ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。 作:Kkmn
なお見に行った試合は負けました。
「……そう、たまに大人びてると思ってたのはそういう理由があったからなのね」
「別人の記憶がある。それも元ヒーローのなァ。でもそんなのが行方不明になったなんざ聞かねーし雑魚じゃねェのか?それか公安系かアングラ系か?…
「し、信じテくれる…の…?こんなバカみたいな話…」
ナイトライトだけが付けられた締め切った寝室で語らう3人の美女、その眼差しや口調はまさに真剣そのものといってもいい。
もっとも…ある者は裸体だったり、それに準ずる衣装だったり、裸体より刺激的かもしれない姿だが。
「もちろんよ、ナナちゃんが私達に嘘つけるワケないもの。ね」
「つ、梅雨…ちャん…」
「だなァ~!でも納得したぜ、だからいつも馬鹿デケぇ胸でコップ落としたりブラの付け方もわかんねぇんだな!!んなもん男が知ってたらキモいもんな!!!」
「………」
ルミの歯に衣着せないハートを直に蹴りに来るその言葉に、さしものナナも顔を逸らすことしかできなかった。
そんな彼…彼女のそばにそっと座りなおした梅雨は、大きな手でそのロングの頭をよしよしと撫でつける。
「ケロケロ。そんなのいいのよ、私だって急に男の子になったらびっくりしちゃうもの。それにもうナナちゃんはどこに出しても恥ずかしくない立派な女の子だわ」
「女の子……でも、気持ち悪くなイ?ふたりをだまシてたみたいな…」
頭上の蛇たちと一緒に俯き、唇に指を添える。ここ数週間で梅雨から移ってしまった癖だ。
しかし本家は唇ではなく口元なので、その仕草には余計な艶めかしさと媚びが漂っていた。
「テメェがオスでもメスでもどっちでもいいけどよォ~~~~」
「ええ、黙ってたのはおしおきが必要よね、ケロ♪」
本家本元の口元に指をあてる仕草をした彼女が、まるで獲物を前にした捕食者のように舌なめずりをする。
ただ獲物は蛇で、それを狙っているのは本来食べられる側のウサギとカエルだが。
「どうするよカエルっ子。さっきヤったのをベランダでビデオ撮りながらヤるかァ?」
「!!それは素敵ね。一生付いていくわミルコさん…と言いたいところだけどそろそろ帰らなきゃ。妹たちのご飯作らなきゃなの。だから…」
─────コレをプレゼントしてあげる、ナナちゃん♪
ミッドナイトが描かれた紙袋を漁ったその手に掲げられていたのは─────首輪…もといチョーカーだった。それはまるで首輪のように見えるデザインで、中央には小さなシルバーのペンダントが2つ輝いていた。…
「わぁ…!!あっ…///」
蛇の少女の細い指が感嘆が漏れてしまった口元を隠す。その頬は赤らみ、自分がソレを喜んでしまったことを恥じていた。
しかし梅雨がちょいちょい、と首を差し出すような仕草を取ると、彼女はおずおずと言われた通りにした。
少し恥ずかしそうにしながらも頷き、首を少し傾ける。その肌は柔らかく滑らかで、まるで絹のような繊細さ。
─────カチャ。
チョーカーを持った少女は、その大きな指で慎重に彼女の首にチョーカーを巻きつけた。指先が肌に触れる度に、微かな震えが伝わり、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。ゆっくりとチョーカーを締めながら、彼女の瞳は恋人の瞳に優しく注がれていた。
「どう?痛くないかしら?」
チョーカーをしっかりと留めた後、彼女は優しく尋ねる。
「うん、大丈夫。すごく素敵。」
チョーカーを付けられた少女は、少し赤くなった顔で瞳に映る自分を見つめた。彼女の首元に黒いチョーカーが映え、その姿は一層魅力的で愛らしく映っていた。
「本当に似合ってるわ。愛してる、ナナちゃん」
チョーカーを付けた少女の頬にそっとキスをしながら、彼女はささやいた。
そうして二人少しの間、二人だけの間に満ち溢れた静かな幸福をじっくりと堪能していた。
「…なんかミッドナイトがよぉ、青臭ェガキの青春がどうとかうっせえんだけどさァ。」
「ケロ?ええ」
「テメェら見てんのはアタシも楽しいぞ!!こう…いいぞー!ヤれー!!ヤっちまえェ!!!ブチ込めェ!!!って感じだ!!」
「え…??そレ、どういウ感情ですか???」
「それ、なんかプロレスを見てる感想みたいだわ」
儚げな蛇の美少女クスクスと笑う優しい顔。その背後にあるのが何であれ、手を差し伸べて守ることが出来て良かった。と心の底から梅雨は思った。
きっとそう遠くない未来、一緒にお出かけも出来るだろうし、一緒にお買い物だってできるかもしれない。
いやもしかしたら、一緒に学校に行ったり、お家に呼んだりできるかも。
そしたらナナちゃんなら羽生子ちゃんとも仲良くなれるでしょうし、3人で学校の帰りに喫茶店に行ったり、お洋服を見に行ったり。
そしてそしてもしかしたら……雄英にも一緒に行けたりなんかして─────。
「─────?」
そこまで思考を巡らせていた梅雨の表情が、部屋のある一点を凝視して固まった。
ここは締め切った寝室で、ミルコの事務所の一つで…彼女が知りうる限りこの世で最も安全な場所のハズだ。
だから今自分が見ているような─────そんなことがあるはずがないのだ。
おどろおどろしい、黒いモヤが愛するナナちゃんの背後に広がっていく様など。あり得るはずがないのだ。
ナナちゃんの個性のいずれかが暴走してしまったのかしら?と一瞬でそこまで思考に至れた彼女の判断力は優れており、その判断も決して的外れではなかったのだ。
だがその”黒いモヤ”をかつて見た経験があったルミは違った。かつて苦汁を飲まされたその”黒いモヤ”は、あの目の前の蛇の少女とそっくりなあの
「─────はぁい…捕まえた♪帰りましょうね、ゴミ箱ちゃん♡」
その黒いモヤが大きくなり、その中から伸びた白い腕がナナに深く絡みつき、拘束したのは1秒にも満たない時間だった。
梅雨はその光景に理解が追い付かず手を伸ばすだけ─────しかしその伸ばした手までもを、白い腕は
「あなたも欲しい、あなたが居れば『愛情』の実験がとっても捗る……チッ」
「─────アタシのガキ共に触ンな、ヘビ女」
その手に放たれた渾身の蹴りは部屋中の家具を吹き飛ばすほどの風圧を発生させた。
結果、その手はとても言い表せないほどの悲惨な折れ曲がり方をし、その骨が粉々に破砕されたことがうかがえる。
そしてルミの太く硬い脚がその折れた脚にしがみつき、絶対に逃がさない構えを取った。
「あ~あ、ケロちゃんも欲しかったのに…まぁいいです。SNS対策はしっかりした方がいいですよ、野兎」
「逃がすか─────あ??」
ぷちゅんっ、と言う何かが千切れた音がルミの耳朶を打った瞬間、その黒い霧は完全に消滅した。
初めから何もなかったように部屋にはその痕跡の一切が消え去ってしまった。…その切断された白い腕以外。
もう黒いモヤも完全に霧散し、そしてその中心にいた蛇の少女も─────すべて消えてしまった。
そしてその一部始終も、消える瞬間も、一番近くで見ていた蛙の少女はただ茫然と見ていることしか出来なかったのだ。
「………ナ、ナ…ちゃん…??」
その大切なお友達以上の彼女の名前を呼んでも、それを返してくれる彼女はもういない。
ほんの数十秒前まで愛を囁き合っていたその相手は、もはや手の届かない遠いどこかへと連れ去られてしまった。
─────▼▼────
「おねえ……ん」
何処かで声が聞こえる。でも今それどころではない、あの子の事を考えないと…。
今この瞬間にもあの子が命を脅かされてるのかも知れないのだから…。
「ねえさん!!!!」
幼いその声が耳元で叫び、梅雨はやっと自分が今台所で料理していた最中だったという事を思い出し、慌ててコンロの火を止めた。
「…おねえちゃん、だいじょうぶ?」
「火事になっちゃうよ、受験勉強で疲れてるの?」
弟と妹が心配そうな顔で二人揃って覗き込んでくる様に、彼女は精一杯の作り笑いを浮かべて「ケロ…大丈夫よ」と返した。
コンロの火を止め、けたたましく鳴っていたパスタのゆで時間を知らせるスマホのアラームを止める。
「…ほんとにだいじょうぶ?おねえちゃん最近、ずっと疲れてるよ…?」
「そんなに大変なの?受験の勉強って…?」
「え、ええ…ちょっと根詰めしすぎちゃって、ごめんね二人とも」
相も変わらず心配する仕草を見せてくれる可愛い弟と妹を心配させるまいと、その頭を撫でる。
親は両方先週から一か月の出張に出ており、その間の世話は彼女が全て行っている。
「おねぇちゃん、フォークさかさまだよ?」
「っていうかそれフォークじゃなくておたまだよ」
「ケ、ケロ……ごめんね、うっかりしてたわ」
あれから…ナナちゃんが目の前で誘拐されてから数日が経っていた。
この数日間、彼女の心は落ち着くどころか膨らんでいく心配により常に慌ただしいような、心ここにあらずといった状態だった。
『いいか!蹴ったら分かったけどよォ、今のこの腕はあの蛇の敵だ!こいつを信頼できる所に鑑識させる!そして結果が出たらオールマイトの所に殴り込んでナナを攫った敵の情報を聞き出す!!知ってそうだからな!だからテメェ、勝手に一人で先走ったらブっ跳ばすからな!!』
頭の中で響く彼女の師の声。今唯一頼りになる彼女の声を何度もこの数日間反芻してきた。
悠長だとは口が裂けても言えない。彼女だって悔しくて辛いのは痛い程わかる。でも…この瞬間にもナナが、親友以上の彼女がどんな目にあっているかもわからないのだ。
彼女を攫ったのはあの事件の日、怪物のような敵の通信機越しに聞いた声と同じだった。僅かしか言葉を交わしてないが分かる。あれは悪意に満ちた声。
─────Prrrr Prrrrr
「………スマホなってるよ?」
「ケロっ。ご、ごめんなさい、考え事してたわ……─────あ、ちょっとまっててね。」
電話先の相手─────『ミルコさん』の文字が視界に入った瞬間、自身の心が大きくざわつくのを感じた。
妹たちを手で制し、自室に戻って鍵を閉めてその電話の着信に応じる。
『カエルっ子!!!今家か!!!!オールマイトに会いに行くから支度しろ!!!』
耳をつんざくほどのその大きいその声に、彼女は深く、力強くスマホを握りしめた。
─────▼▼─────
「─────凄いね!!!この速度でついてこれるヒーローは初めてだよ!!私ビックリしちゃった!!」
「あァ!?ヒーローミルコを舐めんじゃねぇ!!…って言いたいけど!最近知り合いのガキの個性のおかげで調子良くてな!!」
「~~~~~っっ!!!」
高度何kmか分からないが、梅雨は大きな背中に必死にしがみつきながら、その二人の会話に聞き耳を立てるしかできなかった。
何しろ風圧が凄い。眼も開けてられないし口なんか開いても舌がまともに動かせない。
『おっ!!長崎の敵倒して今東京に帰ってる所なんだってよォ!!だったら…この辺りの空飛ンでんだろ!!!』
と言う一言と共に彼女を背負い思いきり跳躍した結果。その思惑は見事に的中し、空中を駆けるオールマイトに見事遭遇することが出来たのだ。
ただオールマイトはずっと空を飛んでいるのに対し、ミルコは息継ぎのように時々着地して跳躍しなおす必要があった。だがそれでもスピードは負けていない。
「その子はなんだい!?この速度で気を失わないなんて、何てタフネスだよ!!2代目ミルコかな!?」
「ちげ~~~っての!!何でどいつコイツも…コイツは忘れろ!アンタに聞かなきゃいけねーことがあるんだ!!今いいか!?」
「SHIT!!ベースに帰ってからでも良いかな!!君の聞きたいことは想像がつくんだ!ただ少し秘密が絡む話でね!!」
「ハァ~~~!?ンな空で誰が聞いてるってンだよ??」
「その”敵”に関しては警戒し過ぎてし過ぎる事はないんだ!!悪いけど私のベースまで戻ってからゆっくりと話すよ!!」
風圧に負けぬ大声で叫んでいたオールマイトは、ミルコが背負った子供の顔が少し深刻そうな顔色になっているのに気づき。
「あ…その子、大丈夫?」
「アタシが鍛えてるガキだぞ!!こんくれェへっちゃらだよなぁ!!?」
「…………」
ミルコの大きな背中にしがみついていた梅雨は、その言葉に嫌な汗が噴き出すのを感じてしまった。
あのオールマイトが、今までどんな敵にも苦戦すらしてるとこを見たことない。テレビでいつも輝いている無敵の、
警戒?…そんな敵に…ナナちゃんは…攫われたの??
そしてそんな彼女の心の機微を察してかオールマイトはポンポンとその僅かに震える肩を叩いた。
「大丈夫!!私が苦戦した敵なんていないさ!どうやらワケありのようだが大丈夫!どんな敵の企みだろうがこの拳で粉々にしてやるさ!!」
そういって力強い拳を見せつけてくれる彼の姿に─────あの幼い頃から毎日のようにテレビで見ていたヒーローが、目の前に力強く告げてくれたその言葉に、梅雨は震えながらも笑みで応えた。
「うん!良い笑顔だ!君は師にも恵まれている!きっといいヒーローに─────」
そのオールマイトの眩い笑顔が更に明るくなり、親指を立てようとした瞬間だった。
「─────オールマイトォォォォ!!!テメェの事務所面白ェコトになってンぞォ~~~!!!!」
その声の視線の先にあった光景に、梅雨は浮かべていた笑みを消さざるを得なかった。
その東京の中心の摩天楼の一角に位置するビル。最上階にオールマイトの事務所が鎮座する建物が。
─────夥しい黒煙を上げ、半壊している光景が目に飛び込んできたのだから。
どういう展開がいい?
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スーパー梅雨ちゃん無双
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主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
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スーパーミルコさん無双
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ひたすら百合百合