「ほぅ。いやはや、貴方からそう言った猥談を振られるとは想いもしませんでしたね」
「別に良いだろ。部室には珍しく俺とお前と長門しかいないんだからな。あっ、王手」
「ではワープで」
「ねぇよ。将棋にワープなんかねぇよ。俺の三十連勝だからって現実逃避するなよ」
和やかに最初の布陣に戻す古泉を横目に、俺はお茶を啜る。授業終わりの夕暮れ時。朝比奈さんとハルヒは個人的な用事で遅れるらしく、今、部室に残っているのは古泉と俺と長門のみ。
長門は百エーカーの森に夢中だ。
「で、佐々木さんと言う方は、前に出会った貴方の中学時代の親友でしたよね。何故、パンツなのでしょう?」
「というと?」
「確かに、親友ポジションの女友達のパンツが見たいと言うのは男性にしてみれば基本的な欲求。しかし、私はここで押したい……――――――ブラちらを」
「……っ……流石だな古泉。股間に来る」
「いえいえ。それほどでもない」
「王手」
「ワープ」
「だからワープなんかねぇよ!!」
チラリと横を見ると長門はミッキーマ○ス物語を手にとっていた。
「で、どう言ったシチュエーションで見たいのですか?」
「……そうだな。俺と佐々木は良く、自転車の二人乗りをしていたんだ」
「なるほど。自転車パンチラシチュエーションですね」
「流石だな、古泉」
「ふふっ。いえいえ」
「こうっ……来るよな。佐々木は横乗り派なんだが、たまに跨がる時があるんだよ。そういうときフワッって。フワッってスカートがさ、来るんだよ!!」
「ハハハハ。テンション上がってきましたね!! フワッって来てからの見えないコンボですねッ! 黄金ですよッ!」
「ピンクのチェックが脳裏に焼き付いてる」
「見えたんかぁぁぁぁい!?」
古泉は将棋盤もろとも地面に転がり落ちた。
そして長門は本を机に置き此方を興味深く観察していた。まぁ、聞かれても問題は無い。
「大丈夫か、古泉!?」
「え、えぇ。すいません。少しテンションが可笑しくなりまして……それで、最初に戻りますが」
「あぁ」
「何故、佐々木さんなのでしょう。場合によってはハルヒさんや朝比奈さんとか近くに女性はいるでしょう?」
「いやな。昨日なんだがネットサーフィンをしていたら中々の同人誌を見付けてな。それが僕っ娘の幼馴染み的な親友ポジションのヒロインがキス魔な話なんだよ」
「めぐ○ドコロですね」
「これだけの情報で見抜くお前恐すぎだろ……」
「これでも超能力者ですから。ふふっ」
「流石だな、古泉。で、話を戻すが、その同人誌が心を貫いてな。同人誌って言うかヒロインがね」
「股間に来ました?」
「ズガンと来て」
「ドピュっとだしましたか」
「「ハハハハハハハハ!!」」
上手いことを言うじゃないか。流石は超能力者だよ。ちなみに王手を決めた。三十三連勝目だよ。将棋弱すぎだろコイツ。さっきから飛車アタックと桂馬アタックしかして来ない。
「しかしだな、古泉。俺は今、お前が超能力者と言う事実に素晴らしいことを気付いてしまったぞ」
「はて、なんでしょう?」
「超能力者ってのは、透視とかサイコキネシスだとかパイロキネシスだとかさ。夢みたいな力があるよな」
「えぇ、そうですね。私もそれに近しいことが出来ますから」
「―――――――――念写って出来ないのか?」
「―――――――――ッ!?」
俺の言葉に古泉は将棋盤を窓から投げ捨てるほどの動揺をしながら、目を見開き口をすぼめた。どんな驚き方だよ、情緒不安定か。
「な……ッ!? なんてことだ……ッ!? 私としたことが、こんな簡単なことに気付かなかったなんて……ッ!? ぼ、僕は……念写が使える……ッ!?」
「で、出来るのかッ!? 佐々木のパンツはッ!?
ササパンは念写出来るのか!?」
「ササパン所か、ササマンだって出来ますよッ!!」
「ぴゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
「ああッ!? 漫画太郎みたいな顔になってますよ!?」
お茶を口から吐き出してしまった。俺の脳裏にはそれ程凄まじい衝撃が駆け抜けたのだ。いや、しかし。
「………やろう、古泉」
「………やりたいのですが……」
「なんだ!? なぜ拒む!? そりゃお前にササパンは見せないが、お前はお前で好きなハルパンとかアサパンとか長パンとかカト○ンとか見れるんだぞッ!?」
「私だって見たくない訳じゃ無いんですよッ!!」
「ッ!?」
「見たいに……見たいに決まってるじゃないですか……広末○子の中身とか……見たいに決まってるじゃないですか……ッ!」
「だったらなんで…」
「私の超能力者は閉鎖空間でないと使えないんですッ!!」
「―――ッ!?」
その時、身体に電流走る。
完璧な盲点だった。思わず古泉と共に地面に嘆き伏せてしまう。なんてことだ。夢が目の前にあるのに、あと一歩で手が届かないなんて。なんて。なんてもどかしく気持ち悪さを孕んだ感覚だ。
「うっ……うぅ……私が不甲斐ないばかりに……っ!」
「良いんだ……良いんだよ、古泉……」
「………」
「本当に……本当に不甲斐ない………何のためにこんな力があるのか……っ!」
「良いんだ、良いんだ古泉っ! 長門だってそう想ってるさ、なぁ長門!」
「その質問には答えかねる」
無表情で答える長門。長門らしい優しさの籠もった肯定だ。
「「そうかッ!?」」
ここに二人に電流走る。
「長門!! 長門なら出来るんじゃ無いか!? この部屋を一時的に閉鎖空間にすることが、お前になら出来るんじゃ無いのか!?」
「出来る」
「な、なんですって!?」
「やった、やったぞ古泉っ!! パンツを念写出来るぞ!!」
「ぴゃあああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
「あぁっ!? 漫画太郎みたいな顔になってるぞっ!?」
此方を無表情で見つめてくる長門を二人で見つめ返す。希望だ。超高校級の希望が目の前に表れてくれた。
「早速やってくれ、長門!!」
「否定」
「ば……馬鹿なッ!?」
「何故ですか長門さんッ!?」
「その行動に利点が見られない」
「頼む長門!! なんでもするからお願いします!!」
「ケーキ」
「私のコネで何ホールでも頼めますよ!!」
「やる」
「「やったっ!!」」
長門は何も言わず、数秒間も無言でいると、途端に小さく頷いた。
「この場を一時的に閉鎖空間に変えた。一分間だけ」
「やれるぞ古泉っ!!」
「ふ……ふふ……未だ使ったことの無い未知の力。どんなデメリットが襲いかかるか予想も出来ません……まずは貴方からです。私の力に気付かせてくれた親友に、花を見せましょう」
「こ、古泉……お前って奴は……!!」
「さぁ、携帯を出してください」
俺は古泉の言う通り、携帯を手に持つと古泉に向かって構える。対して古泉は俺の携帯に手を添え、ゆっくりと深呼吸を始めた。
初めて見る古泉の本気、それは思わず息を呑むほど気迫と殺気が籠もった気配を感じさせる。
「―――――――――はぁぁぁぁぁぁんッッッ!! 念写ぁぁぁあえああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
そして力は放たれた。
俺の携帯が受信音を響かせ、画面一杯に真正面から取った黄色のチェックパンツが映し出される。
だが、誰が履いているのかが分からない。画面に映っているのは綺麗な太ももとパンツのみだ。
「け、携帯のピクチャーがパンツで埋まった!! せ、成功なのか……?」
「ごふッ!?」
「こ…古泉イイイイイイイイイイイイイイイッ!?」
突然に古泉が血を吐いて倒れだした。
「ぐっ……無理を……しすぎたようです……」
「古泉っ! 大丈夫かっ!? 今すぐ病院に…」
「それよ…りも……貴方にはやるべきことがある……」
「やるべきこと……!?」
「私の力が……ちゃんと使えたか……確かめてください……携帯の写真は……ササパンですか……?」
「わ。分からん……ササパンかどうかなど……」
「お願いします……確かめて、ください……でないと……逝けない……っ!」
「古泉……―――――――――分かった」
俺は携帯から佐々木の番号を表示する。
無駄にしてはならない。古泉の、俺のこれからのオカズ人生を引っ繰り返す、この力が。しっかりと使えているのか。男として。キョンとして。古泉と言う男の親友として。やらねばならないときがある。
俺がやらなきゃ誰がやる。
―――プルルル……プルルル……
『もしもし』
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
『君から電話なんか珍しいね。何時もは僕から電話していることばかりなのに』
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
『……? どうかしたのかい。随分と息が乱れているようだけど、僕に何か用事でも』
「い、いま……黄色のパンツ履いてる……? はあはあ……はあはあ……」
『…………………………うん?』
「チェック柄……? はあはあ、チェック柄なの……?」
『……………………死ね』
プツンと切れる電話。
「間違いないぞっ!! 古泉っ!! 佐々木のパンツは黄色のチェック柄で間違いないッ!! お前は……お前は成功したんだよッ!! ササパンを念写したんだよッ!!」
「………よ……かっ……た……――――――」
「―――――――――――――――古泉イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」
こうして、俺と古泉のパンツライフは幕を開けたのだ。
続かない
ササパン食べたい