さて、本編の開始です。
主人公の日記? ……本編かもしれないね。
皆さん、いつも感想ありがとうございます
L月A日
面倒な事になった。
『次元の狭間』をオーフィスの先導で進んでいたらはぐれた。
徹とオーフィスは無事だろうか?
実際には、危険なのは俺達の方かもしれないが。
『次元の狭間』が異世界に通じている事は知っていたが、まさか身をもって体験する事になるとは。
聞いた事も無い地名に知らない魔術式。
……異世界、か。どうしたものか。
相手が兵藤一誠とはいえ、一人ではないというのは心強い。
何とか帰らなければならない。
俺達を拾ってくれたのは。プレシア・テスタロッサという魔法使いだ。
あまり、第一印象は良くない。お互いに。
警戒されている。
いきなり『神器』の『禁手化』を見せたのは失敗だった。
この世界では、俺達の力は強すぎるようだ。
次があるかどうかは判らないが、次は『禁手化』を控えようと思う。
L月B日
徹、オーフィスと合流出来た。
これで、あの時『次元の狭間』に居た面子は揃った。
徹とオーフィスが居るのは心強い。
俺や兵藤一誠は、戦う力はあるが世界に干渉する能力は無い。
そういう意味では、今回のような件では最も信頼できる二人だろう。
ここ――『時の庭園』にて部屋を借りることになった。
フェイト――という少女と会った。
不思議な場所だ。
プレシアにフェイト、魔力を持った獣、アルフ。
住んでいるのは三人だけ。
――何か事情があるのだろうな。
異世界から来た俺達を、簡単に受け入れたのだから。
L月C日
『次元の狭間』――この世界では『虚数空間』だが、その道を通って帰るのは難しそうだ。
徹やオーフィスならどうにでも出来そうだが、あの二人に頼りっぱなしになるのは最後の手段だろう。
それに、グレートレッドが俺達を探しているそうだ。
向こうが見付けてくれたら、安全に帰れるだろう。
それまで待つか、帰る手段を探すか……。
この場所には本も多い。退屈はしないで済みそうだ。
図書館――と呼べる場所を、フェイトに案内してもらった。
プレシアとフェイト。
何かあるのだろうな。
……プレシアの、娘に対するあの態度。
あまり、良い気分はしない。
L月D日
フェイトにアルフという獣を紹介してもらった。
人語を解する狼――フェンリルに似ている、と思った。
帰ったら、異世界には人語を解する獣が居ると教えてやろう。
フェンリルは、アルフのように人の言葉は喋れなかったが。
オーフィスにも紹介すると、仲良くなっていた。
精神年齢が近いからだろう。
オーフィスは、長生きしてはいるが、世界に興味を持ち始めたのは最近だ。
仲が良い友達が増えるのは良い事だ。徹も喜んでいた。
プレシアからアルハザードというものを聞かれた。
何だろうか? 聞いた事は無い。
徹と兵藤一誠も知らないそうだ。オーフィスも。
プレシアは、そのアルハザードを探す研究をしているそうだ。
L月E日
徹が、料理を作る事になった。
俺も兵藤一誠も料理の心得は無い。フェイトはまだ子供だ。
徹としてはプレシアに期待していたようだが、生憎とプレシアの方は作る気が無いようだ。
俺としては、徹の料理は美味しいと思う。
そもそも、作れない俺が作ってくれた人に文句を言うのも間違いだろう。
ルフェイや美猴も料理の心得があった――今度『次元の狭間』に行く時は、料理が出来る誰かも誘おうと思う。
まぁ、何度も異世界に行くような事も無いだろうが。
L月F日
プレシアから、フェイトを鍛えるように言われた。
この家に置いている条件だそうだ。
兵藤一誠はアルフを、という事だ。
流石にオーフィスには頼んでいなかった。
世界は違えど、ある程度の実力――魔力の強さは判るのだろう。
プレシアは、どこかオーフィスを避けている。怖れていると言っても良いだろう。
……いきなり現れた規格外の存在など、恐怖の対象でしかないか。
昔ならいざ知らず、今は随分と丸くなったのだが。
それに――規格外というなら、俺達の中では一番平凡な徹が、一番規格外なのだがな。
荒事も無いのだし、徹には料理番を頼むとしよう。
何だかんだで、一番似合うのだし。
アルビオンも同意していた。
L月G日
俺達の『神器』の事を、この世界では『デバイス』というらしい。
フェイトからバルディッシュという『デバイス』を見せてもらった。
リニスという、師から貰ったものだそうだ。
その師が亡くなってから、この『時の庭園』で、三人で暮らしているのだそうだ。
フェイトはプレシアを慕っている。
だがプレシアは、どういう訳かフェイトを疎んでいる。
……なるほど、と思う。
今日、オーフィスに勉強を教えた。英語をだ。
バルディッシュの言葉が英語なので、オーフィスには英語を学んでもらう必要があった。
その時に、俺はフェイトを誘った。
その理由が、よく判る。
――プレシアとフェイト。
よく似ている。
昔の俺に。
俺の家族に。
俺と父親に。――良く似ている。
L月H日
フェイトには才能がある。
戦う才能が。
随分と気は優しいが、戦いの際中の勝負勘は悪くない。
足は速いし攻撃も鋭い。
戦い方は、グレモリー眷属の『騎士』に近いモノがある。
まぁ、向こうは実体剣、こちらは魔法という違いはあるが。
中々に鍛え甲斐がある。
――フェイトの強くなりたい理由は、母親に褒めてもらいたいからだそうだ。
だが、恐らく……プレシアがフェイトを褒める事は無いだろう。
そう言えなかった。
告げる事が出来なかった。
L月I日
俺と兵藤一誠の魔力を計られた。
この世界の基準では、俺はSランク、兵藤一誠はBランクらしい。
順に記すなら、SSS>SS>S>AAA>AA>A>B>C>D>E。
それに+と-でランク付けされるのが、この世界の一般評価だそうだ。
俺は高い。兵藤一誠は魔法を生業にしている兵士の平均レベルくらいらしい。
まぁ、『神器』ありきならどういう数値が出るかは判らないが。
やはり、この世界は俺達が居た世界とは全く別だな。
魔力を測定する――冥界にもその技術はあったが、この世界程正確な物ではなかった。
――今回の測定が正しいのかは判らないが。
俺と兵藤一誠の差は、まぁそんなモノだろう。
アイツはまだ、成長途中だから。
もっと強くなって貰わなければ困る。
それに……『赤龍帝の篭手』の能力は『倍化』。
魔力量の差など、些細なものだ。
しかし、徹とどうやって仲良くなった、か。
徹から聞かれたが、どうやってだったか。
興味を持って、接触して、話して、飯を食べて。
――お前と一緒に居る時間は楽しい。そう思った。
だから仲良くなれた。友となれた。
お前を知ったから。判ったから。お前は――徹は敵ではないと。
ああ、そうだな。
友となるには、仲良くなるには、相手を知らなければならない。
俺は、父を知らなかった。
そして、プレシアも、フェイトも。
L月J日
フェイトは、プレシアと仲良くなりたいと言った。
昔のように、母と娘の関係になりたいと。
――俺に、何が出来るだろうか?
フェイトは、昔の俺に似ている。
親に疎まれ、憎まれ――それでも親を信じている。信じる事で、いつか和解できると思っている。
……プレシアは、フェイトを受け入れない。
何故か、そう確信している自分が居る。
徹も、兵藤一誠も感じている空気の重さ。
プレシアとフェイト、アルフが揃った時の緊張感。
プレシアとアルフの仲は悪い。
そして、プレシアから感じるフェイトへの明確な拒絶。
それでもフェイトは、プレシアとの関係を――。
判っている。
俺も、そうだった。
……そして、裏切られた。
殺されかけた。
あの少女に、その結末だけは……。
L月K日
俺達がフェイト達を鍛えている間、徹は『時の庭園』を掃除している。
最近は、その掃除も随分と板についてきたと思う。
そう言ったら微妙な笑顔を浮かべていたが。
褒めたつもりだったのだが……。
オーフィスは喜んでいた。――難しいな、人を褒めるのは。
フェイトとも、上手く会話が続かない。続いて二、三言だけだ。
兵藤一誠は、アルフと随分仲良くなっている。
オーフィスも、少しずつだがフェイトと仲良くなってきている。
羨ましい才能だ。
俺は、人と接する才能が無いのだろう。
フェイトの悩みを理解しているのに、助言をしてやれない。
もどかしく思う。
それと、プレシアの機嫌が悪い。
徹が何か言ったようだ。
……偶に、いきなり本質を突くからな。
いったい何を言ったのか。
L月L日
『ジュエルシード』。使用者の願望を叶える魔法の宝石。
眉唾物ではあるが、その宝石で俺達が元の世界に帰れる理屈も理解できた。
『ジュエルシード』は魔力の塊だ。
『次元の狭間』――『虚数空間』を安定させることが出来るほどの、純粋な魔力の塊。
その宝石があれば、グレートレッドを呼び、『次元の狭間』を渡る事が出来る。
――確かに、元の世界に帰れる可能性は高い。
恐らくプレシアにも何か目的があるのだろう。
だが、乗る価値はある。
俺達を利用するつもりだろうが、ただで利用されるつもりもない。
目的の場所は地球。
俺達が居た世界とは異なる、『第97管理外世界・地球』。
フェイトとアルフを俺達に鍛えさせたのは、多分この為だろう。
――『ジュエルシード』の事を、事前に知っていたはずだ。
L月M日
『第97管理外世界・地球』に駒王町も駒王学園も無かった。
代わりに、海鳴町という場所があった。
この町に『ジュエルシード』は散っているそうだ。
今日は見つける事が出来なかったが。
それに、この世界には悪魔も天使も、堕天使も居ない。
今まではそれらのバックアップがあったが、この世界には無い。
『神器』も目立ち過ぎる――そもそも、俺も兵藤一誠も、戦闘に特化している。
地道に歩いて探すしかないのか。青い宝石を。
……前途は多難だな。
L月N日
兵藤一誠は適応が早いな。後アルフも。
羨ましいくらいに、海鳴町に適応している
プレシアから用意されたマンションで、いきなり昼寝をするくらいに適応している。
確かに、見付ける目処が立たないなら、探しても無駄と割り切るのも大切だろうが。
『ジュエルシード』は発動するまで一切の魔力を発しない。
それで、実物は青い小さな宝石。探しようがない。
面倒なものだ。
どうしてか、俺が料理を作る事になった。
しかも、不味いと文句を言われた。
文句を言うくらいなら、お前が作れ。兵藤一誠が作れ。
……料理というのは、存外難しい。
ルフェイには本当に世話になっていたのだな、と思い知らされた。
こっちは割とシリアスかもしれない。
主人公がほのぼのしてたからなぁ。