Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
前回のあらすじ:お姫様二人が攫われた
~『渦巻映画村』路地裏~
side-???
「――リーダー、連れて来たぞ!」
「――おぉ、上手く行ったか!
―――路地裏の入り口から仲間の声が聞こえ、安心しながら椅子代わりのゴミ箱から立ち上がって歩き出す。
―――『"魑魅一座・路上流"の皆様へ。私は百鬼夜行の現状を憂う者です。個人的なツテで、"陰陽部"がかの『ゲヘナ学園』からやってくる要人の視察を受け入れるという情報を入手しました。
ただでさえ自治区外からの観光客によるゴミのポイ捨てや器物損壊などの問題があるというのに、キヴォトスでも特に危険な『ゲヘナ』の生徒がやってくる。それには私も我慢ならず、この義憤を理解できるであろう皆様に正義の行いをお願いしたく、この手紙をしたためた次第です。
視察に関する内容を同封しますので、百鬼夜行をよりよくする為の行いを切に期待致します』
―――ある時、珍しくあたし達のアジトのポストに投げ込まれていた一通の手紙に記された、『ゲヘナ』の連中が
―――『ゲヘナ』の連中が『和楽祭』で『和楽姫』を演じる為、衣装着付けのタイミングで潜入して攫う。上手く忍び込めるか不安だったけど、攫うのに成功したという事は同封されていた警備周りの情報は正確だったのだろう。
「さーて、『ゲヘナ』の連中のご尊顔でも――」
「――イブキ達攫われちゃったね、フラン!」
「いきなり過ぎてビックリしちゃったよ...でもこれ、お祭の演出なのかな?」
「――は...?」
―――揃いの金髪のサイドテール。片や小さな黒い蝙蝠みたいな翼。片や虹の七色の水晶をぶら下げた変な翼。それぞれ黒と赤を基調にした、揃いの単風の衣装を纏う
「...あたしは着付け中の『ゲヘナ』のヤツを攫ってこいって言った筈だ。それがどうして――こんな子供を連れて来ることになるんだ?!」
「情報通り、ステージ待機所の更衣室に忍び込んだらコイツらが居たんだ!私も驚いたけど、角とか羽、尻尾はあったし、脱いでた制服に『ゲヘナ』の校章もあったし、少なくとも『ゲヘナ』のヤツなのは間違いない筈だ!」
「イブキ達は子供じゃないよ!飛び級だけど、ちゃんと高校一年生だよ!」
我に返ったあたしの言葉に対して攫ってきた仲間がそう言い訳し、次いでイブキとかいうのが頬を膨らませて抗議の声をあげる。飛び級―――案の定学年と年齢は合っていない様だ。飛び級なんて制度が『ゲヘナ』にあるのも驚きだけど、一応は『ゲヘナ』のヤツらしい。
「...分かった。ちょいと面喰っちまったが、一応計画通りだ。後はこのまま展望台まで向かうぞ!」
「...『ゲヘナ』とか"陰陽部"の連中は間違いなく追っかけてくるぞ。追いつかれたらどうすんだ、リーダー?」
「――そうさせない為に
仲間の問にそう答え、イブキとフランに銃口を向けて脅しながら軽く釘を刺す。
「大丈夫だよ!だって――
「どこまで逃げたって、忍者はフラン達を見付け出してあなた達を蹴散らすんだから!」
だけど、二人はそう言って怖がる様子を見せない。忍者―――本やアニメ位でも偶に見る程度の、
「――ま、信じたいなら信じてりゃいいさ。...よし、移動するぞ!」
仲間達に号令をかけ、懐から『和楽祭』の進行ルートを書き加えた自治区の地図を取り出す。最初は―――
~『渦巻映画村』上空~
side-アヤ
「――うーん...見当たらないわねぇ。目立つものではある筈だけど...和装が多くて上手いこと紛れているせいかしら」
翼をはためかせて滞空しながら自治区内を見回すけど、イブキさん、フランさんの姿は見当たらず、懐から二人が今回着ている衣装の写真を一瞥して再度見回す。視力はいい方だと自負しているけど、『百鬼夜行』特有の制服や普段着に紛れてしまうと識別は難しい。
更に、『百鬼夜行』は観光客が迷わない様に主要な道路は整備されているものの、景観、文化保全の為に殆ど手が付けられていない古く複雑な路地も少なくない。故に、空から見下ろすだけでは死角も多く探しにくい。
「...一度降りましょうか。空だけでは難しいわ」
空からの捜索を切り上げ、"先生"達が居る正門の方へと急降下する―――
~『渦巻映画村』 正門付近~
「――アヤ、二人は見付かった?」
「――申し訳ありません。空の目だけでは『百鬼夜行』の複雑な地形、路地に加えて特有の和装で紛れてしまうとすぐには...」
―――正門付近に降り立つなりレミリアさんが駆け寄って来て首尾を尋ねるけど、そう答えて頭を下げる。
「"――つまり、地上からも捜す必要があるね。カホ、"陰陽部"も捜索の人員は出しているかい?"」
「それが...自治区内各所で"魑魅一座"が暴動を起こしているようで、現状人員を割く余裕がありません」
「――どういうことです?『百鬼夜行』には治安維持組織である"百花繚乱"が居るでしょう?」
"先生"が、ちょうど指揮と状況確認を終えたカホ副部長に尋ねると、"陰陽部"も人員をすぐには割けないと事情が明かされ、イロハさんが怪訝そうに尋ねる。―――"百花繚乱紛争調停委員会"。『百鬼夜行』における治安維持組織であり、名を変え体制を変えながら今日まで長く続いている伝統ある組織だ。即座の武力介入では無く、出来る限り
「――お恥ずかしい話ですが、"百花繚乱"は
「...前の"連邦生徒会長"失踪以来、キヴォトス全体の治安が悪化しているのも理由でしょうけど、それでも
「"――カホ。
「わ、分かりました。――こちらが今現在共有されている暴動の発生位置です」
―――おもむろに"先生"がカホ副部長にそう要望し、彼女は戸惑いながらもスマホを操作して情報を[シッテムの箱]に送る。
「"よし...アロナ。『百鬼夜行』自治区全体図に今送られた
『了解しました!――結果を表示します!』
アロナさんは数秒で処理を終え、『シッテムの箱』からホログラムで『百鬼夜行』自治区全体の地図が投影され、私含め皆注目する。赤い靄で暴動の発生場所が、青い矢印で『和楽祭』の進行ルートが示される。その関係性は―――
「――これは...祭の進行ルート以外、迂回路が
「あやや、これは..."先生"はこれに気付いていたんですか?」
「"違和感を感じたのはついさっきだけどね。..."魑魅一座"蠢動の可能性はニヤから聞いていたけど、
"先生"はそう推測を挙げ、困った様に眉をひそめる。彼としては学校間で仲良くして欲しいのだろう。しかし、『ゲヘナ』の治安の悪さは昔からキヴォトス中でよく知られているし、"温泉開発部"や"美食研究会"の様な『ゲヘナ』の外でも問題行動を起こす組織も居る。『ゲヘナ』は野蛮―――それは単なる先入観での決め付けとも言えない。"魑魅一座"の行動は不良のそれだけど、『百鬼夜行』へ愛着があるからこそ今回の事件を起こしたのだろうとは私でも想像が付く。けど―――
「
「そうです。今も二人は怖い想いをしているかもしれません。故に今は、二人の救出を最優先とすべきです。――"先生"、アロナさんが分析したこの状況を見るに、現状目指すべきは...ここ、祭の進行ルートの終点――『桜花展望台』なる場所でしょうか」
レミリアさんの言葉にイロハさんが頷き、地図に映る『和楽祭』進行ルートの終点―――『神木』を中心とした景色を一望出来る『桜花展望台』を指差す。
「
「"それに、あくまで
レミリアさんの言葉に続けて"先生"が『和楽祭』への参加を通して捜索を行うメリットを挙げる。
「成程...では、私は空から引き続き捜索を行います。今ヘリを飛ばすのは周囲に怪しまれてしまうでしょうし、モエさんは"先生"とミヤコさんと共に行動してください」
「
"先生"の言葉に頷き、モエさんには"先生"、ミヤコさんとの同行をお願いする。
「"――ミチル。君達"忍術研究部"にも働いてもらう。君達からの依頼もあるから、『シャーレ』は
「わ、分かった...!み、見ててよ"先生"殿...!」
「イズナ達にお任せください!」
「正直、まだ戸惑いは治まりませんが...が、頑張ります...!」
「――任せてよ、"先生"」
"先生"は"忍術研究部"の面々にもそう指示を出し、各々頷く。"忍術研究部認可の為の支援"も今回の依頼の一つだ。この誘拐事件を"忍術研究部"が解決したと示せれば、認可へ向けて"陰陽部"に良い印象を与えられる筈だ。
「――『シャーレ』、"忍術研究部"、そして"
「...勿論ですよ。できることは少ないですが、イブキとフランの為です。微力を尽くしましょう」
レミリアさんもイロハさんに確認すると、普段の気怠そうな眼差しを少し鋭くして頷く。
―――"先生"の号令一下、私達の気を吐く声が空に響く。
~『百鬼夜行連合学院』自治区 『食楽通り』~
side-ミヤコ
「"――この辺りは食事処が多いみたいだね"」
「――『食楽通り』。有名所のお店は大体この通りに集まっているんだ」
―――多くの生徒、観光客で賑わい、耳を突く喧騒と共に料理の匂いが鼻を突く通り。"先生"の言葉に対してヌエ先輩がそう説明する。
「老舗の喫茶店『百夜堂』、居酒屋『鯢呑亭』、移動屋台『夜雀食堂』...最近
続いてミチル先輩がそう説明し、羨ましそうに通りの左右に並ぶ店舗を見回す。―――依頼受領後の事前調査の一環で、"忍術研究部"が運営している『キヴォチューブ』チャンネルである『少女忍法帖ミチルっち』を見たけど、登録者数、動画再生数、コメント数のどれもが
「むむむ..."陰陽部"から頂いた進行ルートでは、『百夜堂』辺りに最初の試練が用意されている筈ですが――」
―――私の隣でイズナさんがスマホで"先生"を通して"陰陽部"から共有された『和楽祭』進行ルートと通りを交互に見ていると、『百夜堂』の方から履帯が軋む音が聞こえて来る。周りの生徒や観光客も何事かと騒めく中―――
「ふっふっふ...!『シャーレ』、"忍術研究部"、"
―――『百夜堂』の影から、ピンクの塗装、お祭を彷彿とさせる装飾で飾り立てた[九五式軽戦車 ハ号*1]が姿を現し、砲塔のキューポラで上半身を晒した、短いツーサイドアップの頭上にメイドプリムを被り、ピンクの着物にエプロンを纏った、華やかな和装のメイド服を纏った生徒―――以前、一度『シャーレ』に"当番"として――あれは"先生"への営業にも見えたけど――来た事がある"お祭り運営委員会"委員長『河和シズコ』先輩が不敵な笑みを浮かべて私達を歓迎する様に腕を広げる。
「"――シズコ、前の"当番"以来だね。...戦車で出迎えなんて物騒だけど、それが――君達の『和楽祭』での試練かな?"」
「ふふっ、あの時はありがとうございました!――その通りです!今回の『和楽祭』では新たな試みとして、普段よりハードで、没入感溢れる
「...甲冑どころか、四本足ですらないのはもはや牛ではないのでは?」
シズコ先輩は"先生"にそう答えて自身のポジションを明かし、イロハ先輩がツッコミを入れる。
「『和楽姫縁起』は沢山の二次創作があります!牛が戦車になってもなんらおかしくありません!さぁ――『和楽姫』を助けたければ、私達を倒すことです!フィーナ、バンキ!」
「――了解デス、委員長!この『朝比奈フィーナ』が、姫を取り返さんとする皆さんを阻止しマス!お覚悟、デス!」
「...了解。一応自己紹介しておくよ。――"お祭り運営委員会"副委員長、『
車体のハッチ二つが開いて赤いメッシュが混ざる金髪をポニーテールで結い上げ、胸周りの露出が大きい生徒が独特な口調でそう啖呵を切り、もう片方から上半身を出した。赤いショートカットの後頭部に青い大きなリボンを留め、黒い和装にエプロンを重ね、赤い袴風スカートを纏った生徒がそれぞれそう名乗って車内に戻る。数秒して砲塔が僅かに動き―――
「――散開ッ!!」
「うわッ?!」
「っく...!」
「っと...!」
―――私がそう吼えて全員が方々に駆け出した瞬間、[37mm砲弾]が放たれる。戦車砲としては小口径だから爆風は小さいけど、人間の身体で食らえばひとたまりもないだろう。
野次馬も砲撃で逃げ散り、モエ、ヌエ先輩と共に近くの横道に駆け込む。
「ふぅ...いやー、どうしたものか。忍術でも正面きって
「どうすんのさミヤコ?!戦車相手は予想外なんだけど...!」
「予想外なのは皆同じです...!モエ、爆薬の類は持っていますか?」
「うーんと...お、起爆装置付きの[C4]が一個だけあった。量的には扉破壊用だね」
「いやいや、なんで普通にそんなの持ってるのさ...この場合ありがたいけども」
[
「――[九五式軽戦車]ならその量でも背面、天板を発破すれば充分効果的でしょう。ですが、主砲の他に車体正面、砲塔側面に[九七式機関銃]を備えて死角を補っています。戦車そのものが車内からの視界が限定的とはいえ、どうやって近付くか――」
「――背後に近付いて、[
ヌエ先輩が通りに目を向けながら、彼女自身で考えたらしい作戦を私達に説明する―――
sideーシズコ
「――煙幕...?!」
―――[
「――シズコ、落ち着いて。相手は生身なんだから、正面からこっちに挑んでくる訳がない。パッと見煙幕は正面だけ...後退して視界を確保しよう」
「そうね!バンキ、少し下がって!」
「了解...」
操縦席に座るバンキに窘められ、彼女の提案を受け入れて後退を指示する。エンジンが唸りをあげて後退し始め、煙幕が薄くなっていく―――
「――敵影確認!
―――煙幕の中に
「――か、看板...?!」
―――しかし、着弾の衝撃で晴れた煙幕の中から現れたのは
「
「了解デス!」
―――また煙幕の中に
「ま、また看板...?!」
―――しかし、煙幕の中に見えたのは別の
「また人影――いえ、違う...!」
私から見て右方で煙幕が揺れて
「...シズコ、車内からじゃ視界が狭い。キューポラから出て直接状況を把握した方がいいと思う」
「その方がいいわね...!――キューポラから状況を把握するわ!フィーナ、バンキはいつでも動けるように警戒!」
「了解デス!」
「了解...気を付けて、シズコ」
バンキの意見を受け入れ、指示を出してキューポラのハッチを開けて上半身を出す。そのタイミングで煙幕が風で流れて前方の視界が晴れていく―――
「...誰も居ない...?」
―――前方には砲撃と機銃で砕け散った看板の残骸。少し遠くには遠巻きで試練を見守る野次馬の姿。それよりも妙なのは、横道に逃げ込んだ筈の
「――残念。
「――誰ッ?!」
―――背後から誰かに耳打ちされ、即座に振り向いて[桜ボンボン]を構える。
―――私の視界の上方で黒い人影が跳躍したように視界外に消える。その先に―――通りを駆けていく
「ッ?!な、なんで?!いつの間に私達の傍を通り抜けて――」
―――瞬間。[
「い、いつの間に...?!フィーナ、バンキ!急いで脱出!!」
何故?いつの間に?―――そんな思考を頭の隅に追いやって二人に脱出を指示し、私自身もキューポラから下半身も出して地面に降り立つ。
「む、無念デス...!」
「フィーナ、急いで!燃えてるエンジンの熱が車内まで...!」
車体正面のハッチが開き、フィーナが先に出て来て、その後を急かしながらバンキが出て―――
「バンキ先輩?!」
「あぁ、
―――開口部に爪先を引っ掛けて頭から盛大に転び、その衝撃で
「いたた...ごめん、二人共。ちゃんと固定はしてた筈なんだけど...」
「あんな頭から思いっきり転べばこうもなるわ。ほら、じっとしてて」
謝るバンキにそう返しながら頭を身体の首に乗せて合わせ、フィーナが拾っていた補強用のネックバンドを巻き、その上に包帯を巻く。
「...よし...首に違和感はない?」
「...ん...大丈夫。ありがとう、二人共」
包帯を巻き終え、バンキは首を軽く曲げたり捻ったりして異常無しと頷き、私達にお礼を言う。―――野次馬も遠いし、すぐに治せたからこの
「どういたしまして。...って、[
「了解デス!」
バンキに手を差し伸べて立ち上がらせながらフィーナに指示を出す。イベント用だから弾薬は最低限で満載してないから引火してもそこまで被害は出ない筈だけど、それでも出来る限り損害は避けたい。"陰陽部"からの
「...[
「私にも分からないわ。あの煙幕の中に見えたのは
バンキにそう答えながらスマホを取り出し、ある連絡先に通話を繋ぐ。コール音が十回程鳴り―――
『...ふぁ...もしも~し...』
「――
『...思ったより早かったね~。りょ~か~い』
―――今にも眠ってしまいそうな声の主、"修行部"部長『春日ツバキ』さんに"甲冑を纏う牛"の撃破と次の試練―――"眠り姫"の試練の準備をお願いする。
~『百夜堂』屋根の上~
「――最初の試練は突破できたか。流石『シャーレ』って所かなー。...
ということで、もう少し続きます。『百鬼夜行』所属の東方キャラの顔見せも兼ねているため、ちょっと長丁場となるのはご容赦ください。
お祭り運営委員会にばんきっきがキャスティングされました。本来他人と関わらない性格ですが、集団幻覚のおセキちゃんに惹かれてこうなりました。
名前:
所属校:百鬼夜行連合学院
学年:二年生
部活動:お祭り運営委員会 副委員長
装備:HG(