Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜   作:ジャック・オー・ワンタン

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第27話:出港!ダイダニック号!

ルーチェを加えた僕らは彼女と共に四人用の部屋を借り、宿泊部屋へと向かった。

 

「うわぁ!!広い!ベッドもある!!」

 

部屋に入るや否や広い間取りにシルヴァは大喜びしてリビングまで駆け出す。

 

「寝室が分かれているのか。ここまでくると宿だな。」

「ダイダニック号宿泊部屋は二階~三階に一般人向けに作られたスペースがあり、四階は貴族共御用達の部屋がある。クソ広いのは企業努力の賜物だな。」

 

カイは部屋を見渡しながらそう言った。

 

「そういえばさっきオラルド王国でダイダニック号が造船されたとか言ってたけど・・・」

「オラルド王国には”船工房(ファクトリー)”と呼ばれる大規模な造船所があるのよ。ダイダニック号もその造船工房で造られたものね。」

「そうなんだ・・・凄いなぁ」

 

ルーチェの説明を聞いて僕はオラルド王国に関心を持つ。船を造れる工場まであるなんて凄い国だなぁ。そうだ!オラルドに着いたらその造船工房に行ってみてもいいかもしれない。上手くいけば船が手に入るかもだし・・・。

 

「ねぇねぇシエル見てよ!海が見えるよ!こんなに間近で見たの初めてよ!」

「ギャーギャー騒ぐなよ。ガキかテメェは」

「ガキじゃありませんー!ガキっていう方がガキですー!」

「んだと!?やんのかゴラァ!」

「二人共ここで喧嘩しないでよ・・・」

 

早速、喧嘩するシルヴァとカイを仲裁する。

 

「うふふふふ・・・二人共仲が良いのね。」

「そんなことないわよ!!」

「んなことあるか!!」

 

クスクス笑うルーチェに二人は同時に否定する。・・・まぁ喧嘩するほど仲が良いっていうしあながち間違いではない気がする。それにしても火精の森からここまでシルヴァの目が輝いている。彼女に外の世界を見せてあげて本当に良かったな。これからも多くの景色をこの仲間達で見ていくって考えると僕もワクワクが止まらないな。

 

すると突然、天井にある拡声器から音声が流れ始め、僕らは静まり返って天井を見上げた。

 

『ご乗船ありがとうございます。この船は間もなく出航致します。どうぞごゆっくりお過ごしください。』

 

音声が流れ終わった瞬間、床が少し揺れ、ダイダニック号が遂にアイルの港から出航を始めた。

 

「あっ!見てシエル!景色が動いてるよ!わぁ!アイルの港が遠ざかっていくわ!」

「だからいちいち騒ぐな!ガキ」

「何よ!アンタこそそうじゃない!」

「うふふふふ、貴方達本当に面白いわね。」

「あはは・・・」

 

またしても喧嘩するシルヴァとカイに苦笑しながらも僕は遠ざかっていくアイルの港もといブリテン島を窓から見つめる。

 

思えばワースから旅立って早一週間近く経ったけど・・・気が付けば二人も仲間が集まっていよいよ新天地を目指している。少しずつだけど師匠に近付いていると実感するな。この広い海の先できっと彼女は僕を待っている。だから少しづつでもいいから近付こう!

 

約束を果たす・・・その日まで!

 

◇◇◇

 

ダイダニック号が出航してから暫く経つと僕らは食堂へ向かい、一足早い夕食を摂ることにした。

 

「凄い!食堂も豪華なのね。」

「あら、シルヴァちゃんはこういうところ来るのは初めてかしら?」

「うん!初めてよ。」

 

食堂を見て目を輝かせるシルヴァにルーチェはくすくす笑った。

 

「ここは貴族のカス共も使うからな。豪華な仕上がりになってんだ。」

「シエルも豪華だって思わない??」

「えっ?う、うん・・・僕もそう思うかな。」

「だよね!」

 

シルヴァにそう聞かれて僕は少し戸惑いつつもそう答える。王族だったから口が裂けてもこんな食堂は見慣れているなんて言えない。

 

「お客様。お越しいただきありがとうございます。先ずお飲み物をお伺いします。」

 

するとウエイターが僕らの傍までやってくるとドリンクの注文を尋ねてくる。

 

「皆、注文は決まった?」

「アタシ、林檎ジュース!」

「オレは緑茶でいい」

「じゃあ僕は紅茶をお願いします。ルーチェは決まった?」

 

シルヴァとカイの注文を聞いた僕はルーチェを見る。

 

「ええ、私はワインでお願いできるかしら?」

「だめだよルーチェ!子供なんだからお酒は呑んじゃ・・・」

「シルヴァちゃん失礼ね。こう見えて私、貴方達より年上なんだけど」

「えっ!?そうなの!?」

 

ルーチェが僕らより年上と知って驚愕する。えっ!?本当に!?

 

「全然そんな風に見えねぇぞ?確かに大人びてはいるが・・・」

「あら。人を見かけで判断しちゃダメよ?時にそれは命取りになるから気を付けなさい。」

「は、はぁ・・・」

 

ルーチェに諭されてカイは戸惑いながらも彼女が年上と認識する。

 

「と、いう事でウエイターさん。フランチ産のワインをお願いできるかしら?」

「畏まりました。それではごゆっくり」

 

ウエイターは彼女に違和感を持つことなく注文を承ると颯爽とした足取りで厨房へと向かって行った。ウエイターに関しては接客のプロなのか眉一つ表情を変えてなかったな。

 

「あの・・・その・・ルーチェさんすみません。」

「そんなに畏まらなくていいわよ。寧ろ対等に話してくれた方が私も接しやすいし。」

「ご、ごめんなさい・・・ありがとう。」

「それに最初会った時、疑われていたしこれでお相子にしましょ?」

「う、うん・・・」

 

微笑むルーチェに頬を少し赤くする。彼女の意外な一面を知らされながらも窓から見える広大な海の景色を一望しながら他愛もない話をしていると僕らの元にドリンクと御馳走が並べられてくる。

 

「お待たせいたしました。当船のスペシャルコース料理・・・シーフードライスと生牡蠣のプルニエ、イカスミのパスタ、ムール貝のパエリア、白身魚のフライでございます。どうぞごゆっくり!」

「わあぁ!!どれも美味しそう!いただきまーす!!」

 

並べられたご馳走にシルヴァは目を輝かせると早速、シーフードライスを頬張る。

 

「んー!このご飯おいしー!!このエビとかいうやつぷりぷりしててなんか癖になっちゃう!」

「こらシルヴァちゃん!ご飯粒付いてるわよ!」

「ごめん!あ、これも美味しそう!!」

「ちょっと!それはちゃんと自分の取り皿に盛ってから食べなさい!」

 

がつがつ食べるシルヴァをルーチェは注意しながら食事をする。

 

「とことん怒られてんじゃねーか。」

「カイ君も!ムール貝は殻ごと食べないの!怪我するわよ!」

「・・・飛び火した。」

「あははは・・・」

 

カイまで注意され、僕は思わず苦笑する。まるで妹や弟を躾けてる姉みたいだ・・・。

 

「というかテメェ、世間知らずにも程があんぞ。」

「だってアタシ、ずっと森で暮らしてたんだもん。」

「は?森??」

 

シルヴァの出身を聞いてカイはぽかんとする。

 

「厳密には森の中にある村で暮らしてたんだよ。シルヴァとはそこで出会ったんだ。」

「通りで海も見ねぇ訳だ・・・」

 

事情を知ったカイは彼女が海を見たことが無い理由に納得する。まぁカイは逆に海を当たり前に見てきたしお互い知らないことは多いだろう。

 

「そういえば・・・シエルは何処から来たの?」

「えっ?」

 

突然、シルヴァに自分の出身を聞かれて戸惑う。・・・まぁ何処から来たか位は言ってもいいだろう。

 

「僕はワース王国から旅を始めたんだ。」

「ワース王国?」

「アイル共和国の隣にある国だな。確かそこは七年前にラグナロク騎士団がやってきた場所だったな?」

「そうだよ。・・・って!」

 

カイの口からラグナロク騎士団の名前が出て思わず彼を見た。

 

「カイ。僕の師匠の事を知ってるの!?」

「おい待て!テメェの言う師匠ってのは・・・オーディンの事か?」

「そ、そうだけど・・・」

 

カイもまた僕の師匠がオーディンと知って驚愕する。

 

「えっ?何?シエルのお師匠さんって凄い人なの?」

「凄いも何も今じゃ騎士の中で生きる伝説と言われている人よ!」

 

ルーチェもまた師匠の名を聞いて驚きの表情を浮かべた。

 

「ルーチェも師匠の事を知ってるの!?」

「寧ろ知らない方がおかしいわ。私は会ったことが無いけど実力は嫌でも耳に入ってくる騎士よ。」

「オレもラグナロク騎士団については逸話を聞いたことがある。深海にいるクラーケンやリヴァイアサンをたった一人で倒したって伝説もある。今じゃ世界に四つしかいないとされるSSR級の騎士団を率いる女だ。それよりテメェがオーディンと会ってただけじゃなく師弟関係だったことにビックリしてるぜ。通りで腕が立つわけだ。」

 

カイは僕の強さのルーツが師匠にあると知り、納得する。師匠の事がここまで知られているなんて・・・やっぱり凄いな。

 

「どうやらテメェに付いてきた甲斐があったな。オレも一度手合わせしたいと思っていた。」

「シエルのお師匠さん凄い!!アタシも会ってみたいな~・・・というかそのお師匠さんに会いに行くために旅をしてるんだもんね?」

 

僕はシルヴァに深く頷いた。

 

「そうだよ。皆が言うように師匠は強くて優しくて傍にいると安心できるんだ。僕はそんな師匠みたいになりたくて騎士になったんだよ。いつか強くなって会う約束もしてるんだ。」

「いい夢を持っているのね。応援するわ。」

「あ、ありがとう」

 

ルーチェに背中を押され僕は嬉しくなると同時に師匠の凄さを改めて知らされ、暗くなった大海原の景色を見つめる。目指していた背中は思っていたほどに大きかった。それでも追いかけると自分に誓う。

 

あの日交わした約束を果たすために。

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