Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜   作:ジャック・オー・ワンタン

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少し遅めのあけましておめでとうございます。今年もJACKの作品を宜しくお願い致します。

さて、お待たせいたしました。本日からぼちぼち投稿を開始していきます。


第31話:取り戻された平穏、揺らぎ出す世界

 ロワ帝国軍少佐ジョッキーを倒した僕らは船内へ戻ると殺人事件解決と共に船を守ったことを賞賛された。

 

「この度は船を守って頂きありがとうございました。しかし驚きました。まさかマグカップ船長が帝国軍の内通者だったなんて・・・。」

 

ビルは未だ自身の上司であったマグカップが帝国の人間だとは信じられない表情を浮かべた。

 

「彼はルーカン卿を殺した旨を認めていました。帝国の任務として彼を手にかけたんだと思います。」

「・・・はい、ですが船長無き今、オラルドまでどうやってお客様をお運びすれば。」

 

ビルはそう言って不安げな表情をする。

 

「何仰っているんですか?ビル"船長"」

「えっ?」

 

すると船員達が続々とやって来て彼のことをそう呼ぶ。

 

「私が・・・船長?」

「当たり前じゃないですか!マグカップ船長が居なくなった今、俺達を仕切れんのはアンタだ!」

「だから最後までやり遂げましょうよ!仲間でしょ?俺達!」

「そうですよ!辛いことは沢山ありましたけど・・・頼れるのはもう貴方しか居ないんです!船長!」

「皆さん・・・」

 

船員達の励ましの言葉に心を打たれたビル副船長・・・否、ビル船長は涙を拭って敬礼する。

 

「分かりました!今後、ダイダニック号の船は私が執り仕切る!必ずお客様をオラルドまでお運びするぞ!」

「「はい!」」

 

新たなる船長を迎えたダイダニック号のクルー達は一斉に敬礼して結束する。

 

「良かったわね本当に。」

「うん。でもルーカン卿は殺されてしまった。もしかしたら未然に事件を防げたかもしれない。」

 

殺害されたルーカン卿を想い、僕は拳を握り締める。もっと彼とは話したかったしディナ達に僕の目的のことを伝えるようにお願いも出来た筈だ。

 

「んなくよくよしたって仕方ねぇだろ?」

 

するとカイが僕の肩を叩いてそう言った。

 

「あのカスの犠牲があったからこそマグカップが帝国の野郎だって事が分かった。悪いことばかりじゃねぇよ。」

「そうね、今は他の人達が無事だった事を喜びましょう。」

 

ルーチェもまた僕に励ましの言葉を投げかける。

 

「そうだね・・・そうだよね。今は無事な事を喜ばないと!」

 

僕もまた仲間達に励まされ微笑みを取り戻す。

 

「にしても聖剣エクスカリバーと精霊の力。初めて目にしたけど中々のものね。・・・いえ、どちらかと言えばシエル君、貴方の力と言った方が良いのかしら?」

「ルーチェ?」

 

ふとこちらに顔を向けてくるルーチェにきょとんとする。

 

「・・・フフッ決めたわ。私、貴方達の旅に付いていくことにするわ。」

「ええっ!?」

「あら?そんなに驚くことかしら?」

「あ、いや・・・そうじゃなくて・・・その」

 

僕らの旅に付いていくと言うルーチェに恐る恐る他の二人の顔色を伺った。

 

「はぁ・・・なんでアタシ達の顔を見るのよ?いいに決まってるじゃない。」

「いちいちオレの機嫌を伺うんじゃねぇ。ぶち殺すぞ。」

「・・・と言ってるだし良いわよね?」

 

シルヴァとカイの反応を見てルーチェは微笑む。

 

「勿論だよ!アタシ、ルーチェが来てくれたら嬉しいし!」

「私もよシルヴァちゃん。」

 

シルヴァの言葉に彼女は優しく微笑む。・・・まぁ、二人が良いっていうなら断る理由は無いよね。それにジョッキーとの戦いで見たルーチェの実力もかなりのものだし。

 

「じゃあルーチェ。これから宜しく!」

「ウフフッ、宜しく頼むわね。かわいい騎士さん。」

 

こうして僕は謎多き魔導士・・・ルーチェを三人目の仲間に加え、次なる目的地オラルド王国を目指す。彼女が抱える多くの秘密・・・それが明かされるのはまだまだ先になりそうだ。

 

朝日が昇る快晴の大海原・・・今日もダイダニック号は人々を乗せて海を渡る。そして僕の約束の旅もまだまだ続く。まだ見ぬ新天地を目指して。

 

◇◇◇

 

アフラン大陸最南部"喜望峰"・・・荒れ狂う波が押し寄せる岬から少し離れた場所に大きな崖を元に造られた城があった。その城の入り口にて白髪の髭を蓄えた男が黄金の鎧を身に纏いながら酒を吞んでいた。

 

十二神騎総長ゼウス。最強の騎士と謳われる十二神騎のリーダーその人であり、世界に四つしかいないとされるSSR級騎士団を率いる一人である。

 

「あなた!これ以上は呑み過ぎよ?」

「はっはっはっ!気にするこたぁねぇよ。ヘラ。」

 

ゼウスはにやりと笑みを浮かべながら銀の鎧を身に着けた妻と思しきエルフの女性・・・ヘラにそう答えた。

 

「しかしなんだ?今日はやけに風が強いな?誰かやって来たのか?ここによぉ。」

 

彼はそう言うとこちらへ歩いてくる人影に目を向ける。その人影の後ろには黒い船が停泊しており、波に揺られながら待機していた。

 

「ほう?こりゃ珍客だなぁ!まさかテメェが俺の城に来るなんてよ。」

 

ゼウスの目の前までやって来た人影は身に纏っていたフードを脱ぐとその姿を露にする。

 

「オーディン。何の用ですの?」

 

露になった来客・・・オーディンの姿を見てヘラの顔が強張る。

 

「まぁ、そんな怖い顔をすんじゃねぇよヘラ。こんな小娘が乗り込んでくるのはよっぽどの理由なんだろ?なぁ?オーディン。」

「・・・何故、私が来たのかお前にも分かるはずだ。ゼウス。」

 

オーディンはそう言うと凛とした表情でゼウスを睨んだ。

 

「・・・なんの事かさっぱり分からねぇな?」

「とぼけるな!貴様も見ただろう?この記事を!」

 

彼女は懐から新聞の記事をゼウスへ見せる。それは先日、ロワ帝国がアイル共和国を襲撃した内容のものだった。

 

「なんだ?帝国の連中が暴れてる話か?そんな事で俺のとこに来たのか?」

「帝国だけが動いているなら話は別だ。だが、この部隊は貴様のとこのアレスが指揮していた。」

 

オーディンはゼウスを睨んだまま新聞を懐にしまい、そのまま言葉を続ける。

 

「騎士団は”国に属してはならない”という決まりがある。これは明らかにそれに反しているのではないか?」

「ケッ、その掟は”アイツ”が勝手に作ったルールだ!あんな奴が遺した掟に俺が従う筋合いはねぇんだよ!!」

 

ゼウスは目を見開いてオーディンを睨み返す。

 

「貴様。それが騎士団の世界に混乱を招くことを知っているのか?」

「だから何だってんだ?善意だけで動く小僧、小娘如きが粋がったところで俺達には関係ねぇんだよ!!」

「ならばやるというのか?」

「小娘が!この俺に喧嘩を売るんじゃねぇよ!!」

 

二人が各々の得物を構えた瞬間、辺りに濃紺と黄色の稲妻が飛び交い、凄まじい暴風と雷鳴が響き渡った。

 

「かかってこいよ!!!小童がぁ!」

「ゼウス!こうなった以上誰も止められなくぞ!渦巻く騎士の時代を!!」

「知ったことかあああッ!!!」

 

激しく轟く雷鳴の中、両者の剣が交わった瞬間、空が裂け、海は荒れ、大地が地響きを鳴らす・・・SSR級騎士団を率いる二人の激突・・・それは世界を波乱へ導く時代の幕開けでもあった。

 

そしてそれはこれから海へ出る騎士達に対する洗礼となるのであった。

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