Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜   作:ジャック・オー・ワンタン

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第66話:覚醒

「な、何っ!?」

 

帝国兵の半数を気絶させた僕にカリオストロは焦りの表情を浮かべる。なんだ?この感じ・・・身体の奥底から力が漲ってくる様なこの感覚は。

 

「シエル。お前どうしたんだ?」

 

蒼白い稲妻に包まれる僕を見て、エルデは冷や汗を流しながら尋ねる。

 

「僕にも分からない。でも、なんだろう?前にもこんな力を発した気がするんだ。確かノアールとの戦いの時にも・・・。」

「シエル君。貴方それ"騎士王の威光"よ!?」

 

ルーチェは僕を包む蒼白い稲妻を見てそう言った。騎士王の威光?なんなのそれ。

 

「バカな!こんな小僧が騎士王の威光を!?」

 

騎士王の威光なるものを放つ僕にカリオストロは後退りするとその強大な力に反応したのかアレスが姿を現した。

 

「やはり持って生まれたか。」

「アレス!」

 

アレスの登場に僕は再び身構える。

 

「知りたいか?お前がまだ知らない自分の力を。」

「僕が知らない自分の力?」

「騎士王の威光の事だ。」

 

アレスはマントを翻しながら騎士王の威光について説明する。

 

「騎士王の威光とは聖剣を扱う資格を持ち、尚且つその中でも優れた才能を持つほんの一握りの逸材が持つ力だ。」

「おいおい。そんな力があんのかよ!?」

「その力をシエルが持っていたってこと?」

 

カイとシルヴァは驚いた様子でこちらを見る。正直、僕自身も驚いている。そんな強大な力を自分が持っていたなんて。

 

「あの時、俺達がノアールによって倒されても無事だったのはこの力のおかげだったということか。」

 

ウィルダーはノアール達との戦いを思い返してそう呟いた。

 

「シエル。これで理解した筈だ。貴様は騎士で収まっていい立場ではないと!お前はその力で世界を我が物にする資格がある。」

「何度も言わせるな!僕は支配に興味はない!これだけ強い力があるなら支配に侵されている世界を救う為にこの力を振るう!」

 

僕はそう言ってアレスの勧誘を再び断る。

 

「そうか・・・ならば仕方ない。ここで死ぬがいい!」

 

目を光らせ、全身に炎を纏ったアレスは剣を構えて僕らの前に対峙する。

 

「おっと。アタシを忘れるんじゃないよ!」

 

カリオストロもまた奴の隣に立って賢者の石を手にする。

 

「チッ。精霊の力が使えなくてもやってやるよ!」

「同感だ。じゃねぇと騎士をやった意味がねぇよ!」

「いい心意気だねぇ!じゃあくたばりな!」

 

カリオストロは賢者の石を光らせてカイとエルデ目掛けて赤い光弾を放つがルーチェが魔法の白い光弾で相殺する。

 

「何!?魔法如きに!?」

「あら、魔法を見くびってもらっては困るわ。この際だから決めましょうか?魔法と錬金術どっちが強いのか・・・ね?」

 

ルーチェはカリオストロにそう言うと魔法の障壁を展開しながら反撃する。

 

「小癪な!おい!この小娘以外の奴らを何とかしな!」

 

迫りくる高度な魔法に翻弄されながらカリオストロは残っている帝国兵達をカイ達にけしかける。

 

「ナメられたモンだぜ全く。」

「手を貸すぞ。」

「助かる!」

 

カイ、エルデ、ウィルダーは並び立つと一斉に向かってくる帝国兵の軍勢を相手にする。

 

「シエル!」

「僕は大丈夫!シルヴァはカイ達の支援をお願い!」

「分かった!」

 

彼らの支援をシルヴァに任せた僕は一人でアレスと相対する。

 

「騎士王の威光があっても恐れるに足りん!"炎剣 焔(ほむら)"!」

「アレス!僕は絶対にお前に勝つ!」

僕の蒼白い光の剣とアレスの炎の剣・・・互いの想いを込めた刃が交錯すると辺りに衝撃波を放ち、周囲を通りかかった一部の帝国兵達を気絶させていく。それを他所に僕とアレスは雄叫びを上げながら拮抗する剣に力を増して赤と白が交わる光と稲妻、炎の中で鍔迫り合いになる。

 

相変わらず強い!それでも!例え精霊の力が使えなくとも・・・僕は絶対に諦めない!今、この瞬間。エレミアはオペ室という戦場で己のトラウマと戦っている!だから僕も負ける訳にはいかないんだ!!

 

その思いは力となり、僕を纏う蒼白い稲妻はどんどん強くなっていく。

 

「ば、馬鹿な!?この俺が!?」

 

アレスは焦りの様子を見せると徐々に彼の足が下がり始める。

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

力を振り絞り、僕は遂にアレスの剣を弾いて奴の堅牢な緋色の鎧を斬りつけた。同時に僕から放たれる騎士王の威光の衝撃で仰け反ったアレスは身体から僅かながら鮮血を漏らすと高速で吹き飛ばされ、辺りの岩に激突し、砂埃を起こした。

 

「な、何!?やられたのかい!?」

「アイツ。やったのか!?」

「どうやらそうらしい。」

「凄い!十二神騎を・・・アタシ達が勝てなかった騎士を倒した!!」

 

その様子は仲間達にも伝わり、カリオストロと帝国兵達は唖然としはじめた。勝った!遂に・・・アイツを!アレスを倒すことが出来たんだ!いや、まだだ!まだ油断しちゃいけない!

 

気を引き締め、エクスカリバーを手にした僕は砂埃の中へ消えたアレスにトドメを指す為、奴の元へ恐る恐る歩みを進めるのだった。

 

◇◇◇

 

「心拍戻りません!」

 

その頃、アフラン自治区のオペ室では未だ区長の容態は回復していなかった。

 

「くそっ!区長!戻って来い!アタシは・・・もう失いたくねぇんだ!自分の手で・・・」

 

それでもエレミアは諦める事なく心肺蘇生法を続行する。そこには既に嘗てトラウマを抱え、オペ室を拒んだ彼女の姿はもう無かった。しかし、焦りの気持ちがそれをどんどん蝕んでいく。

 

どうせ助けられない。もう無理だ。もう一人の自分がそう言ってくる。諦めた方がいい。お前にオペなんて・・・医者なんて・・・出来やしねぇんだ。

 

「うるせぇ・・・黙ってろ!アタシは・・・助けんだよ!アンタにくたばって貰ったら困るんだ!!」

 

心の中に聞こえてくる言葉を押し殺すように懸命に区長の胸を圧迫し続ける。しかし、回復しない心電図・・・誰もがもう助からない・・・そう思っていた時だった。

 

心電図の音が変わり・・・脈拍が正常になる。その反応にエレミア達は一斉に心電図を見た。

 

「心肺回復!血圧も正常!・・・手術は成功です!」

 

麻酔科医の言葉にエレミアは胸を圧迫し続け震えていた手をゆっくりと降ろし、力が抜けると壁に背中をぶつけて座った。

 

「エレミア!よくやったぞ!区長は助かる!」

「後は・・・俺達に任せろ!」

「はぁあっ・・・ああっ!」

 

横たわる区長の姿を見た途端、エレミアは涙を流すも直ぐにそれを拭って立ち上がった。

 

「おい!エレミア!」

「・・・後は任せて良いんだろ?」

「あぁ・・・そうだが。」

 

マスクを取ったエレミアは再び力の入った手でオペ室の扉を開ける。

 

「どこ行くんだ!?」

「どこ行く?決まってんだろ?」

 

彼女は澄んだ目で医者達にこう告げた。

 

「”仲間”を・・・助けに行くんだよ!」




次回、アレスの正体が遂に明らかに!!

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