ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。   作:Kkmn

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11.脳無vs蛙吹ちゃん ラウンド2

その市街地はまるで戦場のような光景が広がっていた。アスファルトの道路は無惨に割れ、巨大なクレーターが中心にぽっかりと空いていた。その周囲には瓦礫と破片が散乱し、煙が立ち昇っている。車両はひっくり返り、衝撃で粉々になったガラスがキラキラと輝きながら地面に散らばっていた。

 

「ナナちゃん!あっちから血の匂い。ケガ人かも、"視て"くれる?」

「…!!温かいのがある!この温度はきっとニンゲン!」

 

店の看板や街灯が倒れ、電線が切れてスパークを散らしながら地面に垂れ下がっていた。その電線の火花が不気味な光を放ち、静寂を破るかのようにバチバチと音を立てていた。

 

「その温度見えるのスッゴク便利ね、今使えるようになったの?」

「うん、でモ、梅雨ちゃんがニオイで場所を教えてくれないとハッキリとはわからないから…あ、もうちょっと右」

 

背中に背負ったナナちゃんが指さす方向に、脚力にモノを言わせ跳躍する。彼女の蛇の眼にはサーモグラフィのような機能があったらしく、それを用いれば簡単に要救助者の位置が特定できてしまう。更にそこに雨天時限定とはいえ私の優れた嗅覚&聴覚。そして機動力が加わればもう敵はいないわ。

 

「いた。男の子よ…ちょっと血が出過ぎてるわね」

「……!」

 

どうやら崩壊したブロック塀に巻き込まれてしまったらしい。まだ小学生程度の幼い男の子が額を抑えたまま気を失っているのを発見した。小さな血だまりが出来ているけど…これくらいならナナちゃんがなんとかしてくれるはず。

 

「あたり、見張っテて」

「オーケーよ」

「………よしっ」

 

背中から降りたナナちゃんが蛇の下半身をしならせて子供に近づく。少し神妙な顔をして、その瞳を閉じる男の子の顔にそっと口を近づけ─────ちゅっ、と軽く頬に口づけを落とした。相変わらず一挙一動が妙に艶めかしいわ。

 

「……ぅぅ」

 

するとどうだろうか、強く打撲し出血していた彼の傷がみるみると逆再生されるかのように塞がっていく。…が、完治という所までは残念ながらいかなかった。もちろん出血も収まり、顔色も真っ青だったのが今はとても落ち着ている。ちゃんと救急隊が来るまでは余裕で持ちこたえられるだろう。

 

「やっぱりその"個性"個人差があるわね。私はキスだけで全身の骨も怪我も治ったのに。相性があるのかしら?」

「うん…さっきの人も骨折までは治せなかっタもんね」

 

男の子の服をナナちゃんの鋭い爪先で切り取り、包帯替わりに額に巻く。そして揺らさないようにそっと大通りまで運び、救助隊の人がすぐに見つけられるような場所へと寝かせた。

 

「ミルコさま。大丈夫、かな…」

「平気よ、あの人が負けるハズないもの。それに大ケガしてても治せるヒーローはいるわ。今は私たちができる事をしましょう。」

「…うん」

 

今だ煙と埃が覆う街を駆ける。あの巨漢の敵は完全に地面に埋めたし、流石にもうすぐヒーローも来るだろう。

 

「…今更だけど、さっきはありがとう、やっぱり、梅雨ちゃんは…すごい」

「何言ってるの。ナナちゃんが弱らせてくれて、キスして私にパワーアップさせてくれたおかげよ。二人で勝ったのよ」

「えへ…そうかなぁ」

 

そう、あの巨漢にトドメを刺してから気づいたが腹部や腕、至る所に緑色に変色している所があった。おそらくあれはナナちゃんの蛇ちゃん達が噛みついた所。きっと全力を出したことであっという間に全身に毒が回り、動きが鈍ってしまったのだと思う。

 

そしてキス……あの戦闘中、私に起こっていた現象はどう考えても"再生"だけではなかった。自分でも信じられないほどの超パワーと超スピードを発揮していたように思える。…この子の別の個性?それともそれも"再生"のうち?

 

 

 

「─────!!まって、あっちにいっぱいニンゲンの反応が!でもこれは…」

「…!!ええこれは─────ヒーローね!やっと来てくれたんだわ!」

 

思考を中断し、近場の適当なビルに這ってよじ登……までもないわ、まだキスのバフがある今の私なら、これくらい一跳びで屋上までいけるわね。ケロ。─────ほらいけた。

 

「…た、多分9階くらいあるよ?ここ。ミルコさんみタいだね。梅雨ちゃん」

「ケロケロ、照れるわ。……ああ、いたわあそこよ。警察や救急も到着してるみたいだわ、良かった」

「ああ。ミッドナイトってあの人のことか…見たことあル」

「私もよ。テレビで見たことある人があるヒーローがいっぱい。こんな時なのにちょっとワクワクしちゃうわね」

 

ビルの屋上に腰かけ、ナナちゃんと二人でまじまじとそのヒーロー達の動きを観察する。ナナちゃんは目が良いから見てるし、私はまだ降っている雨のおかげで遠くの声が聞こえる。

 

 

「機動力があるヒーローはケガ人の救助を─────まて、大通りに沢山いるぞ!さきにここから当たれ!」

「向こうより町の被害が大したことないが…」「変な新人が一人出動したようだが何処だ?」「この治療をした"治癒"持ちは何処のヒーローだ!?いるなら救助隊を手伝ってくれないか!!」

 

つい数秒前までは足音すらなかった静寂の街中に、たくさんの足音とヒーロたちの喧噪が響き渡る。ケロ、ごめんなさい、お手伝いはできないわ。ねぇナナちゃん。

 

「─────敵、既に無力化されています!これより捕縛にあたります!」

「誰がやったの!?風見や香山に出たのと同じなら、ヒーローが数十人は対処にあたったはずよ!!」

「いや、ここに来たヒーローは俺達が最初のハズだ。……ヴィジランテでもいたのか?しかし…」

 

ふふふ、数十人じゃないわ。私とナナちゃんの二人でやっつけたのよ。ちょっと鼻が高いわね。

 

「ナナちゃん、ギャングオルカのお声がするわ。私ちょっとファンなのよ。ここから見える?」

「え?オル…カ?なんかイルカっぽい人なら、アレかな」

「シャチよ。わぁ、本物だわ…。サイン貰えないかしら」

 

よく目を凝らすと、私が作ったクレーター中心でギャングオルカと…え??え?裸のナナちゃんくらいえっちな恰好をした女の人─────あ、あれがミッドナイトさんね。そして警察さん達が頭まで埋めた敵を捕縛するため作業してるわ。深く埋めすぎたかしら。ごめんなさい。

 

「……意外とミーハーなんだね。梅雨ちゃん。」

「え?妬いてるのかしら?可愛いわね」

「~~~~っっ///」

 

ぷくーっ、と頬を膨らますナナちゃんの額に軽く口づけを落とす。相変わらず何でこの子へのキスは優しいミルクみたいな味がするのだろう。

 

「さてもう大丈夫そうね。私達もミルコさんのお家に戻って─────?」

 

何かが炸裂したような音が私の耳朶を打つ。何かが倒壊した?いや、違う、この音は…!目を見開いたナナちゃんと同じ方向を急いで見やるとそこには─────。

 

 

 

「なんでまだ…動けるの…?」

 

─────CRARARARAAAA……!!

 

 

 

あの巨漢のヴィランが…上半身だけになって暴れている!?意味がわからないわ…!ここまで聞こえてくるその咆哮も、さっきまで相対していた時となんら変わらない勢い。

 

「退避急げ!!なんだコイツは!!カラダを切断して─────カハッ!」「きゃっ…!!」

 

ギャングオルカが真っ向から組み合い殴り合っていたが、その戦い方だけは絶対ダメ。重い一撃でガードごと吹き飛ばされ、後ろの警官やミッドナイトの方へ投げ出される。

その戦い方は、パワーだけはオールマイト並みのその敵に一番やってはいけないこと。でも仕方ないと思う、一体誰が「上半身だけが千切れて襲い掛かってくる」なんて状況に冷静に対応できると言うのだ。

 

「ナナちゃん!キスして!!」「…わかっ─────んむぐっ」

 

無理やり彼女の唇を奪い、自身の"バフ"を重ねがけする。しかしさっきのように20秒も長々としている場合じゃない!スグに唇に糸の橋を作り、名残り惜しむ間もなくスグに思い切り跳躍する!

 

「────気をつけて!!」

 

背中にナナちゃんの応援を受けながら、もう一度近くのビルの壁面を思い切り蹴る!

 

「─────BARUBARUBARUBARU!!!!」

 

その上半身だけになった敵がメキメキと音をたて上腕部を膨らませ、腕だけで飛びあがる。そして体制を崩したギャングオルカに追撃─────はさせない!さっきほど力は漲ってないけど!そこは乗せた勢いで何とかする!

 

「─────月堕蹴(ルナフォール)!!!」

 

────本日3回目よ?空中旋風脚をまたその黒い巨漢の脳に直撃させる。ひしゃげ、再び地面に叩きつけられた巨漢は今度は頭から地面に埋められる。うわ千切れた面がちょっと生々しいわ。

 

「…な?こど、も…?学生??」「今の…!…!そこどきなさい!そいつまだ─────!」

「わかってるわ!まだ元気よこの敵!!拘束具があるのよね?早く持ってき─────ああもう」

 

手ごたえはあったハズ。確かに芯を捕らえた。しかしその巨漢は埋まった片腕を地面から這いだし、私の脚を掴む。その脚を軸に一回転しスピンキックをぶち込み、そのままの反動でギャングオルカのそばに着地する。

 

「コイツのパワーはオールマイト並よ。絶対に真正面からは打ち合ってはダメ」

「ああ…みたいだな。両腕が折れてしまった。しかしお前…ヒーロー科の高校生か?逃げろ、こんなことすれば停学になるぞ」

「いえ、中学生よ。だから安心して」

「な、何!?お前バカか!もっとダメだ!逃げろ!─────チッ!!」

 

ギャングオルカにも劣らない巨体が、再び跳躍してくる。彼はそれを私を折れた大きな腕で抱え、咄嗟に避けた。そのまま渾身のハイキックが腹部にクリーンヒット…!したのだけど、それでもまだ敵は動きを止めようとしない。ゾンビね。

 

「クソ!思った以上にシブといな…!ミッドナイト!」

「やってるわよ!でもコイツ──────ほとんど呼吸してないわ!まるで死体みたいに!もっと近づかないといけないわ!でも近づけないのよ!」

 

なるほど、さっきから漂うちょっと甘いニオイはミッドナイトの"個性"だったのね。しかしナナちゃんの魅惑で鍛えられた私にはこの程度の濃さならなんてことないわ。でもこの敵にまで効かないとは…。

 

「ギャングオルカさん。一生のお願いがあるのだけど」

「ダメだ!サインなら腕が治った後でしてやる!」

「私をあいつに向かって思いっ切り投げて。そしたらもう一度アイツをダウンさせてみせるわ」

「何言っt─────………そうか。なるほど、アレをやったのはお前だったのか?」

 

彼の声音が急に静かになる、どうやらそれで察してくれたらしい。私が個性を無断使用してあの敵を倒し、地面に埋めたことを。

 

「ダメだ。ヒーローが民間人、ましてや子供に戦わせるワケにはいか─────んッッ!!」

 

全体重を乗せたローリングソバットが巨漢の敵の脳に直撃するが、それでもなお倒れない。何度でもゾンビのように蘇り、その度に超パワーで周囲の建物や道路を抉り、破壊してゆく。そしてギャングオルカも無傷ではない。

 

「ハァ…超音波も効かんとなれば、いよいよお手上げだな…。おい中学生、お前はどうやってコイツをノックダウンさせた?」

「全力で打ってきたパンチを全身でスリッピングアウェイして、そのままキックに乗せてお返ししたわ」

「なるほどな。俺には無理だ」

「なら放して…私も一緒に戦えば」

 

今だ折れた腕で私を強く抱きかかえる彼は、それを聞いても微塵も腕を緩めない。

 

「個性の無断使用になる。ダメだ。─────お前のような未来のヒーローの経歴に、こんな敵一匹のためにドロを塗らせるワケにはいかん!」

「…!」

 

シャチの眼が強く見開かれ、私の眼を深くのぞき込みながらそう告げられる。そう強く言われてはもう只の一介の中学生が言えることなど何もない。しかしそれでも、状況は変わらない。ミッドナイトも今だ激しすぎる戦闘で近づくことが出来ず、ギャングオルカも決定打を与えられず傷だけが増えていく…!

 

「ケロ。でもこのままじゃ…」

 

今必要なのは、とてつもなく強力な一撃だ。そう、この敵に比類しうるような超パワーでの強力な一撃が─────。

 

 

「─────ギャングオルカ!!!!ソイツ空にぶん投げろ!!!」

 

 

瞬間、戦闘音すら掻き消す程の轟音レベルの叫び声が空から聞こえてくる。そして私は、その声に心の底から安堵してしまった。

 

「はぁ!?ウソでしょ!だってあの子風見で両腕やられたって……!」

「信じられんな!!完全にイカれてる、本物のバカだ!!────任せろ!!」

 

驚いた様子のヒーロー二人も、その声の思惑を理解し一瞬で行動に移る。ギャングオルカが作った僅かな隙にミッドナイトが半ば無理やりに飛び込む!そして至近距離で服を破き、ニオイを解き放った!そして昏睡とは至らなかったものの、ふらついたその数秒があれば彼は十分だったらしい。

 

(……腕が治っている!?)

(これくらいは良いわよね、ケロ)

 

こっそりとギャングオルカの腕に口づけを落としていた一匹の蛇をポケットに戻し、私はその子の頭をそっと撫でた。

 

「やってみせろ!!だが無理はするなよ!!!」

 

そのままボロボロの白スーツに包まれた体躯が勢いよくしなる。そして思い切り折れたはずの両腕でその敵を抱え上げ、勢いよく上空へぶん投げる!

 

そして遥か遠くの上空から、小さな点が大きくなっていき─────。

 

 

 

「─────踵半月輪(ルナアーク)!!」

 

 

私の時とは比べることすら馬鹿らしい巨大な爆発が、塩野市全体を揺らした。

どういう展開がいい?

  • スーパー梅雨ちゃん無双
  • 主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
  • スーパーミルコさん無双
  • ひたすら百合百合
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