Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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補習授業部、結成です


File91.ET-03~結成、補習授業部②~

~"ティーパーティー"会館 正門前~

side-"先生"

 

「"さて...どう集めたものかな。二人は部活動所属だから、その施設に行けばいいとして..."」

 

―――会館の正門を出て少し歩いてから足を止め、封筒から学籍情報の書類を取り出して改めて確認しながら言ちる。"正義実現委員会"所属『下江コハル』と"シスターフッド"所属の『久栗キクリ』はそれぞれの活動拠点を訪ねればそこに居る可能性が高い。でも、残る二人―――『白洲アズサ』と『浦和ハナコ』は無所属、所謂帰宅部だ。

 時間はもうすぐ正午であり、午前の授業は終わっているだろうけど―――そもそもとして私達は『トリニティ』の地理に疎い。故に―――

 

「そうですね...まずは"正義実現委員会"と"シスターフッド"に行ってみましょう。『トリニティ』内の広範囲で活動している組織ですから、もしかしたら二人を知っている方が居るかもしれません」

「"そうしてみようか。道中で出会える可能性もあるしね"」

 

―――"補習授業部"部員の回収と『トリニティ』内の案内役を兼ねた、"補習授業部"部長のヒフミの提案に頷く。委員会や部活動であれば、基本的に固定された活動拠点―――建物がある筈だ。施設なら案内板に頼れるし、『トリニティ』内で広く活動しているなら、誰かしら帰宅部の二人を知っている生徒が居る可能性もある。

 

「ここからなら...確か、"シスターフッド"の大聖堂が近いですね。では、行きましょうか」

「"分かった。案内よろしくね、ヒフミ"」

 

 先頭を歩くヒフミに続いて歩き出す。

 

―――『D.U.外郭地区』や『ミレニアム』の様な現代的な高層ビルは無く、白を基調とした格式高い、高級な印象を抱かせる建物が並んでいる。目に付いたケーキショップらしきお店のショーウィンドウを見ると、()()()()()()ケーキやプリンが並んでいる。

 

「"物の値段も結構高いね。流石お嬢様学校というべきか..."」

「うわー...『D.U.』も物価は高い方だけど、それでもこの値段で同じの四個は買えちゃうじゃん」

「あっちは服屋...ショーウィンドウを見るに『トリニティ』生用の制服を取り扱っているみたいだぞ。"ティーパーティー"用の制服もあるが...すごい値段だな。私達『SRT』の制服はオーダーメイドだし、装備品も含めればこれだけの値段になるが...制服単体でこんな値が付くんだな」

 

 モエがケーキショップのショーウィンドウを見て驚いた表情を浮かべ、向かい側の服屋のショーウィンドウを見ているサキが戸惑った様に感想を零す。

 

「確かに、『トリニティ』全体としても物価は他より高いと思います。ですが、ここは先程まで居た"ティーパーティー"会館が傍にあるおかげで特に高級なブランドやお店が集まっているので、ここでの物価が標準ということはありませんよ」

「"高級品を必要とする場所には自然と相応のお店が集まるから、か...ヒフミが詳しくて助かるよ"」

「そ、そんなことはありませんよ...『ペロロ様』グッズを求めてあちこち回っていたら傾向を覚えてしまっただけで...」

「...その努力を()()()()勉強にも向けていたら、こうして案内を受けることはなかっただろうと考えると、数奇な運命というものを感じますね」

 

 ヒフミの謙遜した言葉を受けてミヤコが呆れた半目を彼女に向ける。

 

―――『"ヒフミ...この受験履歴について教えてほしい。一回、二回程度なら優先すべき事情があったって考えられるよ?でも...君のこれはどういうことかな?"』

―――『えっと...その...し、仕方ないじゃないですか!試験日に限ってペロロ様のゲリライベントやグッズ販売が行われるんですよ?!一度逃せばいつまた手に入れられるか...!ペロロ様が供給されるなら、ペロロ様を愛する者として逃す訳にはいかないんです!』

―――『...ヒフミ先輩。モモフレンズは人気サブカルチャーだけどな...結局は創作上の存在であっtそんな夢のない指摘はやめてくださいッ!!モモフレンズは!ペロロ様は!!ちゃんと存在しているんですッ!!うぉっ...み、耳が...!』

―――『ヒフミ。自分の推しをバカにされたくない想いは理解するけど、はしたないわよ。...まぁ、聞いての通りよ。熱中できる趣味があるのはいいことだけど、平気で他を――学校生活上重要なものすら疎かにするのは、ねぇ...』

 

―――"ティーパーティー"テラスにやって来たヒフミから聞き出した試験未受験の理由は驚きよりも呆れを圧倒的に感じるものだった。『ブラックマーケット』での初対面から、彼女が『ペロロ様』をこよなく愛する娘である事は知っていた。それがまさか―――()()()()()()()()程の熱中振りなのは予想出来る訳が無い。

 趣味は人生に彩りを添えるものだけど、趣味はあくまで学校や仕事、日常生活の次点にあるべきものだと思う。趣味を最優先にしてしまう行動は日常生活に悪影響を及ぼしかねない。ましてや、高校生という学業がメインである段階でそれを後回しにするのは尚更良くない。ヒフミがその悪影響を如実に示している。

 

―――『"先生"、聞いての通りです。ヒフミさんは授業は受けていますし、試験さえ受ければ合格点を取れるだけの学力はあると私は信じております。ですから――"補習授業部"部長としての役目を全うし、補習期間中の試験を()()()()()()ように監督をお願い致します』

 

―――ナギサからも念を押されて頼まれた事だ。ヒフミは温厚で、『アビドス』でも恩返しがしたいと協力してくれる様な優しく誠実な娘だ。行動力は()()()()()()()()()()()()所があるけど、それが"補習授業部"を円滑に動かす要素となるようにしっかり見ておかなければ。

 

「あはは...こ、今回は大丈夫ですよミヤコちゃん。()()()()()()『ペロロ様』ファンコミュニティも動きはありませんし...今回の補習期間を突破できなければ退()()ですから。四人と力を合わせて突破してみせます!」

「"その意気は()()()()補習授業に向けてね。一応私も顧問として皆を見るけど、部長である君がリードするんだよ"」

「はい!――ナギサ様から直々に頼まれた役目です。()()()()()()私ですが、頑張ります!」

「...ねぇサキ。どう思う?ヒフミ先輩って平凡、普通かな?」

「...『ペロロ様』グッズ一つの為に『ブラックマーケット』に潜り込むんだ。行動力は尋常じゃないと思うぞ」

 

 ヒフミの決意表明を聞いたモエとサキが小声で交わす会話を背に受けながら通りを歩いて行く―――

 


~大聖堂 正面出入口付近~

side-ヒフミ

 

「――見えてきました!あの建物が『大聖堂』です!」

 

―――歩くこと十数分。真っ白な大きなドーム、煌びやかなステンドグラス、尖塔等で構成された荘厳な建物―――"シスターフッド"の拠点であり、ミッションスクールとしての『トリニティ』の象徴の一つでもある『大聖堂』を指差す。

 

「"これは立派な聖堂だね。流石『トリニティ』、ミッションスクールだからこそか..."」

「出入りしたり、周りで作業をしている黒い制服の生徒...あれが"シスターフッド"か。そう言えば、道中でもそれらしい姿の生徒がゴミ拾いをやっていたな」

「そうですね。あの『大聖堂』は勿論、『トリニティ』内でも啓蒙活動やボランティアなどの慈善活動を行っているんです。ですが...()()()()が絶えない組織ですね」

「"()()()()?"」

「はい。"シスターフッド"は政治への不介入、中立を謳っていますが..."『トリニティ』に関する()()()()()を握っている"のでは...という噂ですね」

 

 道中で"シスターフッド"の方々によるボランティアを見かけた事を思い出したサキちゃんの言葉に頷き、"シスターフッド"についてあちこちで聞く()()()()について挙げる。

 

「特に"シスターフッド"の現リーダーである『歌住サクラコ』様は、時々()()()()()()()()()()()()だったり、"シスターフッド"内で()()を行っただとか...()()()()()()()を聞きますね。"シスターフッド"内でも畏怖されているとか。

 逆に―――サクラコ様の右腕、"シスターフッド"No.2とされている『天城サリエル』様は"シスターフッド"の方々からは勿論、信心深い生徒からも篤く慕われていると聞きますね。()()()()()()姿()もあって――」

 

 

「――おや、私に何か用かな?」

 

―――話している間に『大聖堂』に結構近付いていたらしい。凛とした、しかし優しさも感じる声が聞こえてハッと前を向くと、青みを帯びた銀髪にウィンプルを被り、頭上に青いヘイローを浮かべ、ロングドレスの"シスターフッド"の制服の背中からは()()()大きく白い翼を伸ばした生徒―――サリエル様その人がこちらに歩み寄って来ていた。

 その斜め右後ろでは、金髪のロングヘアーに被ったウィンプルの下に白い羽を覗かせた"シスターフッド"の生徒―――今回"補習授業部"加入対象である生徒の一人、『久栗キクリ』さんが付き従っている。

 

「"初めましてだね。――連邦捜査部『シャーレ』顧問、"先生"だよ。君が『天城サリエル』かな?"」

「――『シャーレ』指揮下、"RABBIT小隊"『月雪ミヤコ』です」

「――同じく"RABBIT小隊"、『空井サキ』だ」

「――同じく『風倉モエ』でーす。よろしくー」

「――お。同じく"RABBIT小隊"、『霞沢ミユ』です...!」

 

 サリエル様に対して"先生"と"RABBIT小隊"が自己紹介する。

 

「いかにも。"シスターフッド"の『天城サリエル』だ。『シャーレ』については噂はかねがね聞いてるよ。知己を得られて光栄だ。こちらは『久栗キクリ』、私の直属の部下だ」

「――『久栗キクリ』と申します。新たなる出会いを齎したもうた主に感謝を」

「――改めて。私に何か用かな?それとも、我が"シスターフッド"そのものに用かな?」

「――あ、『阿慈谷ヒフミ』です...!そ、その...今回、私を部長として、"先生"を顧問として"補習授業部"が設立されたのですが、その対象にそちらのキクリさんが含まれていまして...」

 

 私も自己紹介し、キクリさんに用事があると明かす。

 

「"これが"ティーパーティー"からの命令書だよ"」

「拝見しよう。...ふむ...設立の噂は聞いていたが、キクリも対象だったか。確かに、キクリは"シスターフッド"での活動への傾倒が過ぎて勉学に不安を感じていた所だ」

 

 "先生"が封筒から"補習授業部"異動の命令書を取り出してサリエル様に渡すと、サリエル様は命令書の内容を確認して()()()()()()()()眉を上げる。

 

「――命令書としても正式、正当だね。...シスターキクリ。君を暫しの間とはいえ手放すのは惜しいが――君は敬虔な信徒である以前に『トリニティ』の一生徒だ。卒業に必要な成績は取らなければな。何、君ならすぐに復帰できる。普段の献身を、"補習授業部"の面々に対しても全うすれば尚更、な」

「――"ティーパーティー"がそうせよと命じられたなら、従わない理由などありましょうか。確かに、シスターとしての献身に傾倒し過ぎていた自覚はあります。補習授業を通して、己の在り方を改めて見つめ直しましょう」

 

 サリエル様は"先生"に命令書をかえしながらキクリさんに"補習授業部"への参加を命じる。対してキクリさんは微笑みを変えず、素直に頷いて私達に向き直る。

 

「――ヒフミさん、『シャーレ』の皆様。暫しの間厄介になりますが、何卒よろしくお願いいたします」

「"よろしくね、キクリ。補習授業を突破できるようにお互い頑張ろう"」

「よ、よろしくお願いします...!」

 

 キクリさんはそう宣言して深々と頭を下げ、"先生"に続いて頭を下げる。

 

「私からもよろしく頼む。――さて、準備が必要だろう。シスターキクリ、午後の懺悔室は私が代わる。準備を整えて、彼女達と共に行くといい」

「承知いたしました。――皆様、暫しお待ちください」

 

 サリエル様の指示にキクリさんは頷き、私達に頭を下げてその場を去る。

 

「――準備にもそれなりに時間がかかるだろう。せっかく来てくれたことだ。我が"シスターフッド"を簡単に案内しよう」

「"分かった。私達は『トリニティ』について全然詳しくないからね。お言葉に甘えさせてもらうよ。ヒフミ、ミヤコ達も大丈夫だね?"」

「勿論です」

「は、はい...大丈夫です!」

 

 サリエル様は微笑みながら案内を提案し、"先生"の確認に頷く。

 

「では、中へどうぞ。まずは"シスターフッド"の歴史について簡単に説明しよう――」

 

 『大聖堂』の中に足を向けるサリエル様に続いて歩き出す―――

 

 


~"正義実現委員会"本部付近~

side-ミヤコ

 

「――見えてきました。あの建物が"正義実現委員会"本部です」

「"黒と赤...以前ハスミを指揮下に置いたことがあったけど、改めて見てもよく目立つ制服だね"」

「"正義実現委員会"の制服の黒は『我らは如何なる色にも染まらない』――治安維持組織としての公正を示している、とされています。

 体制上"ティーパーティー"麾下にあるとはいえ、校則に反するならばティーパーティー(上位組織)相手でも正さねばならない。"正義実現委員会"の黒はその意思を示すものなのです」

 

―――"正義実現委員会"本部の建物が近付くにつれ、"正義実現委員会"所属らしき黒いベレー帽、黒いチョーカー、黒いセーラー服に真っ赤なリボンタイを留めた制服の生徒の姿が増えて来て、"先生"が見回しながらそんな感想を零し、ヒフミ先輩よりも詳しいとの事で案内役を兼ねたキクリさんが"正義実現委員会"の理念について説明する。

 

―――ブロロ...

 

「...しかし、染まらないと謳っていますがその実態は『トリニティ』()()()()()に染まってしまっています」

「"...派閥争い、政争かな?"」

 

―――車道を"正義実現委員会"の配備車両らしき黒塗りに赤いラインが走ったワゴン車が本部の建物方面へ向けて二台通り過ぎて行く中、キクリさんはそう言って目を伏せ、"先生"の言葉に頷く。

 

「その通りです。――『トリニティ』での組織運営はどうしても政治、派閥争いが絡んでしまいます。"正義実現委員会"もその例に漏れず、不良や生徒の問題行動への対応は兎も角として、特に"ティーパーティー"所属生徒が何かしら問題を起こした場合は、前者への対応以上に折衝や交渉が必要になってしまうのです」

「理念通りに行動できないのはどの学校でも同じですね。私達『SRT』では指揮権限を持っているのが"連邦生徒会長"なので、発された指示にはその内容がどうであれ従わねばなりませんから」

 

 キクリさんの説明を受けて同情を示す。―――武力を有する治安維持組織は出来る限り中立、公正を保たなければならないけど、当然ながらその上位組織――生徒会や、それに準ずる組織――の指示、意向には従わなければならない。

 生徒会、それに準ずる組織が責任者として治安維持組織の活動、行動に責任を持ち、監督しているからこそ、暴走、暴発しない様に権限や予算で以て統制を図るのは当然だ。しかし、『トリニティ』ではそこに派閥争いや政争が大きく絡む様だ。

 

「"治安維持組織としては規則違反は問答無用で、とはいかないのはもどかしいものだろうね"」

 

 そんな会話を交わしている内に、"正義実現委員会"本館が近付いて来る―――

 

 

~"正義実現委員会"本館 正門前~

side-"先生"

 

「ほら、降りなさい!」>

「シュコー...惜しかった...あそこで弾切れしなければ...シュコー...」>

「あらあら、こんなに大所帯で...♡私を囲んで■■■なことをされるんでしょうか♡」>

「はいはい、留置場に行くっすよー」>

 

―――正門傍の警衛詰所で"補習授業部"部員招集の意向を伝えて通された先、玄関前の広場。右手の方では道中見かけた車両二台が止まっていて、()()()()()を捕まえたのだろうか、"正義実現委員会"の委員達が固まりながら移動していく様子を横目に、正面玄関へと向かう―――

 

「――――あぁ。それぞれ三番、四番房に入れておけ。片方は()()()()()()だろうが、もう片方は聴取が必要だろう――――」

 

―――玄関前では、黒い長髪に黒いベレー帽を被り、()()()()()()()()()()()()()()を浮かべ、"正義実現委員会"のセーラー服の左肩に赤いモールを飾ったカラビニエリの様な、"正義実現委員会"ロゴマークを誂えた黒いマントを羽織り、背中からアヤ、ハタテのそれと似た一対の黒い翼を伸ばし、赤紐の黒いブーツを履いた生徒と"正義実現委員会"委員が会話を交わしている。

 

「――――では、後は任せる。報告書も忘れずにな」

「了解しました!」

「...おや、これは見ない顔が大勢..."正義実現委員会"に用事かな?」

 

―――会話を終えて委員がバインダーを脇に抱えて本館に入っていくのを見送った生徒は私達に気付いて振り向き、おやと眉を上げる。

 

「"――『シャーレ』顧問、兼"補習授業部"顧問の"先生"だよ。正義実現委員会(ここ)の生徒に用事があってね"」

「ほ、"補習授業部"部長『阿慈谷ヒフミ』です...!ここ"正義実現委員会"に対象の方が居るので、招集に来ました...!」

「ほう、"補習授業部"...私は『飯綱丸(いいづなまる)メグム』、三年生だ。"参謀"を務めている。『シャーレ』の噂はかねがね。知己を得られて光栄だ、"先生"」

「"こちらこそよろしく、メグム"」

 

 生徒は『飯綱丸メグム』と名乗り、握手を交わす。

 

「――それで、我が"正義実現委員会"に"補習授業部"の対象が居ると?」

「"そうなんだ。――これが"ティーパーティー"からの命令書だ"」

「拝見しよう。...ふむ...ん?」

 

 メグムは私が差し出した命令書を受け取って内容を確認すると、驚いた様に眉を上げる。

 

「...これは不思議な因果だな。コハルは勿論ここに居るし――『白州アズサ』、『浦和ハナコ』両名も()()()()()

「"――それは奇跡的な偶然だけど...後者の二人は無所属だ。それがどうして正義実現委員会(ここ)に?"」

「我が"正義実現委員会"がどういった組織であるかを知っているならば、察しは付くのではないかな?」

 

 私の問に対し、メグムは値踏みするような眼差しで私を見つめて問いを返す。治安維持組織である"正義実現委員会"。そこに無所属の生徒が居るという事は―――

 

「"――校則違反者を迎えに来たか。校則違反者に関する聴取なりか。或いは...()()()()()()()()()()()()か。考えられるのはこんな所かな"」

「...そこまで絞れるなら上出来だ。――では、案内しよう。シフトを考えれば()()()()()()()()()だろう」

 

 メグムは私の答えに満足そうに頷き、踵を返して玄関へと歩き出し、私達も彼女について行く―――

 

~"正義実現委員会”本館 留置場~

 

―――キィィ...

 

「――め、メグム先輩...!お、お疲れ様です...!...その...後ろの方々は...?」

 

―――留置場のネームプレートが打ち付けられた鉄格子の扉を開けると、鉄格子の牢屋が並ぶ部屋が広がっていて、少し奥、右手の房二つの中に人影と、その前に"正義実現委員会"委員の娘―――黒い小さな翼が伸びたピンク色の髪にベレー帽を被り、サイズが合っていないのか制服の左肩がはだけ、背中から小さな一対の黒い翼を伸ばした―――"補習授業部"対象である『下江コハル』の姿が見える。

 コハルは私達に気付き、緊張した様にピシリと背筋を伸ばして出迎える。ピンク色の瞳はメグムを見て、その後に私達にチラリと視線を向けると緊張した様に瞳を一瞬震わせる。

 

「――お疲れ様、コハル。こちらは"連邦捜査部"『シャーレ』の面々と、そこの校則違反者達に用がある者達だ」

「"――"連邦捜査部"『シャーレ』顧問、"先生"だ。いきなりの訪問でごめんね"」

「...えっと...その...だ、大丈夫y...です...」

 

 私が自己紹介するとコハルは緊張した様に答える。ピンク色の瞳は緊張と警戒で少し震えている。―――やはり、人見知りが強い娘の様だ。

 

「――さて、校則違反者達の調子はどうかな?」

「え、えっと...その...抵抗はしていないんですけど...」

 

 コハルはメグムの問に対して困った様な表情を浮かべて右手の房に目を向ける―――

 

「シュコー..."正義実現委員会"の『飯綱丸メグム』"参謀"...あの制圧方法はやはり貴女の立案だったのか...シュコー...」

 

―――紫の花の髪留めを飾った白銀のロングヘアー、黒いワンピースの制服の上に白いセーラー服風の上着を羽織り、背中には造花のアクセサリーを飾った一対の白い翼を伸ばしている。しかし―――顔には()()()()()()()を装着し、くぐもってはいるけど凛とした声がメグムに対して何処か悔しそうな言葉を紡ぐ姿はどうにも異質だ。

 顔は見えないけど、髪や制服、ヘイローの形状は間違いなく『白洲アズサ』のそれだ。

 

「何度お前の捕縛、制圧作戦を立案、指揮したと思っている――"氷の魔女"。おかげで我々も対ゲリラ戦への知見が深まっているよ。――隣のヤツの方が()()()()()()()だけマシ...とも言えんな。全く...慣れつつある自分にほとほと呆れるよ」

 

 メグムはアズサの異名らしき呼び名を挙げ、呆れた様にアズサが入っている房の隣に目を向ける―――

 

「あらあら...♡"正義実現委員会"の頭脳、メグム"参謀"が来られるとは。いよいよ私もあんなことやこんなこと...()()()()()をされるんでしょうか...♡」

 

―――ベビーピンクのストレートヘアを膝丈近くまで伸ばし、右耳の後ろで一房だけ三つ編みにして、頭頂部からは前側に垂れたゆるめのアホ毛が揺れている。頭上にはピンク色のヘイローが浮かんでいるけど、左側に大きく傾いた位置に浮かべ、若葉色の瞳を細め、()()()()()()()()()()軽くくねらせ、メグムを見ながら思わせぶりな―――卑猥な解釈も取れそうな言葉を漏らす。

 身体的特徴は『浦和ハナコ』のそれだけど―――何故か制服ではなく()()()()()()()。恐らく『トリニティ』指定のスクール水着だと思うけど、水着故に()()()()()()()()のはなんとも目のやり場に困る。

 

「な、なに変なこと言ってるのよ!メグム先輩がそんなことする訳ないでしょ!」

「あら?私はどんな話術で聴取されるか懸念してるだけですよ?メグム"参謀"は()()()()()()()()()と噂なんですから♡ふふ...貴女は一体どんなことを想像したんですか?」

「はぁ?!ど、どんなことって...!思わせぶりなアンタが悪いのよ!そんな...その...いかがわしいことなんて考えてない!」

 

 コハルはハナコに対して顔を真っ赤にして反論するけど、ハナコは()()()()()()()()()()()()自身の言葉の真意を明かし、逆に茶化す様に問いかける。コハルはまさかの反論に狼狽え、更に顔を真っ赤にして否定する。

 

「落ち着け、コハル。こういう手合いの言葉は無視してすべきことを淡々とこなすのが定石だ。――さて、本題に入ろう。本来なら聴取の後しばらく留置場(ここ)で頭を冷やさせた後で釈放するが...状況が変わった。――『白洲アズサ』、『浦和ハナコ』。お前達は"補習授業部"への異動が決定した」

「"――これが"ティーパーティー"からの命令書だよ"」

 

 メグムの言葉に合わせ、個人向けの命令書を取り出して格子の隙間からそれぞれに手渡す。

 

「シュコー..."補習授業部"?知らない部活だな...でも、最近成績が悪いのは自覚してるし、生徒会――"ティーパーティー"がそうしろと言うなら従うしかない」

「...確かに、紛れもない"ティーパーティー"からの命令書ですね。まぁ、勉強が苦手である自覚はありましたし...仕方ないですね♡」

 

 アズサの表情は見えないけど、怪訝そうに首を傾げながら受け入れる姿勢を示し、ハナコは()()()()()()()()()()命令書を見つめ、しかしすぐ先程までの雰囲気に戻って困った様な笑みを浮かべて受け入れる姿勢を示す。そのやり取りを見ていたコハルが肩をプルプル震わせ―――

 

「"補習授業部"...ぷっ...あはは!いいじゃない!私達も毎度毎度アンタ達に煩わされずに済むし!何より――度々問題を起こす悪党と変態が()()()()!それって()()ってことでしょ!実にお似合いだわ!私がその場に居たら羞恥心で死んじゃいそう――」

 

 

 

 

「――コハル。お前も"補習授業部"の対象だ」

 

―――コハルがアズサとハナコを嘲笑う言葉を遮る様にメグムが淡々と宣告した瞬間、二人を嘲笑った笑顔が(ↀᯅↀ)(独特な目つき)で固まる。

 

「"...命令書、確認するかい?"」

 

 コハル向けの命令書を取り出して差し出すと表情を変えずに震えた手で命令書を受け取り、目つきは変えず何度も目線を上下させて内容を読み込む。

 

「嘘...ですよね...?エリートの私が...補習授業、なんて...」

「"ティーパーティー"からの正式な命令書だ。お前自身が優秀だと自認していても、ティーパーティー()の認識は違ったようだな」

「そんな...私が...補習授業...」

 

 震えた声で念押しの様に確認するコハルに対してメグムは淡々と嘘ではないと返し、コハルの表情は変わらず、しかし顔がジワリと赤くなっていき、目元にジワリと涙の粒が出て来る。アズサとハナコをバカにしたら自身も二人と同じ場所に所属する事になった―――発言への恥じらいと、予想外の宣告へのショックだろうか。

 

「現実としてすぐに受け止めるのは難しいだろう。しかし、現実逃避をしても事実は消えない。だが――」

 

 メグムはゆっくりとコハルの前に歩み寄り―――

 

「――お前が次代の"正義実現委員会"を担える素質を持っていることは、私は勿論、ツルギ、ハスミもよく知っている。エリートなら、補習授業などすぐに突破できるだろう」

「...せ、先輩...っ...分かりました...!私、必ず戻ってきます...!」

「その意気だ。私達はいつでも待っているからな」

 

―――頭に手を置き、優しい眼差しを浮かべてメグムはそう声を掛ける。コハルは涙目で彼女を見上げ、"補習授業部"加入を受け止めて頷く。メグムは微笑み、コハルの頭を撫でる。

 

「――さて、諸々準備が要るな。房の二人も荷物が必要だろう。後処理はこちらで行っておく。この場で釈放するが..."補習授業部"としてしっかり手綱は握っておくことだ」

「あら、私達が釈放早々逃げ出すと?またすぐ皆さんに捕まるのは面倒ですからね...皆さんにわちゃわちゃと囲まれて()()()()()()()()()のも悪くはありませんが♡」

「シュコー...囲まれて手足を拘束されるのは気持ちいいのか?」

「何言ってるのよ!エッチなのはダメなんだから!」

 

 メグムは私達に向き直り、部長であるヒフミを見てアズサとハナコの釈放を告げ、ハナコのまた思わせぶりな言葉に対してアズサが首を傾げ、コハルがまた顔を真っ赤にしてツッコみを入れる。

 

「あら?犯人の四肢を拘束するのは制圧方法として普通のことでは?もしかして...♡拘束する時に()()()()()()「そんな訳ないでしょ!バカ!」

「そこまでにしておけ。――"先生"、見ての通り色々と手がかかるメンツばかりだが、よろしく頼む」

「"勿論だよ。困っている生徒を助けるのが教師の役目だからね"」

 

 コハルをイジるのが気に入ってしまったのかハナコがまた反論を返し、コハルはさっきの様にツッコみを入れる。メグムが呆れた表情で窘め、私に向き直る。

 

「...噂通りだな。――さて、釈放してやろう。コハル、鍵を持ってきてくれ」

「は、はい!」

 

 メグムは感心した様に頷き、コハルに顔を向けて鍵を持って来るよう指示を出し、コハルが頷いて小走りで看守詰所に向かう―――

 

 

~"正義実現委員会"本館 "参謀"執務室~

side-メグム

 

「――では、自分はこれで失礼するっs..失礼します」

「――うむ。任務ご苦労」

 

―――イチカから『白州アズサ』、『浦和ハナコ』両名の制圧任務の報告書を受け取り、執務室を辞する彼女を見送る。

 

「..."補習授業部"か...」

 

 紅茶の残りを飲み干し、報告書の内容を速読しながら呟く。

 

―――私が入学してから今まで、"補習授業部"が設立された事は無い。私の周囲に成績が奮わない者は居るには居たが、独力か友人の力を借りて成績を回復させていた事で"補習授業部"の世話になった例は無かった。

 

「...コハルは確かに成績が悪い。とは言え、"飛び級制度"を突破しようとして身の丈に合わない勉強範囲、難易度で頭が追い付いていないだけだ。同級生なり、先輩なり、勉強を支えられる者が居れば充分回復、改善は見込める。...()()()()()()()()()()()()()()()がそれを邪魔しているが。...これを考えれば"補習授業部"は渡りに船ではある。ではある、が――」

 

―――態々"補習授業部"に頼らずとも成績改善が見込める手はあるが、コハルの性格がそれを邪魔している。これを改善するならば"補習授業部"―――殆ど関わりがない者達と協力し、知恵を出し合う環境は荒療治なれど悪くない手だ。しかし―――

 

「――どうにも腑に落ちない。何故()"補習授業部"を設立する?『エデン条約』締結が間近なこの忙しい時に?」

 

 報告書にサインを入れ、認印を押印してデスクに置いて言ちる。

 

―――命令書では明日から"補習授業部"の活動期間が始まる事になっていたが、"補習授業部"設立のタイミングへの違和感がずっと脳裏に残っている。

 補習授業―――成績不振者が集まる場は、()()()()()()()()()()()()()()()()()にとって格好の標的になり得る。"ティーパーティー"もそう言った不埒者共への対応は考えているかもしれないが―――果たして『エデン条約』締結間近で、条約反対派の()()()抗議も増えつつあるこの状況で人手を割けるのか。

 

「...()()()()以来、()()()()()()が強まり、()()()()()を下すことが増えてきている」

 

 脳裏に現"ホストリーダー"()()の姿を思い浮かべる。―――淑女然として温厚。しかし芯が強く意思を貫き通す強さもある。そんな彼女が、傍目から見ていても()()()()()動きを取っている。

 

「...やはり、()()()()ならないか」

 

 スマホを取り出し、ある連絡先へ通話を繋ぐ。数回のコール音―――

 

 

 

 

 

 

『――はーい。先輩の()()()()後輩、()()()でこざいますよぉ。先輩から何か命令が下りそうな気がしてました。何なりとご用命を』

「――お前に()()()()()を与える。目的は――――」

 

 

 

―――to be continued―――

 

 




 次回より補習授業部始動です。
 そして正義実現委員会には龍を、チラ見えですが典もキャスティングしてみました。三年生でトリオ作ってもいいのでは?という思い付きでのキャスティングです。

名前:飯綱丸(いいづなまる) メグム
所属校:トリニティ総合学園
学年:三年生
部活動:正義実現委員会 参謀
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