Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜 作:ジャック・オー・ワンタン
僕は晴れゆく砂煙を払いながら吹き飛ばしたアレスの元へ歩み寄る。甲の鉄仮面は損壊し、鎧も一部砕けている様だ。まさか十二神騎に勝つなんて思いもしなかった。・・・とはいえまだ油断は出来ないし、コイツは生かしておくと脅威になりかねない。せめて僕の手で・・・
「勝負あったな!アレス!」
アレスの前に立ち、僕は彼の首元に剣を突きつける。そういえばコイツの素顔を見たことが無かったな?この際だし見ておくか。
「顔を上げろ。せめてお前の素顔をこの目に焼き付けておくよ。」
「そうか・・・だが、お前は俺の顔を見て驚くぞ?」
「何?」
アレスはそう言うと半壊した甲をあっさり脱いで顔を上げて、素顔を顕わにした。金髪の髪、蒼色の瞳をした男性の顔・・・
「なっ!?」
素顔を見た途端、僕は思わず後ずさりし、突きつけていた剣を降ろした。・・・嘘だ!そんなことあるのか?いや・・・でもこの顔は!!間違いない!!
「・・・叔父様!?マルシェル叔父様!?」
「・・・クククッ。そうだ。」
アレスの正体を知って頭が真っ白になった。それもそのはず・・・彼は嘗てワース王国で今は無き親衛隊の隊長を務めた僕とテルの母ルシェルの弟・・・マルシェル叔父様その人だったからだ!
「どうして?どうして貴方が此処に!?どうして帝国なんかに!?」
「驚くのも無理はない。だが、俺もこんなことをしたくて帝国に身を置いていない。」
アレスもといマルシェル叔父様は立ち上がって僕を抱きしめた。
「シエル。覚えていてくれたのだな。まだお前が5歳の時に俺はワースを追われた。・・・大きくなったな。」
「・・・おじ様。」
その温もりは間違いなく幼い頃に感じていた叔父様のものだった。
「叔父様!もう帝国に肩入れするのはやめてください!僕は貴方と戦いたくない!」
「俺を倒す為にここまで強くなったのだろう?なら、その使命を果たせ。」
「・・・できません。」
叔父様の言葉に僕は首を横に振る。
「ならば俺と来い!お前は世界を支配する権利がある!」
「それが叔父様の望みでも僕は答えられない!そして貴方を殺せない!」
僕の答えに叔父様は残念そうに俯く。
「何故、そうまでして支配する側になる事を拒む?お前はテルと比べられ、ワースでは居場所を無くし、後ろ盾も居なかった。俺だけがお前の味方だった。居場所が無いから国を出たのだろう?」
「それは違います。叔父様。」
僕は首を横に振り、旅に出た理由を答える。
「貴方が国を追われてから数年後に師匠・・・オーディンがワースを訪れました。僕は彼女から剣術と騎士の魅力を教えてもらい、テルと和解して彼女に騎士になって会いに行くという約束をしたのです。」
「オーディンが!?成程・・・それで彼女が総長の元を訪れたのか。」
叔父様は納得した様子を見せる。テルと和解したことは勿論、知る由は無かっただろう。
「用は済みましたか?」
すると声が聞こえて振り向くと一人の女性帝国士官が兵士を連れて立っていた。くそっ!帝国兵?この人はさっきの場所に居なかったから増援か?覚悟を決めて身構えた瞬間、叔父様が手を上げて制止した。
「安心しろ。彼女達は俺の協力者だ。」
「えっ?」
叔父様はそう言うと前に出て女性士官を見た。
「ホークアイ。カリオストロは?」
「はっ!依然として戦闘中です。ですが彼女の麾下であるクラリスの部隊が密かに精霊の拿捕をするべく準備中です。」
「そうか・・・。」
報告を聞いた叔父様は僕に目を向ける。
「シエル。知っての通りだが精霊の顕現にはエクスカリバーが必要だ。だが錬金術を扱う彼らが何をするかは分からない。精霊はお前達が持つべきだ。」
「そのつもりです。その為に僕らは旅をして来たんですから!」
僕の言葉に叔父様は優しく微笑んだ。
「甥御さんと再会出来たのですね?」
「あぁ。君達には感謝する。・・・だがいいのか?これからやる作戦を決行すれば君達は最悪帝国兵でいられなくなるぞ?」
そう言った叔父様に対してホークアイら帝国兵は静かに頷く。
「構いません。ダンデ大将が今頃、皇帝陛下にこの作戦を告げる筈です。私達は今の帝国のやり方には疑問を持っていました。カリオストロの部隊を殲滅するなら今です!」
ホークアイの言葉に僕はきょとんとする。えっ?どういうこと?カリオストロの部隊を殲滅?味方を討つって事?
「シエル!」
するとカイ達が僕の元へやって来ると叔父様たちを見て身構えた。
「ちっ!あの変態女が居なくなったと思えばここにも!テメェら!シエルから離れろ!」
「ま、待って!カイ!」
僕は慌ててカイを制止する。
「どういうこと?なんでアレスが味方面してるのよ!?」
叔父様を見てシルヴァは困惑の表情を浮かべるとホークアイが敬礼しながらカイ達に答えた。
「信じられないと思いますが騎士の方々にご説明します。我々、第20侵攻艦隊は故あって本国のやり方に疑問を持っておりました。そして此度、宰相直轄の部下カリオストロを討つ為にアレス准将の下で動いていたのです。」
「んだよそれ!アイルを襲った分際でふざけんなよ!!」
しかし、カイは怒ったままホークアイに突っかかろうとしたが叔父様が間に入り、頭を下げた。
「君の故郷を襲ったことは俺が詫びる。あの後、皇帝陛下が密かにアイルへ義援金を送っている。」
「なっ!?皇帝が!?」
叔父様の言葉にカイは驚いた表情を見せる。皇帝・・・さっきも名前に上がっていた。確かロワ帝国の事実上のトップだったはず。
「どういうことだ?てめぇらの侵略作戦は誰の指示なんだよッ!」
「・・・侵略作戦は宰相の独断で始めたものです。皇帝陛下御自身は侵略をお考えではなく他国との共存を望んでおりました。」
ホークアイの説明に察したルーチェが口を開いた。
「つまり・・・力を持ち過ぎた宰相が皇帝すらも無視して侵略を始めた・・・そう言う事ね?」
「はい。私達はその皇帝の息がかかった部隊。アイル侵攻は宰相に悟られない為に敢えて行ったのです。」
「クソが・・・!」
カイはそのまま崩れ落ち、ホークアイを睨んだ。
「んで?あの変態女はどこ行ったんだ?」
「恐らく・・・あそこです。」
ホークアイはグランデ・キャニオンの頂上を指差す。
「グランデ・キャニオン頂上に土の精霊ノームが眠っているとされています。カリオストロは恐らくノームを拿捕する為に貴方達を撒いて待機していた別動隊と頂上を目指しているでしょう。」
「・・・じゃあ!急がないと!叔父・・・アレス。さっきの策でいけるの?」
「問題ない。」
叔父様は僕に頷くと何かを察したルーチェは静かに微笑んで言った。
「どういう経緯でアレスと和解したのか知らないけど・・・これで貴方の旅を阻む存在は一つ減ったってことかしら?」
「あ、あはは・・・そうなるかな?」
僕はルーチェに苦笑しながらそう答える。皆にはまだ僕とアレスの関係を明かすはやめておこう。
「急いで向かうぞ。このままだと奴らは錬金術でノームを呼び出す。」
ウィルダーに頷いた僕は皆に指示を出す。
「よし!皆。グランデ・キャニオンの頂上へ向かおう!」
「ちょっと待ちな!」
刹那、何者かの声が響き渡り、僕達はそちらへ注目する。そこには真っ白な白衣を身に纏い、自信よりも大きなメイスを抱えたエレミアが姿を現すと彼女は笑みを浮かべながら言った。
「その登山旅行。医者が要るだろ?アタシも付いて行くぜ!」
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