偽救世主未満が行くブルーアーカイブ 作:N_box
黒服との会話は疲れた。あの場で物理的に排除する選択肢も考えてはいたのだが、それで円満に解決する未来が全くと言っていいほど見えなかった。
放っておくという選択肢は無いのだが無計画に盤面からどかしたところで問題が発生するだけになるだろう。カイザーもそんな感じではあるのだが黒服の影響力と手を伸ばしている範囲がわからない。
カイザーは潰す意味がそんなに……という感じだがゲマトリア連中はなあ……
どうするかな、やっぱ先にカイザー潰すかぁ?今潰すと問題の方がデカそうか?やはり「どうとでもなる」のが問題になっている。
いずれ処理するのは決定事項だが今すぐに対処するほど重要な存在では無い。それが今の俺がカイザーに抱く評価だ。
後で考えればいいか。明日のことは明日の俺が考えればいい。
「このっ…!離せ!」
いーや、離さないね。何としてでも君の足を舐めさせてもらう。
さて、黒服との茶番が終わった俺はホシノの奪還のためゲヘナ、正確には風紀委員会のところに来ていた。
トリニティの方はヒフミに任せたので大丈夫だろう。直通でティーパーティーとのライン持ってる時点で「普通」を名乗るのは諦めた方がいいんじゃないかなやっぱり。
正直ホシノの奪還に風紀委員会が必要かというと別に、といった感じである。
それこそ俺がチートを使えば一人で充分だ。
だがそれは違う。ホシノを助けるのは俺では無い。アビドスでなければいけない。そもそも散々介入しておいて何だが俺はーー「シャーレ」はそこまで色んなことに首を突っ込んでいいわけじゃ無い。
権利的には問題はないが感情、慣例、そういった事を無視して物事を進めることはできるものの、そんなことをしたところで回り回って不利益にしかならない。
そもその行動は「原作」の「先生」のスタンスから大幅にズレる。
そんなわけで俺は風紀委員会の力を借りることにしたのだ。
……あとキチゲ解放の目的もある。
「なんなんだ一体!?そんなに足が好きなのか、このヘンタイ!」
いやーそんなことはないよ。君が足を舐めろと言ったんじゃないか。私はそれに従ってるだけだよ。ウンシカタナイネ。
銀鏡イオリ、「原作」では色々とネタ枠になっていた子だがそれが決定付けられたのは「先生」に足を舐められそうになっている今このシーンだろう。
「先生」がセクハラ野郎扱いされてる要因の一つにもなっているシーンでもあるが、このシーンは正確には屈辱的な要求をされても生徒のために迷うことなくそれを飲み込んだという「先生」の決意がわかるシーンである。あと足を舐める、というか足に口づけをするのはちゃんとした意味があったはず。
それはそれとして絵面が完全にアウトなので変態扱いをされることはしょうがない。
今俺はそんな相手に対して言われたからと足を舐めにいっているのだが…
艶かしい脚。打てば響くリアクション。自分から舐めろと言った言質。そういったものが俺の心から何かを引き剥がしていく。
…やばい、めちゃくちゃ楽しい。別に俺は足フェチでもなんでも無いのだがこの子の反応が良すぎて弄りたくなる。
バカヤロウお前自分の見た目分かってないのか銀髪褐色美少女尻尾付き(性格もツンデレ気味で悪く無い)だぞ、同意あるなら舐めるぞ俺はお前。
「大人としてのプライドとか、人としての迷いとかは無いのか!?」
あるに決まってるじゃん。むしろプライドに従って君の足を舐めようとしてるよ。
「うぅ……わけわかんない。なんなのよぉ…」
よし、靴を脱がせた。あとは靴下を剝いでサッと一舐めーーー
「………先生?」
その声が聞こえた瞬間、完全に茹っていた頭が冷めるのを感じた。
俺がここにやってきた目標である風紀委員会委員長空崎ヒナがそこにいた。
……ふぅ。
冷静になって現在の状況を確認する。
押し倒されているイオリ、押し倒した俺、しかも思いっきり外である。ついでに言うならイオリは涙目だ。
無言で立ち上がりズボンのゴミを払い何を言うか全力で頭を回す。
「……同意はありましたよ?」
そうしてなんとか絞り出したのはそんな戯言だった。
「言い訳はそれでいいの?」
そしてそんな戯言への返事は向けられる敵意である。
あ、これやべえな。てか前にもこんな感じのことが……
問題が多数起こったもののなんとか誤解を解いて協力を取り付けることに成功した。
あとはホシノ迎えに行くだけである。さあ、アビドス編2章を終わらせに行こう。
壊して、壊して、壊す。
邪魔するものを壊し尽くして、多数の協力を得て障害を乗り越えて、ようやくここまできた。
たどり着いたアビドスの元本館に建てられたゲマトリアの実験室。
ここの扉を壊せばそこにホシノがいるはずだ。
貸したヘリでアヤネもきたし、周囲の敵は殲滅済みだ。
こいつでひとまずはハッピーエンドで区切りを迎えられる。
「…ん、先生。先生もこっち来て」
そう考えながらぼっ立ちしていた俺にシロコが声をかけてきた。
…え?いや……そこは君たちだけでよくね?そもそも直接破壊するのは俺にはできないしさ。
「そんなことない。先生も
いや…でも…
「シロコ先輩!?こっち来て手伝って!先生もそんなとこいないでこっち来て何かして!」
「…セリカもああ言ってる。今行く」
そのまま俺はシロコに手を引かれて破壊を手伝うことになってしまった。
……まあ、望まれてるなら、いいか。ああ、それでいいさ。
そんなわけで、「おかえり」って言って、ホシノには「ただいま」って言ってもらって、これでアビドス編VOL 2まで終了だ。
……マジでクソだったよこれ。まず先生がやって来てヘルメット団を倒す→便利屋が来る→ブラックマーケットに行く→ヒフミと会う→銀行強盗とヒナから得た情報を元に砂漠探索→不手際(無茶な金銭要求)を行わせる→ホシノがアビドスを離れ、カイザーが攻める→今までの出会いを利用して助っ人を呼ぶ。→ホシノを取り返してカイザーの問題フルコンボである程度アビドスの危機解消!
アビドスの話はひとまずはそんな流れで、その全てが要素のどれか一つでもズレたら成り立たなくなるクソだ。
本物はどれだけ奇跡に奇跡を重ねるというのだ。わらしべ長者の天才かよ。こんなもん関わるやつ全ての思考とか読みきってもできない。
「主人公補正」もあるのだろうが絶対にそれだけではない。
それでもやった。成したのは生徒たちだが俺の貢献だって一欠片ほどはあったはずだ。
俺はーーー「先生」を遂行出来ている。
……そのはずだ。そうでなくてはならない。
俺は「救世主」にならなければならない。いや、そうでなくとも「救世主」と同じ役割を行わなければならない。
「主人公」とはそういう存在だ。
そしてこのブルーアーカイブの世界において「主人公」である「先生」という椅子に俺が座っている以上俺はそれを行わなければならないのだ。
大いなる力には大いなる責任が伴う。
ゴミみたいな言葉だ。この言葉は自らの力に対して迷ったものだけが扱うべき言葉なのに、言葉だけが出回って他人がしたり顔で責任を押し付ける。
やれるから、お前ならできるから、そんな理由で勝手に押し付ける。信頼という名の逃避を行う。
本来なら責任なんぞ伴う訳がない。この言葉の責任など勝手に他人が擦りつけるだけの戯言でしか無い。
そうなる本質は人が無責任に他人を頼り勝手に失望するという話だ。
だが、自分自身に対しては責任を持たねばならない。自分の力があれば誰かを救えるなどと考えるのは傲慢だが何も行わずにただ見ているだけの愚者になる。それを俺は許せるのか、それで後悔しないのか、黙っていることができるのか。
絶対に、チートを持たない俺なら声をあげることは出来なかった。実現できる可能性があるという意味でも、実行できる精神があるという意味でも。
だからこそ俺は「救世主」になるのだ。それがどうあがいても紛い物にしかならなかろうが。
ああーー「救う」とは、とても困難な行いである。
自分のことさえ不十分なのに他人に気を回している余裕があるのか?
ーーーやるんだよ。俺のために。「俺」がそう思うから。それが俺の責任でやるべきことだ。