ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。 作:Kkmn
12.狙われる蛙吹ちゃん&蛇娘ちゃん
凄まじい土埃が舞い、あっという間に市街地周辺は完全に視界が殺されてしまう。そしてこれはチャンスだ。ギャングオルカさんやミッドナイトさんに気づかれないようにしつつ、私は急いでその土埃の中心にいるであろう彼女へと跳躍した。
「……ここから西に向かって信号3つ目の交差点の、青っぽい9階のビルの屋上……!」
そしてそれだけ小声で、他の誰にも聞こえないようにボソボソと呟いた。
「ミルコ!!!何てバカなことしてるのよ!さっさと救護隊の所に─────あれ?」
「おい!!勝手に動くな中学生!ケガしたらどうする!…おっと」
こちらに駆けてきていた二人のヒーローの姿が見える。が、その視線の先にはもう既に救援にきてくれたヒーローの姿はいない。あるのは陥没事故でも起きたかのような巨大なクレーターと、その中心で完全にノックアウトされた上半身だけの巨漢。そして…さっきまでそこにいたであろうヒーローの夥しい血痕。
「ドコに行った…?まさかあのケガで民間人の救助にでも行ったとでも…?」
「そこまでバカじゃな─────いえ、そこまでのバカだったわね!あ~もう!!」
「探してくる。救助に回ってるヒーロー達にも伝えておこう。お前は警察を呼び戻してコイツの拘束を頼む」
ボロボロの白スーツのギャングオルカはそのまま背中を向けて─────去るのかと思いきや、思い出したかのように私に近づいてきた。
あ、怒られるのかしらコレ。
「中学生…お前の名前と学校は」
「ケロ。蛙吹梅雨、塩ノ洲中学3年生よ」
あ、やっぱりだわ。これは通報→学校→保護者の黄金ルートね。ちょっとショックだわ。内申点にダメージが入ったら、
「俺は何も見てないし、お前は個性の無断使用もしていない。お前はただ"俺の不注意"により敵との戦闘に巻き込まれただけだ。学校と親御さんに謝罪せねばならん」
「…ケロ?」
思わず唇に指をあて、首を傾げてしまう。いや私が思いっきり飛び込んだのだけど…いいのかしら。それを見ないふりしてくれるってこと?
「…いいの?それ?」
「良くはない。だが元々は俺があの敵に不覚を取ったせいで、お前に飛び出させてしまった…腕も治してもらったしな」
「ゲロッ」
ナナちゃんのキスで治したのがバレてる!あれ、ちょっとこれマズいんじゃ。
「詮索はしないし、怒りもせん。ただ2度とこんなマネはするな。─────お前がヒーローになるまではな」
そのまま頭をヨシヨシとされ、そして白い小さな紙?をボロボロになったスーツから取り出して私の手に握らせてくれる。いや紙じゃないわ。『 鯱ヒーロー《ギャングオルカ》事務所』と書かれていて電話番号や住所が─────ってこれは。
「いつでも来い。お前なら大歓迎だ」
そこまで言うと彼は身をひるがえし、ヒラヒラと手を振ってその場を離れていった。……え?これってスカウトって奴かしら?ホントに?夢じゃないわよね?私ヒーロー科に入る前にスカウトされちゃったの?
「……額縁に入れて飾ろうかしら。…っと、そんなことしてる場合じゃないわね。」
思わず顔に出るくらい嬉しかったのだが、こうしている場合ではない。ちゃんとミルコさんがナナちゃんの所までたどり着けたか確認しなきゃ!名刺を懐にしまい、ナナちゃんがいるであろうビルの屋上まで駆ける。
しかし大丈夫だろうか、確かにナナちゃんの個性は全身骨折を治してくれるくらい凄いけど…。両腕がなくなってる、なんて…。もしかしたら彼女なら元通りにしてくれるかもしれない。でも欠損まで治すなんてコトまでできるのだろうか?もし無理なら、ミルコさん、ヒーロー活動を続けられなくて引退なんてこともありえるんじゃ…!
「…ミルコさ──────────!!………??????ケロ???」
そしてビルの屋上に跳躍し辿り着いた私の視界に飛び込んで来たのは。
「おらっ…抵抗すんじゃねぇっ…♡まだアタシは満足してねぇぞっ♡もっとキスさせろっ♡」
「ちゅむぐっ、れろっ♡やぁっ♡…ん~~っ……♡んむぐ、ぅふぅっ……♡」
弱弱しく身をよじるナナちゃんをがっちり
「…………ケロ」
「んはぁっ♡ひぁっ。つゆ、ちゃ。たすけぇっ~~っ♡ひぃんっ♡」
私は眼福だったのでそのまま腰かけて見学することにしたわ。心配して損したわ、あとでこの気持ちはナナちゃんの身体にぶつけましょう。…血まみれで分かりづらいけど、ミルコさんの傷はどうやら全部塞がってるみたい。兎の耳も左耳が半分欠けていたのが治っている。ほんと凄いわナナちゃん。あなたは何なら治せないの。
「ケロ、次私ね。」
「おうカエルっ子!!イイ面構えになったじゃねーか!!気持ちのイイ喧嘩できたみてーだな!!」
ホント心配がバカらしくなるくらい眩しく、いつも通りのミルコさんの笑顔。ようやく長い一日は終わりを告げたのだと私は空を見上げる。
雨はもうすっかりあがっていた。
─────▼▼─────
薄暗い実験室の中、白衣を着た金髪の女が苛立ちを隠せずにいた。部屋の隅にある古びたランプの淡い光が彼女の顔を照らし、その険しい表情を際立たせていた。
「ウ、ウソですわ…こ、こんなことが、こんなことが許されていいのか」
「言わんこっちゃない。やはり『支配』前提の知能0の脳無など、碌な戦力になどならんってコトだ。"支配"でズルせずに、個性を複数積んでも耐えられて知能を維持できるように研究を進め─────」
「その研究の進みが遅いからこうしてるんじゃないですかぁ!!」
北のド田舎に送った子たちは良い。もとより失敗作に毛が生えた程度だから。塩野に送った『現在のオールマイトと互角』レベルの調整した子も惜しかったが…まぁ良いとしましょう。でも…!
「風見に送った大本命の『最盛期のオールマイトを殺害できるレベル』の調整をした脳無がッ!!!なんでっ!!あんな何も考えてない脳みそカラッポの兎野郎に殺されねばならないのですか~~ッ!!」
アレは間違いなく最高の出来だった!私が調整した実験体の中では最もハイレベルでハイエンドだった!「ベクトル操作」に「爆発」に「加速」大量に「切断」に!「超パワー」も大量に積んで!!ムキー!
「それに何なのですかあの"ゴミ箱"の個性は!!他人に「超再生」や「加速」や「怪力」を付与できるなんてズルにも程がありますわ!!あんな個性を何故先生様は捨てて─────」
『それがね、僕も知らなかったんだよ。"あの個性"があそこまでできるなんて』
「…!?先生様!おかえりでしたのね!お疲れ様でした!」
ザザ、とノイズの走る音と共に聞こえてくる偉大なお声。どうやら風見からご無事に戻られたらしい。…しかし知らなかったとは?
『悪かったねラミア。君の子供を回収しようとしたのだけど思ったより
「とんでもございませんわ!先生様のお手を煩わせるような子など、元より不要ですわ!それより、今の"あの個性"というのは…?」
そう、今はどちらかと言えばそちらの方が興味があるし大切だ。あのゴミ箱ヘビの個性。元は先生様のものだったようだが、何故あんな素晴らしい個性を先生はゴミ箱に捨ててしまったのだろうか。もしアレがあれば、お互いを無限に強化しあい、無限に回復しあう最強の脳無軍団ができたかもしれないのに…!
『─────『愛情』という個性だよ。』
「あ、あい…?アイジョウというのは、その、人を愛する。ラブとかの愛ですか?」
しかし先生に告げられたその個性の正体に、思わずアホみたいに聞き返してしまう。
『愛した相手を癒す。愛されれば癒される。互いが互いを強く愛している程に効果は大きくなる。たしかそんな個性だったハズだ。』
「…それが、あんな超再生を引き起こしていたと?ではなぜ先生様はそんな個性をお捨てに…?」
『期待外れだったからね。当時『再生』の代用になると思って奪ったんだが…僕を最も崇拝していた人物に渡して、僕に対して使わせた。でもほとんど効果が無かったんだよ』
はぁ、とため息のような息遣いがスピーカーの向こうから聞こえてくる。なるほど、それなら脳無たちに渡した所で何の意味もない個性だ。愛なんて感情を持ち合わせる調整など出来るわけがないし。
『だが僕が把握していなかった力があったらしいね。…ただの子供に脳無以上の能力を持たせられるとは。しかもそれだけじゃない。風見で君の子を殺したヒーロー。今面白いことになってるぜ?見たかい?』
「…は?いえ、昨日からほぼ不眠不休で記録を取っていたもので…。ドクタ~~今朝の新聞どこにやりました~?」
「お前さっきコーヒー沸かすのに燃やしてたぞ」
「っはぁっ!?何で止めてくれないんですか!?コレだからおじいちゃんはまったく!!」
…よし、半分黒焦げになってしまっていたが、何とか一面は無事だった。どれどれ?
「え~っと『ミルコ、決死の覚悟!数万の市民の命救う!』…ケッ、私の大事な子供を殺してよくも笑ってられますわねぇ。ええ?このマスコミに囲まれてアホ面晒してるバカのどこに面白─────あれ?え?いやちょっと待って?」
思わず二度見、三度見までするが結果は変わらない。いやコイツなんで─────────
「ウ、ウソですわ…こ、こんなことが、こんなことが許されていいのか」
う、うわぁぁ!ほ、他の写真でも無傷のミルコが練り歩いているっ。こ、こんなの納得できない。欠損を治すなんてルールで禁止ですわよね…?なにか変なクスリでもやってるのか?
─────ヒーローともしかしたらつるんでるかな~?と思ってましたが、まさかNo.5のミルコと来ましたか!
「!!!!まさか……この腕を治したのは…!」
『そう、きっと"ゴミ箱"の『愛情』だ!…こいつは凄いぜ!見ろよ包帯も無ければ傷跡すらない!数多の『治癒』や『再生』系の個性を見てきたが、こいつはレベルが違う!前提条件こそあれど時間を巻き戻す─────いや、それ以上の"超"回復だ!それに加えて強化付きと来た!』
先生様のお声がいつにもなくハイテンションで昂っておられるのが分かる。しかしその気持ちもわかる。もしかすれば。もしかすればこの個性があれば…脳無すらいらなくなるかも知れない!
「この、個性があれば…!先生様のお体も治療できるのでは!ドクターと私が死力を尽くしても、どんな個性でも回復できなかった貴方様のお体が…!」
『そうだね。賭けてみるみる価値はありそうだ。…『超再生』でも治せなかったこの身体を、オールマイトに付けられた深い傷を─────────ようやく癒せるかもしれない』
先生様が。あの伝説のワン・フォー・オールが再び歴史の表舞台に立つ。その想像をしただけで顔がニヤつくのを止められない。さぁでは早速"ゴミ箱"を捕獲するようの脳無の製造に取り掛からねば!
『本当に僕は幸運だ。彼女が当局やヒーローに本気で保護されていたら僕も流石に諦めていただろう。しかしラミア、君が彼女に渡した個性のおかげで、彼女はまだ身を隠している。』
「しかし急いだほうが良いやもしれん。バックについてるのはバカだがヒーローじゃ。いつソイツを当局に身柄を引き渡すかわかったもんじゃないぞ」
『そうだね。僕の方でももう警察周りを少し探ってみておこう…それじゃあ頼んだよ。ラミア、ドクター』
スピーカーの対し深々と頭を下げ、あの先生様に頼られているという事実が私をどうしようもなく興奮させた。
「─────はい、仰せのままに…♪」
展開ゆっくりでごめんなさい。次回からもう少しハイテンポにできたらと思います。
どういう展開がいい?
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スーパー梅雨ちゃん無双
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主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
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スーパーミルコさん無双
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ひたすら百合百合