偽救世主未満が行くブルーアーカイブ 作:N_box
コミュニティ・十六夜ノノミ
ん、ノノミか。
「あ、先生。何かご用が?」
いや別になにか用があったわけじゃないんだが……
ゲヘナ風紀委員会を退けて今日は解散、ということになったので特に意味もなく対策委員会の部屋に向かったところノノミがいた。
一人にした方がいいか?
「いえ、そんなことは……そうだ、先生。お時間大丈夫ですか?大丈夫なら膝枕、どうです?」
ふと頭に浮かんだのは前の世界で買ったASMR。全部買ったわけではなかったが普通に良かった記憶がある。
前に誘われていたこともありホイホイと俺はその誘いに乗った。
ソファに座ったノノミの太ももに頭を乗せる。
あー、なんて言えばいいのか。なんか安心する。膝枕など幼い頃母親にしてもらったぐらいしかなかったが、その時の記憶も影響するのかリラックスできている。
瞼が重くなり、静かな時間が流れる。
……この状況さ、ノノミがその気になったら俺の頭グシャっていくんじゃね?そんなことはしないだろうし、実際そんなことになったとしてギリなんとかなるとは思うが。
耳かきもそうなのだが、スペック的には完全に上をいかれている相手に身を委ねるという行為は倒錯的な感情すら抱く。
何もしなくていいという思いだったり、守られていると感じられたり、うだうだ考えるよりも無条件に気持ちが良いという感覚が生まれる。
「……何も、言ってこないんですね」
……んあ。
リラックスしていたのですぐに反応ができない。言われた言葉を咀嚼して意味と意図を考える。
……ああ、ノノミがネフィティスのお嬢様なことか。俺が知ってるってことは言ったっけ。そうじゃなくても「シャーレ」なら調べられる話ではある。
そういやホシノに言ったような言ってないような……まあ言うべきことは変わらない。
ノノミの実家の力を使えなんて言わねーよ。ノノミ本人が望むなら別だけどな。
口を動かしているが大丈夫かなこれ。膝枕されてる状態で威厳もクソも無いんだが。いやそんなものは必要ないんだけど。でも今動くのは……
ノノミが望むならそうすればいい。ノノミが望まないならそうしなければいい。お前が選択したことを俺は肯定する。……よほどおかしなことだと一旦は止めると思うけどな。
これ大丈夫?大丈夫か?この体勢じゃノノミの表情が見れないし言ってることに説得力ある?チート使ったところであくまで感覚的なものだから表情はわからんし下手に集中してこの心地良さを切りたく無い……
「……そうですか」
ノノミは膝枕をしている俺の頭を撫でてくる。あ、それはいけない。あぁ〜
ポン、ポンってされて眠気が増大する。このまま眠りたいという気持ちと流石にそれはダメだろという気持ちが俺の中で争い始めた。
「……先生、私がこの学校に来た理由は、罪悪感なんです」
………
「今となってはみんながいますから、それだけでは無いのですが……始まりはそうなってしまったんです」
ネフィティス、アビドスと共に栄えた企業。その再起は未だ完全に叶わず。
「ですから、私は、」
言わなくていい。
意識を覚醒させて立ち上がりノノミと向き合う。
俺にとっては大したことでなくとも彼女にとってはそうで無い。人と人との間でそういった認識の差があることなど珍しいことでは無く、むしろあって当然のものである。
十六夜ノノミはネフィティスの人間だ。そしてネフィティスはアビドスが衰退することになった理由の内の一つである。
キヴォトスにおける「親」の概念をまだ把握できていないのだが「親」ならば「子」を育てただろう。その環境がどうだったかは知りもしないし今は関係がない。
重要なのはノノミがネフィティスの力で育った存在だということだ。アビドスが衰退する原因となったネフィティスの力で。
彼女の心は彼女にしか知り得ない。だが、彼女はそのことについてどう思っているのか。自分のことをどう思っているのか。
彼女は自分のことを醜いと思ってはいないだろうか。自分は「アビドスを壊した側」の存在だと思っていないだろうか。
自分はここに居ていいのか?アビドスの一員でいいのか?
所詮、ただの想像だ。だからといってまるっきり外れているとも思わない。
……そんな風に思っていたとしても、俺は「心が綺麗だね」の一言で片付けて充分だと思う。
もう少し膝枕の心地良さに浸っていたかったがこの先の言葉を言わせるわけにはいかないだろう。悪くないことで謝られても両方辛いだけだ。
そんなことをされて特に辛いのはアビドスの生徒たちであり、ノノミのその思いは彼女達にも向かってしまっている。
……生きてりゃさ、どうにもならないことなんていっぱいあるよ。けどさ、そんな時に何をやるか、何をやらないか。そういうのが結構大事なんだと思う。
そんな時、何もしないで逃げる奴が大半だけどさ、何かをしてるんならそれは誇っていいんじゃないかな?
どこかで聞いたような、見たような、けれども、俺も心からそう思うことをノノミに伝える。
それがいいと思うのは俺の真実だから。
「そう、でしょうか?私は…」
いいんだって。お前はここにいてアビドスのために行動してる。それだけで十分に誇れることだよ。
「………はい」
自分でもいい感じに話が纏まったーーとは思うが、こんなことを言った後でこのまま2人きり続行とか気まずすぎるのでさっさと退出するに限る。
膝枕良かったよ!また機会があれば頼むね!
そう言い残して俺は部屋を出た。
絆ランクアップ!
十六夜ノノミ 7→8
少しだけ、前を向けたような気がします。