Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『百鬼夜行連合学院』自治区 旅館『春眠庵』前~
side-レミリア
「ん~...zzz...」
「っく...!」
「にょわー?!」
「部長、ミヤコ殿?!」
―――ミヤコとミチルができる限り
「...厄介な相手ですね。眠りながらここまで鋭く反応するとは」
「眠りながらも気配、殺気を感じ取る...彼女の睡眠術は一線を画すようね」
―――『...ん~?...あぁ、貴女達が和楽姫を助けにきた勇士達だね。"修行部"部長の"春日ツバキ"だよ~。私から貴女達に課すのは"眠り姫"の試練。お題は――"
―――"お祭り運営委員会"の試練を突破し、進行ルートに従って旅館『春眠庵』に着くと、軒下のベンチで居眠りしていた彼女が私達に気付いて目を覚まして立ち上がり、眠そうな声で試練の内容を告げた。
具体的な内容を尋ねようとしたけど、彼女はそのまま
「――起きているのとなんら遜色ないレベルでの気配感知...
「...眠りながらあれだけ反応できるのは恐ろしいですね。しかし距離を取ろうとしても"逃がさない"と言わんばかりに撃ってくるので、遠巻きな素通りも厳しい...私達には
私の言葉にイロハが頷き、気怠げな眼差しを鋭くする。
「――"先生"、あなたは何か方法を考えられそう?」
「"...すぐに眠りについた点、眠りながらも外的刺激を感じ取って対応する点――ツバキは
"先生"に尋ねると彼はそう答え、悩ましげに顎に指を添えて考え込む。
―――『イズナなら行けるかもしれません!最初はイズナが挑戦してみます!忍法――影分身の術!』
―――イズナは"影分身の術"と宣言し、その言葉通りに自身の分身を生み出してツバキの反応を逸らして突破して見せた。...私の動体視力は彼女の分身が
―――閑話休題。イズナの様に気配を誤魔化す方法は有効みたいだけど、彼女以外にその方法を持つ者は―――
「――気配を誤魔化せればいいんでしょ?...急ぐなら、また私が突破させるよ」
「"――いけるのかい、ヌエ?"」
「どれだけ感覚が鋭いか分からないけど...やってみる価値はあると思う」
「
―――ヌエが軽く手を挙げて任せてほしいと提案し、賛意を示す。"お祭り運営委員会"の戦車突破したのも彼女の忍術によるものだったけど、気配を鋭く感知する
「"――分かった。ヌエ、また任せていいかな?"」
「――任せて。...あの植木を使うか。――ヌエ流忍法、"晦ましの術"」
―――ヌエは"先生"の言葉に頷き、近くに置かれていた植木に目を向けて手を組んで瞑目する。"お祭り運営委員会"の戦車と相対した時の様に黒い靄のようなものが流れていき―――
「...ん~...zzz」
「...よし、
―――ツバキは
「...zzz...むにゃ...あれ...?突破されちゃった...
~『百鬼夜行連合学院』自治区内 『武家屋敷地区』~
side-"先生"
『――こちらアヤ!桜花展望台にて"魑魅一座"と思しき集団とイブキさん、フランさんの姿を確認しました!』
―――『和楽祭』進行ルートを進んでいると、インカムを通して空から捜索を続けていたアヤから報告が入る。
「"やっぱりそこに居るか...!――モエ、"陰陽部"から自治区内の暴動について状況を問い合わせて!"」
「了解!――こちら『シャーレ』"RABBIT4"。自治区内の暴動の発生、鎮圧状況の共有を求む!」
アヤの報告に安堵しながらモエに"陰陽部"への状況問い合わせを指示する。
「――アヤ、二人の安否は分かるかしら?」
『遠目ではありましたが、何かしら危害を加えられた様子はありませんでしたね。やはりあの年齢では、にっくき"ゲヘナ"の生徒と言えど危害を加えるのは躊躇うのでしょう』
「子供扱いは二人が怒ると思いますが...兎も角、無事ならよかったです」
レミリアがイブキとフランの安否を尋ね、アヤが確認した状況を報告するとイロハが安心した様に息を吐く。
「――"先生"!自治区内の暴動は鎮圧されつつあるけど、それでもまだ時間がかかるみたいだよ!やっぱり迂回は厳しいっぽい!」
「――状況は好転した...とは言いにくいですね。やはり、このまま『和楽祭』の試練を突破していくしか――」
モエの報告を聞いてミヤコが今後の方針を提案して―――
「――『シャーレ』、"忍術研究部"、『ゲヘナ』"
私は"修行部"副部長を務めております、『水羽ミモリ』と申します。この『和楽祭』にて"読心術師"の試練を担当しております」
―――私達の正面。左側頭部をお団子で纏めた、淡いピンクの長髪、上半身の露出が多かったツバキのそれとは違って露出が無い巫女服風の制服を纏った生徒―――ミモリが立ちはだかり、私達が驚きながら足を止める中、私達にそう挨拶して深々と頭を下げる。
「..."読心術師"?
「――あら、『ゲヘナ学園』にはそのような方がいらっしゃるのですね。このような才能の持ち主は私だけかと思っていましたが...機会がありましたら、是非お会いしてみたいですね。...
「――
レミリアが"読心術師"と聞いて眉を上げると、ミモリは興味津々に微笑みながら目を細め、『ゲヘナ』に居るらしい
「――私の読心術が如何なるものか、お分かりいただけましたね。私から課す"読心術師"の試練は――"
「――あら、そんなものでいいの?」
「――結構な自信をお持ちのようですね。まぁ、この場合はありがたいですが」
「――やはり、今も鎮圧中の自治区内各所での暴動は無関係ではなさそうですね。試練が終わったら支援に回らなければ...」
ミモリは"読心術師"の試練内容を明かし、拍子抜けした様に確認したレミリアに続いたイロハの言葉を聞いて困った様に目を伏せる。今度はイロハの思考から今の状況を推測した様だ。
「...なら――」
「――!...やはり、お急ぎの事情を抱えていらっしゃるようですね。ですが――こちらもすぐに破られる訳にはいかないのです」
「...ちっ...奇襲もダメ、か。本当、読心術は厄介ね」
―――レミリアが徐に[
「――では、始めましょうか。皆様の健闘を祈ります」
ミモリは微笑み、いつでも来いと言わんばかりに腕を広げる―――
side-ヌエ
「イズナ流忍法!"変わり身の術"!」
「――素晴らしい身体能力ですね。ホログラムや看板も使わず、その素早さだけで残像を生み出すとは」
イズナが"変わり身の術"を繰り出してミモリの背後に回るけど、それすら分かっていた様にミモリは銃撃をヒラリと躱し、微笑みながらイズナのフィジカル能力の高さを評価する。
「――う、うおりゃー!」
ミモリがイズナに顔を向けた隙を突いて部長が仕掛けるけど―――
「――狙いが少しブレていますよ。...戦闘でも、他の場面でも
「...ま、迷いなんて私には...忍者には――」
「――忍者。"陰陽部"史官であるアキュウさん程歴史に詳しくはありませんが...忍者は
「うっ...」
―――ミモリがそう指摘すると、部長は核心を突かれた様に動きを止める。
「"忍者、忍術の探求"――"陰陽部"、この『百鬼夜行』の校則では認可条件に適さず、故に活動費用、手段は自力で用意しなければならない。しかし、努力してもその効果は報われる程でもない。でも、そんな苦悩を――」
「――!」
「――言われなくても
「...ぬ、ヌエ...?」
―――ミモリの追求を遮る様に[ヌエ流撹乱用サブマシンガン]で牽制射を撃ってそう宣言し、部長が戸惑いながら私を見る。
そう―――
「空元気、強がり...私達の前じゃいつも笑ってるけど――私達から離れた所で弱気になってること、知らないとでも思ってた?」
「な、何でそれを知って...」
「自分は隠れているつもりでも、周りから見れば隠れていないってことだよ。...尤も、隠れてなくても時々弱気になってるけど」
「うぅ...あ、相変わらずヌエは辛辣...」
「――でも。
私の言葉で項垂れる部長にそう告げる。
―――『こっち見ないで!アンタを見てくると
―――『こ、こっちに来るな...!お前
―――私自身しっかり把握出来ている訳じゃないけど、私には
中学辺りまではこの才能の制御が上手く行かなくて、周りから嫌われ、怖がられて一人ぼっちだった。高校生になる頃にやっと制御が効く様にようになり、この才能で
―――『た、確かにここには
―――私の悪戯で混乱し、怖がる連中の中で初めて、
「ヌエ殿の言う通りです!イズナ達は部長の忍者への憧れと探求心に惹かれて集ったのです!周囲が忍者について解ってくれなくても、私達の活動が効果をあげなくても、部長は諦めずに次の手を考えて実行する。――イズナは、そんな部長に憧れているんです!」
「わ...私も、部長が諦めないからこそ"忍術研究部"に居られます。私のこの体格を揶揄ったりせず、私なりの忍術を生み出すお手伝いもしてくれて...部長は、私にとっても恩人です...!」
「ふ、二人共...!」
私に続いてイズナとツクヨも部長を褒める様な言葉を挙げ、部長は感極まった様に瞳を輝かせる。
「――ま、そういうことでね。アンタに心を読まれなくても部長の弱点は知ってるし、私達はそれを受け止めてる。今回は私達忍者の存在を知らしめて、部活動を認めさせるチャンスなんだ。心をどう読んでるか知らないけど――」
ミモリに向き直ってそう宣言し、[ヌエ流撹乱用サブマシンガン]の銃口を向ける―――
「――こっちも急いでるんだ。さっさと突破させてもらうよ」
「成程...素晴らしい仲間達に恵まれたようですね。――では、その忍者の実力、試練突破を以て示してください」
「言われずとも。部長、イズナ、ツクヨ。――行くよ」
「――よーし、私達に任せて!」
「――イズナ、参ります!」
「――つ、ツクヨ...行きます...!」
私達を見回して微笑み、かかって来いと言わんばかりに腕を広げるミモリにそう啖呵を切り、部長達と共に駆け出し、四方から仕掛ける。
「――イズナ流忍法!"影分身の術"!」
「――分身...いえ、正確には
「――じゃあ、これも加えたら
―――イズナが高速移動で生み出した残像に対して
「これは...成程、
ミモリは一瞬驚いた様に目を見開くけど、すぐ平静に戻って私の
でも、これは
「――うぉりゃー!」
「っと...!
「むぎゅっ...」
分身で翻弄していた隙に背後に回った部長が仕掛けるけど、既にバレていた様でミモリは部長の吶喊をヒラリと躱してしまい、部長は情けなく地面に転ぶ―――
「っ...?!」
―――瞬間、
「あ、当たった...!よっしゃー!試練突破だー!」
「やりましたねヌエ殿!」
「少し前にやった
「...な、何故...?私の後ろには人一人が身を隠せる程度の
「...私は木...あ。ど、どうも...」
「...え...?」
―――ミモリの背後には植木―――
「――イズナの分身に仕掛けた
ツクヨを見上げて呆然とするミモリに種明かしをする。―――連携忍法"二段構えの背撃"。まっさらな平地だと上手く行かないけど、ここらの様な建物や置物がある場所だと本当によく嵌る。
私の
「...参りました。絆の強さだけではなく、実際の連携もお見事でした。本来であれば参加者全員に対して試練を課しておりますが――皆様お急ぎのようですので、"忍術研究部"による試練突破を皆様の試練突破と見做しましょう」
「――配慮に感謝するわ。また機会があったら、その時はちゃんと祭を楽しませてもらうわね」
「ふふ、その際は『百鬼夜行』の者としてもてなしましょう」
ミモリは立ち上がって制服の乱れを整えると試練突破を認める宣言を挙げる。レミリアが謝意を述べるとミモリは微笑む。
「――次の試練はこの先、『風雲カラクリ武家屋敷』です。
「...最後ですか。確かに、二人が捕まっている展望台の山も近くなっていますね」
「"ありがとう、ミモリ。――よし、皆先を急ごうか"」
"先生"の言葉に頷き、歩き出す―――
「――ミモリ、試練は突破された~?」
「――はい。"忍術研究部"の皆さんの絆、連携の強さには敵いませんでした。...ツバキちゃんも、"忍術研究部"の方々の忍術で突破されましたか?」
「多分ね~。気配を感じたと思ったら、もう突破されちゃってたんだよね~。――じゃあ、試練も終わったし"魑魅一座"の鎮圧、手伝おっか」
「えぇ。"陰陽部"に状況を問い合わせてから行きましょうか」
~『風雲カラクリ武家屋敷』付近~
side-ミヤコ
「――見えてきたね。あの屋敷だよ」
―――『武家屋敷地区』の終点が見えて来た頃。ヌエ先輩が指差した先、正門に掲げられた看板を確認する。門と塀の先に佇む屋敷の屋根には木製らしき歯車や、偽装されているらしい何らかの仕掛けも見える。
「...如何にも何か仕掛けられていそうな...よく目立って分かりやすいですが、この辺りの屋敷にはそぐわないですね」
「この辺りのお屋敷は景観、文化保全の為に残されているけど、あのカラクリ屋敷は確か...過去にあった何かの暴動とかで本来のお屋敷が倒壊したから、せっかくだから『百鬼夜行』らしいアトラクション施設として建て直そうって――」
「うわぁ?!」
「に、逃げろ逃げろ!!」
「なんで
―――突然、屋敷の正門が吹き飛ぶ。塀や門、看板が砕け散り、そこからお面を付けた生徒達三人が大慌てといった様子で出て来る。まるで
「逃がさないわよ!『ウンザン』、そのまま捕まえて!」
―――ヴェーブがかった水色のセミロングヘアに青い頭巾を被り、白いセーラー服とスカートの上に袈裟を羽織った生徒が屋敷の方から跳躍して姿を現し、輪が付いた金色の[
「――だから言ったであろう?その方角は鬼門だと...尤も、勝手な都合で祭を台無しにせんとする不埒者共は逃がさぬが」
―――そして、倒壊した門から灰色の長髪をポニーテールに纏め、青い烏帽子を被り、袖口が着物の様に広い白いセーラー服に青いスカート、ブーツを履いた生徒が姿を現し、自信を宿した表情で雲の手に捕まった生徒三人を見上げる。
「――おや、あなた方は...もしや、今回の『和楽祭』挑戦者ですか?」
「えぇ、その通りよ。その口振り...
「えぇ、その通りです。――『百鬼夜行連合学院』二年生、"仏道部"『命蓮寺』修行僧、『
「我が名は『
生徒二人―――『雲居イチリン』、『物部フト』両先輩がそれぞれ自己紹介する。
「"――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"だよ"」
「――『シャーレ』指揮下、"RABBIT小隊"小隊長『月雪ミヤコ』です」
「――同じく"RABBIT小隊"オペレーター、『風倉モエ』だよ、よろしくー」
「――『ゲヘナ学園』"
「――同じく"
「――"忍術研究部"部長、『千鳥ミチル』だよ」
「――同じく副部長、『封獣ヌエ』」
「――同じく"忍術研究部"所属、『久田イズナ』です!」
「に、"忍術研究部"所属...『大野ツクヨ』、です...」
「――事前に"陰陽部"より共有された情報通りですね。縁を齎したもうた御仏に感謝を。...さて、我々が課す試練は『風雲!カラクリ武家屋敷』の攻略...だったのですが」
イチリン先輩は門や塀が倒壊した屋敷に目を向ける。
「...今、イチリンの入道『ウンザン』に捕まっておる不埒者共――"魑魅一座"の者共が
しかもこやつ等、屋敷の奥――アトラクションエリアに逃げ込みおってな。迅速な捕縛の為に
「――
フト先輩の言葉を継いでカラクリ屋敷の現状についてそう結論を挙げ、イチリン先輩は私達に深々と頭を下げる。
「"その状況的に仕方ないことだね。...そうなれば、試練はどうなるのかな?"」
「こちらとしては、試練をなしとしてくれる方がありがたいのだけど」
「ふむ...我らが
「――"『ゲヘナ学園』の方々が視察に来られる"。その噂は聞いていましたが...今も各所で暴動を起こしている"魑魅一座"の行動は、やはり無関係ではなさそうですね。であれば――急がれた方がよろしいでしょう。"陰陽部"へはこちらから報告を挙げておきます。皆さんはこのまま終点――『桜花展望台』へ。祭開始からすぐ、"魑魅一座"の一団が展望台へ移動していることも確認しています。お気をつけて」
「我らは当初の予定通り、暴動鎮圧の手伝いに向かう。祭であろうとなかろうと、不埒者共をのさばらせる訳にはいかぬからな」
「"――分かった。二人も気を付けて。皆、展望台に向かうよ!"」
先輩二人は私達の事情を察して先へ進む様にと促し、"先生"に続いて歩き出す―――
「...大丈夫かしら。展望台は立地的に行き止まり。追い込まれた者がどんな行動に走るか...」
「――軽く風水を見たが、『神木』の方角に吉兆ありと見えた。あ奴等ならきっと上手くやるであろう」
「...じゃあ、この三人から情報を聞き出してから手伝いに向かいましょうか。さぁ、大人しく知っていることを吐きなさい。じゃないと――ゲンコツで酷い目に遭うわよ?」
「ウンザン殿の拳骨は痛いぞー?それに――そのまま握りしめてもいいのだぞ?」
「「「ヒイッ?!」」」
~『桜花展望台』最上階 展望バルコニー~
side-ミチル
「――居た!イブキ!フラン!」
「二人共、無事ですか...?!」
「――イロハ先輩!お姉様!」
「先輩達も、忍者さん達も来た!ね、イブキ達の言ったとおりでしょ!」
「く、クソ...!
―――展望台の階下で"魑魅一座"が攻撃を仕掛けて来たけど、私達の出る幕も無く『シャーレ』や"
展望バルコニーに"魑魅一座"のリーダーらしき狸耳と尻尾を伸ばし、天狗面を被った生徒と部下三人がイブキちゃんとフランちゃんを囲んでいて、レミリア副議長とイロハ議員の声に反応した二人が私達を見て目を輝かせる。
一方で、"魑魅一座"のリーダーらしきヤツは万事休すといった様子で歯軋りしている。
「"――"魑魅一座"。君達の目的は分からないけど、少なくとも
裁定は"陰陽部"が下すだろうけど、今からでもその二人を解放すれば罰は軽くなる筈だ。――こちらとしても、できる限り大きな騒ぎにしたくはない。どうか大人しく、イブキとフランを解放してほしい"」
「...う...うるせぇ!お前ら外の余所者にあたしらの郷土愛が分かるもんか!『ゲヘナ』の野蛮な連中が
"魑魅一座"のリーダーはそう声をあげ―――
―――イブキちゃん、フランちゃんの衣装の襟首を両手でそれぞれ掴んで持ち上げて
「す、少しでも動いてみろ!お前らの大事な大事な後輩のガキ二人は助からねぇぞ?!」
「っち...!マズいわね...」
「なんて悪辣な...![虎丸]の主砲弾一発でも贖えない罪です...!」
「っ...不味い状況です。この状況ならば、向かい側に狙撃手を置いて気を引いている間に犯人を撃ち倒すのがセオリーですが...」
「こ、この展望台にはそのような場所はありません...!い、イズナ達はどうしたら...!」
「う、うぅ...ど、どうしよう...?!」
"魑魅一座"のリーダーが取った行動を前に私達は動けなくなる。周りの部下三人もそれぞれの得物をこちらに向けて警戒している。こっちが少しでも動けば二人は―――
「――こんなことしたって無駄だよ!どんな状況でも忍者は諦めない!イブキとフランは約束したんだから!」
「今のうちに諦めないと、忍者が私達を助けちゃうよ!」
「――!」
―――
「わぁ~...!色んな衣装があるみたいだね!」
「どれも着てみたいけど、
―――『渦巻映画村』のステージに着いて、着付け準備の合間にとスタッフから渡された沢山の『和楽姫』の衣装のサンプル写真を二人で覗き込みながらイブキちゃん、フランちゃんは楽しげに吟味している。
「――ねぇ、ミチル先輩はどれがいいと思う?」
「――にぇっ?!あ、
「うん!――折角なら、忍者にとって助けがいがある衣装がいいなって!」
―――"忍術研究部"認可の是非が懸っている緊張で意識が逸れていて、フランちゃんから声を掛けられて思わず驚き、戸惑いながら確認すればイブキちゃんが頷く。
「そ、そっかぁ...う、うーん...」
二人の純粋な瞳の輝きを前にしては拒否も出来ず、二人が差し出した衣装の写真を見る。
「――イブキちゃんは、これ。フランちゃんは...これが似合う、かな...?」
―――四、五分程悩み、結局選んだのはそれぞれの制服と同じ色地の衣装だった。忍者の装束を考えるなら兎も角、こんなお姫様の衣装なんて考えた事が無かった。忍者の探求しかしてなかった自分が今は憎い。
「うん!これでいい!私も赤は好きだし、デザインも好き!」
「イブキもこれ気になってた!忍者はこういうのも見抜けちゃうんだね!」
「...そ、そうだよ!忍者は相手の動きを先読みしなきゃいけないからね!」
偶然にも二人の好みに合っていたみたいで、二人の純粋で嬉しそうな言葉に内心申し訳無さを覚えながら頷く。―――私は鋭い洞察力なんて持ち合わせていない。本当は偶然だなんて、純粋に忍者を信じている二人には言えない。
「...でも、やっぱり緊張しちゃうなぁ。やることは簡単みたいだけど、上手くやれるかな...」
「お姫様なんて本とか漫画で見たことしかないし...」
二人は私が選んだ衣装の写真を見ながら不安を零す。―――飛び級で高校一年生になっているけど、まだ子供らしさは抜けていないらしい。初めてみたいだし、緊張するのは当然だろう。ここは―――
「――じゃあ、二人にこれをあげるよ。せっかく忍者に会えたんだし、その証でね」
「わぁ...!これって...!」
「――『忍者ニンペロさん』の『ニンペロ様』と『クノイチペロ様』だ!」
―――スマホを取り出し、ストラップに提げていた『ニンペロ様』と『クノイチペロ様』のチェーンを外して二人にそれぞれ渡す。この前クレーンゲームの景品でちょうどそれぞれ一体ずつが残っていたものを見付けて、少しお金はかかったけど手に入れることが出来たものだ。イブキちゃんが『ニンペロ様』を、フランちゃんが『クノイチペロ様』を受け取って嬉しそうに瞳を輝かせる。
「お祭中に緊張、不安を感じたらそれを見たり触ったりして。――必ず、私達忍者は試練を突破して助けに行くからね」
「分かった!――約束だよ!」
「うん!約束!」
二人が差し出した小指に私の小指を絡ませ、約束を交わす―――
「"――
「く、クソ...だからって降参できるかよ!」
―――そうだ。約束したじゃないか。『必ず助けに行く』って。目の前で二人が危険な状況に遭っているというのに、ここで怖気ついていたら忍者の名折れだ。ここは―――!
「――う...うおりゃー!」
「"ミチル?!"」
「「ぶ、部長?!」」
「なっ...?!」
―――吶喊。後ろで"先生"達が驚いているけど、目の前で"魑魅一座"の面々もまさかの行動に驚いて動きが固まっている。このチャンスは逃がさない―――!
―――二人を掴んでいる"魑魅一座"のリーダーを踏み越え、その手からイブキちゃんとフランちゃんを無理矢理取り返す―――
―――でも、そのままバルコニーの柵に乗る目論見が外れ、勢いそのまま
「"ミチルッ!!"」
「「部長!!」」
―――瞬間、私の頭上で何かが羽ばたく音が聞こえたと同時に私の制服の襟が掴まれる。
「わぁ...!イブキ達空飛んでる!」
「わぁ、すごーい!」
「っく...!流石に少し重いわね...!――全く、いきなり吶喊してお二人を助けたのはいいですが、そのまま飛び出してどうするんですか!私が居なければ
―――見上げた先には私、イブキちゃん、フランちゃんの重さに耐えているアヤの顔があり、翼をバサバサ羽ばたかせて上昇しながら私を見下ろしてそんな声をあげる。
「い、いやぁその...ホントはバルコニーで二人を取り返して戻るつもりだたんだけど...勢い余っちゃって」
「全く...今はじっとしていてください。このまま飛んでバルコニーに戻りますから。――あちらも制圧が終わったみたいですしね」
「――容疑者制圧!」
「ほら、大人しくお縄に付きなよ!」
「捕縛完了です!」
「お、大人しくしてください...!」
「――全く...おーい部長ー!無茶っていうか無謀なことしたね!こっちも隙ができて助かったけどさ!」
―――見下ろすと、バルコニーでは"魑魅一座"の面々が『シャーレ』のミヤコとモエ、
「イブキ、フラン!大丈夫?!」
「大丈夫だよー!」
「むしろ、空を飛ぶなんて初めてだから楽しいよ!」
「っく...私としてはだいぶキツいですがね...!もう少しで...!」
捕縛中の隣でレミリア副議長が声を張り上げて安否を確認すると、イブキちゃんとフランちゃんは楽しげにそう答える。アヤは楽しげな二人に反して少し辛そうにしながらも少しずつ高度を下げながらバルコニーに向けて降りていく―――
「っと...!ほら、二人の所に行ってあげて」
「「レミリア先輩!イロハ先輩!」」
「「イブキ、フラン!」」
―――アヤがバルコニーに入り、二人を先に着地させてから私も足を着地させ、二人の背中を押して駆け寄る二人の下に向かわせる。
「ふぅ...これは明日、筋肉痛ですかね。――本当に無謀なことをしましたね、ミチルさん」
「――アヤの言う通りだよ。アヤが居なかったら
「...助けるって約束したからね。その一心で動いちゃったから...」
翼を軽く揺らしながら顔を顰めるアヤ、歩み寄ってきたヌエの言葉にそう答える。追い込まれたり、気負いすぎると突拍子もない行動に出る―――私の悪い癖だ。これで何度ヌエやイズナ達にフォローされたか...
「"――君が動いてくれたおかげで助かったよ、ミチル。その勇気は人としても、忍者としても必要なものだ。君はいい忍者になれるよ。...それはそれとして、
「うっ...ご、ごめんなさい"先生"殿...」
―――"先生"も私の行動で助かったとお礼を述べるけど、少し怒った様な表情で続けたお説教宣言を受けて頭を下げる。さっきの突拍子も無い行動は今まででも極め付けだろうと自分でも思う。でも―――
「――ミチル先輩、ありがとう!忍者は
「約束通り助けてくれてありがとう!忍者なら助けてくれるって、信じてたよ!」
―――イブキちゃんとフランちゃん。
ということで不忍ノ心編は次がラストです。締め回なので少し短くなると思います。また、チラ見せ程度でしたがいちふとも登場です。部活動、関係性等についてはメイン五章で...多分。
名前:
所属校:百鬼夜行連合学院
学年:二年生
部活動:"仏道部"『命蓮寺』修行僧
装備:HG(
名前:
所属校:百鬼夜行連合学院
学年:二年生
部活動:仙道部
装備:AR(