Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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赤冬新イベ解禁されたので初投稿です。オラトリオ3章の熱も冷めやらぬ内にしれっと告知されてたまげたぜ。出版部のタカネとヤクモ実装おめでとう!

イベントはSDスチルが沢山出て目福でしたわ。一年生組にも沢山フォーカス当てられていてよかった。初手からナギちゃんの平穏破られてて草。無許可開催はそりゃね...そんで結構武闘派だったウイ。今回はそりゃキレても仕方ないけど、しかし事を起こす前にシミコに〆られて草。
タカネとヤクモの考え方はこうして物書きやってると共感できる事が多いなぁ。ヤクモは口振り的に一度作家目指して挫折した経験がありそうで。一方的に負かされるよりは全力で戦ってスッキリ負けた方がよっぽど気分がいいのはよく分かる。

ということで忍術研究部イベ、序章です


File83.MS-HY~不忍ノ心-壱ノ段~

~『シャーレ』オフィスビル 部室~

side-ミヤコ

 

「"――ふぅ..."連邦生徒会"に提出する分は終わった..."」

「――お疲れ様です、"先生"」

 

―――書類の処理を終えて軽く背中を伸ばしている"先生"に労いの言葉を掛ける。

 

「"ありがとう、ミヤコ。...こうも紙ベースの書類が多いと大変だね。昔から書類仕事は苦手だし尚更..."」

「仕方ありません。紙書類であればハッキングで中身を見られるリスクを排除できますし、危険な状況になれば破ったり焼却で抹消できますから」

 

 "先生"のぼやきに苦笑しながらそう答える。―――全てをデジタル化する事にも、ハッキングによる覗き見や盗取のリスクが増える側面がある。削除しても、ゴミとなったデータからサルベージされた例だってある。この『シャーレ』でも度々()()()()()()()()()為、重要な書類は紙ベースになっているし、"連邦生徒会"で回されている書類は殆どが紙ベースだ。

 

「それにしては、"連邦生徒会"から送られてくる書類は多すぎる気がしますがねぇ。それらしい理由は付いていますが、本来連邦生徒会(あちら)()()()()()()()()()()もしれっと混ざっていますし」

「今の"連邦生徒会長"が"連邦生徒会()()()"として来てから()()()()()()()とは言え、その後遺症は未だに...ってところかしらね」

 

 私達と共に机上業務に勤しむアヤ先輩の言葉にハタテ先輩がそんな推測を挙げる。―――現"連邦生徒会長"である『八雲(ユカリ)』会長は大人相手でも臆さず交渉や駆け引きを行い、個性豊かな各室長を纏めている。何度か"先生"に随行して"連邦生徒会"オフィスビルに出向いてリン行政官やアオイ"財務室長"、アユム"調停室長"やモモカ"交通室長"、カヤ"防衛室長"...各室長に会った事があるけど、噂通りに個性的な方が多かった。そんな室長達を纏められる(ユカリ)会長のカリスマ性はかなりのものだと、『SRT』の生徒として彼女と対面していると実感する。

 

「招聘されるまで『百鬼夜行』生徒会"陰陽部"部長に就いていましたし、そこでの経験があっても...中々難しいんでしょうね」

「"...『百鬼夜行』か..."」

 

 アヤ先輩の言葉に"先生"は何か考え込む様な表情を浮かべる。

 

「..."先生"?」

「"――そろそろ、"シャーレ分室"を増やしていこうかと思っていてね。『SRT』、『ミレニアム』の各分室も問題なく活動できているみたいだしね"」

「それで、『百鬼夜行』に...という訳ですか」

 

 アヤ先輩の言葉に"先生"は頷く。―――『SRT』は特殊部隊を養成する学校だけど、"シャーレ分室"としての活動は実戦的な訓練としても役立っていると"教官"から聞いている。『ミレニアム』も体制の提案者である"教授"の下で順調に運営されている。

 

―――改善されてはいるけど、まだまだ一極集中状態である現状を変える為にも、分室の更なる設置は必要だ。しかし―――

 

「――『百鬼夜行』を選んだ理由をお聞きしても?」

「"...個人的な理由になるけど、()()()()()()()()()()()()()()()んだ。私は、()では『日本』って国で生まれ育ったんだけど――生徒達から聞いた話だと『百鬼夜行』の風土、文化はその()()()()()()()()()()なんだ。分室の追加と、『百鬼夜行』を直接知る為に――今回は『百鬼夜行』に行ってみたいんだ"」

 

―――"先生"は私の問にそう答え、懐かしむ様に目を細める。

 

「『日本』なる国も大変興味深いですが――『百鬼夜行』でしたら、私とハタテが少し案内できますね。小学校までは『百鬼夜行』内で通っていましたから」

「それに取材で時々行ってるし、今の時期はちょうど大きな祭りもやってるわ。観光客も楽しめる体験型で、名前は――」

 

 

 

 

―――カタンッ...

 

「――天井裏に未確認反応!」

 

―――微かに聞こえた、()()()()()()()()()()()()()()。即座に立ち上がって声をあげて通報しながら[RABBITー31式短機関銃(サブマシンガン)]を構えて"先生"の傍に付く。

 

「――部室(ここ)はビルの最上階よ。空を飛べる私達は兎も角...どうやって天井裏に...!」

「シッ、ハタテ静かに...!」

 

 

...カタ...ゴソゴソ...

 

 戸惑うハタテ先輩をアヤ先輩が黙らせると、再び微かに()()()()()()()()が聞こえる。音の移動から考えられるのは―――

 

「――侵入者は()()()()()()()()()()()を移動している可能性があります」

「だとすれば...出先は――」

 

 

ガタッ...!

 

―――瞬間、視線を向けた換気口が外れ―――

 

カランッ...

 

「――グレネードッ!!」

「"うわっ?!"」

 

ボフンッ...!

 

―――グレネードらしき小さな球体が落ちて来た事を確認し、"先生"を庇う為に押し倒した瞬間白煙が部室内に広がる。

 

「"ケホッ...え、煙幕...?!"」

ケホッ......アヤ先輩、ハタテ先輩!警戒を厳に!恐らくこの煙幕に紛れて――」

 

 

 

 

―――スタッ...!

 

「――"先生"、()()()()()()()()()()()よ!ハタテ!」

「了解...!」

 

 

ヒュオォッ...!

 

 何者かが降りて来た足音が聞こえたと報告しようとした瞬間、煙幕の中で先輩二人が翼をはためかせて風を生み出し、煙幕が一気に晴れて―――

 

 

 

 

「――()()()()()...?」

「そんな筈は...確かに()()()()()()を聞きました」

「じゃあ、一体何処に――」

 

―――しかし、風で飛び散った書類が舞い散るその場には私達だけが居るだけで、先輩二人と同様困惑しながら周囲を見回す―――

 

 

 

 

「ふっふっふ...!そっちには居ないよー!」

「ちょっ、部長?!声出しちゃ意味が...!」

 

「――ッ!!」

「――!」

「――誰?!」

 

―――ふにゃふにゃとした声と慌てた声が背後から聞こえ、咄嗟に振り向いて[RABBIT-31式短機関銃(サブマシンガン)]の銃口を向ける―――

 

「あっ、しまった...!()()()()()が綺麗に嵌まったから嬉しくて...!」

「バレてしまっては仕方ありません!――()殿()!『シャーレ』の皆さん!突然の来訪失礼します!」

「...えっと...その...こんな形での来訪になってしまい、申し訳ありません...!」

「...はぁ...相変わらずちょっと詰めが甘いんだから...」

 

―――灰色の髪をツインテールに結い上げ、狸の耳と尻尾を伸ばした生徒。茶髪のショートヘアに狐耳と尻尾を伸ばした生徒。インナーカラーが黄色い、紫色の長髪に兎の耳を伸ばした高身長でオドオドした生徒。

 そして―――首に赤いマフラーを巻き、赤いリボンタイを締めた黒い袖無しのセーラー服の上に黒い着物を羽織り、背中から三対の赤い鎌のような羽らしきものと青い矢印の様な羽を覗かせ、黒いミニスカートと黒いニーソックス、赤いスニーカーを履いた黒髪のショートボブの生徒が呆れた様にため息を吐く。

 

「"――イズナ...?ということは...その三人が"忍術研究部"の娘達なんだね。ミヤコ、アヤ、ハタテ!警戒を解いて大丈夫だ!"」

 

 何者なのかと戸惑っていると、"先生"は狐耳の生徒を見て『イズナ』と呼び、納得した様に声をあげる―――

 


side-"先生"

 

「"――『D.U.第四商業区』以来だね、イズナ"」

「はい!あの時はありがとうございました、主殿!おかげでイズナは道を誤らずに済みました!」

 

―――散らかった部室を片付け、イズナに声を掛けると彼女は嬉しそうに頷いて頭を下げる。

 

「――"先生"、お知り合いですか?」

「"この前、()()()()()()『D.U.第四商業区』であった商店街襲撃事件で出会ってね。...()()()()()()の為に詳細は伏せるけど、()()()()()()だったから助けたんだ"」

「『D.U.第四商業区』、"先生"が対応された...となれば、『ニャオモト・フード』の件ですね」

 

 アヤの問にそう答えると、彼女は事件について挙げる。

 

―――『D.U.第四商業区』は、ナンバリングに反して十年単位で経営を続けている古い商店が多く立ち並ぶ地区だ。ビルも殆ど無く、広々と空を見上げられる開放感と、年季が入った建屋の外観が不思議と懐かしさを思い起こさせる景観は個人的にお気に入りで、コーヒー豆の購入で懇意にしているコーヒーショップもこの地区にある。

 そこに、『ニャオモト・フード』が販路拡大の為に介入を図り、全ての商店にフランチャイズ契約を迫った。しかし、長く経営しているが故に愛着も強い各商店店主は一致団結して拒否。

 

―――契約を蹴った代償として『ニャオモト・フード』による()()()()()()()()()()()()()()()()()()のがイズナだった。どうもキヴォトスにおいてはフィクションという認識であるらしい忍者、忍術に並々ならぬ憧れを抱き、それがフィクションではないと示す為に依頼を求め、その結果『ニャオモト・フード』会長『ニャオモト・カン』に"あくどい商売をしている商店を破壊しろ"と唆され、その指示のまま破壊活動や襲撃を行い、それに泡を喰った商店街の理事会から『シャーレ』に鎮圧依頼が持ち込まれた。

 しかし、その時はミヤコ、アヤ達も、そして"当番"も別の依頼に出向いていて、私だけで()()なんて出来る筈も無いし、手が空くまでは調査に徹しようと現地に赴き―――そこで、ちょうど商店を襲っていたイズナに出会った。理事会からの情報と、イズナの行動理由が矛盾していると気付き、『ニャオモト・フード』に関する()も鑑みて、恐らく()()()()()()()()()()と推測して彼女を説得した。

 

―――『そんな...?!イズナは騙されていたんですか...?!』

―――『"ニャオモト・フード(君のクライアント)に関する情報は、ネットで少し調べただけでも()()()ばかりだ。商店街の皆さんの証言も考えれば――()()()()()()()()としか考えられないよ"』

 

 イズナは純粋で他者を疑おうとしない娘だった。それ故に『ニャオモト・カン』からの依頼の意図も考えず、"忍者、忍術を知らしめるチャンス"と唆されて素直に指示に動いていた様だった。イズナは騙されていたと知ってショックを受け、既に多くの商店を攻撃してしまっていた為、どうしたら償いになるのかと私に助けを求めて来た。

 そこでイズナを緊急招集の"当番"として指揮下に置き、商店街の皆さんに謝罪して回った上で『ニャオモト・カン』に()()()()()()()()()に協力して貰った。商店街が壊滅した様に見せかけ、『ニャオモト・カン』に"トドメを刺す瞬間を見せたい"と直接出向いて貰った所でイズナが護衛を排除。『ニャオモト・カン』は泡を食って逃げ出したけど、()()()()()()()()()()()で見付かり、商店街の皆さんが仕返しとばかりに『ニャオモト・カン』を囲んでボコボコにした上で『ヴァルキューレ』に引き渡し、事件は解決となった。事件への対応中に()()()()()()()()()()けど、『ニャオモト・フード』による強引な契約は無くなる筈だ。

 

「――『ニャオモト・フード』は利益最優先の悪徳企業として有名でした。しかし、不良による襲撃に見せかけて自身に従わない店舗を破壊して来たり、脅して泣き寝入りを強要して来た為に証拠不足で『ヴァルキューレ』でも逮捕には踏み込めず...まさか『ニャオモト・カン』が逮捕されるとは思いませんでしたよ。"先生"の報告を受けてすぐ取材に赴きましたが――そちらのイズナさんの名前は聞きませんでしたね」

 

 アヤはそう言ってイズナを見つめる。

 

―――『忍者とは古くから闇の世界で生きるもの...その存在は易々と知られていいものではないのです!ですから...どうか、イズナのことは周囲には黙っていていただけると嬉しいです』

 

 イズナは事件解決以来私を主殿と呼ぶ様になり、『D.U.』や『D.U.外郭地区』で出会すと護衛を買って出てくれる様になった。しかし、彼女の願いを尊重してイズナについてはミヤコ、アヤ達には伏せていた。純粋過ぎる所はあるけど、裏を返せばとことん誠実と言える性格であり、彼女が()()()()()()()()とは思わなかった為、黙っていてもデメリットは無いと判断したからでもあった。

 

「"――()()()()()()の為にも、言えないことがあるんだ。ただ...()()()()()()()()()()()()()()()。これだけは私が保障する"」

「...分かりました。"先生"が言うのであれば信用しましょう。――ですが、それと今の騒動は別問題です」

 

 アヤはそう言って眼差しを鋭くしてイズナ達を見る。―――確かにそうだ。イズナへの信用と、今回の『シャーレ』部室への侵入は別で考えなければならない。

 

「"そうだね。話を聞く前に――イズナ、その娘達は"忍術研究部"のメンバーで合ってるね?"」

「はい、主殿!イズナと同じく忍者、忍術について理解を深め、その技を探求する仲間達です!」

 

 イズナは私の問に頷き、三人を見回す。

 

「ふふふ、その通りー!私は"忍術研究部"部長、『百鬼夜行』三年生『千鳥ミチル』だよ~」

「初見の皆さんの為に改めまして!"忍術研究部"所属、『百鬼夜行』一年生『久田イズナ』です!」

「...お、同じく"忍術研究部"部員...『百鬼夜行』一年生、『大野ツクヨ』です...よろしく、お願いします...」

「――"忍術研究部"。『百鬼夜行』二年生、『封獣(ほうじゅう)ヌエ』。一応"副部長"もやってるよ。...部の皆がごめんね。私は一応止めたんだけど」

 

 イズナ含め"忍術研究部"の面々が自己紹介し、最後に自己紹介したヌエが申し訳無さそうな表情を浮かべて謝罪する。

 

「"ミチル、ツクヨ、ヌエだね。よろしく。――まずは、君達が『シャーレ』に来た目的を教えてくれるかな?"」

「はい!――イズナ達"忍術研究部"を()()()()()()とする為に、主殿――『シャーレ』に協力して欲しいのです!」

「...よく『シャーレ』に持ち込まれる類の要請ですね。ですが...それが、どうして()()()()()()()()()()に繋がるんですか?」

 

 イズナの答えを聞いてミヤコが尋ね、片付けで復旧した換気口の方を向いて見上げる。

 

「そ、そのー...私達は"忍術研究部"――忍者だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。あ、これがその手紙。忘れる前に渡しておくねー」

「...()()()()()で今の状況になったけどね。途中まで上手く行ってたのにさ」

「うぅ...ホントにごめんってばヌエー。あんなにバレないのが嬉しくってー」

 

 ミチルはそう答えながら懐から手紙を取り出して一歩進み出て私に手紙を差し出す。その背後でヌエが呆れた様に補足すると、ミチルは申し訳無さそうな表情を浮かべて謝る。

 

「...事情は理解しました。――"先生"、どうしますか?不法侵入は紛れもない事実ですが...」

「"――今回は不問にしよう。...四人共、これからは『シャーレ』に用事があったらちゃんと階下の玄関を使ってね。状況によりけりだけど、"当番"、依頼要請持ち込み以外で遊びに来ても歓迎するから"」

「はい!承知しました主殿!」

「分かったよー、先生殿」

「わ、分かりました...こ、今回はご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした...!」

「...噂通りだね。最悪蹴り出される覚悟はしてたけど、その優しさは助かるよ」

 

 ミヤコから判断を仰がれ、今回は不問にすると判断を下す。

 

「"――さて、改めて君達の話を聞こうか。あそこのソファに――"」

 

 

『――こちら"RABBIT2"。"先生"、買い出し任務から帰還したが...アポイントメントがない来客だ。百鬼夜行連合学院の"陰陽部"らしいが...』

「"――"陰陽部"?...分かった。とりあえず、部室にお通しして"」

 

―――インカムにサキからの報告が入り、取り敢えず部室に案内するようにと指示を出す。

 

「"忍術研究部"に"陰陽部"...今日は『百鬼夜行』の方がよく来ますねぇ」

「でもアポなしって...穏やかじゃなさそうね」

「"そうだね。――"忍術研究部"の皆、これから"陰陽部"の来客が来るんだけど――"」

 

「ど、どうしよう...この前()()()()()()()()()()()()ばっかりなのに...」

「...書類でダメなら直談判もいいんじゃない?」

「ヌエ殿に賛成です!直接話せばきっと...!」

「で、ですが...もし断られたら...」

 

―――"忍術研究部"の方に振り向いて声を掛ければ、四人が顔を突き合わせてひそひそ話をしている。

 

「..."忍術研究部"が()()()()()()()()()のは事実のようですね」

「"そうみたいだね。...とりあえず、失礼がないようにできる限り急いで片付けようか"」

 

 その様子を見たミヤコの言葉に頷き、足元に散らばる書類を拾っていく―――

 

 


side-アヤ

 

「――『百鬼夜行連合学院』三年生、"陰陽部"副部長兼"観光文化産業広報支援部"戦略リーダー、『桑上カホ』と申します。この度は急な訪問にも関わらず受け入れて頂き、感謝に堪えません」

「――同二年生、"陰陽部"史官*1兼"文書局"局長『稗田(ひえだ)アキュウ』と申します」

「"――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"。知己を得られて嬉しいよ"」

「――『クロノススクール』二年生、新聞部"所属、"文々。新聞"記者兼編集長、及び『シャーレ』"広報員"『射命丸アヤ』です」

「――『SRT特殊学園』一年生、"RABBIT小隊"小隊長『月雪ミヤコ』です」

 

―――"先生"、ミヤコさんと共に部室の応接ソファに座り、先端を束ねた長い金髪に狐耳を伸ばし、白地に黄金色を差した巫女服風の"陰陽部"制服を纏うカホさんと、紫色の丁寧に切り揃えられたショートボブに花飾りを留め、袖が無い黄緑色の上着、赤い袴風スカートの巫女服風の制服の上に花柄をあつらえた黄色い羽織を纏ったアキュウさんと自己紹介して頭を下げる。

 

「"――さて、"陰陽部"はどんな用があって来たのかな?アポイントメント無しで訪問したということは、単に遊びに来た訳じゃないね?"」

「...おっしゃる通りです。今現在、我々"陰陽部"の行動を()()()()()()()()訳にはいきませんので。私とアキュウの行動は休暇として()()()()()処理しております」

「"...何か事情がありそうだね。説明してくれるかい?"」

「はい。...その前に、一つ聞いてよろしいですか?」

 

 カホはそう言って私達の右側―――

 

「...うぅ...」

「"..."忍術研究部"の娘達がどうかしたかな?"」

「――屋上に()()()()()()()が紐で括り付けられて浮かんでいました。あの凧は...そちらの方々の道具だと記憶していまして」

「...あー...やっぱり見えちゃってたか。上手いこと風で流れて死角に隠れないかなって思ってたんだけど...その凧で屋上から換気ダクトに忍び込んだんだ、私達」

 

 カホさんが疑念の眼差しで"忍術研究部"の面々を見回すとミチルが緊張からか呻く様な声を零し、カホさんの言葉に対してヌエさんが頭を掻きながら観念した様に話す。―――私達の様に空を飛べないのにどうして部室(最上階)の換気ダクトに侵入出来たのか。どうやら凧に捕まって空を飛んで屋上に侵入したらしい。何とも()()()()()()()()()侵入方法だ。

 

「――どうやら、百鬼夜行(我が校)の生徒がご迷惑をお掛けしたようですね。申し訳ございません、"先生"」

「"侵入は問題だけど、彼女達は()()()()()()侵入した訳じゃないからね。今回は不問にするよ"」

「...ご厚意に感謝します。――()()()()()()()()()()()()()()()の探求よりも、より有意義な活動方法があると思いますが...()使()()()()()()()()()()()()()()尚活動していることも確認していますし、中々頑固でして」

「"――()()()()()()()()()()()?"」

 

―――"先生"の不問の意思表示に謝意を示したカホさんが続けて漏らしたボヤく様な言葉を"先生"が聞き咎める。

 

「はい。――彼女達が申請理由として挙げた"忍者、忍術の探求"ですが...我が『百鬼夜行』において()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「――"陰陽部"史官として、『百鬼夜行』の歴史を()()()()()()()()()()『稗田家』として、副部長の言葉を保証します。『百鬼夜行』に存在するあらゆる史書、関連文献には――忍者、忍術、あるいはそれに類する言葉、事象等は()()()()()()()()()()()

 

 カホさんが挙げた"忍術研究部"非認可の理由をアキュウさんが補強する。―――『稗田家』は代々『百鬼夜行』の歴史を記録、編纂して来た()()()()()()()と言うべき名家であり、目の前のアキュウさんの様に初代当主『稗田アレ』の特質―――()()()()能力を継承した"御阿礼の子"は"陰陽部"における書記官である"史官"としても活躍している。

 

―――そんな()()()()()()()()()()()()()()()()()と確かな言葉で宣言するのだ。()()()()()()()()()()()()()()()―――なるほど"陰陽部"が首を縦に振らない筈だ。

 

「"ふむ...『百鬼夜行』、キヴォトスには()()()()()()()()()()可能性が高いのか。ちょっと意外だね"」

「――"先生"は忍者、忍術についてご存知なのですか?」

「"オタクと言える程広く深くもないけどね。――私が元居た()の国、『日本』には()()()()()()()()()()()"」

「せ、先生殿...!」

 

 "先生"が意外と言いたげな表情を浮かべながら零した言葉に対してカホさんが尋ね、返って来た答えを聞いてミチルさんが()()()()()()()()()イズナさんと共に目を輝かせる。

 

「――宜しければお聞かせ願えないでしょうか。『百鬼夜行』、ひいてはキヴォトスの()の歴史には――歴史にたずさわる者として大変興味があります」

「...アキュウ。私達の用件とは無関係な話題は――」

 

 カホさんの隣で静かに、礼儀正しく座っていたアキュウさんが瞳を輝かせ、()()()()()()()()()そんな要望を挙げる。対してカホさんがはしたないと眉を顰めて咎めるけど―――

 

「――まぁまぁ、少し位はいいでしょう。もしかしたら、"先生"が持つ情報がキヴォトスでの忍者、忍術の存在を補強するかもしれませんし」

「はいはい!私達も"先生"が知ってる忍者のこと聞きたーい!」

「はい!イズナも"先生"が知る忍者について知りたいです!」

 

―――私も"先生"が元居た()についての一端が知られるなら是非とも聞きたい。()()()()()()()()()()()()()し、取材の案件で出払っているハタテに対してより優位に立てる。そんな私の言葉に便乗してミチルさんとイズナさんも瞳をより輝かせて声をあげる。

 

「...はぁ、分かりました。私も興味がない訳ではありません。...忍者、忍術の実在を示す証拠が見出される可能性も否定できませんしね」

「"――分かった。知ってる限りのことは話そう。ただ、私も詳しく知ってる訳じゃないことは念頭に置いてね。まず、忍者は――――"」

 

 多数派の声に押されてカホさんは観念したように頷き、"先生"は『日本』なる国に存在した忍者、忍術について語り始める―――

 

「"――――という感じで、忍者、忍術は本来の姿から沢山の誇張、フィクションを付与されて『日本』から海外に広がって、巨大なサブカルチャーを形成したんだ"」

「おぉ...!私達が目指す忍者のそれだ...!」

「なるほど...!イズナ達が目指す忍者と殆ど変わりありません...!()では確かに忍者は存在したんですね!」

 

―――"先生"が忍者、忍術についての説明を終え、ミチルさんとイズナさんが目を輝かせる。忍者は『日本』において名前、役割を変えながらかなり長い間影で活躍した存在の様だ。そして、"先生"が生まれ育った時代では、多くの創作、フィクションにより勘違いや誤認もありつつも、隠れられない程に有名な存在になった様だ。しかし―――

 

「なるほど...。敵地へ潜入しての偵察、身を隠しての伝令などが本来の役目。しかし、後世には忍術としてフィクションも交えた様々な技を使い、忍者(同業他者)と戦うようにもなった..."忍術研究部"が挙げた忍者、忍術についての情報と似通う点は多いですね」

「――大変勉強になりました。戻ったら、改めて史書や文献を調べてみましょう。...尤も、私の記憶では尚、歴史上に存在するとは思えませんが」

「...うっ...やっぱり"先生"の情報じゃ補強にはならないよね...」

 

 カホさんに続くアキュウさんの言葉を受けてミチルさんは残念そうに俯く。―――"先生"が挙げた忍者、忍術についての情報は()()()()()()()()だ。キヴォトス、『百鬼夜行』での忍者、忍術に関わる情報ではない。

 

「――我が『百鬼夜行』での部活動認可基準が厳しい訳ではありません。"修行部"、"仏道部"、"仙道部"などは()()()()()()()手段、思想で以てそれぞれのアプローチで精神的、肉体的な向上を目指す部活動として認可しています。

 ですが――忍者、忍術は申し上げた通り()()()()()()()()()()()()()()()です。フィクションが実在すると主張し、その探求を行う。一応『百鬼夜行』生徒会である"陰陽部"としては、実在が保障できないものを探求することを()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性を排除できない以上、認可することはできないのです」

「"...確かに、カホの言う事はもっともだ。生徒会としては僅かでも治安を乱す要素は容認できないだろうね"」

「せ、"先生"殿ぉ...」

「な、何とか認可のお力添えはできませんか...?!」

「うぅ...やはり、どうしても認められないのでしょうか...」

「...直談判できればって思ったけど、取り付く島もなさそうだね」

 

 カホさんの言葉を受けて"先生"は成程と頷き、"忍術研究部"の皆さんは各々絶望や諦めの表情を浮かべる―――

 

 

 

 

「"――だけど。()()()()()()()()()を作れれば、それは()()()()()()()にならないかな?"」

「――へ...?」

「――主殿...?!」

「...せ、"先生"...?!」

「...へぇ...」

 

―――しかし一転して、"先生"はそんな問をカホさんとアキュウさんに投げかける。

 

「...ですが、それでも忍者、忍術が歴史上存在する証明には――」

「――()()()()()()()()()()()()()()()。そう仰りたいのですね」

 

 カホさんが否定的な意見を挙げるけど、アキュウさんは"先生"の言葉の真意を察した様な言葉を挙げる。

 

「"何かが起きれば、それを目撃した人は紙や口伝え、この現代なら映像なりで記録を残し、繋いでいく。そうして歴史は紡がれてきた。過去に忍者が存在しないというなら――()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その為に――"」

 

 

 

 

「"――改めて、君達"陰陽部"の用件を聞こう。もしかしたら..."忍術研究部"認可のチャンスになるかもしれない"」

 

―――"先生"はそう言って"陰陽部"のお二方と"忍術研究部"の方々を見回す。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
天皇や朝廷の記録を司る官職。中国の制度に倣った呼称




ということで、不忍ノ心編始まります。"先生"とイズナの発邂逅もいつか単発で書くかもです。忍術研究部には『東方星蓮船』より『封獣ぬえ』をキャスティングしてみました。正体不明を操る能力が忍術っぽいなと思って決まったキャスティングです。
そして"陰陽部"には書記枠として阿求をキャスティングしました。完全記憶能力繋がりでいつかはノアとも会わせたいですね。

~登場生徒紹介~
名前:封獣(ほうじゅう) ヌエ
所属校:百鬼夜行連合学院
学年:二年生
部活動:忍術研究部
装備:SMG(試製一型短機関銃(ヌエ流撹乱用サブマシンガン))

名前:稗田(ひえだ)アキュウ
所属校:百鬼夜行連合学院
学年:二年生
部活動:陰陽部"史官"兼"文書局"局長
装備:HG(九四式拳銃(求聞))
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