ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。   作:Kkmn

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9.ブチ切れガチ切れ蛇娘ちゃん

「ナナちゃん!?大丈夫!?」

「へイ、き……だけど、敵?」

 

ぶつけた額を抑えながら、梅雨ちゃんに支えられて立ち上がる。衝撃のせいで再び散乱した室内を尻目に、その発生源となった街中に目を向けた。ベランダから二人して身を乗り出し、轟音の響いた方を見てみる。が、モクモクと立ち上る黄土色の煙に覆われている一帯があることくらいしかわからない。きっとあそこに何かが落下してきた…?

 

『─────あなたミルコの弟子って言ってたけど、ヒーロー免許はあるの!?もしあるなら急いで民間人の救出を!救助要請が山ほどその辺りから通報されてるわ!』

「ケロ。いえ、ないわ。」

『~~~っ!!だったらそこから早く逃げなさい!もしそこにいるのが”他の所に現れたの”と一緒なら、そこら辺はとんでもないことになるわ!』

「でも!あそこに助けを求めてる人達がいるならっ…!」

 

梅雨ちゃんの電話先の相手のヒーローの声には色濃く焦りの色が聞いて取れた。今こうしている間にも立ち込める煙は大きく揺れ動き、地響きのような振動も伝わってくる。もしあそこに人がいるなら助けるべきだ。だがそれよりも…あそこにいるのもまさか、あの脳むき出しの化け物なのか?もしそれなら、情報を聞き出せるかも…!!そう内心呟きながら、自身の掌がいつの間にか汗ばんでいたことに気づく。そしてその手で手すりを強く握り、身を乗り出そうとして─────。

 

 

「─────そこの化け物オ!!!!止まれぃ!!」

 

その瞬間、やけにうるさい若い男の声が耳朶をうった。化け物、と言う言葉に思わず自身のことかと身構えてしまったが、どうやら土埃の中に蠢く巨大な人影に対して言っているようだ。通話を中断した梅雨ちゃんと一緒にその声がした所に注目する。

 

「平和なるこの街を荒らし、民を恐怖に陥れる不埒千万なる巨大なる化け物よ!このヨロイムシャ様の一番弟子たるアッシガルーが、貴様に代々伝わる我が流の剣技をもって、今ここに完膚なきまでに打ち倒し、二度とその邪悪なる足跡を残さぬようにしてくれるわ!覚悟いたせ、今宵の闘いで我が刃によって貴様の悪行は終焉を迎え──────────」

「梅雨ちゃん、見なイで」

 

その道路に鎮座していた古風な装いの若い男。多分ヒーローだろう。彼が長ったらしい講釈を言い終わる前に、土埃の中から飛来した巨大な…なんだ?黒い腕?により彼は、その。形状しがたい状態になった。巨大な赤い絵の具のチューブが破裂したらきっとあんな感じだろうと、梅雨ちゃんの目を覆いながら考える。そのせいで少し目を隠すのが遅れてしまったかもしれない。

 

「…見えチゃった?」

「………ひっ、ひと、今の…ひとは?ヒーロー…が…?うそ、よね?」

 

ギリギリ見えてしまったのだろうか。梅雨ちゃんは年頃の少女相応の反応を見せ、へなへなと腰を抜かしてしまったらしい。今度は自分が彼女を支え、壁際まで運び座らせなおした。…震えている梅雨ちゃんの手はとても不思議で、とても繊細に感じられた。

 

『─────逃げられないなら隠れていなさい!この辺りの目ぼしいヒーローはみんな風見の方へ行ってるから、ヒーローが到着するまで時間がかかるわ!私も今向かってるから!通話は切らずにそこから状況を…』

 

彼女の震える手ををぎゅっと握りながら、落としたミルコさまのスマホから聞こえて来たヒーローの声に耳を傾けた。ヒーローが来るまで時間がかかる。なら、逆に言えば今ならヒーローに見られず外に出る事ができる…?そこまで思い至った時、わたs…自分は長い蛇の髪をかき上げ、動きの邪魔にならないよう髪をふたつの団子状に結う。使うのはミルコさまに貰った髪留め。

 

「ナナ…ちゃ、ん。まって」

「………」

 

梅雨ちゃんの震える目と視線が交わる。なぜ彼女はここまで自分の心がわかるのだろうか。なぜこの子に心配されるのがこれほど胸を締め付けられるのだろうか。

 

 

 

「これは梅雨ちゃんには関係ナい。じぶんのこトだから」

 

 

 

彼女の手を最後に強くぎゅっと握る。後ろ髪を引かれる思いを振り払いながら、ベランダの手すりから上半身を乗り出しそのまま落下した。間際に梅雨ちゃんの悲鳴にも近い呼ぶ声が聞こえるが、それすらも遠く後方に消えていく。…このまま上半身から着陸すればさっきのヒーローに近いことになるだろう。だがそうはならない。空中で身をよじり、硬い鱗で覆われた下半身を着地面に合わせる。

 

─────上手くいった。

 

骨が尋常ではない数あるからか、蛇の筋肉がしなやかだからなのか、硬い鱗が身を守ったからか、あるいはその全てか。いずれにせよ着地の衝撃は分散され、最上階からの落下にしては静かすぎる着地音と共にアスファルトの地面へと着地する。

 

「殺シてやる……あの蛇女とカオナシに連ナる奴は、みンな殺してやるッ…!!!」

 

目いっぱいの憎悪を込め、下半身をしならせ”全力”でアスファルトを叩きつける。その衝撃で地面が陥没事故でも起こしたかの如く抉れ、その反動はカラダを土煙の中へと強く弾き飛ばした。それも適当に飛び込んだのではない。”巨大な人型の熱量”がある所を探知して飛び込んだのだ。

 

(??ああ、これはこの蛇の個性の一部か─────忌々しいが…!!!)

 

自分が何を感じ取ったのか、行動してから理解した。これは蛇が温度を探知するという能力だろう。非常に不愉快で忌々しいが、あのゴミどもを殺すためならなんだって使ってやる。そう、このカラダに押し付けられたゴミと呼ばれた個性でも……!!跳躍の勢いと、『怪力』の個性を下半身に集中させ、その人型の物体に思い切り叩きつける!!

 

 

 

「─────死…ね!!」

「………Gururururu!!!」

 

 

 

瞬間、耳を劈くほどの炸裂音が一体の空気を激動させ、周囲の土煙が一瞬にして霧散してしまう。自身の姿を隠してくれるソレがなくなったことに軽く舌打ちするが、それは目の前のコイツも同じことだろう。その見た目はやはり想像どおり、あの研究所にいた脳が丸見えの怪物だ!…見た目に個体差があったはずだが、コイツを見たことあるかどうかは覚えていない。しかし明らかに特異な点が一つだけあった。─────その頭部につけている、まるで通信機かのようなヘッドセットだ。

 

『─────まぁ、まあまあまあ!!』

 

そしてその電子機器から、かつて何度も聞いた、あのねちっこく品の無い最低のドブ声が聞こえてきたとあっては。もう心の中の溢れていた憎悪が、いよいよ抑えきれなくなってくる。

 

「この─────ゴミ蛇女が…!!見つけたぞ…!!」

『まぁ、ゴミ箱の蛇女はあなたでしょうに!!…ふふ、お喋りが上手になりましたわね~、お母さんはとても誇らしいですわ♪』

「死ね!!!!」

 

その電子機器がつけられた頭部を抉りとってやろうと再び下半身をしならせ─────る前に、伸びて来た黒い腕が蛇の尾を掴み、そのまま近くの塀に投げつけられる。…しかし脳が揺れる程の衝撃はあったものの、鱗に覆われた身体には傷一つついていない。

 

『クスクス…もうすっかり”蛇女”が板についていますわね。そして8つある”怪力”の個性の強烈な反動は全て硬い鱗に覆われた箇所で使ってデメリットを踏み倒す。なるほどなるほど!?そうか、無反動の怪力の完全下位互換のゴミでも、そうすれば使い物になるんですわね~~メモメモ』

「……何で、ココがわかった」

『え?ずいぶん自意識過剰なゴミ箱ですわね。まさか自分を狙ってきたとでも???そんなワケないでしょう、ただこの子たちのテストであなたの発信機の最後の場所を適当にターゲットにしただけですよ。野垂れ死んでたら人目につくとこに放り出すつもりでしたけど』

 

その余りにも身勝手でクズの極みのような発言に、縛られた髪の蛇達が逆立つのが見ないでも感じ取れた。

 

「……死んでナくて、残念ダったな。お前らもズっとネズミみたいにヒーローと警察から逃げ隠れしテるから、死んだかと思ってた」

『え~~~?無駄にしぶといだけのゴキブリみたいなあなたが言いますぅ~~?まぁ流石に今日ここであなたは死ぬんですけどね。ここで起きた事件の罪も全部背負って、ね♪…脳無、『この薄汚い蛇女を叩き潰しなさい』』

 

瞬間、跳ねるようにその怪物の踏み込みと共に、目の前に拳が飛んでくる!両腕の鱗に覆われた部分でとっさにガードしたが、その音すら置き去りにするほどの勢いから放たれたパンチは凄まじい衝撃を伴い、背後にあった木造の民家は風圧だけで一瞬で倒壊した。

 

「─────っっ…!!」

『えぇ~~!!?うそ、『現在のオールマイトと殴り合える性能』に調整してるんですわよ!?こんな気持ち悪い蛇もどきくらいワンパンしてくださいまし!!もお~!』

 

骨折などはしていない。ただ完全に痺れ、ビリビリと麻痺してしまい到底動かせない。更にはパンチを防いでくれた鱗はボロボロに砕け散り、二度目は絶対に耐えられない。…そこに再び飛んでくる音速を超えた大ぶりのストレート!下半身で防ごうとしたが絶対に間に合わない。咄嗟に左肩に個性込みの全力を込め、タックルのような形で迎え撃つが─────っっ。

 

「……くそ、がっ!!」

 

またも結果は同じだ、鱗は剥がれ左肩から先の感覚がなくなってしまう。衝撃こそ相殺できたものの、これではジリ貧もいいとこだ。そう考えた時、衝撃でいつの間にか解かれていた頭上の蛇達が命令したわけでも無く目の前の怪物に喰らいつく。…いける!この髪の蛇達も前に暴走した時と同じように、今ならコンクリートだって喰い縮れる顎の力がある!それなら有効打に─────

 

「─────Gyaoooo!!!!!」

『ふふ、こうしてると蛇の髪など、なんて醜いのでしょう。』

 

その怪物が手刀を高く掲げた次の瞬間には、その蛇達の頭が全て刈り取られ、胴体から切断させられた!思わず距離を取り頭上の蛇達を見やるが、どうやらこれは再生するらしく、千切れた箇所から新しい頭が生えようとしている。だがもうしばらくは役に立たないだろう。食らいついた蛇の頭が今だ牙を黒い肌に立てているがそれもその怪物が力むと力なく地面へと落下していく。

 

「………っ」

 

有効打がない。”魅惑”は?ダメだ、こんな理性のない相手にとても通用するとは思えないし、通用したところで意味がない。焦りの汗が全身から溢れ、衝撃でボロボロになった上着がずり落ちた。その下に来ているインナー…ミルコさまの際どいコスチュームが露わになる。これが無ければ胴体部にもっと大きなダメージを受けていたかもしれない、薄いがこの防御性能は確かなものだ。

 

『ん~~~~それは…?ああ!!ヒーローともしかしたらつるんでるかな~?と思ってましたが、まさかNo,5のミルコと来ましたか!いや~どうやって説得したんですか?…ふふ、その下品なおっぱいで誘惑でもしましたか?”魅惑”を使ってwそのバカみたいな服装もとっても似合ってますよ~~ぷくくww』

「ほざ、けっ…ゴミが…!!」

 

『─────まぁでもミルコなら良かったですわ!他の有象無象のゴミだったら確認が難しかったですけど、彼女くらいの”半端な強さ”なら、死体の原型も留めてくれてますもの』

「……は?」

 

その電子機器から聞こえてくるドブのような汚い声の内容に、思わず聞き返してしまう。

 

『この子は『今のオールマイトと殴り合える性能』で、風見の方にいるのは『最盛期のオールマイトを殺せる』性能の子ですからね。私の”支配”前提の理性や知能部分を完全に無視したタイプとは言え、現在の最高峰の出来ですわ。ですからほら─────』

 

そしてそこから投影された画像が目の前に広がり、そこに映ってる内容を理解するのに数秒かかった。まるでフィクションでしか見たことがないような壊れ具合の街。そしてそれを背景にして、巨大な隕石でもぶつかったかのように凹んだビル。その中心に力なく項垂れ、””血まみれで両腕が見当たらない、あの兎耳の白いヒーロー””は─────。

 

「─────」

 

それを理解した瞬間、わたしは跳躍して目の前のクソ怪物の腹部に思い切り蛇の下半身でドロップキックをぶちかました。自分でも驚くほどに怪力の個性全ての全力を注ぎこみ、その先端に力を集中させられた。怒りが、怒りしかない。怒り以外の何も感情も─────否、違う。怒りと、そして純然たる殺意だけが心の中を満たしていた。

 

「Guraaah...!!!!!」

 

脳むき出しの化け物は初めてよろめき、苦痛の感情らしき呻き声を漏らした。その身体がくの字に折れ曲がり、目を見開いている。すかさず身体を回転させ、そのまま全力を乗せた尻尾で叩きつける!!バランスを崩した化け物はそれを甘んじて受けるしかなく、ついにその巨体が地面に膝を屈した!

 

 

『─────ああ!そうそう!それくらいしてくれなければ!!試金石にすらなりませんもの!!さぁもっともっと頑張って!失敗作のゴミ箱ちゃん!!』

 

 

そのヘッドセットから聞こえてくる女の声は、気持ち悪い程の喜悦と狂気に満ちたものだった。

どういう展開がいい?

  • スーパー梅雨ちゃん無双
  • 主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
  • スーパーミルコさん無双
  • ひたすら百合百合
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