Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『ミレニアム』自治区 空テナントビル屋上~
side-カリン
「――"
『了解しました。そちらから
「...少し遠いけど、強奪したものを分配しているみたいだ」
―――向かい側のビル最上階の一角の窓。スコープを通して室内でスケバン達が何らかの物品を交換し合っている様子を確認して、屋上で待機している
―――『ミレニアム』自治区内のある企業からの依頼で、流通ルートで待ち伏せて襲撃を行い、商品や物品を強奪していくスケバンの勢力の拠点特定と排除を依頼された。
複数の小規模なグループで多方向から襲撃し、企業が付けた護衛の追撃と拠点特定を逃れる為に散会して裏路地や横道から離脱していく。スケバン達がバラバラに逃げて姿を晦ます事、他の小規模な依頼もあってエージェント全員で取り掛かる事も出来なかったおかげで依頼受領から二日掛かったものの、拠点を特定し今日の襲撃決行を迎えている。
『こちらも
『――こちら"
『バカ、声がデケェぞ
『――こちら"
アカネの通信に
『..."
『――こ、こちら"
『..."
『...了解』
『えっちょっ待っ――!』
―――
「――"
―――数秒して、スコープ越しの視界の端に小走りでポイントに付くウカビの姿を捉えて報告を挙げる。
『やはり..."
『さ、サボってなんかないよ...!て、敵地の真っ只中だし!警戒しながら移動してたからさ...!』
『サボってねぇなら自信持って答えろよ。声が震えてんのが立派な証拠だぞ』
『うぐっ...』
『――作戦通りの配置に付いたなら
『...分かってるよ。...毎度毎度
『何か言いましたか、"
『な、何でもない!...ほら!た、ターゲットが解散する前に早く仕掛けちゃおうよ!』
『...そうですね。では――各員、スタンバイ』
アカネの号令一下、スケバン達が集まっている部屋にスコープの視界を戻す。少し騒がしくしてしまったけど、幸いスケバン達が気付いている気配は無い。視界の端ではウカビも普段の気怠い目つきを鋭く細め、[
『――発破』
『おらァ!!掃除の時間だァ!!』
『いっくよー!』
―――
『――
『逃がす訳ないじゃん...!』
―――ドアを開けた先で待ち構えている
『――
『りょーかい!』
『了解しました』
『了解...』
二、三分でスケバン達は部屋や廊下で一人残らず倒れ伏す状況になり、息も吐かず余裕然とした
『了解しました。私は
「了解」
『襲撃見た時にも感じたけど、結構な人数だねー』
『アカネが吹っ飛ばしたおかげで分かりにくいが...パッと見ここは本拠地じゃなさそうだ。どっかにデカい拠点が――』
ピクッ...
「...ん?」
―――視界の端。
―――ダッ...!
『あっ?!ちょ、待って――』
「――こちら"
―――ウカビは背中を向けていた為すぐに対応出来ないと判断し、[
『――流石だな"
全滅させたから安心とはいかねぇぞ。いきなり目を覚まして抵抗する可能性は常に頭の隅に入れとけ』
『...了解。カバーありがとう、"
「どういたしまして。...捕縛が完了するまで、引き続き監視に当たる」
―――
「...優秀ではある。でも...
通信は繋がず、ウカビが捕縛を再開する様子を見守りながらポツリと独り言を零す。
―――
幸い、
「――私達が卒業すれば、次を担うのは
マイペースで、ちょっとデリカシーが足りない所はあるけど、
~『シャーレ』オフィスビル付近~
side-トキ
「...いやー、何で私の傍にちょこちょこ付いてくるのかなって思ってたけど――まさかトキと一緒に"当番"シフトとは思わなかったよ」
「――私は今回が初めての"当番"なので、『シャーレ』への行き方を熟知しているであろう貴女について行けば。...そう考えた結果です」
「...だったら、何か一言欲しかったかなぁ。変なこと聞いたら
―――私の隣を歩くウカビの言葉にそう答えると、彼女は少し眉を曲げてそう指摘する。私自身、コミュニケーションの取り方が
「――お、見えてきた。あそこが『シャーレ』のビルだよ」
「おぉ、あれが...最近分室が設置されたとはいえ、このビルの規模を『シャーレ』本体の人員で維持管理するのは大変では?」
ウカビが指差す先のビルを見上げてそんな印象を挙げる。―――『シャーレ』の多忙振りはリオ会長や"教授"、ヒマリ部長から聞いていたけど、『シャーレ』本拠点であるビルの規模は顧問である"先生"や部員の皆様以外にも、警備やインフラ管理...常駐する人員はより必要だと実感する。
「"先生"に、『クロノス』の記者二人、『SRT』の"RABBIT小隊"...明らか足りないよねぇ。"当番"は単発バイトみたいなものだし..."連邦生徒会"も設立するだけして運営は丸投げらしいし、大変だよ」
「...そう気になるのでしたら、"当番"ではなく正規の部員として加入すべきでは?」
「"当番"はまだしも、正規の部員は無理無理。"C&C"の任務もあるし、サボる暇もなさそうな環境はごめん被るよ」
私の問に対し、ウカビは手をひらひらと振りながらそう答える。
―――『エリドゥ』での一件以来、
「――おや。貴女達も今回の"当番"ですか?」
―――『シャーレ』ビル一階に構えられた『エンジェル24』なるコンビニの前。私達に向けられた声に気付いて顔を向ければ、赤いネクタイを締めた黒いシャツの上に『ゲヘナ学園』生徒会たる"
「その制服は...『ゲヘナ』"
「――同じく『ミレニアム』一年生、"C&C"エージェント『掃部ウカビ』だよ」
「"C&C"...確か、『ミレニアム』のメイド部兼特務部隊でしたか。――『ゲヘナ学園』二年生、"
予想通り"
「はい。本日はよろしくお願いいたします。――しかし、今の"
「えぇ。...おかげ様で
イロハ先輩はそう答えて気怠げにため息を吐く。―――その雰囲気からは
「――おっと、こんな場所で立ち話は迷惑になりますね。"先生"も待っているでしょうし、『シャーレ』部室に行きましょうか」
「...そうですね」
「そうだね。...さて、
既視感の原因を考察する暇も無く、イロハ先輩の提案に頷いてウカビと共にコンビニの隣にある『シャーレ』出入口に足を向ける―――
~『シャーレ』部室~
~♪
「"――はい。こちら『シャーレ』です"」
―――"先生"のデスクに備えられた電話から着信音が鳴り響き、"先生"はすぐ受話器を取る。
「"...うん。そちらこそお疲れ様、コノカ。それで、
"先生"は通話を終えて受話器を置いて椅子から立ち上がる。
「――"先生"、緊急任務ですか?」
「"うん。――『ヴァルキューレ』"公安局"からの救援要請"だ。"バラバラヘルメット団"と"カチカチヘルメット団"の抗争が勃発したそうでね。"公安局"総出で鎮圧にあたっているけど、沈静化には人手が足りないらしい"」
「...どっちもここらを根城にしてる"ヘルメット団"の中じゃ、そこそこ大きな規模の一派だな。最近小競り合いの情報は入ってきてたが、遂にやり合い始めたか...」
私達の向かい側のデスクに座って机上業務を進めていた"RABBIT小隊"の"RABBIT1"ミヤコさんの問に"先生"は依頼内容を説明し、"RABBIT2"サキさんが眉を顰めて事態の原因についてそう推測を挙げる。
―――『ヴァルキューレ警察学校』における最精鋭部署である"公安局"だけど、
"先生"と"RABBIT小隊"の
「――"先生"、私達も"当番"として任務への随行は可能です。先程の言葉から推測すれば、救援戦力は多い方が良いと愚考しますが」
「"いや、君達には少しの間
"先生"に同行を提案するけど、そう理由を挙げて"先生"は私達に『シャーレ』での留守番を依頼する。
「...その依頼みたいに、ここに依頼を持ち込んでくる可能性もあるしねー。留守番位なら任せてよ」
「ウカビさんに賛成ですね。...[無敵鉄甲虎丸]のような
そんな"先生"の言葉にウカビとイロハ先輩が揃って賛意を示す。挙げた理由はもっともだけど―――私のエージェントとしての直感が
「――承知しました。もし、私達の手が必要になりそうでしたら連絡を。すぐに参上します」
「"その時はすぐに連絡するよ。――ミヤコ、サキ。休憩中の二人も呼んで早速現地に向かおう"」
「――"RABBIT1"、了解」
「――"RABBIT2"、了解」
「いってらっしゃいませ。任務の成功を祈っております」
「いってらっしゃーい。皆頑張ってね」
「...留守は任せてください。お気を付けて」
"先生"が二人を連れて部室を出て行き、ウカビとイロハ先輩と共に見送る。
「――行ったね」
「――えぇ、行きましたね」
―――五分程経つと屋上からヘリのローター音が聞こえて遠ざかっていき、私と共に机上業務を再開していた二人の動きがほぼ同時に止まり、お互い頷き合う。一階テナントのコンビニ前が初対面だと言うのに、まるで
「――"ヘルメット団"には感謝しなければ。こうして
「――やっぱり同じ考えだった。一階のコンビニの前で出会した時から、何だかシンパシーを感じてたんだよね」
呆れの感情を隠しつつ、机上業務の手は止めず二人の会話に耳を傾ける。チラリと目を向ければ、ウカビは[
「シンパシー、ですか...。――ウカビさん。貴女にとっての
「――
「...えぇ、それは理解できます。銃撃戦、爆破テロ、強盗程度は
ゲームを立ち上げてプレイを始めたウカビが返した答えにイロハ先輩は本のページを捲りながら頷く。―――やはり『ゲヘナ』の治安の悪さはキヴォトスでも群を抜いている。生徒会たる"
「――そんな疲労を溜め込まない為にも、
周りからは"仕事を終わらせてからサボれ"なんて言われることもよくあるけど――私は、"
与えられた任務、仕事はこなさなきゃいけない。組織に属してる以上これは避けては通れない。でも――
[
「
イロハ先輩は理解出来ると頷き、次の問を投げかける。―――これは私も気になるものだ。リオ会長専属エージェントとしての立場を継続しつつ、"C&C"エージェントとして任務に従事する傍らでウカビのサボりが見付かり、ネル先輩やアカネ先輩に咎められる様子を度々見ていたけど、その後不満を零す事はあれど辞めようと言い出す様子は見た事がない。
「――最近は中々サボれないのは不満だけど、
「――恩、ですか?」
「うん。――私は最初からエージェントとして加わった訳じゃないんだ」
ウカビは"C&C"に加入した経緯を語り始める。
「"C&C"が"セミナー会長"直属の特務部隊であることは実質公然の秘密だけど、一応表向きには"メイド部"になってるんだ。エージェント以外の部員は私達エージェントの支援の傍ら実際にメイドらしいことをやってるしね。
――私は研究とか開発なんて面倒臭いし柄じゃないしでやる気はなかったし、でも帰宅部もなんか良くないなぁって思ってたら、"C&C"の部員募集ポスターを見て加入したんだ。...っと...後は放置でいいね」
ウカビは言葉を一度切り、[
「――メイドとして必要な技能を覚えるのはそこそこ大変だったけど、それが必要なものだったし頑張って、技能を修めた後は適度にサボりつつ一介のメイド部員として過ごしてた。
――そんな毎日が変わったのは、依頼を受けて家の清掃業務を終わらせた帰り道だった。...私をエージェントだと勘違いしたんだろうね。"ビリビリヘルメット団"のヤツらが『お礼参りだ!』なんて息巻いて二十人位で襲ってきたんだ」
「二十人...ただ一人に対して随分な数ですね」
「エージェントは精鋭だからね。
ウカビは一息吐いて眉を顰める。
「――助けを呼びたかったけど、アイツら粗悪だけどジャマ―なんて持っててさ。既に囲まれてたし、
「...それでも十人以上は一人で倒したんですね」
ウカビの言葉を聞いてイロハ先輩は驚いた様に眉を少し上げる。―――エージェントになる前から彼女には確かな実力が備わっていた様だ。
「いやー、あの時は色々運が良かっただけだよ。でも、その運も途中で尽きちゃってこのままボコられるかなって覚悟してたら――ネル先輩、今の"C&C"の
いきなり私の目の前に誰か降りて来て、銃声が聞こえて戸惑ってたら一人残らず倒れてたからビックリしたよ」
ウカビはそう言って懐かしむ様に目を細める。
「――で、先輩は私と、周りで転がってた私が倒した連中を見て『周りのはお前がやったのか?』って聞かれて、私は肯定した。そしたら、『お前、エージェントになれ。それだけやれるなら只のメイドにしておくにゃ惜しい』って誘われたんだ。
エージェントの多忙振りは噂で聞いてたし、面倒臭さも感じてたけど――それ以上に、私の実力が認められたのがなんだか嬉しかった。メイドとして依頼を熟しても、それを当然だと思って労いもしない
ウカビはそう締め括り、一息吐く。―――ウカビを誘ったのはネル先輩だった様だ。粗野で身長にコンプレックスを抱いているけど、人を見る才能は
「――興味深い経緯でした。エージェントは貴女にとって天職だったんですね」
「まぁね。...そういうイロハ先輩はどうなの?"C&C"とエージェントに似て忙しくて面倒そうな"
「私ですか。...生憎、ウカビさんのような劇的な出会いなんてものはありませんよ。治安最悪な『ゲヘナ』で身の安全を確保しつつ、且つサボれそうな環境として、何となく"
まぁ、日を追うごとに治安が改善する所か悪化していく有様を見て後悔もしましたが...幸い今の"
イロハ先輩はそう答えて目を細める。―――彼女も多少不満は抱きつつ、"
「――やっぱり、私達似てる所があるね」
「――えぇ、そのようですね。...貴女とは仲良くなれそうです。『モモトーク』IDを交換しましょう。人脈作りをして損はないですし、いつか『ミレニアム』に向かう機会があるかもしれませんから」
「お、いいね。その時は
お互いの身の上を明かしてより打ち解けたのか、スマホを取り出して『モモトーク』IDをお互いに交換する。
「よし、と...トキも交換する?」
「...いえ、私は遠慮しておきます。他校の生徒と人脈を築き、仲を深めることも結構ですが――それぞれ"先生"から与えられた仕事を終わらせるべきでは?」
ウカビが繋いだなら私は必要無いだろうと判断して彼女の提案を断り、二人のデスクにまだ積まれたままの厚さ約三センチ程の書類の束を見て指摘する。
「...こう見ると面倒臭くなるなぁ。まぁ、ゲームもまだ放置して大丈夫だしちょっとやるけど。そういうトキは進捗どうなのさ?」
「――私は
「――マジ?...ホントに終わってる」
「――随分と手際が宜しいようで。"C&C"、メイドとなると机上業務もお手の物ですか」
書類の束を見てうげぇと言いたげな表情を浮かべるウカビの問にそう答え、処理済みの書類の束を一瞥し、対する二人はそれぞれ驚いた表情を浮かべる。―――ウカビとイロハ先輩が話している間に私が"先生"から与えられた業務は終わった。
さて、少し休憩した後は何をしようか。折角だし、"先生"の人となりを把握する為にも部室の掃除、整理でも―――
「...あのさ、トキ。そっちのが終わったなら、私の書類も片付けてくれない?時間も余って暇でしょ?」
「――お断りします。...と言いたいところですが、折角のイロハ先輩と仲良くなれる機会です。今回は代わりましょう」
「え、いいの?!じゃあお願い!よーし、これでタップリサボれる...!」
ウカビの提案を
「少し表情に乏しく取っ付きにくい印象がありましたが...気配りができる良い
「ちょっと独特な所はあるけど、私なんかより手際は良いしね。私も先輩達も助かってるよ」
「...お褒めの言葉、ありがとうございます」
少し驚いた様に眉を上げつつ、微笑ましいものを見る様に目を細めるイロハ先輩の言葉にそう答え、ウカビの褒め言葉で少し心が上気する感覚を抑えつつスマホを取り出し、『モモトーク』を立ち上げる―――
「...(
そう考えつつ『モモトーク』の
―――
ということでお掃除メイドことウカビのメモロビでした。サボり繋がりでイロハも出してみました。ゲヘナ生全然登場してなかったし()
さて、次回はヴェリタスの二年生コンビです。