Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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今回はC&Cのおサボりメイドのメモロビです


File82.MR-KU~掃除の合間にひと時のサボりを~

~『ミレニアム』自治区 空テナントビル屋上~

side-カリン

 

「――"02(ゼロツー)"、配置に付いた」

『了解しました。そちらから目標(ターゲット)は見えますか?』

「...少し遠いけど、強奪したものを分配しているみたいだ」

 

―――向かい側のビル最上階の一角の窓。スコープを通して室内でスケバン達が何らかの物品を交換し合っている様子を確認して、屋上で待機しているアカネ(03)に報告する。

 

―――『ミレニアム』自治区内のある企業からの依頼で、流通ルートで待ち伏せて襲撃を行い、商品や物品を強奪していくスケバンの勢力の拠点特定と排除を依頼された。

 複数の小規模なグループで多方向から襲撃し、企業が付けた護衛の追撃と拠点特定を逃れる為に散会して裏路地や横道から離脱していく。スケバン達がバラバラに逃げて姿を晦ます事、他の小規模な依頼もあってエージェント全員で取り掛かる事も出来なかったおかげで依頼受領から二日掛かったものの、拠点を特定し今日の襲撃決行を迎えている。

 

『こちらも()()は整っています。後は――突入班、"00(ダブルオー)"、"01(ゼロワン)"。挟撃班"04(ゼロフォー)"、"05(ゼロファイブ)"。状況報告』

 

『――こちら"01(ゼロワン)"!リーダー(00)共々配置オッケーだよ!』

『バカ、声がデケェぞアスナ(01)...!』

『――こちら"04(ゼロフォー)"。逃走経路での待ち伏せ配置は完了しております』

 

 アカネの通信に()()が応答する。―――()()

 

『..."05(ゼロファイブ)"?ウカビちゃん、応答を』

『――こ、こちら"05(ゼロファイブ)"!こっちの逃走ルートも待ち伏せ完了だよ...!』

 

 ウカビ(05)の応答が少し遅れて入る。加えて、高性能なインカムはウカビが()()()()()()()も捉える。

 

『..."02(ゼロツー)"、"05(ゼロファイブ)"の位置を探ってください』

『...了解』

『えっちょっ待っ――!』

 

―――ウカビ(05)の声を無視して[ホークアイ(相棒)]を動かし、スコープで姿を探す。作戦通りなら、私の視界でウカビ(05)が見える筈だけど、()()()作戦会議で決定した待ち伏せポイントに姿()()()()―――

 

「――"05(ゼロファイブ)"、()()()()()()()()()()

 

―――数秒して、スコープ越しの視界の端に小走りでポイントに付くウカビの姿を捉えて報告を挙げる。

 

『やはり..."05(ゼロファイブ)"、()()サボっていましたね?』

『さ、サボってなんかないよ...!て、敵地の真っ只中だし!警戒しながら移動してたからさ...!』

『サボってねぇなら自信持って答えろよ。声が震えてんのが立派な証拠だぞ』

『うぐっ...』

 

 ウカビ(05)アカネ(03)の疑念を否定するけど、リーダー(00)が呆れを含んだ声色で咎めるとウカビ(05)はぐうの音を漏らす。

 

『――作戦通りの配置に付いたなら()()良しとしましょう。ですが、挟撃班として()()()()()()()()()()場合は――分かっていますね?』

『...分かってるよ。...毎度毎度()()()()()()()()()()()()さ。少しでも進めなきゃイベント遅れるし、少しでもやらないといけないのに...

『何か言いましたか、"05(ゼロファイブ)"?』

『な、何でもない!...ほら!た、ターゲットが解散する前に早く仕掛けちゃおうよ!』

 

 ウカビ(05)のボヤきを聞き咎めたアカネ(03)()()()()()()()()()()の問に対してウカビ(05)は慌てて取り繕う。

 

『...そうですね。では――各員、スタンバイ』

 

 アカネの号令一下、スケバン達が集まっている部屋にスコープの視界を戻す。少し騒がしくしてしまったけど、幸いスケバン達が気付いている気配は無い。視界の端ではウカビも普段の気怠い目つきを鋭く細め、[サボタージュ・メソッド(サブマシンガン)]を構えて待ち伏せの体勢に移る―――

 

 

 

 

『――発破』

 

ドォォォンッ!!

 

『おらァ!!掃除の時間だァ!!』

『いっくよー!』

 

―――アカネ(03)が屋上に仕掛けた[C4]が起爆してスケバン達が屯している部屋の天井が吹き飛ぶ。同時にリーダー(00)アスナ先輩(01)がドアを蹴り破って突入し、弾幕を浴びせる。天井(頭上)の爆発に加えて二人の突入ですっかり混乱したスケバン達が次々と撃ち倒されていくが、()()()()数人は無事なドア二つを目指して走り出す。けど、そのドアの先には―――

 

 

『――目標(ターゲット)確認』

『逃がす訳ないじゃん...!』

 

―――ドアを開けた先で待ち構えているトキ(04)ウカビ(05)の射線に飛び込み、私の視界からはウカビ(05)の射撃でスケバン達が撃ち倒される様子を確認する。

 

『――目標(ターゲット)殲滅完了。後はコイツらを縛り上げて引き渡しゃ終わりだ』

『りょーかい!』

『了解しました』

『了解...』

 

 二、三分でスケバン達は部屋や廊下で一人残らず倒れ伏す状況になり、息も吐かず余裕然としたリーダー(00)の指示を受けて各々動き出す。

 

『了解しました。私は依頼主(クライアント)と"セミナー保安部"へ報告を挙げると共に、護送車両を呼んでおきます。"02(ゼロツー)"はそのまま警戒監視を』

「了解」

 

 アカネ(03)の指示に応え、スコープ越しの視界でスケバン達に手錠を掛けていく三人と、スマホを取り出して電話を掛け始めるアカネ(03)の様子を見守る。

 

『襲撃見た時にも感じたけど、結構な人数だねー』

『アカネが吹っ飛ばしたおかげで分かりにくいが...パッと見ここは本拠地じゃなさそうだ。どっかにデカい拠点が――』

 

ピクッ...

「...ん?」

 

―――視界の端。リーダー(00)と会話を交わしながら手錠を掛けていくウカビの背後。彼女が倒したスケバン達の一人の頭上で()()()()()()()して身体がピクリと動いた様に―――

 

 

 

 

―――ダッ...!

『あっ?!ちょ、待って――』

 

 

―――ダァンッ...!

 

「――こちら"02(ゼロツー)"。目を覚まして逃走を図った目標(ターゲット)一名を再度無力化」

 

―――ウカビは背中を向けていた為すぐに対応出来ないと判断し、[ホークアイ(相棒)]で狙撃して気絶(無力化)された瞬間を見届け、ボルトを引いて排莢し次弾を込めながら報告する。

 

『――流石だな"02(ゼロツー)"。..."05(ゼロファイブ)"、()()詰めが甘かったな。人によっちゃぁ頑丈なヤツも居る。9mm(九パラ)は数撃てるが、威力(パンチ)は少し弱いしな。

 全滅させたから安心とはいかねぇぞ。いきなり目を覚まして抵抗する可能性は常に頭の隅に入れとけ』

『...了解。カバーありがとう、"02(ゼロツー)"』

「どういたしまして。...捕縛が完了するまで、引き続き監視に当たる」

 

 リーダー(00)の指摘に不満げな声色で応え、次いで私に謝意を述べる。

 

―――()()()()()はまだ改善の余地ありの様だ。"C&C"エージェントになれるだけの才能、実力はあるけど、そのパフォーマンスをフルに発揮した場面は殆ど見た事が無い。

 

「...優秀ではある。でも...任務(仕事)中でも構わず隙あらばサボりを図る点は改善してほしい所だ」

 

 通信は繋がず、ウカビが捕縛を再開する様子を見守りながらポツリと独り言を零す。

 

―――発破をかければ(尻を叩けば)動くけど、()()()()()()()()()()でもなければ自分から動く事はしない。そんな"有能な怠け者"タイプであるウカビ(05)

 幸い、アカネ(03)()()()()()()()脅しや発破の掛け方を熟知しているおかげで()()()()()()()()()()()()任務中のトラブルは起きていないけど―――

 

 

「――私達が卒業すれば、次を担うのはトキ(04)ウカビ(05)だ。せめてトキ(04)みたいに...」

 

 マイペースで、ちょっとデリカシーが足りない所はあるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()自分のやりたい事をやる04(トキ)の様に立ち回れれば。そんな個人的な願いは空に消える―――

 


~『シャーレ』オフィスビル付近~

side-トキ

 

「...いやー、何で私の傍にちょこちょこ付いてくるのかなって思ってたけど――まさかトキと一緒に"当番"シフトとは思わなかったよ」

「――私は今回が初めての"当番"なので、『シャーレ』への行き方を熟知しているであろう貴女について行けば。...そう考えた結果です」

「...だったら、何か一言欲しかったかなぁ。変なこと聞いたら()()()()だからって日和った私にも非はあるけどさ」

 

―――私の隣を歩くウカビの言葉にそう答えると、彼女は少し眉を曲げてそう指摘する。私自身、コミュニケーションの取り方が()()()()()()()()()()()()自覚はあるけど、ウカビもコミュニケーションが得意という訳では無いようだ。

 

「――お、見えてきた。あそこが『シャーレ』のビルだよ」

「おぉ、あれが...最近分室が設置されたとはいえ、このビルの規模を『シャーレ』本体の人員で維持管理するのは大変では?」

 

 ウカビが指差す先のビルを見上げてそんな印象を挙げる。―――『シャーレ』の多忙振りはリオ会長や"教授"、ヒマリ部長から聞いていたけど、『シャーレ』本拠点であるビルの規模は顧問である"先生"や部員の皆様以外にも、警備やインフラ管理...常駐する人員はより必要だと実感する。

 

「"先生"に、『クロノス』の記者二人、『SRT』の"RABBIT小隊"...明らか足りないよねぇ。"当番"は単発バイトみたいなものだし..."連邦生徒会"も設立するだけして運営は丸投げらしいし、大変だよ」

「...そう気になるのでしたら、"当番"ではなく正規の部員として加入すべきでは?」

「"当番"はまだしも、正規の部員は無理無理。"C&C"の任務もあるし、サボる暇もなさそうな環境はごめん被るよ」

 

 私の問に対し、ウカビは手をひらひらと振りながらそう答える。

 

―――『エリドゥ』での一件以来、リオ会長の側周り(元々の役目)以外にも"C&C"エージェントとしてウカビ達他メンバーと共に任務に臨む様にもなってから、気になっていた事がある。一度留年してしまっているけど、一応一年生(同級生)であるウカビ。共に任務に従事したり、先輩方から聞いた話を通してウカビを見ていると―――

 

 

 

 

「――おや。貴女達も今回の"当番"ですか?」

 

―――『シャーレ』ビル一階に構えられた『エンジェル24』なるコンビニの前。私達に向けられた声に気付いて顔を向ければ、赤いネクタイを締めた黒いシャツの上に『ゲヘナ学園』生徒会たる"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の腕章を付けた黒いコートを羽織り、お手入れが大変そうなもこもことした赤い長髪に"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の制帽を被った生徒が私達の下に近付いて来る。

 

「その制服は...『ゲヘナ』"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の方ですか。――『ミレニアムサイエンススクール』一年生、"C&C"エージェント『飛鳥馬トキ』と申します」

「――同じく『ミレニアム』一年生、"C&C"エージェント『掃部ウカビ』だよ」

「"C&C"...確か、『ミレニアム』のメイド部兼特務部隊でしたか。――『ゲヘナ学園』二年生、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議員の『棗イロハ』です。今回はよろしくお願いします」

 

 予想通り"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の議員だという、イロハ先輩と挨拶を交わす。―――今の"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)議長"は情報収集能力に長けているという噂がある。私達"C&C"についてもある程度情報を探っている様だ。尤も、エージェントの存在は、リオ会長曰く抑止力も兼ねて秘匿しているものではないけど。

 

「はい。本日はよろしくお願いいたします。――しかし、今の"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"は、『ゲヘナ』の治安が()()()()()()()ことにより、"風紀委員会"と同等かそれ以上に多忙だと聞いていますが」

「えぇ。...おかげ様で()()()()も中々見付かりませんよ。その点"当番"は()()()()()()()()になり得ますが、シフト予約は相変わらず熾烈。今日のシフトなんて、三週間以上前に取れた予約ですからね」

 

 イロハ先輩はそう答えて気怠げにため息を吐く。―――その雰囲気からは()()()()()()()()()を感じられる。

 

「――おっと、こんな場所で立ち話は迷惑になりますね。"先生"も待っているでしょうし、『シャーレ』部室に行きましょうか」

「...そうですね」

「そうだね。...さて、()()()()()()()はどんなものかなー」

 

 既視感の原因を考察する暇も無く、イロハ先輩の提案に頷いてウカビと共にコンビニの隣にある『シャーレ』出入口に足を向ける―――

 

 

~『シャーレ』部室~

 

~♪

「"――はい。こちら『シャーレ』です"」

 

―――"先生"のデスクに備えられた電話から着信音が鳴り響き、"先生"はすぐ受話器を取る。

 

「"...うん。そちらこそお疲れ様、コノカ。それで、シャーレ(ここ)に電話してきたってことは...うん...ふむふむ...数、規模は?......成程。それは戦力が必要だね。――分かった。ちょうど今手空きの"RABBIT小隊"を連れて現地に向かうよ。それじゃ"」

 

 "先生"は通話を終えて受話器を置いて椅子から立ち上がる。

 

「――"先生"、緊急任務ですか?」

「"うん。――『ヴァルキューレ』"公安局"からの救援要請"だ。"バラバラヘルメット団"と"カチカチヘルメット団"の抗争が勃発したそうでね。"公安局"総出で鎮圧にあたっているけど、沈静化には人手が足りないらしい"」

「...どっちもここらを根城にしてる"ヘルメット団"の中じゃ、そこそこ大きな規模の一派だな。最近小競り合いの情報は入ってきてたが、遂にやり合い始めたか...」

 

 私達の向かい側のデスクに座って机上業務を進めていた"RABBIT小隊"の"RABBIT1"ミヤコさんの問に"先生"は依頼内容を説明し、"RABBIT2"サキさんが眉を顰めて事態の原因についてそう推測を挙げる。

 

―――『ヴァルキューレ警察学校』における最精鋭部署である"公安局"だけど、()()()()()()()()()()()の影響を未だに引き摺っていて、()()()()()管轄である『D.U.』内での重犯罪や大規模事件への対応力が低いと聞いている。

 "先生"と"RABBIT小隊"の()()()()()()()()を見るに、『ヴァルキューレ』からの緊急要請は()()()()()()()()()()様だ。

 

「――"先生"、私達も"当番"として任務への随行は可能です。先程の言葉から推測すれば、救援戦力は多い方が良いと愚考しますが」

「"いや、君達には少しの間()()()をお願いするよ。...アヤかハタテが居たらトキの言う通り、君達も追加戦力として連れて行きたかったけどね。生憎二人とも別件で遠出しているから"」

 

 "先生"に同行を提案するけど、そう理由を挙げて"先生"は私達に『シャーレ』での留守番を依頼する。

 

「...その依頼みたいに、ここに依頼を持ち込んでくる可能性もあるしねー。留守番位なら任せてよ」

「ウカビさんに賛成ですね。...[無敵鉄甲虎丸]のような()()()()が手元にあれば考えましたが、私自身()()()()()()ですし」

 

 そんな"先生"の言葉にウカビとイロハ先輩が揃って賛意を示す。挙げた理由はもっともだけど―――私のエージェントとしての直感が()()()()()()()()()()と反応している。..."RABBIT小隊"の実力は『エリドゥ』での一件で見知っている。"公安局"の戦力に不安はあるし、"RABBIT小隊"だけの救援で解決出来るのか心配になるけど―――留守番が必要なのは確かだし、救援要請は"先生"と彼女達に任せよう。

 

「――承知しました。もし、私達の手が必要になりそうでしたら連絡を。すぐに参上します」

「"その時はすぐに連絡するよ。――ミヤコ、サキ。休憩中の二人も呼んで早速現地に向かおう"」

「――"RABBIT1"、了解」

「――"RABBIT2"、了解」

「いってらっしゃいませ。任務の成功を祈っております」

「いってらっしゃーい。皆頑張ってね」

「...留守は任せてください。お気を付けて」

 

 "先生"が二人を連れて部室を出て行き、ウカビとイロハ先輩と共に見送る。

 

 

―――タタタタ...>

 

「――行ったね」

「――えぇ、行きましたね」

 

―――五分程経つと屋上からヘリのローター音が聞こえて遠ざかっていき、私と共に机上業務を再開していた二人の動きがほぼ同時に止まり、お互い頷き合う。一階テナントのコンビニ前が初対面だと言うのに、まるで()()()()()()()()息が合っている。

 

「――"ヘルメット団"には感謝しなければ。こうして()()()機会を作ってくれたんですから」

「――やっぱり同じ考えだった。一階のコンビニの前で出会した時から、何だかシンパシーを感じてたんだよね」

 

 呆れの感情を隠しつつ、机上業務の手は止めず二人の会話に耳を傾ける。チラリと目を向ければ、ウカビは[ゲームアンドガールズSP(ゲーム機)]を取り出し、イロハ先輩は小説らしき本を取り出している。

 

「シンパシー、ですか...。――ウカビさん。貴女にとっての()()()()()はどんなものですか?」

「――()()()()()()()()()、かな。...これでも"C&C"エージェントだからさ。その役目と仕事はしっかりこなすべきだとはちゃんと自覚してる。最近は治安悪いし尚更ね。でも――()()()()()()()()()()()()()()()()。緊張は必要だけど、気を張り詰め続けてると気を緩めた時の反動がすごいんだよね」

「...えぇ、それは理解できます。銃撃戦、爆破テロ、強盗程度は()()()()()とは言え、その対応を終えても()()()()()()()()()()()()()――『ゲヘナ』ではこの連続と毎日。その日の仕事が終わって一息吐くと、一気に()()()()()()()()()()()()()()が湧いてきますから」

 

 ゲームを立ち上げてプレイを始めたウカビが返した答えにイロハ先輩は本のページを捲りながら頷く。―――やはり『ゲヘナ』の治安の悪さはキヴォトスでも群を抜いている。生徒会たる"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"も例外無く多忙な様で、それが日常的となるとイロハ先輩の言う通り疲労も溜まるだろう。

 

「――そんな疲労を溜め込まない為にも、()()()()()()()()()って重要だと思うんだ。緊張を解せるし、思考を整理する機会にもなる。

 周りからは"仕事を終わらせてからサボれ"なんて言われることもよくあるけど――私は、"()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()"と思うんだ。

 与えられた任務、仕事はこなさなきゃいけない。組織に属してる以上これは避けては通れない。でも――()()()()()()()()()()()()()()()()()()よりは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()方がいいと思わない?」

 

 [ゲームアンドガールズSP(ゲーム機)]の画面を見ながらボタンの上で忙しなく動く指先を止めず、ウカビは持論を挙げる。―――ウカビに対して抱く疑念の正体、ウカビがイロハ先輩とすぐに打ち解けた理由が理解出来た。私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()スタンスだから、ウカビの考え方とは合致しない訳だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今の『ゲヘナ』の治安では中々難しいですが、それを目指したいのは私も同様ですね。――貴女は今の役職を辞めたいと思ったことはありますか?サボりの隙がなかったり、度々咎められたり、思うように過ごせずストレスを感じていたり...そんな不満はありませんか?」

 

 イロハ先輩は理解出来ると頷き、次の問を投げかける。―――これは私も気になるものだ。リオ会長専属エージェントとしての立場を継続しつつ、"C&C"エージェントとして任務に従事する傍らでウカビのサボりが見付かり、ネル先輩やアカネ先輩に咎められる様子を度々見ていたけど、その後不満を零す事はあれど辞めようと言い出す様子は見た事がない。

 

「――最近は中々サボれないのは不満だけど、()()()()()()()()()よ。サボりが見付かると怒られるけど居心地は良いし...()()()()()()()()()があるから」

「――恩、ですか?」

「うん。――私は最初からエージェントとして加わった訳じゃないんだ」

 

 ウカビは"C&C"に加入した経緯を語り始める。

 

「"C&C"が"セミナー会長"直属の特務部隊であることは実質公然の秘密だけど、一応表向きには"メイド部"になってるんだ。エージェント以外の部員は私達エージェントの支援の傍ら実際にメイドらしいことをやってるしね。

――私は研究とか開発なんて面倒臭いし柄じゃないしでやる気はなかったし、でも帰宅部もなんか良くないなぁって思ってたら、"C&C"の部員募集ポスターを見て加入したんだ。...っと...後は放置でいいね

 

 ウカビは言葉を一度切り、[ゲームアンドガールズSP(ゲーム機)]をデスクに置く。

 

「――メイドとして必要な技能を覚えるのはそこそこ大変だったけど、それが必要なものだったし頑張って、技能を修めた後は適度にサボりつつ一介のメイド部員として過ごしてた。

――そんな毎日が変わったのは、依頼を受けて家の清掃業務を終わらせた帰り道だった。...私をエージェントだと勘違いしたんだろうね。"ビリビリヘルメット団"のヤツらが『お礼参りだ!』なんて息巻いて二十人位で襲ってきたんだ」

「二十人...ただ一人に対して随分な数ですね」

「エージェントは精鋭だからね。実力()で勝てないなら数の暴力で...って思ったんだろうね」

 

 ウカビは一息吐いて眉を顰める。

 

「――助けを呼びたかったけど、アイツら粗悪だけどジャマ―なんて持っててさ。既に囲まれてたし、戦う(やる)しかなかった。あの時は射撃訓練を適当にやってたことを後悔したよ。それでも、一人一人は大して強くなかったから何とかなりそうだったけど...最悪なことに途中で弾が尽きちゃってね。その時点でリーダーっぽいヤツ含めて六人は残ってたっけなぁ」

「...それでも十人以上は一人で倒したんですね」

 

 ウカビの言葉を聞いてイロハ先輩は驚いた様に眉を少し上げる。―――エージェントになる前から彼女には確かな実力が備わっていた様だ。

 

「いやー、あの時は色々運が良かっただけだよ。でも、その運も途中で尽きちゃってこのままボコられるかなって覚悟してたら――ネル先輩、今の"C&C"のリーダー(部長)が救援に来てね。残り六人を()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 いきなり私の目の前に誰か降りて来て、銃声が聞こえて戸惑ってたら一人残らず倒れてたからビックリしたよ」

 

 ウカビはそう言って懐かしむ様に目を細める。

 

「――で、先輩は私と、周りで転がってた私が倒した連中を見て『周りのはお前がやったのか?』って聞かれて、私は肯定した。そしたら、『お前、エージェントになれ。それだけやれるなら只のメイドにしておくにゃ惜しい』って誘われたんだ。

 エージェントの多忙振りは噂で聞いてたし、面倒臭さも感じてたけど――それ以上に、私の実力が認められたのがなんだか嬉しかった。メイドとして依頼を熟しても、それを当然だと思って労いもしない依頼主(クライアント)に当たってばかりだったしね。エージェントなら、面倒臭さを我慢しながら努力した報いもあるかもしれない...私は先輩の誘いに乗って、エージェントとしての今に至ってるってワケ」

 

 ウカビはそう締め括り、一息吐く。―――ウカビを誘ったのはネル先輩だった様だ。粗野で身長にコンプレックスを抱いているけど、人を見る才能はリーダー(00)たり得るものだ。面倒だとは思いつつ、与えられた仕事、任務は熟す。―――ウカビにはよく合う水だった様だ。

 

「――興味深い経緯でした。エージェントは貴女にとって天職だったんですね」

「まぁね。...そういうイロハ先輩はどうなの?"C&C"とエージェントに似て忙しくて面倒そうな"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"に今も居るのさ?」

「私ですか。...生憎、ウカビさんのような劇的な出会いなんてものはありませんよ。治安最悪な『ゲヘナ』で身の安全を確保しつつ、且つサボれそうな環境として、何となく"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"を選んだだけです。

 まぁ、日を追うごとに治安が改善する所か悪化していく有様を見て後悔もしましたが...幸い今の"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"は議長以下議員、他役職持ちは総じて優秀なので。少しであればサボっても問題はありません。...純粋に尊敬してくれる可愛い後輩も居ますしね。居心地は悪くありません」

 

 イロハ先輩はそう答えて目を細める。―――彼女も多少不満は抱きつつ、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"が性に合っている様だ。

 

「――やっぱり、私達似てる所があるね」

「――えぇ、そのようですね。...貴女とは仲良くなれそうです。『モモトーク』IDを交換しましょう。人脈作りをして損はないですし、いつか『ミレニアム』に向かう機会があるかもしれませんから」

「お、いいね。その時は()()()()()()()サボり場所を教えるよ」

 

 お互いの身の上を明かしてより打ち解けたのか、スマホを取り出して『モモトーク』IDをお互いに交換する。

 

「よし、と...トキも交換する?」

「...いえ、私は遠慮しておきます。他校の生徒と人脈を築き、仲を深めることも結構ですが――それぞれ"先生"から与えられた仕事を終わらせるべきでは?」

 

 ウカビが繋いだなら私は必要無いだろうと判断して彼女の提案を断り、二人のデスクにまだ積まれたままの厚さ約三センチ程の書類の束を見て指摘する。

 

「...こう見ると面倒臭くなるなぁ。まぁ、ゲームもまだ放置して大丈夫だしちょっとやるけど。そういうトキは進捗どうなのさ?」

「――私は()()()()()()()()

「――マジ?...ホントに終わってる」

「――随分と手際が宜しいようで。"C&C"、メイドとなると机上業務もお手の物ですか」

 

 書類の束を見てうげぇと言いたげな表情を浮かべるウカビの問にそう答え、処理済みの書類の束を一瞥し、対する二人はそれぞれ驚いた表情を浮かべる。―――ウカビとイロハ先輩が話している間に私が"先生"から与えられた業務は終わった。

 さて、少し休憩した後は何をしようか。折角だし、"先生"の人となりを把握する為にも部室の掃除、整理でも―――

 

 

「...あのさ、トキ。そっちのが終わったなら、私の書類も片付けてくれない?時間も余って暇でしょ?」

「――お断りします。...と言いたいところですが、折角のイロハ先輩と仲良くなれる機会です。今回は代わりましょう」

「え、いいの?!じゃあお願い!よーし、これでタップリサボれる...!

 

 ウカビの提案を()()()受け入れると、彼女は喜色を浮かべてデスクの書類を私の方に移す。

 

「少し表情に乏しく取っ付きにくい印象がありましたが...気配りができる良い同級生(同僚)ですね」

「ちょっと独特な所はあるけど、私なんかより手際は良いしね。私も先輩達も助かってるよ」

「...お褒めの言葉、ありがとうございます」

 

 少し驚いた様に眉を上げつつ、微笑ましいものを見る様に目を細めるイロハ先輩の言葉にそう答え、ウカビの褒め言葉で少し心が上気する感覚を抑えつつスマホを取り出し、『モモトーク』を立ち上げる―――

 

 

 

 

「...(イロハ先輩(ゲヘナの生徒会)と人脈を築けた。()()()()()()をしても等価でしょう)」

 

 そう考えつつ『モモトーク』の()()()()()―――

 


―――今日―――

 

トキ@C&C04

 アカネ先輩 

 ウカビについて内密な 

 報告があります 

 

 シャーレにて―――― 

 


 

 

―――()()()()()()()()()()()()()にトークを送る。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということでお掃除メイドことウカビのメモロビでした。サボり繋がりでイロハも出してみました。ゲヘナ生全然登場してなかったし()

さて、次回はヴェリタスの二年生コンビです。
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