Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜   作:ジャック・オー・ワンタン

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第29話:犯人探し

 ルーカン卿殺害事件を受けてマグカップ船長から調査を依頼された僕らは早速行動に移した。部屋を確認するチームとなった僕とカイは現場となった三階の娯楽室をもう一度訪れた。

 

「にしても改めて見ると派手にやってくれてんな。」

 

部屋に入るや否や、カイは辺りを見渡しながらそう呟いた。部屋は事件が起こった状態のままとなっており、娯楽室は僕らや船員以外の出入りは禁止とされた。

 

「先ず何処を調べるかじゃねぇか?シエル。」

「うん、まずは・・・」

 

僕は下に顔を向けると未だ残されているルーカン卿の亡骸に目を移す。船に乗り込む前、この人に自分の素性を明かして説得したけど・・・まさかこんな事になるなんて・・・。

 

「ルーカン卿。貴方を悪い様にはしない。失礼」

 

亡骸に届かぬ言葉を漏らすとルーカン卿の倒れた姿勢、身につけているものやその周りの痕跡をくまなく見る。せめて何か手がかりがあれば良いんだけどな・・・うん?

 

ふと、ルーカン卿の右手を見て、眉を寄せる。この右手・・・なんで人差し指だけ伸ばしているんだ?あれ?指先に何か書かれている?

 

「なんだ?何か見つかったのか?」

「うん、この右手の人差し指の先なんだけど・・・床に何か書かれているんだ!」

「あぁ?どれどれ?」

 

カイはじっと青紫色のカーペットが敷かれた床に目を向けて書かれているものを読んだ。

 

「これは英文字だな・・・CA…T……N?字が薄れてて所々読めねぇがこれは所謂ダイイングメッセージって奴かもな。」

「ダイイングメッセージ?」

「あぁ、このマヌケ野郎は死に際に犯人の証拠を残す為に咄嗟に自分の血でコイツを書いたに違いねぇ。多分、人の名前じゃねぇか?」

 

カイの推理に僕は納得する。つまりルーカン卿は犯人の名前を死に際に床に書いて残したのだ。でもこれはなんて読むのだろうか?明らかに文字が薄れている。

 

「あん?んだこれは?」

 

すると今度はカイが床に何か落ちているのに気付いてそれを拾い上げる。

 

「それって・・・ペン?」

 

彼が拾ったのは黒い塗装に金文字で"キャプテン"と英文字で書かれた如何にも高そうなペンだった。

 

「無駄に高級な雰囲気を醸し出してんなぁ。多分、このカスの私物だろうよ。」

「じゃあそれは犯人に抵抗する時に滑り落ちたって事なのかな?」

「多分な。」

「他に手がかりは・・・無さそうだね。」

 

部屋を見渡しながらそう言うと船員が一人入ってくる。この人は確か船長補佐のビルさんだっけ?

 

「あのう・・・どうでしょうか?」

「手がかりはこれ以上にねぇな。」

「そ、そうですか・・・」

 

カイの言葉にビルは肩を落とす。

 

「後はシルヴァとルーチェの聞き込み次第かな?」

「顧客リストも一応確認するか?床の文字が人の名前かどうかも気になるしな。」

「うん、じゃあ一旦この辺で部屋の確認は終わろう。」

 

現場を粗方調べ終えた僕とカイはシルヴァ、ルーチェの聞き込みチームと合流すべく一度乗務員室へ戻ることにするのだった。

 

◇◇◇

 

「それで?どうだった?」

「ええ、先ずこの時間に娯楽室に立ち寄った客は居ないそうよ。」

「そっか・・・」

「念には念をだ。まずは聞き込みの内容を聞こうじゃねぇか。」

 

乗務員室へ戻った僕とカイは聞き込みチームと合流し、彼女達に状況を尋ねると先ずシルヴァが第一発見者である給仕担当の船員から聞き込んだ内容を話した。

 

「うん、先ずきゅーじ担当?のミラさんだけどこの人はルーカン卿からお酒とおつまみの注文を受けて二階の食糧庫に行ったんだって。」

「それは本人も言ってたな?んで?なんで言ってたんだ?」

「それから頼まれたものを持って行ったら・・・貴族のおじさんが倒れてたんだって・・・」

「つまりルーカン卿はその間に殺されたって事になるね。」

 

第一発見者である給仕担当のミラからの証言を聞いて僕はそう推測する。酒とつまみを持って行くのにそこまで時間は無い。かなり短時間で行われたことになる。

 

「ってなるとコイツがあのカスを殺した確率は低そうだな。」

「そうね、あの時彼女の傍らには確かに赤ワインとつまみの入ったワゴンがあったから食糧庫へ行ってたのは間違いないわ。」

 

ルーチェも深く頷き、給仕担当のミラが白であると確信する。

 

「他に何か聞いてる?」

「後は無いわ。皆この時間は部屋に篭ってたらしいから。」

「そっか・・・」

 

首を横に振るルーチェに僕は肩を落とす。

 

「あ、あのさ・・・」

 

するとシルヴァが恐る恐る手を挙げながら口を開いた。

 

「これ、アタシが聞き込みしてた時に小耳に挟んだんだけど・・・」

「何でもいいよ。話して。」

 

僕は微笑みながらシルヴァの話を聞く。

 

「船内に悲鳴が聞こえる前、誰かが一階にあるゴミ捨て場へ入っていくのを見たんだって。」

「ゴミ捨て場?」

「恐らく一階にあるトラッシュルームの事ね。でもあそこは船員さんしか入れない場所だった筈よ。」

 

シルヴァの話を聞いてルーチェはそう答える。

 

「ただゴミを捨てに行っただけじゃねぇのか?余計な時間取らせんじゃねぇよ。」

「そんなに言わなくたって良いでしょ!」

 

カイの言葉にシルヴァが彼に突っかかろうとしたが咄嗟に阻止する。

 

「でも、なんか引っかかるな。ちょっと見に行くだけでもいいんじゃない?」

「まぁ、テメェがそこまで言うんなら行ってみる価値はあるな。」

「決まりだね。じゃあ一度見に行こうか?」

 

◇◇◇

 

 トラッシュルーム・・・ここには船内で出た廃棄物を焼却する場所であるが関係者以外立ち入り禁止となっており部屋の前にある鉄格子は固く閉ざされていた。

 

「んで?来たみたのはいいがただ焼却炉があんだけだぞ?」

「そうね、ここには何も手がかりはなさそうね。」

「やっぱ時間の無駄だったか?」

 

カイとルーチェがそう言った瞬間、僕は何かを見つけて彼らを呼び止めた。

 

「待って!焼却炉の中に何かあるよ!」

「ああ?ゴミかなんかじゃないのか?」

「いや、でも・・・それにしては」

 

僕は鉄格子の隙間から中を覗き込むとそこには船員のものと服が入っていた。あれ?この服赤く染まってる?これって・・・

 

「何?あれ・・・血の跡だよね?」

「どっからどう見てもそうだろうがよ・・・」

 

明らかに服を赤く染めているものは血痕であると分かり、シルヴァの顔が青くなる。

 

「待って!服の胸元に何か付いているわ!」

「えっ?」

 

箱を指差すルーチェに僕は中にあるその服の胸元を目を細めながらじっと見つめた。

 

あの胸元・・・金色のバッジがあるぞ?何だろう英文字で何か描いてあるような?しかもこの文字って・・・

 

「ッ!?」

 

服の胸元に付いている金色のバッジの文字を見て僕は目を見開いて驚くと同時に今回の事件の犯人が”彼”であると確信した。

 

「どうしたのシエル君?」

 

戸惑う僕にルーチェが恐る恐る声を掛けてくる。

 

「・・・今回の事件の犯人が分かったかも知れない。」

「えっ!?」

「何?本当なのか!?シエル!」

 

僕の言葉に皆は驚いてこちらを見る。確かではないけどほぼ犯人はあの人で間違いないだろう。

 

「うん、まだ確証は持てないし信じたくはないけど・・・ルーチェ、君が言ったじゃないか?」

「えっ?」

 

キョトンとするルーチェを見て、こう告げた。

 

「"人を見かけで判断しちゃいけない"って。」

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