Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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オラトリオ3章解禁されたので初投稿です。よくて次のライブで発表、最悪年内更新無しかと思ってたけど、しれっと告知されてたまげたぜ。
そして日曜にスバルが紹介されてもっとたまげたぜ!5周年アニバのキービジュにスバルが追加されてて更にたまげたぜ!!

 とりあえずストーリーはちゃんと完結してよかった!団長とマイアが居なかったら、スバルの審判への後悔が無かったらラッパ娘が大変なことになってたなコレ...公正な審判者の成立にならなくて良かった。
まさかの登場生徒にも驚いたけど、エデン条約での遺恨の清算がされてて良かった...!設定的に逃亡生活状態だったのも解消されたし、今後のイベントにもアリウスは楽々顔出せるぞー!とはいえ、銃撃爆破が日常なれど警察が"いつものことだし..."で済ませていいのか...キヴォトス人的にはアリスクのやらかしはそんな重く捉えるものでは無さそうやね。キヴォトスでは『悪意』と『殺意』が重要みたいだし。
そして棘が取れた途端面白くなりやがってスバル...!ハーモニカでヘビメタは無理じゃね?超絶技巧は動画で見た事あるけども。

さて、エデン条約編のプロットに悩みながら、ヴェリタスの天才の双璧のメモロビです。


File83.MR-YM~ヴェリタスの双璧~

~『ミレニアム』本校 "ヴェリタス"部室~

sideーマキ

 

「...あー、ここか。そりゃ違和感を感じる訳だ。――ハレ、ログはどうだ?」

「――うん、マガンの言う通りだね。受け取ってる変数に異常値が出てる。マガン、直せる?」

「コイツならユニット交換ですぐだ。...こりゃ設計変更を考えなきゃな。まさかこんな異常が出るとは...」

 

―――グラフィティを描く場所を吟味しているあたしの背後。一緒に[アテナ3号]の修理を進めているハレ先輩とマガン先輩の会話に何となく耳を傾ける。朝、部室に集まった時から[アテナ3号]の動き、反応が鈍く、先輩二人が顔を突き合わせて原因調査を行っていた。どうやら原因が特定出来たみたいで、カチャカチャと修理の音が聞こえる。何となく気になり、椅子を回して二人の方に向く。

 

「先輩達、[アテナ3号]直りそう?」

「あぁ。少し予想外の箇所だったが...よし、とりあえず修理はできた」

「――デバッグもOK。[アテナ3号]、再起動」

 

―――フォォン...

 

〈――[アテナ3号]、起動。ステータスに異常なし。マスター、マガン。修理感謝します〉

 

 ハレ先輩の指示を受けてセンサーに光が灯り、聞き慣れた浮遊音と共に再起動した[アテナ3号]が謝意を述べる。

 

「おぉ、直った!」

「よし、大丈夫そうだな」

「うん、無事に直ってよかった...ありがとう、マガン。貴女が居なかったら、私だけじゃ時間が掛かってたと思う」

「...それはこっちのセリフだ。お前のログ解析がなきゃ、私も原因が分からなくて手間取ってただろうだからな」

 

 [アテナ3号]が万全の状態になった事を確認して安心した表情を浮かべ、お互いに謙遜する。―――度々見かけるこんな感じのやり取りを見ていると、ある疑念が湧いて来る。

 

「――先輩達って、自分の才能を誇ろうとしないよね。ミレニアム(ここ)で成果を一番挙げているのは先輩達なのにさ」

 

―――技術の最先端を走り、青天井の開発意欲でトラブルも度々起こすおかげで"エンジニア部"の方が有名だけど、『ミレニアム』内ではもちろん、チヒロ先輩の営業で内外の企業から依頼された製品やシステムも請け負って納めているのは目の前の二人だ。

 AI設計や内部システム―――()()()()()()()()()()ハレ先輩と、機体設計や機能設計―――()()()()()()()()()()マガン先輩。一人一人でも沢山成果を出していて、この二人が一緒に設計したものはエンジニアでもあるリオ会長も手放しに称賛する程の成果を出している。ハレ先輩の相棒である[アテナ3号]がその最たる成果の一つだ。

 

―――それなのに『ミレニアム』内では兎も角、外では二人の名前、名声は殆ど聞いた事が無い。”エンジニア部"の方が有名であるにしても、だ。グラフィティが褒められればあたしだって嬉しくなるのに、二人が称賛を求める様な素振りも見た事が無い。

 

「自慢したところで、後で空しくなるだけだからね。それに、ミレニアム(ここ)は科学技術の学校。私達が得意とする技術はその一部でしかない」

「私達はただ、自分ができることで貢献しているだけだからな。デカい声で誇るようなことじゃないさ」

「うーん...そういうものなのかなぁ。あたしから見れば二人は有名になっておかしくない位にすごいのに...」

 

 変わらない謙虚な答えを聞いて、ここまで謙虚になれる精神やスタンスがよく分からず頭を掻く。

 

〈――マスター、マガンの成果を検索。両名の成果はミレニアム自治区内のインフラ管理用ドローンや警備ドローン。依頼を出した諸企業へ納めたシステムやドローン。多くが『ミレニアム』内外により良い影響を与えています。これら成果は、両名の才能によるものと喧伝しても妥当であると判断します〉

「[アテナ3号]...相変わらず余計なお世話を...」

 

 会話を聞いていた[アテナ3号]がホログラムで先輩二人が挙げた成果を次々投影しながら私の意見に同調し、ハレ先輩が困った様に眉をひそめる。

 

「マキ、[アテナ3号]の言わんとすることも分かるが...これは私達の性格みたいなものだ。成果を堂々誇れる程傲慢にはなれない」

「...分かった。そういうことにしておくよ」

 

 マガン先輩も変わらず謙虚で、この二人の謙虚さは変わらないと飲み込む。―――()()になれば率先して前に出るマガン先輩が、普段はこうして謙虚な様子を見ているとそのギャップに戸惑う事がある。でも―――

 

「...っと、そうだ。[アテナ3号]、今日見に行く映画の上映時間は?」

〈――上映時間は10:35を予定しています。今から出発すれば、二十分以上の余裕を持って到着できるでしょう〉

「んじゃ、そろそろ出るか。っつー訳でマキ、私達はこれから出掛ける。留守番は頼むぞ」

「はーい。行ってらっしゃい!」

 

 先輩二人がそう言って立ち上がり、外出の準備を始める。

 

「今回の映画は()()()だといいな」

「ネットで出回ってる口コミ、レビューは良い感じだが...」

 

―――準備を進めながら会話を交わす二人を見ていると、幼馴染の親友である仲の良さを実感出来る。あれだけ沢山の成果を挙げられるのは、この仲の良さも一因なのだろう。

 

 


~『ミレニアム』自治区第三商業区 ショッピングモール内~

side-ハレ

 

「...マガン。映画を見てどう思った?」

「私か?...ストーリーは定番だったが、演技も描写もデカい予算を投じてるだけのものはあったな」

 

 沢山のお客さんで賑わう複合ショッピングモールのメイン廊下。私の問に対してマガンはそう答える。私も同じ感想だけど、()()は―――

 

「私も大体同じ感想。でも――()()()()()()()()()()がある」

「...何となく()()()()()が、一応聞こうか」

「――()()()()()()()()()()()()()()()

「...あぁ、知ってたよ。お前なら不満だよな」

 

―――私が零した不満を聞いてマガンは()()()()()()()呆れた様な表情を浮かべる。

 

―――映画のストーリーはザックリ説明すれば、ハッカーである主人公が偶然重要な機密情報を入手してしまい、敵である秘密結社から追われるようになり、銃撃戦を繰り広げたり、持ち前のハッキング技能で追跡を振り切ったりして、最終的に秘密結社を壊滅させる構成だ。

 ストーリーはありきたりだったけど、役者も有名所を沢山起用していたし、ハッキングの様子をゲームのダンジョン攻略みたいな表現で視聴者に見せたりして演出も結構良かった。

 ただ―――肝心のハッカーの描写だけが不満だった。脇役、ポッと出のチョイ役だけならまだ耐えられたけど、よりによって主人公もハッカーだったおかげで()()()()()が悪目立ちしていた。

 

「――まず、カウンター仕掛ける時に煽り目的で敢えて痕跡を残すなんてナンセンス。痕跡を残そうものなら、そこから手口を推測されて特定されかねないじゃん。プロのハッカーを名乗るなら、どうハッキングされたか相手に悟らせないようにしなきゃ。

 それに、ハッキングのやり方がパソコンで遠隔しかやってないのもおかしい。あんな描写じゃどうやってバックドアを仕込んだのか分からないよ。後――――」

 

 私が列挙する不満点に対し、マガンは『おう』とか『そうだな 』とか適当に聞き流す様な空返事を返す。同じハッカーなのに共感が薄い。それも不満に感じて来て―――

 

「――マガン、ちゃんと聞いてる?貴女はあの描写に不満を感じないの?」

「ちゃんと聞いてるよ。確かに、ハッカー(本職)だから違和感は感じたさ。でもな――」

 

―――マガンは私の不満を肯定し、私に顔を向ける。

 

「――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もんだ。嘘ばっかも良くねぇが、適度にフィクションや誇張を盛るからこそ、物語として面白くなるんだぜ。...映画(娯楽)でまで現実(生々しいリアル)を見せられちゃ、たまったもんじゃないだろ?」

 

 マガンの意見を受けて少し脳内でイメージしてみる。普段私達がハッカーとして考えている事、ハッキングでのトラブルや苦労を映像で見せられたら―――

 

「...確かに、気持ちのいいものじゃないね」

「だろ?...それに、プロのハッカーは自分の腕をひけらかさないって言うなら、私達(本職)が知ってる実態と違う方が尚更良い。手の内がバレちまったら、最悪人物まで特定されちまって終わりだからな」

「...そうだね。――ごめん。描写が酷くてムキになっちゃった」

 

 マガンの言葉に納得して不満で湧き上がった気持ちも落ち着いて来て、マガンに謝る。

 

「気にするな。...そういうムキになる所はチビのころから変わってねぇからな。慣れたもんだ」

「...そんなことない。私だって高校二年生(女子高生)になったし、ちゃんと成長してる」

 

 マガンの言葉に頬を膨らませて抗議するけど、彼女はニヤリと笑う。

 

「...ほら、身体は成長しても精神(中身)は変わっちゃいねぇ。そうやって頬を膨らませてるのがいい証拠だ」

「...むぅ」

「イテッ...悪ぃ、ちょっと茶化しすぎたな」

 

 恥ずかしさを誤魔化そうとしてマガンを肘で軽く小突けば、彼女は素直に謝る。―――茶化したりするけど、気を悪くしたと察したら引き下がって謝る。こういう気配りや気遣いが出来るから私はマガンを嫌いにはなれない。

 

「分かってくれるならいい。でも...うん、そうだね。――あのエナドリ一本奢ってくれたら、水に流してあげる」

「...あぁ、この前欲しがってた[妖怪MAX]の新フレーバーか」

 

―――丁度通りかかったコンビニの店頭に並ぶエナドリ系の飲料だけを陳列した冷蔵棚の中で目立つ[妖怪MAX]の新フレーバーを指差して要求すると、マガンは察した様に眉を上げる。

 

「発売間もないのもあって近くのコンビニじゃ全然売ってないし、通販もまだだったからね。"ストロベリーチョコ"フレーバーなんて名前からして甘ったるそうでエナドリ系でも珍しいし、どんな味か気になって仕方なかったんだ」

「これくらいならお安い御用だが...またチヒロ先輩に叱られても知らねぇぞ」

 

 マガンと共にコンビニに足を向け、冷蔵棚から目的のエナドリを取り出しているとマガンは呆れた様に眉を八の字に曲げる。

 

「エナドリは活力剤。カフェイン無しじゃ頭が働かないからね。チヒロ先輩だってコーヒーよく飲んでるし、私だけが叱られるのは理不尽だよ」

「お前の場合は摂取量(キメる量)がヤベぇんだよ。カフェインの致死量知ってるか?」

「約五千ミリグラム(5000mg)――五グラム(5g)以上。ちゃんとそれは弁えてるよ」

「おう、この前()()()()()()()()()()のエナドリの本数キメて、()()()()()()()()癖に弁えてるなんて宣えるなお前...」

 

 マガンはやれやれとため息を吐きながらも、私の手にある[妖怪MAX(エナドリ)]を()()()()()()()()()セルフレジに向かう。チヒロ先輩だったら眼鏡のレンズを光らせて取り上げてからのお説教コースだっただろう。幼馴染同士だからこそでもあるだろうけど―――

 

 

 

 

...何だかんだ私に甘いから好きだよ、マガン

「――何か言ったか?」

「...何でもない。ゴチになるよ、マガン」

 

 そんな個人的な呟きはコンビニ内の喧騒に消える―――

 

 


~同ショッピングモール内 ゲームセンター~

 

 

―――ダダダダ...!

 

「うぉッ?!」

「――マガン、大丈夫?!」

 

―――マガンが遮蔽として身を隠しているアーケードゲームの筐体から顔を覗かせた瞬間、沢山の銃弾が飛んで来る。咄嗟に顔を引っ込めたマガンに顔を向けて安否を確認する。

 

「あぁ、ギリギリ助かったぜ!...ったく、あんだけ銃弾(タマ)をばら撒くなら、その金で挑戦するか最悪店員に頼んで調整してもらえっての...!」

「...そんな理性的なことができるなら()()()()()()()()()()()でしょ」

「おぅ、そうだな。――[アテナ3号]、射撃音からアイツらの装備は分かるか?」

 

 マガンは頷きながら[アイ・シューター(ハンドガン)]のマガジンを交換しながら私達の傍に()()浮かんでいる[アテナ3号]に尋ねる。

 

〈――射撃音の音紋解析完了。使用銃器は[MPXーK]のみ、銃弾は低品質の[9mmパラベラム通常弾]と推測します〉

「...[MPXーK(サブマシンガン)]だけか。装備的にはどこの勢力でもねぇ木っ端不良だな」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな台パンの過激バージョンをしでかす位だしね。...それなら私達でもやれるかな」

 

 [アテナ3号]の分析からそう判断し、()()()()()()『シャーレ』"ミレニアム分室"としての任務遂行を決める。

 

―――『二人共、プライベート中にごめんなさいね。貴女達が今居るショッピングモールのゲームセンターで不良達がトラブルを起こしたの。店員、お客さんの避難はまだ途中だけど、貴女達が到着した頃には完了している筈。

――被害拡大を防ぐ為、ちょうど近場に居る貴女達に『シャーレ』"ミレニアム分室"として鎮圧を依頼するわ』

 

―――[妖怪MAX]の新フレーバーも買えたし、モール内のパソコンショップで更新出来そうなパーツでも探そうかとマガンと話し合っていたら、"教授"から要請された緊急の依頼。チヒロ先輩やヒマリ部長程ではないけど、充分上澄みのハッカー技能も持つ"教授"だから、事件が起きて調査中に監視カメラをハッキングでもして私達に気付いたのだろう。

 

―――『"シャーレ分室"、か。何だか面白そうだな。"当番"は相変わらず予約競争が激しいし、こっちで活動してみるのもいいかもな』

 

 『シャーレ分室』設置が公表されてすぐにマガンが興味を持ち、マガン(幼馴染)が興味を持つならと私も一緒に"ミレニアム分室"に加入した。最近は()()()()()()()()ようになった『シャーレ』への()()を通して多忙振りを知っていたけど、そもそも分室の設置数も少ないせいで『ミレニアム分室』に舞い込む依頼や要請も『シャーレ』本体程では無くとも結構多い。

 幸い、私達含めて分室に加入した部員数は多いし、手が足りないなら一時協力で他の生徒に依頼を回す体制も整えているおかげでパンクしないで済んでいるけど、こうして分室での活動に従事していると『ミレニアム』、ひいてはキヴォトスそのものの治安が悪くなっていると感じる。

 

―――閑話休題。今の状況は少しマズい。[アテナ3号]三機の内一機を飛ばして不良達(鎮圧対象)の立ち位置を把握しようとしているけど、様々な筐体が並んでいて良い感じの視界を確保出来るポイントが見付からない。

 

「――ハレ、アイツらの立ち位置は分かったか?」

「ちょっと良い感じのポイントを探すのに手間取って――[アテナ3号]、そこでOK!..."教授"の情報通り、数は四人。通路の直線上、二ブロック先のクレーンゲームブースに集まってる。紙袋にぬいぐるみとかフィギュアの箱も見えるね。...傍のクレーンゲームの筐体のガラスが割られているし、強盗も罪状に追加だね。さっさと逃げればよかったのに、強盗で時間が掛かったのかな」

 

 [アテナ3号]のアイカメラの映像を映すタブレット端末に映る不良四人の位置と状況を報告する。

 

「クレーンゲームブースか...しゃがみで移動して筐体に隠れていけば、回り込んで背後から奇襲できそうだな」

「...数的不利だし、映像だと側背の警戒もザルだから上手く刺さりそうだね。――囮は任せて。マガン程()()は得意じゃないけど、[オートエイマー(私の相棒)]なら...!」

 

 マガンの提案に頷き、傍に立て掛けている[オートエイマー(相棒)]を手に取ってマガジン内の残弾を確認してチャンバーに弾を込める。―――銃を撃つよりキーボードを打つ方が多いけど、少しでも楽をしようと、自作の自動照準システムを乗せている。シューティングレンジのパネル以外を撃つのは久しぶりだけど、マガンの作戦を成功させる為にも...!

 

「――私が仕掛けて不良達(向こう)が混乱したら、お前も仕掛けてくれ。挟み撃ちで逃げる余裕も与えさせねぇぞ。...よし、移動を開始する。"セミナー保安部"が来る前に鎮圧しちまおうぜ」

「了解、気を付けて...[アテナ3号]、作戦は理解したね?援護して」

〈――了解。作戦に基づきマスターの射撃支援を行います〉

 

 不良達の背後に回り込むべく移動を始めたマガンを見送り、[アテナ3号]に指示を出して[オートエイマー(相棒)]を構えて筐体の角に身体を寄せてスマホの映像を見る。

 

『...アイツら、出てこねぇな』

『ビビってるのか?...どうする?この隙に逃げるか?』

『――いや、こっちから仕掛けるべきだ。向こうは二人。こっちは四人...二倍だ』

『――やるか。数の差で突破してずらかるぞ...!』

 

―――[アテナ3号]の機体に備えている、()()()()()()集音デバイスが微かに、けど補正してしっかり不良達の作戦会議の会話を拾う。向こうが攻めるつもりなら...!

 

 

「――ッ...!」

 

タタタ...!

 

―――バッと通路に飛び出し、引き金を引いて牽制射を放つ。一瞬だったけど、前進しようとしていたらしい不良達が泡を食った様にクレーンゲームの筐体の影に引っ込む姿を確認する。

 

タタタ...!

 

〈――警告、残弾僅少。敵勢力の反撃前に身を隠すことを推奨〉

「了解...!」

 

 [アテナ3号]が銃撃数をカウントしていて、弾切れ寸前を報告する。提案に素直に従って射撃を止めて筐体に身を隠し―――

 

 

―――ダダダダ...!

 

「っと...隠れるのが遅れてたら蜂の巣だったね。さっきより激しく撃ってくるじゃん...」

 

 [アテナ3号]の提案に従った判断の正しさに安心しながらスマホの映像を見て不良達の様子を確認する―――

 

『おい、アイツら撃ってきたぞ?!』

『ど、どうするのさ?!』

『今は撃ちまくれ!それで引っ込んだままならさっさと逃げるぞ!』

『この弾幕ならアイツらも出られねぇ筈だ...!撃て撃て!』

 

―――まさかこちらが撃ってくるとは思っていなかった様で、一心不乱に[MPXーK(サブマシンガン)]で弾幕を張っている。激しい銃声がスマホのスピーカーからだけでなく私の耳にも直接届いていて、不良達は()()()()()()()()()()と察せる。

 

「少し撃っただけで慌てちゃって...()()()()()()()()()()()()()()()()()のかな。――今はその方が都合がいいけど」

 

 呟き、マガジンを交換しながら不良達の様子を監視していると―――[アテナ3号]の視界の端、ちょうど不良達の背後のクレーンゲーム筐体の影にマガンの姿を確認する。対して不良達はマガンに全く気付いていない。

 

〈――マガンの敵背後への展開を確認。挟撃の為、こちらでマスターに合図します〉

「了解。...マガン、頼むよ。私もできる限り頑張るから...!」

 

 [オートエイマー(相棒)]を構えて筐体の影に身体を寄せ、[アテナ3号]の合図―――マガンの奇襲を待つ―――

 

 

 

 

『――よう。後ろから邪魔する、ぜッ!!』

 

《Evil Eyes》

 

『『『『グワーッ?!』』』』

 

〈――マガンの奇襲を確認。攻撃開始〉

「――攻撃開始...!貴女達は逃がさない!」

 

 マガンが不良達の背後に躍り出ながら吼え、彼女のドローン(相棒)[サンダーアイズ]から黄色いレーザーが斉射される。それに合わせて私も通路に出て[オートエイマー]を撃ちながら不良達の進路を塞ぐ為に前身する―――

 

 

―――前には私。後ろにはマガン。綺麗に挟撃が決まった。

 

 

「...ぐふっ...」

「...チクショウ...」

「...数はこっちが上だったのに...」

「...クソ...!」

 

「――鎮圧完了。奇襲と挟み撃ちが綺麗に決まったな」

「――あっという間だったね...マガン、お疲れ様」

「ハレもお疲れさん。後は"保安部"が来るまで監視だ」

 

―――制服を被弾でボロボロにして倒れ伏す不良達四人。それを見下ろしながらお互いを労う。挟撃が決まってからはあっという間だった。[サンダーアイズ]のレーザーと[アイ・シューター]の銃撃、そして私の[オートエイマー]の銃撃で二分も掛からず四人を鎮圧出来てしまった。

 不良達の程度が低かった事も作用しただろうけど、()()が得意なマガンが居たからこそだろう。不良達が気付いていなかったとは言え、一対四でも臆さず攻めるのは流石だ。

 

「...っと、"教授"に報告しておくか」

「...別にいいんじゃないかな。カメラをハッキングでもして私達に気付いてたみたいだし、多分この鎮圧済の状態も――」

 

 

 

 

「――えぇ。()()()()()()()()()わ」

「――!」

「――まさか直接来るのは予想外だぞ」

 

―――"教授"に報告するべくスマホを取り出してたマガンにそう意見を挙げていると、"教授"の声が聞こえて来て、マガンと揃って驚きながらバッと声が聞こえた方に振り向けば、"セミナー保安部"の部隊を後ろに従えた"教授"が微笑みながら立っていた。

 

「ハレの推測は合っているけど、"私もモール(ここ)に来ていたから"も追加よ。――二人共よくやったわ。急な依頼にも関わらず応えて遂行してくれて感謝するわ」

 

 "教授"がハンドサインを挙げて"セミナー保安部"の部隊が不良達の捕縛と現場調査に動き始める中、"教授"は私達に謝意を述べる。

 

「どういたしまして。――『シャーレ』"ミレニアム分室"所属だからな。その任務を遂行するのは当然だ」

「急ではあったけど、任務を遂行できてよかった。"教授"の通報と――マガンのおかげだよ」

「...ふふ。変わらず仲が良いみたいね。『ミレニアム』内外で多くの成果を挙げる天才の双璧は伊達ではないわね」

 

 "教授"は私達の返事を聞いて目を細める。

 

「――さて、後処理はこっちでやるわ。報酬はもう入れてあるから、何か買いたいものがあったら使うといいわ」

「...お、ホントに振り込まれてるな。...この額ならグラボ新調できそうだな」

「...うん、一気に必要な分が入ったね。――せっかくの臨時収入だし、買いに行こうか」

 

 マガンと共にスマホの銀行アプリで報酬の振り込みを確認し、彼女が挙げた提案に頷く。―――前々からグラボ新調の為にお金は貯めていたけど、今回の報酬で必要な額に届いた。せっかくだから"教授"の提案通り買いに行こう。

 

「――それじゃあ、私達は行くぜ」

「えぇ、分かったわ。改めて、任務遂行に感謝するわ。これからもよろしく頼むわね」

()()は得意じゃないけど、任せて」

 

 "教授"と別れ、元々向かう予定だったパソコンショップがある方向に足を向ける―――

 


~『シャーレ』オフィスビル 外~

side-"先生"

 

ウィィン...

 

―――オフィスビル四階の窓を一機のドローンが洗剤を拭き付け、ワイパーで拭いていく。左右のまだ掃除されていない窓と比べると明らかに違うと解る程に汚れが落とされているのが分かる。

 

「挙動は良い感じだな。これならワイパーはもう少し大きくしても良さそうだが...ハレ、パラメータはどうだ?」

「――汚れ評価、洗浄比較、窓面積認識...全パラメータ良好。バッテリー、洗剤も今の容量と効率で一階層分の窓は掃除できそうだね」

「よし。――[窓拭き君]はこの仕様で行けそうだな。作業後の消耗具合を見て調整して量産すれば、『シャーレ』に窓拭きの人手は不要になる」

「"――二人共ありがとう。一週間位前に依頼したけど、まさか四日で試作機を仕上げてくるなんてね"」

 

 二人が満足そうに頷き、二人にお礼を述べる。

 

―――アヤとハタテから"窓の外側の汚れが溜まっている"と報告があり、当初は業者に依頼して清掃して貰おうとしていた。しかし、ビルが立ち並ぶ『D.U.外郭地区』では窓拭き業者も引く手数多で、清掃実施がかなり先になりそうだと試算を出された。

 内側は(数に対して人手が少ないのは兎も角)私達で掃除出来るけど、外側は難しい。空を飛べるアヤとハタテが居るけど、二人共飛行は得意でも滞空は苦手らしいし、この二人だけで全ての窓を拭くのは大変過ぎる。

 

―――そこで、"ヴェリタス"のハレとマガンがドローン開発を行っている事を思い出し、ダメ元で窓清掃用のドローンの開発を依頼してみた。

 "ヴェリタス"としての活動や"ミレニアム分室"での活動も考慮して期限は設けなかったけど―――まさか依頼受領から四日、"当番"シフトが入っていた今日試作機を持ち込んで来た事には驚いた。

 

「この位ならお安い御用さ。――後は、このまま窓を拭き終えられるか見ているだけだ」

「"分かった。――それにしても驚いたよ。まさか、依頼受領から四日で試作機を持ってくるなんてね"」

 

 マガンの言葉に頷き、窓拭きドローンを見上げながら四日で試作機を作り上げた速さへの驚嘆を挙げる。

 

「...ドローン開発は少し久しぶりだったんでな。ハレと二人して張り切ったら四日で試作機が出来上がっちまった」

「"ヴェリタス"――ハッカーとしての依頼が最近多かったからね。ドローンを一から設計する案件は久しぶりだったんだ。寝るのもつい忘れる位にはのめり込んじゃったよ」

「"...ちゃんと睡眠や食事は取ったかい?"」

 

 ハレの言葉を聞き咎め、質問する。―――四日は速いと思ったら、寝る間も惜しんで開発していた様だ。

 

「...一応最低限の食事(メシ)と睡眠は取ったぞ。というかアイデアが次々湧いてきて、眠気も空腹も感じなかったからな...」

「エナドリさえあれば、私はいくらでも動けるから大丈夫。..."先生"も私達のことは言えないんじゃない?――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よね」

「"...昨日の業務中に、()()()()()()()()()()()が報告されたけど...やっぱり君達だったか"」

「...お前、試作機出来上がった後、すぐに眠らねぇで何してるんだと思ったが...」

 

 ハレの返事を聞いてマガンと揃って半目で二人を見る。―――ハレの指摘は事実だけど、相変わらず"ヴェリタス"の一部の娘達――コタマ、ハレ、マキが主だ――は『シャーレ』への()()()()()を試みている様だ。...チヒロからは"部員が()()()()()()()()()なら報告して"と頼まれているから、後でコッソリ伝えておこう。

 

―――閑話休題。

 

「"――窓拭き用ドローンの開発、本当にありがとう。『シャーレ』は相変わらず人手不足。人の手を代替できる手段は幾らでも欲しいからね"」

「ドローンなら私とハレに任せてくれ。矛盾した無理難題は困るが、大体の要求仕様には応えるぜ」

「"頼りにさせて貰うよ。――二人は、昔から一緒にドローンを作っているのかい?"」

 

 マガンのささやかな営業に微笑み、気になっていた事を尋ねる。

 

「...小学校四年(小四)の頃だったか。プログラミングと、そこそこ自由に機体制作ができるロボットの開発キットを私が何となくの興味で買って、ハレが偶然それを見付けて一緒に作ろうって言ってきたのがキッカケだ」

「プログラミングも本格的じゃない、簡単なパッケージングされたものだったし、機体もブロックや簡素なフレームを組む程度のものだったけど――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――そんな瞬間を見たら楽しいって思ったんだ」

 

 マガンとハレは懐かしむ様に目を細めながら切っ掛けを語る。

 

「最初は二人してプログラミングと機体作成をやってたが、キットの難易度が上がるにつれてそれぞれ得手不得手が出てきてな。自然とプログラミング(ソフト面)はハレが、機体設計と制作(ハード面)は私で受け持つようになって、今に至っている」

「市販のキットから、環境を整えた上で一から開発するようになって、ドローン以外にも、色々なソフト、機器をそれぞれで開発したりするようになって――いつの間にか"ミレニアムの天才エンジニアの双璧"なんて噂されるようになったね」

「"そんな噂が流れるのも当然だね。――窓拭き用なんて、シャーレ(ウチ)位でしか求めないような仕様すら形にしてしまうんだから"」

 

 二人の言葉に頷き、もうすぐ四階の窓拭きを終えるドローンを見上げる。―――一人一人でも実績を挙げているけど、二人が組むとより良いものを生み出す。正に『ミレニアム』屈指の天才の双璧と言えるだろう。

 

「...そう褒められると恥ずかしくなるな。だが、私達の才能が役に立つこと程嬉しいことはねぇ。――さっきも言ったが、作って欲しいものがあったら遠慮なく依頼してくれ。"先生"との仲だ。他より安く請け負ってやるよ」

「ソフトでも機器でも、或いは二つを合わせた要求でも。――私達に任せて」

「"その時はよろしくお願いするよ、ハレ、マガン"」

 

 二人の言葉に微笑みながら頷く。

 

―――ユウカやノア、ニトリやリカコ、カリンやアカネ。『ミレニアム』の二年生は優秀な娘が多い。リオやネル、ヒマリ達が卒業してもきっと安泰だろう。

 

 

―――To be Continued―――

 

 

 

 

「"――あ、そうだ。あの窓拭きドローンには幾ら掛かったかな?"」

「っと、出し忘れる所だったな。――これが今回の費用だ。今回の試運転のフィードバックで、『シャーレ』に納める制式モデルはもう少し安くなるとは思うが...」

「"...うげっ...ま、まぁ...これ位なら大丈夫...かな?長期的に見れば安い...筈...!"」

「...そんなに()()()()()()()大丈夫?依頼内容に特に制限は無かったから、()()()()()()()()()を目指したんだけど...」

 

 




ということで、マガンのメモロビでした。

さて、次回からとあるイベントです。ヒントは今(投稿時期)の"先ちょ"です。
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