Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『廃墟』付近の駐車場跡~
side-ヒマリ
『――コンソール発見。部長、どうする?』
「調べてみましょう。このエリアのマップが見付かるかもしれませんから」
―――『廃墟』の地下、未踏エリアを進むエイミ、スミレコ、レンコ、メリー―――実働組をドローンで追随していると、エイミが埃を被ったコンソールパネルを見付けて
『了解よ。――周囲を警戒して』
スミレコの指揮でコンソール周辺に四人それぞれ警戒配置に付く中、ドローンをコンソールに近付ける。
「――アクセス開始。パスワード解析、システム侵入。...ふむ、これは...」
ドローンに備えたハッキングデバイスからハッキングを行い、コンソール本体のシステムとネットワークを解析する。―――相変わらず
「...マップは無さそうですが、どうやら現在地は何らかの工場の地下階層のようです。データのサルベージは終えたので、もう少し踏み込んだ解析を行うので、そちらはそちらで引き続き探索を進めてください」
『了解。じゃあこのまま行けるとこまで前進。...にしても工場ねぇ。生産ラインとかに何か残ってたりするかな』
『どうかしらねぇ。そもそも技術体系が今と全然違うから、私達がイメージする生産ラインがあるとは限らないし』
―――軽い考察の結果を共有し、その間にコンソールからサルベージしたデータの解析を始め、その傍ら探索を再開したスミレコ達の会話に耳を傾ける。
『そもそもなんでウチらがこんな探索してるんだか...
『スミ姉、部室でのブリーフィング聞いてなかったの?――"教授"は"シャーレ分室"の方がちょっと忙しいから、その代わりに調査してって言ってたじゃん』
『それにしたって調査範囲が曖昧よ。ザックリエリアだけ指定して、求める成果も指定なし。...これで成果なしで戻っても、ユメミなら小言は言わないのは幸いかしらね』
『御自身の研究室運営、"教授"として校内での講義、そして"シャーレ分室"責任者としての指揮...三つのタスクを熟すとなれば多忙にもなるでしょう』
『...部長が
スミレコの愚痴めいた呟きを皮切りに会話が始まる。―――『シャーレ分室』設置が公表された配信は私も見た。しかし、"先生"自らが考案したとは思えない、よく洗練された体制に疑問を感じて
そんなユメミが考えたシステムなら間違いは無いだろうと判断し、『シャーレ分室』に興味を抱いたレンコとメリーの加入を許している。
『流石ヒマリと並ぶ"全知"サマってところかしらねぇ。...そういえば、レンコとメリーは
『シャーレの"当番"に行ったことがあるなら分かると思うけど、あれの要請を
スミレコの問にレンコは遠い目を浮かべながらそう答える。―――分室設置で窓口が分散されたとは言え、そもそも舞い込む要請が膨大故に処理量が多い様だ。
『...この前"当番"に行った時に感じたけど、分室も
『"教授"が持つ権限を考えれば顧問である"先生"の判断は必要ね。それまではシャーレ部員と、今ある分室で頑張るしかない』
『でも正規部員は現状クロノスのハタテを最後に増えてない。...単発バイト的な"当番"は兎も角、正規の部員になると各々の学校、部活動に加えて負担が増すから手が出ないのかもね。ユウカなんてめっちゃ"先生"のこと気にしてるのに部員にはなってないし』
エイミの言葉にメリーが続けてそんな意見を挙げ、レンコが『シャーレ』正規部員の現状を挙げる。
『SRT』の"RABBIT小隊"や『クロノス』の『射命丸アヤ』と『姫海棠ハタテ』..."先生"の下に何人か人員は居るけど、それでも人手不足は未だ解消されたとは言えない。分室は"先生"の判断次第で増やすつもりの様だし、後は『シャーレ』そのものの部員も増やすべきだろう。
本人はバレていないつもりでも、レンコや周囲には既に"先生"への好意がバレているユウカの能力は『シャーレ』でも充分活かせるだろうけど、"セミナー会計"としての業務と
『――前方、壊れた扉を発見。奥には広い空間があるみたい』
『――ヒマリ、解析した情報には何かある?』
「――断片的で確度は低いですが、どうやら軍需品の生産工場だったようです。広い空間となれば生産ラインやそれに類する設備の遺構があるかもしれませんね。研究に使えそうな遺物でもあれば回収しましょう」
―――エイミが廊下の終点とその先を報告し、解析結果を吟味してスミレコの問いに答え、調査を指示する。――軍事技術はその文明の技術力の指標になる。例えスマートフォンや時計といったありふれたものでも、その中にはその時々の最先端の技術が詰め込まれている。
『了解。――それじゃあ、突入するよ』
エイミの音頭に三人とも頷き、空間に突入した四人に続いてドローンを空間に突入させる―――
~『廃墟』軍需工場跡 廊下~
side-エイミ
[[[Gi...!!]]]
「ちょ、アイツら撃ってきたって?!」
「――リロード完了!とりあえずヤバそうなドローンだけ落とす!」
―――警報が廊下に響く最中。マガジン交換を終えたレンコ先輩が振り向きざまに[
―――『...お?これだけ完品っぽいわね...これならユメミに渡すにもちょうどいいんじゃない』
―――『ちょ、スミ姉そんな安易に触るのは――』
―――私達が突入した空間は銃火器の生産ラインだった様で、製造中で止まった半端なものが大半だったけどそんな中でスタンドに設置された、オートマタが装備している完品のライフル。"教授"にサンプルとして渡すにはいいだろうとスミレコ先輩が触って取り上げようとした瞬間、警報がけたたましく鳴り響き、私達は工場内の警備戦力として配置されていたらしいオートマタやドローンに追われている。
「流石レンコ!――ヒマリ、脱出ルートは?!」
『現在策定中です。そちらは攻撃を凌げるセーフゾーンを見付けてください...!』
「はぁ?!無茶言わないでよ!」
『このエリアは未探索ですよ。誰もが認めるミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーであるこの私とて初見エリアの調査には少々時間を要します...!』
「...文句を言ってる暇があるなら少しでも数を減らそう。まだ距離はあるし――」
―――ダダァンッ!!
「――横からも来てたね」
部長の脱出ルート策定に時間が掛かる事に抗議するスミレコ先輩にそう言いながら[
「ナイスカバー、エイミ!...って言っても、ここらはパッと見隠れられそうな場所は――」
「...?」
―――ふと、メリー先輩が足を止めて左手の壁をじっと凝視し始める様子を視界に収める。
「――ちょっ、メリー?!足を止めないで――」
「――うん...やっぱりこの壁は...!」
―――メリー先輩が壁に触れて
「――か、壁が消えて部屋が...?!」
「...この既視感、『エリドゥ』を隠してた光学迷彩...?」
「――これはチャンス!皆入って!」
メリー先輩が暴いた横道に驚きながら、スミレコ先輩に急かされながら横道へ飛び込む―――
「――離れたっぽい?」
「――足音が遠ざかってるから、撒けたっぽいわね」
―――横道の終点、監視室らしき小部屋の中。オートマタやドローンの足音、駆動音が遠ざかっていき、耳を澄ましても警報音は聞こえず、警備戦力を撒けたと判断して一息吐く。
メリー先輩が暴いた横道を隠していた光学迷彩らしき壁は、私達が横道に飛び込んだ後に元に戻ったおかげで見失った様だ。つくづく『廃墟』が嘗て保有していた技術力の高さには驚かされる。
「...警報も止んでる。何とか凌ぐことはできたみたいだね。――スミレコ先輩、あんな無警戒に触っちゃダメだよ。普段の活動で
『エイミの言う通りです。ミレニアム最高の天才清楚系美少女ハッカーであり、雲の上に咲く一輪の花である私でも、盗難防止等のセキュリティが存在する可能性は考えていたというのに...』
「ご、ごめん...早く終わらせたかったし、システムも劣化して死んでるでしょって思ったから...」
スミレコ先輩を半目で見ながら部長と共に指摘すると、先輩は申し訳なさそうな表情を浮かべて動機を挙げる。―――先輩的には前者の動機が強いだろう。今回の調査では今の所
「まぁまぁ。とりあえず
「既に同様のサンプルを持っていたとしても、異なるアプローチで調査できるものね。あって損はないでしょう」
「ふ、二人ともありがとう...さて、警備は撒けたけど――」
レンコ先輩とメリー先輩がフォローする言葉を掛け、スミレコ先輩は気を持ち直して部屋を見回す―――
「――複数のディスプレイ、コンソール...監視室だったみたいだね」
「電源は...パッと見死んでるっぽいね。わざわざ出入口を光学迷彩で隠すなんて、一体どんなものを監視してたのやら...」
レンコ先輩が私の言葉に頷きながらコンソールのキーボードのボタンを適当に押すけど何も反応は無く、残念そうな表情を浮かべる。部屋には窓も無く、ディスプレイだけで外部を見ていたとは解る。部屋への出入口を隠す程だから、余程のものを監視、あるいはモニタリングでもしていたのだろうか。
『通電していればハッキングを試みれますが...っと、脱出ルート策定完了。この部屋の調査に進展がなければ離脱に移りましょう』
「了解。...うーん...側面のコレ、こじ開けてみる?」
「...スミ姉、背中の銃を回収した時のこと忘れた?無理矢理やったら何が起きるか...」
スミレコ先輩の提案にレンコ先輩が半目で言い返す。―――電源が消えていても、無理矢理開口部を作る様な行動は危険だろう。
「...そ、そうだったわね。――他に調べられそうなものもないし、離脱しましょうか」
「「了解(です)」」
「了解。部長、脱出ルートを私の端末に...もう送られてるね」
『隙一つないない完璧美少女であるこの私ですから。その位の配慮は当然のことです』
スミレコ先輩の言葉に頷き、各々準備を始める―――
~"特異現象捜査部"部室~
side-ヒマリ
「――まずは昨日の『廃墟』調査、お疲れ様。
―――『廃墟』調査を終えた翌日。エイミのおかげで相変わらず寒い部室で各々の席に着いている中スミレコが音頭を取る。昨日はメリーが見付けた監視室だった部屋のおかげでやりすごせたのか、脱出中はオートマタやドローンに襲われる事無く帰還する事が出来た。
「結局脱出中は
「あの時はメリー様様だったわね。あの部屋を見付けられなかったらあのまま廊下で追い詰められてただろうから」
レンコの言葉にスミレコは頷く。―――
レンコが持つ
―――
―――閑話休題。
「――さて、今日は予定通り
―――スミレコが本題へ話題を移し、コンソールを弄ってホログラムを展開する。
―――そうテーマが示され、私達が今まで収集、解析して来たデータや『アビドス』の『ビナー』の画像がホログラムで展開される。
「――
「...考察って言ってもそもそも情報が少ないじゃん。
「『廃墟』では『デカグラマトン』に関する断片的な情報が見付かることがあるから、恐らく『廃墟』に『デカグラマトン』、あるいはそれに関わるものが存在してるとは思うけど...」
スミレコの言葉にレンコとメリーが難色を示す。
―――"特異現象捜査部"設立理由の一つである"『デカグラマトン』の調査"。まだ『廃墟』入域許可権限がユメミに与えられていなかった頃。彼女が度々
ただ、『デカグラマトン』の調査の最中に"無名の司祭"の存在に関する情報が見付かり、リオがそちらを優先する様になってから今まで調査は殆ど進んでいなかった。
「――情報が少ないのは事実です。しかし、調査を再開する前に今ある情報から分かることを分析しておくべきでしょう。それがこれからの調査で直面するであろう未知を解決する糸口になるかもしれませんから」
「そーいうこと。それじゃ、忌憚なく意見挙げて」
スミレコが私の言葉に頷き、私達に意見を求めて見回す―――
「...多分、『デカグラマトン』は
「分析を目的としたAIの類なら、研究施設とかの跡地にありそうね。無軌道に探すよりかはある程度絞れるかしら」
―――エイミが『デカグラマトン』がどの様な存在か推測を挙げ、スミレコは頷きながらコンソールのキーボードを打ってエイミの意見をメモする。
「さっきも言ったけど、『ビナー』も今のところ存在意義が不明だよね。"教授"のおかげで兵器としての性能は分かっているけど...そもそもいつから、何のために存在しているのか。ヘイローを持っていることも謎だよね」
「『シャーレ』の支援を受けた『アビドス』により倒され、現在は『カイザーPMC』が調査、研究を進めています。『ビナー』の調査、研究についてはユメミが成果の共有を取り付けているので、彼女に尋ねてみるのもいいでしょう」
レンコの意見にそう補足を添える。―――私達での『デカグラマトン』調査中、『ビナー』の名前や『デカグラマトン』に関わる存在としての示唆らしき痕跡を見付けているものの、具体的なものは分かっていない。『ビナー』は『アビドス』を襲う脅威であった為撃退、或いは討伐が優先されていた事も調査停滞の一因となっていた。
「『カイザー』そのものは信用ならないけど、『カイザーPMC』の
―――『こちらとしても、キヴォトス随一の頭脳と技術が集まるミレニアムの手を借りられるのはありがたい。状況解決後の調査も受け持っているが、我がPMCは研究調査が専門ではないし、な』
―――ユメミに『捜査担当の代表も交渉には必要よ』と言われ、彼女と共に『カイザーPMC』で
予算が枯渇し、なりふり構わない予算獲得の為にキヴォトス中の企業に営業して回った"エンジニア部"のおかげで『カイザーPMC』と渡りを付ける事が出来たのは僥倖だった。
『カイザー』らしからぬ誠実さに違和感を感じて
「...それから、『デカグラマトン』と共に断片的ですが――"ゲマトリア"も気になる存在だと思います」
「見付かってる情報的には『デカグラマトン』の研究を支援してた組織みたいだけど、それ以外のことはなにも分かってないものねぇ」
メリーが"ゲマトリア"について意見を挙げ、レンコが頷きながら頭を掻く。―――"ゲマトリア"もまた、『デカグラマトン』調査で見付かった痕跡から判明した存在だ。レンコが言った通り、『デカグラマトン』の研究を支援していたらしい事は推測出来ているものの、組織体制や関わりの深さ等は全く分かっていない。
「...意見が挙がれば挙がるほど、『デカグラマトン』の謎が深まるわねぇ。解明までの道のりは前途多難...」
「ですが――それと共に探究心も強くなるでしょう?未知を明らかにするのが私達の存在意義ですしね」
スミレコの言葉にそう返せば皆頷く。―――"科学的に解明しがたいとされる現象の追跡・研究"。それが"特異現象捜査部"の存在意義。未知を調べ、研究する事で未知を既知に変え、私達の糧とする。そうして文明は発展して来た。しかし私達の様な探求者が絶えない限り、
「――未知は怖いけど、同時に興味が湧くものでもある。特に非科学的事象――オカルトなら尚嬉しいけど...未知の探求そのものは楽しいものね。だからこそ"秘封俱楽部"を立ち上げたんだし」
「――"特異現象捜査部"に合流してから尚更サーチ力も調査力も高まったし、『デカグラマトン』だってどんなものか暴いてやりましょ」
スミレコとレンコの言葉に皆再度頷く。―――実際の関係は少し離れた血縁である従姉妹だけど、二人の思考は姉妹そのものの様に似ている。...過去を
―――閑話休題。
「――情報はまだまだ少ないですが、『デカグラマトン』をAIに類する存在と仮定し、『廃墟』の研究関連施設を重点的に調べる。今後の調査方針としてはこんなところでしょうか」
「ワンチャン
「――それじゃあ、『廃墟』調査は研究関連の施設を探して調査するってことで、皆いいわね?」
スミレコの確認の言葉に皆頷く。―――『廃墟』そのものも多くの未知、謎を孕んでいる。"特異現象捜査部"としては望むところだ。
「それじゃあ、方針決定!...今日はもう予定はないから、後は自由時間よ」
「ふむ、想定より若干早く終わりましたね。誰もが認めるミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーが居れば当然のことですが。――私とエイミは『シャーレ』"当番"のシフトがあるのでこれで失礼します。エイミ、行きますよ」
「了解」
スミレコの音頭を受けて時計を確認し、充分な余裕を持って『シャーレ』に向かえると判断し、車椅子を動かす。―――最近の『シャーレ』は、ミレニアムの超天才病弱美少女ハッカーとしての腕を跳ね除けるハッキングへの防衛反応が速くなりつつある。そこで、"当番"を通して直接"先生"を探る事も必要だろうと、予約システムに
ユウカの話では書類仕事は不得手らしいし、清楚系病弱天才ハッカーかつ、優しくて万能で「全知」である美少女の手があれば大助かりだろう。
「そう言えば一昨日あたり言ってたわね。いってらっしゃーい」
「いってらっしゃい、部長、エイミ。――さて...ちょっと噂を調べようかな」
「いってらっしゃい。道中お気を付けて。...レンコ。それって、"『ミレニアム』の地下には何かが居る"って噂のこと?あれは確か――」
私とエイミを送り出し、三人の会話を背に受けながら部室を出る―――
ということで、デカグラ編の伏線も仕込みながらの特異現象捜査部のグルストでした。
さて次回はおサボりメイドのメモロビです。