二割じゃ足りないよ!」

 

 内容を読みながら頭の中で現在の残り予算からどこまでニトリに融通出来るかサッと計算する。―――融通は可能だけど、今私達のチームが持っている残り予算の内五(・)割(・)を失うとまた開(・)発(・)が(・)止(・)ま(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。リカからも追加予算申請を通して欲しいと頼まれているから尚更だ。だから―――

 

「――そういう訳でタカネ。"セミナー"が"エンジニア部"に追加予算を出せる余裕があるなら、また申請して欲しい。実はリカからも追加予算申請を通して欲しいと頼まれていてね。私達が持っている予算から融通しても、"エンジニア部"全体でも間違いなく足りない」

「り、リカまで...!...とりあえず、申請書見せて」

「あぁ、勿論だとも」

 

 

 私の言葉を受けてタカネはワナワナと肩を震わせるけど数秒して飲み込む様に肩の震えを抑え、同様に抑えた低い声で申請書を見せて欲しいと頼み、私は素直にファイルケースからリカから受け取った申請書を取り出してタカネに渡す。

 

「...うん...こ(・)れ(・)だ(・)け(・)な(・)ら(・)現(・)状(・)で(・)工(・)面(・)で(・)き(・)る(・)かな。この額でも普(・)通(・)は(・)な(・)ら(・)大(・)き(・)い(・)出(・)費(・)なんだけどね。..."エンジニア部"財(・)務(・)担(・)当(・)としては、リ(・)カ(・)の(・)予(・)算(・)申(・)請(・)は(・)受(・)け(・)取(・)る(・)けど――」

 

 

 

 

 

 

「――追(・)加(・)予(・)算(・)の(・)申(・)請(・)は(・)通(・)さ(・)な(・)い(・)。どうしても欲しいなら、部長とニトリとで話し合って決めて融通すること」

 

 タカネは半目で私とニトリを見回し、そんな宣言を挙げながら端末に映るニトリの申請書に『却下』のサインを書く。

 

「ひゅいっ?!そんなぁ?!」

「むむ...それは困ったな。予算がなくては開発が――」

 

 

「――だったら予算に合わせて開発計画なり方法を考えるなり努力をしなよッ!!...私だって皆の開発活動を円滑に回せるようにしたいよ...!でも...!いつも!いっつも!!ユウカを何とか納得させて取ってきた予算をす(・)ぐ(・)に(・)食(・)い(・)尽(・)く(・)し(・)て(・)!!皆(・)が(・)追(・)い(・)求(・)め(・)る(・)ロ(・)マ(・)ン(・)も(・)情(・)熱(・)も(・)理(・)解(・)す(・)る(・)けど!!そ(・)れ(・)だ(・)け(・)で(・)物(・)事(・)が(・)成(・)り(・)立(・)た(・)つ(・)ほ(・)ど(・)現(・)実(・)は(・)甘(・)く(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)よ(・)!!」

 

 タカネは声をい(・)つ(・)も(・)以(・)上(・)に(・)荒(・)げ(・)て(・)まくしたて、ゼェゼェと肩で息を吐く。―――普段も私やニトリが挙げる予算申請に対して難色を示したり、説教する事はあったが―――これ程の激(・)昂(・)は初めてだ。まさかの剣幕にニトリと揃って絶句する。

 

「...兎に角、今回の追加予算申請はリカのだけ"セミナー"に、ユウカに上げる!もう我慢の限界だよ!"マイスター"を謳うなら――その頭で今の予算に合わせた開発を考えなよ!私午後からリカコと『シャーレ』の"当番"だからよっぽどの緊急事態じゃなきゃ戻らないから!それじゃ!」

「...あっ、ちょっ、タカネ待っ――」

「...!待ってくれタカネ――」

 

 タカネは吐き捨てる様に宣言し、ツカツカと『第二ガレージ』を出て行く。ニトリと共に制止しようとするけど戸惑いが強くて足が動かない。

 

 

―――ウィィン...

 

「――お二人共、呆然としてどうしたんですか?タカネちゃんが何だか怒った様子で出て行きましたが...」

 

―――そこに、タカネとすれ違ったらしいサナエが入ってきて、呆然としている私達に気付いて歩み寄って来ながら声を掛けてくる。

 

「...サナエ...タカネが私達の追加予算申請を蹴った上にすごく怒ったんだ。...あんなの初めて見たよ...」

「...いやはや...まさかタカネがあんなに怒るとはね。彼女が"財務担当"として"エンジニア部"に移ってきた当初から予算周りには厳しかったが...今までは何だかんだ認めてくれたというのに」

「...成程。それはタ(・)カ(・)ネ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)が(・)怒(・)り(・)ま(・)す(・)ね」

 

 ニトリと私の返答を聞いたサナエは察(・)し(・)た(・)様(・)に(・)頷いて瞑目する。

 

「...何か知ってるのかい、サナエ?」

「何か知ってるなら教えておくれよ!このまま予(・)算(・)が(・)出(・)な(・)い(・)んじゃ開発が...!」

 

 

「――少しでもいいですから、周(・)り(・)の(・)こ(・)と(・)を(・)知(・)る(・)べ(・)き(・)ですよ。特に部長とニトリさんは。それぞれの夢、ロマンを一心不乱に追究する熱意は私も理解できますし、尊敬しています。タカネちゃんが怒ったのは――そ(・)の(・)一(・)心(・)不(・)乱(・)が(・)過(・)ぎ(・)て(・)盲(・)目(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)からです」

 

 


~『シャーレ』地下 機械室~

sideー"先生"

 

「――リカコ、そっちはどう?」

「――こっちの系統も特に...いや...これは...タカネ、こっちよ!」

「はいはいっと。...あ~...これっぽいかな?カバーが劣化してショートしちゃってたんだね」

 

―――『シャーレ』地下階層の機械室の一角。配電盤の一つの扉を開けて異常箇所を探しているタカネとリカコが怪しい箇所を見付けた様で、タカネはリカコが指差す先を確認しながら足元に置いた工具箱から慣れた手付きで工具を取り出していく。

 

―――昼休憩中に部室や他の部屋の一部の家電や電気設備が使えなくなり、ビルの電気配線に何か異常があるのだろうと推測は出来たし、アロナが異常がある配電盤の場所を特定してくれた。でも、私自身には異常箇所を見付けて修理出来る技能は無く、今日午後からの"当番"としてタカネとリカコ―――機械に強い"エンジニア部"所属の二人が来てくれたのは大いに助かった。

 

「...うん、これなら交換は要らないかな。リカコ、系統の切り替えと隔離お願い」

「了解よ。――サブ系統に切り替え。――修理箇所周辺の配線隔離」

 

 タカネが工具を準備する最中、リカコは配電盤のスイッチを操作して準備を整える。

 

「――よし、通電は止まった。それじゃあ修理始めるよ。リカコ、ライト」

「了解」

 

 リカコが修理箇所をライトで照らし、タカネは慣れた手付きで修理を進めていく―――

 

「――よし、修理OK。リカコ、電源復旧」

「了解。――隔離解除、メイン系統切替復旧」

「復旧確認、ヨシ。――"先生"、修理はこれで終わったよ。後は使えなかった設備が使えるか確認して終わりだね」

「"分かった。一緒に確認しに行こうか"」

 

 配電盤の扉を閉めて工具を片付けるタカネの言葉に頷き、後始末を進める二人を待つ―――

 

 

~『シャーレ』部室~

 

「"――お待たせ。修理のお礼で細やかだけど良いコーヒーを淹れたよ。私のお気に入りの"レッドマウンテン*1"ブレンドだ"」

 

―――給湯室でIHコンロの動作確認がてらお湯を沸かして淹れた"ブルーマウンテン"のマグカップ三つと付け合わせのクッキーを盛った皿をお盆に乗せて部室のソファに座っている二人の下に戻る。

 

―――このオフィスビルがある『D.U.外郭地区』で偶然見つけたコーヒーショップで買ったもので、銘柄は外(・)のそれと何となく似ていたのが気になって購入し、淹れてみたら外(・)での高級銘柄のそれと殆ど変わらないものだと分かった時は驚いたものだ。

 

「"レッドマウンテン"って...名前は聞いたことがあるね。高級なコーヒー豆だっけ?」

「コーヒー派が多い『ミレニアム』と言えど、時短と効率重視でインスタントばかり売れるおかげでコーヒー豆そのものが中々売れなくて流通は少ないから、そうお目にかかれない代物ね。――コーヒーを豆から淹れるなんて趣味があったのね、"先生"」

「"そんなに凝ってる訳じゃないよ。普段はインスタントで済ませるけど、機会があってこういうちゃんと焙煎したりして淹れた本格的なコーヒーを飲んだら、味や香り、コクの大きな差に驚いてね。それ以来、気が向いたらこうして豆から挽いて淹れているんだ"」

 

 コーヒーの嗜好についてそう説明しながら二人の前にマグカップを置き、クッキーの皿をテーブルの真ん中に置いて二人の向かい側に座る。

 

「"――さ、飲んでみて。きっと気に入る筈だ"」

「それじゃお言葉に甘えて...わ、いい香り...」

「...香りからしていつものインスタントと全然違うわね...いただきます」

 

 飲んでみるよう促し、二人は揃って香りに驚きながらコーヒーを一口啜る。私も続いてコーヒーを一口啜る。

―――中煎りの"レッドマウンテン"四割(40%)、中深煎りの"ブルジ・サントス*2"三割(30%)、中煎りの"クールビア・スプレモ*3"三割(30%)。

 主役である"レッドマウンテン"香りと酸味をしっかり主張させつつ、"ブルジ・サントス"のナッツ感と"クールビア・スプレモ"のコクで補強した、美味しく飲みやすい私お気に入りのブレンドだ。

 

「...美味しい...こういうの詳しくないからボキャ貧になっちゃうけど、インスタントとは全然違うのは分かる...」

「...大量生産品ではない、凝ったものはこうも違うのね。インスタントの香りと酸味と比べると、アレは単なるコーヒー感しかない...」

「"ふふ、お気に召したようでよかった"」

 

 二人の反応を受けて微笑む。インスタント系でも本格的なものに近付ける工夫はあるけど、選んだ豆をミルで挽いた時の香り、ドリッパーやサーバーを用意して温める手間、お湯を通して蒸らし、適切なタイミングでお湯を足してコーヒーがサーバーに満ちていく様子...手間がかかる事はある意味ロ(・)マ(・)ン(・)だと思う。

 

「普段は[妖怪MAX]か、粉末コーヒーだからホントに新鮮だね。...普段はこういう凝ったものを作れる余裕がないから」

「"...相変わらず"財務担当"としては忙しいみたいだね"」

「本当に大変だよ。――何度理由を説明してもすぐに予算を食い尽くしちゃうんだから。...熱意は理解するけど、偶には落ち着いて現実を見て欲しいよ」

 

 タカネは疲れた様にため息を吐く。以前何度か"当番"に来た時の雑談でも"エンジニア部"での苦労話が多いけど―――その表情はいつもと違ってど(・)こ(・)か(・)申(・)し(・)訳(・)な(・)さ(・)そ(・)う(・)だ。

 

「"...何かあったのかい?"」

「...そう言えば、今日はい(・)つ(・)も(・)よ(・)り(・)た(・)め(・)息(・)が(・)多(・)い(・)わね」

「...午前中、部長とニトリと喧嘩しちゃったんだ。この二人から上がってくる追加予算の申請が一番多いのはリカコも"先生"も知ってるよね。それで――――」

 

 私とリカコの指摘を受けたタカネは午前中『ミレニアム』で起きた事をぽつぽつと語る。―――予算が無くなったらタカネ(自分)に頼んで工面して貰えばいい。そんな思考に慣れてしまった二人の要求にとうとう我慢の限界が来てしまい、大声で怒って一方的に要求を蹴って『シャーレ』"当番"に来たらしい。

 

「――――ってことがあったんだ...落ち着いてきたら、言い過ぎたかなって後悔しちゃってさ...帰ったら二人とどう顔を合わせたらいいやら」

「...偶にはそうやって本気で怒ってもいいと思うわ。そうでもしなきゃあの二人はロマンを求め続けて止まらないんだから」

 

 話し終えてため息を吐いて項垂れるタカネの言葉に対しリカコはタカネの怒りを肯定する。―――怒った後で後悔や反省の想いを抱く辺り、彼女を取り巻く事情や苦境を考えれば怒っても仕方ないのに、タカネは優しい性格の様だ。それ故の苦悩でもあるのだろう。ここは―――

 

「"――タカネ。君はユウカに頼まれて、"エンジニア部"の青天井の予算を改善する為に転部したんだったね"」

「うん。...追加予算の申請出してばっかりで、『ミレニアム』財政の改善には大して貢献できてない有様だけど」

「"――今の立場に耐えられないなら、最悪"エンジニア部を辞めて"セミナー"に戻る選択肢もあると思う。それに、生徒会(セミナー)ならその権力を使えば"エンジニア部"の予算に圧力を掛けることだってできる筈――"」

 

 

「"――目的を中々果たせず、ウタハやニトリ達に振り回されるのが日常茶飯事なのに、タカネが今もエ(・)ン(・)ジ(・)ニ(・)ア(・)部(・)に(・)留(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)のは何故かな?"」

 

―――私の問を受け、タカネは考え込み始める。

 

―――『何故タカネを"エンジニア部"に移したか、ですか?...確かに青天井の予算を抑え込んで貰う狙いもあります。ですが...タカネは"エ(・)ン(・)ジ(・)ニ(・)ア(・)部(・)"が(・)性(・)に(・)合(・)う(・)と思っての計らいでもあるんです。

 施設部に居た頃、時々タ(・)カ(・)ネ(・)自(・)身(・)で(・)考(・)え(・)た(・)機材や治具の"エンジニア部"への製造申請を行っていました。一部はタカネが居なくなった施設部でも大いに役立っています。――自(・)分(・)で(・)ア(・)イ(・)デ(・)ア(・)を(・)考(・)え(・)て(・)形(・)に(・)す(・)る(・)才(・)能(・)。正に"エンジニア部"向きじゃないですか』

 

―――ユウカが"当番"に来たある日彼女に尋ねてみた、タ(・)カ(・)ネ(・)を(・)エ(・)ン(・)ジ(・)ニ(・)ア(・)部(・)に(・)送(・)り(・)込(・)ん(・)だ(・)意(・)図(・)。タカネは元々"セミナー"では"施設部"に所属していた。

 ユウカは施設部でのタカネの行動の端々から"エンジニア部"への適正を見出し、青天井の予算抑制も狙ってタカネを送り出している。果たしてタカネ自身は―――

 

「――"エンジニア部"は何(・)だ(・)か(・)居(・)心(・)地(・)が(・)い(・)い(・)から、かな。"セミナー施設部"以前から...小さい頃から物作りが好きでさ。ユウカに誘われて施設部に入って、既存の工具や機材じゃやりにくいなって思う時があって、自分で改善方法を考えたりしてたのもその延長になるのかな?

――ユウカから"エンジニア部"への転部要請とその目的を聞かされた時、内心じゃチャンスだって思ってた。...まぁ、転部してからは二人が知ってる通りの有様だったけど」

 

 思考を纏めたタカネは目を開き、そう理由と裏事情を明かし、『でも――』と続ける。

 

「――財政やってても、申請書に書かれた理由や選定された素材からでもどんな技術が、どんなアイデアが使われているかは何となく分かるんだ。

 リカコは頑丈軽量な素材とか高効率が期待できる燃料素材とかの購入申請が多くて、"個人が飛行できるジェットパック"実現の為に色々考えてるって分かる。偶に飛行実験も手伝ったりした時も、結果が悪くても次のアイデアを考えて...予算申請が現実的なのもありがたいけど――アイデアの実現に熱心なのは尊敬するよ」

「...そう褒められると恥ずかしいわね」

 

 タカネはリカコの開発活動についての印象を語り、間近でそれを聞かされたリカコは少し頬を赤らめながら視線を少し逸らす。

 

「部長、コトリ、ヒビキが取り組んでる宇宙戦艦建造も、青(・)天(・)井(・)の(・)予(・)算(・)消(・)費(・)の(・)原(・)因(・)の(・)一(・)つ(・)だけど――『ミレニアム』の技(・)術(・)の(・)最(・)先(・)端(・)を走ってるのは確かだよ。よくもまぁあんなにアイデアをポンポンと出せるよ...それを取捨選択する前に全(・)部(・)作(・)っ(・)て(・)試(・)そ(・)う(・)と(・)す(・)る(・)から予算もすぐ食い尽くしちゃってるけど――宇宙戦艦なんてスケールが大き過ぎる夢を追い掛け続ける熱意は尊敬してる。

 ニトリも部長達と同じ私の頭痛の種だけど――アニメとかゲームのスーパーロボットを形にしようとする熱意はすごいよ。...部長達が予算を多く取り過ぎるせいでニトリが必要とする予算を出せないのは申し訳ないと思ってる。

 リカも"最強究極の戦車"を生み出すっていう熱意と、それを実現するアイデアを次々生み出す頭脳はすごいよ。...整備場のガレージに籠りっぱなしで時々安否は心配になるけど、あの娘もちゃんと"エンジニア部"の一員なんだなって申請書を見てると実感するよ」

 

 続けてウタハ達それぞれのの開発活動についてタカネはそう評価する。―――タカネの頭を悩ませる要因だけど、彼女達の熱意を評価しているし、その熱意を支援しようともしている。

 

「――皆(・)の(・)熱(・)意(・)は(・)理(・)解(・)し(・)て(・)い(・)る(・)し(・)、そ(・)れ(・)を(・)支(・)援(・)し(・)た(・)い(・)って想いは確かにある。ただ...ちょっとでいいから、部長達には周(・)り(・)に(・)も(・)目(・)を(・)向(・)け(・)て(・)配(・)慮(・)し(・)て(・)欲(・)し(・)い(・)んだ。各々の頭脳を自分の開発活動だけじゃなく、他の娘の為にも使ってほしい。

 そうすれば自ずと――"エンジニア部"そのものの活動の質も向上するだろうし、予算周りも楽になる筈だし、ね」

「...ふふ、ちゃんと私達のことを見ているのね」

 

 タカネはウタハ達へ求める事を挙げて締めくくり、コーヒーを飲み干す。リカコも微笑みながら同様にコーヒーを啜る。―――タカネはユウカから依頼された目的を果たせず苦労しつつも、彼女なりにしっかり"エンジニア部"の面々を見ている。

 

「――『ミレニアム』に戻ったら、一度部長達と顔を突き合わせて話しましょうか。各々の開発活動となるとのめり込み過ぎるきらいはあるけど、真剣に話せばきっと分かってくれるわ」

「――うん、そうする。午前中のこと、部長達に謝りたいし...ん?サナエからトークが...」

 

 リカコの提案にタカネが頷くと彼女のスマホから通知音が鳴る。タカネがスマホを取り出して画面を見る。

 

「――"当番"終わって戻ってきたら、"部長達が話したい"ってさ。...サナエが気を回してくれたみたいだね。時々愚痴も聞いてくれたし、つくづく留学生なのが惜しいね」

「本当にね。彼女のサポートのおかげで色々助かっていることもあるし、得難い人材よ」

「"流石サナエだね。――じゃあ、午後分の業務をパパッと終わらせちゃおうか"」

「は~い。...分室ができても、書(・)類(・)が(・)小(・)山(・)を(・)作(・)る(・)のはどうなってるんだろうね」

「ザッと見れば"連邦生徒会"発信のものが多い。...体よく書類を押し付けてるって噂は事実みたいね」

 

―――どうやらサナエはサナエでウタハ達とタカネについて話した様だ。"ゲーム開発部"と活動していた時もだったけど、彼女の気配りは頼りになった。そんな彼女の手配を無駄にしない為にも午後分の業務を再開するべくソファから立ち上がる―――

 

 

―――数日後―――

 


―――今日―――

 

金庫番タカネ

 "先生" 

 この前は私の話を聞いてくれ 

 くれてありがとう  

 

シャレ先

 どういたしまして 

 何か進展はあったかい? 

 

金庫番タカネ

 部長達も周囲の把握と配慮 

 が足りなかったって気付い 

 て反省してくれたよ 

 

 財政は相変わらず火の車だ 

 けど、少しは楽になったよ 

 おかげで私も開発活動を始 

 められるようになったんだ 

[光学迷彩デバイスのアイデアを書きなぐったメモの画像]

 

シャレ先

 そっか 

 私は話を聞いただけだけど 

 力になれてよかった 

 


 

「"――よかったね、タカネ"」

 

―――タカネとの『モモトーク』を終え、フッと口角が緩む。あの日、ウタハ達への愚痴や"エンジニア部"への想いを明かして吹っ切れたのか、彼女を取り巻く状況は改善しつつある様だ。

 

「――どうした"先生"?」

「"タカネがウタハ達と仲直りできたみたいでね。彼女自身も開発活動を始められたみたいだ"」

「...あぁ、予算絡みでタカネが我慢できなくてキレたって話か。毎度毎度口論してたってのに、改善したのか」

 

 初めて"当番"として来てくれたマリサの問いにそう答えると、彼女は驚いた表情を浮かべる。―――元"エンジニア部"であった身としては、タカネとウタハ達が抱えていた問題が改善したのは驚くべき事の様だ。

 

「"タカネなりにウタハ達のことはしっかり見ていたし、彼女自身ウタハ達を支援したいって意思があったからね。――今後もその関係が続くことを祈るよ"」

「是非ともそうであって欲しいな。――金庫番が煙たいのは解るが、ロマンだけじゃ形はできないからな」

 

 マリサは私の言葉に頷く。

 

―――予算の限界を知らない天才達(ウタハ、ニトリ達)と金庫番(タカネ)。その対立が改善されれば、"エンジニア部"より円滑な活動が出来る筈だ。

 

―――to be continued―――

 

*1:
元ネタ:コーヒー豆の銘柄『ブルーマウンテン』

*2:
元ネタ:コーヒー豆銘柄『ブラジル・サントス』

*3:
元ネタ:コーヒー豆銘柄『コロンビア・スプレモ』




ということで、エンジニア部グルストと言いつつ実質タカネ回でした。各人の掘り下げは追々...
さて、次回は特異現象捜査部です。

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