Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜   作:ジャック・オー・ワンタン

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第44話:白の騎士

「アテナ・・・十二神騎だって!?」

 

自信を十二神騎と名乗る白の騎士アテナに対して戦慄が走った僕とシルヴァとカイは一斉に身構えた。十二神騎ということはアレスの仲間か!!

 

「何故、構えているのですか?」

「とぼけないでよ!十二神騎ってことはアレスの仲間なんでしょ?」

「同じ十二神騎ならそういう事だ。ここでぶっ潰す!!シエル!」

「分かってる!」

 

十二神騎相手ならやむを得ない。精霊の力を二人に付与しようとした・・・その時だった。

 

「待って!」

 

突然、ルーチェが僕らの前に出て制止する。

 

「どけ!そいつはアレスの仲間なんだろ?ここで潰しておかねぇと奴も来る!」

「そうよ!ルーチェ!」

「確かに彼女はアレスの仲間だけど貴方達に危害を加える存在ではないわ。」

「どういうこと?」

 

ルーチェの言葉に僕らは戸惑うと彼女はアテナに顔を向けて笑みを浮かべた。

 

「久しぶりね。ミネルバ。」

「まさか貴女も居たなんてびっくりしたわ。ルーチェ。」

「ええっ!?ルーチェ知り合いなの!?」

 

突然、アテナと親しく話し始めたルーチェに僕達は驚く。どういうことだ?

 

「えぇ。いろいろお世話になった間柄よ。」

「"その格好"で貴女が彼らといるということは色々訳ありなのね?」

「そうなるかしら?"今の私"は彼らの仲間よ。」

 

ルーチェはそうアテナに答える。なんか凄く親しそうだな。

 

「よく分からないけどルーチェの知り合いだし信用していいってことよね?」

「ケッ、今はな」

 

二人の様子を見てシルヴァは少し安心した様子を見せるがカイはやや不満そうな表情を浮かべた。兎に角、この十二神騎のアテナ・・・ミネルバは信用してもよさそうだ。まさか十二神騎にも話の分かる人が居るなんてな。

 

「さっきは疑ってすみませんでした。アテナ・・・いえ、ミネルバさん。」

「こちらこそアレスが迷惑をかけたみたいですね。先に行っておきます。私達十二神騎で貴方の事を狙っているのはアレスただ一人。・・・迷惑だったでしょう。アレスの代わりに謝らせて頂きます。」

「テメェが謝る必要はねぇだろ?謝罪ならアレスにやらせろ。」

 

頭を下げようとするミネルバにカイはそう返した。

 

「だが・・・なんで十二神騎がこんなところに来てんだ?何か理由があるんじゃねぇのか?」

 

ふと、エルデはミネルバにそう尋ねる。

 

「その通りです。私がここへ赴いた理由・・・それはオラルドで諜報活動を行うロワ帝国の殲滅にやって来たのです。」

「ロワ帝国の殲滅?・・・そうだ!さっきの帝国兵達は?あとゴーレムも!」

 

僕はジョッキーら帝国兵達の事を思い出すともうこの場に居ない彼らを姿を探った。

 

「彼らは私の持つ転送魔法で辺境の無人島に転送させました。今頃、孤立した島の中で途方に暮れているでしょうね。ゴーレムはその間に破壊しておきました。」

 

ミネルバからジョッキー達の行方を聞いて彼らに少し同情しそうになるのと同時にゴーレムを一撃で破壊した十二神騎の強さを改めて思い知らされる。あの巨大なゴーレムを一瞬で破壊できるなんて凄いな。

 

「じゃあ帝国の人達はもうここに居ないのね。良かったじゃない。」

 

シルヴァは胸を撫で下ろして安堵する。

 

「いいえ。まだ帝国の諜報員はこの国います。」

「さっきあのダルマ野郎が言っていたオラルドの首相か?」

 

カイの言葉にミネルバはこくりと頷く。

 

「そうです。オラルド王国首相アヌビス。正確にはロワ帝国軍諜報部部長アヌビス大佐は8年前にオラルドの政府機関に潜入後、二年前に首相となった人物です。彼は長い時間をかけてオラルドの象徴であるオラルド王室と彼らを慕うオラルド国民を欺いて首相となったのです。私の率いる団の者が今回、船工房から軍艦が不正に輸出されている情報を手にしたことから発覚しました。」

「そして掘り返したらオラルドを実質的に侵略してたって訳か・・・とことんイラつく連中だな。」

 

カイは眉間に皴を寄せて帝国に対する嫌悪感を示す。その気持ちは僕も同じだった。オラルドの王室や民を欺いて好き勝手やってたなんて・・・許せない!

 

「ちょっと待ってくれ!船工房から軍艦が不正に輸出されてるってのは本当なのか!?」

 

するとエルデが戸惑った様子でミネルバにそう尋ねた。

 

「はい。アヌビスは船工房の工房長カークスにオラルドの軍事力強化と言う名目で軍艦の生産数を上げるよう打診していたのです。ですが実際はそれがオラルドの軍港に配備させることは無くほぼ全ての軍艦がロワ帝国の手に渡っていたのです。」

「そんな・・・!!嘘だッ!!」

 

ミネルバから放たれた事実に彼は膝から崩れ落ちてしまう。

 

「それとアヌビスがカークスに支払っていた造船費の一部は国のお金・・・要するに税金が含まれていることも分かりました。」

「国のお金までそんなことに!?・・・そんな馬鹿なこと!」

「そんな馬鹿な事が起こっているのが事実です。」

 

嘆きの言葉を漏らすエルデにミネルバは残念そうな表情でそう返す。

 

「くそっ!」

「ちょっとエルデ!何処に行くの!?」

「決まってんだろ!船工房に行く!」

「ええっ!?」

 

突然、船工房へ向かうと言い出したエルデを僕達は引き留めた。

 

「待て!相手は帝国だぞ!テメェ一人でどうにかできる相手じゃねぇ!!」

「だとしても行くしかねぇだろ!!!」

 

そう返すと彼はギロッとこちらを睨みつけた。その瞳には怒り、そして焦りの感情が垣間見え、自分が一刻も早く船工房へ向かわなければならないという信念があった。

 

「守らねぇといけねぇんだ!!工房長は・・・俺が!今度は俺が助けねぇといけねぇんだ!!」

「エルデ?」

「だから誰も止めるな!!工房長はぜってぇアヌビスに騙されている!俺がそれを分からせてやるんだ!」

 

エルデは拳を強く握り締めて歩こうとした時だった。突然、ゴゴゴという音と共に地面が微かに揺れ始める。

 

「「ッ!?」」

 

その感覚と音を感じ取った僕らは街の方に顔を向けるとそこに浮かんだ景色を見て戦慄が走った。青い海と豪華な白い首相官邸が見える街。そしてオラルドの象徴ともいえる船工房・・・その建物の一部から爆発と共に発生した黒煙が空へ上がっていたのだ。

 

「ふ、船工房が・・・!」

「まさか・・・まずい事態になりましたね!!」

 

黒煙を見たミネルバは嫌な予感を感じて冷や汗を流す。

 

「・・・工房長・・・!!!クソッ!!」

「あっ!エルデ!待てって!エルデ!!」

 

黒煙を見た途端、一目散に駆け出したエルデを呼び止めるも彼はそのまま街の方へ姿を消してしまった。

 

「急ぎましょう!ミネルバも皆も!エルデを独りにしてはいけないわ!!」

「わーってるよ!んなことくらいなッ!!」

「早く追いかけましょう!」

「はい!」

 

ミネルバに頷いた僕らはエルデの後を追って黒煙と火の手が上がった船工房へと急ぐのだった。

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