Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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筆が乗ったので日曜日も投稿です。
不忍ノ心編、続きです。


File84.MS-HY~不忍ノ心-弐ノ段~

~『百鬼夜行連合学院』自治区上空~

side-"先生"

 

「――これから『百鬼夜行』自治区に入るよー。『D.U.』とはまた違う景色、文化の違いがよく分かるねー」

「"どれどれ...おぉ...こうして直接眺めると本当に『日本』みたいだ。あんな巨大な桜の木は見たことはないけど"」

「『百鬼夜行』を象徴する桜の大樹『神木』ですね。今は時期ではありませんが、『神木祭』というあの樹にちなんだお祭りもあります」

 

 ヘリを操縦しているモエの報告を受けて窓を覗けば、春ではない為花を付けていない巨大な桜の樹と、その周りに和風、日本様式の建物が立ち並ぶ、『日本』を思い起こさせる景色が眼下に広がる。桜の樹についてアヤがそんな説明をしながら私の隣で窓から景色を見下ろす。

 

「"...こうして空から見下ろしても、色々見所がありそうだね"」

「えぇ。――食では『百夜堂』や『鯢呑亭』といった有名所から、知る人ぞ知る隠れた名店もありますし、四季折々、それ以外にも大小様々なお祭りも催しているのでいつ観光に来てもハズレ無しですよ」

「――今回の依頼も"『和楽祭』での運営サポート"ですからね。本当に、いつ何時でも祭りを催しているんですね...」

 

 アヤの言葉を聞いて向かい側の席で窓から景色を眺めているミヤコがそんな言葉を漏らす。

 

―――一昨日『シャーレ』に来訪した"陰陽部"のカホとアキュウから依頼されたのは、"忍術研究部"と共同での『和楽祭』の運営サポートだ。詳しくは現地でと言われている為、どんな仕事を任されるか分からないけど...カホが()()()()()()()『是が非でも今回はトラブルなく成功させたい』と言っていた為、恐らく今回の祭では()()()()()()()()()があるのだろうと推測出来る。

 

―――そして、カホが"陰陽部"部長と電話で掛け合って決定された"忍術研究部"の認可条件が、私達と共同しての『和楽祭』成功への貢献だ。曖昧ではあるけど、ミチル達にとっては貴重なチャンスだし、今頃は私達の到着を待っているだろう。

 今回『シャーレ』からは私と、護衛兼サポーターとしてミヤコとモエ。二人と同様護衛兼広報取材要員としてアヤが同行する。

 

「...はいはい了解。――"先生"、着陸許可が降りたよ。"陰陽部"から迎えが来るってさ」

「"分かった。...さて。カホが、"陰陽部"が抱く懸念事項はどんなものだろうか"」

「『和楽祭』自体は、この時期に催される伝統的な祭の一つですが...どんな問題が起きても対処できるよう心構えはしておいた方がいいでしょう」

 

 アヤの言葉に頷き、窓から徐々に高度が下がって近付いてくる景色を眺める―――

 


~『百鬼夜行連合学院』自治区 『守矢庵』~

side-???

 

「――来たか。あれが『シャーレ』の...」

 

―――単眼鏡で『陰陽部本部』敷地内のヘリポートに降り立った『シャーレ』ロゴマークを側面にあつらえた白いヘリから降り、以前『シャーレ』に出向いた"陰陽部"の出迎え役であるカホとアキュウと挨拶を交わす様子を見守る。

 その周囲では()()()()()()()()()()()()()()()()"陰陽部"直属の精鋭部隊"守矢衆"の面々と、配備車輛の[60式装甲車*1]三輌と[87式偵察警戒車*2]一輌がヘリポート周辺を囲んで護衛する様に配置されている。

 

~♪

「――もしもし。......あぁ、私も確認したよ。対応はお前達に一任するが、失礼のないようにな。......()()()()()()()()()()()を片付けてからで構わない。――では、任せたぞ」

 

―――スマホから着信音が鳴り、取り出せばニヤからの着信で、通話を繋いで彼女からの報告と確認にそれぞれ答えて通話を切る。

 

「全く..."魑魅一座"には毎度毎度困らされる。()()()()以前から存在しているとは言え、その実態は各々の不満を吐き出したいだけのはねっかえりの不良集団。不安、不満は理解するが――それを暴力で以て阻止しようとするのは短絡的だし、周囲への心象も悪くなるだけだというのに...」

 

 "守矢衆"が護衛隊形を組み上げ、カホとアキュウに導かれて歩き出す『シャーレ』の面々を再び単眼鏡で見下ろし、本館へ入って行く様子を見届けて単眼鏡を下ろしながら言ちる。

 

―――『"学院長"。先日受入を決定したゲヘナ"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の視察の件ですが...どうやら"魑魅一座"に知られてしまったようです』

 

―――『ゲヘナ学園』生徒会"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の要人による視察と祭体験の情報は"陰陽部"が徹底的に秘匿していた筈だったが、まるでその情報を知ったかの様に"魑魅一座"の活動が水面下で活発化しつつあるとニヤから齎された。

 本来ならば"百花繚乱"が動くべき事態であるが―――彼女達は今()()()()と言うべき状況にある。名を変え体制を変え、今日まで続いている伝統ある治安維持組織ではあるが―――それが()()()()()()()()により()()()()()が相次ぎ、()()()()()()()()()()()()()()()()()の有様だ。

 幸い、"守矢衆"の治安維持への転用や"修行部"、"仏道部"、"仙道部"による自発的なボランティアでの治安維持協力もあって治安悪化は抑えられているが、前"連邦生徒会長"失踪以来"魑魅一座"や"()()()"の活動は活発化しつつある。

 

「――だが、『シャーレ』の支援を求めたのは悪くない。『シャーレ分室』受け入れの為にもそろそろ顔繋ぎをしたかった所だ。今回の『和楽祭』での支援で、その実力が如何程か...見せてもらおうか」

 

―――"忍術研究部"認可の件含め、()()()()()()()()()()節はあるが、『シャーレ』がどれだけ動けるか見させてもらおう。期待しているぞ、『シャーレ』の"先生"。()から来たマレビトよ。

 

 


~『陰陽部本部』 応接間~

sideーミヤコ

 

「――お初にお目にかかります、『シャーレ』の"先生"。お噂はかねがね。――"陰陽部"部長を務めております、『天地ニヤ』と申します。この度は、急な我々からの要請に応えていただき感謝に堪えません」

「"――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"。今回はよろしくお願いするよ"」

「――『シャーレ』指揮下、『SRT』"RABBIT小隊"小隊長『月雪ミヤコ』です」

「――同じく"RABBIT小隊"オペレーター『風倉モエ』。今回はよろしくねー」

「――『シャーレ』"広報員"、『クロノススクール』"新聞部"所属、"文々。新聞"記者兼編集長の『射命丸アヤ』です。今回はよろしくお願いします」

 

―――乱れや汚れなく整えられた庭園――確か、枯山水という様式だっただろうか――を望める応接間。目に見えて高価そうなテーブルを挟んで"陰陽部"部長―――左角が欠けた二本角を額から伸ばした、思考が読めない糸目で笑顔を浮かべる『天地ニヤ』さんと挨拶を交わす。...カホ"副部長"もだったけど、"陰陽部"の制服は、『ゲヘナ』"風紀委員会"行政官の様に()()()()()()()()()のが制式な様式なのだろうか。

 

―――閑話休題。

 

「――先日は百鬼夜行(ウチ)の生徒がご迷惑をおかけしました。カホも謝罪したと思いますが、一応"部長"として私からも謝罪させてください」

「うぅ...あの時はごめんねぇ、"先生"殿...」

「"天井裏から入って来たことには驚いたけど、ミチル達に悪意はなかったから気にしていないよ。次からは普通に訪問してくれればいいよ"」

 

 ニヤ部長は一昨日の"忍術研究部"による侵入の事を謝罪し、彼女の隣に座っているミチルさんも頭を下げ、"先生"は微笑みながらそう答える。

 

「...噂通りですねぇ。今回はそのご厚情にありがたく甘えましょ。――さて、と。『シャーレ』の皆様、この度は我が『百鬼夜行連合学院』にようこそおいでくださいました。今日より『和楽祭』も催されますので、是非楽しんでいってくださいね」

「"そうしたい所ではあるけど――まずは、今回君達"陰陽部"が私達への用件を聞こうか。『シャーレ』を訪ねたカホ、アキュウは()()()()()()()と言って詳しく話してくれなかったからね"」

「にゃは。これまた噂通り職務に真面目な御仁のようで。初対面ですし親睦を深める為に案内や雑談でも...と、言いたい所ですが――」

 

 ニヤ部長は"先生"の要望に対してそう答えながら開いていた扇子をシャッと閉じ―――

 

「――()()()()()()()()()()()()()()も間もなく到着しますし、皆さんにお願いしたいことを説明しましょか」

「...っ...!」

 

―――糸目は変わらずとも、口元に浮かべていた笑みが消えて真面目な表示となり、ミチルさんも緊張で肩を強ばらせる。

 

「――先程申し上げた通り、今日より『和楽祭』が催されることは、カホとアキュウより聞いておられるでしょう。これ自体には特別なことはありません。問題は――」

 

 

 

 

「――今回は、『ゲヘナ学園』より"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の要人が()()に来られること、です」

「――『ゲヘナ』の要人が?」

「――マジで?あの『ゲヘナ』が...」

「――あやや、これは意外な方々が...」

 

―――ニヤ部長の言葉を受けてモエ、アヤ先輩と揃って驚きを示す。『ゲヘナ』の治安の悪さは言わずもがなだけど、その生徒達が集団で他校自治区を歩く。―――想像するだけでも問題が同時多発的に発生する光景が浮かぶ。

 

「ま、そのような反応も当然ですねぇ。――どうもゲヘナは(あちらさん)、修学旅行を企画しておられるそうで。その旅行先として我が『百鬼夜行』に白羽の矢が立ったんですわ」

「"修学旅行か...『ゲヘナ』の噂は私も把握しているけど、観光業にも力を入れている『百鬼夜行』としてはその魅力をより広めるチャンスでもあるよね"」

「えぇ、仰る通りで。事実、他校の修学旅行の旅行先として百鬼夜行(ウチ)はよく選ばれますし、慣れたものです。――しかし、厄介なことに()()()()()()()()()()()()()()()()()()者も少なからず居りまして」

 

 ニヤ部長はそう言って眉を少し八の字に曲げる。

 

「――反対するとなれば"魑魅一座"あたりですかね。昔から祭の最中にやれ"観光客を入れるな"だの"無料券を寄越せ"だのとイチャモンを付けては"百花繚乱"に蹴散らされてるのをよく見る連中ですが」

「にゃは、これはよくご存知で。――百鬼夜行(こちら)の生まれでしたか?」

「えぇ。生まれてから小学校までは百鬼夜行(ここ)で過ごしていましたよ。――今も"魑魅一座"が居る辺り、本当にしぶといですねぇ」

 

―――アヤ先輩が呆れた様な表情で推測を挙げると、ニヤ部長が驚いた様に眉を挙げて問い掛け、アヤ先輩はそれに頷き、二人揃って共感した様に眉を顰める。"魑魅一座"―――どうやら『百鬼夜行』では長く問題を起こし続けている不良集団の様だ。

 

「"――私達がすべきことは、その"魑魅一座"による()()から『ゲヘナ』の要人を護り、『和楽祭』を成功させること...かな?"」

「にゃは、これは御明答。察しが良くて助かりますわぁ」

 

 会話を聞いていた"先生"が私達に求める用件の推測を挙げると、ニヤ部長は扇子を開いて口元を隠しながら笑い、正解だと頷く。

 

「――我が"陰陽部"の非力を晒すようでお恥ずかしいことですが、()()()()()()()()()()()により()()()()()()()()状況でして。こちらとしても『シャーレ』と人脈を繋げられるのは願ったり叶ったりなので、カホとアキュウを送ったんですわ」

「"なるほどね。――君達の用件、喜んで請け負わせてもらうよ。困っている生徒を助けるのが『シャーレ』の、私の役目だからね。――ミヤコ、モエ、アヤ。君達も大丈夫だね?"」

「――勿論です。私達"RABBIT小隊"は『シャーレ』指揮下ですから。"先生"のご命令であれば従わない理由などありません」

「VIP護衛ならよくある任務だしねー。やるからにはしっかりやらせてもらうよ、くひひ...」

「――勿論ですとも。()()()()()()()はありますが、『シャーレ』として全身全霊で応えましょう。数年ブランクがある私の記憶ではありますが..."魑魅一座"はしぶといですが、流派が多く一枚岩ではないので集団としては脆い連中です。警戒を怠らなければしっかり撃退できるでしょう」

 

 "先生"の問いにモエ、アヤ先輩と揃って頷く。

 

「――重ね重ね、心より感謝申し上げます。ある程度指示は出しますが、基本的には遊撃で動けるように細かい指示は出しません。『和楽祭』、『ゲヘナ』要人の視察中、何卒よろしくお願いいたします。"忍術研究部"共々、期待していますよぉ」

「...こんなチャンス二度とないかもだし、私達も頑張るよ...!」

 

 ニヤ部長の言葉を受けてミチルさんも緊張しながら頷く。

 

「あぁ、それから――我が『百鬼夜行』専属教師である"学院長"が是非とも"先生"にお会いしたいと仰せでしたので、ことが済みましたら席を設けますが、宜しいでしょうか?」

「"勿論。私も是非会ってみたかったからね"」

 

 ニヤ部長が思い出した様に尋ねると"先生"は渡りに船だと頷く。『百鬼夜行』の"学院長"―――噂では『百鬼夜行』の()()()構築に貢献した方であり、キヴォトスでは非常に珍しい()()()()()()()()()武術―――近接戦闘術に長けた人物でもあるらしい。"教官"と同郷で、どのような方なのか私も気になるけど、今はニヤ部長より依頼された任務の遂行を優先しなければ。

 

―――トントン...

―――スーッ...

 

「――失礼いたします。ニヤ部長、『ゲヘナ学園』"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の皆様が到着されました。間もなく本館に到着いたします」

 

―――応接間の襖が開き、白い巫女服の様な上着と青い袴風スカートを身に付けた"陰陽部"の部員らしき生徒が姿を現して報告を挙げる。

 

「――これはいいタイミングで。では、隣で待機している"忍術研究部"の皆さんも連れて早速出迎えに行きましょか」

「"分かった。...『ゲヘナ』の娘は以前"当番"で来てくれたイロハ以来か。どんな娘が来るだろうか..."」

 

 ニヤ部長の言葉に"先生"が頷きながら立ち上がり、私達も続いて立ち上がる―――

 


~"陰陽部"本館 正面玄関前~

side-"先生"

 

「――『ゲヘナ学園』生徒会"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の皆様方、『百鬼夜行連合学院』へようこそおいでくださいました。――私"陰陽部"部長を務めております、『天地ニヤ』と申します」

「――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議長、『羽沼マコト』だ。今回の視察受入、感謝する」

「――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"副議長、『緋色魔レミリア』よ。今回はよろしくお願いするわ」

「――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議員、『棗イロハ』です」

「――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議員『丹花イブキ』でーす!」

「――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議員『緋色魔フランドール』だよ!ちょっと長い名前だから、気軽に『フラン』って呼んでね!」

 

―――"陰陽部"本館、正面玄関前。ニヤと"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の要人達が挨拶を交わす。

 長い銀色の髪に長短二対の角を側頭部から伸ばした議長マコト。『アビドス』以来となる副議長レミリア。相変わらずもこもことした長い赤髪が目立つイロハ。明らかに高校生には見えない、小柄で金髪のサイドテールと、小さな悪魔の羽と尻尾が揺れるイブキ。

 

 そして―――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の面々の中で一際目立つ、赤い軍服風の制服の上に赤い"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"のコートを羽織り、イブキと同様の金髪のサイドテールの上に制帽を被り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を浮かべ、背中には一対の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を伸ばした、イブキと殆ど年が変わらない様に見える生徒『緋色魔フランドール』。

 苗字が緋色魔ということはレミリアの姉妹になるのだろうけど、似ているのは顔付きと深紅の瞳だけで傍から見ていると姉妹には見えない。

 

「皆様、よろしくお願いいたします。――羽沼議長、会談の席を設けておりますのでご案内致します」

「うむ。そんな堅苦しくせず、マコトで構わんぞ。――レミリア、先に皆を連れて祭の会場に向かってくれ。...『アビドス』以来だ。"先生"との懇談一番手はお前に譲ろう。後で追いつく」

「分かったわ」

「間もなく案内役の"副部長"が来ますので、彼女の案内で会場へ向かってください。では――」

 

 マコトは私を一瞥し、ニヤと共に本館の玄関に入って行く。

 

「――久しぶりね、"先生"、『シャーレ』の皆。『アビドス』以来かしら」

「"本当に久しぶりだね、レミリア。息災のようで何よりだ"」

「"先生"こそ、壮健のようでよかったわ」

 

―――二人を見送った後、レミリアと向き合って挨拶を交わす。

 

「――改めて紹介するわ。『緋色魔フランドール』。こう見えてれっきとした、血が繋がった()()()よ」

「"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"議員にしてマスコットの片割れ、『緋色魔フランドール』!()()()だけど()()()()()()()()()()()()高校一年生だよ!気軽に『フラン』って呼んでね!...お姉様から聞いてたけど、()()()は私達とあんまり変わらないんだね~」

「イブキがそのもう片方のマスコット、『丹花イブキ』だよ!フランとは一年差だけど、大好きで大切な友達だよ!フラン共々よろしくね、"先生"!」

 

 レミリアは隣に立つフランドール―――フランを紹介し、彼女も自己紹介して私をまじまじと見上げる。本当にレミリアの妹の様だ。父方、母方のどちらかは分からないけど、どちらか片方の遺伝を色濃く受けているのかもしれない。

 そして、フランに続いて自発的に自己紹介したイブキとお揃いのサイドテールは二人の仲の良さを表している様にも見える。

 

「"はは、元気な娘達だね。――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"だよ。よろしくね、フラン、イブキ"」

「うん、よろしくね"先生"!...それで、後ろに居るのは...?」

「ん~...?なんか、何処かで見た気がする...」

 

 フランとイブキは私越しに背後に並ぶミヤコ達―――ではなく、"忍術研究部"の面々を見て不思議そうに首を傾げる。

 

「にぇっ?!...え、えっと...私達は"忍術研究部"。私は部長の『千鳥ミチル』だよ。よろし――」

「えっ?!今忍術って言った?!」

「忍者ってホントに居たの?!」

「"うわっ...!"」

「にょわっ?!」

 

―――ミチルが自己紹介した瞬間、二人揃って瞳を輝かせて声をあげながら私の脇を駆け足ですり抜けて彼女の下に駆け寄る。

 

「その通り!イズナ達は忍者ですよ!まさかゲヘナ(他校)にも知られているとは...!」

「イブキとフランね、前に先輩達に買ってもらった本の中で忍者を知ったの!音もなく走って、忍術で敵を翻弄する...すごくカッコイイよね!」

「それで、お姉様とか先輩達に"忍者は何処にいるのか"って聞いたら、『百鬼夜行』に居るかもしれないって調べてくれたの!本当に居たんだ...!」

「...うん、そ、そう!私達は忍者だよ!...本...?もしかして、この前書いて投稿したアレが...?いやいやまさか...

 

 イブキとフランは目を輝かせて忍者を知った経緯を説明し、それを聞いたミチルは戸惑いながらも頷き、()()()()()()()()()()()()ように小さく何か呟く。

 

「...ここだけの話、『百鬼夜行』視察なんて企画した発端は、あの子達からの()()()よ。修学旅行でガス抜きを図りたいマコトの考えもあったし、私も()()()()()()()()()()があったから渡りに船だったの」

「"なるほどね...いいことじゃないか。あの年頃の多様な感性は大きな成長に繋がるからね"」

 

「ねぇねぇ!火遁の術とかってできるの?!」>

「い、一応は...失敗多いけど...」>

「分身の術もできるの?!」>

「はい!イズナの得意な忍術の一つですよ!...ここは少し狭いので難しいですが」>

 

 ミチル達に次々質問を浴びせる二人を眺めるレミリアの言葉を聞いて微笑む。―――生徒会(万魔殿)としての狙いもあるけど、比重が大きいのは前者―――イブキとフランの要望に応える事だろう。

 高校一年生だけど、実年齢はそれぞれ十一歳と十二歳。精神はまだ子供としての面が強いだろう。様々な事柄に強い興味を持ち、飽きるか思考が追い付かなくなるまで質問し、調べ続ける。その感性の多様さを通して子供は成長していく―――二人は"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"内でもよく可愛がられている様だ。

 

「...ふふ、とりわけ職務に忠実な先生(教育者)がそう言うならきっといいことなのね。フランも連れて来たのは正解かしら。...これで少しでも()()を抑える一助になれば...

 

 レミリアは微笑み、小さく何か呟く―――

 

 

「――大変お待たせいたしました。皆様の案内を仰せつかりました、"陰陽部"副部長『桑上カホ』と申します。祭会場である『渦巻映画村』はここ本館より近い為、説明や紹介を兼ねて徒歩での移動となりますがよろしいでしょうか?」

 

―――そのタイミングでカホが二人の"陰陽部"部員と共に玄関から姿を現し、自己紹介して深々と頭を下げ、案内に関して徒歩移動の提案を挙げる。護衛としては車移動の方がリスクを減らせるけど、距離が近いなら徒歩でも護衛の役割は果たせるだろう。レミリア達と同様『百鬼夜行』についても知りたいし、警戒しながら行くとしよう。

 

「――えぇ、構わないわ。視察も目的の一つだしね。フラン、イブキも構わないわね?」

「――うん!大丈夫!」

「むしろそっちの方がいい!もっと忍者についてお話聞きたいしね!」

「...二人が望むならそうしましょうか」

「"『シャーレ』も構わないよ。ミチル、"忍術研究部"も大丈夫だね?"」

「だ、大丈夫だよ...!い、いよいよかぁ...緊張する...

「――承知いたしました。では、ご案内いたします」

 

 レミリア達に続いて提案を受け入れ、カホが先頭に立って歩き出す―――

 

 


~『渦巻映画村』への道中~

side-ヌエ

 

「"――そう言えば、『和楽祭』ってどんな祭なのかな?"」

「『百鬼夜行』では有名な物語である『和楽姫縁起』を基にした、参加者体験型のお祭です。

 

――昔々。戦に明け暮れる『百鬼夜行』戦国時代。そこに『百鬼夜行』随一の美しさを持つ姫、『和楽姫』がいました。その姿を垣間見た、あるいは噂に聞いた大勢の人が屋敷を訪ね、己が伴侶にせんとひっきりなしに求婚しました。財を誇り、武を誇り、名を誇り...しかし悉くが姫に断られていました。それでもますます人々は惚れ込み、求婚の列は途絶えることがなかったとか。

 しかしある時――狡猾な悪党が屋敷に忍び込んで『和楽姫』を攫ってしまいました。和楽家家中の者達は勿論大慌て。時の当主、姫の父親は"()を助けた者を婿として認める"と救出に向かう勇士を広く求めました。多くの勇士が立ち上がり、悪党を追い掛けようとしますが...()()()()()()()()()()妖術師等々...悪党に従う恐るべき手下達と、悪党が立て籠もる城にはありとあらゆる絡繰り罠。――姫を助けんとした勇士は悉く打ち倒され、迂回や奇策ですり抜けて城に辿り着けた者はより少ない有様でした。

 姫の救出は絶望的か――そんな時、遠国から来たという名も無き勇士が手を挙げ、周囲の忠告も聞かず一人で悪党の下に向かいました。彼もまた敗れるか...そんな期待に反し、名も無き勇士は武勇と知略で手下達を次々打ち破り、城の絡繰りも悉く突破。遂には悪党と対面し、激闘の果てに遂に討伐。姫は名誉を得て尚誇らず平静な勇士に一目惚れ。勇士と姫は晴れて夫婦(めおと)と相成りました。めでたしめでたし。

 

――と、このように。『和楽祭』は参加者がこの縁起での勇士役となり、映画村からスタートし自治区内各所に設けられた試練――手下役の生徒から課されるアトラクションやチャレンジをクリアし、姫役と悪党役の生徒の下に辿り着き、最後のチャレンジをクリアすることを目指す参加型イベントです」

 

「――へぇ、よく知ってるじゃん。まるで『百鬼夜行』に居たみたいに詳しいね」

「生まれと小学校は百鬼夜行(ここ)ですからね。それに『和楽姫縁起』は昔から読まされ聞かされてきたものですから、嫌でも覚えていますよ」

「すごーい!物語を体験できるなんてワクワクするね!ね、フラン!」

「うん!」

 

―――『渦巻映画村』への道中。アヤが"先生"に『和楽祭』の元ネタである。百鬼夜行(ここ)では馴染み深い物語である『和楽姫縁起』について語り、『クロノス』にしてはよく知っていると感心するとアヤは百鬼夜行(ここ)出身だと答え、イブキとフランの二人が興味津々に瞳を輝かせる。

 

「ねぇ、そのお姫様を助けた勇士って、忍者だったりするの?」

「うーん...『和楽姫縁起』には後世視点での色々な解釈、描写での文献、書籍がありますが...私の記憶では()()()()()()()()()()()()()ねぇ。

 しかし、原典ではこの勇士については具体的な記録がほとんどないので――忍者、それに類する存在であった可能性は否定できませんね」

「おぉ!もしかしたら、イズナ達のような忍者が活躍した可能性も...!」

「――実際はどうだかね。タイムマシンとか時間遡行の手段がない限り、誰にも分からないことだよ」

 

 フランの質問へのアヤの答えを聞いてイズナが挙げた希望的観測をやんわり否定する。―――歴史書に記録が無い事がハッキリしている以上、『百鬼夜行』で忍者が存在した事実は無い可能性が高いけど、記録に残していないだけで、本当は実在した可能性も否定出来ない。忍者は()()()―――本来、姿を見せる事なく活動しているのだから。

 

「でも、忍者じゃないって否定もできないんでしょ?!――もし『和楽姫』が攫われた所に直面したら、忍者なら助けに行くでしょ?!」

「...も、もちろんだよ!忍者は人助けだってするからね...!」

 

 それに対してイブキがミチル(部長)に対してそんな質問をぶつけ、ミチル(部長)はしどろもどろになりながらも頷く。―――世に出回っている、数少ない忍者を扱う漫画や本では、忍者が攫われたヒロインを救出する物語もある。これも事実なのか怪しいけど、先述の通りもしかしたら―――

 

 

「――私から『和楽祭』について説明をと思いましたが、彼女が言った通りです。本来は映画村の来場者全てが参加者ですが、祭を体験されたいとの要望に応え、今回は特別に皆様限定としています。映画村をスタートし、自治区内各所を回りますから、救出行の道中も楽しめると保障しますよ」

「...順番待ちがないのはありがたいですね。視察の時間も有限ですし」

 

 カホ副部長は少し悔しそうにアヤを一瞥し、その通りだと頷いて今回の祭を実質"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"貸し切りとしている事を明かし、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"のイロハが安心した様に頷く。

―――確かに、普段の映画村、自治区のあちこちは内外の観光客で賑わっている。『和楽祭』の時は特に人が多いから大半のアトラクション、食事処で並ばない場所は無い。視察を順番待ちばかりにするのは失礼だろう。でも制限措置に対して少なからず不満は出るだろうから、それに対応するであろう"陰陽部"も大変だ。

 

 

~♪

「――失礼します。...桑上です。......はい、間もなく到着します。......はい?本気ですか?『和楽姫』役は確かに難しいものではありませんが、()()()()()()()()()()のは......はい...分かりました...緋色魔副議長、少々よろしいでしょうか?」

 

―――副部長が懐からスマホを取り出して誰かと通話で話し始める。けど反応が妙で、通話を終えてスマホをしまってレミリア副議長に話しかける。

 

「レミリアで構わないわ。――それで、何かあったのかしら?」

「それが――」

 

 

 

 

「――我が部長より、『和楽姫』の役をそちらの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と要望がありまして。羽沼議長も"本人達の意思次第"として認められたとのことで、その確認を取りたいのですが...」

「えっ?!イブキ達お姫様になれるの?!」

「お姫様?!」

 

―――カホ副部長が申し訳無さそうな表情で通話内容を報告すると、ミチル(部長)、イズナ達と話し込んでいた二人が瞳を輝かせて食い付く。

 

「――急な変更ね。二人は乗り気だけど、衣装とか役としての演技...色々準備は必要ではなくて?」

「...アヤさんが説明された通り、『和楽姫縁起』には様々な解釈があります。それはヒロインたる『和楽姫』も例外ではなく、成人女性であったとか、幼子であったとか...

 ですから、『和楽祭』開催の際には『百鬼夜行』内の名家の息女から、或いは――頻度は少ないですが、『百鬼夜行』外の観光客から募集したりしています。

 映画村にて年齢層に合わせた衣装も用意していますし、着付師もプロの方々が居ます。役としての動きも、攫われた際と救出された時の演技位なので、それほど難しいことはありません」

「イロハ先輩!レミリア先輩!イブキお姫様になりたい!」

「お姉様、私もお姫様になりたい!『百鬼夜行』なら和服だろうし、着てみたい!」

 

―――カホ副部長がレミリア副議長にそう答えると、イブキとフランはより瞳を輝かせてレミリア副議長とイロハの下に駆け寄って『和楽姫』になりたいとせがむ。

 

「...副議長、どうしますか?一応マコト議長も認めているようですが...」

「...不安はあるけど...二人が強く望んでいるし、認めましょう。――但し、ちゃんと映画村のスタッフや"陰陽部"の指示、案内にはちゃんと従うこと。二人共、いいわね?」

「はーい!やったねフラン!」

「うん!お姉様ありがとう!」

 

―――レミリア副議長とイロハは顔を見合わせて相談し、レミリア副議長が守るべき事を付け加えて認めると、イブキとフランは嬉しそうに抱き合ってはしゃぐ。...そんな微笑ましい光景を見てると、純粋な子供みたいなお願いは拒否も出来ないだろうと察せる。

 

「――カホ副部長、ご迷惑をおかけします。歳相応に子供らしくはしゃぐだろうと思いますが...何卒ご容赦ください」

「お任せ下さい。そう言った子供達への応対も多く経験がありますので。――さぁ、見えてきました。あの門の先が『渦巻映画村』です」

 

 カホ副部長が指差す先、『渦巻映画村』の看板を掲げた木造の門が見えて来る―――

 

 

~『渦巻映画村』 メインステージ~

side-ミヤコ

 

「"――さて、そろそろ開演時間だ"」

「いやー、本格的なセットだね。特撮みたいに爆破演出とかあるのかなー」

「どうでしょうか...今回『和楽姫』は二人となりますが、どんな物語になるんでしょうか」

「さぁ、どうなるでしょうかねぇ。私も姫役二人のケースは見たことがないので」

 

―――映画村の中心にある、他のイベント等でも利用されるのであろうステージ。その演者、スタッフ待機所の傍から、『和楽家』の屋敷らしき背景を掲げたステージを眺めながら"先生"、モエ、アヤ先輩と会話を交わす。

 

―――『和楽姫』役を"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"のイブキさん、フランさんが務める事になり、二人はカホ副部長に同行していた"陰陽部"の部員二人を護衛に付けて映画村のスタッフに案内されて待機所内の更衣室に向かった。今頃は衣装の着付けの最中だろうか。

 

「――和服、和装なんて動画かネットでしか見なかったから、何だかんだ二人がどんな衣装で出てくるか楽しみね。...()()()を連れてこなかったのが悔やまれるわ」

「でしたら、私が写真を撮りましょうか?多少腕に覚えはありますよ」

「あら、いいの?じゃあ、お言葉に――」

 

 

 

 

「――皆様!()()()()です!」

 

―――アヤ先輩がレミリア副議長と写真撮影の依頼について話していると、待機所から出て来たカホ副部長が駆け足でこちらに向かいながら声をあげる。その表情は()()()()()()いて―――

 

 

 

 

 

 

「――お二人が衣装の着付け中に()()()()()()()()ようです!これは()()()()()()()()()!」

「「――は?」」

 

―――カホ副部長が挙げた()()()()を前にレミリア副議長とイロハ先輩が低い声を零し、私達もまさかの情報を受けて驚きで沈黙し、場が凍り付く。

 

 

 

 

「...う、嘘でしょ...?!」

「演技でもなく()()()()()()()とは...イズナも予想外です...!」

「...い、一体誰がそんなことを...?!」

「...とんでもない事態だけど、()()()()()()()...とにかく、『シャーレ』と私達の出番かな」

 

 

―――その背後で、"忍術研究部"が戸惑いながらひそひそと話し合う声が聞こえた。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
陸上自衛隊が装備していた兵員輸送車。陸上自衛隊唯一の機甲師団、第7師団隷下の第11普通科連隊などで使用された。機銃として[12.7 mm M2HB 機関銃]と[7.62 mm M1919A4 機関銃]を装備。[64式対戦車誘導弾]を装備したモデルもあるが、今回は非搭載モデル

*2
陸上自衛隊が配備している偵察警戒車。味方の前進部隊に張り付き偵察、警戒を行い、さらに有る程度の威力偵察も行える装甲車両として開発された。主砲として[25 mm KBA B02]を装備




ということでまだまだ続きます。"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"からはレミリアとフランも一緒に来ました。

名前:緋色魔(ひしきま) フランドール
所属校:ゲヘナ学園
学年:一年生
部活動:万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)
装備:MG(MG42(ソード・オブ・レーヴァテイン))
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