Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜   作:ジャック・オー・ワンタン

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ご無沙汰しております。本作の投稿をまた予定通り進められそうなので投稿を再開します。


第60話:医者(ドクター)エレミア

 エルデにエール・ブランシュ号を任せた僕はシルヴァ、カイ、ルーチェの三人でアフラン自治区を目指し、砂漠の中を歩いていた。思いのほか足取りも良く順調と思われていた。しかし・・・

 

「くっそぉ・・・なんだよこのクソみてぇな暑さは!!」

「カイ君。あまり怒鳴らないで。貴方の方が熱く感じるわ。」

 

余りの暑さと砂漠という過酷な環境にいつもは音を上げないカイですら叫ぶほどの状況だった。それも無理はない。なんせどれくらい歩いたのか全く分からない。辺り何処を見渡しても砂漠、砂漠、砂漠・・・それ以外にあるのはそんな環境で懸命に生えているサボテンと僕らだけだ。

 

「ねぇ。ルーチェ。どれくらい歩いたの?」

「アフラン自治区まではまだ先ね。」

「そう・・・」

 

しかし、シルヴァはこれまでとは異なり、喚くことはせず黙々と足を進める。シルヴァ・・・一体どうしたんだ?

 

「珍しいな。今までのテメェなら「あつーい!もうイヤー!!」って喚いている頃だが?何がテメェを変えたんだ?」

 

カイは歩きながらシルヴァにそう問いかけると彼女は静かに答えた。

 

「ヴィーナと戦って思ったの。アタシだけまるで成長してないんじゃないか・・・って。黒曜騎士団のあの双子と戦った時もそうだった。オーガイが居たのに負けたのはアタシが弱いからだって。」

 

その言葉に僕達は言葉を失う。それでも彼女は続けた。

 

「だから・・・ヴィーナに負けない様に強くならなきゃいけないって思ったの。それにアタシはママが見れない分、世界を見る為に騎士になった。ただ色んな場所を見て回る旅じゃない。・・・もう守られるだけのアタシじゃないの。」

「・・・ケッ。言うようになったじゃねぇか!」

 

シルヴァの決意ある言葉にカイは口角を上げる。僕とルーチェもまた笑みを浮かべ、気が付けば先頭を歩く彼女の背中を追って歩を進めていた。

 

そこからは大した会話も無く僕らは砂漠を突き進む。しかし、砂漠の過酷さはどんどん僕らに襲い掛かってくる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・山場を乗り越えたわね。あの砂の丘を登ればアフラン自治区に付くはずよ。」

「良かった!もう着くんだ!」

「やったな!」

 

ルーチェからもうすぐアフラン自治区へ着くことを聞かされ、笑顔になる。あと一息!砂漠だられで”休息は余り取れなかった”けどもう着くなら問題ないよね?そう思って止めていた足を再び進めようとした・・・その時だった。

 

傍らで何かが倒れ、バタンという音が耳に入る。

 

・・・えっ?何?おそるおそるそちらに目を向けるとそこには力尽きて倒れたシルヴァの姿があった。

 

「シルヴァ!」

「シルヴァちゃん!!」

 

倒れたシルヴァを見て、僕とルーチェは真っ先に彼女を抱き上げる。・・・体が熱い!?それに汗が・・・出てないし・・・それに身体がなんかビクビクしてる?なんだこれ?

 

「おい!シルヴァ!聞こえるか!・・・ちっ。完全に気を失ってんぞ!無理でもしちまったのか?このアマ!」

 

カイが呼びかけても全く返事が無く、僕らもただ身体を抱き上げる事しかできない。どうしよう?

 

「このままアフラン自治区へ背負っていこうか?」

「それしか方法が無いわね!カイ君!手伝って!」

「おう!」

 

埒が明かず、シルヴァをアフラン自治区へ運ぼうとした時だった。

 

「待ちなッ!テメェら!!」

 

何処からか女性の声が聞こえ、僕らは辺りを見渡す。くそっ!まさかここで賊か?そう思い、エクスカリバーに手をかけるとアフラン自治区の方から馬に乗ったハーフフット族の女性が現れる。

 

「なんだ?」

 

現われた女性は僕らの前で馬を止めると小柄な身体で砂漠に降り、僕とルーチェを退かせるとシルヴァを取り上げて呼びかけた。

 

「おい!聞こえるか?分かるか?」

「テメェ!ナニモンだ!チビ褐色!」

 

いきなりシルヴァに触れて怒るカイに女性は言った。

 

「医者のエレミアだ!!」

「医者!?」

 

エレミアと名乗った女性の職業を聞いて僕は目を見開く。言われてみれば白衣を着てるけど・・・こんな砂漠の中に医者が居たのか!?

 

「やべぇな!この女はアンタらの仲間か?」

「え?はい・・・」

「だったらなんでこんな状態になるまで放置したんだ!!!」

 

エレミアは僕らを急に怒鳴るとシルヴァの身体を触り、診察する。

 

「熱中症だ!高温多湿な環境で体温調節機能が崩れ、体内に熱がこもる病気だ。めまい、倦怠感、頭痛、痙攣、意識障害などを引き起こし、重症化すると命に関わる!!直ぐに応急処置をしないとな!!」

 

早口でそう言うと馬に乗せていた道具箱から薬や医療器具を取り出して治療を始めた。

 

「えっ?ここで今やるんですか?」

「当たり前だ!!下手したら死ぬんだぞ!!」

「だとしても自治区が近いならそこで治療をしたほうがいいわ。」

「呑気なこと言ってんじゃねぇ!」

 

エレミアは手を動かしながら僕らを見て言った。

 

「”待ってるだけじゃ救えねぇ命がここにあるんだ”!!」

 

その言葉に僕は目を見開くと応急処置を慣れた手つきで進めていく。

 

「よし!終わりだ!おい!この女を運べ!」

「あ、はい!」

 

終始、エレミアの気迫に押された僕らは彼女に従い、無事にアフラン自治区へ足を踏み入れるのだった。

 

◇◇◇

 

アフラン自治区・・・人口凡そ1500人と少ないがエレミア曰くそのうちの約半数が医者だという。砂漠という過酷な環境で生き抜くためにはオアシスの確保だけでなく医療も必須であると考えた初代区長の考えにより、アフラン自治区は隠れた医療特化の地域となったらしい。

 

そんな場所へ辿り着いた僕らは熱中症で倒れたシルヴァをなんとか治療して貰い、事なきを得る。

 

「ふぁ・・・まだ頭がぼーっとするよ。」

「あと少し遅かったら死んでたぜ。意識障害が残るだろうが時期に治る。今は安静にしとけ。」

 

目を覚ましたシルヴァにエレミアはそう言うと僕らに顔を向ける。

 

「んで?騎士(シュバリエ)だったか?なんでまたこんな砂漠に?」

「僕達、あるものを捜して来たんです。」

「お宝か?ここにはねぇぞ。」

「いえ、土の精霊ノームを捜してるんです。」

「精霊!?あっはっはっはっは!!」

 

僕が精霊を捜していると話した途端、エレミアは高笑いする。

 

「テメェ!何がおかしいんだよ!」

「わりぃ!わりぃ!馬鹿にしてるつもりはねぇんだ。まさかそんな御伽噺を信じる奴が居るってことが面白くてよ。」

「精霊は実在するわ。現にこれまで3体の精霊に私達は邂逅しているわ。」

 

ルーチェはエレミアに本当に精霊と出会ったと伝える。

 

「はいはい。分かった分かった。アンタらも熱中症でおかしくなってるみてぇだな。」

「テメェ!馬鹿にしてんのか!チビ褐色!」

「カイ!やめろ!」

 

遂に激昂したカイが手を上げた・・・次の瞬間。驚くことにエレミアはカイの腕を掴んで一捻りするとそのまま彼を地面に倒してしまった。

 

「ぐはっ!?」

「なっ!?」

 

その力の強さに僕とルーチェは驚いて再びエレミアに目を向けた。カイが一捻りで倒された!?・・・なんて力を持ってるんだ!?

 

「見くびんなよ!アタシはそこらの医者とは違う。どんな危険な場所でも怪我人を治療しに向かう。弾丸が飛び交おうが火山が噴火しようがな!その為に鍛えてんのさ!」

「どうしてそこまでするんですか?医者って・・・本来は後方で活躍する役割ですよね?」

 

僕の疑問に彼女はニヤリと笑みを浮かべながら口癖の様に言った。

 

「”待ってるだけじゃ救えない命がある”からだよッ!!」

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